(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】半導体発光ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
C09K 11/08 20060101AFI20230905BHJP
C09K 11/88 20060101ALI20230905BHJP
C09K 11/70 20060101ALI20230905BHJP
C09K 11/62 20060101ALI20230905BHJP
C09K 11/56 20060101ALI20230905BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20230905BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20230905BHJP
【FI】
C09K11/08 G ZNM
C09K11/88
C09K11/70
C09K11/62
C09K11/56
C09K11/08 A
H01L33/50
B82Y20/00
(21)【出願番号】P 2020520604
(86)(22)【出願日】2018-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2018077546
(87)【国際公開番号】W WO2019072884
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-08
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】セムヨノフ,アーティオム
(72)【発明者】
【氏名】シャビーブ,エフード
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0205598(US,A1)
【文献】特表2012-525717(JP,A)
【文献】特表2005-522534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
H01L 33/50
B82Y
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ナノサイズ発光材料であって、コア、1以上のシェル層、およびシェル層の最外表面上に被覆される配位子を含み、または、からなり、
配位子が、1以上の金属ホスホナートであり、および
金属ホスホナートが、以下の式(I)、(II)、(III)、(IV)および/または(V)
【化1】
。
【化2】
。
【化3】
。
【化4】
。
【化5】
。
による構造の1つに従い、
式中、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびアルキルアリールからなる群から選択され、および式中、Rは、少なくとも2個の、および、20個を超えない炭素原子を含み、および、Rは、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、エーテル、エステル、アミノ、チオ、シリル、スルホおよびハロゲンからなる群から選択される少なくとも1の官能基をさらに含んでもよく、
式中、Xは、ヒドロキシル、エステルおよびエーテルからなる群から選択される、
金属ホスホナートに使用される金属カチオンが、以下:Mg、Ca、Ba、Cu、Fe、Znからなる群から選択される、または、それらの混合物である、
該半導体ナノサイズ発光材料の該シェルが、式(VII)
[A
2B
2] (VII)
式中
[A
2]は、亜鉛、カドミウムからなる群から選択される金属またはそれらの混合物を示し;
[B
2]は、硫黄、セレニウムからなる群から選択される非金属、またはそれらの混合物を示す、
による1、2以上の化合物から形成される、前記材料。
【請求項2】
金属ホスホナートが、以下の式(I)、(II)、(III)、(IV)および/または(V)による構造の1つに従い、および
式中、Rが、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、エーテル、エステル、アミノ、チオ、シリル、スルホおよびハロゲンからなる群から選択される少なくとも1の官能基をさらに含む、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
金属ホスホナートに使用される金属カチオンが、Mgおよび/またはZnである、請求項1または2のいずれか一項に記載の材料。
【請求項4】
金属ホスホナートに使用される金属カチオンが、Znである、請求項1~3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
該半導体ナノサイズ発光材料が、コアおよび任意に1以上のシェル層を含み、または、からなり、
該コアが、式(VI)、
[A
1B
1] (VI)
式中
[A
1]は、亜鉛、カドミウム、インジウムからなる群から選択される金属またはそれらの混合物を示し;
[B
1]は、硫黄、セレニウム、リンからなる群から選択される非金属またはそれらの混合物を示す、
による1、2以上の化合物から形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の材料。
【請求項6】
[A
1B
1]が、CdS、CdSe、CdSeS、CdZnS、ZnS、ZnSe、ZnSeS、およびInPからなる群から選択される1、2以上の化合物を示す、請求項5に記載の半導体ナノサイズ発光材料。
【請求項7】
[A
1]が、インジウムを示し;および
[B
1]が、リンを示す、
請求項5に記載の半導体ナノサイズ発光材料。
【請求項8】
[A
2B
2]が、CdS、CdSe、CdSeS、CdZnS、ZnS、ZnSeおよびZnSe
Sからなる群から選択される1、2以上の化合物を示す、請求項1~7のいずれか一項に記載の材料。
【請求項9】
該半導体ナノサイズ発光材料が、コア[A
1B
1]のコアシェル構造および少なくとも1のシェル[A
2B
2]を含み、該コア/シェル構造[A
1B
1]/[A
2B
2]が、CdSeS/CdZnS、CdSeS/CdS,ZnS、CdSe/ZnS、InP/ZnS、InP/ZnSe、InP/ZnSe,ZnS、InP
Zn/ZnSe、InP
Zn/ZnSe,ZnS
、ZnSe/CdS、およびZnSe/ZnSからなる群から選択される、または、それらの混合物である、請求項8に記載の材料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の半導体ナノサイズ発光材料を製造するためのプロセスであって、以下のステップ:
