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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】ガスタービンの燃焼制御方法
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/32 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
F23R3/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020100420
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021195876
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-01-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲路▼宇
(72)【発明者】
【氏名】西江 俊介
(72)【発明者】
【氏名】黛 健斗
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-193480(JP,A)
【文献】特開2006-145073(JP,A)
【文献】特開2007-024357(JP,A)
【文献】特開平08-121771(JP,A)
【文献】特開平06-213456(JP,A)
【文献】特開2010-175244(JP,A)
【文献】特開平04-139312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/042
F02C 9/00
F23R 3/28
F23R 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、圧縮された空気が供給される予混合燃焼による燃焼器と、燃焼ガスが供給されるタービンとを備え、
圧縮機の吸気側に入口ガイド翼が配され、
燃焼器内筒の中央部にパイロット燃料用ノズルが配され、
このパイロット燃料用ノズルの周囲に、メイン燃料用ノズルを備えると共に、円筒形の胴部に複数個の空気孔が形成された複数本の予混合管が配され、
前記複数個の空気孔は胴部の軸方向で複数列が形成され、燃焼ガスの流れ方向の、上流側に配された列の空気孔の数が下流側に配された列の空気孔の数よりも多く形成され、
タービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度のいずれか一方または双方を測定し、
予め計測して設定した燃料の当量比とタービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度のいずれか一方または双方との関係に基づいて、
タービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度の測定温度に対して入口ガイド翼の開口面積を調整することを特徴とするガスタービンの燃焼制御方法。
【請求項2】
圧縮機と、圧縮された空気が供給される予混合燃焼による燃焼器と、燃焼ガスが供給されるタービンとを備え、
圧縮機の吸気側に入口ガイド翼が配され、
燃焼器内筒の中央部にパイロット燃料用ノズルが配され、
このパイロット燃料用ノズルの周囲に、メイン燃料用ノズルを備えると共に、円筒形の胴部に複数個の空気孔が形成された複数本の予混合管が配され、
前記複数個の空気孔は胴部の軸方向で複数列が形成され、燃焼ガスの流れ方向の、上流側に配された列の空気孔の数が下流側に配された列の空気孔の数よりも多く形成され、
タービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度のいずれか一方または双方を測定し、
予め計測して設定した燃料の当量比とタービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度のいずれか一方または双方との関係に基づいて、
タービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度の測定温度に対してメイン燃料を噴射する予混合管の数を調整することを特徴とするガスタービンの燃焼制御方法。
【請求項3】
圧縮機と、圧縮された空気が供給される予混合燃焼による燃焼器と、燃焼ガスが供給されるタービンとを備え、
圧縮機の吸気側に入口ガイド翼が配され、
燃焼器内筒の中央部にパイロット燃料用ノズルが配され、
このパイロット燃料用ノズルの周囲に、メイン燃料用ノズルを備えると共に、円筒形の胴部に複数個の空気孔が形成された複数本の予混合管が配され、
前記複数個の空気孔は胴部の軸方向で複数列が形成され、燃焼ガスの流れ方向の、上流側に配された列の空気孔の数が下流側に配された列の空気孔の数よりも多く形成され、
タービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度のいずれか一方または双方を測定し、
