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特許7344313被覆樹脂粒子の製造方法及び粒子表面積の調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】被覆樹脂粒子の製造方法及び粒子表面積の調整方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20230906BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20230906BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20230906BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20230906BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20230906BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230906BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CEY
C08J3/12 CFF
B01J2/00 B
B01J20/26 D
B01J20/30
C08G18/08 038
C08L75/04
C08L33/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021564013
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2020045930
(87)【国際公開番号】W WO2021117784
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2019225185
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019225184
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020026078
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020085218
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020085220
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020085224
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020085226
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020085227
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020122800
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】澤木 大輝
(72)【発明者】
【氏名】佐野 建太郎
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-347402(JP,A)
【文献】特開平11-057465(JP,A)
【文献】特開平04-298516(JP,A)
【文献】特開平01-126314(JP,A)
【文献】特開2010-202743(JP,A)
【文献】特開2008-264672(JP,A)
【文献】米国特許第4727097(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28、99/00
C08G 18/00-18/87、71/00-71/04
B01J 2/00-2/30、20/00-20/28、
20/30-20/34
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の物質と、当該第1の物質と重合反応する第2の物質とを吸水状態の吸水性樹脂粒子の表面で重合反応させて、前記吸水性樹脂粒子の少なくとも一部を被覆する被覆部を得る被覆工程を備え、
前記被覆工程が、前記第1の物質及び前記吸水性樹脂粒子を含有する液と、前記第2の物質を含有する液とを混合することにより前記被覆部を得る工程であり、
前記第1の物質の量が前記吸水性樹脂粒子100質量部に対して0.01~40質量部であり、
前記第2の物質の量が前記吸水性樹脂粒子100質量部に対して0.01~40質量部である、被覆樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記被覆工程の前に、前記吸水性樹脂粒子の分散体に、前記第1の物質及び水を含む液を混合することにより、前記第1の物質及び前記吸水性樹脂粒子を含有する前記液を得る混合工程を更に備える、請求項1に記載の被覆樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
被覆樹脂粒子の中位粒子径が150μm以上である、請求項1又は2に記載の被覆樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
前記吸水状態の吸水性樹脂粒子の膨張度が1.5倍以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の被覆樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
前記吸水性樹脂粒子が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する構造単位を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の被覆樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
前記第1の物質がポリオールを含み、前記第2の物質がポリイソシアネートを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の被覆樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