(a)好適な溶媒中に任意に溶解されていてもよい、少なくとも1の金属[A
1]および/または[A
2]の少なくとも1の塩を提供する;
(b)少なくとも1の非金属[B
1]および/または[B
2]の少なくとも1の供給源を添加して、中間体化合物[A
1B
1]または[A
1B
1]/[A
2B
2]を得る;
(c)ステップ(b)からの該中間体化合物[A
1B
1]/[A
2B
2]を、任意に溶媒の存在において、それを金属ホスホナートと接触させることによって被覆し、および任意に
(d)ステップ(c)の該被覆された中間体を、約300~約650nmのピーク光波長をもつ光を有する照明へ供与して、ナノサイズ材料の量子収率を増加させる、
を含む、または、からなる、前記プロセス。
【請求項11】
照明が、約365~約470nmのピーク光波長および/または約0.025~約1Wcm
-2の強度をもつ光を使用して実行される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項10または11のプロセスによって得られる半導体ナノサイズ発光材料
【請求項13】
請求項1~9、12のいずれか一項に記載の少なくとも1の半導体ナノサイズ発光材料、および少なくとも1の追加的なマトリックス材料を含む、組成物。
【請求項14】
請求項1~9、12のいずれか一項に記載の1以上の半導体ナノサイズ発光材料または請求項13に記載の組成物、および少なくとも1の溶媒を含む、配合物。
【請求項15】
請求項1~9、12のいずれか一項に記載の半導体ナノサイズ発光材料、請求項13に記載の組成物、または請求項14に記載の配合物の、電子デバイス、光学デバイスにおける、または生医学デバイスにおける使用。
【請求項16】
請求項1~9、12のいずれか一項に記載の半導体ナノサイズ発光材料、または請求項13に記載の組成物、または請求項14に記載の配合物を含む、光学媒体。
【請求項17】
請求項16に記載の該光学媒体を含む、光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、半導体の領域を指し、および改善された量子収率および低減されたトラップ放出を有する新規な量子ドット、それらを得るためのプロセス、および新規な半導体のさらなる応用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
量子ドット(QD)は、ナノメートル範囲における直径(約2~20nm)をもつ半導電性粒子であり、それは結晶の光学的および電子的特性が変化するほど小さい。量子ドットの特有の特色は、それらは粒子直径と共に色を変化させることである。赤色のQDについて、例えば、青色のQDを生成するために、他の材料は必要とされない-それらは異なる粒子サイズおよび/または異なる組成物を以て生成されるだけでよい。ディスプレイなどの典型的な応用に加えて、QDは、今や太陽電池またはプロセッサなどの多くの他の領域においてもまた使用される。
【0003】
量子ドットは、蛍光を発し得、および光子を他の波長へ変換し得、ならびに光を放出し得る。しかしながら、それらの突出した特徴は、疑いようもなく、ディスプレイにおける背景光を改善する能力である。LCD TVは、白色背景光を使用し、次いで青色、緑色、および赤色光をフィルターにかけて色を表示する。蛍光体層をもつ青色LEDは、このいわゆる「バックライト」のために大抵使用される。
【0004】
QDバックライトの蛍光体系「白色LED」バックライトに対する最も強力な技術的利点は、広い色域を可能にする、例として表示された色の量を増加させる、狭いFWHM(<50nm)である。いくつかの蛍光体フィルムは、QDフィルムのEQEに匹敵する>90%に達するEQEを与え得る。
【0005】
量子ドットの生産のためにも好適である、最も重要な半導体材料は、カドミウム化合物、とくにCdSおよびCdSeを包含する。しかしながら、不利な点は、カドミウムは高度に有害であることである。見込みのある代替物はInPであるが、量子収率は十分ではない。したがって、QDの量子を具体的にはトラップ放出を低減することによって改善する、特定な新規な配位子のために、調査が目下行われている。
【0006】
ホスホナートをもつ金属複合体は、例えば、Cd系半導体ナノ結晶の合成の間、前駆体として広く使用される。かかる前駆体は、それらは異方性成長を誘導するため、ナノロッドをつくるために使用される。例えば、前駆体として以下のホスホナート:Cd-オクタデシルホスホナート、Cd-ヘキシルホスホナートおよびCd-テトラデシルホスホナートを使用することが、Nature Materials 10, 765-771 (2011)およびJournal of American Chemical Society, 123 (1), p. 183-184, 2001に記載されている。
【0007】
さらにまた、ホスホナートをもつ金属複合体は、US 2012/0205598 A1に報告されているとおり、CdSeコア上のZnS、ZnSeシェルの成分を提供するシェル成長のための前駆体として使用される。金属ホスホナートはZnSのための前駆体として使用され、昇温で分解されたと言及されるべきだが、一方で、金属ホスホナートは、合成が完了した後の表面処理について、または、配位子としては、言及されていない。
【0008】
ホスホン酸が配位子をキャッピングするQDとして有用であることは、J. Phys. Chem. Lett. 2011, 2, 145-152の論文からも既知である。しかしながら、文献は、これらの化合物の特定の金属複合体およびQDの外表面に結合されたときのそれらのトラップを不動態化する能力に関しては記載していない。
したがって、改善された量子収率を有する新規な半導体発光材料を提供することが、本発明の目的である。
【0009】
本発明の説明
本発明の第一の目的は、コア、任意に1以上のシェル層、およびコアまたはシェル層の最外表面上に被覆される配位子を含む、または、からなる、半導体ナノサイズ発光材料であって、配位子が、1以上の金属ホスホナートおよび/またはその誘導体であり、および
金属ホスホナートが、以下の式(I)、(II)、(III)、(IV)および/または(V)
【0010】
【0011】
【0012】
式中、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびアルキルアリールからなる群から選択され、および式中、Rは、少なくとも2個の、および、20個を超えない炭素原子を含み、および
