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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/04 20100101AFI20230907BHJP
   H01L 33/08 20100101ALN20230907BHJP
【FI】
H01L33/04
H01L33/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021147942
(22)【出願日】2021-09-10
(65)【公開番号】P2023040785
(43)【公開日】2023-03-23
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】川田 至孝
【審査官】八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-106245(JP,A)
【文献】特表2019-517144(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/74404(US,A1)
【文献】特開2018-201009(JP,A)
【文献】特開2008-141047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00ー33/46
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型不純物を含む第1窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第1窒化物半導体層の上に、第1活性層を形成する工程と、
前記第1活性層の上に、p型不純物を含む第2窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第2窒化物半導体層の上に、窒化物半導体層からなるトンネル接合層を形成する工程と、
前記トンネル接合層の上に、n型不純物を含む第3窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第3窒化物半導体層の上に、第2活性層を形成する工程と、
前記第2活性層の上に、p型不純物を含む第4窒化物半導体層を形成する工程と、
を備え、
前記トンネル接合層を形成する工程は、
第1n型層を形成する工程と、
n型不純物を含む第1流量の第1ガスを含む第1原料ガスを炉内に導入し、第1温度で、前記第1n型層の上に、前記第1n型層よりもn型不純物濃度が低い第2n型層を形成する工程と、
n型不純物を含む第2流量の第2ガスを含む第2原料ガスを炉内に導入し、前記第1温度よりも低い第2温度で、前記第2n型層の上に、前記第2n型層よりもn型不純物濃度が低い第3n型層を形成する工程と、
を有し、
前記第1原料ガスにおける前記第1ガスの第1流量比は、前記第2原料ガスにおける前記第2ガスの第2流量比よりも大きく、
前記第2n型層の膜厚は、前記第3n型層の膜厚よりも厚い発光素子の製造方法。
【請求項2】
n型不純物を含む第1窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第1窒化物半導体層の上に、第1活性層を形成する工程と、
前記第1活性層の上に、p型不純物を含む第2窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第2窒化物半導体層の上に、窒化物半導体層からなるトンネル接合層を形成する工程と、
前記トンネル接合層の上に、n型不純物を含む第3窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第3窒化物半導体層の上に、第2活性層を形成する工程と、
前記第2活性層の上に、p型不純物を含む第4窒化物半導体層を形成する工程と、
を備え、
前記トンネル接合層を形成する工程は、
第1n型層を形成する工程と、
n型不純物を含む第1流量の第1ガスを含む第1原料ガスを炉内に導入し、第1温度で、前記第1n型層の上に、前記第1n型層よりもn型不純物濃度が低い第2n型層を形成する工程と、
n型不純物を含む第2流量の第2ガスを含む第2原料ガスを炉内に導入し、前記第1温度よりも低い第2温度で、前記第2n型層の上に、前記第2n型層よりもn型不純物濃度が低い第3n型層を形成する工程と、
を有し、
前記第1原料ガスにおける前記第1ガスの第1流量比は、前記第2原料ガスにおける前記第2ガスの第2流量比よりも大きく、
前記第2n型層の膜厚と前記第3n型層の膜厚の合計膜厚は50nm以下であり、
前記第3n型層の膜厚は、前記第2n型層の膜厚と前記第3n型層の膜厚の合計膜厚の40%以上80%以下であり、
