(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】弾性膜、および基板保持装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/30 20120101AFI20230906BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
B24B37/30 C
H01L21/304 622J
H01L21/304 621D
(21)【出願番号】P 2019156988
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】程 誠
(72)【発明者】
【氏名】富樫 真吾
(72)【発明者】
【氏名】廣川 一人
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-159392(JP,A)
【文献】特表2002-530876(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073318(WO,A1)
【文献】特開2005-079465(JP,A)
【文献】特開2019-093466(JP,A)
【文献】米国特許第08475231(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/30
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板保持装置に用いられる弾性膜であって、
基板に当接して該基板を研磨パッドに押圧する当接部と、
前記当接部の周端部から延びるエッジ周壁と、を備え、
前記エッジ周壁は、その上部に、前記基板保持装置のヘッド本体と、該エッジ周壁を前記ヘッド本体に固定するためのエッジ取付部材との間に挟まれるエッジ周壁リップ部を有しており、
前記エッジ周壁リップ部は、前記エッジ取付部材に形成された第1凹部および/または前記ヘッド本体に形成された第2凹部に嵌合される複数のエッジ周壁突起を有しており、
前記エッジ周壁突起は、前記エッジ周壁の周方向に沿って等間隔に配置されていることを特徴とする弾性膜。
【請求項2】
前記エッジ周壁突起は、前記エッジ周壁リップ部の上面または下面から突出する縦エッジ突起であることを特徴とする請求項1に記載の弾性膜。
【請求項3】
前記エッジ周壁突起は、前記エッジ周壁リップ部の先端から前記エッジ周壁の径方向に突出する横エッジ突起であることを特徴とする請求項1に記載の弾性膜。
【請求項4】
前記エッジ周壁突起のいくつかは、前記エッジ周壁リップ部の上面または下面から突出する縦エッジ突起であり、
前記エッジ周壁突起の残りは、前記エッジ周壁リップ部の先端から前記エッジ周壁の径方向に突出する横エッジ突起であることを特徴とする請求項1に記載の弾性膜。
【請求項5】
前記エッジ周壁の径方向内側に配置され、前記当接部から延びる少なくとも1つの内部周壁をさらに備え、
前記内部周壁は、その上部に、前記ヘッド本体と、該内部周壁を前記ヘッド本体に固定するための内部取付部材との間に挟まれる内部周壁リップ部を有しており、
前記内部周壁リップ部は、前記エッジ取付部材に形成された第3凹部および/または前記ヘッド本体に形成された第4凹部に嵌合される複数の内部周壁突起を有しており、
前記内部周壁突起は、前記内部周壁の周方向に沿って等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の弾性膜。
【請求項6】
前記内部周壁突起は、前記内部周壁リップ部の上面または下面から突出する縦内部突起であることを特徴とする請求項5に記載の弾性膜。
【請求項7】
前記内部周壁突起は、前記内部周壁リップ部の先端から前記内部周壁の径方向に突出する横内部突起であることを特徴とする請求項5に記載の弾性膜。
【請求項8】
前記内部周壁突起のいくつかは、前記内部周壁リップ部の上面または下面から突出する縦内部突起であり、
前記内部周壁突起の残りは、前記内部周壁リップ部の先端から前記内部周壁の径方向に突出する横内部突起であることを特徴とする請求項5に記載の弾性膜。
【請求項9】
基板を押圧するための少なくとも1つの圧力室を形成する弾性膜と、
前記弾性膜が固定されるヘッド本体と、
前記弾性膜を前記ヘッド本体に固定する少なくとも1つの取付部材と、を備え、
前記弾性膜は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の弾性膜であることを特徴とする基板保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置の基板保持装置に用いられる弾性膜に関する。さらに、本発明は、弾性膜を備えた基板保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CMPを行うための研磨装置は、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、ウェハなどの基板を保持するための基板保持装置とを備えている。基板保持装置は、トップリングまたは研磨ヘッドと称されることもある。このような研磨装置を用いて基板の研磨を行う場合には、基板保持装置により基板を保持しつつ、この基板を研磨パッドの研磨面に対して所定の圧力で押圧する。このとき、研磨テーブルと基板保持装置とを相対運動させることにより基板が研磨面に摺接し、基板の表面が研磨される。
【0003】
研磨中の基板と研磨パッドの研磨面との間の相対的な押圧力が基板の全面に亘って均一でない場合には、基板の各部分に与えられる押圧力に応じて研磨不足や過研磨が生じてしまう。そこで、基板に対する押圧力を均一化するために、基板保持装置の下部に柔軟な弾性膜(メンブレン)から形成される圧力室を設け、この圧力室に空気などの流体を供給することで弾性膜を介して流体圧により基板を研磨パッドの研磨面に押圧することが行われている。
【0004】