式中、Xは、ヒドロキシル、エステルおよびエーテルからなる群から選択される、
前記材料に向けられている。
【0013】
驚くべきことに、量子材料の表面において、負の配位子を置き換え、および正および負の両方の原子を調整することができる、金属ホスホナート型の配位子および/またはその誘導体の堆積が、粒子の表面上のトラップを不動態化させ、よって量子収率における60%までの有意な増加、改善されたQY安定性につながり、および先行技術の短所を克服することが観察された。効果は、続いてこれらの材料に光を当てることによってさらに増加され得る。
【0014】
本発明によると、用語「半導体」は、電気伝導性を、室温で、導体(銅など)の電気伝導性と絶縁体(ガラスなど)の電気伝導性との間の程度で有する材料を意味する。好ましくは、半導体は、その電気伝導性が温度に伴って増加する材料である。
用語「ナノサイズ」は、0.1nmおよび999nmの間、好ましくは1nm~150nm、より好ましくは3nm~50nmにおけるサイズを意味する。
【0015】
よって、本発明によると、半電導性発光ナノ粒子は、サイズが、0.1nmおよび999nmの間、好ましくは1nm~150nm、より好ましくは3nm~50nmにおいてであり、電気伝導性を、室温で、導体(銅など)のそれと絶縁体(ガラスなど)との間の程度で有する発光材料を意味すると解され、好ましくは、半導体は、その電気伝導性が温度に伴って増加し、およびサイズが0.1nmおよび999nmの間、好ましくは0,5nm~150nm、より好ましくは1nm~50nmにおいてである材料である。
【0016】
本発明によると、用語「サイズ」は、半電導性ナノサイズ発光粒子の最長軸の平均直径を意味する。
半電導性ナノサイズ発光粒子の平均直径は、Tecnai G2 Spirit Twin T-12 Transmission Electron scopeによって作られたTEM画像における100の半電導性発光ナノ粒子に基づき計算される。
【0017】
本発明の好ましい態様において、本発明の半電導性発光ナノ粒子は、量子サイズ材料である。
本発明によると、用語「量子サイズ」は、配位子または別の表面修飾を除いた半電導性材料それ自体のサイズを意味し、それは、例えば、ISBN:978-3-662-44822-9に記載されるように、量子閉じ込め効果を示し得る。
一般に、量子サイズ材料は、「量子閉じ込め」効果に起因して、調節可能な、鮮明かつ鮮やかな有色光を放出し得るといわれる。
本発明のいくつかの態様において、量子サイズ材料の全体構造のサイズは、1nm~50nmであり、より好ましくは、それは、1nm~30nmであり、なおより好ましくは、それは、5nm~15nmである。
【0018】
本発明によると、半導電性発光ナノ粒子の該コアは様々であり得る。例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnSeS、ZnTe、ZnO、GaAs、GaP、GaSb、HgS、HgSe、HgSe、HgTe、InAs、InP、InPS、InPZnS、InPZn、InPZnSe、InCdP、InPCdS、InPCdSe、InGaP、InGaPZn、InSb、AlAs、AlP、AlSb、Cu2S、Cu2Se、CuInS2、CuInSe2、Cu2(ZnSn)S4、Cu2(InGa)S4、TiO2合金およびこれらの任意の組み合わせが使用され得る。本明細書中で使用される「金属ホスホナート(単数)」および「金属ホスホナート(複数)」は置き換え可能であり、および金属カチオンをもつ任意のホスホナートおよび/またはその誘導体を包含する。好適な金属カチオンの例が、下記に一覧される。
【0019】
本発明の第二の目的は、コア、任意に1以上のシェル層、およびコアまたはシェル層の最外表面上に被覆される配位子を含む、または、からなる、半導体 ナノサイズ発光 材料であって、以下のステップ:
(a)好適な溶媒中に任意に溶解されていてもよい、少なくとも1の金属[A1]および/または[A2]の少なくとも1の塩を提供する;
(b)少なくとも1の非金属[B1]および/または[B2]の少なくとも1の供給源を添加して、中間体化合物[A1B1]/[A2B2]を得る;
(c)ステップ(b)からの該中間体化合物[A1B1]/[A2B2]を、任意に溶媒の存在において、それを金属ホスホン酸および/またはその誘導体の供給源と接触させることによって被覆する、
ここで、金属ホスホナートが、以下の式(I)、(II)、(III)、(IV)および/または(V)
【0020】
【0021】
【化9】
【化10】
による構造の1つに従う;および任意に、
(d)ステップ(c)の該被覆された中間体を、約300~約650nmのピーク光波長をもつ光を有する照明へ供与し、ナノサイズ材料の量子収率を増加させる、
によって得られ得る、または、得られる、前記材料に向けられている。
【0022】
留意されるべきは、該配位子は、粗製材料へ添加され得、それは、それらはQD合成の最終的なステップ中へ組み込まれるが、市販のQDを後処理のために使用することもまた可能であることを意味することである。材料は、例えば、ロッド、ドット、八面体、ワイヤ、テトラポッド形状、プレートレット形状(platelets)などの任意の可能な形状を有していてもよい。
【0023】
金属ホスホナートおよびその誘導体
「ホスホナート酸」は、C-PO(OH)2またはC-PO(OR)2基を含有する有機リン酸化合物である。典型的には塩として取り扱われるホスホン酸は、一般的に有機溶媒に低可溶性であるが、水および一般のアルコールに可溶性である、不揮発性の固体である。
ホスホン酸は、「マンニッヒ条件(Mannich condition」下でアルキル化され得、複合体として有用である、アミノメチル化ホスホナートを与える。一例は、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)の工業的な調製である:
NH3+3H3PO3+3CH2O→N(CH2PO3H2)3+3H2O
【0024】
ホスホン酸はまた、アクリル酸誘導体を用いてアルキル化され得、カルボキシル官能化されたホスホン酸を提供する。この反応は、マイケル負荷の異形である:
CH2=CHCO2R+3H3PO3→(HO)2P(O)CH2CH2CO2R
例えば、ホスホン酸エステルは、「ミカエリス-アルブーゾフ反応(Michaelis-Arbuzov reaction」を使用して調製される。例えば、ヨウ化メチルは、亜リン酸トリメチルをホスホン酸エステルジメチルメチルホスホナートへの転化を触媒する:
