(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-05
(45)【発行日】2023-09-13
(54)【発明の名称】ペロブスカイト型複合酸化物粉末およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 53/00 20060101AFI20230906BHJP
C04B 35/50 20060101ALI20230906BHJP
【FI】
C01G53/00 A
C04B35/50
(21)【出願番号】P 2022038914
(22)【出願日】2022-03-14
(62)【分割の表示】P 2018001715の分割
【原出願日】2018-01-10
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】碇 和正
(72)【発明者】
【氏名】永富 晶
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-111534(JP,A)
【文献】特開2016-210661(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181598(WO,A1)
【文献】特開2011-212603(JP,A)
【文献】特開2009-076310(JP,A)
【文献】特開2014-162706(JP,A)
【文献】特開2004-041868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 53/00-53/12
C04B 35/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
La(Ni,Fe)O
3で示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末において、ランタンに対するニッケルのモル比(Ni/La)が0.55~0.65、ランタンに対する鉄のモル比(Fe/La)が0.35~0.45であり、リートベルト解析により算出される結晶構造の格子歪が0.43%以下であることを特徴とする、ペロブスカイト型複合酸化物粉末。
【請求項2】
前記ペロブスカイト型複合酸化物粉末を4MPaで加圧して得られた成形体を1350℃で2時間加熱して得られた焼結体の600℃における導電率が500S/cm以上であることを特徴とする、請求項
1に記載のペロブスカイト型複合酸化物粉末。
【請求項3】
前記焼結体の開気孔率が1.4以下であることを特徴とする、請求項
2に記載のペロブスカイト型複合酸化物粉末。
【請求項4】
前記ペロブスカイト型複合酸化物粉末のBET比表面積が3~15m
2/gであることを特徴とする、請求項
1乃至
3のいずれかに記載のペロブスカイト型複合酸化物粉末。
【請求項5】
前記ペロブスカイト型複合酸化物粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積50%粒径(D
50)が0.1~1μmであることを特徴とする、請求項
1乃至
4のいずれかに載のペロブスカイト型複合酸化物粉末。
【請求項6】
前記ペロブスカイト型複合酸化物粉末の結晶子サイズが200~500nmであることを特徴とする、請求項
1乃至
5のいずれかに載のペロブスカイト型複合酸化物粉末。
【請求項7】
前記ペロブスカイト型複合酸化物粉末が、導電材用の前記ペロブスカイト型複合酸化物粉末であることを特徴とする、請求項
1乃至
6のいずれかに記載の前記ペロブスカイト型複合酸化物粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペロブスカイト型複合酸化物粉末およびその製造方法に関し、特に、酸素センサの電極などの材料に適したLa(Ni,Fe)O3で示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素センサは、自動車の排気ガス浄化システムなどに使用されており、内燃機関の燃焼制御に欠くことのできない主要部品になっている。自動車部品には、高信頼性や高耐久性が要求されており、従来の酸素センサの電極の材料として、高信頼性や高耐久性の観点から、貴金属が使用されている。このように酸素センサの電極の材料として貴金属を使用すると、酸素センサの電極の製造コストが高くなる。そのため、近年、酸素センサの電極などの代替材料として、La(Ni,Fe)O3などで示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末を使用することが検討されている。
【0003】
このようなLa(Ni,Fe)O3などで示されるペロブスカイト型複合酸化物として、La(Ni1-xFex)O3(0<x<1)で表されるペロブスカイト型酸化物である集電体材料(例えば、特許文献1参照)や、LaNixFe1-xO3で表されるペロブスカイト型構造の複合酸化物であるタール含有ガスの改質用触媒(0≦x≦1)(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-76310号公報(段落番号0012-0015)