第1の物質と、当該第1の物質と重合反応する第2の物質とを吸水状態の吸水性樹脂粒子の表面で重合反応させて、前記吸水性樹脂粒子の少なくとも一部を被覆する被覆部を得る被覆工程における前記吸水状態の吸水性樹脂粒子の膨張度に基づき、前記吸水性樹脂粒子及び前記被覆部を有する被覆樹脂粒子の表面積を調整し、
前記第1の物質の量が前記吸水性樹脂粒子100質量部に対して0.01~40質量部であり、
前記第2の物質の量が前記吸水性樹脂粒子100質量部に対して0.01~40質量部である、粒子表面積の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆樹脂粒子の製造方法及び粒子表面積の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂粒子は、紙おむつ、生理用品、簡易トイレ等の衛生材料;保水剤、土壌改良剤等の農園芸材料;止水剤、結露防止剤等の工業資材などの種々の分野で広く使用されている。吸水性樹脂粒子には、吸水速度等の各種性能の制御が求められている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-28117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、吸水速度等の各種性能を制御する方法として粒子表面積を調整することに着目した上で、吸水性樹脂粒子の作製条件を調整する方法とは異なる方法により粒子表面積を調整可能であり、粒子表面積を増加させることができることを見出した。
【0005】
本発明の一側面は、粒子表面積を増加させることが可能な被覆樹脂粒子の製造方法を提供することを目的とする。本発明の他の一側面は、粒子表面積を容易に調整可能な粒子表面積の調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、第1の物質と、当該第1の物質と重合反応する第2の物質とを吸水状態の吸水性樹脂粒子の表面で重合反応させて、前記吸水性樹脂粒子の少なくとも一部を被覆する被覆部を得る被覆工程を備える、被覆樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0007】
本発明の他の一側面は、第1の物質と、当該第1の物質と重合反応する第2の物質とを吸水状態の吸水性樹脂粒子の表面で重合反応させて、前記吸水性樹脂粒子の少なくとも一部を被覆する被覆部を得る被覆工程における前記吸水状態の吸水性樹脂粒子の膨張度に基づき、前記吸水性樹脂粒子及び前記被覆部を有する被覆樹脂粒子の表面積を調整する、粒子表面積の調整方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面によれば、粒子表面積を増加させることが可能な被覆樹脂粒子の製造方法を提供することができる。本発明の他の一側面によれば、粒子表面積を容易に調整可能な粒子表面積の調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】被覆樹脂粒子の一例を示す模式断面図である。
図2】被覆樹脂粒子及び吸水性樹脂粒子のSEM写真を示す図面である。
図3】被覆樹脂粒子及び吸水性樹脂粒子のSEM写真を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0011】
本明細書において、「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合及びない場合の双方を意味するものとする。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実験例に示されている値に置き換えてもよい。室温とは、25℃を意味するものとする。本明細書に例示する材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0012】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法は、第1の物質と、当該第1の物質と重合反応する第2の物質とを吸水状態の吸水性樹脂粒子(被コーティング体)の表面で重合反応させて、吸水性樹脂粒子の少なくとも一部を被覆する被覆部を得る被覆工程を備える。
【0013】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法によれば、第1の物質と第2の物質との重合反応物である被覆部によって吸水性樹脂粒子(被コーティング体)の少なくとも一部を被覆することにより被覆樹脂粒子の表面積を増加させることができる。例えば、本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法によれば、被覆工程における吸水状態の吸水性樹脂粒子の膨張度を調整することにより被覆樹脂粒子の表面積を増加させることができる。本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法によれば、例えば粒子径300~400μmの被覆樹脂粒子の表面積を増加させることができる。
【0014】
本発明者は、下記の知見を見出した。被覆部を有しない吸水状態の吸水性樹脂粒子が脱水されると、粒子表面積が固定化されていないことから、粒子が収縮するに伴い粒子表面積が粒子の状態に応じて大きく変化するため、収縮前の吸水性樹脂粒子の状態に基づき粒子表面積を調整しづらい。一方、被覆部を有する吸水状態の吸水性樹脂粒子が脱水されると、被覆部によって粒子の表面が固定化されていることにより、粒子が収縮する際に粒子表面積が収縮前後で大きく変化しづらいことから、収縮前の吸水性樹脂粒子の状態として吸水性樹脂粒子の膨張度に応じて表面積が調整されやすい。そのため、被覆部を有する被覆樹脂粒子の製造過程における吸水性樹脂粒子の膨張度を調整することにより被覆樹脂粒子の表面積を容易に調整可能であり、被覆樹脂粒子の表面積を増加させることができる。
【0015】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法によれば、被覆樹脂粒子を得ることができる。当該被覆樹脂粒子は、吸水性樹脂粒子と、当該吸水性樹脂粒子の少なくとも一部を被覆する被覆部と、を有する。
【0016】
被覆対象の吸水性樹脂粒子の形状は、特に限定されず、例えば、略球状、不定形状、顆粒状等であってよく、これらの形状を有する一次粒子が凝集した形状であってもよい。不定形状の吸水性樹脂粒子は、例えば、樹脂塊体を破砕機で破砕することで得られる。