P(OMe)3→MePO(OMe)2
「マイケル-ベッカー反応(Michaelis-Becker reaction)」において、水素ホスホナートジエステルはまず脱プロトン化され、およびその結果得られるアニオンは、アルキル化される。
【0025】
これらの調製例は、本発明によるホスホナートがどのように製造され得るかの示唆を与えることのみが意図される。したがって、上記の引用例は、本発明による例を限定するものではない。製造の他の方法は、当該技術分野における当業者に周知であり、および文献に説明されている。
【0026】
好ましくは、該金属ホスホナートは、式(I)、(II)、(III)、(IV)および/または(V)
【化11】
【化12】
【化13】
【0027】
【0028】
式中、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびアルキルアリールからなる群から選択され、および式中、Rは、少なくとも2個の、および、20個を超えない炭素原子を含み、および式中、Xは、ヒドロキシル、エステルおよびエーテルからなる群から選択される、
に従う。
【0029】
本発明のいくつかの態様において、Rは、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、エーテル、エステル、アミノ、チオ、シリル、スルホおよびハロゲンからなる群から選択される少なくとも1の官能基をさらに含む。好ましくは、該金属ホスホナートは、式(I)および/または(II)に従う。
金属ホスホナートに使用される金属カチオンは、以下:Mg、Ca、Ba、Cu、Fe、Znまたはそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは金属ホスホナートに使用される金属カチオンは、Mgおよび/またはZnである。最も好ましい態様において、金属ホスホナートに使用される金属カチオンは、Znである。
【0030】
好ましい配位子は、一般的な構造(構造I、II、III、IVおよびV):
【化16】
【化17】
【化18】
【0031】
【0032】
一般に使用される好適な金属ホスホナートは、限定されるものではないが、Zn-オクタデシルホスホナート、Zn-ヘキサデシルホスホナート、Zn-テトラデシルホスホナート、Zn-テトラエチルメチレンジホスホナート、およびその混合物を包含する。
いくつかの態様において、式(I)、(II)、(III)、(IV)および/または(V)のホスホナート基は、ホスホナート基誘導体によって置き換えられてもよい。留意されるべきは、金属カチオンとしての二価の金属、とりわけ亜鉛の存在が、本発明に不可欠であることである。かかる金属のホスホナート不在において、かなり低い量子収率を呈することに留意されたい。
好ましい配位子は、NATURE MATERIALS 15、pp141-153 (2016)に定義されるとおりのいわゆるZ型配位子を表す、Zn-ホスホナートおよび/またはその誘導体を表す。
【0033】
半導体材料
本発明による材料のコアまたはコア/シェル体を形成する好適な半導体材料は、単一の化合物またはそれらの2、3またはより多くの混合物を表してもよい。
本発明の第一の好ましい態様において、該コアは、式(VI)
[A1B1] (VI)
式中
[A1]は、亜鉛、カドミウム、インジウムからなる群から選択される金属またはそれらの混合物を示し;
[B1]は、硫黄、セレニウム、蛍光体からなる群から選択される非金属またはそれらの混合物を示す、
による1、2以上の化合物から形成される。
【0034】
より好ましくは、[A1B1]は、CdS、CdSe、CdSeS、CdZnS、ZnS、ZnSe、ZnSeS、およびInPからなる群から選択される1、2以上の化合物を示す。
本発明の最も好ましい態様において、
[A1]は、インジウムを示し;および
[B1]は、蛍光体を示す。
【0035】
本発明によると、合成される半電導性発光ナノ粒子のコアの形状の型、および半電導性発光ナノ粒子の形状は、具体的には限定されない。
例えば、球状形状、長尺形状、星形状、多面体形状、ピラミッド形状、テトラポッド形状、四面体形状、プレートレット形状、円錐形状、および不規則形状のコアおよび-または半電導性発光ナノ粒子が合成され得る。
【0036】
本発明のいくつかの態様において、コアの平均直径は、1.5nm~3.5nmの範囲においてである。
本発明の別の好ましい態様において、該シェル(単数)または該シェル(複数)は、式(VII)
[A2B2] (VII)
式中
[A2]は、亜鉛、カドミウムからなる群から選択される金属またはそれらの混合物を示し;
[B2]は、硫黄、セレニウムからなる群から選択される非金属、またはそれらの混合物を示す、
による1、2以上の化合物から形成される。
【0037】
好ましくは、[A2B2]は、CdS、CdSe、CdSeS、CdZnS、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnTeSeSおよびZnSeSからなる群から選択される1、2以上の化合物を示す。
本発明の最も好ましい態様において、
[A2]は、亜鉛を示し;および
[B2]は、セレニウムを示す。
【0038】
コア[A1B1]のコアシェル構造および少なくとも1のシェル[A2B2]を含み、該コア/シェル構造[A1B1]/[A2B2]は、CdSeS/CdZnS、CdSeS,CdS/ZnS、CdSeS/CdS,ZnS CdSe/ZnS、InP/ZnS、InP/ZnSe、InP/ZnSe、ZnS、InP(Zn)/ZnSe、InP(Zn)/ZnSe、ZnS、InP(Zn)/ZnSe,ZnS,ZnTe、ZnSe/CdS、ZnSe/ZnSからなる群から選択されるか、または、それらの混合物である材料が総合的に好ましい。
本発明の別の好ましい態様において、材料は、カドミウムを含まない。
【0039】
本発明の最も好ましい態様において、半導体ナノサイズ発光材料は、コア[A1B1]および少なくとも1のシェル[A2B2]を含み、ここで
[A1]は、インジウムを示し;
[B1]は、蛍光体を示し;
[A2]は、亜鉛を示し;および
[B2]は、セレニウムを示す。
【0040】
本発明のいくつかの態様において、半電導性発光ナノ粒子は、該シェル層上に第2のシェル層をさらに含み、好ましくは第2のシェル層は周期表の12族の第3周期の元素および周期表の16族の第4周期の元素を含み、または、からなり、より好ましくは、第3周期の元素はZnであり、第4周期の元素はS、Se、またはTeであり、ただし、第4周期の元素および第2周期の元素は、同じではない。