前記第1温度と前記第2温度の差は、100℃以下である発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記第2n型層を、前記第1n型層よりも厚く形成する請求項1または2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記第1温度は、950℃以上1000℃以下であり、
前記第2温度は、900℃以上950℃以下である請求項1~3のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記第2n型層のn型不純物濃度は、1×1019cm-3以上2×1020cm-3以下であり、
前記第3n型層のn型不純物濃度は、5×1018cm-3以上1×1020cm-3以下である請求項1~4のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記第2n型層の膜厚は、10nm以上である請求項1~5のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記トンネル接合層を形成する工程は、前記第3n型層の上に、前記第3n型層よりもn型不純物濃度が低い第4n型層を形成する工程をさらに有する請求項1~6のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記第1ガス及び前記第2ガスは、SiHガスである請求項1~7のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えば、トンネル接合層を有する窒化物半導体層を含む発光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-157667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような発光素子において、順方向電圧を低減させることが望まれる。本発明は、順方向電圧を低減できる発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、発光素子の製造方法は、n型不純物を含む第1窒化物半導体層を形成する工程と、前記第1窒化物半導体層の上に、第1活性層を形成する工程と、前記第1活性層の上に、p型不純物を含む第2窒化物半導体層を形成する工程と、前記第2窒化物半導体層の上に、窒化物半導体層からなるトンネル接合層を形成する工程と、前記トンネル接合層の上に、n型不純物を含む第3窒化物半導体層を形成する工程と、前記第3窒化物半導体層の上に、第2活性層を形成する工程と、前記第2活性層の上に、p型不純物を含む第4窒化物半導体層を形成する工程と、を備える。前記トンネル接合層を形成する工程は、第1n型層を形成する工程と、n型不純物を含む第1流量の第1ガスを含む第1原料ガスを炉内に導入し、第1温度で、前記第1n型層の上に、前記第1n型層よりもn型不純物濃度が低い第2n型層を形成する工程と、n型不純物を含む第2流量の第2ガスを含む第2原料ガスを炉内に導入し、前記第1温度よりも低い第2温度で、前記第2n型層の上に、前記第2n型層よりもn型不純物濃度が低い第3n型層を形成する工程と、を有する。前記第1原料ガスにおける前記第1ガスの第1流量比は、前記第2原料ガスにおける前記第2ガスの第2流量比よりも大きい。前記第2n型層の膜厚は、前記第3n型層の膜厚よりも厚い。
本発明の一態様によれば、発光素子の製造方法は、n型不純物を含む第1窒化物半導体層を形成する工程と、前記第1窒化物半導体層の上に、第1活性層を形成する工程と、前記第1活性層の上に、p型不純物を含む第2窒化物半導体層を形成する工程と、前記第2窒化物半導体層の上に、窒化物半導体層からなるトンネル接合層を形成する工程と、前記トンネル接合層の上に、n型不純物を含む第3窒化物半導体層を形成する工程と、前記第3窒化物半導体層の上に、第2活性層を形成する工程と、前記第2活性層の上に、p型不純物を含む第4窒化物半導体層を形成する工程と、を備える。前記トンネル接合層を形成する工程は、第1n型層を形成する工程と、n型不純物を含む第1流量の第1ガスを含む第1原料ガスを炉内に導入し、第1温度で、前記第1n型層の上に、前記第1n型層よりもn型不純物濃度が低い第2n型層を形成する工程と、n型不純物を含む第2流量の第2ガスを含む第2原料ガスを炉内に導入し、前記第1温度よりも低い第2温度で、前記第2n型層の上に、前記第2n型層よりもn型不純物濃度が低い第3n型層を形成する工程と、を有する。前記第1原料ガスにおける前記第1ガスの第1流量比は、前記第2原料ガスにおける前記第2ガスの第2流量比よりも大きい。前記第2n型層の膜厚と前記第3n型層の膜厚の合計膜厚は50nm以下である。前記第3n型層の膜厚は、前記第2n型層の膜厚と前記第3n型層の膜厚の合計膜厚の40%以上80%以下である。前記第1温度と前記第2温度の差は、100℃以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、順方向電圧を低減できる発光素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の発光素子の模式断面図である。
