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  • 特許-ビルスマイヤー試薬の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ビルスマイヤー試薬の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 249/02 20060101AFI20230907BHJP
   C07C 251/30 20060101ALI20230907BHJP
   C07C 51/60 20060101ALI20230907BHJP
   C07C 53/38 20060101ALI20230907BHJP
   C07C 53/40 20060101ALI20230907BHJP
   C07C 53/42 20060101ALI20230907BHJP
   C07C 53/44 20060101ALI20230907BHJP
   C07C 53/46 20060101ALI20230907BHJP
   C07C 53/48 20060101ALI20230907BHJP
   C07C 67/14 20060101ALI20230907BHJP
   C07C 69/04 20060101ALI20230907BHJP
   C07C 231/02 20060101ALI20230907BHJP
   C07C 233/65 20060101ALI20230907BHJP
   C07D 207/333 20060101ALI20230907BHJP
   C07D 307/40 20060101ALI20230907BHJP
   C07D 333/22 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C07C249/02
C07C251/30
C07C51/60
C07C53/38
C07C53/40
C07C53/42
C07C53/44
C07C53/46
C07C53/48
C07C67/14
C07C69/04
C07C231/02
C07C233/65
C07D207/333
C07D307/40
C07D333/22
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020541302
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 JP2019035031
(87)【国際公開番号】W WO2020050368
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2018167032
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】岡添 隆
(72)【発明者】
【氏名】和田 明宏
(72)【発明者】
【氏名】森 信明
(72)【発明者】
【氏名】小西 克彦
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-136502(JP,A)
【文献】国際公開第2008/105464(WO,A1)
【文献】特表2013-541533(JP,A)
【文献】特開2013-181028(JP,A)
【文献】CHEMPHOTOCHEM,2018年,Vol. 2, No. 8,pp. 720-724
【文献】The Journal of Organic Chemistry,1998年,Vol. 63, No. 18,pp. 6273-6280
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルスマイヤー試薬を製造するための方法であって、
前記ビルスマイヤー試薬が下記式(I)で表される塩であり、
【化1】
[式中、
1は、水素原子、C1-6アルキル基、または置換基を有していてもよいC6-12芳香族炭化水素基を示し、
2とR3は、独立して、C1-6アルキル基、または置換基を有していてもよいC6-12芳香族炭化水素基を示し、また、R2とR3は一緒になって4員以上7員以下の環構造を形成してもよく、
はクロを示し、
-塩化物イオンを示す。]
クロロ基を有するC1-4ハロゲン化炭化水素を含む組成物に酸素存在下で光照射することによりC1-4ハロゲン化炭化水素を分解する工程、および、
1-4ハロゲン化炭化水素の分解物と下記式(II)で表されるアミド化合物とを反応させる工程を含むことを特徴とする方法。
【化2】
[式中、R1~R3は上記と同義を示す。]
【請求項2】
前記光が180nm以上、280nm以下の波長の光を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記C1-4ハロゲン化炭化水素として、2以上のクロロ基を有する1-4ポリハロゲン化炭化水素を用いる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
1-4 ハロゲン化炭化水素とアミド化合物を含む組成物に酸素存在下で光照射し、C 1-4 ハロゲン化炭化水素の分解工程とアミド化合物との反応工程を同時に実施する請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記式(II)で表されるアミド化合物としてN,N-ジメチルホルムアミドを用いる請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記式(II)で表されるアミド化合物に対して5倍モル以上の前記C1-4ハロゲン化炭化水素を用いる請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
芳香族アルデヒドまたは芳香族ケトンを製造するための方法であって、
請求項1~6のいずれかに記載の方法によりビルスマイヤー試薬を製造する工程、および、
前記ビルスマイヤー試薬と活性基を有する芳香族化合物とを反応させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
カルボン酸ハロゲン化物を製造するための方法であって、
請求項1~6のいずれかに記載の方法によりビルスマイヤー試薬を製造する工程、および、
前記ビルスマイヤー試薬と下記式(III)で表されるカルボン酸化合物とを反応させることにより、前記カルボン酸化合物のカルボキシ基をハロホルミル基に変換する工程を含むことを特徴とする方法。
4-(CO2H)n (III)
[式中、R4はn価の有機基を示し、nは1以上4以下の整数を示す。]
【請求項9】
ギ酸エステルを製造するための方法であって、
請求項1~6のいずれかに記載の方法によりビルスマイヤー試薬を製造する工程、および、
前記ビルスマイヤー試薬と水酸基含有化合物とを反応させる工程を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全かつ簡便に、低コストで実施可能なビルスマイヤー試薬の製造方法と、当該ビルスマイヤー試薬を利用して、芳香族アルデヒドまたは芳香族ケトン、カルボン酸ハロゲン化物、およびギ酸エステルを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビルスマイヤー(Vilsmeier)試薬は求電子剤であり、電子豊富なアルケンや芳香環に付加反応を起こし、例えば、活性基を有する芳香族化合物のホルミル化やカルボキシ基のハロホルミル基への変換などに利用される。ビルスマイヤー試薬は、一般的に、ホスゲン、塩化オキザリル、三塩化リン、五塩化リン、塩化チオニルなどの塩素化剤と、アミド化合物から形成される(特許文献1)。
【0003】
しかし、塩素化剤の多くは非常に毒性が高く、また、水との接触により有毒で腐食性を有する気体を生じるものもあるため、保存が困難であり、取扱いにも危険を伴うことがある。特に、ホスゲンは窒息性の毒ガスとして使用された歴史もあり、使用時における吸引により、死亡などの危険性を伴うものであった。ホスゲン以外の塩素化剤も腐食性を示し、例えば塩化チオニルは副生成物として二酸化硫黄と塩化水素を生じるため、これらの処理にコストを要する。
【0004】
特許文献2には、塩素化剤としてより安全なフタル酸二塩化物を用いてビルスマイヤー試薬を製造する方法が開示されている。しかしフタル酸二塩化物を用いるとコストが上がる。また、この方法では無水フタル酸が副生するため、目的化合物の精製プロセスにも高コストがかかる。
【0005】
ところで、本発明者らは、これまでハロゲン化炭化水素を原料とする光化学反応を種々開発している。例えば特許文献3に開示されている通り、酸素存在下、クロロホルムなどに光照射して発生した分解生成物をアミン溶液やフェノール溶液に吹き込み、尿素誘導体や炭酸エステル誘導体を製造する方法を開発している。また、特許文献4には、ハロゲン化炭化水素とアルコールを含む混合物に酸素存在下で光照射して、クロロギ酸エステルを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2008/105464号パンフレット
【文献】特開2012-136502号公報
【文献】特開2013-181028号公報
【文献】国際公開第2015/156245号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、ビルスマイヤー試薬は古くから知られている有用なものであるが、その製造には危険な塩素化剤が必要であり、工業的な製造や使用は困難であるか、或いは厳しい制約の下で工業的な製造や使用が行われていた。
そこで本発明は、安全かつ簡便に、低コストで実施可能なビルスマイヤー試薬の製造方法と、当該ビルスマイヤー試薬を利用して、芳香族アルデヒドまたは芳香族ケトン、カルボン酸ハロゲン化物、およびギ酸エステルを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、ハロゲン化炭化水素とアミド化合物を含む組成物に酸素存在下で光照射することによりビルスマイヤー試薬を製造できることを見出して、本発明を完成した。