【0041】
本発明の好ましい態様において、第2のシェル層は、以下の式(IX)
ZnSxSeyTez -(IX)
式中、式(IX)、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、およびx+y+z=1によって表され、好ましくは、シェル層は、ZnSe、ZnSxSey、ZnSeyTez、またはZnSxTezであり、ただし、シェル層および第2のシェル層は、同じではない。
本発明のいくつかの態様において、該第2のシェル層は、合金シェル層またはグレーデッドシェル層(graded shell layer)であり得、好ましくは該グレーデッドシェル層は、ZnSxSey、ZnSeyTez、またはZnSxTezであり、より好ましくはそれはZnSxSeyである。
【0042】
本発明のいくつかの態様において、半電導性発光ナノ粒子は、多重シェルとして、第2のシェル層上に1以上の追加的なシェル層をさらに含み得る。
本発明によると、用語「多重シェル」は、3以上のシェル層からなる積層シェル層を示す。
例えば、CdSe/CdS、CdSeS/CdZnS、CdSeS/CdS/ZnS、ZnSe/CdS、CdSe/ZnS、InP/ZnS、InP/ZnSe、InP/ZnSe/ZnS、InZnP/ZnS、InZnP/ZnSe、InZnP/ZnSe/ZnS、InGaP/ZnS、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnSe/ZnS、InZnPS/ZnS、InZnPS ZnSe、InZnPS/ZnSe/ZnS、ZnSe/CdS、ZnSe/ZnSまたはこれらの任意の組み合わせが、使用され得る。好ましくは、InP/ZnS、InP/ZnSe、InP/ZnSexS1-x、InP/ZnSexS1-x/ZnS、InP/ZnSe/ZnS、InZnP/ZnS、InP/ZnSexTe1-x/ZnS、InP/ZnSexTe1-x、InZnP/ZnSe、InZnP/ZnSe/ZnS、InGaP/ZnS、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnSe/ZnS。
【0043】
製造プロセス
本発明の別の目的は、コア、任意に1以上のシェル層、およびコアまたはシェル層の最外表面上に被覆される金属ホスホナートおよび/またはその誘導体を含む、または、からなる、半導体ナノサイズ発光材料を製造するためのプロセスであって、以下のステップ;
(a)好適な溶媒中に任意に溶解されていてもよい、少なくとも1の金属[A1]および/または[A2]の少なくとも1の塩を提供する;
(b)少なくとも1の非金属[B1]および/または[B2]の少なくとも1の供給源を添加して、中間体化合物[A1B1]または[A1B1]/[A2B2]を得る;
(c)ステップ(b)からの該中間体化合物[A1B1]/[A2B2]を、任意に溶媒の存在において、それを金属ホスホナートおよび/またはその誘導体の供給源と接触させることによって被覆する、および任意に、
(d)ステップ(c)の該被覆された中間体を、約300~約650のピーク光波長をもつ光を有する照明へ供与して、ナノサイズ材料の量子収率を増加させる、
を含む、または、からなる、前記プロセスに向けられている。
【0044】
したがって、本発明は、材料のための2つの代替的な態様を包含する:第一は、配位子が堆積されている単一のコアとしての[A1B1]からなる構造、第二は、コア[A1B1]および少なくとも1のシェル[A2B2]、好ましくは2以上のシェル[A2B2]2~[AxBx]xからなる構造である。材料が、コアおよび少なくとも1のシェルからなる場合、コア材料[A1B1]および[A2B2]は、例えばコアとしてのInPおよびシェルを形成するZnSeのように異なる。より多くのシェルがある場合、材料は、例えばInP/ZnS,ZnSeなど、なおも異なってもよいが、コアおよび例えば外側のシェルは、例としてZnS/ZnSe,ZnSのように、同一であることもまた可能である。
【0045】
したがって、本発明の好ましい態様は、ステップ(a)および/またはステップ(b)が、2の異なる金属[A1]または[A2]の塩を提供すること、および/または、2の異なる非金属[B1]または[B2]の供給源を添加することを夫々網羅するプロセスである。全ての原材料が同時に添加される場合、全てのこれらの化合物からなるコアが形成される。しかしながら、第一にコアを形成し、および続いてそれらの指定された構成成分を添加して該コアの周辺にシェルを形成することが具体的に好ましい。これは、コアおよび2以上のシェルをもつ複合体粒子を構築するために段階的に行われ得る。
【0046】
例えば、金属[A1]または[A2]の好適な塩は、ハロゲン化物、具体的に塩化物またはヨウ化物、またはカルボキシラート、例えばアセタートまたはオレアートなどを網羅する。非金属[B1]または[B2]の好適な供給源は、例えばトリス(トリメチルシリル)ホスフィンを含む。これらの構成成分[A]および[B]のモル比は、多岐に亘り得るが、しかしながら、約5:1~1:5、好ましくは約2:1~1:2の範囲における、および具体的には約1:1のモル比を適用するのが好ましい。
【0047】
反応は、大抵溶媒、例えばオレイルアミンなどの高沸点アミンの存在において生じる。コアを形成するための構成成分が一旦接触すると、それらは約150~約250℃の温度で、還流下で維持される。続いて、シェルを形成するために指定された残りの構成成分が導入され、および温度が段階的に350℃まで、好ましくは200~320℃までに上昇される。完全な反応は5時間までを要する。
【0048】
一旦反応が完了すると、中間体半導体材料[AB]-単一のコアからなる、または、コア-シェル(単数または複数)構造を示すのいずれか-は、洗浄、および極性および非極性溶媒を使用する遠心分離によって精製される。続いて、ナノ結晶は有機溶媒(例として、トルエン)中で溶解され、または少なくとも分散され、および上記に詳細に定義されたとおりの金属ホスホナートおよび/またはその誘導体の溶液を用いて処理される。
【0049】
金属ホスホナートおよび/またはその誘導体は、QDおよび配位子の重量である試料の総固体含量に基づき、約2~約98wt.%、より好ましくは約3~約50wt.%、およびさらにより好ましくは約5~約25wt.%の量における中間体化合物[A1B1]または[A1B1]/[A2B2]の表面上に堆積され、それは配位子のモル質量に依存してもよい。
