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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】レジスト組成物、及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20230906BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230906BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20230906BHJP
   C08F 212/14 20060101ALI20230906BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/004 503A
C08F220/10
C08F212/14
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019222959
(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2020112784
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2019001476
(32)【優先日】2019-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々見 武志
(72)【発明者】
【氏名】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】畠山 潤
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聡
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0138539(KR,A)
【文献】特開2018-013687(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0024435(US,A1)
【文献】特開2018-025789(JP,A)
【文献】特開2015-143819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(p-1)、(p-2)及び(p-3)で示される繰り返し単位から1つまたは2つ選択される繰り返し単位と、酸の作用で極性が変化する下記式(a-1)及び式(a-2)で示される繰り返し単位と、下記式(b-1)で示される繰り返し単位とを有する高分子化合物、下記一般式(B)で表される塩及び溶剤を含むレジスト組成物であって、
前記繰り返し単位(a-1)のClogPと前記繰り返し単位(a-1)が酸の作用で極性が変化した後のClogPとの差が3.3~4.2であり、且つ前記繰り返し単位(a-2)のClogPと前記繰り返し単位(a-2)が酸の作用で極性が変化した後のClogPとの差が2.5~3.2であることを特徴とするレジスト組成物。
【化1】
(上記式(p-1)、(p-2)、(p-3)中、R、RとRは、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基である。Zは、単結合、フェニレン基、-O-Z11-、-C(=O)-O-Z11-、又は-C(=O)-NH-Z11-であり、Z11は、炭素数1~6のアルカンジイル基若しくは炭素数2~6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Zは、単結合、-Z21-C(=O)-O-、-Z21-O-又は-Z21-O-C(=O)-であり、Z21は、炭素数1~12のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。R~Rは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。Rは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。Zは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、-O-Z31-、-C(=O)-O-Z31-又は-C(=O)-NH-Z31-であり、Z31は、炭素数1~6のアルキレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2~6のアルケニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。また、M1+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はアンモニウムカチオンを示す。M0-は、非求核性対向イオンである。上記式(a-1)中、Rは、水素原子、又はメチル基である。Yは、酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる構造を有する。上記式(a-2)中、Rは、水素原子、又はメチル基である。Zは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、-O-Z41-、-C(=O)-O-Z41-又は-C(=O)-NH-Z41-であり、Z41は、炭素数1~12のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。R~R11は、互いに独立に炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状又は環状の炭化水素基を示し、このうち2つが互いに結合して環を形成してもよい。上記式(b-1)中、R12は、水素原子、又はメチル基である。Zは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、-O-Z51-、-C(=O)-O-Z51-又は-C(=O)-NH-Z51-であり、Z51は、単結合である。n1は1~3の整数で、n2は0~3の整数でn1とn2の合計が5以下である。R13は、ハロゲン原子又は炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状又は環状の炭化水素基で、前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-、-C(=O)-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子を、ハロゲン原子またはヘテロ原子で置換してもよい。)
【化2】
(式(B)中、Maは酸素原子を含んでもよい炭素数1~35の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。また、炭素原子に結合する水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換されてもよい。M2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、又はアンモニウムカチオンである。)
【請求項2】
さらに、前記高分子化合物が下記一般式(c-1)で表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を含むものであることを特徴とする請求項1記載のレジスト組成物。
【化3】
(式(c-1)中、R14は、水素原子、又はメチル基である。Xは単結合、炭素数1~5の炭化水素基で前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-、-C(=O)-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよい。Lはラクトン構造を有する基である。)
【請求項3】
前記式(c-1)中のLが下記式(c-1-1)、(c-1-2)、(c-1-3)のいずれかに示す基であることを特徴とする請求項2に記載のレジスト組成物。
【化4】
(式(c-1-1)中、n3は1~4の整数であり、R15は、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状又は環状の炭化水素基で、前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-、-C(=O)-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子を、ハロゲン原子またはヘテロ原子で置換してもよい。n4は炭素数1~5の連結基を示す。式(c-1-2)中、Xは単結合、炭素数1~5の炭化水素基で前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよい。n5は1~4の整数であり、R16は、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状又は環状の炭化水素基で、前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-、-C(=O)-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子を、ハロゲン原子またはヘテロ原子で置換してもよい。式(c-1-3)中、Xは単結合、炭素数1~5の炭化水素基で前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよい。n6は1~4の整数であり、R17は、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状又は環状の炭化水素基で、前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-、-C(=O)-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子を、ハロゲン原子またはヘテロ原子で置換してもよい。)