図2A】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を説明するための模式断面図である。
図2B】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を説明するための模式断面図である。
図2C】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を説明するための模式断面図である。
図2D】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を説明するための模式断面図である。
図2E】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を説明するための模式断面図である。
図2F】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を説明するための模式断面図である。
図2G】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を説明するための模式断面図である。
図2H】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を説明するための模式断面図である。
図2I】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を説明するための模式断面図である。
図2J】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を説明するための模式断面図である。
図2K】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を説明するための模式断面図である。
図3】発光素子のサンプルの順方向電圧Vfの測定結果を示すグラフである。
図4】発光素子のサンプルの出力Poの測定結果を示すグラフである。
図5】発光素子のサンプルの順方向電圧Vfの測定結果を示すグラフである。
図6】発光素子のサンプルの順方向電圧Vfの測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。なお、各図面は、実施形態を模式的に示したものであるため、各部材のスケール、間隔若しくは位置関係などが誇張、又は部材の一部の図示を省略する場合がある。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態の発光素子1の模式断面図である。
【0010】
発光素子1は、基板10と、半導体構造体100と、n側電極41と、p側電極42とを有する。
【0011】
基板10の材料は、例えば、サファイア、シリコン、SiC、GaNなどである。
【0012】
半導体構造体100は、窒化物半導体からなる複数の半導体層が積層された積層体である。窒化物半導体は、InAlGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)からなる化学式において組成比x及びyをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含み得る。
【0013】
半導体構造体100は、第1発光部51と、第2発光部52と、第1発光部51と第2発光部52との間に設けられたトンネル接合層20とを有する。
【0014】
第1発光部51は、基板10上に設けられた第1窒化物半導体層11と、第1窒化物半導体層11上に設けられた第1活性層15と、第1活性層15上に設けられた第2窒化物半導体層12とを有する。
【0015】
第2発光部52は、トンネル接合層20上に設けられた第3窒化物半導体層13と、第3窒化物半導体層13上に設けられた第2活性層16と、第2活性層16上に設けられた第4窒化物半導体層14とを有する。
【0016】
第1窒化物半導体層11及び第3窒化物半導体層13は、n型不純物を含むn型層を有する。n型層は、例えば、n型不純物としてシリコン(Si)を含むGaNである。または、n型層は、n型不純物としてゲルマニウム(Ge)を含んでもよい。また、n型層は、インジウム(In)及び/又はアルミニウム(Al)を含んでいてもよい。また、第1窒化物半導体層11及び第3窒化物半導体層13は、異なる材料からなる複数の半導体層が積層された積層構造を有する超格子層を含んでもいてもよい。超格子層は、例えば、GaNからなる層と、InGaNからなる層が交互に積層された積層構造を有する。