以下、本発明を示す。
【0009】
[1] ビルスマイヤー試薬を製造するための方法であって、
前記ビルスマイヤー試薬が下記式(I)で表される塩であり、
【化1】

[式中、
1は、水素原子、C1-6アルキル基、または置換基を有していてもよいC6-12芳香族炭化水素基を示し、
2とR3は、独立して、C1-6アルキル基、または置換基を有していてもよいC6-12芳香族炭化水素基を示し、また、R2とR3は一緒になって4員以上7員以下の環構造を形成してもよく、
Xは、クロロ、ブロモおよびヨードからなる群より選択されるハロゲノ基を示し、
-はカウンターアニオンを示す。]
クロロ、ブロモおよびヨードからなる群から選択される1種以上のハロゲノ基を有するC1-4ハロゲン化炭化水素を含む組成物に酸素存在下で光照射することによりC1-4ハロゲン化炭化水素を分解する工程、および、
1-4ハロゲン化炭化水素の分解物と下記式(II)で表されるアミド化合物とを反応させる工程を含むことを特徴とする方法。
【化2】

[式中、R1~R3は上記と同義を示す。]
【0010】
[2] 前記光が180nm以上、280nm以下の波長の光を含む上記[1]に記載の方法。
【0011】
[3] 前記C1-4ハロゲン化炭化水素としてC1-4ポリハロゲン化炭化水素を用いる上記[1]または[2]に記載の方法。
【0012】
[4] Xがクロロであり、Y-が塩化物イオンである上記[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
【0013】
[5] 前記式(II)で表されるアミド化合物としてN,N-ジメチルホルムアミドを用いる上記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
【0014】
[6] 前記式(II)で表されるアミド化合物に対して5倍モル以上の前記C1-4ハロゲン化炭化水素を用いる上記[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
【0015】
[7] 芳香族アルデヒドまたは芳香族ケトンを製造するための方法であって、
上記[1]~[6]のいずれかに記載の方法によりビルスマイヤー試薬を製造する工程、および、
前記ビルスマイヤー試薬と活性基を有する芳香族化合物とを反応させる工程を含むことを特徴とする方法。
【0016】
[8] カルボン酸ハロゲン化物を製造するための方法であって、
上記[1]~[6]のいずれかに記載の方法によりビルスマイヤー試薬を製造する工程、および、
前記ビルスマイヤー試薬と下記式(III)で表されるカルボン酸化合物とを反応させることにより、前記カルボン酸化合物のカルボキシ基をハロホルミル基に変換する工程を含むことを特徴とする方法。
4-(CO2H)n (III)
[式中、R4はn価の有機基を示し、nは1以上4以下の整数を示す。]
【0017】
[9] ギ酸エステルを製造するための方法であって、
上記[1]~[6]のいずれかに記載の方法によりビルスマイヤー試薬を製造する工程、および、
前記ビルスマイヤー試薬と水酸基含有化合物とを反応させる工程を含むことを特徴とする方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明方法によれば、反応性が高く有用なビルスマイヤー試薬を、ホスゲンといった危険な化合物の代わりに、汎用溶媒としても使われているハロゲン化炭化水素を用い、安全かつ簡便に、低コストで製造することができる。この際に副生するのは二酸化炭素と塩化水素のみであり、それらはガスとして系外に排出することもできるため、精製は原則として必要無い。また、製造されたビルスマイヤー試薬を用い、同一系内で、芳香族アルデヒドまたは芳香族ケトン、カルボン酸ハロゲン化物、およびギ酸エステルを製造することも可能である。よって本発明は、芳香族アルデヒドまたは芳香族ケトン、カルボン酸ハロゲン化物、およびギ酸エステルの工業的な製造技術として、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に用いられる反応装置の構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明では、まず、C1-4ハロゲン化炭化水素を含む組成物に酸素存在下で光照射することにより、C1-4ハロゲン化炭化水素を分解する。
【0021】
本発明で用いるC1-4ハロゲン化炭化水素は、炭素数が1以上4以下の炭化水素であり、クロロ、ブロモおよびヨードから必須的になる群から選択される1種以上のハロゲノ基を有する。かかるC1-4ハロゲン化炭化水素は、おそらく照射光と酸素により分解され、ハロゲン化カルボニルまたはハロゲン化カルボニル様の化合物に変換され、アミド化合物と反応した後、更にハロゲン化物イオンの攻撃を受けてビルスマイヤー試薬が生成すると考えられる。たとえ有害なハロゲン化カルボニルが生成しても、ハロゲン化カルボニルは反応性が極めて高いためにアミド化合物と直ぐに反応し、反応液外へは漏出しないか、或いは漏出してもその漏出量は僅かであると考えられる。本発明は、C1-4ハロゲン化炭化水素を光分解することで有用な化合物を製造する技術であり、工業的にもまた環境科学的にも寄与するところは大きい。
【0022】
1-4ハロゲン化炭化水素は、クロロ、ブロモおよびヨードから必須的になる群から選択される1種以上のハロゲノ基で置換された、炭素数1以上4以下のアルカン、アルケンまたはアルキンである。上述した通り、本発明においてC1-4ハロゲン化炭化水素は照射光と酸素により分解され、ハロゲン化カルボニルと同等の働きをすると考えられる。よってC1-2ハロゲン化炭化水素が好ましく、ハロゲノメタンがより好ましい。炭素数が2以上4以下である場合には、分解がより容易に進行するよう、1以上の不飽和結合を有するアルケンまたはアルキンが好ましい。また、2以上のハロゲノ基を有するC1-4ポリハロゲン化炭化水素が好ましく、C1-2ポリハロゲン化炭化水素がより好ましい。さらに、分解に伴ってハロゲノ基が転移する可能性もあるが、同一炭素に2以上のハロゲノ基を有するC1-4ハロゲン化炭化水素が好ましい。
【0023】
具体的なC1-4ハロゲン化炭化水素としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジブロモメタン、ブロモホルム、ヨードメタン、ジヨードメタン等のハロメタン;1,1,2-トリクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,1,2-テトラクロロエタン等のハロエタン;1,1,1,3-テトラクロロプロパン等のハロプロパン;テトラクロロメタン、テトラブロモメタン、テトラヨードメタン、ヘキサクロロエタン、ヘキサブロモエタン等のペルハロアルカン;1,1,2,2-テトラクロロエテン、1,1,2,2-テトラブロモエテン等のペルハロエテン等を挙げることができる。
【0024】
1-4ハロゲン化炭化水素は目的とする化学反応や所期の生成物に応じて適宜選択すればよく、また、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、好適には、製造目的化合物に応じて、C1-4ハロゲン化炭化水素は1種のみ用いる。常圧で常温または反応温度において液状のC1-4ハロゲン化炭化水素であれば、溶媒としての役割も果たすことができる。C1-4ハロゲン化炭化水素の中でもクロロ基を有する化合物が好ましい。
【0025】
本発明方法で用いるC1-4ハロゲン化炭化水素としては、汎用溶媒としても用いられる安価なクロロホルムが最も好ましい。例えば溶媒としていったん使用したC1-4ハロゲン化炭化水素を回収し、再利用してもよい。その際、多量の不純物や水が含まれていると反応が阻害されるおそれがあり得るので、ある程度は精製することが好ましい。例えば、水洗により水や水溶性不純物を除去した後、無水硫酸ナトリウムや無水硫酸マグネシウムなどで脱水することが好ましい。但し、1容量%程度の水が含まれていても反応は進行すると考えられるので、生産性を低下させるような過剰な精製は必要ない。かかる水含量としては、0.5容量%以下がより好ましく、0.2容量%以下がさらに好ましく、0.1容量%以下がよりさらに好ましい。また、上記再利用C1-4ハロゲン化炭化水素には、C1-4ハロゲン化炭化水素の分解物などが含まれていてもよい。
【0026】
1-4ハロゲン化炭化水素の使用量は、アミド化合物をビルスマイヤー試薬へ十分に変換できる範囲で適宜決定すればよいが、例えば、アミド化合物に対して0.1倍モル以上用いればよい。C1-4ハロゲン化炭化水素の使用量の上限は特に制限されないが、例えば、アミド化合物に対して200倍モル以下とすることができる。上記使用量としては、1倍モル以上、5倍モル以上または10倍モル以上が好ましく、20倍以上がより好ましく、25倍以上がより更に好ましい。本発明者らによる実験的知見によれば、C1-4ハロゲン化炭化水素に対するアミド化合物の量が少ない方がビルスマイヤー試薬の生成効率が高い傾向が認められる。また、C1-4ハロゲン化炭化水素を溶媒として使用できる場合などには、50倍モル以上用いることもできる。上記使用量としては、150倍モル以下または100倍モル以下が好ましい。C1-4ハロゲン化炭化水素の具体的な使用量は、予備実験などで決定すればよい。
【0027】
