(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】注射デバイスにおける力の低減
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20230906BHJP
【FI】
A61M5/315
(21)【出願番号】P 2020557209
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2019060195
(87)【国際公開番号】W WO2019202128
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-12
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヘルマー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ヴェントラント
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-540875(JP,A)
【文献】米国特許第5578015(US,A)
【文献】特表2017-518791(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0178625(US,A1)
【文献】特表2013-529519(JP,A)
【文献】特表2012-525185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイスであって:
薬剤容器と;
該薬剤容器内に並進運動可能に配置されたストッパと;
プランジャヘッドを含むプランジャロッドと;
該プランジャロッドを薬剤容器内へと変位させる駆動機構と;
プランジャロッドが通過することができるボアを含む力低減機能と
を含み、
ここで、
ボアは、薬剤容器内へと内方にテーパ状であり;
プランジャロッドは、ストッパを変位させるように動作することができ;
ボアは、圧縮可能な壁を有し、該圧縮可能な壁は、プランジャロッドが駆動機構によって動かされるときにプランジャロッドの動きの少なくとも一部を減衰させるよう、プランジャヘッドがボアを通過するときにプランジャヘッドによって圧縮可能である、
前記注射デバイス。
【請求項2】
力低減機能は、ストッパの変位の少なくとも一部の間、プランジャロッドの動きを減衰させるように構成される、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項3】
ボアのテーパは、薬剤容器の充填レベル、薬物濃度および/または相関の滑走力に応じたものである、請求項1または2に記載の注射デバイス。
【請求項4】
プランジャロッドの変位前に、薬剤容器、ストッパおよび低減機能は、キャビティを画成し、該キャビティは、プランジャヘッド長さ以下の
初期キャビティ長さを有する、請求項
1または2に記載の注射デバイス。
【請求項5】
プランジャヘッドは、その周りに延びる1つまたはそれ以上の溝を含み、力低減機能は、プランジャが薬剤容器内へと変位されるとプランジャヘッドが回転するようにプランジャヘッドの1つまたはそれ以上の溝に係合可能な1つまたはそれ以上のピンを含む、請求項
1または2に記載の注射デバイス。
【請求項6】
プランジャヘッドは、溝が周りに延びる回転可能ナットを含む、請求項
5に記載の注射デバイス。
【請求項7】
力低減機能は、プランジャヘッドに取り付けられたOリングを含み、該Oリングは、プランジャが薬剤容器内へと変位されるとプランジャヘッドに沿って転がるように配置される、請求項
1または2に記載の注射デバイス。
【請求項8】
Oリングは、薬剤容器内でのプランジャの所定距離の変位後、プランジャヘッドから転がり出るように配置される、請求項
7に記載の注射デバイス。
【請求項9】
力低減機能は、プランジャヘッドに面取りヘッドを含み、ストッパに面取りヘッドを受ける変形可能チョックを含み、該変形可能チョックは、面取りヘッドを受けたときに拡張して薬剤容器の壁を把持するように配置される、請求項
1または2に記載の注射デバイス。
【請求項10】
力低減機能は、プランジャロッドに1つまたはそれ以上のくぼみを含み、注射デバイスに力低減ヘッドの1つまたはそれ以上のくぼみを捕らえるように配置された1つまたはそれ以上の可撓性アームを含む、請求項
1または2に記載の注射デバイス。
【請求項11】
駆動機構は、ばねを含む、請求項
1または2に記載の注射デバイス。