新規の材料を生成するための重大なステップは、青色光を使用する照明である。好ましいピーク光波長は、約300~約650nm、および具体的に約365~約470nmの範囲に及ぶ。別の好ましい態様において、光強度は、約0.025~約1Wcm-2、より好ましくは約0.05~約0.5Wcm-2の範囲に及ぶ。
【0050】
好ましい態様
本発明の好ましい態様は、式(I)、(II)、(III)、(IV)および/または(V)に従う金属ホスホナートであり、好ましくは該少なくとも1の金属ホスホナートは、式(I)および/または(II)に従う。
【化21】
【化22】
【化23】
【0051】
【0052】
式中、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびアルキルアリールからなる群から選択され、および式中、Rは、少なくとも2個の、および、20個を超えない炭素原子を含み、および式中、Xは、ヒドロキシル、エステルおよびエーテルからなる群から選択され;および式中、金属カチオンは、Znである。
【0053】
本発明のさらに好ましい態様において、金属ホスホナートに使用される金属カチオンは、Znであり、および半導体ナノサイズ発光材料は、コア[A1B1]および少なくとも1のシェル[A2B2]を含み、ここで
[A1]は、インジウムを示し;
[B1]は、蛍光体を示し;
[A2]は、亜鉛を示し;および
[B2]はセレニウムを示す。
【0054】
マトリックス組成物
本発明の別の目的は、上記に説明されるとおりの少なくとも1の半導体ナノサイズ発光材料および少なくとも1の追加的な材料を含む組成物を指し、好ましくは追加的な材料は、有機発光材料、無機発光材料、電荷輸送材料、散乱粒子、およびマトリックス材料から選択され、好ましくはマトリックス材料は光透過性ポリマーである、前記組成物を指す。好ましくは、マトリックス材料は、光透過性ポリマーである。
本発明によると、光学デバイスに好適な多種多様の公知のマトリックス材料が、好ましくは使用され得る。本発明による好ましい態様において、使用されるマトリックス材料は、透過性である。
【0055】
本発明によると、用語「透過性」は、光学媒体において使用される厚さで、かつ、光学媒体の操作の間に使用される波長または波長の範囲で、少なくともほぼ60%の入射光伝達を意味する。好ましくは、それは、70%を超え、より好ましくは、75%を超え、最も好ましくは、それは、80%を超える。
本発明の好ましい態様において、該マトリックス材料として、例えば、WO 2016/134820Aに記載される、任意の型の公知の透過性マトリックス材料が使用され得る。
本発明のいくつかの態様において、透過性マトリックス材料は、透過性ポリマーであり得る。
本発明による用語「ポリマー」は、繰り返し単位を有し、かつ、重量平均分子量(Mw)1000以上を有する材料を意味する。分子量Mwは、内部ポリスチレン標準に対するGPC(=ゲル浸透クロマトグラフィー)の手法によって決定される。
【0056】
本発明のいくつかの態様において、透過性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、70℃以上および250℃以下である。
Tgは、http://pslc.ws/macrog/dsc.htm、Rickey J Seyler、Assignment of the Glass Transition、ASTM刊行物コード番号(PCN)04-012490-50に記載されるように、示差走査熱量において観察される熱容量における変化に基づいて測定される。
例えば、透過性マトリックス材料のための透過性ポリマーとして、ポリ(メタ)アクリラート、エポキシド、ポリウレタン、ポリシロキサンが、好ましくは使用され得る。
本発明の好ましい態様において、透過性マトリックス材料としてのポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1,000~300,000の範囲においてである。より好ましくは、それは、10,000~250,000である。
【0057】
溶媒配合物
本発明の別の目的は、1以上の半導体ナノサイズ材料または上記に説明されるとおりの組成物および少なくとも1の 溶媒を含む配合物に及ぶ。これらの種類の配合物は、材料が特定の表面上を被覆するために指定される場合、興味深い。
好適な溶媒は、精製水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、およびエチレングリコールモノブチルエーテルなどの、エチレングリコールモノアルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、およびジエチレングリコールジブチルエーテルなどの、ジエチレングリコールジアルキルエーテル;メチルセロソルブアセタートおよびエチルセロソルブアセタートなどの、エチレングリコールアルキルエーテルアセタート;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート、およびプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセタートなどの、プロピレングリコールアルキルエーテルアセタート;メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、およびシクロヘキサノンなどの、ケトン;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、およびグリセリンなどの、アルコール;エチル3-エトキシプロピオナート、メチル3-メトキシプロピオナートおよびエチルラクタートなどの、エステル;およびγ-ブチロラクトンなどの環状エステル(aster);クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの、塩化炭化水素からなる群から選択され得る。
【0058】
また、芳香族、ハロゲン化および脂肪族炭化水素溶媒からなる群の1以上の材から選択される溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、エーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタンおよびヘプタンからなる群の1以上の材から選択されるものがより好ましい。
それらの溶媒は、単独または2以上の組み合わせにおいて使用され、およびその量は被覆方法および被覆の厚さに依存する。