予め計測して設定した燃料の当量比とタービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度のいずれか一方または双方との関係に基づいて、
タービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度の測定温度に対して、
入口ガイド翼の開口面積を調整すること、
または/および
メイン燃料を噴射する予混合管の数を調整すること、
を特徴とするガスタービンの燃焼制御方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のガスタービンの燃焼制御方法であって、
前記当量比は、タービン翼のメタル温度と燃焼振動、燃焼効率、排気ガスのNOx濃度とのそれぞれの基準値を満たす値となる状態のタービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度との関係を求めて、この関係に基づいて測定温度から入口ガイド翼の開口面積を調整することを特徴とするガスタービンの燃焼制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガスタービンの燃焼制御方法に関し、特に、定格負荷時以外における燃焼制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気雰囲気中に燃焼ガスを噴射する拡散燃焼では、燃焼ガスと空気とが十分に混合せずに高い濃度の状態で燃焼が行われるため燃焼温度が高くなって、NOx(窒素酸化物)の排出濃度が高くなる。そこで、水蒸気あるいは水を燃焼領域に噴射して燃焼温度を下げることでNOx濃度の低減が図られる。
しかし、燃料の供給量に対して多くの水量が必要とされ、ガスタービンプラントの効率を低下させてしまう虞がある。
【0003】
このため、水蒸気や水を噴射することなく低NOxを排出できるようにする希釈予混合燃焼が採用される。希釈予混合燃焼は、燃焼ガスを空気と混合させて、低い濃度に希釈された混合ガスを燃焼領域に供給して、燃焼を行わせている。この予混合気の燃焼温度は低くなるため、NOxの生成が抑制されて濃度の低いNOxを排出する。
【0004】
一方、定格負荷時における燃焼が安定的に行われるようにするため、混合気中の燃料の濃さの指標となる燃料の当量比が最適となるように運転される。定格運転の高負荷時には安定して燃焼が促進されて、NOx排出量が低減される。
定格負荷時には燃焼が安定することに対して、部分負荷時には定格負荷時に比べて、供給される空気が過剰となり、リーンバーン(希薄燃焼)となって不完全燃焼を生じる虞がある。
【0005】
ところで、例えば、ガスタービンが設置された工場等の施設では、昼間にはフル操業に伴われて定格負荷運転されるが、夜間や休日には、部分負荷で運転されることが多い。また、台風や地震等の災害の発生時に計画停電がなされるとサーバーセンター等の重要施設への送電にガスタービンにより発生する電力が充当されるが、この種の重要設備には定格負荷よりも低い負荷での部分負荷運転が要求される。このような、部分負荷運転時であっても、安定な燃焼と低NOx排出は要求される。
【0006】
部分負荷時には必要とされる燃料量が少なく、燃料の当量比が低くなる。このような条件で予混合燃焼を行うと燃焼が不安定となり、燃焼振動や失火が懸念されて、正常な運転を期待できない虞が生じる。なお、拡散燃焼を行うことで安定的な運転を期待できるが、NOxの排出量が増加することになるのは、前述の通りである。
【0007】
部分負荷時におけるリーンバーンを生じないように、特許文献1には、圧縮空気取入口前に設けた空気流量調整用可変翼により空気量を調整し、適正な燃空比範囲を実現させ、有害排気物の減少を図る環境対策型ガスタービンが提案されている。
【0008】
また、特許文献2には、ガスタービンエンジンに、入口空気質量流を制御するための少なくとも1つの列の調整可能な可変翼を備えた少なくとも1つの圧縮機と、少なくとも1つの燃焼器と、少なくとも1つのタービンとが設けられており、制御システムを有しており、制御システムが、圧縮機の上流で測定された少なくとも1つの測定された温度値又は圧縮機に直接に機能的に関連して測定可能な量に関して、可変翼の位置を制御するガスタービンシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭61-58928号公報
【文献】特開2011-27106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された環境対策型ガスタービンでは、インレットダクト内に設けられた絞り弁を、低負荷時の空気過剰時には絞って圧縮機に入る空気流量を減少させ、燃焼機内で適正な燃空比に設定される、とするものである。また、特許文献2に記載されたガスタービンシステムの制御方法は、圧縮機の上流で測定された温度値等に基づいて可変翼の位置を制御するものである。
【0011】