【0017】
吸水性樹脂粒子は、吸水性を有する樹脂から構成されていれば特に限定されない。吸水性樹脂粒子における25℃のイオン交換水の吸水量(常圧下の吸水量)は、例えば10g/g以上であってよい。
【0018】
吸水性樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体を含む単量体を重合させて得られる架橋重合体を含むことができる。すなわち、吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有することが可能であり、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含むことができる。エチレン性不飽和単量体の重合方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。
【0019】
エチレン性不飽和単量体は、水溶性エチレン性不飽和単量体(例えば、25℃のイオン交換水100gに対する溶解度が1g以上のエチレン性不飽和単量体)であってよい。エチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸及びその塩、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体がアミノ基を有する場合、当該アミノ基は4級化されていてもよい。エチレン性不飽和単量体は、被覆樹脂粒子の表面積を特に調整しやすい(増加させやすい)観点から、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。吸水性樹脂粒子は、被覆樹脂粒子の表面積を特に調整しやすい(増加させやすい)観点から、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する構造単位を有することが好ましい。
【0020】
エチレン性不飽和単量体が酸性基を有する場合、酸性基を中和してから重合反応に用いてもよい。エチレン性不飽和単量体における中和度は、エチレン性不飽和単量体中の酸性基の10~100モル%、50~90モル%、又は、60~80モル%であってよい。
【0021】
吸水性樹脂粒子を得るための単量体としては、上述のエチレン性不飽和単量体以外の単量体が使用されてもよい。このような単量体は、例えば、上述のエチレン性不飽和単量体を含む水溶液に混合して用いることができる。エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量(吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量。例えば、架橋重合体の構造単位を与える単量体の全量。以下同様)に対して70~100モル%であることが好ましい。中でも、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70~100モル%であることがより好ましい。「(メタ)アクリル酸及びその塩の割合」は、(メタ)アクリル酸及びその塩の合計量の割合を意味する。
【0022】
本実施形態によれば、吸水性樹脂粒子の一例として、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量(例えば、前記架橋重合体の構造単位を与える単量体の全量)に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子を提供することができる。
【0023】
重合の際に自己架橋による架橋が生じ得るが、内部架橋剤を用いることで架橋を促してもよい。内部架橋剤を用いると、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御しやすい。内部架橋剤としては、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;ジビニル系化合物;ジアルコール系化合物;ジアクリレート系化合物などが挙げられる。
【0024】
吸水性樹脂粒子は、架橋重合体粒子のみから構成されていてもよいが、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤、流動性向上剤(滑剤)等を更に含んでいてもよい。これらの成分は、架橋重合体粒子の内部、架橋重合体粒子の表面上、又は、それらの両方に配置され得る。
【0025】
被覆部は、上述の第1の物質と第2の物質との重合反応物である。被覆部は、水溶性であってよく、水溶性でなくてもよい(難水溶性であってもよい)。被覆部が水溶性である場合、被覆部の溶解度は、例えば、25℃のイオン交換水100gに対して1g以上(例えば1~150g)であってよい。被覆部の構成材料は、ウレタン樹脂、フェノール樹脂(例えば、フェノール化合物とアルデヒドとの縮合物)、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート等の逐次重合反応物;ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレングリコール等の連鎖重合反応物などを含み得る。なお、第1の物質と第2の物質は異なっていてもよく、同じであってもよい。
【0026】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の中位粒子径は、下記の範囲であってよい。被覆樹脂粒子の中位粒子径は、100μm以上、150μm以上、200μm以上、250μm以上、300μm以上、350μm以上、355μm以上、360μm以上、380μm以上、400μm以上、又は、410μm以上であってよい。被覆樹脂粒子の中位粒子径は、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、450μm以下、410μm以下、400μm以下、380μm以下、360μm以下、又は、355μm以下であってよい。これらの観点から、被覆樹脂粒子の中位粒子径は、100~800μm、150~700μm、200~600μm、又は、250~500μmであってよい。
【0027】