【請求項12】
針をさらに含む、請求項
1または2に記載の注射デバイス。
【請求項13】
薬剤容器に収納された薬剤をさらに含む、請求項
1または2に記載の注射デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、注射デバイスにおける力の低減に関する。より詳細には、本願は、注射デバイスのプランジャの駆動機構の正味の力を低減する力低減構成要素を有する注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動注射器の注射デバイスは、一般に、薬剤を注射デバイスから排出するためにプランジャを注射デバイス内に押し下げることに使用される駆動機構を含む。排出予定薬剤の特性(薬剤カートリッジの充填レベル、薬剤の濃度および用量、ならびに一次パックの相関の滑走力など)に応じて、駆動装置がプランジャに加える力は、注射デバイスのシリンジストッパに対する注射デバイスのプランジャの衝撃力による注射デバイスへのダメージを防ぐために、変えられなければならない。さらに、ストッパにかかる高い衝撃力の結果、注射デバイスの使用のときに使用者が不快な経験をすることになるおそれがある。たとえば、衝撃力は、使用者に痛みをもたらし、および/または注射が速くなりすぎるおそれがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
第1の態様によれば、本明細書は、注射デバイスであって:薬剤容器と;薬剤容器内に並進運動可能に配置されたストッパと;プランジャヘッドを含むプランジャロッドと;プランジャロッドを薬剤容器内へと変位させる駆動機構と;力低減機能とを含み、ここで、プランジャロッドは、ストッパを変位させるように動作することができ;力低減機能は、プランジャロッドが駆動機構によって動かされるとき、プランジャロッドの動きの少なくとも一部を減衰させるように配置される、注射デバイスについて述べる。
【0004】
力低減機能は、ストッパの変位の少なくとも一部の間、プランジャロッドの動きを減衰させるように構成することができる。
【0005】
力低減機能は、プランジャロッドが通過することができるボアを含むことができる。
【0006】
ボアは、圧縮可能な壁を有することができ、圧縮可能な壁は、プランジャヘッドがボアを通過するときにプランジャヘッドによって圧縮可能である。
【0007】
ボアは、テーパ状とすることができる。
【0008】
薬剤容器、ストッパおよび低減機能は、キャビティを画成することができ、キャビティは、プランジャヘッド長さ未満のキャビティ長さを有する。
【0009】
プランジャヘッドは、その周りに延びる1つまたはそれ以上の溝を含むことができ、力低減機能は、プランジャが薬剤容器内へと変位されるとプランジャヘッドが回転するようにプランジャヘッドの1つまたはそれ以上の溝に係合可能な1つまたはそれ以上のピンを含む。
【0010】
プランジャヘッドは、溝が周りに延びる回転可能ナットを含むことができる。
【0011】
力低減機能は、プランジャヘッドに取り付けられたOリングを含むことができ、Oリングは、プランジャが薬剤容器内へと変位されるとプランジャヘッドに沿って転がるように配置することができる。
【0012】
Oリングは、薬剤容器内でのプランジャの所定距離の変位後、プランジャヘッドから転がり出るように配置することができる。
【0013】
力低減機能は、プランジャヘッドに面取りヘッドを含み、ストッパに面取りヘッドを受ける変形可能チョックを含むことができ、変形可能チョックは、面取りヘッドを受けたときに拡張して薬剤容器の壁を把持するように配置される。
【0014】
力低減機能は、プランジャロッドに1つまたはそれ以上のくぼみを含み、注射デバイスに力低減ヘッドの1つまたはそれ以上のくぼみを捕らえるように配置された1つまたはそれ以上の可撓性アームを含むことができる。
【0015】
駆動機構は、ばねを含むことができる。
【0016】
注射デバイスは、針をさらに含むことができる。
【0017】
注射デバイスは、薬剤容器に収納された薬剤をさらに含むことができる。
【0018】
次に、添付の図面を参照して、非限定的な例として例示的な実施形態について述べる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】圧縮可能ボアを含む力低減機能を含む注射デバイスの一例を示す概略図である。
【
図2a】使用のときの、力低減機能を含む注射デバイスの例を示す概略図である。
【