【0017】
第1窒化物半導体層11及び第3窒化物半導体層13は、電子を供給する機能を有していればよく、n型不純物やp型不純物を意図的にドープせずに形成したアンドープ層を含んでいてもよい。アンドープ層がn型不純物及び/又はp型不純物を意図的にドープした層と隣接している場合は、その隣接した層からの拡散等によって、アンドープ層にn型不純物及び/又はp型不純物が含まれる場合がある。
【0018】
第2窒化物半導体層12及び第4窒化物半導体層14は、p型不純物を含むp型層を有する。p型層は、例えば、p型不純物としてマグネシウム(Mg)を含むGaNである。p型層は、In及び/又はAlを含んでいてもよい。第2窒化物半導体層12及び第4窒化物半導体層14は、ホールを供給する機能を有していればよく、アンドープ層を含んでいてもよい。
【0019】
第1活性層15及び第2活性層16は、例えば、複数の井戸層と複数の障壁層とを含む多重量子井戸構造を有する。複数の井戸層として、例えば、InGaN、AlGaNを用いることができる。複数の障壁層として、例えば、GaN、AlGaNを用いることができる。第1活性層15及び第2活性層16に含まれる井戸層及び障壁層は、例えば、アンドープ層である。第1活性層15及び第2活性層16に含まれる井戸層及び障壁層の少なくとも一部にn型不純物及び/又はp型不純物が含まれていてもよい。
【0020】
第1活性層15及び第2活性層16は、例えば、紫外光又は可視光を発光する。第1活性層15及び第2活性層16は、例えば、可視光としては青色光又は緑色光を発することができる。青色光の発光ピーク波長は、430nm以上490nm以下である。緑色光の発光ピーク波長は、500nm以上540nm以下である。紫外光の発光ピーク波長は、400nm以下である。第1活性層15の発光ピーク波長と第2活性層16の発光ピーク波長は、同じでも、異なっていてもよい。第1活性層15の発光ピーク波長と第2活性層16の発光ピーク波長が異なる場合、第1活性層15及び第2活性層16のうちの一方が青色光を発光し、他方が緑色光を発光する組み合わせとすることができる。
【0021】
トンネル接合層20は、窒化物半導体からなる。トンネル接合層20は、第2窒化物半導体層12上に設けられた第1n型層21と、第1n型層21上に設けられた第2n型層22と、第2n型層22上に設けられた第3n型層23と、第3n型層23上に設けられた第4n型層24とを有する。第2窒化物半導体層12は、最上層にp型層を含む。その第2窒化物半導体層12のp型層と、トンネル接合層20の第1n型層21とがpn接合を形成する。なお、第4n型層24は、配置しなくてもよい。
【0022】
第1窒化物半導体層11は、他の半導体層が設けられていないnコンタクト面11aを有する。nコンタクト面11a上にn側電極41が設けられている。n側電極41は、第1窒化物半導体層11に電気的に接続している。
【0023】
第4窒化物半導体層14の上面上に、p側電極42が設けられている。p側電極42は、第4窒化物半導体層14に電気的に接続している。
【0024】
p側電極42とn側電極41との間に順方向の電圧を印加する。このとき、第2発光部52の第4窒化物半導体層14と、第1発光部51の第1窒化物半導体層11との間に順方向の電圧が印加され、第1活性層15及び第2活性層16にホールおよび電子が供給されることで第1活性層15及び第2活性層16が発光する。
【0025】
実施形態の発光素子1によれば、第1活性層15の上に第2活性層16を積層することで、1つの活性層を有する発光素子に比べて、単位面積当たりの出力を高くすることができる。
【0026】
p側電極42に正電位が、n側電極41にp側電極42よりも低い電位が印加されたとき、第2発光部52のn型層を含む第3窒化物半導体層13と、第1発光部51のp型層を含む第2窒化物半導体層12との間には逆方向電圧が印加されることになる。そのため、第3窒化物半導体層13と第2窒化物半導体層12との間に電流を流すために、トンネル接合層20によるトンネル効果を利用する。つまり、上記pn接合の不純物濃度を高くすることで、pn接合により形成される空乏層の幅を狭くし、第2窒化物半導体層12の価電子帯に存在する電子を、第3窒化物半導体層13の伝導帯にトンネリングさせることで電流を流す。
【0027】
次に、実施形態の発光素子1の製造方法の一例を説明する。
【0028】
半導体構造体100の各窒化物半導体層は、圧力及び温度の調整が可能な炉内において、例えば、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法により形成される。半導体構造体100の各窒化物半導体層は、炉内において、基板10上にエピタキシャル成長される。