このような基板保持装置は、例えば、基板を研磨パッドの研磨面に押圧するためのヘッド本体と、ヘッド本体に取り付けられる上記弾性膜と、該弾性膜をヘッド本体に固定するための取付部材と、弾性膜を介してヘッド本体に保持された基板の周囲を取り囲むリテーナリングと、を備える。弾性膜が取付部材を介してヘッド本体に固定されると、該弾性膜によって少なくとも1つの圧力室が形成される。このような弾性膜は消耗品であり、定期的なメンテナンスおよび/または交換が必要とされる。そのため、弾性膜は、取付部材を介してヘッド本体に着脱可能に構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、弾性膜は、一般的に、柔軟性だけでなく高い粘着性も有するゴムなどの材料から形成されている。そのため、作業者が弾性膜を取付部材を介してヘッド本体に固定する際に、該弾性膜の一部がヘッド本体および/または取付部材に密着して、弾性膜を適切にヘッド本体に固定することが困難な場合がある。より具体的には、弾性膜の一部分(または、複数部分)がヘッド本体および/または取付部材に密着すると、この密着部分が弾性膜の他の部分を引っ張ってしまい、該弾性膜の周方向における変形具合にばらつきが生じるおそれがある。言い換えれば、ヘッド本体に取り付けられた弾性膜がその周方向に不均一に歪んでしまうおそれがある。
【0007】
基板の研磨を行う際には、弾性膜によって形成された圧力室に所定の圧力を有する流体が供給される。そのため、弾性膜の周方向における変形具合にばらつきが生じていると、弾性膜がその周方向に均一に膨張せず、その結果、基板の周方向における研磨レートの均一性が悪化するおそれがある。
【0008】
上記不具合を防止するために、弾性膜をヘッド本体に固定する作業者が該弾性膜の周方向における変形具合のばらつきを解消しようとすると、この作業者の負担と労力が増大し、さらに、弾性膜をヘッド本体に固定するために長時間を要してしまう。
【0009】
そこで、本発明は、弾性膜の周方向における変形具合のばらつきを抑えつつ、基板保持装置のヘッド本体に容易に取り付けることが可能な弾性膜を提供することを目的とする。また、本発明は、このような弾性膜を備えた基板保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、基板保持装置に用いられる弾性膜であって、基板に当接して該基板を研磨パッドに押圧する当接部と、前記当接部の周端部から延びるエッジ周壁と、を備え、前記エッジ周壁は、その上部に、前記基板保持装置のヘッド本体と、該エッジ周壁を前記ヘッド本体に固定するためのエッジ取付部材との間に挟まれるエッジ周壁リップ部を有しており、前記エッジ周壁リップ部は、前記エッジ取付部材に形成された第1凹部および/または前記ヘッド本体に形成された第2凹部に嵌合される複数のエッジ周壁突起を有しており、前記エッジ周壁突起は、前記エッジ周壁の周方向に沿って等間隔に配置されていることを特徴とする弾性膜が提供される。
【0011】
一態様では、前記エッジ周壁突起は、前記エッジ周壁リップ部の上面または下面から突出する縦エッジ突起である。
一態様では、前記エッジ周壁突起は、前記エッジ周壁リップ部の先端から前記エッジ周壁の径方向に突出する横エッジ突起である。
一態様では、前記エッジ周壁突起のいくつかは、前記エッジ周壁リップ部の上面または下面から突出する縦エッジ突起であり、前記エッジ周壁突起の残りは、前記エッジ周壁リップ部の先端から前記エッジ周壁の径方向に突出する横エッジ突起である。
【0012】
一態様では、前記弾性膜は、前記エッジ周壁の径方向内側に配置され、前記当接部から延びる少なくとも1つの内部周壁をさらに備え、前記内部周壁は、その上部に、前記ヘッド本体と、該内部周壁を前記ヘッド本体に固定するための内部取付部材との間に挟まれる内部周壁リップ部を有しており、前記内部周壁リップ部は、前記エッジ取付部材に形成された第3凹部および/または前記ヘッド本体に形成された第4凹部に嵌合される複数の内部周壁突起を有しており、前記内部周壁突起は、前記内部周壁の周方向に沿って等間隔に配置されている。
一態様では、前記内部周壁突起は、前記内部周壁リップ部の上面または下面から突出する縦内部突起である。
一態様では、前記内部周壁突起は、前記内部周壁リップ部の先端から前記内部周壁の径方向に突出する横内部突起である。
一態様では、前記内部周壁突起のいくつかは、前記内部周壁リップ部の上面または下面から突出する縦内部突起であり、前記内部周壁突起の残りは、前記内部周壁リップ部の先端から前記内部周壁の径方向に突出する横内部突起である。
【0013】
一態様では、基板を押圧するための少なくとも1つの圧力室を形成する弾性膜と、前記弾性膜が固定されるヘッド本体と、前記弾性膜を前記ヘッド本体に固定する少なくとも1つの取付部材と、を備え、前記弾性膜は、上記弾性膜であることを特徴とする基板保持装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エッジ周壁の周方向に沿って等間隔に配置された複数のエッジ周壁突起が第1凹部および/または第2凹部に嵌め込まれた状態で、弾性膜がヘッド本体に固定される。したがって、弾性膜の周方向における変形を最小限に抑制しながら、該弾性膜をヘッド本体に固定することができる。さらに、弾性膜を取付部材を介してヘッド本体に固定する際に、複数のエッジ周壁突起は、ヘッド本体および/またはエッジ取付部材に対するガイドして機能する。したがって、弾性膜をヘッド本体に容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る研磨装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る基板保持装置の概略断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す弾性膜の一部を示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す第2取付リングの近傍の拡大断面図である。
【
図6】