【請求項4】
前記R13において、前記ハロゲン原子が、フッ素原子又はヨウ素原子であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレジスト組成物。
【請求項5】
前記一般式(B)で表される塩が下記式(B1)で示される塩であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレジスト組成物。
【化5】
(式(B1)中、R18~R19は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R20は、水素原子、水酸基、炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基、又は炭素数6~30の置換もしくは非置換のアリール基を示す。M2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はアンモニウムカチオンを示す。)
【請求項6】
さらに下記式(B2)で示される塩を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のレジスト組成物。
【化6】
(式(B2)中、R21は、水素原子又はトリフルオロメチル基を表す。R22は酸素原子を含んでもよい炭素数1~35の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。また、炭素原子に結合する水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換されてもよい。M2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はアンモニウムカチオンを示す。)
【請求項7】
前記式(a-2)で示される繰り返し単位が下記式(a-2-1)で示される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のレジスト組成物。
【化7】
(式(a-2-1)中、R~R11は上記の通りである。)
【請求項8】
前記溶剤がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びγ-ブチロラクトンの混合溶剤であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のレジスト組成物。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成し、マスクを前記レジスト膜にかざし、高エネルギー線を照射して露光した後、アルカリ現像液で現像して前記基板上にパターンを形成するパターン形成方法であって、
高エネルギー線による露光が248nmのKrFエキシマーレーザー、波長193nmのArFエキシマーレーザー、波長13.5nmのEUV、又は電子ビームによることを特徴とするパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物、及び該レジスト組成物を用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。特にフラッシュメモリ市場の拡大と記憶容量の増大化が微細化を牽引している。最先端の微細化技術としては、ArFリソグラフィーによる65nmノードのデバイスの量産が行われており、次世代のArF液浸リソグラフィーによる45nmノードの量産準備が進行中である。次世代の32nmノードとしては、水よりも高屈折率の液体と高屈折率のレンズ、高屈折率材料を組み合わせた超高NAレンズによる液浸リソグラフィー、波長13.5nmの極端紫外線(EUV)リソグラフィー、ArFリソグラフィーの二重露光(ダブルパターニングリソグラフィー)などが候補であり、検討が進められている。
【0003】
高エネルギー線において解像度や寸法制御性を向上させるためには、レジスト膜は低感度になる傾向がある。レジスト膜の感度低下は生産性の低下につながり、好ましいことではない。高感度化の要求から、化学増幅型レジスト材料が検討されている。
【0004】
微細化の進行とともに、ラインパターンのエッジラフネス(ラインエッジラフネス:LERやラインウィドスラフネス:LWR)及びホールパターンの寸法均一性(クリティカルディメンションユニフォミティ:CDU)が問題視されている。ベースポリマーの現像液に対する溶解コントラストや酸発生剤の遍在や凝集の影響や、酸拡散の影響が指摘されている。さらにレジスト膜の薄膜化にしたがってLERが大きくなる傾向があり、微細化の進行に伴う薄膜化によるLERやエッチング耐性の劣化は深刻な問題になっている。
【0005】
ポジ型の微細なラインパターン形成においては、バルキーで高コントラストな酸脱離基を含むベースポリマーを用いるとTトップ形状になり、エッジラフネスの劣化やホールパターンの閉塞がおこる。逆にコンパクトな酸脱離基を含むベースポリマーを用いると現像液に未露光部の残存膜厚が低下し、パターンが崩れやすくなる。溶解コントラストと酸拡散制御のバランス取りをおこなうことで解像性を向上させ、優れたレジストの開発が望まれている。
【0006】
特許文献1は、酸強度が異なる2種類の光酸発生剤を用いることで、著しくリソグラフィー特性を改善することを報告している。特許文献2には、スルホン酸のα位がフッ素原子で置換されたアルカンスルホン酸を発生するスルホニウム塩とスルホン酸のα位がフッ素で置換されていないアルカンスルホン酸を発生するスルホニウム塩とを併用することでラインアンドスペースの粗密依存性が小さくなることが報告されている。特許文献3は、α位がフッ素原子で置換されたアルカンスルホン酸を発生する光酸発生剤を含有する高分子化合物とスルホン酸のα位にフッ素で置換されていないアルカンスルホン酸を発生する酸発生剤とを併用することで、ホールパターンやトレンチパターンの焦点深度と真円性やLWRを改善させると報告している。この効果は、α位がフッ素置換されたアルカンスルホン酸は、フッ素置換されていないアルカンスルホン酸に比べて酸強度が高いことに起因している。これらの先行技術は、露光によって光酸発生剤から発生した強酸が弱酸オニウム塩と塩交換し、強酸オニウム塩を形成することで酸性度の高い強酸から弱酸に置き換わって酸不安定基の酸発生分解反応を抑制し酸拡散距離を小さくするものであると考察される。つまり、弱酸オニウム塩は露光により生じた強酸に対してクエンチャー(酸失活剤)として機能すると考えられる。アミン類などの含窒素化合物に比べ、弱酸オニウム塩は、一般に不揮発性であるためレジスト膜形成時やパターニングする際のベークプロセス中にレジスト膜表層の濃度変化を防ぐことができ、パターンの矩形成を良好にする。
【0007】
特許文献4には、アルカンスルホン酸オニウムを用いた場合では、カルボン酸オニウム塩に比べ酸性度が十分低くないためクエンチャー能が低く、解像性、エッジラフネス、焦点深度などが満足できないと報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2000-241965号公報
【文献】特開2003-005376号公報
【文献】特開2012-137518号公報
【文献】特開2015-054833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、従来のレジスト材料を上回る高感度で、焦点深度(DOF)が広く、高解像度でエッジラフネス(LER、LWR)やホールパターンの寸法均一性(CDU)を低減させ、露光後のパターン形状が良好でエッチング耐性に優れるレジスト組成物であって、レジスト組成物のベース樹脂として好適な高分子化合物と酸拡散制御に優れた塩とを用いたレジスト組成物、及び該レジスト組成物を使用するパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明では、下記一般式(p-1)、(p-2)及び(p-3)で示される繰り返し単位から1つまたは2つ選択される繰り返し単位と、酸の作用で極性が変化する下記式(a-1)及び式(a-2)で示される繰り返し単位と、下記式(b-1)で示される繰り返し単位とを有する高分子化合物、下記一般式(B)で表される塩及び溶剤を含むレジスト組成物であって、
前記繰り返し単位(a-1)のClogPと前記繰り返し単位(a-1)が酸の作用で極性が変化した後のClogPとの差が3.0~4.5であり、且つ前記繰り返し単位(a-2)のClogPと前記繰り返し単位(a-2)が酸の作用で極性が変化した後のClogPとの差が2.5~3.2であることを特徴とするレジスト組成物を提供する。
【化1】