この発明は、入口ガイド翼(IGV:Inlet Guide Vane)によって燃焼制御を行うことで、部分負荷時であっても安定的に予混合燃焼を可能として、NOx排出量を減少させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、この発明に係るガスタービンの燃焼制御方法は、圧縮機と、圧縮された空気が供給される予混合燃焼による燃焼器と、燃焼ガスが供給されるタービンとを備え、圧縮機の吸気側に入口ガイド翼が配され、タービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度のいずれか一方または双方を測定し、予め計測して設定した燃料の当量比とタービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度のいずれか一方または双方との関係に基づいて、タービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度の測定温度に対して入口ガイド翼の開口面積を調整することを特徴としている。
【0013】
予め燃焼が安定して、NOxの排出量が良好となる燃料と空気の当量比を求め、それをタービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度の一方または双方との関係を求める。そして、タービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度の一方または双方をパラメータとして、アクチュエータ等を駆動させて、入口ガイド翼の開度を変更することにより空気量を調整し、当量比が安定した燃焼を行える値となるように調整する。
【0014】
また、この発明に係るガスタービンの燃焼制御方法は、圧縮機と、圧縮された空気が供給される予混合燃焼による燃焼器と、燃焼ガスが供給されるタービンとを備え、圧縮機の吸気側に入口ガイド翼が配され、燃焼器内筒の中央部にパイロット燃料用ノズルが配され、このパイロット燃料用ノズルの周囲にメイン燃料用ノズルを備えた複数本の予混合管が配され、タービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度のいずれか一方または双方を測定し、予め計測して設定した燃料の当量比とタービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度のいずれか一方または双方との関係に基づいて、タービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度の測定温度に対して入口ガイド翼の開口面積を調整することを特徴としている。
【0015】
すなわち、予混合燃焼による燃焼器を備えたタービンとするものである。予混合管は、パイロット燃料用ノズルを中心として複数が設置されて、それぞれの予混合管にメイン燃料用ノズルが配されている構造を備えている。
【0016】
また、この発明に係るガスタービンの燃焼制御方法は、圧縮機と、圧縮された空気が供給される予混合燃焼による燃焼器と、燃焼ガスが供給されるタービンとを備え、圧縮機の吸気側に入口ガイド翼が配され、燃焼器内筒の中央部にパイロット燃料用ノズルが配され、このパイロット燃料用ノズルの周囲にメイン燃料用ノズルを備えた複数本の予混合管が配され、タービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度のいずれか一方または双方を測定し、予め計測して設定した燃料の当量比とタービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度のいずれか一方または双方との関係に基づいて、タービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度の測定温度に対してメイン燃料を噴射する予混合管の数を調整することを特徴としている。
【0017】
タービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度の一方または双方の測定温度に対して、メイン燃料用ノズルから噴射するメイン燃料量を、予混合管の数を増減させて調整するものである。例えば、6本の予混合管を備えている場合、定格負荷運転時にはすべての予混合管からメイン燃料を噴射させ、部分負荷運転時には、2本の予混合管からの噴射とする。そして、負荷の増加に伴って噴射させる予混合管の本数を増加させる。なお、噴射の有無は、メイン燃料用ノズルにメイン燃料を供給する供給管に配された調整弁を開閉することにより行われる。
【0018】