【文献】特開2011-212603号公報(段落番号0035)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1~2のペロブスカイト型複合酸化物は、酸素センサの電極の材料として使用する場合に要求される高い導電率を得ることができなかった。
【0006】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、酸素センサの電極の材料として使用する場合に要求される高い導電率を有する焼結体を製造することができる、ペロブスカイト型複合酸化物粉末およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、La(Ni,Fe)O3で示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法において、ランタン(La)に対するニッケル(Ni)のモル比(Ni/La)が0.55~0.65になり且つランタン(La)に対する鉄(Fe)のモル比(Fe/La)が0.35~0.45になるようにランタンとニッケルと鉄を混合して得られた混合水溶液と、炭酸アンモニウムを含むアルカリ水溶液とを混合して、得られた固形物を乾燥させて焼成した後に粉砕することにより、酸素センサの電極の材料として使用する場合に要求される高い導電率を有する焼結体を製造することができる、ペロブスカイト型複合酸化物粉末を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法は、La(Ni,Fe)O3で示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法において、ランタン(La)に対するニッケル(Ni)のモル比(Ni/La)が0.55~0.65になり且つランタン(La)に対する鉄(Fe)のモル比(Fe/La)が0.35~0.45になるようにランタンとニッケルと鉄を混合して得られた混合水溶液と、炭酸アンモニウムを含むアルカリ水溶液とを混合して、得られた固形物を乾燥させて焼成した後に粉砕することを特徴とする。
【0009】
このペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法において、混合水溶液が、ニッケルと鉄の各々の硝酸塩を含むのが好ましい。また、固形物が、混合水溶液とアルカリ水溶液とを混合して、ランタンと鉄とニッケルの複合水酸化物を析出させて回収された固形物であるのが好ましく、焼成の温度が800~1000℃であるのが好ましい。また、ペロブスカイト型複合酸化物粉末が、組成式LaNixFeyO3-δ(0.55≦x≦0.65、0.35≦y≦0.45、0.175≦δ≦0.425)で示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末であるのが好ましい。
【0010】
また、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物粉末は、La(Ni,Fe)O3で示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末において、ランタンに対するニッケルのモル比(Ni/La)が0.55~0.65、ランタンに対する鉄のモル比(Fe/La)が0.35~0.45であり、リートベルト解析により算出される結晶構造の格子歪が0.43%以下であることを特徴とする。
【0011】
このペロブスカイト型複合酸化物粉末を4MPaで加圧して得られた成形体を1350℃で2時間加熱して得られた焼結体の600℃における導電率が500S/cm以上であるのが好ましく、焼結体の開気孔率が1.4以下であるのが好ましい。また、ペロブスカイト型複合酸化物粉末のBET比表面積が3~15m2/gであるのが好ましい。また、ペロブスカイト型複合酸化物粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積50%粒径(D50)が0.1~1μmであるのが好ましく、ペロブスカイト型複合酸化物粉末の結晶子サイズが200~500nmであるのが好ましい。また、ペロブスカイト型複合酸化物粉末が、組成式LaNixFeyO3-δ(0.55≦x≦0.65、0.35≦y≦0.45、0.175≦δ≦0.425)で示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、酸素センサの電極の材料として使用する場合に要求される高い導電率を有する焼結体を製造することができる、ペロブスカイト型複合酸化物粉末を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によるペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法の実施の形態では、La(Ni,Fe)O3で示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造方法において、ランタン(La)に対するニッケル(Ni)のモル比(Ni/La)が0.55~0.65になり且つランタン(La)に対する鉄(Fe)のモル比(Fe/La)が0.35~0.45になるように、ランタンとニッケルと鉄を混合して、得られた混合水溶液と、炭酸アンモニウムを含むアルカリ水溶液とを混合して、得られた反応液をろ過することにより得られた固形物(ランタンと鉄とニッケルの複合水酸化物が析出した固形物)を回収し、この固形物を洗浄し、(大気雰囲気中において250℃程度の温度で加熱することにより)乾燥させ、得られた乾燥粉を(大気雰囲気中において)800~1000℃で加熱することにより焼成し、得られた焼成粉を(インパクトミルなどにより)粉砕して、単相のペロブスカイト構造のペロブスカイト型複合酸化物粉末を得る。なお、高い導電率を有する焼結体を製造することができるペロブスカイト型複合酸化物粉末を得るためには、800~1000℃で加熱することにより焼成するのが好ましい。