図1は、被覆樹脂粒子の一例を示す模式断面図である。図1に示す被覆樹脂粒子1は、樹脂粒子1aと、樹脂粒子(吸水性樹脂粒子)1aの表面の少なくとも一部を被覆するコーティング層(被覆部)1bとを有する。図1では、樹脂粒子1aの表面全体がコーティング層1bによって被覆されている。この場合、例えば、コーティング層1bが水溶性であることにより、コーティング層1bが溶解して消失することにより、樹脂粒子1aを水に接触させる挙動(例えば経時変化)を調整できる。樹脂粒子1aの表面においてコーティング層1bの被覆量を調整することにより、水に対する樹脂粒子1aの接触量を調整できる。
【0028】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法における被覆工程では、第1の物質と、当該第1の物質と重合反応する第2の物質とを吸水状態の吸水性樹脂粒子の表面で重合反応させる。被覆工程では、吸水性樹脂粒子の表面において第1の物質と第2の物質とを接触させることができる。
【0029】
被覆工程における重合反応は、逐次重合反応又は連鎖重合反応であることが好ましく、粒子の凝集が発生し難いことが推定される観点から、逐次重合反応であることがより好ましい。逐次重合反応の場合、重合反応に重合開始剤が不要であるため、重合開始剤が粒子表面に表出し難く、被覆樹脂粒子の表面積を特に調整しやすい(増加させやすい)と本発明者らは推測している。第1の物質と第2の物質との逐次重合反応の反応温度は、例えば15~200℃であってよい。
【0030】
被覆工程における吸水状態の吸水性樹脂粒子の膨張度(質量基準の膨張度。吸水状態における吸水性樹脂粒子の質量/吸水性樹脂粒子の純分(乾燥状態の吸水性樹脂粒子の質量))は、下記の範囲であってよい。膨張度は、1.5倍以上、1.75倍以上、2.0倍以上、2.1倍以上、2.5倍以上、2.75倍以上、3.0倍以上、又は、3.2倍以上であってよい。膨張度は、5倍以下、4.5倍以下、4.0倍以下、又は、3.5倍以下であってよい。膨張度としては、25℃における膨張度を用いることができる。吸水状態の吸水性樹脂粒子の膨張度としては、第1の物質と第2の物質とが接触(重合反応)する時点における膨張度を用いることが可能であり、例えば、吸水性樹脂粒子と第1の物質とを接触させた後に第2の物質を供給する場合、第2の物質を供給する時点における膨張度を用いることができる。膨張度は、被覆対象である吸水性樹脂粒子に含まれる含水量、第1の物質を溶質とする溶液に含まれる溶媒量等を調整することで所望の値に調整することができる。
【0031】
第1の物質及び第2の物質の組み合わせとしては、ポリオール及びポリイソシアネート;アルデヒド及びフェノール化合物;ポリオール及び多価カルボン酸;多価アミン及び多価カルボン酸;フェノール化合物及び炭酸エステル;フェノール化合物及び炭酸クロリド等が挙げられる。第1の物質及び第2の物質は、これらの組み合わせにおけるいずれの物質であってもよい(例えば、第1の物質がポリオールであり、かつ、第2の物質がポリイソシアネートである態様であってよく、第1の物質がポリイソシアネートであり、かつ、第2の物質がポリオールである態様であってよい)。第1の物質及び第2の物質は、水溶性であってよく、水溶性でなくてもよい(難水溶性であってもよい)。「水溶性」とは、例えば、25℃のイオン交換水100gに対する溶解度が1g以上であることを意味する。
【0032】
ポリオールは、2以上の水酸基を有する化合物であればよく、ジオール、トリオール等を用いることができる。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。
【0033】
ポリイソシアネートは、2以上のイソシアネート基を有する化合物であればよく、ジイソシアネート、トリイソシアネート等を用いることができる。ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(例えばトリレン-2,4-ジイソシアナート)、キシリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。
【0034】
アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド;ベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒドなどが挙げられる。
【0035】
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、カテコール、ナフトール、ヒドロキノン等が挙げられる。
【0036】
第1の物質及び第2の物質の組み合わせとしては、被覆樹脂粒子の表面積を特に調整しやすい(増加させやすい)観点から、第1の物質がポリオールを含み、かつ、第2の物質がポリイソシアネートを含む態様が好ましい。
【0037】
第1の物質の量は、第1の物質を均一に吸水性樹脂粒子に浸透させやすい観点から、吸水性樹脂粒子100質量部に対して下記の範囲であってよい。第1の物質の量は、0.01質部以上、0.05質量部以上、0.8質量部以上、0.1質量部以上、0.5質量部以上、0.8質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、5質量部以上、8質量部以上、又は、10質量部以上であってよい。第1の物質の量は、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下、8質量部以下、5質量部以下、3質量部以下、2質量部以下、又は、1質量部以下であってよい。これらの観点から、第1の物質の量は、0.01~50質量部であってよい。
【0038】
第2の物質の量は、吸水性樹脂粒子の表面において第2の物質を第1の物質と効率的に重合反応させやすい観点から、吸水性樹脂粒子100質量部に対して下記の範囲であってよい。第2の物質の量は、0.01質部以上、0.05質量部以上、0.8質量部以上、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、4質量部以上、又は、4.5質量部以上であってよい。第2の物質の量は、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下、8質量部以下、又は、5質量部以下であってよい。これらの観点から、第2の物質の量は、0.01~50質量部であってよい。
【0039】