図2b】使用のときの、力低減機能を含む注射デバイスの例を示す概略図である。
【
図2c】使用のときの、力低減機能を含む注射デバイスの例を示す概略図である。
【
図3a】圧縮可能ボアを含む力低減機能を含む注射デバイスの代替実施形態の例を示す概略図である。
【
図3b】圧縮可能ボアを含む力低減機能を含む注射デバイスの代替実施形態の例を示す概略図である。
【
図3c】圧縮可能ボアを含む力低減機能を含む注射デバイスの代替実施形態の例を示す概略図である。
【
図4】Oリングを含む力低減機能を含む注射デバイスのさらなる一実施形態を示す図である。
【
図5a】使用のときの、Oリングを含む力低減機能を含む注射デバイスの例を示す概略図である。
【
図5b】使用のときの、Oリングを含む力低減機能を含む注射デバイスの例を示す概略図である。
【
図5c】使用のときの、Oリングを含む力低減機能を含む注射デバイスの例を示す概略図である。
【
図6】チョックと面取りプランジャヘッドからなる力低減機能を含む注射デバイスのさらなる一実施形態を示す図である。
【
図7】使用のときの、チョックと面取りプランジャヘッドを含む注射デバイスの一例を示す図である。
【
図8】プランジャロッドに回転可能ナットを有する注射デバイスの一例を示す図である。
【
図9】
図8のプランジャロッドを示す斜視図である。
【
図10】
図8に示される注射デバイスの実施形態で使用される力低減機能の一代替実施形態を示す図である。
【
図11】複数の可撓性アームを含む力低減機能を含む注射デバイスのさらなる一実施形態を示す概略図である。
【
図12】プランジャと可撓性アームを示す上面図である。
【
図13】可撓性リップを含む力低減機能を含む注射デバイスの一実施形態を示す図である。
【
図14】可撓性リップを含む力低減機能を含む注射デバイスの一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、力低減機能を含む注射デバイスの一例を概略的に示している。注射デバイス100は、薬剤104を保持する薬剤容器102を含む。図示の実施形態では、薬剤容器102は、(たとえば、ワンショットデバイスのための)シリンジの一部を形成する。他の実施形態では、薬剤容器102は、自動注射器の一部を形成する。かかる場合には、薬剤容器102は、たとえば薬剤カートリッジである、必要に応じて交換できる自動注射器の消耗部材とすることができる。図示の実施形態では、薬剤容器102の壁は、実質的に円筒形である。一般的に、薬剤容器102は、異なる断面形状を有することができる。
【0021】
注射デバイス100は、針106をさらに含み、針106を通って薬剤容器102から薬剤104を排出することができる。針106は、いくつかの実施形態では、薬剤容器102の一体部材である。他の実施形態では、針106は、薬剤容器が挿入される自動注射器パックの一部である。以下において、注射デバイス100の針106の端は、遠位端と称され、注射デバイス100の反対端は、近位端と称される。
【0022】
ストッパ108は、薬剤容器102の壁同士の間に並進運動可能に配置される。ストッパ108は、薬剤容器102の軸方向に並進運動可能である。
【0023】
力低減機能(本明細書では「低減機能」とも称される)110は、薬剤容器102の近位端に設けられる。図示の実施形態では、低減機能110は、薬剤容器102のキャップの形態で設けられる。他の実施形態では、力低減機能110は、自動注射器の一部として設けることができる。低減機能110は、薬剤容器102の開端に取り付けられる。図示の例では、低減機能110は、ボア112を含む。ボア112は、その中心により、薬剤容器102の内部のキャビティ114を薬剤容器102の外部に流体連結させる。図示の例では、ボア112は、薬剤容器102内へと内方にテーパ状になっている。低減機能110は、たとえば、薬剤容器102の内壁によって保持される弾性材料からなることにより、薬剤カートリッジ102の近位端に取り付けられる。低減機能110は、中間嵌めを用いて薬剤容器102に取り付けてもよい。
【0024】
低減機能110のボア112の壁は、圧縮性材料から形成される。たとえば、ゴムまたはプラスチックを使用することができる。
【0025】
低減機能110、ストッパ108および薬剤容器102の壁は、薬剤容器102の近位端にキャビティ114を画成する。キャビティは、薬剤容器102内のストッパ108の位置に応じて決まる、初期キャビティ長さ116(S2)を有する。したがって、さらに、キャビティ114は、可変初期キャビティ容積を有する。