図6は、他の実施形態に係る弾性膜のエッジ周壁の近傍の拡大断面図である。
【
図8】
図8は、さらに他の実施形態に係る弾性膜のエッジ周壁の近傍の拡大断面図である。
【
図9】
図9は、さらに他の実施形態に係る弾性膜のエッジ周壁を拡大して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る研磨装置を示す図である。
図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド19を支持する研磨テーブル18と、基板の一例としてのウェハWを保持して研磨テーブル18上の研磨パッド19に押圧する基板保持装置1を備えている、以下の説明では、基板保持装置1を「研磨ヘッド1」と称する。
【0017】
研磨テーブル18は、テーブル軸18aを介してその下方に配置されるテーブルモータ29に連結されており、そのテーブル軸18a周りに回転可能になっている。研磨パッド19は研磨テーブル18の上面に貼付されており、研磨パッド19の表面19aがウェハWを研磨する研磨面を構成している。研磨テーブル18の上方には研磨液供給ノズル25が設置されており、この研磨液供給ノズル25によって研磨テーブル18上の研磨パッド19上に研磨液Qが供給されるようになっている。
【0018】
研磨ヘッド1は、ウェハWを研磨面19aに対して押圧するヘッド本体2と、ウェハWを保持してウェハWが研磨ヘッド1から飛び出さないようにするリテーナリング3とを備えている。研磨ヘッド1は、ヘッドシャフト27に接続されており、このヘッドシャフト27は、上下動機構81によりヘッドアーム64に対して上下動するようになっている。このヘッドシャフト27の上下動により、ヘッドアーム64に対して研磨ヘッド1の全体を昇降させ位置決めするようになっている。ヘッドシャフト27の上端にはロータリージョイント82が取り付けられている。
【0019】
ヘッドシャフト27および研磨ヘッド1を上下動させる上下動機構81は、軸受83を介してヘッドシャフト27を回転可能に支持するブリッジ84と、ブリッジ84に取り付けられたボールねじ88と、支柱86により支持された支持台85と、支持台85上に設けられたサーボモータ90とを備えている。サーボモータ90を支持する支持台85は、支柱86を介してヘッドアーム64に固定されている。
【0020】
ボールねじ88は、サーボモータ90に連結されたねじ軸88aと、このねじ軸88aが螺合するナット88bとを備えている。ヘッドシャフト27は、ブリッジ84と一体となって上下動するようになっている。したがって、サーボモータ90を駆動すると、ボールねじ88を介してブリッジ84が上下動し、これによりヘッドシャフト27および研磨ヘッド1が上下動する。
【0021】
ヘッドシャフト27はキー(図示しない)を介して回転筒66に連結されている。この回転筒66はその外周部にタイミングプーリ67を備えている。ヘッドアーム64にはヘッドモータ68が固定されており、上記タイミングプーリ67は、タイミングベルト69を介してヘッドモータ68に設けられたタイミングプーリ70に接続されている。したがって、ヘッドモータ68を回転駆動することによってタイミングプーリ70、タイミングベルト69、およびタイミングプーリ67を介して回転筒66およびヘッドシャフト27が一体に回転し、研磨ヘッド1が回転する。ヘッドアーム64は、フレーム(図示しない)に回転可能に支持されたアームシャフト80によって支持されている。研磨装置は、ヘッドモータ68、サーボモータ90をはじめとする装置内の各機器を制御する制御装置40を備えている。
【0022】
研磨ヘッド1は、その下面にウェハWを保持できるように構成されている。ヘッドアーム64はアームシャフト80を中心として旋回可能に構成されており、下面にウェハWを保持した研磨ヘッド1は、ヘッドアーム64の旋回によりウェハWの受取位置から研磨テーブル18の上方位置に移動される。
【0023】
ウェハWの研磨は次のようにして行われる。研磨ヘッド1および研磨テーブル18をそれぞれ回転させ、研磨テーブル18の上方に設けられた研磨液供給ノズル25から研磨パッド19上に研磨液Qを供給する。この状態で、研磨ヘッド1を所定の位置(所定の高さ)まで下降させ、この所定の位置でウェハWを研磨パッド19の研磨面19aに押圧する。ウェハWは研磨パッド19の研磨面19aに摺接され、これによりウェハWの表面が研磨される。
【0024】
次に、
図2を参照して、研磨ヘッド1の構成の一例について説明する。
図2は、一実施形態に係る研磨ヘッド(基板保持装置)1の概略断面図である。
図2に示すように、研磨ヘッド1は、ウェハWを研磨面19a(
図1参照)に対して押圧するヘッド本体2と、ウェハWを囲むように配置されたリテーナリング3とを備えている。リテーナリング3は、ヘッド本体2に連結されており、ヘッド本体2およびリテーナリング3は、ヘッドシャフト27の回転により一体に回転するように構成される。さらに、ヘッド本体2およびリテーナリング3は、上下動機構81(
図1参照)を動作させることにより、ヘッドシャフト27と一体に上下動するように構成されている。ヘッド本体2は、例えば、エンジニアリングプラスティック(例えば、PEEK)などの樹脂により形成されている。
【0025】
リテーナリング3は、ヘッド本体2に固定された弾性膜10、および該弾性膜10を介してヘッド本体2に保持されたウェハWを囲むように配置されている。このリテーナリング3は、ウェハWの研磨中にウェハWが研磨ヘッド1から飛び出さないようにウェハWを保持している。
【0026】
ヘッド本体2の下面には、ウェハWの裏面(すなわち、研磨すべき表面とは反対側の面)に当接する弾性膜10が固定されている。弾性膜10の下面が基板保持面10aを構成する。弾性膜10は複数の(
図2では、4つの)環状の周壁30,31,32,33を有しており、これら周壁30~33は、同心状に配置されている。
【0027】