酸素源としては、酸素を含む気体であればよく、例えば、空気や、精製された酸素を用いることができる。精製された酸素は、窒素やアルゴン等の不活性ガスと混合して使用してもよい。コストや容易さの点からは空気を用いることができる。光照射によるC1-4ハロゲン化炭化水素の分解効率を高める観点からは、酸素源として用いられる気体中の酸素含有率は約15体積%以上100体積%以下であることが好ましい。また、不可避的不純物以外、実質的に酸素のみを用いることも好ましい。酸素含有率は上記C1-4ハロゲン化炭化水素などの種類によって適宜決定すればよい。例えば、上記C1-4ハロゲン化炭化水素としてジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロエチレン等のクロロC1-4炭化水素を用いる場合は、酸素含有率は15体積%以上100体積%以下であるのが好ましく、ジブロモメタンやブロモホルムなどのブロモC1-4炭化水素化合物を用いる場合は、酸素含有率は90体積%以上100体積%以下であるのが好ましい。なお、酸素(酸素含有率100体積%)を用いる場合であっても、反応系内への酸素流量の調節により酸素含有率を上記範囲内に制御することができる。酸素を含む気体の供給方法は特に限定されず、流量調整器を取り付けた酸素ボンベから反応系内に供給してもよく、また、酸素発生装置から反応系内に供給してもよい。
【0028】
なお、「酸素存在下」とは、C1-4ハロゲン化炭化水素が酸素と接している状態か、上記組成物中に酸素が存在する状態のいずれであってもよい。従って、本発明に係る反応は、酸素を含む気体の気流下で行ってもよいが、生成物の収率を高める観点からは、酸素を含む気体はバブリングにより上記組成物中へ供給することが好ましい。
【0029】
酸素を含む気体の量は、上記C1-4ハロゲン化炭化水素の量や、反応容器の形状などに応じて適宜決定すればよい。例えば、反応容器中に存在する上記C1-4ハロゲン化炭化水素に対する、反応容器へ供給する1分あたりの気体の量を、5容量倍以上とすることが好ましい。当該割合としては、25容量倍以上がより好ましく、50容量倍以上がよりさらに好ましい。当該割合の上限は特に制限されないが、500容量倍以下が好ましく、250容量倍以下がより好ましく、150容量倍以下がよりさらに好ましい。また、反応容器中に存在する上記C1-4ハロゲン化炭化水素に対する、反応容器へ供給する1分あたりの酸素の量としては、5容量倍以上25容量倍以下とすることができる。気体の流量が多過ぎる場合には、上記C1-4ハロゲン化炭化水素が揮発してしまう虞があり得る一方で、少な過ぎると反応が進行し難くなる虞があり得る。
【0030】
1-4ハロゲン化炭化水素を含む組成物には、溶媒を配合してもよい。特にC1-4ハロゲン化炭化水素が常温常圧で液体でない場合には、C1-4ハロゲン化炭化水素を適度に溶解でき、且つC1-4ハロゲン化炭化水素の分解を阻害しない溶媒が好ましい。かかる溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸エチルなどのエステル系溶媒;n-ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;アセトニトリルなどのニトリル系溶媒を挙げることができる。
【0031】
上記混合物に照射する光としては、短波長光を含む光が好ましく、紫外線を含む光がより好ましく、より詳細には180nm以上500nm以下の波長の光を含む光が好ましく、ピーク波長が180nm以上500nm以下の範囲に含まれる光がより好ましい。なお、光の波長は上記C1-4ハロゲン化炭化水素の種類に応じて適宜決定すればよいが、400nm以下がより好ましく、300nm以下がよりさらに好ましい。照射光に上記波長範囲の光が含まれている場合には、上記C1-4ハロゲン化炭化水素を効率良く酸化的光分解できる。例えば、波長280nm以上315nm以下のUV-Bおよび/または波長180nm以上280nm以下のUV-Cを含む高エネルギー光を用いることができ、波長180nm以上280nm以下のUV-Cを含む高エネルギー光を用いることが好ましい。また、ピーク波長が280nm以上315nm以下および/または180nm以上280nm以下の範囲に含まれる光が好ましく、ピーク波長が180nm以上280nm以下の範囲に含まれる光がより好ましい。
【0032】
光照射の手段は、上記波長の光を照射できるものである限り特に限定されないが、このような波長範囲の光を波長域に含む光源としては、例えば、太陽光、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、白熱電球などが挙げられる。反応効率やコストの点から、低圧水銀ランプが好ましく用いられる。
【0033】
照射光の強度や照射時間などの条件は、出発原料の種類や使用量によって適宜設定すればよいが、例えば、光源から上記組成物の最短距離位置における所望の光の強度としては10mW/cm2以上500mW/cm2以下が好ましい。また、光源とハロゲン化メタンとの最短距離としては、1m以下が好ましく、50cm以下がより好ましく、10cm以下または5cm以下がより更に好ましい。当該最短距離の下限は特に制限されないが、0cm、即ち、光源をハロゲン化メタン中に浸漬してもよい。反応容器の側面から光照射する場合には、上記最短距離を1cm以上または2cm以上とすることもできる。光の照射時間としては、0.5時間以上10時間以下が好ましく、1時間以上6時間以下がより好ましく、2時間以上4時間以下がよりさらに好ましい。光照射の態様も特に限定されず、反応開始から終了まで連続して光を照射する態様、光照射と光非照射とを交互に繰り返す態様、反応開始から所定の時間のみ光を照射する態様など、いずれの態様も採用できるが、反応開始から終了まで連続して光を照射する態様が好ましい。
【0034】
1-4ハロゲン化炭化水素の分解時の温度も特に限定はされず、適宜調整すればよいが、例えば、-20℃以上60℃以下とすることができる。当該温度としては、-10℃以上がより好ましく、0℃以上または10℃以上がよりさらに好ましく、また、50℃以下または40℃以下がより好ましく、30℃以下がよりさらに好ましい。或いは、温度制御をすることなく常温で反応を行ってもよい。なお、反応温度が低い場合には、有害なハロゲン化合物ガスが反応系外に漏れ難いという利点がある。かかる観点からは、反応温度は10℃以下が好ましく、5℃以下がより好ましい。
【0035】
また、高エネルギー光の照射後、高エネルギー光を照射せず、例えば蛍光灯などの一般光の下、10℃以上60℃以下で1分間以上5時間以下程度、反応を継続してもよい。
【0036】
本発明では、次に、C1-4ハロゲン化炭化水素の分解物と式(II)で表されるアミド化合物とを反応させる。アミド化合物との反応工程は、C1-4ハロゲン化炭化水素の分解工程と同時に実施してもよいし、C1-4ハロゲン化炭化水素の分解工程の後で行ってもよい。
【0037】
1-4ハロゲン化炭化水素の分解工程とアミド化合物との反応工程を同時に実施する場合には、例えば、C1-4ハロゲン化炭化水素を含む組成物にアミド化合物も配合すればよい。また、C1-4ハロゲン化炭化水素を含む組成物に光照射し、光照射を継続したままアミド化合物を添加してもよい。これらの場合には、C1-4ハロゲン化炭化水素の分解物がアミド化合物と速やかに反応することができ、分解物の漏出を抑制できる。
【0038】
1-4ハロゲン化炭化水素の分解工程の後にアミド化合物との反応工程を実施する場合には、光照射によりC1-4ハロゲン化炭化水素を分解した後、光照射、特に高エネルギー光の照射を停止し、アミド化合物を添加すればよい。アミド化合物によりC1-4ハロゲン化炭化水素の分解が阻害される場合には、この態様によりC1-4ハロゲン化炭化水素の分解とアミド化合物との反応を効率的に行うことができる。また、C1-4ハロゲン化炭化水素の分解により副生したハロゲン化水素とアミド化合物との副反応や、アミド化合物への光照射による分解を抑制できる。よってこの態様は、特に大容量での本発明の実施に適している。
【0039】
アミド化合物としては、下記式(II)で表されるアミド化合物が好ましい。以下、式(II)で表される化合物を「アミド化合物(II)」と略記する場合がある。
【0040】
【化3】

[式中、R1は、水素原子(-H)、C1-6アルキル基、または置換基を有していてもよいC6-12芳香族炭化水素基を示し、R2とR3は、独立して、C1-6アルキル基、または置換基を有していてもよいC6-12芳香族炭化水素基を示し、また、R2とR3は一緒になって4員以上7員以下の環構造を形成してもよい。]
【0041】
本開示において「C1-6アルキル基」は、炭素数1以上6以下の直鎖状または分枝鎖状の一価飽和脂肪族炭化水素基をいう。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等である。好ましくはC1-4アルキル基であり、より好ましくはC1-2アルキル基であり、最も好ましくはメチルである。
【0042】
「C6-12芳香族炭化水素基」とは、炭素数が6以上12以下の一価芳香族炭化水素基をいう。例えば、フェニル、ナフチル、インデニル、ビフェニル基であり、好ましくはフェニルである。C6-12芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。当該置換基は、本発明に係る反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲノ基、ニトロ基およびシアノ基からなる群より選択される1以上の置換基を挙げることができる。置換基の数は置換可能である限り特に制限されないが、例えば1以上5以下とすることができ、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1がより更に好ましい。置換基数が2以上である場合、置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
「C1-6アルコキシ基」とは、炭素数1以上6以下の直鎖状または分枝鎖状の脂肪族炭化水素オキシ基をいう。例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ等であり、好ましくはC1-4アルコキシ基であり、より好ましくはC1-2アルコキシ基であり、より更に好ましくはメトキシである。
