IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7344203マイクロリソグラフィのためのマスクの認定のための方法
<>
  • 特許-マイクロリソグラフィのためのマスクの認定のための方法 図1
  • 特許-マイクロリソグラフィのためのマスクの認定のための方法 図2
  • 特許-マイクロリソグラフィのためのマスクの認定のための方法 図3
  • 特許-マイクロリソグラフィのためのマスクの認定のための方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】マイクロリソグラフィのためのマスクの認定のための方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/84 20120101AFI20230906BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
G03F1/84
G03F7/20 501
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020528220
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018081554
(87)【国際公開番号】W WO2019101646
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-07-21
(31)【優先権主張番号】102017220872.4
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】ヘルヴェク ディルク
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-310228(JP,A)
【文献】国際公開第2014/047610(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0032896(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0035712(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0004233(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロリソグラフィのためのマスク(1)の認定のための方法であって、
1.1.ウエハ(8)に結像されることになるマスク構造(6)を有するマスク(1)を提供するステップと、
1.2.ウエハ(8)上に生成されることになるウエハ構造(14)によって満たされなければならない少なくとも1つの境界条件を予め定義するステップと、
1.3.前記マスク(1)の複数の空間像(9)を決定するステップと、
1.4.前記マスク(1)によって生成可能な前記ウエハ構造(14)を予測するためのシミュレーションによって、前記ウエハ(8)上の前記空間像(9)のうちの少なくとも1つの効果を決定するステップであって、前記シミュレーションは前記少なくとも1つの境界条件と比較される、ステップと、
を含み、
1.5.前記シミュレーションにおいて、レジストモデル及びッチングモデルが、前記ウエハ(8)上の前記空間像(9)のうちの少なくとも1つの前記効果を決定するために使用され、前記マスクの実際にキャプチャされた空間像が前記レジストモデル及び前記エッチングモデルへの入力として使用され、
1.6.前記レジストモデル及び記エッチングモデルは、リソグラフィプロセス(2)を特徴付けるためのモデルの一部であり、前記レジストモデル及び前記エッチングモデルは、ウエハ(8)上で測定されたウエハ構造(14)によって共同で較正される、
方法。
【請求項2】
種々のマスク構造(6)の複数の像が、前記マスク(1)の前記少なくとも1つの空間像(9)を決定するために記録されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのマスク構造(6)の複数の空間像(9)が、異なる焦点面内に記録されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記レジストモデル及び/又は前記エッチングモデルを較正するために、前記ウエハ上の構造が、電子顕微鏡を使用して測定されることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記モデルを較正することは、空間像生成までのプロセスのための第1のサブモデルの較正と前記空間像生成後に行われるプロセスのための第2のサブモデルの較正とを含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