また、この発明に係るガスタービンの燃焼制御方法は、圧縮機と、圧縮された空気が供給される予混合燃焼による燃焼器と、燃焼ガスが供給されるタービンとを備え、圧縮機の吸気側に入口ガイド翼が配され、燃焼器内筒の中央部にパイロット燃料用ノズルが配され、このパイロット燃料用ノズルの周囲にメイン燃料用ノズルを備えた複数本の予混合管が配され、タービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度のいずれか一方または双方を測定し、予め計測して設定した燃料の当量比とタービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度のいずれか一方または双方との関係に基づいて、タービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度の測定温度に対して、入口ガイド翼の開口面積を調整すること、または/およびメイン燃料を噴射する予混合管の数を調整することを特徴としている。
【0019】
タービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度の一方または双方を測定して、入口ガイド翼の開口面積の調整と、予混合管の噴射本数の調整の一方または双方を行うことにより当該時の負荷に応じて安定した燃焼を行えるようにしたものである。
【0020】
また、上述のガスタービンの燃焼制御方法であって、前記当量比は、タービン翼のメタル温度と燃焼振動、燃焼効率、排気ガスのNOx濃度とのそれぞれの基準値を満たす値となる状態のタービン入口ガス温度またはタービン排気ガス温度との関係を求めて、この関係に基づいて測定温度から入口ガイド翼の開口面積を調整することが好ましい。
【0021】
最適な当量比の値を求める場合に、
(1)タービン翼のメタル温度が設計上限以下の値であること。
(2)燃焼振動が基準以下であること。
(3)燃焼効率が基準以上であること。
(4)排気ガスのNOx濃度が規制値以下であること。
を満たすようにタービンの運転を行って、これら(1)~(4)の条件を満たす当量比を、予め試験や解析によって見出すものである。
【発明の効果】
【0022】
この発明に係るガスタービンの燃焼制御方法によれば、部分負荷運転時であっても安定した燃焼を行うことができると共に、NOx排出量を減じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】この発明に係るガスタービンの燃焼制御方法における制御態様を説明するグラフである。
図2】この発明に係る燃焼制御を実施するガスタービンの一例の構造を示す概略の断面図である。
図3】この発明に係る燃焼制御方法を実施するのに適した予混合管の第一の実施形態を説明する図で、予混合管の概略を示す斜視図である。
図4図3に示す予混合管の正面図である。
図5図4における5-5線に沿って切断して示す断面図である。
図6図3に示す予混合管の平面図である。
図7図3に示す予混合管を軸に直交する面で切断して示す断面図であり、(A)は図4における7A-7A線断面図、(B)は7B-7B線断面図、(C)は7C-7C線断面図、(D)は7D-7D線断面図である。
図8図3に示すガスタービンの予混合管の胴部の展開図である。
図9】この発明に係る燃焼制御方法を実施するのに適した予混合管の第二の実施形態を説明する図で、予混合管の概略を示す斜視図である。
図10図9に示す予混合管の正面図である。
図11図10における11-11線に沿って示す断面図である。
図12】予混合管における空気の取り入れ状態を説明する図で、軸に沿った面で切断して示す断面図である。
図13】軸方向に空気を取り入れる構造の予混合管示す図であり、図12に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明に係るガスタービンの燃焼制御方法を、図示した実施形態に基づいて説明する。
まず、図2を参照してこの発明に係る燃焼制御方法の実施対象となるガスタービンの一実施例の概略を説明する。
【0025】
ガスタービン100では、空気吸込口101から吸引された空気は、入口ガイド翼101aを通って圧縮機102に供給されて圧縮され、この圧縮空気は燃焼器103に導かれる。この燃焼器103は燃焼器外筒103aと燃焼器内筒103bとの二重構造とされており、圧縮空気は燃焼器内筒103bの外側に導かれる。
【0026】
燃焼器103の燃焼器内筒103bの上部には、燃焼器内筒103bの軸を中心とした円周上に、適宜本数の予混合管1がほぼ等間隔に配されて装着されている。予混合管1の下部は燃焼器内筒103bの内部と連通させてあり、上部にはメイン燃料が供給されるメイン燃料用ノズル110が配されて、燃焼器内筒103bの内部にメイン燃料が噴射される。なお、メイン燃料はそれぞれのメイン燃料用ノズル110に各別に燃料供給管110aから供給され、この燃料供給管110aにはメイン燃料の供給量を調整する調整弁110bが設けられている。この調整弁110bを開閉することにより、メイン燃料の供給量の調整と供給と遮断とを行うことができる。したがって、メイン燃料の噴射量を、メイン燃料用ノズル110のそれぞれについて各別に調整できる。また、図2には、1本のメイン燃料用ノズル110のみを示してあるが、複数本のメイン燃料用ノズル110のいずれも同様に、調整弁110bを介して燃料供給管110aによりメイン燃料が供給される。
【0027】