【0029】
半導体構造体100の各窒化物半導体層は、炉内にキャリアガス及び原料ガスを導入することで形成することができる。キャリアガスとしては、水素(H)ガスや窒素(N)ガスを用いることができる。N源の原料ガスとしては、アンモニア(NH)ガスを用いることができる。Ga源の原料ガスとしては、トリメチルガリウム(TMG)ガス、またはトリエチルガリウム(TEG)ガスを用いることができる。In源の原料ガスとしては、トリメチルインジウム(TMI)ガスを用いることができる。Al源の原料ガスとしては、トリメチルアルミニウム(TMA)ガスを用いることができる。Si源の原料ガスとしては、モノシラン(SiH)ガスを用いることができる。Mg源の原料ガスとしては、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)ガスを用いることができる。
【0030】
まず、図2Aに示すように、基板10上に、n型不純物を含む第1窒化物半導体層11を形成する。
【0031】
図2Bに示すように、第1窒化物半導体層11上に、第1活性層15を形成する。
【0032】
図2Cに示すように、第1活性層15上に、p型不純物を含む第2窒化物半導体層12を形成する。
【0033】
図2D図2Gに示すように、第2窒化物半導体層12上に、窒化物半導体からなるトンネル接合層20を形成する。トンネル接合層20の各層を形成する工程については、後で詳しく説明する。
【0034】
図2Hに示すように、トンネル接合層20上に、第3窒化物半導体層13を形成する。
【0035】
図2Iに示すように、第3窒化物半導体層13上に、第2活性層16を形成する。
【0036】
図2Jに示すように、第2活性層16上に、第4窒化物半導体層14を形成する。このようにして、基板10上に半導体構造体100を形成する。
【0037】
この後、半導体構造体100の一部を除去する。これにより、図2Kに示すように、第1窒化物半導体層11の一部の上面が、nコンタクト面11aとして露出する。
【0038】
その後、図1に示すように、第4窒化物半導体層14の上面上にp側電極42が形成され、nコンタクト面11a上にn側電極41が形成される。
【0039】
以下、トンネル接合層20を形成する工程について説明する。
【0040】
トンネル接合層20を形成する工程は、図2Dに示すように、第2窒化物半導体層12上に第1n型層21を形成する工程を有する。n型不純物を含む第3ガスを含む第3原料ガスを炉内に導入し、第3温度で、第2窒化物半導体層12上に第1n型層21を形成する。第3ガスは、n型不純物としてSiを含むSiHガスである。第3温度は、例えば、950℃以上1000℃以下が好ましい。
【0041】
第1n型層21は、第2窒化物半導体層12のp型層とpn接合を形成する。そのpn接合により形成される空乏層の幅を狭くし、電子をトンネリングさせやすくするため、第1n型層21は高い濃度でn型不純物(Si)を含む。そのため、第1n型層21の結晶性の悪化を低減するため、第1n型層21の膜厚は、例えば、10nm以下であることが好ましく、1nm以上3nm以下であることがさらに好ましい。第1n型層21のn型不純物濃度は、例えば、2×1020cm-3以上1×1021cm-3以下である。
【0042】
第1n型層21の膜厚は薄くした場合、トンネル接合層20に含まれるn型不純物の量が不十分になりやすく、第1n型層21のみでは、上記pn接合により形成される空乏層の幅を狭くしにくい。そこで、第1n型層21上に、第1n型層21よりも厚く、第1n型層21よりもn型不純物濃度が低いn型層を形成する。このn型層により、トンネル接合層20の結晶性の悪化を低減しつつ、トンネル接合層20に含まれるn型不純物の量を増やすことができる。実施形態では、第1n型層21上のn型層として、第2n型層22と第3n型層23とを形成する。第2n型層22および第3n型層23は、それぞれ成膜条件を変えて形成する。
【0043】
トンネル接合層20を形成する工程は、図2Eに示すように、第1n型層21上に第2n型層22を形成する工程を有する。n型不純物を含む第1流量の第1ガスを含む第1原料ガスを炉内に導入し、第1温度で、第1n型層21上に第2n型層22を形成する。第1ガスは、例えば、n型不純物としてSiを含むSiHガスである。第2n型層22のn型不純物濃度は、第1n型層21のn型不純物濃度よりも低い。第2n型層22のn型不純物濃度は、例えば、1×1019cm-3以上2×1020cm-3以下である。第2n型層22の膜厚は、第1n型層21の膜厚よりも厚い。第2n型層22の膜厚は、第3n型層23の膜厚よりも厚い。これにより、発光素子1の順方向電圧を低減することができる。例えば、第2n型層22の膜厚は、10nm以上であることが好ましく、10nm以上30nm以下であることがさらに好ましい。