第2の物質の量は、吸水性樹脂粒子の表面において第2の物質を第1の物質と効率的に重合反応させやすい観点から、第1の物質100質量部に対して下記の範囲であってよい。第2の物質の量は、1質量部以上、3質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、又は、45質量部以上であってよい。第2の物質の量は、500質量部以下、400質量部以下、350質量部以下、300質量部以下、250質量部以下、200質量部以下、150質量部以下、120質量部以下、119質量部以下、110質量部以下、100質量部以下、80質量部以下、又は、50質量部以下であってよい。これらの観点から、第2の物質の量は、1~500質量部であってよい。
【0040】
第1の物質及び第2の物質の供給方法としては、特に限定されず、当該物質を溶媒又は分散媒と混合した状態(溶液状態又は分散液状態)で供給する方法、当該物質自体が液状(例えば溶融状態)又は固形状の状態で供給する方法などが挙げられる。第1の物質又は第2の物質を溶媒又は分散媒と混合した状態の液は、例えば、第1の物質又は第2の物質を、溶媒に溶解、又は、分散媒に分散させることにより得ることができる。第1の物質又は第2の物質を溶媒又は分散媒と混合した状態の液は、吸水性樹脂粒子を更に含有してよい。
【0041】
溶媒としては、水、親水性溶媒(水と相溶する溶媒)、水及び親水性溶媒の混合溶媒等を用いることができる。親水性溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;エチレングリコール等のグリコール;ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル;テトラヒドロフラン等のエーテルなどが挙げられる。
【0042】
特に、第1の物質の溶媒は、吸水性樹脂粒子を膨張させ得る(被覆対象である吸水性樹脂粒子に吸収され得る)ものであることが好ましく、そのような溶媒としては、水、アルコール、及び、水とアルコールを含む混合溶媒からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、水を含むことがより好ましく、膨張度を調整しやすい観点から、実質的に水のみからなることが更に好ましい。
【0043】
分散媒は、炭化水素系分散媒を含んでよい。炭化水素系分散媒としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、n-オクタン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans-1,2-ジメチルシクロペンタン、cis-1,3-ジメチルシクロペンタン、trans-1,3-ジメチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。
【0044】
被覆工程では、例えば、第1の物質及び吸水性樹脂粒子を含有する液と、第2の物質を含有する液とを混合することにより、吸水性樹脂粒子の少なくとも一部を被覆する被覆部を得てよい。
【0045】
第2の物質を含有する液における第2の物質の含有量は、吸水性樹脂粒子の表面において第2の物質を第1の物質と効率的に重合反応させやすい観点から、液の全体を基準として下記の範囲であってよい。第2の物質の含有量は、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、8質量%以上、又は、10質量%以上であってよい。第2の物質の含有量は、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は、10質量%以下であってよい。これらの観点から、第2の物質の含有量は、0.1~50質量%であってよい。
【0046】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法は、被覆工程の前に、吸水性樹脂粒子の分散体に、第1の物質及び水を含む液を混合することにより混合液(第1の物質及び吸水性樹脂粒子を含有する液)を得る混合工程を備えてよい。混合工程では、吸水性樹脂粒子と第1の物質とを接触させることができる。
【0047】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法は、混合工程の前に、吸水性樹脂粒子の分散体を得る分散工程を備えてよい。吸水性樹脂粒子の分散体は、吸水性樹脂粒子を分散媒に分散させること、又は、吸水性樹脂粒子を気体中に分散させることにより得ることができる。分散媒としては、上述した炭化水素系分散媒を用いることができる。溶媒として上述した水、親水性溶媒(水と相溶する溶媒)、水及び親水性溶媒の混合溶媒等を吸水性樹脂粒子の分散媒として用いてもよい。分散工程の前に、吸水性樹脂粒子を膨張させてもよい。吸水性樹脂粒子を気体中に分散させた分散体を得る場合、当該気体は、大気であってよいが、窒素ガス等の不活性ガスを90質量%以上含むことが好ましい。
【0048】
「吸水性樹脂粒子の分散体」は、個々の吸水性樹脂粒子の大多数が他の吸水性樹脂粒子と非接触に保たれた状態を有している。「吸水性樹脂粒子の大多数」は、分散体に含まれる吸水性樹脂粒子の全体を基準として、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、又は、90質量%以上であってよい。吸水性樹脂粒子の分散体は、当該分散体を容易に得られる観点から、吸水性樹脂粒子を分散媒に分散させて得られる分散液であることが好ましい。
【0049】
吸水性樹脂粒子の分散液における吸水性樹脂粒子の含有量は、吸水性樹脂粒子を効率的に分散させやすい観点から、分散体の全体を基準として下記の範囲であってよい。吸水性樹脂粒子の含有量は、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、又は、7質量%以上であってよい。吸水性樹脂粒子の含有量は、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、又は、8質量%以下であってよい。これらの観点から、吸水性樹脂粒子の含有量は、0.1~50質量%であってよい。
【0050】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法は、混合工程の前に、少なくとも水を含む溶媒に第1の物質を添加することにより、第1の物質及び水を含む液(例えば第1の物質の水溶液)を得る工程を備えてよい。
【0051】
第1の物質及び水を含む液は、少なくとも水を含む溶媒に第1の物質を添加することにより得ることができる。当該溶媒における水の割合は、50質量%以上、70質量%以上、又は、90質量%以上であってよい。溶媒は、水からなる態様(溶媒の実質的に100質量%が水である態様)であってよく、第1の物質及び水を含む液は、水からなる溶媒に第1の物質を溶解させることにより得られる第1の物質の水溶液であってよい。