本実施形態では、研磨ヘッド1は、弾性膜10をヘッド本体2に固定する2つの取付部材45,47を備えている。2つの取付部材45,47は、それぞれ、略環状の形状を有する取付リングであり、以下の説明では、取付部材45を「第1取付リング45」と称することがあり、取付部材47を「第2取付リング47」と称することがある。
【0028】
周壁30~33の上端は、2つの取付リング45,47を介してヘッド本体2の下面に固定される。より具体的には、第1取付リング45によって、周壁30,31の上端がヘッド本体2の下面に固定され、第2取付リング47によって、周壁32,33の上端がヘッド本体2の下面に固定される。これら取付リング45,47は、それぞれ、ねじなどの締結具(図示せず)によってヘッド本体2に着脱可能に固定されている。したがって、締結具を解除すると、取付リング45,47がヘッド本体2から離れ、これによって弾性膜10をヘッド本体2から取り外すことができる。
【0029】
周壁30~33により、弾性膜10とヘッド本体2との間に4つの圧力室、すなわち、中央に位置する円形状の中央圧力室16a、最外周に位置する環状のエッジ圧力室16d、および中央圧力室16aとエッジ圧力室16dとの間に位置する中間圧力室16bおよび16cが形成されている。
【0030】
これらの圧力室16a~16dはロータリージョイント82を経由して圧力調整装置65に接続されており、圧力調整装置65から各圧力室16a~16dにそれぞれ延びる流体ライン73を通って流体(例えば、空気)が供給されるようになっている。圧力調整装置65は、制御装置40に接続されており、これら4つの圧力室16a~16d内の圧力を独立に調整できるようになっている。
【0031】
さらに、圧力調整装置65は、圧力室16a~16d内に負圧を形成することも可能となっている。このように、研磨ヘッド1においては、ヘッド本体2と弾性膜10との間に形成される各圧力室16a~16dに供給する流体の圧力を調整することにより、ウェハWに加えられる押圧力をウェハWの領域毎に調整できる。
【0032】
弾性膜10は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度および耐久性に優れた柔軟なゴム材によって形成されている。このような弾性膜10は、柔軟性だけでなく高い粘着性も有する。各圧力室16a~16dは大気開放機構(図示しない)にも接続されており、圧力室16a~16dを大気開放することも可能である。
【0033】
次に、
図2に示す弾性膜10についてより詳細に説明する。
図3は、
図2に示す弾性膜10の一部を示す拡大断面図である。より具体的には、
図3は、弾性膜10の中心軸線CLを含む鉛直面で分割された弾性膜10の半分の概略断面を示している。
図4は、
図2に示す第2取付リング47の近傍(すなわち、後述するエッジ周壁近傍)の拡大断面図である。
図5は、
図2のA-A線断面図である。
【0034】
図3に示す弾性膜10は、ウェハWの裏面に接触する円形の当接部11と、該当接部11に接続される4つの環状周壁30~33を有している。当接部11はウェハWの裏面に接触し、ウェハWを研磨パッド19に対して押し付ける。すなわち、当接部11の下面が上記基板保持面10aとして機能する。環状周壁30~33は、当接部11の上面から上方に延びる。
【0035】
周壁33は、最も外側の周壁であり、当接部11の周端部から上方に延びる。本明細書では、周壁33を「エッジ周壁33」と称する。さらに、本明細書では、エッジ周壁33の径方向内側に配置される周壁を内部周壁と称する。
図3に示す例では、3つの周壁30,31,32が内部周壁として構成されている。以下の説明では、周壁30を「第1内部周壁30」と称することがあり、周壁31を「第2内部周壁31」と称することがあり、周壁32を「第3内部周壁32」と称することがある。なお、内部周壁の数は図示した例に限定されない。例えば、弾性膜10は、エッジ周壁33と1つの内部周壁を有していてもよく、エッジ周壁33と2つ以上の内部周壁を有していてもよい。あるいは、弾性膜10は、内部周壁を有さずに、エッジ周壁33のみを有していてもよい。
【0036】
エッジ周壁33は、当接部11から延びるエッジ周壁本体33aと、該エッジ周壁本体33aに接続されるエッジ周壁リップ部33bとを有する。
図3に示す例では、エッジ周壁本体33aは、当接部11から鉛直方向に上方に延びており、エッジ周壁リップ部33bは、エッジ周壁本体33aの先端から水平方向に延びている。エッジ周壁本体33aは、中心軸線CLまわりに環状に(すなわち、当接部11の全周にわたって)延びており、エッジ周壁リップ部33bはエッジ周壁本体33aの全周にわたってフランジ状に形成されている。エッジ周壁リップ部33bは、その下面にシール突起33cを有する。シール突起33cは、エッジ周壁リップ部33bの先端部の下面に形成されており、エッジ周壁リップ部33bの全周にわたって環状に形成されている。
【0037】
さらに、エッジ周壁33は、エッジ周壁本体33aとエッジ周壁リップ部33bとの接続点から延びるフラップ33dを有していてもよい。フラップ33dは、エッジ周壁33の全周にわたって延びている。フラップ33dは、その断面が逆U字状のフラップ本体145と、フラップ本体145の先端から水平に延びるフラップリップ部146を有する。フラップリップ部146は、ヘッド本体2とリテーナリング3との間に挟まれる(
図4参照)。
【0038】
図4に示すように、エッジ周壁リップ部33bは、第2取付リング47とヘッド本体2との間に挟まれるエッジ周壁33の一部分である。したがって、エッジ周壁リップ部33bは、フラップ33dを除いたエッジ周壁33の上部に形成されている。言い換えれば、エッジ周壁リップ部33bは、エッジ周壁本体33aの上端に接続される。エッジ周壁リップ部33bをヘッド本体2と第2取付リング47とで挟んだ状態で、第2取付リング47をねじなどの締結具(図示せず)によってヘッド本体2に固定すると、エッジ周壁33がヘッド本体2に固定される。したがって、第2取付リング47は、エッジ周壁33をヘッド本体10に固定するためのエッジ取付部材として機能する。
【0039】