光学モデルが、前記マスク(1)の前記少なくとも1つの空間像(9)を決定するために使用されることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記光学モデルが、実際にキャプチャされた空間像データに基づいて較正されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記マスク(1)を結像させるために実際に使用されることになるスキャナの条件に少なくとも実質的に対応する所定の照明及び/又は結像条件が、前記光学モデルを較正するために使用されることを特徴とする、請求項又はに記載の方法。
【請求項9】
前記光学モデルを較正するために、予測誤差が、メリット関数を使用して最小化され、前記マスク構造の全ての平方偏差の合計が、前記メリット関数として使用されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
最大許容エッジ配置誤差、線幅の最大許容変動又はずれ、構造の範囲の最大変動又はずれ、線幅の水平-垂直寸法の最大許容非対称性、最大許容線粗度、という変数からの選択が、境界条件として予め定義されることを特徴とする、請求項7からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記シミュレーションの不確実性、及び/又は統計学的変動が、前記マスク(1)の定において考慮されることを特徴とする、請求項7から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
マイクロリソグラフィのためのマスク(1)の認定のためのシステムであって、
12.1.マイクロリソグラフィのためのマスク(1)のマスク構造(6)の複数の空間像(9)をキャプチャするためのデバイスと、
12.2.前記マスク(1)によって生成可能なウエハ構造(14)を測定するためのデバイスと、
12.3.測定された空間像(9)からウエハ構造(14)を予測するための計算ユニットと
を備え、
12.前記計算ユニットは、リソグラフィプロセスを特徴付けるためのモデルの一部であるレジストモデル及びッチングモデルを含み、前記計算ユニットは、前記レジストモデル及び前記エッチングモデルへの入力として前記測定された空間像(9)を使用し、前記レジストモデル及び前記エッチングモデルは、ウエハ(8)上で測定されたウエハ構造(14)によって共同で較正される、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、独国特許出願第102017220872.4号の優先権を主張し、その内容が、本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、マイクロリソグラフィ(microlithography)のためのマスクの認定(qualification)のための方法に関する。さらに、本発明は、マイクロリソグラフィのためのマスクの認定のためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロリソグラフィでは、フォトマスクの構造は、ウエハ上に結像される(image)。このようにウエハ上に製造可能な(生成可能な)(producible)構造は、第1にマスク構造によって、および、第2に投影露光装置の結像特性によって決まる。
【0004】
フォトマスクの認定について、マスク構造が所定のウエハ構造を製造するのに適しているか否かについて評価できることが非常に重要である。マイクロリソグラフィのためのマスクの認定のための方法およびシステムを改善することが本発明の目的である。
【0005】
これらの目的は、本発明の独立請求項の特徴によって達成される。
【発明の概要】
【0006】
本発明の中心は、マイクロリソグラフィのためのマスクの認定のために、マスクの少なくとも1つの空間像(aerial image)の検出を、ウエハ上の空間像の効果を決定するためのシミュレーションと組み合わせることからなる。
【0007】
本発明によれば、このことにより、マスクの認定は、前記マスクによって製造可能なウエハ構造によって可能であるということが認識された。これは、マスクの認定をより信頼できるものにする。
【0008】
レジストモデルおよび/またはエッチングモデルは、ウエハ上の1つまたは複数の空間像のうちの少なくとも1つの効果を決定するために使用される。
【0009】
レジストモデルは、マスクの像によるウエハの露光から生じるウエハのフォトレジストの構造を予測するのに役立つ。
【0010】
フォトレジストは、犠牲層である。フォトレジストは、ウエハ製造プロセスにおけるエッチングステップの後に除去される。フォトレジストは、後で電気的に使用されるウエハの構造を構造化するためのエッチングマスクとして役立つ。エッチングプロセスは、エッチングモデルによってシミュレートされる。
【0011】
マスクの認定について、前記マスクによって製造可能なウエハ構造の予測は、製造予定のウエハ構造によって満たされなければならない少なくとも1つの所定の境界条件と比較される。
【0012】
例えば、境界条件は、製造予定のコンポーネントの、詳細にはチップの、電気的機能から生じる。例として、エッジ配置誤差は、最大でも電気的短絡を生じないような大きさであることが可能とされ、または、構造規模誤差は、最大でも電気容量についての要件が満たされるような大きさであることが可能とされる。