【0026】
針106を介した薬剤104の排出のために薬剤容器102内へと押し下げることができるプランジャ118(本明細書では、プランジャロッドまたはピストンロッドとも称される)が設けられる。プランジャ118は、たとえば、プラスチックまたは金属から製造することができる。プランジャ118は、薬剤容器102の軸方向に変位可能である。プランジャ118は、薬剤容器102の遠位端の方に向けて押し下げられると、低減機能110のボア112を通って薬剤容器のキャビティ114に入る。プランジャ118は、ストッパ108を針106の方に向けて変位させる働きをし、それによって薬剤104が薬剤容器102から針106を通って排出される。プランジャ118は、駆動機構120によって薬剤容器102内へと変位させられる。図示の実施形態では、駆動機構120は、プランジャロッド内に配置されたばねを含む。自動注射器を用いる実施形態では、プランジャ118は、自動注射器パワーパック内に取り付けられ、および/またはそれによって動かされる。
【0027】
プランジャ118は、その遠位端にプランジャヘッド122を含む。プランジャヘッド122は、軸方向長さ124(S1)を有し、それにわたってプランジャヘッド122の直径がボア112の少なくとも一部分の直径より大きくなっている。それによって、プランジャロッド118がボア112を通過するときにプランジャロッド118の動きに抵抗がもたらされ、それによってプランジャロッド118における正味の力が低減することでプランジャロッド118の動きが減衰される。
【0028】
プランジャヘッド122とボア112の協働によってもたらされる力低減量は、何通りかのやり方で変えることができる。1つの例は、プランジャヘッド122の軸方向長さ124を変えることである。これによって、駆動機構120の作動域(行程)へのプランジャヘッド122の作用が変わる。ボア112によってプランジャ118に加えられる力低減量を変えるために、プランジャヘッド122の直径を変えてもよい。プランジャヘッド122の長さは、一次パックの上方死容積の長さと等しい。したがって、プランジャヘッドは、力低減ヘッド122がストッパと接触するとボア112から解放されることになる。
【0029】
他の例は、力低減機能110の幾何形状および/または材料を(たとえば、ショア硬度を変えるように)変えることである。たとえば、ボア112の直径を変え、および/またはボア112のテーパを変えることで、かかる力の低減量を変えることができる。一例として、ボア112の直径をより小さくすると、結果的により大きな力の低減になりうる。力低減を変える手段をもたらすことによって(たとえば、ボア112の特性を変えることによって)、同じ駆動機構120を、異なる薬剤容器102充填レベル、薬物濃度および/または相関の滑走力に対して使用することができる。これにより、注射デバイスの設計を簡素化することができる。
【0030】
プランジャヘッド122は、この実施形態では、プランジャロッド118がストッパ108に接触すると、プランジャロッド118の動きが減衰され、または減衰からちょうど解放されるように、初期キャビティ長さ116以上(すなわち、S1≧S2)の軸方向長さ124を有する。
【0031】
いくつかの実施形態(図示せず)において、プランジャヘッド122は、たとえばゴムまたはプラスチックなどの圧縮性材料から形成される。これらの代替実施形態では、力低減機能110のボア112は、圧縮性材料からでも非圧縮性材料からでも形成することができる。
【0032】
図2a~cは、使用のときの、力低減機能110を含む注射デバイスの例を概略的に示している。
図2aを参照すると、プランジャ118は、はじめは、薬剤容器102の完全に外側にある。使用者は、たとえば、自動注射器パックのボタンを押すことによって注射を開始する。それにより駆動機構120が作動し、プランジャ118を力低減機能110のボア112を通って薬剤容器102内へと押し下げる。
【0033】
図2bを参照すると、駆動機構120がプランジャ118を薬剤容器102のキャビティ114内へと押し下げるとき、プランジャヘッド122は、キャップ110のボア112を通過する。プランジャヘッド122は、ボア112内を動くとき、ボア112の壁を圧縮する。それによって、プランジャロッド118の動きに抵抗がもたらされてプランジャロッド118の動きが遅くなり、それによってプランジャロッド118における正味の力が低減する。
【0034】