【0014】
混合水溶液は、ニッケルと鉄の各々の硝酸塩を含むのが好ましく、炭酸アンモニウムを含むアルカリ水溶液は、アンモニア水溶液中に二酸化炭素ガスを吹き込んで得られた水溶液であるのが好ましい。また、ペロブスカイト型複合酸化物粉末が、組成式LaNixFeyO3-δ(0.55≦x≦0.65、0.35≦y≦0.45、0.175≦δ≦0.425)で示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末であるのが好ましい。
【0015】
また、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物粉末の実施の形態では、La(Ni,Fe)O3で示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末において、ランタンに対するニッケルのモル比(Ni/La)が0.55~0.65、ランタンに対する鉄のモル比(Fe/La)が0.35~0.45であり、リートベルト解析により算出される結晶構造の格子歪が0.43%以下である。なお、高い導電率を有する焼結体を製造することができるペロブスカイト型複合酸化物粉末を得るためには、Ni/La、Fe/Laおよび結晶構造の格子歪を上記の範囲にするのが好ましい。
【0016】
このペロブスカイト型複合酸化物粉末を4MPaで加圧して得られた成形体を1350℃で2時間加熱して得られた焼結体の600℃における導電率は、500S/cm以上であるのが好ましく、510~600S/cmであるのがさらに好ましい。また、焼結体の開気孔率は、1.4以下であるのが好ましく、0.5~1.3であるのがさらに好ましい。なお、高い導電率を有する焼結体を製造することができるペロブスカイト型複合酸化物粉末を得るためには、焼結体の開気孔率が1.4以下であるのが好ましい。
【0017】
また、ペロブスカイト型複合酸化物粉末のBET比表面積は、3~15m2/gであるのが好ましく、3.5~13m2/gであるのがさらに好ましい。また、ペロブスカイト型複合酸化物粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定された体積基準の累積50%粒径(D50)は、0.1~1μmであるのが好ましく、0.15~0.9μmであるのがさらに好ましい。また、ペロブスカイト型複合酸化物粉末の結晶子サイズは、200~500nmであるのが好ましく、250~490nmであるのがさらに好ましい。また、ペロブスカイト型複合酸化物粉末が、組成式LaNixFeyO3-δ(0.55≦x≦0.65、0.35≦y≦0.45、0.175≦δ≦0.425)で示されるペロブスカイト型複合酸化物粉末であるのが好ましい。
【実施例】
【0018】
以下、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物粉末およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0019】
[実施例1]
200Lの反応槽に純水100kgを入れ、21.0質量%のアンモニア水15.9kgを添加した後、30℃に温調して、アンモニア水溶液を得た。このアンモニア水溶液を撹拌しながら、このアンモニア水溶液中に36NL/分の流量で二酸化炭素ガスを93分間吹き込んで、炭酸アンモニウムを含む反応液を得た後、この炭酸アンモニウムを含む反応液の温度を(後述する)ろ過の直前まで30℃に保った。
【0020】
また、純水101.5kgに、ランタン濃度15.0質量%のランタン水溶液22.3kgと、硝酸鉄(III)九水和物4.4kgと、硝酸ニッケル(II)六水和物4.6kgとを入れて撹拌することにより、ランタンと鉄とニッケルの混合水溶液を得た。
【0021】
次に、上記の炭酸アンモニウムを含む反応液を撹拌しながら、上記のランタンと鉄とニッケルの混合水溶液を炭酸アンモニウムを含む反応液に添加して得られた反応液を30分間撹拌した後、ろ過することにより得られた固形物(ランタンと鉄とニッケルの複合水酸化物からなる固形物)を回収した。この固形物に240Lの純水を通水することにより、固形物を洗浄した。
【0022】
次に、洗浄した固形物をスクリーンの孔径が5mmの押出造粒機に投入し、この押出造粒機から押し出された固形物を大気雰囲気中において250℃で1.5時間加熱することにより、乾燥粉を得た。この乾燥粉を大気雰囲気中において1000℃で2時間加熱することにより得られた焼成粉をインパクトミル(ミルシステム株式会社製のAVIS-150)により回転数14,000rpmで粉砕して、ペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た。