【0013】
本発明による方法によって、マスクの認定のための実際の関係変数、詳細にはウエハ構造、を使用することが可能である。詳細には、一般に互いに独立していない単なる個々の誤差の寄与ではなく、ウエハ上のマスクの直接的な効果が認定される。詳細には、より信頼できるマスクの認定が、結果として可能になる。
【0014】
本発明によれば、詳細には、例えば、エッジ配置誤差への種々の寄与の別個の測定の場合に、補償効果が使用されることが不可能であることが認識された。本発明によるマスクの統合認定(integral qualification)は、マスクの特徴付けを改善し、詳細には、マスク収率(mask yield)を増加させる。本発明による方法によって、詳細には、マスク誤差の特徴付けへの複数の寄与を別々に決定すること、および/または割り当てることを行う必要はない。
【0015】
本発明による方法によって、詳細には、マスク製造および/もしくはウエハ製造の収率を増加させること、または、不良品を低減させることが可能である。
【0016】
本発明の1つの態様によれば、リソグラフィプロセスを特徴付けるためのモデルが、ウエハ上のマスクの空間像の効果のシミュレートに役立つ。前記モデルは、複数の異なるサブモデルを含むことができる。サブモデルは、詳細には、マスク設計からマスク製造までのアクションチェーン全体、マスクの光学結像、ウエハ上の放射線感光層の、詳細には、いわゆるレジスト層上の、露光およびパターニング、ならびに、プロセスされたウエハを製造するためにパターンを付けられたレジスト層でのウエハのエッチング、を含むことができる。モデルは、詳細には、このアクションチェーンの個々のステップ、または複数のステップ、詳細にはステップの全て、を再現することができる。この場合、モデルの異なるサブステップは、互いに独立して較正されることが可能である。
【0017】
リソグラフィプロセスを特徴付けるためのモデルは、計算リソグラフィモデルとも呼ばれる。
【0018】
本発明によれば、詳細には、較正後のレジストモデルおよびエッチングモデルによって、実際に測定された空間像をウエハに計算的に移送するために提供される。マスクの効果は、詳細には、プロセス後のウエハを予測するためのシミュレーションによって確かめられる。マスク製造において既にアクセス可能な空間像を、ウエハ加工のための較正後のレジストモデルおよびエッチングモデルと組み合わせると、マスクの製造中と同じくらい早く、すなわち、ウエハ露光装置でマスクを使用する前に、マスクの認定を可能にする。
【0019】
本発明のさらなる態様によれば、種々のマスク構造の複数の像が、マスクの少なくとも1つの空間像を決定するために決定される、詳細にはキャプチャされる。詳細には少なくとも10個、詳細には少なくとも20個、詳細には少なくとも30個、詳細には少なくとも50個、詳細には少なくとも100個、詳細には数千個まで、マスク構造が決定される、詳細にはキャプチャされる。決定されるマスク構造の数は、通常、100,000個未満、詳細には30,000個未満、詳細には10,000個未満である。
【0020】
種々のマスク構造は、マスク上の種々の領域に配列される構造であることが可能である。また、マスク構造は、例えば、線幅、線の頻度、線の数、または線の方向といった、マスク構造の詳細の点で異なる可能性がある。マスク構造は、詳細には、ウエハ上へのマスク構造の結像に関するパラメータについて異なる可能性がある。
【0021】
本発明のさらなる態様によれば、少なくとも1つのマスク構造の複数の空間像が、異なる焦点面(focal plane)内に記録される。好ましくは、いずれの場合でも、決定予定のマスク構造の全ての複数の空間像が、異なる焦点面内に記録される。このことにより、露光装置の焦点処理の変動を検出すること、詳細には、露光装置の効果を特徴付けることが可能である。
【0022】
本発明のさらなる態様によれば、複数の空間像は、それらの位置決め(positioning)についての登録データ(位置合わせデータ)(registration data)を用いて計算される
【0023】
登録データの使用は、個々のマスクの認定に対して特に有利である可能性があるということが認識された。結果として、精度は、詳細には、向上されることが可能である。
【0024】
レジストモデルを較正するために、ウエハのフォトレジストの構造は、電子顕微鏡を使用して測定される。フォトレジストプロセスを記述するパラメータは、入力として空間像を用いるモデルによって予測される構造からの、測定後の構造の、詳細には構造幅の、ずれ(deviation)が最小化されるように、ここで最適化されることが可能である。
【0025】
エッチングモデルは、それに応じて、プロセス後のウエハ上の構造が電子顕微鏡によって測定された後に較正されることが可能である。
【0026】