【0044】
トンネル接合層20を形成する工程は、さらに、図2Fに示すように、第2n型層22上に第3n型層23を形成する工程を有する。n型不純物を含む第2流量の第2ガスを含む第2原料ガスを炉内に導入し、第2温度で、第2n型層22上に第3n型層23を形成する。第2ガスは、例えば、n型不純物としてSiを含むSiHガスである。
【0045】
第3n型層23を形成するときの第2温度は、第2n型層22を形成するときの第1温度よりも低い。例えば、第1温度は950℃以上1000℃以下が好ましく、第2温度は900℃以上950℃以下が好ましい。
【0046】
第2窒化物半導体層12は、p型不純物としてMgを含むp型層を含む。第2窒化物半導体層12上にトンネル接合層20を形成する工程において、第2窒化物半導体層12に含まれるMgが第2窒化物半導体層12からトンネル接合層20側に熱拡散して移動する懸念がある。
【0047】
実施形態によれば、第1n型層21上に第3n型層23を形成する工程の第2温度を、第2n型層22を形成する工程の第1温度よりも低くしている。これにより、第1n型層21上の第2n型層22及び第3n型層23を第1温度で形成する場合に比べて、第2窒化物半導体層12からトンネル接合層20側へのp型不純物(Mg)の拡散を低減することができる。トンネル接合層20側へのp型不純物(Mg)の拡散の低減により、トンネル接合層20に混入するp型不純物(Mg)が低減し、電子キャリア濃度を高くすることができる。そのため、トンネル接合層20と第2窒化物半導体層12のp型層とにより形成される空乏層を狭くすることができ、発光素子1の順方向電圧を低減することができる。さらに、トンネル接合層20側へのp型不純物(Mg)の拡散の低減により、トンネル接合層20上に第2発光部52を形成する工程において、第2発光部52へのp型不純物(Mg)の拡散を低減することができる。この結果、第2発光部52における第3窒化物半導体層13に含まれるn型層などにおけるp型化を低減でき、発光素子1の順方向電圧を低減することができる。
【0048】
また、第3n型層23を形成するときの第2原料ガスにおける第2ガスの第2流量比は、第2n型層22を形成するときの第1原料ガスにおける第1ガスの第1流量比よりも小さい。そのため、第3n型層23のn型不純物濃度は、第2n型層22のn型不純物濃度よりも低い。第1流量は、例えば、4sccm以上8sccm以下が好ましい。第2流量は、例えば、第2流量は0.4sccm以上4sccm以下が好ましい。
【0049】
例えば、SiHガスの流量を8sccmとして形成したn型不純物濃度は、1.5×1020cm-3程度である。例えば、SiHガスの流量を4sccmとして形成したn型不純物濃度は、7.5×1019cm-3程度である。例えば、SiHガスの流量を0.4sccmとして形成したn型不純物濃度は、7.5×1018cm-3程度である。
【0050】
第3n型層23は、第2n型層22よりも低温で形成されるため結晶性の悪化が懸念される。実施形態によれば、第3n型層23のn型不純物濃度を第2n型層22のn型不純物濃度よりも低くすることで、第3n型層23の結晶性の悪化を低減することができる。これにより、発光素子1の順方向電圧を低減することができる。第3n型層23のn型不純物濃度は、例えば、5×1018cm-3以上1×1020cm-3以下である。
【0051】
トンネル接合層20を形成する工程は、さらに、図2Gに示すように、第3n型層23上に第4n型層24を形成する工程を有する。n型不純物を含む第4ガスを含む第4原料ガスを炉内に導入し、第4温度で、第3n型層23上に第4n型層24を形成する。第4ガスは、例えば、n型不純物としてSiを含むSiHガスである。第4n型層24のn型不純物濃度は、第3n型層23のn型不純物濃度よりも低い。第4n型層24の膜厚は、第3n型層23の膜厚よりも厚い。第4n型層24の膜厚は、第1n型層21、第2n型層22、及び第3n型層23の合計膜厚よりも厚い。第4n型層24の膜厚は、例えば、50nm以上150nm以下が好ましい。第4n型層24を形成するときの第4温度は、第2n型層22を形成するときの第1温度よりも低い。第4温度は、例えば、900℃以上950℃以下が好ましい。第4n型層24のn型不純物濃度は、例えば、1×1018cm-3以上2×1019cm-3以下である。
【0052】
第1n型層21、第2n型層22、及び第3n型層23を含む積層部は、上記pn接合により形成される空乏層の幅を狭くするために高い濃度のn型不純物を含む。そのため、積層部の結晶性が悪化し第3n型層23の上面の平坦性が悪化しやすくなる。第3n型層23の上面の平坦性が悪化すると、第3n型層23上に形成する半導体層の結晶性を悪化させる懸念がある。
【0053】