(上記式(p-1)、(p-2)、(p-3)中、R、RとRは、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基である。Zは、単結合、フェニレン基、-O-Z11-、-C(=O)-O-Z11-、又は-C(=O)-NH-Z11-であり、Z11は、炭素数1~6のアルカンジイル基若しくは炭素数2~6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Zは、単結合、-Z21-C(=O)-O-、-Z21-O-又は-Z21-O-C(=O)-であり、Z21は、炭素数1~12のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。R~Rは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。Rは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。Zは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、-O-Z31-、-C(=O)-O-Z31-又は-C(=O)-NH-Z31-であり、Z31は、炭素数1~6のアルキレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2~6のアルケニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。また、M1+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はアンモニウムカチオンを示す。M0-は、非求核性対向イオンである。上記式(a-1)中、Rは、水素原子、又はメチル基である。Yは、酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる構造を有する。上記式(a-2)中、Rは、水素原子、又はメチル基である。Zは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、-O-Z41-、-C(=O)-O-Z41-又は-C(=O)-NH-Z41-であり、Z41は、炭素数1~12のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。R~R11は、互いに独立に炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状又は環状の炭化水素基を示し、このうち2つが互いに結合して環を形成してもよい。上記式(b-1)中、R12は、水素原子、又はメチル基である。Zは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、-O-Z51-、-C(=O)-O-Z51-又は-C(=O)-NH-Z51-であり、Z51は、炭素数1~12のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。n1は1~3の整数で、n2は0~3の整数でn1とn2の合計が5以下である。R13は、ハロゲン原子又は炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状又は環状の炭化水素基で、前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-、-C(=O)-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子を、ハロゲン原子またはヘテロ原子で置換してもよい。)
【化2】
(式(B)中、Maは酸素原子を含んでもよい炭素数1~35の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。また、炭素原子に結合する水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換されてもよい。M2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、又はアンモニウムカチオンである。)
【0011】
本発明のレジスト組成物であれば、高感度で、焦点深度(DOF)が広く、高解像度でエッジラフネス(LER、LWR)やホールパターンの寸法均一性(CDU)を低減させ、露光後のパターン形状が良好でエッチング耐性に優れる。
【0012】
本発明のレジスト組成物は、さらに、前記高分子化合物が下記一般式(c-1)で表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を含むものであることができる。
【化3】
(式(c-1)中、R14は、水素原子、又はメチル基である。Xは単結合、炭素数1~5の炭化水素基で前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-、-C(=O)-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよい。Lはラクトン構造を有する基である。)
【0013】
このようなレジスト組成物であれば、形成されるレジスト膜が密着性に優れるものとなり、更に好ましい形状を有するレジストパターンを得ることができる。
【0014】
この場合、前記式(c-1)中のLが下記式(c-1-1)、(c-1-2)、(c-1-3)のいずれかに示す基であることが好ましい。
【化4】
(式(c-1-1)中、n3は1~4の整数であり、R15は、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状又は環状の炭化水素基で、前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-、-C(=O)-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子を、ハロゲン原子またはヘテロ原子で置換してもよい。n4は炭素数1~5の連結基を示す。式(c-1-2)中、Xは単結合、炭素数1~5の炭化水素基で前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよい。n5は1~4の整数であり、R16は、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状又は環状の炭化水素基で、前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-、-C(=O)-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子を、ハロゲン原子またはヘテロ原子で置換してもよい。式(c-1-3)中、Xは単結合、炭素数1~5の炭化水素基で前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよい。n6は1~4の整数であり、R17は、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状又は環状の炭化水素基で、前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-、-C(=O)-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子を、ハロゲン原子またはヘテロ原子で置換してもよい。)
【0015】
このようなレジスト組成物であれば、レジスト膜がより密着性に優れるものとなる。
【0016】
本発明のレジスト組成物は、前記繰り返し単位(a-1)のClogPと前記繰り返し単位(a-1)が酸の作用で極性が変化した後のClogPとの差が3.3~4.2であることが好ましい。
【0017】
このようなレジスト組成物であれば、ホールパターンが閉塞したり、ラインパターンでTトップ形状を引き起こすことがより起きにくく、また、焦点深度がより好ましいものとなる。
【0018】
また、本発明のレジスト組成物は、前記一般式(B)で表される塩が下記式(B1)で示される塩であることができる。
【化5】
(式(B1)中、R18~R19は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R20は、水素原子、水酸基、炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基、又は炭素数6~30の置換もしくは非置換のアリール基を示す。M2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はアンモニウムカチオンを示す。)
【0019】
このようなレジスト組成物であれば、解像性に優れるレジスト膜を与えることができる。
【0020】
また、本発明のレジスト組成物は、さらに下記式(B2)で示される塩を含むことができる。
【化6】
(式(B2)中、R21は、水素原子又はトリフルオロメチル基を表す。R22は酸素原子を含んでもよい炭素数1~35の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。また、炭素原子に結合する水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換されてもよい。M2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はアンモニウムカチオンを示す。)
【0021】
このようなレジスト組成物であれば、オニウム塩の酸強度を調整できるため、解像性により優れるレジスト膜を与えることができる。
【0022】
また、本発明のレジスト組成物は、前記式(a-2)で示される繰り返し単位が下記式(a-2-1)で示される繰り返し単位であることができる。
【化7】
(式(a-2-1)中、R~R11は上記の通りである。)
【0023】
このようなレジスト組成物であれば、アルカリ現像液に対する膨潤をより抑制することができ、パターン倒れを防ぎ、焦点深度を広くすることができる。
【0024】
また、本発明は、上記レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成し、マスクを前記レジスト膜にかざし、高エネルギー線を照射して露光した後、アルカリ現像液で現像して前記基板上にパターンを形成するパターン形成方法であって、高エネルギー線による露光が248nmのKrFエキシマーレーザー、波長193nmのArFエキシマーレーザー、波長13.5nmのEUV、又は電子ビームによることを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0025】