【0052】
溶媒が水を含んでいるため、第1の物質及び水を含む液に吸水性樹脂粒子が接触することにより吸水性樹脂粒子に第1の物質が浸透しやすい。換言すれば、吸水性樹脂粒子の表面に第1の物質が保持されやすい。その結果、被覆工程において、吸水性樹脂粒子の表面において第1の物質が第2の物質と重合反応しやすく、被覆部を効率的に形成することができると推測される。
【0053】
第1の物質及び水を含む液における第1の物質の含有量は、第1の物質を均一に吸水性樹脂粒子に浸透させやすい観点から、液の全体を基準として下記の範囲であってよい。第1の物質の含有量は、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、8質量%以上、又は、10質量%以上であってよい。第1の物質の含有量は、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、又は、5質量%以下であってよい。これらの観点から、第1の物質の含有量は、0.1~50質量%であってよい。
【0054】
第1の物質及び水を含む液における第1の物質の含有量は、第1の物質を均一に吸水性樹脂粒子に浸透させやすい観点から、水100質量部に対して下記の範囲であってよい。第1の物質の含有量は、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、4質量部以上、5質量部以上、6質量部以上、8質量部以上、10質量部以上、又は、11質量部以上であってよい。第1の物質の量は、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、11質量部以下、10質量部以下、8質量部以下、又は、6質量部以下であってよい。これらの観点から、第1の物質の量は、0.1~50質量部であってよい。
【0055】
本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法は、被覆工程で得られた粒子に脱水処理を施す脱水工程(乾燥工程)を備えてよい。脱水工程では、被覆工程で得られた粒子における水分の少なくとも一部を除去する。脱水工程では、加熱処理を施すことにより脱水処理を施してよい。加熱温度は、例えば100~150℃であってよい。
【0056】
本実施形態に係る粒子表面積の調整方法は、本実施形態に係る被覆樹脂粒子の粒子表面積の調整方法である。本実施形態に係る粒子表面積の調整方法では、第1の物質と、当該第1の物質と重合反応する第2の物質とを吸水状態の吸水性樹脂粒子の表面で重合反応させて、吸水性樹脂粒子の少なくとも一部を被覆する被覆部を得る被覆工程における吸水状態の吸水性樹脂粒子の膨張度に基づき、吸水性樹脂粒子及び被覆部を有する被覆樹脂粒子の表面積を調整する。
【0057】
本実施形態に係る粒子表面積の調整方法によれば、第1の物質と第2の物質との重合反応物である被覆部によって吸水性樹脂粒子(被コーティング体)の少なくとも一部を被覆するに際して吸水状態の吸水性樹脂粒子の膨張度を調整することにより被覆樹脂粒子の表面積を容易に調整できる。本実施形態に係る被覆樹脂粒子の調整方法によれば、例えば粒子径300~400μmの被覆樹脂粒子の表面積を容易に調整できる。被覆工程における吸水状態の吸水性樹脂粒子の膨張度は、本実施形態に係る被覆樹脂粒子の製造方法に関して上述した膨張度(例えば1.5倍以上)に調整できる。
【実施例
【0058】
以下、実験例を用いて本発明の内容を更に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0059】
<評価用粒子の作製>
(実験例A1)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機(翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段有する撹拌翼)を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、n-ヘプタン293g、及び、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(分散剤、三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.736gを添加することにより混合物を得た。この混合物を撹拌しつつ80℃まで昇温することにより分散剤をn-ヘプタンに溶解させた後、混合物を50℃まで冷却した。
【0060】
次に、内容積300mLのビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(アクリル酸:1.03モル)を入れた。続いて、外部より冷却しつつ、20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gをビーカー内に滴下することにより75モル%のアクリル酸を中和した。その後、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社製、HEC AW-15F)、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.010g(0.057ミリモル)を加えた後に溶解させることにより第1段目の水溶液を調製した。
【0061】
そして、上述の第1段目の水溶液を上述のセパラブルフラスコに添加した後、10分間撹拌した。その後、n-ヘプタン6.62gにショ糖ステアリン酸エステル(界面活性剤、三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS-370、HLB:3)0.736gを溶解することにより得られた界面活性剤溶液をセパラブルフラスコに添加することにより反応液を得た。そして、撹拌機の回転数550rpmで反応液を撹拌しながら系内を窒素で充分に置換した。その後、セパラブルフラスコを70℃の水浴に浸漬させることにより反応液を昇温し、重合反応を60分間進行させることにより第1段目の重合スラリー液を得た。
【0062】