燃焼器内筒103bの中央上部にはパイロット燃料用ノズル111が配され、パイロット燃料が燃焼器内筒103b内に噴射される。噴射されたパイロット燃料には、図示しない点火装置によって点火される。
燃焼器内筒103bの外側に導かれた圧縮空気は予混合管1に導かれて、メイン燃料の燃焼ガスと混合して混合ガスが生成され、この混合ガスが予混合管1の下部から燃焼器内筒103bの内部に噴射されて燃焼が促進され、高温・高圧の作動ガスが発生する。
燃焼器103で発生した作動ガスがタービン104に導かれて、タービン翼を回転させて主軸105を回転させる。主軸105の回転によって、圧縮機102を回転させると共に、所望の出力回転が得られる。タービン104の回転に供された作動ガスは、排気ガスとなって排気ダクト106から排出される。
【0028】
タービン104の入り口にはタービン入口ガス温度を測定する入口温度測定器104aが設けられている。また、排気ダクト106にはタービン排気ガス温度を測定する排気温度測定器106aが設けられている。これら入口温度測定器104aと排気温度測定器106aとのそれぞれによって測定されたタービン入口ガス温度とタービン排気ガス温度は、制御装置115に提供される。
【0029】
ところで、ガスタービン100の運転時の、タービン翼のメタル温度と燃焼振動、燃焼効率、排気ガスのNOx濃度のそれぞれを測定して、メタル温度が設計上限値以下であり、燃焼振動が基準以下であり、燃焼効率が基準以上であり、排気ガスのNOx濃度が規制値以下である場合の、燃料と空気との当量比を求め、この当量比に対して、入口温度測定器104aによって測定されるタービン入口ガス温度と、排気温度測定器106aによって測定されるタービン排気ガス温度との関係を予め求めて、その関係を制御装置115に登録する。
例えば、タービン翼メタル温度と燃焼振動、燃焼効率、排気ガスのNOx濃度との関係から、最適な燃料の当量比を試験または解析により見出す。
図1は、縦軸に基準値を、横軸に入口ガイド翼101aの開度を示し、実線でタービン翼メタル温度が、破線で燃焼効率が、一点鎖線で燃焼振動が、二点鎖線でNOx濃度が、それぞれ示されている。また、縦軸におけるCとT、V、とは、それぞれ、安定した燃焼となる状態の当量比の燃焼効率とタービン翼メタル温度、燃焼振動のそれぞれの基準値を示している。そして、タービン翼メタル温度が基準値(設計上限値)T以下、燃焼効率が基準値C以上、燃焼振動が基準値V以下、NOx濃度が規制値以下となる入口ガイド翼101aの開度調整範囲Rを求める。なお、基準値Vに対応したIGV開度がvで、基準時Tに対応したIGV開度がtで、基準値Cに対応したIGV開度がcで、それぞれ示されている。図1に示されているように、開度調整範囲Rは、開度cと開度tの間の開度となる。そして、この安定した燃焼を維持する当量比となる際の、タービン入口ガス温度とタービン排気ガス温度との関係を求めて、この関係が前記制御装置115に登録されている。
なお、NOx濃度の規制値は、図1における開度tよりも絞られた側の値となり、開度範囲RではNOx濃度が規制値以下となる。
【0030】
また、制御装置115の出力信号は、入口ガイド翼101aの開度を調整するアクチュエータの駆動信号とされている。
【0031】
次に、ガスタービンの燃焼制御について説明する。
入口温度測定器104aによって測定されたタービン入口ガス温度と、排気温度測定器106aによって測定されたタービン排気ガス温度との測定値が制御装置115に入力される。制御装置115では、入力されたタービン入口ガス温度とタービン排気ガス温度とのいずれか一方又は双方の測定値に対する開度範囲Rとなるように駆動信号を入口ガイド翼101aのアクチュエータに出力する。これにより、入口ガイド翼101aの開度が変更され、空気の供給量が良好な燃焼を維持できる当量比となるように調整される。このため、負荷が変動して部分負荷運転となった場合でも安定した燃焼を維持でき、排気ガスのNOx濃度をほぼ一定に保つことができる。
なお、タービン入口ガス温度を測定することよりも、タービン排気ガス温度を測定する場合の方が簡易な測定器でよく、測定が簡便となるので、タービン排気ガス温度をパラメータとすることが好ましい。
【0032】
次に、この燃焼制御方法によるガスタービンが具備する予混合管の構造について説明する。
【0033】
図3図8には、第一の実施形態に係る構造を備えた予混合管1が示されている。この予混合管1は円筒形の胴部1aの上部が、中央部を除いて底板1bによって閉鎖されており、この底板1bの中央部にはメイン燃料用ノズル110を保持させるノズル支持管11が、シール11aを介して装着されている。なお、予混合管1のノズル支持管11の側が、メイン燃料の流れの上流側となる。
また、胴部1aの下部、すなわちメイン燃料の流れの下流側は、徐々に縮径されて下部側が小径とされた筒状体の円錐形胴部1cが連続している。また、この円錐形胴部1cからは胴部1aの軸Cの方向に対して偏倚させた方向に開口1dが指向するように、傾斜管部1eが連続している。また、この開口1dは、図4に示すように、円形とされている。