このような、パターン形成方法であれば、高感度で、焦点深度(DOF)が広く、高解像度でエッジラフネス(LER、LWR)やホールパターンの寸法均一性(CDU)を低減させ、露光後のパターン形状が良好でエッチング耐性に優れるレジストパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のレジスト組成物は、露光前後のアルカリ溶解コントラストが高く、かつアルカリ現像液中での膨潤を抑えることによりパターン倒れを防止することによって焦点深度が広く高解像性を有し、露光後の良好なパターン形状とエッジラフネスを示す。従って、特に超LSI製造用あるいはEUV露光用のパターン形成材料として好適なポジ型レジスト組成物、特には化学増幅型ポジ型レジスト組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上述のように、高感度で、焦点深度(DOF)が広く、高解像度でエッジラフネス(LER、LWR)やホールパターンの寸法均一性(CDU)を低減させ、露光後のパターン形状が良好でエッチング耐性に優れるレジストパターンを形成することができるレジスト組成物の開発が求められていた。
【0028】
上記目的を達成するために鋭意検討をおこなった結果、(メタ)アクリル酸を酸不安定基で保護した繰り返し単位とフェノール性水酸基を酸不安定基で保護した繰り返し単位とオニウム塩から得られる繰り返し単位を有する高分子化合物を含有するレジスト組成物が高感度で、高解像性でラインエッジラフネス:LERやラインウィドスラフネス:LWRを低減し、パターン形状が良好な微細加工を可能にすることを知見し、本発明に至った。
【0029】
即ち、本発明は、下記一般式(p-1)、(p-2)及び(p-3)で示される繰り返し単位から1つまたは2つ選択される繰り返し単位と、酸の作用で極性が変化する下記式(a-1)及び式(a-2)で示される繰り返し単位と、下記式(b-1)で示される繰り返し単位とを有する高分子化合物、下記一般式(B)で表される塩及び溶剤を含むレジスト組成物であって、前記繰り返し単位(a-1)のClogPと前記繰り返し単位(a-1)が酸の作用で極性が変化した後のClogPとの差が3.0~4.5であり、且つ前記繰り返し単位(a-2)のClogPと前記繰り返し単位(a-2)が酸の作用で極性が変化した後のClogPとの差が2.5~3.2であることを特徴とするレジスト組成物である。
【化8】
(上記式(p-1)、(p-2)、(p-3)中、R、RとRは、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基である。Zは、単結合、フェニレン基、-O-Z11-、-C(=O)-O-Z11-、又は-C(=O)-NH-Z11-であり、Z11は、炭素数1~6のアルカンジイル基若しくは炭素数2~6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Zは、単結合、-Z21-C(=O)-O-、-Z21-O-又は-Z21-O-C(=O)-であり、Z21は、炭素数1~12のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。R~Rは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。Rは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。Zは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、-O-Z31-、-C(=O)-O-Z31-又は-C(=O)-NH-Z31-であり、Z31は、炭素数1~6のアルキレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2~6のアルケニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。また、M1+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はアンモニウムカチオンを示す。M0-は、非求核性対向イオンである。上記式(a-1)中、Rは、水素原子、又はメチル基である。Yは、酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる構造を有する。上記式(a-2)中、Rは、水素原子、又はメチル基である。Zは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、-O-Z41-、-C(=O)-O-Z41-又は-C(=O)-NH-Z41-であり、Z41は、炭素数1~12のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。R~R11は、互いに独立に炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状又は環状の炭化水素基を示し、このうち2つが互いに結合して環を形成してもよい。上記式(b-1)中、R12は、水素原子、又はメチル基である。Zは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、-O-Z51-、-C(=O)-O-Z51-又は-C(=O)-NH-Z51-であり、Z51は、炭素数1~12のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。n1は1~3の整数で、n2は0~3の整数でn1とn2の合計が5以下である。R13は、ハロゲン原子又は炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状又は環状の炭化水素基で、前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-、-C(=O)-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子を、ハロゲン原子またはヘテロ原子で置換してもよい。)
【化9】
(式(B)中、Maは酸素原子を含んでもよい炭素数1~35の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。また、炭素原子に結合する水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換されてもよい。M2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、又はアンモニウムカチオンである。)
【0030】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
[レジスト組成物]
本発明のレジスト組成物は、下記一般式(p-1)、(p-2)及び(p-3)で示される繰り返し単位から1つまたは2つ選択される繰り返し単位と、酸の作用で極性が変化する下記式(a-1)及び式(a-2)で示される繰り返し単位と、下記式(b-1)で示される繰り返し単位とを有する高分子化合物、下記一般式(B)で表される塩及び溶剤を含むレジスト組成物であって、前記繰り返し単位(a-1)のClogPと前記繰り返し単位(a-1)が酸の作用で極性が変化した後のClogPとの差が3.0~4.5であり、且つ前記繰り返し単位(a-2)のClogPと前記繰り返し単位(a-2)が酸の作用で極性が変化した後のClogPとの差が2.5~3.2であることを特徴とするものである。
【化10】
【化11】
【0032】
上記高分子化合物は、高エネルギー線や熱などに感応し、酸を発生する。
なお、本発明において、高エネルギー線とは、紫外線、遠紫外線、電子線、EUV(極端紫外線)、X線、エキシマ-レーザー、ガンマ線、シンクロトロン放射線を含むものである。
【0033】
下記のように、それぞれの上記繰り返し単位に応じた特性が、この組成物から得られるレジスト膜に与えられる。
【0034】
酸不安定基を有するスチレンは、エステルをある程度コンパクトな酸不安定基で置換されたメタクリレートよりもエッチング耐性に優れ、酸で酸不安定基が脱離したあと、アルカリ現像液での膨潤量が少なくパターン倒れが少ない。
【0035】
アルカリ現像液での溶解コントラストという観点ではカルボン酸が発生する酸不安定基で保護されたメタクリレートが、フェノール系水酸基が発生する繰り返し単位より有利である。しかしながら、カルボン酸の発生は、現像液中での膨潤を引き起こし、これによってパターン倒れが生じる。一方、フェノール性水酸基が発生する酸不安定基を有する繰り返し単位の場合は膨潤量が少ないメリットがあるが、カルボン酸発生型に比べると溶解コントラストが劣る。よって、溶解コントラストの向上と膨潤量の低減の両方の特性得るために、メタクリル酸とフェノール性水酸基を酸不安定基で保護した繰り返し単位を保護している。
【0036】
フェノール基はEB、EUVに増感作用があり、アルカリ現像液中での膨潤抑制効果がある。フェノール基を高分子化合物に有することで、露光時の二次電子の発生効率と増感作用が高まり、酸発生剤の分解効率が高まって感度が向上する。
【0037】
光酸発生剤を高分子化合物に有することで、従来の添加型の光酸発生剤に比べて、酸拡散を抑える効果が高く、高解像性で露光余裕度があり、プロセス適応性に優れ、露光後のパターン形状が良好である。
【0038】
クエンチャー成分として、αフルオロアルカンスルホン酸に比べて弱酸オニウム塩と組み合わせることで、アミン類などの含窒素化合物に比べ、弱酸オニウム塩は、一般に不揮発性であるためレジスト膜形成時やパターニングする際のベークプロセス中にレジスト膜表層の濃度変化を防ぐことができ、矩形成を良好にする。さらに弱酸オニウム塩をα位にフッ素原子をもたないアルカンスルホン酸より酸性度が低くクエンチャー能の高いカルボン酸オニウム塩を用いることで、酸拡散を抑える効果が高く、高解像性で露光余裕度があり、プロセス適応性に優れる。
【0039】
本発明のレジスト組成物は、上記構成を有することにより、高感度で、焦点深度(DOF)が広く、高解像度でエッジラフネス(LER、LWR)やホールパターンの寸法均一性(CDU)を低減させ、露光後のパターン形状が良好でエッチング耐性に優れるレジストパターンを形成することができるレジスト組成物となる。
以下、本発明のレジスト組成物の構成成分について説明する。