図2cを参照すると、プランジャ118が薬剤容器102のキャビティ114内へとさらに押し下げられると、プランジャヘッドは、最後にはストッパ108に接触することになる。軸方向長さ124が初期キャビティ長さ116以上(すなわちS
1≧S
2)の場合、ボア112の壁は、この時点では、プランジャヘッド122の一部分によって依然として圧縮されており(または、図示の例のように、力低減ヘッドをちょうど解放し)、それによってプランジャ118における正味の力が低減する。したがって、ストッパ108に対するプランジャ118の衝撃力が低減される。
【0035】
それによって、注射デバイスは、複数の異なる薬剤標示について最も高い可能な負荷の1つのばねを使用することができるようになる。
【0036】
図3a~cは、圧縮可能ボアを含む力低減機能を含む注射デバイスの代替実施形態の例を概略的に示している。
【0037】
図3aに示される実施形態では、力低減機能110は、ボア112の直径に一連の1つまたはそれ以上の段状変化を含む中央ボア112を含む。図示の例では、ボア直径に2つの段状変化があるが、より少ないまたはより多い段状変化を用いてもよい。ボア直径は、薬剤カートリッジの近位端で最小となり、段状変化により、ボア112が薬剤容器102のキャビティ114へと向かうほどボア直径が増大する。ボア112の下、中および上の段状部分はそれぞれ長さa、bおよびcを有する。いくつかの実施形態では、プランジャヘッド122の長さは、ボアの全長(a+b+c)以上である。段状部分を有することで、プランジャヘッド122がボア112内を進むときのプランジャの動きに対する抵抗量を変えることができる。これは、プランジャ118がばねによって駆動される場合に有益となりうる。
【0038】
図3bに示される実施形態では、キャップ110は、薬剤カートリッジ102の軸方向にテーパ状の中央ボア112を含む。
図1の実施形態とは対照的に、ボア直径は、ボア112が薬剤容器102のキャビティ114へと向かうほど増大する。この実施形態では、プランジャヘッド122は、やはりテーパ状になっており、プランジャヘッド122の近位端より遠位端でより幅広になっている。これは、低減機能によるプランジャロッドのよりスムーズな解放につながりうる。
【0039】
図3cに示される実施形態では、キャップ110は、テーパ状ではない浅い中央ボア112を含む。プランジャヘッド122は、直径に一連の段を含む。段状部分を有することで、プランジャヘッド122がボア112内を進むときのプランジャの動きに対する抵抗量を変えることができる。これは、プランジャ118がばねによって駆動される場合に有益でありうる。
【0040】
図4は、Oリングを含むプランジャヘッド122を含む注射デバイスのさらなる一実施形態を示している。この実施形態では、注射デバイス100は、
図1に関連して述べられるような、薬剤カートリッジ102、薬剤104、針106およびストッパ108を含む。注射デバイス100は、やはり
図1に関連して述べられるような駆動機構120を含むプランジャ118を備える。ストッパ108と薬剤容器の開口部132は、長さS
3130を画成する。図示の実施形態では、ボアのない力低減機能が提供される。他の実施形態では、本明細書に記載のキャップ付き実施形態のいずれかにおいて開示されるようなボアのある力低減機能が提供されうる。いくつかの実施形態では、テーパ状のボアを含むストッパ108を使用することもできる。
【0041】
プランジャ118は、プランジャヘッド122を含む。プランジャヘッド122は、Oリング128が嵌合する溝126の形態の力低減機能を含む。溝126は、プランジャヘッドの遠位端の方に位置している。プランジャヘッド122は、溝126からプランジャヘッドの近位端までの軸方向のS4の長さ125を有する。いくつかの実施形態では、S4≧S3である。
【0042】
Oリング128は、ゴムなどの弾性材料から製造することができる。Oリング128の材料および/または太さは、プランジャ118の動作中に加えられる低減力を変えるように変えることができる。
【0043】
図5a~cは、使用のときの、Oリングを含む力低減ヘッドを含む注射デバイスの例を概略的に示している。
【0044】
図5aを参照すると、プランジャ118は、はじめは、薬剤容器102の完全に外側にある。使用者は、たとえば、自動注射器パックのボタンを押すことによって注射を開始する。それにより、駆動機構120が作動し、プランジャ118を薬剤容器102内へと押し下げる。
【0045】