レジストモデルの、およびエッチングモデルの、別個の較正への代替として、電子顕微鏡によって測定されるプロセス後のウエハ上の構造によって、合同較正(共同較正)(joint calibration)がさらに実行されることが可能である。マスク構造の空間像データは、モデルへの入力として、改めて役立つ。
【0027】
本発明のさらなる態様によれば、レジストモデルおよび/もしくはエッチングモデル、または結合型レジストエッチングモデルは、ウエハ上で測定されたウエハ構造によって較正される。
【0028】
ウエハ構造は、詳細には、電子顕微鏡、詳細には走査型電子顕微鏡、によって測定される。
【0029】
本発明のさらなる態様によれば、レジストモデルおよび/またはエッチングモデルは、リソグラフィプロセスを特徴付けるためのモデルの一部であり、モデルは、互いに別々に較正される少なくとも2つのサブモデルを含む。詳細には、空間像の生成までのプロセス、および、後者の後に行われるプロセスの、別個の較正が行われる。
【0030】
較正は、詳細には、ウエハの露光のために提供される投影露光装置において実際に提供されるなど、照明および結像条件を使用して実行される。
【0031】
マスクの空間像がモデルによって予測されるのではなく、むしろ直接的にキャプチャされる場合、マスクの空間像は、都合のよいことに、レジストモデルおよび/もしくはエッチングモデル、または結合型レジストエッチングモデルへの入力として役立つ可能性がある。このことが、マスクによって製造可能なウエハ構造の予測をかなり改善するということがわかってきた。
【0032】
本発明のさらなる態様によれば、マスクの空間像を決定するために光学モデルが使用される。
【0033】
マスク設計を特徴付けるためのデータからの選択、電子顕微鏡によるマスク構造の測定、マスクを照らすために使用される照明設定を特徴付けるためのパラメータ、および、ウエハ上にマスクを結像させる(image)ために使用される投影露光装置の光学設計を特徴付けるためのパラメータは、前記光学モデルへの入力として役立つ。
【0034】
また、光学モデルは、実際にキャプチャされた空間像データ、および入力された設計によって較正されることが可能である。
【0035】
形状、サイズ、およびピッチを変化させる様々な試験構造が、光学モデルの較正時に典型的に使用される。
【0036】
詳細には、マスクを結像させる(image)ために実際に使用されることになるスキャナの条件に少なくとも実質的に対応する所定の照明および/または結像条件が、光学モデルを較正するために使用される。
【0037】
この場合、詳細には、マスクを照らすために行われる照明設定の特徴の特性、および/または投影露光装置の特性が考慮されるのが好ましい。
【0038】
本発明のさらなる態様によれば、光学モデルを較正するために、登録データが使用される。前記登録データは、マスクに対する別個の測定によって確かめられることが可能である。
【0039】
本発明のさらなる態様によれば、光学モデルを較正するために、予測誤差が、メリット関数を使用して最小化される。この場合、例として、全構造の平方偏差の合計が、メリット関数として使用されることが可能である。
【0040】
マスクから空間像の製造へのアクションチェーンは、光学モデルによってシミュレートされることが可能である。
【0041】
本発明のさらなる態様によれば、最大エッジ配置誤差(maximum edge placement error)、線幅の、または接触構造の範囲の、最大許容変動(maximum allowed fluctuation)、線幅またはエッジ配置の非対称性、線粗度(line roughness)、およびプロセスウィンドウサイズといった変数からの選択が、境界条件として予め定義される(すなわち、露光量および焦点変動の十分に大きい範囲において、以前の変数についての要件が満たされる)。
【0042】
詳細には、製造予定のコンポーネントの電気的機能から生じる要件は、境界条件として役立つ。
【0043】
本発明のさらなる態様によれば、シミュレーションの不確実性、および/または統計学的な変動が、マスクの認定において考慮される。
【0044】
詳細には、ウエハ露光のプロセスウィンドウ全体に関する、詳細には焦点および/または露光量範囲全体に関する、空間像が、マスクの認定に含まれることが可能である。詳細には、レジストモデルにおける、および/もしくはエッチングモデルにおける、または結合型レジストエッチングモデルにおける、不確実性を認定時に考慮に入れることが可能である。詳細には、統計学的影響、詳細には変動、を認定時に考慮に入れることが可能である。
【0045】
マスクの認定のための尺度として役立てることができるものは、詳細には、マスクの、詳細には少なくとも90%、詳細には少なくとも95%、詳細には少なくとも99%、詳細には少なくとも99.9%という、確かめられた確率分布の少なくとも特定の比率が、所定の境界条件を満たすというものである。
【0046】