【0034】
予混合管1の胴部1aには、適宜数の空気孔1a1、1a2、1a3、1a4が形成されている。この空気孔1a1、1a2、1a3、1a4は、図8の展開図に示すように、予混合管1の上流側で周方向に形成された空気孔1a1の数が、その下流側に周方向に形成された空気孔1a2~1a4の数よりも多くしてある。この実施形態では、軸C方向に4列の空気孔1a1、1a2、1a3、1a4が並設されたものを示してあるが、これらの最も上流側の空気孔1a1が16個とされ、他の位置に配された空気孔1a2、1a3、1a4が8個とされている。
これらの空気孔1a1、1a2、1a3、1a4の位置関係が、図7図8に示されている。図7(A)は、図4における7A-7A線に沿って、軸Cと直交する面で切断した断面図で、この部分には16個の空気孔1a1が配されている。また、図7(B)は空気孔1a1の直近の下流側に配された空気孔1a2の部分で切断した、図4における7B-7B線に沿って切断した断面図で、この部分には8個の空気孔1a2が配されている。この8個の空気孔1a2は、16個の空気孔1a1に対して一つおきに軸C方向で重なる位置に配されている。また、空気孔1a2の直近の下流側に配された空気孔1a3は8個とされており、図7(B)と図7(C)に示されているように、空気孔1a2の位置と周方向に22.5°の角度でずれた位置に配されている。そして、最下流に配された空気孔1a4は、8個が周方向に配されており、図7(B)と図7(D)とに示されているように、これら空気孔1a4は空気孔1a2と軸C方向で等しい位置に配されている。
なお、空気孔1a2、1a3、1a4については、それぞれ15°ずつの角度でずれた位置に配することで、これら空気孔1a2、1a3、1a4の全てが軸Cに沿った方向でずれた位置に配するものでも構わない。
さらに、空気孔1a1、1a2、1a3、1a4のそれぞれの径を異ならせたものとすることができる。この場合、上流側に配された空気孔1a1の径を大きくすることが好ましい。また、下流側に向かって徐々に小径とすることでも、空気孔1a2、1a3、1a4の径を等しくすることでも構わない。
【0035】
そして、この予混合管1は、図2に示されているように、開口1dを燃焼器内筒103bの中央部に指向させて配される。このため、パイロット燃料に点火された火炎に向かって混合ガスが噴射される。
また、前述したように、予混合管1のそれぞれにはメイン燃料用ノズル110が配されており、このメイン燃料用ノズル110には調整弁110bを介して燃料供給管110aからメイン燃料が供給される。また、この調整弁110bを開閉させるアクチュエータには、制御装置115から駆動信号が入力される。
【0036】
次に、この予混合管1の作用を、以下に説明する。
この予混合管1では、メイン燃料用ノズル110から噴射されたメイン燃料の燃焼ガスに対して、胴部1aに形成された空気孔1a1、1a2、1a3、1a4から圧縮空気が導入されて燃焼ガスが希釈され、予混合管1の内部で混合されて混合ガスが生成される。燃焼ガスは、メイン燃料用ノズル110による噴射直後が最も高い濃度にある。この予混合管1では、最上流側にある空気孔1a1の数が下流側の空気孔1a2、1a3、1a4の数と比べて多くしてあるから、最上流側の空気孔1a1からは多量の空気が導入される。このため、濃度の高い燃焼ガスの希釈が促進される。
また、空気孔1a2、1a3、1a4では周方向の位置をずらして配してあるため、空気孔1a2が臨んでいない位置、すなわち、周方向で隣接する空気孔1a2同士の中間の位置が臨む位置を通過する燃焼ガスには空気が導入されにくい。しかし、この空気孔1a2の下流に配された空気孔1a3は、空気孔1a2に対してずれた位置に配されているから、空気孔1a2が形成されていない部分を通過した燃焼ガスに対して空気孔1a3から導入された空気により希釈される。したがって、供給された燃焼ガスは全体として空気と均等に混合されて、所望の状態まで希釈されて燃焼に供されて、高温・高圧の作動ガスが生成される。
なお、予混合管1の下流部は胴部1aよりも小径の開口1dが形成されているから、開口1dから噴射される混合ガスの流速が大きくなる。このため、パイロット燃料の火炎に対して、高速で噴射されるので、着火した燃焼ガスの火炎が逆火することがない。
【0037】
そして、タービン104を駆動した作動ガスは、排気ダクト106から排出される。この排出される排気ガスは、予混合管1で混合されて希釈された混合ガスの燃焼ガス濃度が低いため、NOxの排出量が小さくなる。
【0038】
図9図11には、第二の実施形態に係る構造を備えた予混合管2が示されている。この実施形態に係る予混合管2の部位であって、図3図8に示す第一の実施形態に係る予混合管1と同一の部位については、同一の符号を付してある。
この予混合管2の胴部2aの上部には、中央部にノズル支持管11がシール11aを介して装着された、胴部2aと別体で形成された蓋体2bが設けられている。