【0023】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、ICP発光分光分析法により、LaとNiとFeの組成分析を行って、Laに対するNiのモル比(Ni/La)とLaに対するFeのモル比(Fe/La)を算出したところ、Ni/Laは0.56であり、Fe/Laは0.44であった。
【0024】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末をメノウ乳鉢で粉砕し、このペロブスカイト型複合酸化物粉末のBET比表面積をBET比表面積測定器(ユアサアイオニクス株式会社製の4ソーブUS)を使用してBET1点法により測定したところ、ペロブスカイト型複合酸化物粉末のBET比表面積は4.0m2/gであった。
【0025】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末0.15gを、500ppmのヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する水50mLに添加し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製のRUS-600TCVP)により2分間分散させて得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末を含むスラリーを使用して、このペロブスカイト型複合酸化物粉末の体積基準の累積50%粒径(D50)をレーザー回折式粒度分布測定装置(日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置MT3000II)により(粒子屈折率を2.40、溶媒屈折率を1.333、計算モードをMT3000IIとして)測定したところ、ペロブスカイト型複合酸化物粉末の累積50%粒径(D50)は0.8μmであった。
【0026】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、X線回折(XRD)装置(株式会社リガク製の試料水性型多目的X線回折装置UltimaIV)を使用し、X線管球としてCuKα管球を使用し、X線管球出力40kV/40mA、発散スリット1/2°、発散縦制限スリット10mm、散乱スリット8mm、測定範囲2θ=10~120°、スキャンスピード4°/分、測定間隔0.02°で連続走査して、2θ/θ法により、X線回折(XRD)測定を行って、X線回折パターンを得た。このX線回折パターンに基づいて、上記のX線回折(XRD)装置に付属の解析ソフトウェア(株式会社リガク製の統合粉末X線解析ソフトウェアPDXL2用ICDS(Inorganic Crystal Structure Database))により、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末の結晶相を同定したところ、単相のペロブスカイト構造を有することが確認された。また、WPPF(Whole Powder Pattern Fitting)法によりリートベルト解析を行ってファンダメンタル・パラメータ法(FP法)により、ペロブスカイト型複合酸化物粉末の結晶構造における結晶子サイズと格子歪を算出したところ、結晶子サイズは577nmであり、格子歪は0.21%であった。なお、格子歪は、格子歪=Δd(回折格子面間隔のズレ)/d(回折格子面間隔)から算出した。
【0027】
次に、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末をペレット作製用プレス装置により成形圧力4MPaで加圧して得られたペレット状の成形体を1350℃で2時間加熱して焼結体を得た。この焼結体について、導電率測定器(ケースレーインスツルメンツ株式会社製の2400シリーズソースメーター)を使用し、白金製の電極および電極船を使用して、直流4端子法により、600℃における導電率を測定したところ、542S/cmであった。また、この焼結体について、JIS R1634(1998)(ファインセラミックスの焼結体密度・開き効率の測定方法)に準じて測定したところ、開気孔率は0.71%であった。
【0028】
[実施例2]
焼成粉を得る際の温度を840℃とした以外は、実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た。
【0029】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行うとともに、BET比表面積および累積50%粒径(D50)を測定し、X線回折(XRD)測定を行って、結晶子サイズと格子歪を算出した。その結果、Ni/Laは0.56であり、Fe/Laは0.44であった。また、BET比表面積は8.8m2/gであり、累積50%粒径(D50)は0.4μmであった。また、X線回折(XRD)測定によって単相のペロブスカイト構造を有することが確認され、結晶子サイズは381nmであり、格子歪は0.39%であった。
【0030】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、焼結体を作製し、この焼結体の導電率および開気孔率を測定したところ、導電率は554S/cmであり、開気孔率は1.12%であった。
【0031】
[実施例3]