より好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(これ以降「PGMEA」)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセタート、精製水またはアルコールなどの、プロピレングリコールアルキルエーテルアセタートが使用され得る。さらにより好ましくは、精製水が使用され得る。
配合物中の溶媒の量は、さらなる処理によって自由に制御され得る。例えば、配合物がスプレー被覆されるよう指定されている場合、それは90wt.%以上の量において溶媒を含有し得る。さらに、大きな基板を被覆することにおいてしばしば採用されるスリット被覆方法が実行される場合、溶媒の含量は、通常60wt.%以上または70wt.%以上である。
【0059】
デバイス
本発明はまた、本発明の半導体ナノサイズ発光材料の、例として、電子デバイス、光学デバイスにおける、または、生医学デバイスにおける使用にも向けられている。本発明のいくつかの態様において、光学デバイスは、液晶ディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)、ディスプレイのためのバックライトユニット、発光ダイオード(LED)、微小電気機械システム(以降、「MEMS」)、エレクトロウェッティングディスプレイ、または電気泳動ディスプレイ、点灯装置、および/または太陽電池であり得る。
本発明はまた、半導体ナノサイズ発光材料、組成物または配合物(それらの各々は上記に説明されるとおり)を含む、光学媒体にも及ぶ。
最終的に、本発明はまた、上記に説明されるとおりの該光学媒体を含む光学デバイスをも指す。
【0060】
さらなる態様
態様1:半導体ナノサイズ発光材料であって、コア、任意に1以上のシェル層、およびコアまたはシェル層の最外表面上に被覆される配位子を含み、または、からなり、
配位子が、1以上の金属ホスホナートおよび/またはその誘導体であり、および
金属ホスホナートが、以下の式(I)、(II)、(III)、(IV)および/または(V)
【化26】
【化27】
【化28】
【0061】
【0062】
式中、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよびアルキルアリールからなる群から選択され、および式中、Rは、少なくとも2個の、および、20個を超えない炭素原子を含み、および
式中、Xは、ヒドロキシル、エステルおよびエーテルからなる群から選択される、
前記材料。
【0063】
態様2:金属ホスホナートが、以下の式(I)、(II)、(III)、(IV)および/または(V)による構造の1つに従い、および式中、Rが、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、エーテル、エステル、アミノ、チオ、シリル、スルホおよびハロゲンからなる群から選択される少なくとも1の官能基をさらに含む、態様1に記載の半導体ナノサイズ発光材料。
【0064】
態様3:金属ホスホナートに使用される金属カチオンが、以下:Mg、Ca、Ba、Cu、Fe、Znまたはそれらの混合物からなる群から選択される、態様1または2に記載の半導体ナノサイズ発光材料。
態様4:金属ホスホナートに使用される金属カチオンが、Mgおよび/またはZnである、態様1~3のいずれか1に記載の半導体ナノサイズ発光材料。
態様5:金属ホスホナートに使用される金属カチオンが、Znである、態様1~4のいずれか1に記載の半導体ナノサイズ発光材料。
【0065】
態様6:該半導体ナノサイズ発光材料が、コアおよび任意に1以上のシェル層を含み、または、からなり、
該コアが、式(VI)
[A1B1] (VI)
式中
[A1]は、亜鉛、カドミウム、インジウムからなる群から選択される金属またはそれらの混合物を示し;
[B1]は、硫黄、セレニウム、蛍光体からなる群から選択される非金属またはそれらの混合物を示す、
による1、2以上の化合物から形成される、態様1~5のいずれか1に記載の半導体ナノサイズ発光材料。
【0066】
態様7:[A1B1]が、CdS、CdSe、CdSeS、CdZnS、ZnS、ZnSe、ZnSeS、およびInPからなる群から選択される1、2以上の化合物を示す、態様6に記載の半導体ナノサイズ発光材料。
態様8:[A1]が、インジウムを示し;および
[B1]が、蛍光体を示す、
態様6に記載の半導体ナノサイズ発光材料。
【0067】
態様9:該半導体ナノサイズ発光材料の該シェルが、式(VII)
[A2B2] (VII)
式中
[A2]は、亜鉛、カドミウムからなる群から選択される金属またはそれらの混合物を示し;
[B2]は、硫黄、セレニウムからなる群から選択される非金属、またはそれらの混合物を示す、
による1、2以上の化合物から形成される、態様1~7のいずれか1に記載の半導体ナノサイズ発光材料。
【0068】
態様10:[A2B2]が、CdS、CdSe、CdSeS、CdZnS、ZnS、ZnSeおよびZnSeS、ZnSeSTeからなる群から選択される1、2以上の化合物を示す、態様9に記載の半導体ナノサイズ発光材料。
態様11:該半導体ナノサイズ発光材料が、コア[A1B1]のコアシェル構造および少なくとも1のシェル[A2B2]を含み、該コア/シェル構造[A1B1]/[A2B2]が、CdSeS/CdZnS、CdSeS,CdS/ZnS、CdSeS/CdS,ZnS CdSe/ZnS、InP/ZnS、InP/ZnSe、InP/ZnSe,ZnS、InP(Zn)/ZnSe、InP(Zn)/ZnSe,ZnS、InP(Zn)/ZnSe,ZnS,ZnTe、ZnSe/CdS、ZnSe/ZnSからなる群から選択される、または、それらの混合物である、態様10に記載の半導体ナノサイズ発光材料。
【0069】
態様12:コア、任意に1以上のシェル層、およびコアまたはシェル層の最外表面上に被覆される金属ホスホン酸および/またはその誘導体を含む、または、からなる、半導体ナノサイズ発光材料を製造するためのプロセスであって、以下のステップ:
(a)好適な溶媒中に任意に溶解されていてもよい、少なくとも1の金属[A1]および/または[A2]の少なくとも1の塩を提供する;
(b)少なくとも1の非金属[B1]および/または[B2]の少なくとも1の供給源を添加して、中間体化合物[A1B1]または[A1B1]/[A2B2]を得る;
(c)ステップ(b)からの該中間体化合物[A1B1]/[A2B2]を、任意に溶媒の存在において、それを金属ホスホナートおよび/またはその誘導体と接触させることによって被覆し、および任意に
(d)ステップ(c)の該被覆された中間体を、約300~約650nmのピーク光波長をもつ光を有する照明へ供与して、ナノサイズ材料の量子収率を増加させる、