次に、内容積500mLの別のビーカーに水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(アクリル酸:1.43モル)を入れた。続いて、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gをビーカー内に滴下することにより75モル%のアクリル酸を中和した。その後、アクリル酸水溶液が入ったビーカーに、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.103g(0.381ミリモル)と、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)とを加えた後に溶解させることにより第2段目の水性液を調製した。
【0063】
撹拌機の回転数を1000rpmとして撹拌しながら、上述のセパラブルフラスコ内の第1段目の重合スラリー液を25℃に冷却し、上述の第2段目の水溶液の全量を上述の第1段目の重合スラリー液に添加した。続いて、フラスコ内を窒素で30分間置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して反応液を昇温し、第2段目の重合反応を60分間行うことにより含水ゲル状重合体を得た。
【0064】
その後、125℃に設定した油浴に上記フラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により257.7gの水を系外へ抜き出した。次いで、上記フラスコを引き上げた後、その下部が油浴にわずかに接している状態で内温を83℃に調節した。その後、フラスコに表面架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(0.507ミリモル)を添加した後、内温を83℃で2時間保持した。
【0065】
その後、125℃に設定した油浴にフラスコを再度浸漬して昇温し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら245gの水を系外へ抜き出した。そして、n-ヘプタンを125℃にて蒸発させて乾燥させることによって乾燥物(重合物)を得た。この乾燥物を目開き850μmの篩に通過させることにより、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂粒子A(被コーティング体)236.8gを得た。下記第1の物質と接触させる前における吸水性樹脂粒子Aの液状成分の含有率は10質量%であった。液状成分の含有率の算出方法については後述する。
【0066】
第1の物質であるモノマー種Aの溶液として、ポリエーテルポリオール(第一工業製薬株式会社製、DKポリオール3817)4.0g及びイオン交換水76.0gの混合液(ポリオール水溶液)80.0gを調製した。また、第2の物質であるモノマー種Bの溶液として、トリレン-2,4-ジイソシアナート1.9g及びアセトン17.1gの混合液(イソシアネート溶液)19.0gを調製した。
【0067】
次に、還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機(翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段有する撹拌翼)を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、上述の吸水性樹脂粒子A(逆相懸濁重合法により得られた吸水性樹脂粒子、被コーティング体)40.0gを加えた。その後、炭化水素分散媒としてn-ヘプタン480gを加えた後に1000rpmで撹拌することにより、分散体である分散液を得た。
【0068】
この分散液を撹拌しつつ上述のモノマー種Aの溶液80gを添加することにより、吸水性樹脂粒子Aをモノマー種Aと接触させた後、室温で30分間撹拌した。第1の物質であるモノマー種Aと吸水性樹脂粒子Aとを接触させた後の吸水状態における吸水性樹脂粒子Aの膨張度は3.2倍であった。膨張度の算出方法については後述する。
【0069】
続いて、上述のモノマー種Bの溶液19.0gを添加した後、室温で120分間撹拌することにより、吸水性樹脂粒子Aの表面で逐次重合反応を進行させて反応物を得た。
【0070】
その後、125℃の油浴で反応物を昇温し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら76gの水を系外へ抜き出した。そして、n-ヘプタンを125℃にて蒸発させさせることによって乾燥物(重合物)を得た。この乾燥物を目開き850μmの篩に通過させることにより、ポリウレタンにより吸水性樹脂粒子Aがコーティングされた被覆樹脂粒子A1を38.2g得た。
【0071】
(実験例A2)
第1の物質であるモノマー種Aの溶液をポリエーテルポリオール(第一工業製薬株式会社製、DKポリオール3817)4g及びイオン交換水36gの混合液40gに変更したこと以外は実験例A1と同様に行うことにより被覆樹脂粒子A2を作製した。第1の物質であるモノマー種Aと吸水性樹脂粒子Aとを接触させた後の吸水状態における吸水性樹脂粒子Aの膨張度は2.1倍であった。
【0072】
(実験例B1)
撹拌機(翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段有する撹拌翼)を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコに509.71g(7.07モル)の100%アクリル酸を入れた。このアクリル酸を撹拌しながら、セパラブルフラスコ内にイオン交換水436.47gを加えた。その後、氷浴(1℃)下で444.68gの48質量%水酸化ナトリウムを滴下することにより単量体濃度45.08質量%のアクリル酸部分中和液(中和率:75.44モル%)1390.86gを調製した。本操作を3回繰り返し、後述の重合に用いた。
【0073】
上述のアクリル酸部分中和液2781.72gにイオン交換水406.89g及びポリエチレングリコールジアクリレート(n=9)2.90g(5.576ミリモル)を加えて反応液(単量体水溶液)を得た。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間窒素ガス置換した。次いで、温度計、窒素吹込み管、開閉可能な蓋、2本のシグマ型羽根及びジャケットを備えるステンレス製双腕型ニーダーに上述の反応液を供給した後、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、2.0質量%の過硫酸ナトリウム水溶液92.63g(7.780ミリモル)及び0.5質量%のL-アスコルビン酸水溶液15.85gを加えた。約1分後に温度が上昇し始め、重合が開始した。6分後に重合中の最高温度は93℃を示した。その後、ジャケット温度を60℃に保ちながら撹拌し続け、重合を開始してから60分後に含水ゲルを取り出した。得られた含水ゲルを喜連ローヤル社製のミートチョッパー12VR-750SDXに順次投入し、細分化した。ミートチョッパーの尖端に位置するプレートの穴の径は6.4mmであった。