胴部2aの下部には、上流側の上端部が胴部2aに連続する円形で下流側に向かって徐々に縮径されると共に、下流側の下端部が方形に形成された接続胴部2cが連続している。
そして、この接続胴部2cの下端部に、接続胴部2cと連続する方形の傾斜管部2eの上端部が接続されており、この傾斜管部2eの下端部の開口が軸Cの方向に対して偏倚させた方向を指向するようにしてある。すなわち、開口2dは、図10に示すように、方形とされている。
【0039】
予混合管2の胴部2aには、第一の実施形態に係る予混合管1の胴部1aと同様に、適宜数の空気孔2a1、2a2、2a3、2a4が設けられている。これら空気孔2a1、2a2、2a3、2a4は、予混合管1の胴部1aに形成された空気孔1a1、1a2、1a3、1a4と同一の数が同位置に配置されている。したがって、胴部2aに形成された空気孔2a1、2a2、2a3、2a4に関しては、第一の実施形態に係る予混合管1の胴部1aの断面を示している図7(A)~(D)と同様の断面形状となる。
【0040】
この予混合管2についても、予混合管1の場合と同様に、図2に示されているように、開口2dを燃焼器内筒103bの中央部に指向させて配され、パイロット燃料に点火された火炎に向かって混合ガスが噴射される。しかも、開口2dの開口面積が胴部2aの断面積よりも小さいため、混合ガスの流速が大きくなって逆火が防止される。
【0041】
予混合管1、2は複数本が燃焼器内筒103bの上部に、円周上に配されており、それぞれの設けられたメイン燃料用ノズル110には、メイン燃料を供給する燃料供給管110aに調整弁110bが介在されている。この調整弁110bの開閉を担うアクチュエータには、制御装置115から駆動信号が入力されている。
そして、タービンの負荷が変動した場合には、制御装置115からの駆動信号に基づいて、調整弁110bが開閉されて、メイン燃料を噴射するメイン燃料用ノズル110の本数が変更される。すなわち、部分負荷運転時には、噴射させるメイン燃料用ノズル110の本数を減じてメイン燃料の噴射量を減少させ、負荷の増加と共に噴射量を増加させる。
例えば、6本の予混合管1、2を配し、部分負荷運転時には2本の予混合管1、2のメイン燃料用ノズル110からメイン燃料を噴射させ、定格負荷運転時には、6本のメイン燃料用ノズル110から噴射させるようにする。
したがって、負荷の増減に応じてメイン燃料を減じることで、当量比が調整されて、良好な燃焼を維持できるものである。
【0042】
このメイン燃料用ノズル110の噴射本数を増減することに加えて、入口ガイド翼101aの開度の変更を組み合わせてタービンの燃焼制御を行うこともできる。
これらメイン燃料用ノズル110の噴射本数の増減と、入口ガイド翼101aの開度の変更とを組み合わせて、タービンの燃焼制御を行うことにより、より安定した燃焼を維持させることができる。
【0043】
以上に説明した予混合管1、2では、図12に示すように、胴部1a、2aの側方から燃焼ガスを希釈させる予混合用空気が供給されることになる。
他方、図13は予混合管4の上部開口4aから空気を取り入れる構造を示している。この予混合管4では、空気が上方から取り入れられる構造であるため、ガスタービン100の天蓋112と予混合管4の上部開口4aとの間の距離を大きくすることを要する。
これに対して、本願発明に係る構造を備えた予混合管1、2では側方から空気が取り入れられるため、図12に示すように、予混合管1、2の上部と天蓋112との間の距離は、小さくすることができる。
このため、ガスタービン100の高さを小さくして、ガスタービン100の小型化を図ることができる。
【0044】
この発明に係るガスタービンの燃焼制御方法によれば、負荷の変動があった場合であっても安定した燃焼を維持でき、特に、夜間等の部分負荷運転時における燃焼を安定させて、ガスタービンの高効率での運転に寄与する。
【符号の説明】
【0045】
1 予混合管
1a 胴部
1b 底板
1c 円錐形胴部
1d 開口
1e 傾斜管部
1a1、1a2、1a3、1a4 空気孔
11 ノズル支持管
11a シール
2 予混合管
2a 胴部
2b 蓋体
2c 接続胴部
2d 開口
2e 傾斜管部
2a1、2a2、2a3、2a4 空気孔
100 ガスタービン
101 空気吸込口
101a 入口ガイド翼
102 圧縮機
103 燃焼器
103a 燃焼器外筒
103b 燃焼器内筒
104 タービン
104a 入口温度測定器
105 主軸
106 排気ダクト
106a 排気温度測定器
110 メイン燃料用ノズル
110a 燃料供給管
110b 調整弁
111 パイロット燃料用ノズル
112 天蓋
115 制御装置
C 軸
R 開度範囲
図1
図2
図3
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図5
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図8
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図10
図11
図12
図13