図5bを参照すると、プランジャ118が薬剤カートリッジ内へと押し下げられると、Oリング128が薬剤容器102のリップにひっかかる。プランジャ118が薬剤カートリッジ102内へとさらに押し下げられると、Oリング128は、プランジャヘッドの長さ130に沿って転がり、それによってプランジャ118の動きに抵抗がもたらされる。
【0046】
図5cを参照すると、駆動機構120によってプランジャ118が押し下げられ続けた結果、プランジャヘッド122は、ストッパ108に接触することになる。そしてストッパ108は注射デバイス100の遠位端の方に向けて変位させられ、それによって針106から薬剤104が排出される。S
1≧S
3である実施形態では、Oリング128は、プランジャヘッド122がストッパ108に接触しても引き続きプランジャの動きを遅くし、それによってストッパ108に対する初期の力が低減される。
【0047】
プランジャ118が押し下げられ続けると、Oリング128は、プランジャヘッド長さ130の端に到達する。プランジャ118の残部は、プランジャヘッド122より小さい直径を有し、したがってOリング128は、薬剤容器102のリップから離れて縮むことができる。この位置で、Oリング128は、プランジャ118の動きを遅くするのをやめる。
【0048】
図6は、チョックおよび面取り力プランジャヘッドを含む注射デバイスのさらなる一実施形態を示している。
図7は、使用のときの、チョックおよび面取りプランジャヘッドを含む注射デバイスの一例を示している。
【0049】
これらの実施形態では、プランジャヘッド122は、注射デバイス100の針端の方に向けて直径が減少するように面取りされている。ストッパ108は、プランジャヘッド122を受け入れることができる変形可能チョック132を含む。変形可能チョック132は、力低減ヘッド122を受ける中央凹部134を含む。中央凹部134は、面取りされた壁を有する。プランジャヘッド122は、変形可能チョック132の中央凹部134より大きな体積を有する。それによって、変形可能チョック132は、プランジャヘッド122を中央凹部134に受けると、変形する。変形可能チョックは、たとえばTPEまたはPPである、ゴムまたはプラスチック材料を含む材料から製造することができる。
【0050】
駆動機構120によってプランジャが動かされてストッパ108に接触すると、プランジャヘッド122は、変形可能チョック132の中央凹部134内へと動かされる。プランジャヘッド122と中央凹部134の体積の差によって、変形可能チョック132は外側に変形させられる。
【0051】
変形可能チョック132は、凹部134に入ったプランジャヘッド122によって引き起こされる変形により変形可能チョック132の側壁が薬剤カートリッジ壁の内面に接触するように、配置される。薬剤カートリッジ壁に対する変形可能チョック132の力は、プランジャ118を減速させるように働き、注射の全行程にわたってプランジャ118における力の合計を低減する。変形可能チョック132は、プランジャロッドがチョック内へと動かされたときに薬剤カートリッジ壁と変形可能チョックとの間にガラス破損を防ぐように作用することができる面圧力が存在するように、設計される。
【0052】
面取りプランジャヘッド122および変形可能チョック132は、こうして、力低減機能をもたらすように協働する。
【0053】
図8は、プランジャロッドに回転可能ナットを有する注射デバイスの一例を示している。
図9は、
図8のプランジャロッドの斜視図である。この実施形態では、プランジャヘッド122は、回転可能ピッチナットを含む。ピッチナットは、力低減ヘッド122の本体の軸方向の周りにらせん状をなす1つまたはそれ以上の溝136を含む。プランジャヘッドは、S
1の軸方向長さ124を有する(
図8および9には縮尺通りには図示せず)。溝136は、この長さに沿って延びる。プランジャの残りの本体は、プランジャヘッド122の溝136の半径より小さい半径を有する。
【0054】
注射デバイスキャップ110は、ボア縁からボア内へと内方に延びる1つまたはそれ以上のピン138(図示の例では、2つのピンがある)を含む中央ボア112を含む。ピン138は、プランジャヘッド122の周りにらせん状をなす1つまたはそれ以上の溝136に係合可能であり、「反対支承部」として働く。キャップ110、ストッパ108および薬剤容器102壁は、キャビティ長さ116がS2のキャビティ114を画成する(縮尺通りには図示されない)。
【0055】