【0040】
[繰り返し単位(p-1)、(p-2)、(p-3)]
本発明のレジスト組成物を構成する高分子化合物は、下記一般式(p-1)、(p-2)及び(p-3)で示される繰り返し単位から1つまたは2つ選択される繰り返し単位を有する。
【化12】
上記式(p-1)、(p-2)、(p-3)中、R、RとRは、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基である。Zは、単結合、フェニレン基、-O-Z11-、-C(=O)-O-Z11-、又は-C(=O)-NH-Z11-であり、Z11は、炭素数1~6のアルカンジイル基若しくは炭素数2~6のアルケンジイル基、又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。Zは、単結合、-Z21-C(=O)-O-、-Z21-O-又は-Z21-O-C(=O)-であり、Z21は、炭素数1~12のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。R~Rは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。Rは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。Zは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、-O-Z31-、-C(=O)-O-Z31-又は-C(=O)-NH-Z31-であり、Z31は、炭素数1~6のアルキレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニレン基、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2~6のアルケニレン基であり、カルボニル基、エステル結合、エーテル結合又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。また、M1+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はアンモニウムカチオンを示す。M0-は、非求核性対向イオンである。
【0041】
繰り返し単位(p-1)、(p-2)、(p-3)を与えるモノマーとしては、例えば、特開2018-60069号公報の段落[0068]~[0081]に記載のものを挙げることができる。
【0042】
非求核性対向イオンM0-としては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン、トリフレート、1,1,1-トリフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4-フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5-ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のスルホンイミド、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチド等のスルホンメチドが挙げられる。
【0043】
1+のスルホニウムカチオンとして、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、nBuはn-ブチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化13】
【0044】
1+のヨードニウムカチオンとして、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、tBuはtert-ブチル基であり、Phはフェニル基である。
【化14】
【0045】
1+のアンモニウムカチオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化15】
【0046】
高分子化合物の、全組成の和を1としたとき、繰り返し単位(p-1)、(p-2)、(p-3)の組成比(繰り返し単位の比率)は、0≦(p-1)≦0.3、0≦(p-2)≦0.3、0≦(p-3)≦0.3、0<(p-1)+(p-2)+(p-2)≦0.3、の範囲である。
【0047】
ポリマー主鎖に酸発生剤を結合させることによって酸拡散を小さくし、酸拡散のぼけによる解像性の低下を防止できる。また、酸発生剤が均一に分散することによってエッジラフネス(LER、LWR)が改善される。
【0048】
[繰り返し単位(a-1)]
本発明のレジスト組成物を構成する高分子化合物は、酸の作用で極性が変化する構造を含む繰り返し単位、下記一般式(a-1)を有する。
【化16】
上記式(a-1)中、Rは、水素原子、又はメチル基である。Yは、酸の作用で極性が変化しアルカリ水溶液に可溶になる構造を有する。
【0049】
繰り返し単位(a-1)のClogPと前記繰り返し単位(a-1)が酸の作用で極性が変化した後のClogPとの差(ΔClogP)は3.0~4.5である。
式(a-1)のΔClogPが4.5より高いと、酸の作用で脱離した化合物が嵩高いせいでアルカリ現像液への溶解性が低くホールパターンの閉塞やラインパターンでTトップ形状を引き起こす。ΔClogPが3.0より低いとレジスト膜の高さが減りやすく、ラインパターンだとパターン崩れやすくなり、焦点深度が狭くなる。
【0050】
繰り返し単位(a-1)を与えるモノマーの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化17】
【0051】
式(a-1)と(a-1)が酸の作用で極性が変化したときとのClogPの差が3.3~4.2の範囲であることが好ましい。
【0052】
ClogP値は、Cambridge Soft Corporation社製のソフトChemDraw Ultra(登録商標)を使用した。ポリマー導入時を再現するために上記モノマーの重合性基を還元した状態で計算した。
【0053】
[繰り返し単位(a-2)]
本発明のレジスト組成物を構成する高分子化合物は、酸の作用で極性が変化する構造を含む繰り返し単位、下記一般式(a-2)を有する。
【化18】
式(a-2)中、Rは、水素原子、又はメチル基である。Zは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、-O-Z41-、-C(=O)-O-Z41-又は-C(=O)-NH-Z41-であり、Z41は、炭素数1~12のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。R~R11は、互いに独立に炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状又は環状の炭化水素基を示し、このうち2つが互いに結合して環を形成してもよい。
【0054】
また、前記式(a-2)で示される繰り返し単位が下記式(a-2-1)で示される繰り返し単位であることができる。
【化19】
(式(a-2-1)中、R~R11は上記の通りである。)
【0055】
繰り返し単位(a-2)のClogPと前記繰り返し単位(a-2)が酸の作用で極性が変化した後のClogPとの差(ΔClogP)は2.5~3.2である。
(a-2)に示す繰り返し単位は、(a-1)で示す繰り返し単位に比べ酸解離性に劣るため、コントラストに劣るが、アルカリ現像液に対する膨潤を抑制し、パターン倒れを防ぎ、焦点深度を広くする。ΔClogPが2.5~3.2の範囲外では、現像液への溶解阻止性と脱離後の膨潤抑制のバランスを取ることができない。
【0056】
式(a-2)の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化20】
【0057】
[繰り返し単位(b-1)]
本発明のレジスト組成物を構成する高分子化合物は、下記一般式(b-1)を有する。
【化21】
式(b-1)中、R12は、水素原子、又はメチル基である。Zは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化フェニレン基、-O-Z51-、-C(=O)-O-Z51-又は-C(=O)-NH-Z51-であり、Z51は、炭素数1~12のアルカンジイル基であり、カルボニル基、エステル結合又はエーテル結合を含んでいてもよい。n1は1~3の整数で、n2は0~3の整数でn1とn2の合計が5以下である。R13は、ハロゲン原子又は炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状又は環状の炭化水素基で、前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-、-C(=O)-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子を、ハロゲン原子またはヘテロ原子で置換してもよい。
【0058】
式(b-1)の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化22】
【0059】
フェノール性水酸基を含む化合物は増感効果があり、感度とCDUに優れる。
【0060】
[繰り返し単位(c-1)]
上記高分子化合物は、下記一般式(c-1)で表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を含んでもよい。
(下記式(c-1)中、R14は、水素原子、又はメチル基である。Xは単結合、炭素数1~5の炭化水素基で前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-、-C(=O)-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよい。Lはラクトン構造を有する基である。)
【化23】
【0061】