200Lの反応槽に純水105kgを入れ、23.4質量%のアンモニア水14.1kgを添加した後、30℃に温調して、アンモニア水溶液を得た。このアンモニア水溶液を撹拌しながら、このアンモニア水溶液中に36NL/分の流量で二酸化炭素ガスを92分間吹き込んで、炭酸アンモニウムを含む反応液を得た後、この炭酸アンモニウムを含む反応液の温度を(後述する)ろ過の直前まで30℃に保った。
【0032】
また、純水101.5kgに、ランタン濃度15.0質量%のランタン水溶液21.4kgと、硝酸鉄(III)九水和物3.9kgと、硝酸ニッケル(II)六水和物4.9kgとを入れて撹拌することにより、ランタンと鉄とニッケルの混合水溶液を得た。
【0033】
次に、上記の炭酸アンモニウムを含む反応液を撹拌しながら、上記のランタンと鉄とニッケルの混合水溶液を炭酸アンモニウムを含む反応液に添加して得られた反応液を30分間撹拌した後、ろ過することにより得られた固形物を回収し、240Lの純水で洗浄した。
【0034】
次に、洗浄した固形物をスクリーンの孔径が5mmの押出造粒機に投入し、この押出造粒機から押し出された固形物を大気雰囲気中において250℃で1.5時間加熱することにより、乾燥粉を得た。この乾燥粉を大気雰囲気中において800℃で2時間加熱することにより得られた焼成粉をインパクトミル(ミルシステム株式会社製のAVIS-150)により回転数14,000rpmで粉砕して、ペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た。
【0035】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行うとともに、BET比表面積および累積50%粒径(D50)を測定し、X線回折(XRD)測定を行って、結晶子サイズと格子歪を算出した。その結果、Ni/Laは0.61であり、Fe/Laは0.40であった。また、BET比表面積は12.0m2/gであり、累積50%粒径(D50)は0.2μmであった。また、X線回折(XRD)測定によって単相のペロブスカイト構造を有することが確認され、結晶子サイズは338nmであり、格子歪は0.38%であった。
【0036】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、焼結体を作製し、この焼結体の導電率および開気孔率を測定したところ、導電率は521S/cmであり、開気孔率は0.80%であった。
【0037】
[比較例1]
200Lの反応槽に純水100kgを入れ、20.8質量%のアンモニア水16.2kgを添加した後、30℃に温調して、アンモニア水溶液を得た。このアンモニア水溶液を撹拌しながら、このアンモニア水溶液中に36NL/分の流量で二酸化炭素ガスを93.6分間吹き込んで、炭酸アンモニウムを含む反応液を得た後、この炭酸アンモニウムを含む反応液の温度を(後述する)ろ過の直前まで30℃に保った。
【0038】
また、純水8.2kgに、ランタン濃度14.9質量%のランタン水溶液22.7kgと、硝酸鉄(III)九水和物4.9kgと、硝酸ニッケル(II)六水和物4.2kgとを入れて撹拌することにより、ランタンと鉄とニッケルの混合水溶液を得た。
【0039】
次に、上記の炭酸アンモニウムを含む反応液を撹拌しながら、上記のランタンと鉄とニッケルの混合水溶液を炭酸アンモニウムを含む反応液に添加して得られた反応液を30分間撹拌した後、ろ過することにより得られた固形物を回収し、240Lの純水で洗浄した。
【0040】
次に、洗浄した固形物をスクリーンの孔径が5mmの押出造粒機に投入し、この押出造粒機から押し出された固形物を大気雰囲気中において250℃で1.5時間加熱することにより、乾燥粉を得た。この乾燥粉を大気雰囲気中において830℃で2時間加熱することにより得られた焼成粉をインパクトミル(ミルシステム株式会社製のAVIS-150)により回転数13,000rpmで粉砕して、ペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た。
【0041】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行うとともに、BET比表面積および累積50%粒径(D50)を測定し、X線回折(XRD)測定を行って、結晶子サイズと格子歪を算出した。その結果、Ni/Laは0.51であり、Fe/Laは0.49であった。また、BET比表面積は9.4m2/gであり、累積50%粒径(D50)は0.3μmであった。また、X線回折(XRD)測定によって単相のペロブスカイト構造を有することが確認され、結晶子サイズは413nmであり、格子歪は0.46%であった。
【0042】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、焼結体を作製し、この焼結体の導電率および開気孔率を測定したところ、導電率は480S/cmであり、開気孔率は0.93%であった。
【0043】
[比較例2]
ビーズミル(アイザワ・ファインテック株式会社製のAMS1)の粉砕室(ベッセル)内に直径1.75mmのZrO2ビーズ3.90kgを充填した。また、このビーズミルのバッファータンク内に純水8.27kgと10質量%の酢酸水溶液2.40kgとを入れた後、バッファータンク内の攪拌羽根により撹拌し、このバッファータンク内の酢酸水溶液を循環ポンプによりベッセル内に導入してバッファータンクとベッセル間で循環させながら、ペロブスカイト型複合酸化物の原料として、La2O3粉末10.9kgとNiO粉末2.74kgとα-Fe2O3粉末2.40kgとをバッファータンクに投入してベッセル内に導入し、このベッセル内の攪拌機を回転数60rpmで90分間回転させて原料を粉砕し、固形分として原料の粉砕物を含む原料スラリーを得た。