使用のとき、駆動機構120(図示の例ではばねである)は、プランジャ118をキャップ110のボア112を通って薬剤容器102内へと動かす。そうすると、プランジャヘッド122の溝136が、キャップ110のボア112内へと延びるピン138に係合する。これは、プランジャ118の動きに抵抗をもたらす。プランジャ118が駆動機構120によってさらに押し下げられると、プランジャヘッド122は、プランジャ118の本体および薬剤容器102に対して回転して、ボア内に事実上「螺着」される。これは、プランジャの動きに抵抗をもたらす。プランジャ118がさらに押し下げられると、ピン138は、最終的に溝136の端に到達しそれらから退出する。そして、それ以上ピン138によってプランジャ118に力の減衰が加えられることがなくなる。
【0056】
S1≧S2の場合、プランジャヘッド122は、ストッパ108と接触しても回転することになり、それによってストッパ108に対するプランジャ118の初期の衝撃力が低減する。したがって、プランジャヘッドの溝136とピン138の協働によって、力低減機能が提供される。
【0057】
図10は、
図8に示される注射デバイスの実施形態で使用されるプランジャヘッドの一代替実施形態を示している。この実施形態では、プランジャヘッド122は、プランジャの本体に対して固定されており、プランジャロッド118全体が、プランジャロッド118が駆動機構120によって薬剤容器102内へと動かされるときに回転する。駆動機構120がばねである実施形態では、回転プレート139がプランジャヘッド122の内部に設けられ、それにばねが載る。回転プレート139は、ばねを捩じることなく、プランジャロッド118がばねの周りで回転できるようにする。
【0058】
プランジャ118が薬剤カートリッジ内へと動かされると、ピン138と溝136によりプランジャ118が回転し、それによってプランジャロッド118における力およびその速度が低減される。プランジャロッド118は、溝136とピン138との間の結合性を確実にするために、溝136に対するリードインピッチ(lead-in pitch)を有する。溝136の勾配は、所望の力および速度の低減に対応する。
【0059】
図11は、複数の可撓性アームを含む、プランジャヘッドを含む注射デバイスのさらなる一実施形態の概略を示している。
図12は、プランジャおよび可撓性アームの上面図を示している。この実施形態では、プランジャヘッドは、1つまたはそれ以上のくぼみ140を含む。注射デバイスは、プランジャヘッド122のくぼみ140に係合する1つまたはそれ以上の可撓性アーム142を含む。図示の実施形態では、4つの可撓性アーム142が設けられているが、より少ないまたはより多い数のアームを使用することもできる。可撓性アーム142は、薬剤カートリッジ102の一部、たとえばキャップの一部として設けられ、または薬剤カートリッジ102と一体であってよい。あるいは、可撓性アーム142は、
図12に示されるように、別個のシリンジ駆動プレート146の一部として設けることもできる。可撓性アーム142は、たとえば、打抜金属から製造することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、プランジャロッド118は、プランジャが薬剤カートリッジ102内へと押し下げられるときに可撓性アーム142を捕らえるように配置された1つまたはそれ以上のセレーション144をさらに含み、それによってプランジャロッド118の動きに追加の抵抗/減衰がもたらされる。セレーション144は、いくつかの実施形態では、プランジャロッド118の全長に沿って延びることができ、それによって注射事象全体にわたってプランジャロッド118の動きに減衰がもたらされる。可撓性アーム142を捕らえるセレーション144は、さらに、使用者に可聴フィードバックを提供することができる。
【0061】
プランジャ118が薬剤カートリッジ102内へと動かされると、くぼみに捕らえられていた可撓性アームが曲がり、それによってプランジャヘッド122に対してその動きに逆らう力が加えられる。それによってプランジャロッド118の動きが減衰される。プランジャロッド118が薬剤カートリッジ内へとさらに押し下げられるにつれて可撓性アームは次第に曲がっていき、最後はプランジャロッドを解放する。くぼみと可撓性アームの協働により、力低減機能が提供される。
【0062】
図13および14は、可撓性リップを含む力低減機能を含む注射デバイスの一実施形態を示している。
【0063】