前記式(c-1)中のLが下記式(c-1-1)、(c-1-2)、(c-1-3)のいずれかに示す基であることができる。
【化24】
式(c-1-1)中、n3は1~4の整数であり、R15は、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状又は環状の炭化水素基で、前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-、-C(=O)-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子を、ハロゲン原子またはヘテロ原子で置換してもよい。n4は炭素数1~5の連結基を示す。式(c-1-2)中、Xは単結合、炭素数1~5の炭化水素基で前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよい。n5は1~4の整数であり、R16は、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状又は環状の炭化水素基で、前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-、-C(=O)-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子を、ハロゲン原子またはヘテロ原子で置換してもよい。式(c-1-3)中、Xは単結合、炭素数1~5の炭化水素基で前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよい。n6は1~4の整数であり、R17は、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状又は環状の炭化水素基で、前記炭化水素基を構成する-CH2-が-O-、-C(=O)-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよく、水素原子を、ハロゲン原子またはヘテロ原子で置換してもよい。
【0062】
(c-1-1)の構造として具体例に以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。点線が結合手である。
【化25】
【0063】
(c-1-2)の構造として具体例に以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。点線が結合手である。
【化26】
【0064】
(c-1-3)の構造として具体例に以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。点線が結合手である。
【化27】
【0065】
(c-1)の繰り返し単位として具体例に以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化28】
【0066】
本発明のレジスト組成物は下記式(B)で表される塩を含む。
【化29】
式(B)中、Maは酸素原子を含んでもよい炭素数1~35の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。また、炭素原子に結合する水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換されてもよい。M2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、又はアンモニウムカチオンである。
【0067】
また、前記一般式(B)で表される塩は下記式(B1)で示される塩であることができる。
【化30】
(式(B1)中、R18~R19は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。R20は、水素原子、水酸基、炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基、又は炭素数6~30の置換もしくは非置換のアリール基を示す。M2+は上記と同じである。)
【0068】
式(B)のアニオン構造(Ma-CO )、式(B1)のアニオン構造の具体例としては以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化31】
【0069】
【化32】
【0070】
上記式(B)のカチオン構造M2+としてのスルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩は上記と同様の構造を示すことができるが、これらに限定されない。
【0071】
これら塩(B)の添加量は、レジスト組成物中のベース樹脂100質量部に対し0より多く40質量部以下であり、0.1~40質量部であることが好ましく、更には0.1~20質量部であることが好ましい。上記範囲内であれば解像性の劣化や、レジスト現像後又は剥離時において異物の問題が生じるおそれがない。
【0072】
カルボン酸は、スルホン酸のα位がフッ素原子で置換されたアルカンスルホン酸を発生するスルホニウム塩、スルホン酸のα位がフッ素で置換されていないアルカンスルホン酸に比べて酸強度が小さい。このため、カルボン酸のカチオンが、例えば繰り返し単位(p-2)を有する高分子化合物のような高分子化合物に含まれるα位がフッ素原子で置換されたアルカンスルホン酸と塩交換するため、あたかもクエンチャーのように働く。より酸強度が小さいカルボン酸はクエンチ能が大きくコントラストが増大するため、現像後のパターンの矩形性や、エッジラフネスに優れる。
【0073】
本発明は下記式(B2)で示される塩をさらに有してもよい。
【化33】
式(B2)中、R21は、水素原子又はトリフルオロメチル基を表す。R22は酸素原子を含んでもよい炭素数1~35の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。また、炭素原子に結合する水素原子の1つ以上がフッ素原子に置換されてもよい。M2+は置換基を有する対カチオンを示し、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、アンモニウムカチオンを示す。
【0074】
式(B2)のアニオン構造の具体例としては以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化34】
【0075】
上記式(B2)のカチオン構造M2+の具体例にとしてスルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩は上記と同様の構造を示すことができるが、これらに限定されない。
【0076】
これら塩(B2)の添加量は、レジスト組成物中のベース樹脂100質量部に対し0~40質量部であり、配合する場合は0.1~40質量部であることが好ましく、更には0.1~20質量部であることが好ましい。上記範囲内であれば解像性の劣化や、レジスト現像後又は剥離時において異物の問題が生じるおそれがない。
【0077】
[溶剤]
本発明で使用される溶剤としては、高分子化合物、光酸発生剤、クエンチャー、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。このような有機溶剤としては、例えば、特開2008-111103号公報の段落[0144]~[0145]に記載のシクロヘキサノン、メチル-2-n-アミルケトン等のケトン類、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ-ブチロラクトン等のラクトン類及びその混合溶剤が挙げられる。アセタール系の酸不安定基を用いる場合は、アセタールの脱保護反応を加速させるために高沸点のアルコール系溶剤、具体的にはジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等を加えることもできる。
【0078】
本発明ではこれらの有機溶剤の中でもレジスト成分中の酸発生剤の溶解性が特に優れている1-エトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン及びその混合溶剤が好ましく使用される。
有機溶剤の使用量は、ベース樹脂100質量部に対して200~12,000質量部、特に1,000~7,000質量部が好適である。
【0079】
[その他の成分]
本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、クエンチャー(含窒素化合物)、界面活性剤などを含むことができる。
【0080】
(含窒素化合物)
本発明は、クエンチャーとして含窒素化合物を添加することもできる。これを添加することにより、光酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる。このような含窒素化合物としては、特開2008-111103号公報の段落[0146]~[0164]に記載の一級、二級、三級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル結合を有するアミン化合物を挙げることができる。また、特許第3790649号公報に記載の化合物のように、一級又は二級アミンをカーバメート基として保護した化合物も挙げることができる。
【0081】
なお、これらクエンチャーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、配合量は、ベース樹脂100質量部に対し0.001~12質量部、特に0.01~8質量部が好ましい。クエンチャーの配合により、レジスト感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上させることができる。また、これらクエンチャーを添加することで基板密着性を向上させることもできる。
【0082】