実施形態によれば、第3n型層23上に、第1n型層21、第2n型層22、及び第3n型層23を含む積層部よりもn型不純物濃度が低く、且つ厚い第4n型層24を形成する。これにより、トンネル接合層20の上面となる第4n型層24の上面を平坦に近づけることができ、トンネル接合層20上に第2発光部52を結晶性良く形成することができる。
【0054】
また、本発明の他の実施形態によれば、第2n型層22の膜厚と第3n型層23の膜厚の合計膜厚を50nm以下にし、第3n型層23の膜厚を第2n型層22の膜厚と第3n型層23の膜厚の合計膜厚の40%以上80%以下にし、第2n型層22を形成するときの第1温度と第3n型層23を形成するときの第2温度との差を100℃以下にする。これにより、発光素子1の順方向電圧を低減することができる。
【0055】
次に、発光素子のサンプルを作製し、それらサンプルの順方向電圧Vf及び出力Poを測定した結果について説明する。
【0056】
図3は、サンプルRef1、A~Hの順方向電圧Vfの測定結果を示すグラフである。図3における縦軸の上にいくほどVfが高い。図3において、サンプルRef1のVfのレベルを破線で示す。
図4は、サンプルRef1、A~Hの出力Poの測定結果を示すグラフである。図4における縦軸の上にいくほどPoが高い。図4において、サンプルRef1のPoのレベルを破線で示す。
【0057】
サンプルRef1は、サファイアからなる基板10上に、第1発光部51と、トンネル接合層20と、第2発光部52と、を順に形成したサンプルである。
【0058】
サンプルRef1では、トンネル接合層20における第1n型層21と第4n型層24との間におけるn型層として、SiHガスの流量を8sccm、温度を950℃として、膜厚が35nmのn型層を形成した。
【0059】
サンプルA~Hでは、トンネル接合層20における第1n型層21と第4n型層24との間におけるn型層として、第1n型層21上に第2n型層22を形成し、第2n型層22上に第3n型層23を形成した。サンプルA~Hは、トンネル接合層20における第1n型層21と第4n型層24との間の第2n型層22及び第3n型層23を形成するときの条件が異なる以外は、サンプルRef1と同じ条件で形成したサンプルである。
【0060】
図3図4、及び後述する図5~6において、f2は、第3n型層23を形成するときのSiHガスの第2流量である。T2は、第3n型層23を形成するときの第2温度である。t2は、第3n型層23の膜厚である。f1は、第2n型層22を形成するときのSiHガスの第1流量である。T1は、第2n型層22を形成するときの第1温度である。t1は、第2n型層22の膜厚である。t1+t2は、第2n型層22の膜厚t1と第3n型層23の膜厚t2との合計膜厚である。t2/t1+t2は、第2n型層22と第3n型層23との合計膜厚t1+t2に対する第3n型層23の膜厚t2の割合である。
【0061】
各サンプルRef1、A~Hについて、ウェーハ上における異なる5カ所の位置のVfを測定し、測定した5つのVfの平均を図3において白丸で示す。また、各サンプルRef1、A~Hについて、ウェーハ上における異なる4カ所の位置のPoを測定し、測定した4つのPoの平均を図4において白丸で示す。なお、Vf及びPoの値は、順方向電流を120mAとしたときの値である。
【0062】
図3の結果より、いずれもf1がf2よりも大きく、T1がT2よりも高く、且つt1+t2が50nm以下であるサンプルA~HのVfは、サンプルRef1のVfより低くなった。
【0063】
図4の結果より、サンプルA~FのPoは、サンプルRef1のPoと同程度であった。サンプルG及びHのPoは、サンプルRef1のPoよりも低くなった。したがって、Poの低下を軽減するには、T1とT2との差が100℃以下が好ましい。
【0064】
図5は、サンプルRef2、I~Mの順方向電圧Vfの測定結果を示すグラフである。図5における縦軸の上にいくほどVfが高い。図5において、サンプルRef2のVfのレベルを破線で示す。
【0065】
サンプルRef2は、サンプルRef1と同様に、サファイアからなる基板10上に、第1発光部51と、トンネル接合層20と、第2発光部52と、を順に形成したサンプルである。
【0066】
サンプルRef2では、トンネル接合層20における第1n型層21と第4n型層24との間におけるn型層として、SiHガスの流量を8sccm、温度を950℃として、膜厚が35nmのn型層を形成した。
【0067】
サンプルI~Lでは、トンネル接合層20における第1n型層21と第4n型層24との間におけるn型層として、第1n型層21上に第2n型層22を形成し、第2n型層22上に第3n型層23を形成した。サンプルMは、トンネル接合層20における第1n型層21と第4n型層24との間におけるn型層として、第2n型層22を形成せず、第3n型層23のみを形成した。サンプルI~Mは、トンネル接合層20における第1n型層21と第4n型層24との間の第2n型層22及び/又は第3n型層23を形成するときの条件が異なる以外は、サンプルRef2と同じ条件で形成したサンプルである。