第2取付リング47には、シール突起33cが嵌め込まれるシール凹部55が形成されている。シール凹部55は、シール突起33cに対応して、第2取付リング47の全周にわたって形成されている。エッジ周壁33をヘッド本体2に取り付ける際には、シール突起33cはシール凹部55に嵌め込まれる。この状態で、第2取付リング47を締結具(図示せず)を用いてヘッド本体2に取り付けると、シール突起33cがシール凹部55に押圧され、これにより、第2取付リング47とエッジ周壁リップ部33bと間の隙間がシールされる。
【0040】
第3内部周壁32も、当接部11から延びる第3内部周壁本体32aと、該第3内部周壁本体32aに接続される第3内部周壁リップ部32bとを有する。第3内部周壁本体32aも中心軸線CLまわりに環状に延びており、第3内部周壁リップ部32bは、第3内部周壁本体32aの全周にわたってフランジ状に形成されている。第3内部周壁本体32aは、当接部11から径方向内側に斜め上方に延びる傾斜部130と、傾斜部130に接続され、径方向内側に延びる水平部131と、水平部131に接続され、該水平部131から垂直に延びる垂直部132とから構成される。第3内部周壁リップ部32bは、第3内部周壁本体32aの垂直部132の先端に接続され、該先端から径方向外側に水平方向に延びる。第3内部周壁32も、第3内部周壁リップ部32bの全周わたって環状に形成されたシール突起32cを有する。
【0041】
第3内部周壁リップ部32bは、第2取付リング47とヘッド本体2との間に挟まれる第3内部周壁32の一部であり、第3内部周壁32の上部に形成されている。言い換えれば、第3内部周壁リップ部32bは、第3内部周壁本体32aの先端に接続される。第2取付リング47は、上述したエッジ周壁33に対してはエッジ取付部材として機能し、第3内部周壁32に対しては該第3内部周壁32をヘッド本体2に固定するための内部取付部材として機能する。そのため、第2取付リング47は、第3内部周壁32のシール突起32cに対応して形成されたシール凹部54も有している。シール凹部54は、第2取付リング47の全周にわたって形成されている。第2取付リング47を、図示しない締結具を用いてヘッド本体2に取り付けると、第3内部周壁リップ部32bは、ヘッド本体2と第2取付リング47との間に挟まれ、これにより第3内部周壁32がヘッド本体2に固定される。さらに、第3内部周壁32のシール突起32cがシール凹部54に押圧され、これにより、第2取付リング47と第3内部周壁リップ部32bと間の隙間がシールされる。
【0042】
図3に示すように、第1内部周壁30は、第3内部周壁32と同一の形状を有しており、第2内部周壁31は、第2内部周壁リップ部31bが径方向外側ではなく、径方向内側に延びている点のみで第3内部周壁32の形状と異なる。具体的には、第1内部周壁30は、当接部11から上方に延びる第1内部周壁本体30aと、該第1内部周壁本体30aに接続される第1内部周壁リップ部30bとを有し、第2内部周壁31は、当接部11から上方に延びる第2内部周壁本体31aと、該第2内部周壁本体31aに接続される第2内部周壁リップ部31bとを有する。第1内部周壁本体30aおよび第2内部周壁本体31aは、中心軸線CLまわりに環状に延びている。第1内部周壁リップ部30bは、第1内部周壁本体30aの全周にわたってフランジ状に形成され、第2内部周壁リップ部31bは、第2内部周壁本体31aの全周にわたってフランジ状に形成されている。
【0043】
第1内部周壁本体30aは、当接部11から径方向内側に斜め上方に延びる傾斜部110と、傾斜部110に接続され、径方向内側に延びる水平部111と、水平部111に接続され、該水平部111から垂直に延びる垂直部112とから構成される。第2内部周壁本体31aは、当接部11から径方向内側に斜め上方に延びる傾斜部120と、傾斜部120に接続され、径方向内側に延びる水平部121と、水平部121に接続され、該水平部121から垂直に延びる垂直部122とから構成される。
【0044】
さらに、第1内部周壁30は、第1内部周壁リップ部30bの全周わたって環状に形成されたシール突起30cを有し、第2内部周壁31は、第2内部周壁リップ部31bの全周わたって環状に形成されたシール突起31cを有する。
【0045】
第1取付リング45は、第1内部周壁30および第2内部周壁31をヘッド本体2に取り付ける内部取付部材として機能する(
図2参照)。第1取付リング45も、第1内部周壁30のシール突起30c、および第2内部周壁31のシール突起31cがそれぞれ嵌合される2つのシール凹部を有する。これらシール凹部も第1取付リング45の全周にわたって形成されている。第1取付リング45を、図示しない締結具を用いてヘッド本体2に固定すると、第1内部周壁リップ部30bおよび第2内部周壁リップ部31bがヘッド本体2と第1取付リング45との間に挟まれ、これにより第1内部周壁30および第2内部周壁31がヘッド本体2に固定される。さらに、第1内部周壁30のシール突起30cが一方のシール凹部に押圧され、同時に、第2内部周壁31のシール突起31cが他方のシール凹部に押圧される。これにより、第1取付リング45と第1内部周壁リップ部30bと間の隙間がシールされ、同時に、第1取付リング45と第2内部周壁リップ部31bとの間の隙間がシールされる。
【0046】
上記したように、弾性膜10は、柔軟性だけなく高い粘着性も有している。そのため、弾性膜10を取付リング45,47を介してヘッド本体2に固定する際に、弾性膜10の周壁30~33の一部分(または、複数部分)がヘッド本体2および/または取付リング45,47に密着してしまうことがある。この場合、弾性膜10の密着部分に他の部分が引っ張られ、弾性膜10の周方向における変形具合にばらつきが生じるおそれがある。特に、弾性膜10の最外周部に位置するエッジ周壁33がヘッド本体2および/または第2取付リング47に密着すると、弾性膜10の周方向の変形具合のばらつきが大きくなってしまう。
【0047】