【0044】
6-12芳香族炭化水素基の置換基としての「ハロゲノ基」は、クロロ、ブロモ、ヨードの他、フルオロであってもよい。
【0045】
2とR3が窒素原子と共に一緒になって形成される4員以上7員以下の環構造としては、例えば、ピロリジル基、ピペリジル基、モルホリノ基を挙げることができる。
【0046】
具体的なアミド化合物(II)としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチル-N-フェニルホルムアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、1,3-ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素、テトラブチル尿素などを挙げることができ、汎用性やコストなどの観点からDMFが好ましい。
【0047】
1-4ハロゲン化炭化水素の分解工程とアミド化合物との反応工程を同時に実施する場合、C1-4ハロゲン化炭化水素とアミド化合物を含む組成物に酸素存在下で光照射する。アミド化合物(II)と組み合わせるC1-4ハロゲン化炭化水素としては、安価に入手できるクロロホルムが最も好ましい。
【0048】
上記C1-4ハロゲン化炭化水素とアミド化合物の混合態様は特に限定されない。例えば、反応器中、各化合物の全量を予め混合しておいてもよいし、数回に分割して添加してもよいし、任意の速度で連続的に添加してもよい。また、上記C1-4ハロゲン化炭化水素が常温常圧で液体でない場合には、これら原料化合物を適度に溶解でき、且つ本発明反応を阻害しない溶媒を用いてもよい。かかる溶媒としては、例えば、n-ヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;アセトニトリルなどのニトリル系溶媒を挙げることができる。
【0049】
反応時の温度も特に限定はされず、適宜調整すればよいが、例えば、-20℃以上60℃以下とすることができる。当該温度としては、-10℃以上がより好ましく、0℃以上がよりさらに好ましく、また、50℃以下または40℃以下がより好ましく、30℃以下がよりさらに好ましい。或いは、温度制御をすることなく常温で反応を行ってもよい。なお、反応温度が低い場合には、有害なハロゲン化合物ガスが反応系外に漏れ難いという利点がある。かかる観点からは、反応温度は10℃以下が好ましく、5℃以下がより好ましい。
【0050】
また、高エネルギー光の照射後、高エネルギー光を照射せず、例えば蛍光灯などの一般光の下、10℃以上60℃以下で1分間以上5時間以下程度、C1-4ハロゲン化炭化水素の分解物とアミド化合物との反応を継続してもよい。
【0051】
本発明の製造方法に使用できる反応装置としては、反応容器に光照射手段を備えたものが挙げられる。反応装置には、攪拌装置や温度制御手段が備えられていてもよい。図1に、本発明の製造方法に使用できる反応装置の一態様を示す。図1に示す反応装置は、筒状反応容器6内に光照射手段1を有するものである。筒状反応容器6内に、上記各原料化合物を添加し、当該反応容器6内に酸素を含有する気体を供給または上記混合物に酸素を含有する気体をバブリングしながら(図示せず)、光照射手段1より光を照射して反応を行う。前記光照射手段1をジャケット2等で覆う場合、該ジャケットは、前記短波長光を透過する素材であることが好ましい。また、反応容器の外側から光照射を行ってもよく、この場合、反応容器は、前記短波長光を透過する素材であることが好ましい。前記短波長光を透過する素材としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、石英ガラス等が好ましく挙げられる。
【0052】
アミド化合物として上記式(II)で表される化合物を用いた場合には、生成するビルスマイヤー試薬は下記式(I)で表される塩である。
【0053】
【化4】

[式中、R1~R3は上記と同義を示し、Xは、クロロ、ブロモおよびヨードからなる群より選択されるハロゲノ基を示し、Y-はカウンターアニオンを示す。]
【0054】
式(I)におけるY-としては、C1-4ハロゲン化炭化水素由来の塩化物イオン、臭化物イオン、およびヨウ化物イオンが挙げられるが、特に制限されない。
式(I)で表される塩としては、入手容易性の観点から、Xがクロロであり、且つY-が塩化物イオンである化合物が好ましい。
【0055】
ビルスマイヤー試薬を含む上記反応液へ更にビルスマイヤー試薬と反応可能な化合物を添加することにより、同一系内で更なる反応を進行せしめることが可能である。例えば、ビルスマイヤー試薬により活性基を有する芳香族化合物をアルデヒド化またはケトン化できることが知られている。かかる反応はビルスマイヤー・ハック反応(Vilsmeier-Haack reaction)として知られている。また、ビルスマイヤー試薬は、カルボン酸化合物のカルボキシ基をハロホルミル基に変換することが知られている。更に、ビルスマイヤー試薬に水酸基含有化合物を反応させることにより、ギ酸エステルが得られる。
【0056】
活性基を有する芳香族化合物(以下、「活性芳香族化合物」という)は、置換基などにより活性化された芳香族化合物である。例えば、アルキル基で置換されたアルキルアミノ基を含むアミノ基や水酸基などは、芳香族化合物を強く活性化する。また、アルキルカルボニルアミノ基(-N(C=O)R)、アルキルカルボニルオキシ基(-O(C=O)R)、エーテル基(-OR)、アルキル基(-R)(Rはアルキル基を示し、C1-6アルキル基が好ましい)、および芳香族基も、芳香族化合物を活性化する。以下、これら置換基を活性化基という。また、アントラセンなどのように、芳香族環が縮合して共役系が拡張しているような化合物も活性化されており、ビルスマイヤー試薬によるアルデヒド化やケトン化を受ける。活性化されている部位のπ電子が求電子的にビルスマイヤー試薬と反応し、アルデヒド化やケトン化されると考えられる。
【0057】
活性芳香族化合物は、活性化されておりビルスマイヤー試薬によりアルデヒド化またはケトン化される化合物であれば特に制限されないが、例えば、上記活性化基により置換されたベンゼンやナフタレンなどのC1-10芳香族炭化水素;フェナンスレンやアントラセンなど、上記活性化基により置換されていてもよい縮合芳香族炭化水素;ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チオフェン、フラン、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール等、上記活性化基により置換されていてもよい5員環ヘテロアリール基;ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン等、上記活性化基により置換されていてもよい6員環ヘテロアリール;インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、クロメン等、上記活性化基により置換されていてもよい縮合ヘテロアリールを挙げることができる。なお、無置換のフランやチオフェンなどは、従来のビルスマイヤー・ハック反応でのアルデヒド化やケトン化の報告例は無いが、本発明方法によればヘテロ元素に隣接する炭素におけるアルデヒド化やケトン化が可能である。
【0058】
活性芳香族化合物の使用量は適宜調整すればよいが、例えば、アミド化合物に対して0.1倍モル以上1.0倍モル以下とすることができる。
【0059】
アルデヒド化またはケトン化の反応条件は、適宜決定すればよい。例えば、薄層クロマトグラフィやNMRなどでアミド化合物の消費とビルスマイヤー試薬の生成を確認した後に活性芳香族化合物を反応溶液に添加すればよい。活性芳香族化合物は、そのまま添加してもよいし、活性芳香族化合物の溶液を添加してもよい。活性芳香族化合物溶液の溶媒としては、活性芳香族化合物を適度に溶解でき且つ反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロプロパン、クロロブタン、クロロペンタン、クロロヘキサンなどのハロゲン化炭化水素溶媒;アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;アセトニトリルなどのニトリル系溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒を挙げることができる。アルデヒド化またはケトン化の反応条件も適宜調整すればよいが、例えば、反応温度は、活性芳香族化合物の添加時温度も含め、-10℃以上、加熱還流条件とすることができ、反応時間は、10分間以上20時間以下とすることができる。なお、式(I)および式(II)の化合物においてR1が水素原子である場合は芳香族アルデヒドが得られ、R1がアルキル基または芳香族炭化水素基である場合は芳香族ケトンが得られる。
【0060】
反応後には、通常の後処理や精製をしてもよい。例えば、反応後の反応液に飽和炭酸ナトリウム水溶液や飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止させ、分液し、水層を有機溶媒で抽出し、有機層と抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムや無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した後、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィ、蒸留などの常法により目的化合物である芳香族アルデヒドや芳香族ケトンを精製すればよい。
【0061】