マスクは、詳細には、例えば、少なくとも90%、詳細には少なくとも95%、詳細には少なくとも99%、詳細には少なくとも99.9%という、少なくとも所定の最小確率で、少なくとも1つの所定の境界条件を満たすウエハ構造にマスク構造がなるかどうかに応じて、認定されることが可能である。この場合、使用されることになる照明設定の、および/または、投影露光装置の光学データの、予想される変動、さらに知識が、考慮されることが可能である。
【0047】
マイクロリソグラフィのためのマスクの認定のためのシステムは、マスク構造の空間像をキャプチャするためのデバイス、マスクによって製造可能なウエハ構造を測定するためのデバイス、さらに、測定された空間像からウエハ構造を予測するためのモデルのパラメータを適合させるための計算ユニット、を備えることが好ましい。
【0048】
このようにして、システムは、マスクの実際にキャプチャされた空間像が入力として役立つシミュレーションモデルによるウエハ構造の予測を可能にする。
【0049】
図に関する例示的な実施形態の説明から、本発明のさらなる詳細および長所が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】リソグラフィプロセスの種々のステップ、および関連する中間ステージを概略的に示す図である。
図2】マイクロリソグラフィのためのマスクの認定のためのプロセスシーケンスを概略的に示す図である。
図3】マイクロリソグラフィのためのマスクの認定のための代替方法の概略図である。
図4】マイクロリソグラフィのためのマスクの認定のためのプロセスフローの大きく簡素化された図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
マイクロリソグラフィのためのマスク1の認定のための方法の詳細が、図を参照しながら下記で説明される。
【0052】
図1は、リソグラフィプロセス2の種々のステップおよび中間ステージを示す。
【0053】
第1に、マスク1の設計3が起草される。設計3は、結像される(image)ことになる複数の構造4を含む。
【0054】
マスク製造ステップ5において、マスク1が製造される。詳細には、この場合、実際のマスク構造6が製造される。マスク構造6は、マスク1の設計3の結像される(image)ことになる構造4をできるだけ正確に再現することを意図する。これらは、微細構造またはナノ構造のコンポーネント7の製造中に、ウエハ8上に結像される(image)。微細構造またはナノ構造のコンポーネント7は、詳細にはチップ、詳細にはメモリチップまたはプロセッサ(CPUまたはGPU)を形成する。リソグラフィ方法は、このために使用される。前記リソグラフィ方法は、投影露光装置によって実行される。この場合、マスク構造6の像が生成される。前記像は、マスク1の空間像9によって特徴付けられることが可能である。マスク1、詳細にはマスク1のマスク構造6とマスク1の空間像9との間の関係は、光学的結像10と呼ばれる。
【0055】
マスク1の空間像9は、ウエハ8上の感光層11を露光させる。詳細には、フォトレジストが、感光層11として役立つ。ウエハ8上の感光層11の露光は、感光層11のパターニング、または、略してレジストプロセス12とも呼ばれる。
【0056】
感光層11のパターニングには、エッチングプロセス13が続く。エッチングプロセス13中に、ウエハ8はエッチングされる。この場合、製造予定のウエハ構造14が形成される。
【0057】
犠牲層を形成する感光層11は、後で除去されることが可能である。
【0058】
マスク製造ステップ5、光学結像10、レジストプロセス12、およびエッチングプロセス13は、リソグラフィプロセス2の一部を形成する。
【0059】
リソグラフィプロセス2、および/または、その個々の部分は、1つまたは複数のシミュレーションモデルによって記述されることが可能である。詳細には、計算リソグラフィモデルによってリソグラフィプロセス2を全体として描写することが可能である。
【0060】
実際の用途について、マスク1がコンポーネント7を製造するのに適しているか否かについてマスク1を認定することが不可欠である。これは、マスク1の認定(qualification)と呼ばれる。
【0061】
本発明によれば、マスク1の空間像9、さらに、感光層11を有するウエハ8上の前記空間像の効果を決定するために、詳細には、コンポーネント7のウエハ構造14の製造まで、マスク1の認定が行われる。様々なプロセスステップ10、12、および13による統合的アプローチが、このために行われる。いわゆるホリスティックリソグラフィに合わせて、下記でよりいっそう詳細に説明されるマスク1の認定は、ホリスティックマスク認定とも呼ばれる。
【0062】
本発明によれば、マスク自体ではなく、マスクの像、詳細にはマスクの空間像、または、ウエハおよびウエハから生じるウエハ構造上の感光層に対するマスクの効果は、マスクの認定に実際に関係がある変数であるということが認識された。空間像のキャプチャと、計算リソグラフィモデルによって所与の空間像から生じるウエハ構造のシミュレーションとの組合せは、マイクロリソグラフィのためのマスクの認定をかなり改善する。
【0063】