そこで、本実施形態では、エッジ周壁33のエッジ周壁リップ部33bは、その先端(内周端)から径方向内側に突出する複数のエッジ周壁突起33eを有する。
図5に示すように、本実施形態に係るエッジ周壁リップ部33bは、エッジ周壁33の周方向に沿って等間隔に配置された6個のエッジ周壁突起33eを有する。各エッジ周壁突起33eは、
図5に示すような水平断面視で円弧形状を有しており、エッジ周壁リップ部33bの先端からエッジ周壁33の径方向内側にかつ水平に突出する。以下の説明では、エッジ周壁リップ部33bの径方向に突出するエッジ周壁突起33eを、「横エッジ突起33e」と称することがある。
【0048】
図4および
図5に示すように、第2取付リング47は、各エッジ突起33eに対応して形成された複数の(
図5では、6個の)凹部60を有している。これら凹部60は、横エッジ突起33eに対応する形状を有しており、第2取付リング47の周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0049】
弾性膜10を取付リング45,47を介してヘッド本体2に固定する際には、エッジ周壁33のエッジ周壁リップ部33bに設けられた横エッジ突起33eが第2取付リング47に形成された凹部60に嵌め込まれる。この状態で、第2取付リング47がねじなどの締結具(図示せず)によってヘッド本体2に固定され、これにより、エッジ周壁33がヘッド本体2に固定される。すなわち、エッジ周壁33の周方向に沿って配置された複数の横エッジ突起33eが第2取付リング47に形成された凹部60に嵌め込まれた状態で、エッジ周壁33が第2取付リング47を介してヘッド本体2に固定される。したがって、エッジ周壁33の周方向における変形を最小限に抑制しながら、該エッジ周壁33をヘッド本体2に固定することができる。
【0050】
さらに、弾性膜10を取付リング45,47を介してヘッド本体2に固定する際に、複数のエッジ周壁突起33eは、第2取付リング47に対するガイドして機能する。したがって、弾性膜10をヘッド本体2に容易に取り付けることができる。横エッジ突起33eを容易に凹部60に挿入するために、横エッジ突起33eは、その先端に向かって断面積が減少するテーパ形状を有しているのが好ましい。
【0051】
図4および
図5に示す例では、6個の横エッジ突起33eと、これら横エッジ突起33eにそれぞれ対応する6個の凹部60とが設けられているが、横エッジ突起33eの数および凹部60の数はこの例に限定されない。横エッジ突起33eの数および凹部60の数は、エッジ周壁33の周方向に等間隔で配置されている限り任意である。好ましくは、横エッジ突起33eの数および凹部60の数は2~8個の範囲にある。さらに、横エッジ突起33eは、
図4に示す鉛直断面視でテーパ形状を有し、
図5に示す水平断面視で円弧形状を有しているが、横エッジ突起33eの形状もこの例に限定されない。例えば、横エッジ突起33eは、鉛直断面視で直方形状または三角形状を有していてもよい。好ましくは、横エッジ突起33eは、中心軸線CLを対称軸とする回転対称にある(
図5参照)。
【0052】
図3および
図4に示すように、第3内部周壁32の第3内部周壁リップ部32bは、その先端(外周端)から内部周壁33の径方向外側にかつ水平に突出する複数の内部周壁突起32dを有していてもよい。以下の説明では、第3内部周壁32の径方向に突出する内部周壁突起32dを、「横内部突起32d」と称することがある。
【0053】
本実施形態に係る第3内部周壁リップ部32bは、第3内部周壁32の周方向に沿って等間隔に配置された複数の横内部突起32dを有する。横内部突起32dの数は、横エッジ突起33eと同様に、第3内部周壁32の周方向に等間隔で配置されている限り任意であり、好ましくは、2~8個の範囲にある。さらに、横内部突起32dの形状も、横エッジ突起33eと同様に任意である。横内部突起32dは、その先端に向かって断面積が減少するテーパ形状を有しているのが好ましい。好ましくは、横内部突起32dは、中心軸線CLを対称軸とする回転対称にある。
【0054】
第2取付リング47は、横内部突起32dに対応して形成された複数の凹部62を有する。弾性膜10を取付リング45,47を介してヘッド本体2に固定する際には、第3内部周壁32の周方向に沿って配置された複数の横内部突起32dが第2取付リング47に形成された凹部62に嵌め込まれ、この状態で、第3内部周壁32が第2取付リング47を介してヘッド本体2に固定される。
【0055】
弾性膜10がエッジ周壁リップ部33bの横エッジ突起33eに加えて、第3内部周壁リップ部32bの横内部突起32dを有することにより、より効果的に弾性膜10の周方向における変形具合のばらつきを抑制することができる。
【0056】
さらに、
図3の点線で示すように、第1内部周壁30の第1内部周壁リップ部30b、および第2内部周壁31の第2内部周壁リップ部31bも、その先端から径方向に突出する複数の横内部突起30d,31dを有していてもよい。第1内部周壁リップ部30bの横内部突起30dは、第1内部周壁リップ部30bの先端から径方向外側にかつ水平に突出し、第2内部周壁リップ部31bの横内部突起31dは、第2内部周壁リップ部31bの先端から径方向内側にかつ水平に突出する。第1内部周壁リップ部30bの横内部突起30dは、第3内部周壁リップ部32bの横内部突起32dと同様の構成を有する。第2内部周壁リップ部31bの横内部突起31dは、その突出方向が第3内部周壁リップ部32bの横内部突起32dと異なる点以外は、該横内部突起32dと同様の構成を有する。
【0057】
第1取付リング45は、第1内部周壁リップ部30bの横内部突起30dに対応して形成された複数の凹部、および第2内部周壁リップ部31bの横内部突起31dに対応して形成された複数の凹部を有する。弾性膜10を取付リング45,47を介してヘッド本体2に固定する際には、第1内部周壁30の周方向に沿って配置された複数の横内部突起30d、および第2内部周壁31の周方向に沿って配置された複数の横内部突起31dがそれぞれ第1取付リング45に形成された複数の凹部に嵌め込まれ、この状態で、第1内部周壁30および第2内部周壁31が第1取付リング45を介してヘッド本体2に固定される。