ビルスマイヤー試薬によりカルボン酸化合物のカルボキシ基をハロホルミル基に変換する場合には、カルボン酸化合物を上記C1-4ハロゲン化炭化水素とアミド化合物を含む組成物へ光照射前に添加してもよいし、光照射前から光照射中を経て光照射後にかけてカルボン酸化合物を断続的または連続的に適時添加してよいし、光照射後にカルボン酸化合物を添加してもよい。即ち、ビルスマイヤー試薬の製造工程の後にカルボン酸化合物を添加してカルボキシ基をハロホルミル基に変換する工程を行ってもよいし、両工程を同時に行ってもよい。
【0062】
カルボキシ基をハロホルミル基に変換するカルボン酸化合物としては、例えば、下記式(III)で表される化合物を挙げることができる。
4-(CO2H)n (III)
[式中、R4はn価の有機基を示し、nは1以上4以下の整数を示す。]
【0063】
有機基は、反応を阻害しない限り特に制限されないが、例えば、置換基を有していてもよいC1-18炭化水素基および置換基を有していてもよい上記ヘテロアリール基を挙げることができる。置換基としては、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲノ基、ニトロ基およびシアノ基からなる群より選択される1以上の置換基を挙げることができる。また、C1-18炭化水素基としては、例えば、1価のC1-18アルキル基、C2-18アルケニル基、C2-18アルキニル基、C6-18芳香族炭化水素基、および2価以上4価以下のこれらに対応する炭化水素基を挙げることができる。また、C1-18アルキル基、C2-18アルケニル基、C2-18アルキニル基においては、1以上の炭素原子が-O-、-S-、-NR5-(R5は水素原子またはC1-6アルキル基などのアルキル基を示す)などのヘテロ原子で置換されていてもよい。
【0064】
カルボン酸化合物は、そのまま添加してもよいし、カルボン酸化合物の溶液を添加してもよい。カルボン酸化合物溶媒の溶媒としては、カルボン酸化合物を適度に溶解でき且つ反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロプロパン、クロロブタン、クロロペンタン、クロロヘキサンなどのハロゲン化炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒を挙げることができる。
【0065】
カルボン酸化合物の使用量は適宜調整すればよいが、例えば、アミド化合物に対して0.1倍モル以上3.0倍モル以下とすることができる。
【0066】
カルボキシ基をハロホルミル基に変換する反応の条件は、適宜決定すればよい。例えば、反応温度を0℃以上50℃以下、反応時間を10分間以上20時間以下とすることができる。
【0067】
カルボン酸ハロゲン化物は反応性が高く不安定である場合が多いため、単離は難しいことがある。よって、ビルスマイヤー試薬とカルボン酸化合物との反応後、アルコール化合物やアミン化合物など、カルボン酸ハロゲン化物と反応させるべき化合物を反応液に添加することが好ましい。当該反応後は通常の後処理を行ってもよく、目的化合物を常法により精製してもよい。
【0068】
ビルスマイヤー試薬と水酸基含有化合物を反応させてギ酸エステルを得る場合には、水酸基含有化合物を上記C1-4ハロゲン化炭化水素とアミド化合物を含む組成物へ光照射前に添加してもよいし、光照射前から光照射中を経て光照射後にかけて水酸基含有化合物を断続的または連続的に適時添加してよいし、光照射後に水酸基含有化合物を添加してもよい。即ち、ビルスマイヤー試薬の製造工程の後に水酸基含有化合物を添加する工程を行ってもよいし、両工程を同時に行ってもよい。水酸基含有化合物は、そのまま添加してもよいし、水酸基含有化合物の溶液を添加してもよい。水酸基含有化合物溶液の溶媒としては、水酸基含有化合物を適度に溶解でき且つ反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロプロパン、クロロブタン、クロロペンタン、クロロヘキサンなどのハロゲン化炭化水素溶媒;アセトニトリルなどのニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒を挙げることができる。
【0069】
水酸基含有化合物は、反応性水酸基を1以上有する化合物であれば特に制限されず、例えば、アルコール化合物とフェノール化合物を挙げることができる。
【0070】
アルコール化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、イソペンタノールなどのC1-20アルコール;トリフルオロメタノール、2-フルオロエタノール、2-クロロエタノール、2-ブロモエタノール、2-ヨードエタノール、2,2,2-フルオロエタノールなどのC1-20ハロゲノアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどのジオール化合物;グリセリンなどのトリオール化合物;ペンタエリスリトールなどのテトラオール化合物などを挙げることができる。
【0071】
フェノール化合物としては、例えば、フェノール、ナフトール、クレゾール、ブチルフェノール、アミルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノールなどの1価フェノール化合物;カテコール、ビスフェノールA~G、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールZなどの2価フェノール化合物;トリヒドロキシベンゼンなどの3価フェノール化合物を挙げることができる。
【0072】
水酸基含有化合物の使用量は適宜調整すればよいが、例えば、水酸基を1個有する水酸基含有化合物の使用量は、アミド化合物に対して0.1倍モル以上3.0倍モル以下とすることができる。水酸基をm個有する水酸基含有化合物の使用量は、1個有する水酸基含有化合物の使用量の1/mを目安として調整すればよい。
【0073】
ビルスマイヤー試薬と水酸基含有化合物との反応条件は、適宜決定すればよい。例えば、水酸基含有化合物の添加後、反応温度を-10℃以上50℃以下、反応時間を10分間以上20時間以下とすることができる。
【0074】
反応後には、通常の後処理や精製をしてもよい。例えば、反応後の反応液に飽和炭酸ナトリウム水溶液や飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止させ、分液し、水層を有機溶媒で抽出し、有機層と抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムや無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した後、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィ、蒸留などの常法により目的化合物であるギ酸エステルを精製すればよい。
【0075】
本願は、2018年9月6日に出願された日本国特許出願第2018-167032号に基づく優先権の利益を主張するものである。2018年9月6日に出願された日本国特許出願第2018-167032号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0077】
実施例1: ビルスマイヤー試薬の製造
中央に直径30mmの石英ガラスジャケットを装着した筒状反応容器(直径42mm)を用意し、石英ガラスジャケットに低圧水銀ランプ(SEN Light社製、UVL20PH-6、20W、φ24×120mm)を入れ、反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)とDMF(1.55mL,20mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、温度30℃で2時間反応を行った。続いて、酸素ガスの供給と光照射を中止し、50℃で1.5時間反応液を攪拌した。その後、攪拌を中止したところ、反応液は二層に分離していた。
各層を1H-NMRで分析したところ、下層にはビルスマイヤー試薬のピークはほとんど見られなかった。一方、上層にはビルスマイヤー試薬である(クロロメチレン)ジメチルイミニウムクロリドのピークが認められた。また、上層における残留DMFとビルスマイヤー試薬との比(DMF:ビルスマイヤー試薬)は、ピーク強度より約1:4であり、最大で16mmolのビルスマイヤー試薬が生成していると見積もられた。
【0078】
実施例2: ピロール-2-カルボキシアルデヒドの製造
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)とDMF(1.56mL,20mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、30℃で2時間反応を行った。続いて、反応温度を50℃に上げ、泡が発生しなくなるまで攪拌した。その後、反応容器をアイスバスに浸漬し、ピロール(0.74mL,10mmol)を加え、30分間加熱還流した。次いで、飽和炭酸ナトリウム水溶液(30mL)を加え、15分間攪拌した。二層に分離した反応液を分液し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層と抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。濃縮物を1H-NMRで分析したところ、目的化合物であるピロール-2-カルボキシアルデヒドの生成を確認することができた(収率:82%)。
【0079】
実施例3: 1-メチル-2-ピロールカルボキシアルデヒドの製造
実施例2において、ピロールの代わりに1-メチルピロール(0.74mL,10mmol)のクロロホルム(5mL)溶液を用い、水層をジクロロメタンで抽出した以外は同様にして濃縮物を得た。濃縮物を1H-NMRで分析したところ、目的化合物である1-メチル-2-ピロールカルボキシアルデヒドの生成を確認することができた(収率>99%)。
【0080】