リソグラフィプロセス2におけるマスク1の効果は、その空間像9から生じる。マスク1の空間像9のキャプチャおよび測定は、マスク構造6自体の測定よりも、その後のレジストプロセス12および/またはエッチングプロセス13をシミュレートするためのモデルに、著しく正確な入力をもたらす。
【0064】
1つの代替によれば、空間像9は、さらに、光学結像10のモデルによってマスク構造6の特徴変数の測定から決定されること、詳細にはシミュレートされることが可能である。空間像生成シミュレータは、このために用意されることが可能である。後者は、計算リソグラフィプラットフォームの一部であることが可能である。
【0065】
図2は、マスク1の認定中のプロセスフローの1つの例を概略的に示す。プロセス開発15およびマスク認定16は、図2に例として区別される。較正された計算リソグラフィモデル17は、プロセスフローの中心にある。前記モデルは、コンポーネント7の製造中の上述の方法ステップのためのサブモデルを含むことができる。1つまたは複数の所定の境界条件19は、マスク1の認定の結果18を確かめるために考慮される。詳細には、最大許容エッジ配置誤差および/または線幅の最大許容変動は、境界条件19として役立てることが可能である。
【0066】
さらに、ウエハ構造14の測定20は、リソグラフィモデル17への入力として役立つ。これは、詳細には、電子顕微鏡の方法によって行われることが可能である。
【0067】
さらに、マスク1の、詳細にはマスク構造6の、空間像9を特徴付けるためのデータは、マスク1の認定のためのリソグラフィモデル17への入力として役立つ。詳細には、空間像測定21は、このために行われる。
【0068】
マスク構造6の空間像測定21は、マスク構造6の登録測定と組み合わされることが可能である。これらのデータは、サーバ22に転送されることが可能である。サーバ22は、これらのデータをリソグラフィモデル17に転送することができる。
【0069】
これに対する代替として、マスク構造6の空間像測定21の、および任意選択として登録測定の、データは、同様に、リソグラフィモデル17に直接的に転送されること、すなわち、リソグラフィモデル17への入力として役立てることが可能である。
【0070】
図2による認定プロセスフローの代替が、図3に例として示される。この代替によれば、マスク1の、詳細にはマスク構造6の、空間像9のための要件プロフィール24は、コンピュータ支援シミュレーション23によって境界条件19から確かめられる。次に、適切な場合には登録測定による計算後、空間像測定21の結果が要件プロフィール24を満たすかどうかを立証するために、マスク1の認定がチェックされる。
【0071】
方法は、原則として、マイクロリソグラフィのための任意のマスク1に適している。方法の長所は、EUV波長のためのマスク1について特に目立ち、これらはEUVマスクとも呼ばれる。
【0072】
プロセスフローは、図4に大きく簡略化されて改めて概略的に示される。マスク1の認定について、その空間像9が決定される。マスク1の空間像9を決定するために、前記空間像は、直接的にキャプチャされることが好ましい。コンポーネント7を製造するための感光層11を備えるウエハ8上の空間像9の効果は、シミュレーション方法25によって確かめられる、詳細には予測される。シミュレーション方法25は、レジストプロセス12および/もしくはエッチングプロセス13、または結合型レジストエッチングプロセスを記述するためのモデルを含む。これらのモデルは、下記でよりいっそう詳細に説明されるように、ウエハ構造14の測定によって較正されることが可能である。
【0073】
方法のさらなる詳細が下記で説明される。これらの詳細は、実質的に任意の所望の方式で互いに組み合わされることが可能である。これらは、方法について制限的なものとして理解されるべきではない。
【0074】
実際に測定された空間像9は、光学結像10をシミュレートするためのコンピュータ支援モデルを較正するために使用されることが可能である。このような空間像9は、後のウエハ露光のために提供されるリソグラフィシステムにおける条件と同一の、または非常に類似の、照明および/または結像条件下で測定されるのが好ましい。詳細には、同じ波長、結像の開口数、照明設定、および主光線の角度が、使用されるのが好ましい。
【0075】
光学結像10を記述するための光学モデルは、詳細には、放射源、照明設定、および投影露光装置を記述するための具体的な空間像データおよび設計パラメータで較正されることが可能である。形状、サイズ、およびピッチを変化させるための様々な試験構造が、光学的結像10を記述するための光学モデルを較正するために使用されることが可能である。光学モデルのパラメータは、詳細には、メリット関数を使用して予測誤差を最小化するような方式で適合される。この場合、例として、構造の全ての平方偏差の合計は、メリット関数として使用されることが可能である。
【0076】