【0058】
このように、エッジ周壁リップ部33bだけでなく、第1内部周壁リップ部30b、第2内部周壁リップ部31b、および第3内部周壁リップ部32bのそれぞれが横内部突起30d,31d,32dを有していてもよい。一実施形態では、第1内部周壁リップ部30b、第2内部周壁リップ部31b、および第3内部周壁リップ部32bのうちのいずれか1つまたは2つが横内部突起を有していてもよい。このような構成により、より効果的に弾性膜10の周方向における変形具合のばらつきを抑制することができる。さらに、第1内部周壁リップ部30bの横内部突起30d、および第2内部周壁リップ部31bの横内部突起31dは第1取付リング45に対するガイドして機能するので、弾性膜10をより容易にヘッド本体2に固定することができる。
【0059】
図6は、他の実施形態に係る弾性膜10のエッジ周壁33の近傍の拡大断面図である。
図7は、
図6に示す弾性膜10の下面図である。
図7では、周壁30~33の各リップ部30b~33bが抽出して描かれている。特に説明しない構成は、上述した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0060】
図6および
図7に示すエッジ周壁33のエッジ周壁リップ部33bは、その下面から下方に突出する複数の(
図7では、6つの)エッジ突起33e’を有している。以下の説明では、エッジ周壁リップ部33bの下面から下方に突出するエッジ突起33e’を、「縦エッジ突起33e’」と称することがある。
【0061】
複数の縦エッジ突起33e’は、エッジ周壁33の径方向に等間隔で配置されている。第2取付リング47は、複数の縦エッジ突起33e’に対応して形成された複数の凹部60を有している。縦エッジ突起33e’の数および凹部60の数は、横エッジ突起33eと同様に、エッジ周壁33の周方向に等間隔で配置されている限り任意であり、好ましくは、2~8個の範囲にある。さらに、縦エッジ突起33e’の形状も、横エッジ突起33eと同様に任意である。好ましくは、縦エッジ突起33e’は、その先端に向かって断面積が減少するテーパ形状を有し(
図6参照)、水平断面視で円弧形状を有する(
図7参照)。さらに、複数の縦エッジ突起33e’は、中心軸線CLを対称軸とする回転対称にあるのが好ましい。
【0062】
本実施形態でも、エッジ周壁33の周方向に沿って配置された複数の縦エッジ突起33e’が第2取付リング47に形成された凹部60に嵌め込まれた状態で、エッジ周壁33が第2取付リング47を介してヘッド本体2に固定される。したがって、エッジ周壁33の周方向における変形を最小限に抑制しながら、該エッジ周壁33をヘッド本体2に固定することができる。さらに、弾性膜10を取付リング45,47を介してヘッド本体2に固定する際に、複数の縦エッジ突起33e’は、第2取付リング47に対するガイドして機能する。したがって、弾性膜10をヘッド本体2に容易に取り付けることができる。このように、エッジ周壁突起は、縦エッジ突起33e’のように、エッジ周壁リップ部33bの下面から下方に突出していてもよい。
【0063】
図6および
図7に示すように、第3内部周壁32の第3内部周壁リップ部32bは、その下面から下方に突出する複数の(
図7では、6つの)内部突起32d’を有していてもよい。以下の説明では、第3内部周壁リップ部32bの下面から下方に突出する内部突起32d’を、「縦内部突起32d’」と称することがある。
【0064】
複数の縦内部突起32d’は、第3内部周壁32の周方向に沿って等間隔で配置されている。第2取付リング47は、複数の縦内部突起32d’に対応して形成された複数の凹部62を有している。縦内部突起32d’の数および凹部62の数も、縦エッジ突起33e’と同様に、第3内部周壁32の周方向に等間隔で配置されている限り任意であり、好ましくは、2~8個の範囲にある。さらに、縦内部突起32d’の形状も、縦エッジ突起33e’と同様に任意である。好ましくは、縦内部突起32d’は、その先端に向かって断面積が減少するテーパ形状を有し(
図6参照)、水平断面視で円弧形状を有する(
図7参照)。さらに、複数の縦内部突起32d’は、中心軸線CLを対称軸とする回転対称にあるのが好ましい。
【0065】
図7の点線で示すように、第1内部周壁30の第1内部周壁リップ部30b、および第2内部周壁31の第2内部周壁リップ部31bも、その下面から下方に突出する複数の縦内部突起30d’,31d’を有していてもよい。第1内部周壁リップ部30bの縦内部突起30d’および第2内部周壁リップ部31bの縦内部突起31d’は、第3内部周壁リップ部32bの縦内部突起32d’と同様の構成を有する。図示はしないが、第1取付リング45は、第1内部周壁リップ部30bの縦内部突起30d’に対応して形成された複数の凹部、および第2内部周壁リップ部31bの縦内部突起31d’に対応して形成された複数の凹部を有する。
【0066】
このように、エッジ周壁リップ部33bだけでなく、第1内部周壁リップ部30b、第2内部周壁リップ部31b、および第3内部周壁リップ部32bのそれぞれが縦内部突起30d’,31d’,32d’を有していてもよい。一実施形態では、第1内部周壁リップ部30b、第2内部周壁リップ部31b、および第3内部周壁リップ部32bのうちのいずれか1つまたは2つが縦内部突起を有していてもよい。このような構成により、より効果的に弾性膜10の周方向における変形具合のばらつきを抑制することができる。さらに、第1内部周壁リップ部30bの縦内部突起30d’、および第2内部周壁リップ部31bの縦内部突起31d’は第1取付リング45に対するガイドして機能するので、弾性膜10をより容易にヘッド本体2に固定することができる。
【0067】
図8は、さらに他の実施形態に係る弾性膜10のエッジ周壁33の近傍の拡大断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図6および