この実施形態では、キャップ110は、可撓性リップ148を有するボア112を含む。可撓性リップ148は、プランジャロッド118を、それが薬剤容器102内へと押されるときに把持するように配置される。可撓性リップ148は、プランジャロッド118の動きに追加の抵抗をもたらし、したがって力低減機能として働く。
【0064】
可撓性リップ148は、プランジャロッド118と相まって実質的に気密の封止部を形成する。
【0065】
いくつかの実施形態では、可撓性リップ148は、プランジャロッド118のプランジャヘッド(
図13には示されない)を把持するように配置される。プランジャヘッドは、プランジャ本体の残部より大きい直径を有する。プランジャヘッドが可撓性リップを通過した後、プランジャロッド118は、それ以上可撓性リップに接触しなくなり、プランジャロッド118の動きは、可撓性リップ148によってもはや遅くされなくなる。
【0066】
他の実施形態では、プランジャロッド118は、プランジャロッド118に沿った所定距離にプランジャロッド本体に1つまたはそれ以上のスリット150を含み、それによって可撓性リップ148は、
図14により詳細に示されるように、スリット150が可撓性リップ148を越えるとプランジャロッド118を解放する。したがって、力低減は、プランジャロッド118のその遠位端とスリット150の位置との間の長さの間、プランジャロッド118に加えられる。
【0067】
上述の力低減機能の2つ以上を単一の力低減機能に組み込んでもよい。たとえば、圧縮可能ボアをOリングとともに対応するプランジャヘッドに与えてもよく、両方ある場合、力低減ヘッドが薬剤カートリッジ内を通ると、ボアは圧縮され、Oリングは変位する。
【0068】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0069】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含みうる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0070】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0071】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルクインデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0072】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかでありうる。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0073】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0074】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0075】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば:家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))である。
【0076】
DPP4阻害剤の例は、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0077】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0078】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0079】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0080】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0081】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0082】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0083】
本明細書に記載のAPI、配合、装置、方法、システムおよび実施形態の様々な構成要素の修正(追加および/または削除)は、本発明の全範囲および趣旨から逸脱することなく行うことができ、本発明は、そのような修正、およびそのあらゆる均等物もすべて包含することが当業者には理解されよう。