【0068】
各サンプルRef2、I~Mについて、ウェーハ上における異なる5カ所の位置のVfを測定し、測定した5つのVfの平均を図5において白丸で示す。なお、Vfの値は、順方向電流を120mAとしたときの値である。
【0069】
図5の結果より、いずれもf1がf2よりも大きく、T1がT2よりも高く、t2/t1+t2が40%以上80%以下であり、且つt1+t2が50nm以下であるサンプルI~KのVfは、サンプルRef2のVfより低くなった。また、サンプルI~MのPoは、サンプルRef2のPoと同程度であった。
【0070】
図6は、サンプルRef3、N~Sの順方向電圧Vfの測定結果を示すグラフである。図6における縦軸の上にいくほどVfが高い。図6において、サンプルRef3のVfのレベルを破線で示す。
【0071】
サンプルRef3は、サンプルRef1と同様に、サファイアからなる基板10上に、第1発光部51と、トンネル接合層20と、第2発光部52と、を順に形成したサンプルである。
【0072】
サンプルRef3では、トンネル接合層20における第1n型層21と第4n型層24との間におけるn型層として、SiHガスの流量を8sccm、温度を950℃として、膜厚が35nmのn型層を形成した。
【0073】
サンプルN~Sでは、トンネル接合層20における第1n型層21と第4n型層24との間におけるn型層として、第1n型層21上に第2n型層22を形成し、第2n型層22上に第3n型層23を形成した。サンプルN~Sは、トンネル接合層20における第1n型層21と第4n型層24との間の第2n型層22及び第3n型層23を形成するときの条件が異なる以外は、サンプルRef3と同じ条件で形成したサンプルである。
【0074】
各サンプルRef3、N~Sについて、ウェーハ上における異なる5カ所の位置のVfを測定し、測定した5つのVfの平均を図6において白丸で示す。なお、Vfの値は、順方向電流を120mAとしたときの値である。
【0075】
図6の結果より、いずれもf1がf2よりも大きく、T1がT2よりも高く、且つt1+t2が50nm以下であるサンプルN~QのVfは、サンプルRef3のVfより低くなった。また、サンプルN~SのPoは、サンプルRef3のPoと同程度であった。
【0076】
サンプルRef1に対する比較対象のサンプルA~Hの中で、特にサンプルE及びFは、サンプルRef1と同程度のPoを維持しつつ、他のサンプルよりもVfが低くなった。サンプルEのVfは、サンプルRef1のVfよりも0.15V低くなった。サンプルFのVfは、サンプルRef1のVfよりも0.15V低くなった。
【0077】
サンプルRef2に対する比較対象のサンプルI~Mの中で、特にサンプルKは、サンプルRef2と同程度のPoを維持しつつ、他のサンプルよりもVfが低くなった。サンプルKのVfは、サンプルRef2のVfよりも0.07V低くなった。
【0078】
サンプルRef3に対する比較対象のサンプルN~Sの中で、特にサンプルN及びPは、サンプルRef3と同程度のPoを維持しつつ、他のサンプルよりもVfが低くなった。サンプルNのVfは、サンプルRef3のVfよりも0.05V低くなった。サンプルPのVfは、サンプルRef3のVfよりも0.04V低くなった。
【0079】
図3図6の結果より、Poの低下を軽減しつつ、Vfを低減するために、t2/t1+t2は40%以上80%以下が好ましい。また、サンプルA~D、及びNでは、t2/t1+t2が40%より低くても、t1をt2よりも厚くすることで、Poの低下を軽減しつつ、Vfを低減することができた。
【0080】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。本発明の上述した実施形態を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての形態も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0081】
1…発光素子、10…基板、11…第1窒化物半導体層、12…第2窒化物半導体層、13…第3窒化物半導体層、14…第4窒化物半導体層、15…第1活性層、16…第2活性層、20…トンネル接合層、21…第1n型層、22…第2n型層、23…第3n型層、24…第4n型層、41…n側電極、42…p側電極、51…第1発光部、52…第2発光部、100…半導体構造体
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図3
図4
図5
図6