図7に示した実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0068】
図8に示すエッジ周壁33のエッジ周壁リップ部33bは、その上面から上方に突出する複数の縦エッジ突起33e’’を有する。本実施形態でも、複数の縦エッジ突起33e’’は、エッジ周壁33の周方向に沿って等間隔で配置されている。ヘッド本体2は、縦エッジ突起33e’’に対応して形成された複数の凹部61を有する。
【0069】
本実施形態では、エッジ周壁33の周方向に沿って配置された複数の縦エッジ突起33e’’がヘッド本体2に形成された凹部61に嵌め込まれた状態で、エッジ周壁33が第2取付リング47を介してヘッド本体2に固定される。この場合でも、エッジ周壁33の周方向における変形を最小限に抑制しながら、該エッジ周壁33をヘッド本体2に固定することができる。さらに、弾性膜10を取付リング45,47を介してヘッド本体2に固定する際に、複数の縦エッジ突起33e’’は、ヘッド本体2に対するガイドして機能する。したがって、弾性膜10をヘッド本体2に容易に取り付けることができる。このように、エッジ周壁突起は、縦エッジ突起33e’’のように、エッジ周壁リップ部33bの上面から上方に突出していてもよい。
【0070】
図8に示すように、第3内部周壁32の第3内部周壁リップ部32bも、その上面から突出する縦内部突起32d’’を有していてもよい。ヘッド本体2は、縦内部突起32d’’に対応して形成された複数の凹部63を有する。図示はしないが、第1内部周壁30の第1内部周壁リップ部30b、および第2内部周壁31の第2内部周壁リップ部31bも、それぞれ、その上面から突出する縦内部突起を有していてもよい。この場合、ヘッド本体2は、第1内部周壁リップ部30bの縦内部突起、および第2内部周壁リップ部31bの縦内部突起に対応して形成された複数の凹部を有する。一実施形態では、第1内部周壁リップ部30b、第2内部周壁リップ部31b、および第3内部周壁リップ部32bのうちのいずれか1つまたは2つが縦内部突起を有していてもよい。
【0071】
このような構成でも、効果的に弾性膜10の周方向における変形具合のばらつきを抑制することができる。さらに、第1内部周壁リップ部30bの縦内部突起、および第2内部周壁リップ部31bの縦内部突起もヘッド本体2に対するガイドして機能するので、弾性膜10を容易にヘッド本体2に固定することができる。
【0072】
図9は、さらに他の実施形態に係る弾性膜10のエッジ周壁33を拡大して示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態の構成と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0073】
図9に示すエッジ周壁33は、当接部11の周端部から斜め上方に延びるエッジ周壁本体33aと、エッジ周壁本体33aの先端から延びるエッジ周壁リップ部33bとを有する。上述した実施形態では、エッジ周壁本体33aは、当接部11の周端部から鉛直方向に上方に延びているが、本発明は、これら実施形態に限定されない。エッジ周壁本体33aの形状は任意であり、例えば、
図9に示すように斜め上方に延びていてもよい。
【0074】
さらに、
図9に示すエッジ周壁33のエッジ周壁リップ部33bは、その上面から上方に突出するエッジ突起33e’’を有している。しかしながら、
図9の点線で示すように、エッジ周壁リップ部33bは、エッジ周壁リップ部33bの下面から下方に突出するエッジ突起33e’を有していてもよいし、エッジ周壁リップ部33bの先端から径方向に突出する横エッジ突起33eを有していてもよい。
【0075】
図示はしないが、内部周壁30,31,32の内部周壁本体30a,31a,32aの形状も任意であり、
図9に示すエッジ周壁33のように、当接部11から斜め上方に延びていてもよい。さらに、内部周壁30,31,32の内部周壁本体30a,31a,32aの形状は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0076】
上述した実施形態では、エッジ周壁33のエッジ周壁リップ部33bは、横エッジ突起33e、縦エッジ突起33e’、および縦エッジ突起33e’’のいずれかを有しているが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。例えば、エッジ周壁リップ部33bは、横エッジ突起33e、縦エッジ突起33e’、および縦エッジ突起33e’’のうちの2つを有していてもよいし、これら突起33e,33e’,33e’’の全てを有していてもよい。同様に、各内部周壁リップ部30b~32bは、各内部周壁リップ部30b~32bの先端から径方向に突出する横内部突起、各内部周壁リップ部30b~32bの上面から突出する縦内部突起、および各内部周壁リップ部30b~32bの下面から突出する縦内部突起のうちのの2つを有していてもよいし、これら突起の全てを有していてもよい。
【0077】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0078】
1 基板保持装置(研磨ヘッド)
2 ヘッド本体
3 リテーナリング
10 弾性膜(メンブレン)
11 当接部
16a,16b,16c,16d 圧力室
18 研磨テーブル
19 研磨パッド
27 ヘッドシャフト
30,31,32 内部周壁
30a,31a,32a 内部周壁本体
30b,31b,32b 内部周壁リップ部
30c,31c,32c シール突起
32d 横内部突起
32d’,32d’’ 縦内部突起
33 エッジ周壁
33a エッジ周壁本体
33b エッジ周壁リップ部
33c シール突起
33e 横エッジ突起
33e’,33e’’ 縦エッジ突起
40 制御装置
45 内部取付リング(内部取付部材)
47 エッジ取付リング(エッジ取付部材)
54,55 シール凹部
60 第1凹部
61 第2凹部
62 第3凹部
63 第4凹部