実施例4: 2-ホルミルフランの製造
実施例2において、ピロールの代わりにフラン(0.73mL,10mmol)を用い、フランを添加してから0℃で30分間、続いて常温で2時間反応させ、水層をジクロロメタンで抽出した以外は同様にして濃縮物を得た。濃縮物を1H-NMRで分析したところ、目的化合物である2-ホルミルフランの生成を確認することができた(収率:60%)。このように、これまでビルスマイヤー試薬による無置換フランのホルミル化は報告されていないが、本発明によれば無置換フランのホルミル化が可能であることが実証された。
【0081】
実施例5: 5-メチルフルフラールの製造
中央に直径30mmの石英ガラスジャケットを装着した筒状反応容器(直径42mm)を用意し、石英ガラスジャケットに低圧水銀ランプ(SEN Light社製、UVL20PH-6、20W、φ24×120mm)を入れ、反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)とDMF(3.5mL,45mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、30℃で3時間反応を行った。続いて、反応温度を50℃に上げ、泡が発生しなくなるまで攪拌した。その後、反応容器を氷浴に浸漬し、2-メチルフラン(0.9mL,10mmol)を加え、0℃で1時間攪拌した。次いで、飽和炭酸ナトリウム水溶液(30mL)を加え、15分間攪拌した。二層に分離した反応液を分液し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層と抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。濃縮物を1H-NMRで分析したところ、目的化合物である5-メチルフルフラールの生成を確認することができた(収率:80%)。
【0082】
実施例6: 2-ホルミルチオフェンの製造
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)とDMF(1.2mL,15mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、30℃で2時間反応を行った。続いて、光照射を停止し、反応温度を50℃に上げ、30分間攪拌した。その後、常温でチオフェン(0.74mL,10mmol)を滴下し、6時間加熱還流した。次いで、反応液を0℃の飽和炭酸ナトリウム水溶液(30mL)に加え、30分間攪拌した。反応液にクロロホルムを加え、二層に分離した反応液を分液し、水層をクロロホルムで抽出した。有機層と抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。濃縮物を1H-NMRで分析したところ、目的化合物である2-ホルミルチオフェンの生成を確認することができた(収率:61%)。このように、これまでビルスマイヤー試薬による無置換チオフェンのホルミル化は報告されていないが、本発明によれば無置換チオフェンのホルミル化が可能であることが実証された。
【0083】
実施例7: 5-メチル-2-ホルミルチオフェンの製造
実施例2において、ピロールの代わりに2-メチルチオフェン(0.97mL,10mmol)を用いた以外は同様にして濃縮物を得た。濃縮物を1H-NMRで分析したところ、目的化合物である5-メチル-2-ホルミルチオフェンの生成を確認することができた(収率:56%)。
【0084】
実施例8: 2-ホルミル-3-メチルチオフェンまたは2-ホルミル-4-メチルチオフェンの製造
実施例2において、ピロールの代わりに3-メチルチオフェン(0.97mL,10mmol)を用い、3-メチルチオフェンを滴下した後の加熱還流時間を2時間にした以外は同様にして濃縮物を得た。濃縮物を1H-NMRで分析したところ、2-ホルミル-3-メチルチオフェンの収率は74%、2-ホルミル-4-メチルチオフェンの収率は16%であった。
【0085】
実施例9: 2-ホルミル-3-メチルチオフェンまたは2-ホルミル-4-メチルチオフェンの製造
実施例8において、DMFの代わりに1-ピロリジンカルボキシアルデヒド(1.98mL,20mmol)を用いた以外は同様にして濃縮物を得た。濃縮物を1H-NMRで分析したところ、2-ホルミル-3-メチルチオフェンの収率は11%、2-ホルミル-4-メチルチオフェンの収率は4%であった。
【0086】
実施例10: 3-ホルミルインドールの製造
実施例2と同様にして、ビルスマイヤー試薬を含む反応液を調製した。当該反応液に、インドール(1.17g,10mmol)のDMF(10mL)溶液を加え、常温で2時間攪拌した。更に、7.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液(20mL)を加え、0℃で15分間攪拌した。二層に分離した反応液を分液し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層と抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィ(溶離液:酢酸エチル/ジクロロエタン=3/7)に付し、目的化合物である3-ホルミルインドールを得た(収率:70%)。
【0087】
実施例11: ビピロール誘導体の光ホルミル化反応
【化5】

実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)とDMF(0.56mL,7.23mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、30℃で2時間反応を行った。続いて、光照射を停止し、反応温度を50℃に上げ、30分間攪拌した。その後、反応液を氷冷しつつ、上記ビピロール誘導体(580mg,1.81mmol)をクロロホルム(20mL)に溶解した溶液を添加し、30分間加熱還流した。次いで、反応液に飽和炭酸ナトリウム水溶液(30mL)を加え、15分間攪拌した。反応液にクロロホルムを加え、二層に分離した反応液を分液し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。ジクロロメタンのメタノールの混合液を用いて再結晶することにより、ホルミル化されたビピロール誘導体を得た(収率:66%)。
【0088】
実施例12: ビス(ピロール-2-カルボキシアルデヒド)の製造
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)とDMF(1.15mL,14.9mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、10℃で6時間反応を行った。続いて、反応温度を50℃に上げ、30分間攪拌した。その後、反応容器をアイスバスに浸漬し、ビピロール(420mg,3.18mmol)を加え、30分間加熱還流した。次いで、飽和炭酸ナトリウム水溶液(50mL)を加え、15分間攪拌した。二層に分離した反応液を分液し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。残渣をメタノールで洗浄し、1H-NMRで分析したところ、目的化合物であるビス(ピロール-2-カルボキシアルデヒド)の生成を確認することができた(収量:210mg,収率:73%)。
【0089】
実施例13: ベンゾフランのホルミル化反応
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)とDMF(1.56mL,20mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、0℃で5時間反応を行った。続いて、反応温度を室温まで上げ、ベンゾフラン(1.0mL,9mmol)を加え、70℃で30分間攪拌し、更に20時間加熱還流した。次いで、飽和炭酸ナトリウム水溶液(20mL)を加え、15分間攪拌した。ジエチルエーテル(10mL)を加え、二層に分離した反応液を分液し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を抽出液と合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液、および水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。不溶物を濾別し、濾液を減圧濃縮した。残渣をクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン=1/1(容量比))に付し、目的化合物である2-ホルミルベンゾフランを得た(収量:394mg,収率:30%)。
【0090】
実施例14: フェニルピロリルケトンの製造
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)とN,N-ジメチルベンズアミド(3g,20mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、30℃で3時間反応を行った。続いて、光照射を停止し、反応温度を50℃に上げ、30分間攪拌した。その後、ピロール(0.7mL,10mmol)を加え、30分間加熱還流した。次いで、反応液に飽和炭酸ナトリウム水溶液を加え、30分間攪拌した。反応液にクロロホルムを加え、二層に分離した反応液を分液し、水層をクロロホルムで抽出した。有機層と抽出液を合わせて150℃で減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液:ジクロロメタン/酢酸エチル)で精製することにより、目的化合物を得た(収量:0.32g,収率:9.3%)。
【0091】
実施例15: 2-アセチルピロールの製造