また、含窒素置換基を有する光酸発生剤を併用してもよい。このような化合物は、未露光部ではクエンチャーとして機能し、露光部は自身の発生酸との中和によってクエンチャー能を失う、いわゆる光崩壊性塩基として機能する。光崩壊性塩基を用いることによって、露光部と未露光部のコントラストをより強めることができる。光崩壊性塩基としては、例えば特開2009-109595号公報、特開2012-46501号公報等を参考にすることができる。
【0083】
(界面活性剤)
本発明のレジスト組成物中には界面活性剤を添加することができる。界面活性剤としては、水不溶又は難溶でアルカリ現像液可溶な界面活性剤、及び/又は水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤(疎水性樹脂)を挙げることができ、例えば、特開2010-215608号公報や特開2011-16746号公報に記載の(S)定義成分を参照することができる。
水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤としては、上記公報に記載の界面活性剤の中でもFC-4430、サーフロンS-381、サーフィノールE1004、KH-20、KH-30、及び下記構造式(surf-1)にて示したオキセタン開環重合物が好適である。これらは単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0084】
【化35】
ここで、R、Rf、A、B、C、m、nは、上述の記載に拘わらず、上記式(surf-1)のみに適用される。Rは二~四価の炭素数2~5の脂肪族基を示し、具体的には二価のものとしてエチレン、1,4-ブチレン、1,2-プロピレン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、1,5-ペンチレンが挙げられ、三価又は四価のものとしては下記のものが挙げられる。
【化36】
(式中、破線は結合手を示し、それぞれグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから派生した部分構造である。)
【0085】
これらの中で好ましく用いられるのは、1,4-ブチレン又は2,2-ジメチル-1,3-プロピレンである。Rfはトリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基を示し、好ましくはトリフルオロメチル基である。mは0~3の整数、nは1~4の整数であり、nとmの和はRの価数を示し、2~4の整数である。Aは1、Bは2~25の整数、Cは0~10の整数を示す。好ましくはBは4~20の整数、Cは0又は1である。また、上記構造の各構成単位はその並びを規定したものではなくブロック的でもランダム的に結合してもよい。部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤の製造に関しては米国特許第5650483号明細書などに詳しい。
【0086】
水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤は、ArF液浸露光においてレジスト保護膜を用いない場合、スピンコート後のレジスト表面に配向することによって水のしみ込みやリーチングを低減させる機能を有する。そのため、レジスト膜からの水溶性成分の溶出を抑えて露光装置へのダメージを下げるために有用であり、また、露光後、ポストエクスポージャーベーク(PEB)後のアルカリ現像時には可溶化し、欠陥の原因となる異物にもなり難いため有用である。このような界面活性剤は、水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な性質であり、高分子型の界面活性剤であって、疎水性樹脂とも呼ばれる。ドライ露光であっても、表面難溶層の溶解性を改善できるため、欠陥を低減させる。特にアルカリ現像液溶解性を向上させるものが好ましい。
【0087】
このような高分子型界面活性剤としては、以下に示す(a’-1)、(a’-2)、(a’-3)、b’及びc’からなる下記一般式で表される繰り返し単位を有する高分子化合物等が挙げられる。
【化37】
【0088】
式中、Re1は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Re2は、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数1~20の、アルキル基若しくはフッ素化アルキル基であり、同一繰り返し単位内のRe2は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、この場合、合計して直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2~20の、アルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。
【0089】
e3は、水素原子若しくはフッ素原子であり、又はRe4と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3~10の非芳香環を形成してもよい。Re4は、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~6のアルキレン基であり、1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい。Re5は、1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状の炭素数1~10のアルキル基であり、Re4とRe5とが結合してこれらが結合する炭素原子と共に非芳香環を形成していてもよく、この場合、Re4、Re5及びこれらが結合する炭素原子で炭素数3~12の3価の有機基を形成する。前記3価の有機基は、非芳香族環中にエーテル結合を有していても良い。Re6は、単結合、又は炭素数1~4のアルキレン基である。
【0090】
e7は、それぞれ独立に、単結合、-O-又は-CRe1e1-である。Re8は、直鎖状又は分岐状の炭素数1~4のアルキレン基であり、同一繰り返し単位内のRe2と結合して、これらが結合する炭素原子と共に炭素数3~6の非芳香環を形成してもよい。このとき、非芳香環の水素原子が(CFC(OH)基で置換されていてもよい。
【0091】
e9は、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基又は1,4-ブチレン基であり、エステル結合を含んでいてもよい。Re10は、直鎖状の炭素数1~6のパーフルオロアルキル基、3H-パーフルオロプロピル基、4H-パーフルオロブチル基、5H-パーフルオロペンチル基又は6H-パーフルオロヘキシル基である。Re9がメチレン基のときは、その1つ以上の水素原子がRe10で置換されていてもよい。
【0092】
は、それぞれ独立に、-C(=O)-O-、-O-又は-C(=O)-Re11-C(=O)-O-であり、Re11は、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~10のアルキレン基である。
【0093】
また、(a’-1)、(a’-2)、(a’-3)、b’及びc’の共重合比率(モル比)は、0≦(a’-1)≦1、0≦(a’-2)≦1、0≦(a’-3)≦1、0≦b’≦1、及び0≦c’≦1であり、0<(a’-1)+(a’-2)+(a’-3)+b’+c’≦1である。
【0094】
なお、ここで、(a’-1)+(a’-2)+(a’-3)+b’+c’=1とは、繰り返し単位(a’-1)、(a’-2)、(a’-3)、b’、c’を含む高分子化合物において、繰り返し単位(a’-1)、(a’-2)、(a’-3)、b’、c’の合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%であることを示し(a’-1)+(a’-2)+(a’-3)+b’+c’<1とは、繰り返し単位(a’-1)、(a’-2)、(a’-3)、b’、c’の合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%未満で(a’-1)、(a’-2)、(a’-3)、b’、c’以外に他の繰り返し単位を有していることを示す。
【0095】
前記繰り返し単位の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。なお、下記式中、Re1は、前記と同じである。
【化38】
【0096】
前記高分子型界面活性剤のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量Mwは、1,000~50,000が好ましく、2,000~20,000がより好ましい。この範囲内であれば、表面改質効果が十分であり、現像欠陥を生じたりすることが少ない。
【0097】
前記水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤は、特開2008-122932号公報、特開2010-134012号公報、特開2010-107695号公報、特開2009-276363号公報、特開2009-192784号公報、特開2009-191151号公報、特開2009-98638号公報、特開2010-250105号公報、特開2011-42789号公報等も参照できる。
【0098】
上記界面活性剤の配合量は、ベース樹脂100質量部に対し、0~20質量部であるが、配合する場合、その下限は、0.001質量部が好ましく、0.01質量部がより好ましい。一方、その上限は、15質量部が好ましく、10質量部がより好ましい。
【0099】
[パターン形成方法]
本発明は、更に上述したレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成し、マスクを前記レジスト膜にかざし、高エネルギー線を照射して露光した後、アルカリ現像液で現像して前記基板上にパターンを形成するパターン形成方法であって、高エネルギー線による露光が248nmのKrFエキシマーレーザー、波長193nmのArFエキシマーレーザー、波長13.5nmのEUV、又は電子ビームによることを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0100】