【0044】
このようにして得られた原料スラリーに純水を添加して、原料スラリー中の固形分の濃度を60質量%に調整した後、スプレードライヤーを使用して、ディスク回転数25,000rpm、熱風入口温度165℃、熱風出口温度50~65℃、スラリー供給速度11kg/hとして、原料スラリーを熱風中に噴霧して乾燥させることにより、乾燥造粒粉を得た。
【0045】
このようにして得られた乾燥造粒粉1.5kgをアルミナ製るつぼに入れ、25℃から800℃まで昇温速度3.37℃/分、800℃から1250℃まで昇温速度2.67℃/分で昇温させ、1250℃(焼成温度)で2時間保持して焼成した後、室温まで自然降温させて、焼成粉を得た。
【0046】
このようにして得られた焼成粉430gと、直径1.0mmのジルコニア製のビーズ2280gと、純水660gとをビーズミル(アイメックス株式会社製のSLC-1/2Gサンドグラインダー)に入れて回転数1500rpmで120分間粉砕処理を行った後、得られたスラリーをろ過して固形物を回収し、この固形物を125°で乾燥させて、ペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た。
【0047】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行うとともに、BET比表面積および累積50%粒径(D50)を測定し、X線回折(XRD)測定を行って、結晶子サイズと格子歪を算出した。その結果、Ni/Laは0.55であり、Fe/Laは0.46であった。また、BET比表面積は9.8m2/gであり、累積50%粒径(D50)は0.5μmであった。また、X線回折(XRD)測定によって単相のペロブスカイト構造を有することが確認され、結晶子サイズは227nmであり、格子歪は0.52%であった。
【0048】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、焼結体を作製し、この焼結体の導電率および開気孔率を測定したところ、導電率は387S/cmであり、開気孔率は1.55%であった。
【0049】
[比較例3]
焼成粉を粉砕する時間を45分間にした以外は、比較例2と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た。
【0050】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行うとともに、BET比表面積および累積50%粒径(D50)を測定し、X線回折(XRD)測定を行って、結晶子サイズと格子歪を求めた。その結果、Ni/Laは0.55であり、Fe/Laは0.45であった。また、BET比表面積は5.8m2/gであり、累積50%粒径(D50)は0.7μmであった。また、X線回折(XRD)測定によって単相のペロブスカイト構造を有することが確認され、結晶子サイズは215nmであり、格子歪は0.51%であった。
【0051】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、焼結体を作製し、この焼結体の導電率および開気孔率を測定したところ、導電率は346S/cmであり、開気孔率は1.70%であった。
【0052】
[比較例4]
炭酸アンモニウムを含む反応液に代えて、6.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液116.3kgを使用し、乾燥分を焼成する温度を840℃とした以外は、実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物粉末を得た。
【0053】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末について、実施例1と同様の方法により、組成分析を行うとともに、BET比表面積および累積50%粒径(D50)を測定し、X線回折(XRD)測定を行って、結晶子サイズと格子歪を求めた。その結果、Ni/Laは0.56であり、Fe/Laは0.44であった。また、BET比表面積は8.3m2/gであり、累積50%粒径(D50)は0.5μmであった。また、X線回折(XRD)測定によって単相のペロブスカイト構造を有することが確認され、結晶子サイズは329nmであり、格子歪は0.51%であった。
【0054】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、焼結体を作製し、この焼結体の導電率および開気孔率を測定したところ、導電率は470S/cmであり、開気孔率は0.85%であった。
【0055】
これらの実施例および比較例のペロブスカイト型複合酸化物粉末の製造条件および特性を表1および表2に示す。
【0056】
【0057】
【0058】
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によるペロブスカイト型複合酸化物粉末は、安価な酸素センサの電極などの材料として利用することができる。