【0074】
この細分化された粒子状含水ゲルを目開き0.8cm×0.8cmの金網上に広げた後、160℃で60分間熱風乾燥することによって乾燥物を得た。
【0075】
次いで、遠心粉砕機(Retsch社製、ZM200、スクリーン口径1mm、12000rpm)を用いて乾燥物を粉砕し、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子を得た。さらに、この吸水性樹脂粒子を目開き850μmの金網、目開き250μmの金網及び目開き180μmの金網で分級することにより、目開き850μmの金網を通過し、かつ、目開き250μmの金網を通過しなかった分画である吸水性樹脂粒子Bを得た。第1の物質であるモノマー種Aと接触させる前における吸水性樹脂粒子Bの液状成分の含有率は5質量%であった。液状成分の含有率の算出方法については後述する。
【0076】
この吸水性樹脂粒子B(水溶液重合法により得られた吸水性樹脂粒子)を被コーティング体として用いたこと以外は実験例A1と同様に行うことによって当該吸水性樹脂粒子Bをポリウレタンによりコーティングすることで被覆樹脂粒子B1を作製した。第1の物質であるモノマー種Aと吸水性樹脂粒子Bとを接触させた後の吸水状態における吸水性樹脂粒子Bの膨張度は3.1倍であった。
【0077】
<吸水状態における吸水性樹脂粒子の膨張度の算出>
第1の物質であるモノマー種Aと吸水性樹脂粒子とを接触させた後の吸水状態における吸水性樹脂粒子の膨張度(25℃)は、第1の物質と接触させる前における吸水性樹脂粒子の液状成分の含有率(25℃)の測定結果を用いて下記の手順で算出した。
【0078】
液状成分の含有率は次の手順で測定した。105℃に設定した熱風乾燥機(FV-320、ADVANTEC製)で吸水性樹脂粒子(被コーティング体として使用しない粒子)2.000gを2時間加熱した。吸水性樹脂粒子の減少質量[g]を、吸水性樹脂粒子に含まれる液状成分の含有量[g]であると判断し、下記式(1)によって液状成分の含有率を得た。
式(1): 第1の物質と接触させる前における吸水性樹脂粒子の液状成分の含有率[質量%]={吸水性樹脂粒子の減少質量[g]/吸水性樹脂粒子の質量(2.000g)}×100
【0079】
吸水状態における吸水性樹脂粒子の膨張度は次の手順で算出した。まず、第1の物質と接触させる前における吸水性樹脂粒子を準備した後、下記式(2)により当該吸水性樹脂粒子における液状成分の初期含有量を算出した。次に、下記式(3)により吸水性樹脂粒子の純分(液状成分を除く吸水性樹脂粒子の質量)を算出した。そして、下記式(4)により吸水状態における吸水性樹脂粒子の膨張度を算出した。
式(2): 吸水性樹脂粒子における液状成分の初期含有量[g]={第1の物質と接触させる前における吸水性樹脂粒子の質量[g]×吸水性樹脂粒子の液状成分の含有率[質量%]}/100
式(3): 吸水性樹脂粒子の純分[g]=第1の物質と接触させる前における吸水性樹脂粒子の質量[g]-吸水性樹脂粒子における液状成分の初期含有量[g]
式(4): 膨張度[倍]=吸水状態における吸水性樹脂粒子の質量[g]/吸水性樹脂粒子の純分[g]
【0080】
例えば、上述の実験例A1において、第1の物質であるモノマー種Aの溶液における溶媒(イオン交換水76.0g)の全てが吸水性樹脂粒子Aに吸収されたとみなし、第1の物質であるモノマー種Aと吸水性樹脂粒子Aとを接触させた後の吸水状態における吸水性樹脂粒子Aは、吸水性樹脂粒子Aの純分36.0gと、吸水性樹脂粒子Aにおける液状成分の初期含有量4.0gと、モノマー種Aの溶液から供給されたイオン交換水76.0gとを含有しており、膨張度は「(36.0g+4.0g+76.0g)/36.0g=3.2倍」であった。
【0081】
<粒子の表面観察>
上述の被覆樹脂粒子A1、A2及びB1、並びに、上述の吸水性樹脂粒子A及びBを評価用粒子として準備した。走査電子顕微鏡(SEM、日本電子株式会社(JEOL)製、JSM-6390LA)を用いて評価用粒子の状態を観察した。サンプルステージ上に両面カーボンテープの一方面を貼り付けた後、両面カーボンテープの一方面の他方面に評価用粒子を載せた。加速電圧15kV、動作距離10mmに設定し、評価用粒子を500倍の倍率で観察した。図2及び図3は、被覆樹脂粒子及び吸水性樹脂粒子のSEM写真を示す図面である。図2(a)は、被覆樹脂粒子A1のSEM写真を示す図面であり、図2(b)は、被覆樹脂粒子A2のSEM写真を示す図面であり、図2(c)は、吸水性樹脂粒子AのSEM写真を示す図面である。図3(a)は、被覆樹脂粒子B1のSEM写真を示す図面であり、図3(b)は、吸水性樹脂粒子BのSEM写真を示す図面である。図2によれば、表面に襞状の突起を有する被覆樹脂粒子A1及びA2の比表面積が吸水性樹脂粒子Aの比表面積よりも大きいことが推測され、後述の比表面積の測定において比表面積を確認した。この結果から、図3によれば、表面に襞状の突起を有する被覆樹脂粒子B1の比表面積が吸水性樹脂粒子Bの比表面積よりも大きいことが推測される。
【0082】
<比表面積の測定>
上述の被覆樹脂粒子A1,A2、及び、吸水性樹脂粒子Aを準備した。これらの粒子を目開き400μmの篩及び目開き300μmの篩にかけることにより、目開き400μmの篩を通過し、目開き300μmの篩上に残存する粒子を比表面積測定用の試料として得た。この試料を100℃で16時間加熱真空排気の脱気条件で乾燥した。その後、比表面積測定装置(AUTOSORB-1、カンタクローム社製)により、吸着ガスとしてクリプトンガスを用いる方法で温度77Kにて吸着等温線を測定し、多点BETプロットから比表面積(BET比表面積)を求めた。
【0083】
吸水性樹脂粒子Aの比表面積は0.036m/gであった。吸水性樹脂粒子Aを被覆部で被覆することにより得られる被覆樹脂粒子の比表面積として、被覆樹脂粒子A1の比表面積は0.060m/gであり、被覆樹脂粒子A2の比表面積は0.046m/gであった。
【符号の説明】
【0084】
1…被覆樹脂粒子、1a…樹脂粒子、1b…コーティング層。
図1
図2
図3