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)とN,N-ジメチルアセトアミド(1.7g,20mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、30℃で3時間反応を行った。続いて、光照射を停止し、30℃で30分間攪拌した。その後、ピロール(0.7mL,10mmol)を加え、一晩攪拌した。次いで、生じた不溶性塩を吸引濾過により除去し、濾液を減圧濃縮することにより、目的化合物を得た(収量:0.39g,収率:36.0%)。
【0092】
比較例1
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(30mL,372mmol)と安息香酸(1.22g,10mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、10℃で3時間反応を行った。1H-NMRにより反応液を分析したが、反応はまったく進行していなかった。反応が進行しなかった理由は、おそらく、アミド化合物を用いなかったためにビルスマイヤー試薬が生成しなかったことによると考えられる。
【0093】
実施例16: 塩化ベンゾイルの製造とそのアミド化
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(30mL,372mmol)、DMF(0.4mL,5mmol)および安息香酸(1.22g,10mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、10℃で3時間反応を行った。1H-NMRにより反応液を分析したところ、塩化ベンゾイルが95%の収率で生成していた。
上記反応液に常温でアニリン(3.65mL,40mmol)を加え、常温で1時間攪拌した後、反応液を濾過した。濾液に5%塩酸を加え、ジクロロメタンで抽出した。抽出液を水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。得られた黄褐色濃縮物をアセトン/n-ヘキサン混合溶媒を使って再結晶することにより、ベンズアニリドを得た(単離収率:61%)。
【0094】
実施例17: 塩化ベンゾイルの製造
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(30mL,372mmol)、DMF(0.4mL,5mmol)および安息香酸(1.22g,10mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、30℃で2時間反応を行った。1H-NMRにより反応液を分析したところ、塩化ベンゾイルが定量的に生成していた。
【0095】
実施例18: 塩化ベンゾイルの製造
実施例1の反応容器内にテトラクロロエチレン(30mL,293mmol)、DMF(0.4mL,5mmol)および安息香酸(1.22g,10mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、30℃で2時間反応を行った。1H-NMRにより反応液を分析したところ、塩化ベンゾイルが収率8.5%で生成していた。
【0096】
実施例19: 塩化アセチルの製造
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)、DMF(0.4mL,5mmol)および酢酸(0.57mL,10mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、30℃で3時間反応を行った。1H-NMRにより反応液を分析したところ、塩化アセチルが収率90%で生成していた。
【0097】
実施例20: 塩化プロピオニルの製造
実施例19において、酢酸の代わりにプロピオン酸(0.67mL,10mmol)を用いた以外は同様にして反応を行った。反応液を1H-NMRで分析したところ、塩化プロピオニルの生成を確認することができた(収率:90%)。
【0098】
実施例21: ジクロロ塩化アセチルの製造
実施例19において、酢酸の代わりにジクロロ酢酸(0.82mL,10mmol)を用い、反応時間を2時間とした以外は同様にして反応を行った。反応液を1H-NMRで分析したところ、ジクロロ塩化アセチルが定量的に生成していることを確認できた。
【0099】
実施例22: 塩化アクリロイルの製造
実施例19において、酢酸の代わりにアクリル酢酸(0.69mL,10mmol)を用い、反応時間を2時間とした以外は同様にして反応を行った。反応液を1H-NMRで分析したところ、塩化アクリロイルの生成を確認することができた(収率:14%)。
【0100】
実施例23: 塩化マロイルの製造
実施例19において、酢酸の代わりにマロン酸(1.04g,10mmol)を用い、DMFを2mL(25mmol)用いた以外は同様にして反応を行った。反応液を1H-NMRで分析したところ、塩化マロイルの生成を確認することができた(収率:82%)。
【0101】
実施例24: 4-ニトロベンゾイルクロリドの製造
実施例19において、酢酸の代わりに4-ニトロ安息香酸(1.04mL,10mmol)を用いた以外は同様にして反応を行った。反応液を1H-NMRで分析したところ、4-ニトロベンゾイルクロリドの生成を確認することができた(収率:83%)。
【0102】
実施例25: 4-メトキシベンゾイルクロリドの製造
実施例19において、酢酸の代わりに4-メトキシ安息香酸(1.52g,10mmol)を用い、DMFを3.2mL(46mmol)用いた以外は同様にして反応を行った。反応液を1H-NMRで分析したところ、4-メトキシベンゾイルクロリドの生成を確認することができた(収率:89%)。
【0103】
実施例26: 2-チオフェンカルボニルクロリドの製造
実施例19において、酢酸の代わりに2-チオフェンカルボン酢酸(1.28g,10mmol)を用い、DMFを2mL(25mmol)用い、反応時間を2時間とした以外は同様にして反応を行った。反応液を1H-NMRで分析したところ、2-チオフェンカルボニルクロリドの生成を確認することができた(収率:93%)。
【0104】
実施例27: 2-フランカルボニルクロリドの製造
実施例19において、酢酸の代わりに2-フランカルボン酢酸(1.12g,10mmol)を用い、反応時間を2時間とした以外は同様にして反応を行った。反応液を1H-NMRで分析したところ、2-フランカルボニルクロリドが定量的に生成していることを確認できた。
【0105】
実施例28: テレフタル酸ジアニリドの製造
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)、DMF(2.4mL,30mmol)およびテレフタル酸(0.41g,2.5mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、30℃で2時間反応を行った。続いて、反応温度を50℃に上げ、泡が発生しなくなるまで攪拌した。反応液を1H-NMRにより分析し、テレフタル酸ジクロリドの生成を確認した。
上記反応液に常温でアニリン(3.56mL,40mmol)を加え、常温で10時間攪拌した後、0℃でメタノールを添加した。生じた白色沈殿を濾別し、白色粉末であるテレフタル酸ジアニリドを得た(単離収率:24%)。
【0106】
実施例29: 無水フタル酸の製造
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)、DMF(0.8mL,10mmol)およびフタル酸(1.66g,10mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、30℃で2時間反応を行った。反応液を1H-NMRにより分析し、無水フタル酸の生成を確認した。なお、上記反応では、フタル酸からフタル酸ジクロリドがいったん生成し、更にフタル酸ジクロリドがDMFと反応して無水フタル酸が生成したと考えられる。
【0107】
実施例30: 2,2,2-トリフルオロプロピオン酸クロリドの製造
実施例19において、酢酸の代わりに2,2,2-トリフルオロプロピオン酸(0.87mL,10mmol)を用い、DMFを0.3mL(4mmol)用い、反応温度を20℃とし、反応時間を2時間とした以外は同様にして反応を行った。反応液を1H-NMRで分析したところ、2,2,2-トリフルオロプロピオン酸クロリドが定量的に生成していることを確認できた。
【0108】
実施例31: 4-フルオロ安息香酸クロリドの製造
実施例19において、酢酸の代わりに4-フルオロ安息香酸(715mg,5mmol)を用い、DMFを0.9mL(11.6mmol)用い、反応温度を20℃とし、反応時間を2時間とした以外は同様にして反応を行った。反応液を1H-NMRで分析したところ、4-フルオロ安息香酸クロリドが定量的に生成していることを確認できた。
【0109】
実施例32: ペンタフルオロ安息香酸アニリドの製造
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)、DMF(0.4mL,5mmol)およびペンタフルオロ安息香酸(1.06g,5mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、30℃で2時間反応を行った。続いて、反応温度を50℃に上げ、泡が発生しなくなるまで攪拌した。
上記反応液にアニリン(0.46mL,5mmol)を加え、常温で3時間攪拌した。次いで、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、分液し、有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液:酢酸エチル/n-ヘキサン=1/3(v/v)の混合溶媒)に付し、ペンタフルオロ安息香酸アニリドを得た(単離収率:33%)。
【0110】
実施例33: ギ酸メチルの製造