を含む、または、からなる、前記プロセス。
態様13:照明が、約365~約470nmのピーク光波長および/または約0.025~約1Wcm-2の強度をもつ光を使用して実行される、態様12に記載のプロセス。
【0070】
態様14:コア、任意に1以上のシェル層、およびコアまたはシェル層の最外表面上に被覆される配位子を含む、または、からなる、半導体ナノサイズ発光材料であって、以下のステップ:
(a)好適な溶媒中に任意に溶解されていてもよい、少なくとも1の金属[A1]および/または[A2]の少なくとも1の塩を提供する;
(b)少なくとも1の非金属[B1]および/または[B2]の少なくとも1の供給源を添加して、中間体化合物[A1B1]/[A2B2]を得る;
(c)ステップ(b)からの該中間体化合物[A1B1]/[A2B2]を、任意に溶媒の存在において、それを金属ホスホナートおよび/またはその誘導体の供給源と接触させることによって被覆する、
ここで、金属ホスホナートが、以下の式(I)、(II)、(III)、(IV)および/または(V)
【0071】
【0072】
【化34】
【化35】
による構造の1つに従う;および任意に、
(d)ステップ(c)の該被覆された中間体を、約300~約650nmのピーク光波長をもつ光を有する照明へ供与し、ナノサイズ材料の量子収率を増加させる、
によって得られ得る、または、得られる、前記材料。
【0073】
態様15:態様1~11、14のいずれか1に記載の少なくとも1の半導体ナノサイズ発光材料、および少なくとも1の追加的なマトリックス材料を含む、組成物。
態様16:態様1~11、14のいずれか1に記載の1以上の半導体ナノサイズ発光材料または態様15に記載の組成物、および少なくとも1の溶媒を含む、配合物。
態様17:態様1~11、14のいずれか1に記載の半導体ナノサイズ発光材料、態様15に記載の組成物、または態様16に記載の配合物の、電子デバイス、光学デバイスにおける、または生医学デバイスにおける使用。
【0074】
態様18:態様1~11、14のいずれか1に記載の半導体ナノサイズ発光材料、または態様15に記載の組成物、または態様16に記載の配合物を含む、光学媒体。
態様19:態様18に記載の該光学媒体を含む、光学デバイス。
【0075】
例
いくつかの半導体を作製し、表面処理に供与する。続いて、それらを量子収率を測定するために照射する。
照明について、Philips Fortimoが組立てた照明設備3000lm 34W 4000KLEDダウンライトモジュール(蛍光体ディスクを除去した)。1.9nm厚さのPerspex pane(登録商標)を、その頂部に設置する。LEDおよびPerspex pane(登録商標)の間の距離は、31.2mmである。20mlの密封試料バイアルを、Perspex pane(登録商標)上、プラスチックシリンダー(直径68mm、高さ100mm)の内側に設置する。シリンダーの内側に密封試料バイアルを備える光増強システムを使用する。
QDの溶液を有するバイアルをPerspex上に設置し、下から光を当てる。任意に、溶液を広域の加熱および溶媒の蒸発から防ぐために、バイアルを水浴中に設置する。照明のピーク波長は、455nmである。450nmでの照度を、Ophir Nova II(登録商標)およびPD300-UV光検出器によって測定し、測定したものは、300mW/cm2である。
【0076】
例1
InP/ZnSeの合成
112mgのInI3、および150mg ZnCl2を、2.5mL オレイルアミン中に溶解する。180℃で、0.22mLのヘキサエチルリン酸トリアミド(DEA)3P)を溶液に添加し、この温度で20min間維持する。20min後、0.55mLのアニオンシェル前駆体(2MTOP:Se)を溶液中に緩やかに添加する。次いで、溶液を段階的に加熱し、200℃および320℃の間の温度で、カチオン(2.4mLの0.4M オレイルアミン中Zn-アセタート)およびアニオン(0.38mLの2MTOP:Se)シェル前駆体の連続的な注入が続く。
【0077】
例2
Zn-ODPA前駆体の合成および精製
33mg(1.5mmol)の亜鉛アセタート無水和物(Zn(Ac)2)(99.99%純度、CAS# 557-34-6、383317-100G Sigma-Aldrich)、1.25gr(3.75mmol)のオクタデシルホスホン酸(ODPA)(~90%純度、PCI 、Lot# 350001N11-B、250gr)および3gの1-オクタデカン(ODE)(90%純度、CAS# 112-88-9、O806-1L Sigma-Aldrich)を50mlのフラスコ中へ添加する。
継続的に攪拌された混合物を、2時間、130℃で脱気する。次いで、アルゴンを挿入し、温度を330℃まで増加させる。溶液は、~280℃で透明になる。さらに、溶液を、継続的に攪拌し、30分間、330℃で加熱する。
その後、溶液、すなわちODE中Zn-ODPAを、室温へ冷却する。ODEからの、および、未反応亜鉛アセタートからの粗Zn-ODPA前駆体を清浄するために、酢酸エチルを使用する。清浄したZn-ODPAおよび純粋なODPAの試料を、マススペクトル分析、熱重量分析およびP-NMRを使用して分析する。
【0078】
表1は、精製したZn-ODPA試料の含量を示す。
【表1】
【0079】
例3
Zn-ODPA光蒸着+特徴付けの方法
例1からの2mlの試料を、遠心分離および溶媒/貧溶媒としてのトルエンおよびエタノールを使用して、過剰な配位子から精製する。96mgの沈殿物を1mlのヘキサンまたはトルエン(無水)中で溶解した。この溶液を、48時間、青色照明下に設置する。
48時間後、試料の量子収率を、Hamamatsu絶対量子収率分光装置(モデル:Quantaurus C11347)を使用して測定する。
【0080】
例4
60mgの清浄および乾燥したZn-ODPA配位子を、4mlの無水トルエン中に溶解する。超音波処理(10min)および温水浴(~70℃)を適用して、Zn-ODPAのトルエン中の溶解を促進する。比較例1からのQD(濃度6.5mg/ml)をZn-ODPAと合わせ、72時間攪拌する。
この溶液を、48時間、青色照明下に設置する。48時間後、試料の量子収率を、Hamamatsu絶対量子収率分光装置(モデル:Quantaurus C11347)を使用して測定する。
【0081】
実験結果
表2は、Zn-ODPA.を用いて処理した試料および用いずに処理した試料についての量子収率(QY)測定概要を示す。
表2
【表2】
【0082】
それは、Zn-ODPを用いて処理したQDのQYが、処理していないQDのQYよりも35%高いことを示している。