本発明のレジスト組成物を使用してパターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができ、例えば、集積回路製造用の基板(Si,SiO,SiN,SiON,TiN,WSi,BPSG,SOG,有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr,CrO,CrON,MoSi等)にスピンコーティング等の手法で膜厚が0.05~2.0μmとなるように塗布し、これをホットプレート上で60~150℃、1~10分間、好ましくは80~140℃、1~5分間プリベークする。次いで目的のパターンを形成するためのマスクを上記のレジスト膜上にかざし、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーあるいはEUVの如き高エネルギー線を露光量1~200mJ/cm、好ましくは10~100mJ/cmとなるように照射する。露光は通常の露光法の他、場合によってはマスクとレジスト膜の間を液浸するImmersion法を用いることも可能である。その場合には水に不溶な保護膜を用いることも可能である。次いで、ホットプレート上で、60~150℃、1~5分間、好ましくは80~140℃、1~3分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。更に、0.1~5質量%、好ましくは2~3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1~3分間、好ましくは0.5~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。
【0101】
なお、本発明のパターン形成方法の現像液には上述のように0.1~5質量%、好ましくは2~3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用いることができる。
【実施例
【0102】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
【0103】
各繰り返し単位の構造を以下に示す。
【0104】
[(p-1)~(p-3)単位]
【化39】
【0105】
[(a-1)単位]
【化40】
【0106】
[(a-2)単位]
【化41】
【0107】
[(b-1)単位]
【化42】
【0108】
[(c-1)単位]
【化43】
【0109】
[ポリマー合成例]
(ポリマー合成例1)
窒素雰囲気下、モノマーA-1を5.7g、モノマーB-1を2.6g、モノマーC-1を6.3g、モノマーD-1を5.5g、V-601(和光純薬工業(株)製)0.24g、2-メルカプトエタノール0.2g及びメチルエチルケトン25gをフラスコにとり、単量体-重合開始剤溶液を調製した。窒素雰囲気とした別のフラスコにメチルエチルケトン23gをとり、撹拌しながら80℃まで加熱した後、前記単量体-重合開始剤溶液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、重合液の温度を80℃に保ったまま2時間撹拌を続け、次いで室温まで冷却した。得られた重合液を、激しく撹拌したメタノール320g中に滴下し、析出したポリマーを濾別した。ポリマーをメタノール120gで2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して、18gの白色粉末状のポリマーP-1を得た。
(ポリマー合成例2~44)
同様の手順により、表1に示すモノマー組成と導入比率で、ポリマーP-2~P-44を合成した。
【0110】
【表1】
【0111】
[レジスト組成物の調製]
次に上記高分子化合物と各種オニウム塩1(発生酸がpKa-1以上)とオニウム塩2(発生酸がpKa-1未満)と含窒素化合物と界面活性剤としてアルカリ可溶型界面活性剤高分子化合物SF-1を一部のレジストに添加し、住友スリーエム(株)製界面活性剤のFC-4430をすべてのレジストに100ppm溶解させた。溶解後にテフロン(登録商標)製フィルター(口径0.2μm)を濾過し、下記表2-1,2-2,3に示すレジスト組成物を調製した。
【0112】
【表2-1】
【0113】
【表2-2】
【0114】
【表3】
【0115】
オニウム塩1、オニウム塩2の組成式、含窒素化合物、アルカリ可溶型界面活性剤の組成式を以下に示す。
[オニウム塩1]
【化44】
【0116】
[オニウム塩2]
【化45】
【0117】
[含窒素化合物]
【化46】
【0118】
[アルカリ可溶型界面活性剤(SF-1):下記式で表されるポリマー]
【化47】
【0119】
前記表中に示した溶剤は以下のとおりである。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
GBL:γ-ブチロラクトン
【0120】
ClogP値は、Cambridge Soft Corporation社製のソフトChemDraw Ultra(登録商標)を使用した。ポリマー導入時を再現するためにモノマーの重合性基を還元した状態で計算した。計算結果を表4に示す。ΔCLogP値とは、酸によって脱保護される前のCLogP値と脱保護された後の主鎖側のCLogP値の差を表している。本発明では、繰り返し単位(a-1)に相当するモノマーB-1~B-15においてはΔCLogPが3.0~4.5の範囲内のB1~B10が実施例に相当し、範囲外のB-11~B-15を使用したポリマーが比較例に挙げられる。同様に繰り返し単位(a-2)に相当するモノマーC-1~C-10においてはΔCLogPが2.5~3.2の範囲内のC-1~C-2、C-5~C-6、C-9~C-10が実施例に相当し、範囲外のC-3~C-4、C-7~C-8を使用したポリマーが比較例に相当する。
【0121】
【表4】
【0122】
[EUV露光パターニング評価(ホールパターン評価)]
本発明のレジスト組成物(R-1~R-29)及び比較用のレジスト組成物(R-30~R-51)を、東京エレクトロン製のクリーントラックLithius ProZを用いてBRUWER SCIENCE社製の20nmの膜厚の有機反射防止膜AL-412が成膜された基板上にコーティングし、ホットプレート上に105℃で60秒間ベークし、50nmのレジスト膜を形成した。ASML社製のEUV露光機NXE3300を用いて、マスク上の寸法がピッチ46nmで27.5nmの格子パターンを露光し、露光後レジスト組成物毎に適したPEB温度を施した後、2.38%のテトラメチルアンモニウム水溶液をウェハを回転させながら吐出させ、合計30秒間現像させ、水でアルカリ溶液を洗い流し、ウェハを高速度で回転させ水を除去した。
【0123】
(感度評価)
作成したレジストパターンを日立ハイテクノロジーズ製のCD-SEM CG-5000で観察し、ピッチ46nmにおいてホール径23nmとなる露光量を最適露光量Eop(mJ/cm)とした。
【0124】
(寸法均一性(CDU)評価)
得られたホールパターンを日立ハイテクノロジーズ製のCD-SEM CG-5000で観察し、1サンプルにつき1つのホールでホール径を32点測長し、1枚のSEM画像から49のホールを測長し、その結果から算出した標準偏差(σ)の3倍値(3σ)を求め、30枚のSEM像を取得し、標準偏差の平均値をCDUとした。CDUは、その値が小さいほど、寸法均一性が優れることを意味する。概ね3.0以下をCDUが良好とする。DOFは、焦点深度を示す。概ね140nm以上を良好とする。
【0125】
【表5】
【0126】
【表6】
【0127】
表5,6に示した結果より、本発明のレジスト組成物(実施例1-1~1-29)は、CDUが3.0以下で、かつDOF(焦点深度)が140nm以上であり、アルカリ水溶液現像によるポジティブパターン形成においてCDUにも優れて、DOFが十分広いことがわかった。一方、比較例(比較例1-1~1-22)では、CDUとDOFの両方が上記数値範囲を満たさない。以上のことから、本発明のレジスト組成物は、アルカリ水溶液現像プロセスに有用であることが示された。
【0128】
QCM(クォーツクリスタルマイクロバランス)法を用いた現像中のレジスト組成物の膨潤評価
上記表2-1、2-2に示す組成で調製した本発明のレジスト組成物及び比較例のレジスト組成物を、QCM基板に厚さ100nmとなるようにスピンコートし、ホットプレートで105℃、60秒間ベークした。その後、ArFオープンフレーム露光装置で露光量1mJ/cmから13mJ/cmまでステップ1mJ/cmで露光し、露光後ホットプレートを用いて表7に示される温度で60秒間ベーク(PEB)した。その後、QCM基板上のレジスト膜を現像解析装置RDA-Qz3(リソテックジャパン(株)製)を用いて、現像液2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液における、現像時間に対するレジスト膜の膜厚変動を観察した。各露光量における現像時間と膜厚変動を示すグラフから、最大膨潤量を示す露光量と、最大膨潤量比(最大膨潤量を初期膜厚で規格化した値)を表7に示す。最大膨潤量比が小さいほどレジスト膜の膨潤が抑制される。
【0129】
【表7】
【0130】
表7の結果から本発明の繰り返し単位(a-2)を含むレジスト組成物(実施例2-1~2-3)は繰り返し単位(a-2)を含まないレジスト組成物(比較例2-1、2-3)よりも最大膨潤量比が小さいことが確認された。比較例2-2は繰り返し単位(a-2)を含むが、繰り返し単位(a-1)を含まないため最大膨潤量比が小さいことが確認された。
【0131】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。