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)、DMF(1.56mL,20mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、30℃で2時間反応を行った。続いて、光照射を停止し、反応温度を50℃に上げ、30分間攪拌した。
上記反応液を0℃に冷却し、メタノール(0.81mL,10mmol)を加え、常温で30分間攪拌した。次いで、反応液を氷冷した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加え、分液した。水層をクロロホルムで抽出し、有機層と抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。濃縮物を1H-NMRで分析したところ、ギ酸メチルの生成を確認することができた(収率:53%)。
【0111】
実施例34: ギ酸エチルの製造
メタノールの代わりにエタノール(0.79mL,10mmol)を用いた以外は実施例33と同様にして、ギ酸エチルを得た(収率:88%)。
【0112】
実施例35: ギ酸イソプロピルの製造
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)、DMF(1.56mL,20mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、30℃で2時間反応を行った。続いて、光照射を停止し、反応温度を50℃に上げ、15分間攪拌した。
上記反応液を0℃に冷却し、イソプロパノール(0.77mL,10mmol)を加え、常温で12時間攪拌した。次いで、反応液を氷冷した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加え、30分間撹拌した。反応液を分液し、水層をクロロホルムで抽出し、有機層と抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。濃縮物を1H-NMRで分析したところ、ギ酸イソプロピルの生成を確認することができた(収率:28%)。
【0113】
実施例36: ギ酸イソプロピルの製造
イソプロパノールに加えてピリジン(1.6mL,20mmol)を0℃で滴下した以外は実施例35と同様にして、ギ酸イソプロピルを得た(収率:51%)。
【0114】
実施例37: ギ酸フェニルの製造
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)、DMF(1.56mL,20mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、30℃で2時間反応を行った。続いて、光照射を停止し、反応温度を50℃に上げ、15分間攪拌した。
上記反応液を0℃に冷却し、フェノール(0.94g,10mmol)を滴下し、常温で6時間攪拌した。次いで、反応液を氷冷した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加え、30分間撹拌した。反応液を分液し、水層をクロロホルムで抽出し、有機層と抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。濃縮物を1H-NMRで分析したところ、ギ酸フェニルの生成を確認することができた(収率:82%)。
【0115】
実施例38: ギ酸2,2,2-トリフルオロエタノールの製造
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)、DMF(1.56mL,20mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、30℃で2時間反応を行った。続いて、光照射を停止し、反応温度を50℃に上げ、30分間攪拌した。
上記反応液を0℃に冷却し、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.94g,10mmol)を滴下し、常温で12時間攪拌した。次いで、反応液を氷冷した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加え、30分間撹拌した。反応液を分液し、水層をクロロホルムで抽出し、有機層と抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。濃縮物を1H-NMRで分析したところ、ギ酸2,2,2-トリフルオロエタノールの生成を確認することができた(収率:67%)。
【0116】
実施例39: 1,6-ヘキサンジオールジホルメートの製造
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)、DMF(1.56mL,20mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、30℃で2時間反応を行った。続いて、光照射を停止し、反応温度を50℃に上げ、15分間攪拌した。
上記反応液を0℃に冷却し、1,6-ヘキサンジオール(0.59g,5mmol)を滴下し、常温で1時間攪拌した。次いで、反応液を氷冷した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に加え、30分間撹拌した。反応液を分液し、水層をクロロホルムで抽出し、有機層と抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。濃縮物を1H-NMRで分析したところ、1,6-ヘキサンジオールジホルメートの生成を確認することができた(収率:52%)。
【0117】
実施例40: 反応温度の検討
ビルスマイヤー試薬の調製時における反応温度を検討した。具体的には、実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)とDMF(1.56mL,20mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、0~30℃の範囲で温度を調整しつつ、6時間反応を行った。その後、攪拌を中止したところ、反応液は二層に分離した。上層を1H-NMRで分析し、ピーク強度から、DMFからビルスマイヤー試薬への転化率を求めた。結果を表1に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
実施例41: アミド化合物の量の検討
ビルスマイヤー試薬の調製時におけるアミド化合物の最適量を検討した。具体的には、実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)と、0.78~4.68mL(10~60mmol)の範囲のDMFを加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、0~30℃の範囲で温度を調整しつつ、5~27時間反応を行った。その後、攪拌を中止したところ、反応液は二層に分離した。上層を1H-NMRで分析し、ピーク強度から、DMFからビルスマイヤー試薬への転化率を求めた。結果を表2に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
表1,2に示す結果の通り、クロロホルムに対するDMFの量を低減し、また、反応温度を比較的低く設定することにより、ビルスマイヤー試薬の生成効率が高まる傾向が認められた。また、反応温度が低い場合には、有害なハロゲン化合物ガスが反応系外に漏れ難い傾向が認められた。
【0122】
実施例42: 2-ホルミルフランの製造
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)とDMF(0.78mL,10mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、0℃で6時間反応を行った。続いて、反応温度を50℃に上げ、1時間攪拌した。その後、反応容器をアイスバスに浸漬し、アセトン(3mL)に溶解させたフラン(0.73mL,10mmol)を滴下し、20℃で2時間撹拌した。次いで、飽和炭酸ナトリウム水溶液(15mL)を加え、15分間攪拌した。二層に分離した反応液を分液し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層と抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。濃縮物を1H-NMRで分析したところ、溶媒を用いても目的化合物である2-ホルミルフランの生成を確認することができた(収率:30%)。
【0123】
実施例43: 2-ホルミルフランの製造
実施例1の反応容器内に精製クロロホルム(20mL,248mmol)とDMF(0.78mL,10mmol)を加えた。混合溶液の攪拌下、酸素ガスを0.5L/分でバブリングさせつつ、前記低圧水銀ランプにより光照射しながら、0℃で6時間反応を行った。続いて、反応温度を50℃に上げ、1時間攪拌した。その後、反応容器をアイスバスに浸漬し、アセトニトリル(3mL)に溶解させたフラン(0.73mL,10mmol)を滴下し、20℃で2時間撹拌した。次いで、飽和炭酸ナトリウム水溶液(15mL)を加え、15分間攪拌した。二層に分離した反応液を分液し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層と抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濾液を減圧濃縮した。濃縮物を1H-NMRで分析したところ、溶媒としてアセトニトリルを用いても、目的化合物である2-ホルミルフランの生成を確認することができた(収率:48%)。
【符号の説明】
【0124】
1: 光照射手段, 2: ジャケット, 3: ウォーターバス
4: 撹拌子, 5: 熱媒または冷媒, 6: 筒状反応容器
図1