感光層11上の空間像9の効果を予測するための、および詳細には、ウエハ構造14の製造のためのシミュレーション25について、詳細には、感光層11の露光後の感光層11の構造の電子顕微鏡像、および、それぞれ、ウエハ構造14の電子顕微鏡像、を使用することが可能である。ウエハ8上の感光層11の構造は、詳細には、構造のサイズ(「限界寸法」、CD)について、電子顕微鏡によって測定されることが可能である。次に、レジストプロセス12を記述するパラメータは、測定された空間像9を入力として用いるモデルによって予測された構造からの測定後の構造のずれが最小化されるように最適化されることが可能である。レジストモデルは、結果として較正される。
【0077】
同様に、ウエハ構造14は、電子顕微鏡によって測定されることが可能である。プロセス後のウエハ8上のウエハ構造14の構造規模が、感光層11における構造規模からできるだけうまく生じるようにエッチングプロセス13をシミュレートするためのエッチングモデルのパラメータを最適化することによって、エッチングモデルは較正される。
【0078】
レジストモデルおよびエッチングモデルを別々に較正する代わりに、電子顕微鏡によって測定されたウエハ構造14によって、レジストエッチングモデルの合同較正を行うことが可能である。空間像データは、改めて入力として役立つ。
【0079】
レジストモデルおよびエッチングモデルへの入力として、マスク1の実際に測定された空間像9を使用することによって、マスク1によって製造可能なウエハ構造14の予測は、著しく改善されることが可能である。
【0080】
複数の空間像9、詳細には複数の種々のマスク構造6の空間像9は、マスク1の認定のために記録されることが可能である。詳細には、種々のマスク構造6のうちの少なくとも10個、詳細には少なくとも20個、詳細には少なくとも30個、詳細には少なくとも50個、詳細には少なくとも100個の空間像9が記録される。種々のマスク構造6のうちの数千個の空間像9でさえ、記録されることが可能である。好ましくは、および習慣的には、マスク認定において、マスクの認定は、構造の数が空間像に対応することが可能な、適切に選択された規定の構造を測定することによって行われる。代替として、例えば、多くの個々の像を結合させることによって、または、マスク移動(「スキャン」)(例えば「TDI」時間差積分(Time delay integration))と同期される様式でイメージセンサを読むことによって、マスク全体の像を記録することが同様に可能である。
【0081】
空間像9は、詳細には、ウエハ8上にマスク1を結像する(image)ために提供された投影露光装置において提供されるなどの、照明および結像条件を使用して記録される、詳細には測定される。詳細には、いわゆる空間像計測システム(AIMS)が、空間像を測定するために使用されることが可能である。詳細については、DE102010029049A1およびDE102013212613A1を参照されたい。
【0082】
マスク1の空間像9を実際にキャプチャすることは、マスク1によって製造可能なウエハ構造14について、詳細には予測の信頼性をかなり改善させる。原則として、空間像9は、さらに、光学結像10をシミュレートするための上述の光学モデルによって、電子顕微鏡によって行われるマスク構造6の測定から確かめられることが可能である。
【0083】
しかし、空間像9の実際のキャプチャは、マスク1の効果に関する全ての効果、詳細には、例えば、マスクの表面粗度、いわゆるマスク誤差拡張要因(MEEF:mask error enhancement factor)、エッジの3次元構造、さらに、マスク1の材料の光学関連パラメータを同様にキャプチャする。
【0084】
光学結像10をシミュレートするためのモデルにおいて、対応するパラメータが考慮されることが可能である。しかし、結果として、シミュレーションは一般に近似値を用い、これらのパラメータは、限定的な精度でのみ知られているので、予測値についての不確実性が増す。空間像9を実際にキャプチャすることによって、このような不確実性を明らかにすることができる。これは、マスク製造プロセスにおける収率を増加させる。
【0085】
さらに、ウエハ露光のプロセスウィンドウを測定することができる。このために、ウエハ露光に適した焦点範囲内で測定を行うことが可能である。追加または代替として、マスク1の露光における露光量変動の効果を測定することができる。
【0086】
マスク1の認定について、空間像9によって製造可能な予測されるウエハ構造14は、前記ウエハ構造からの要件と比較される。ウエハ構造14からの要件は、製造予定のコンポーネント7の電気的機能性から生じる。例として、エッジ配置誤差は、電気的短絡が発生する可能性のあるような大きさのものであってはならない。これが排除されることが可能であれば、マスク1は、肯定的に認定されたものと見なされる。
【0087】
シミュレーション処理の不確実性、詳細にはレジストプロセス12の、および/または、エッチングプロセス13の記述の不確実性、さらに統計学的効果が、マスク1の認定に計算的に含まれる可能性がある。マスク1の肯定的な認定についての尺度として役立てることができるものは、詳細には、同様に確かめられる確率分布の特定の比率が所定の要件を満たすというものである。詳細については、上記の説明を参照されたい。
図1
図2
図3
図4