(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】塗布処理方法、塗布処理装置及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20230907BHJP
B05D 1/40 20060101ALI20230907BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230907BHJP
B05C 11/08 20060101ALI20230907BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H01L21/30 564D
B05D1/40 A
B05D3/00 D
B05D3/00 E
B05C11/08
B05C11/10
(21)【出願番号】P 2019167457
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祐作
(72)【発明者】
【氏名】川北 直史
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大樹
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-151249(JP,A)
【文献】特開2012-238838(JP,A)
【文献】特開2015-023257(JP,A)
【文献】特開2002-064049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
B05C 7/00-21/00
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面の中心に成膜液を供給しながら、第1回転速度にて前記基板を回転させ、前記基板の表面に供給された成膜液が前記基板の外周に到達する前に前記成膜液の供給を停止させることと、
前記成膜液の供給が停止した後、第2回転速度にて前記基板の回転を継続させることと、
前記成膜液の供給が停止した後、前記第2回転速度による前記基板の回転が完了するまでの期間の少なくとも一部を含む供給期間において、
冷却ガスと有機溶剤との気液混合の冷却流体を前記基板の裏面の外周部分に供給することと、
少なくとも前記冷却流体を前記基板の裏面の外周部分に供給する際に、前記基板の収容空間の気体を前記基板の裏面より下方の排気口から排出することと、を含
み、
前記排気口からの前記気体の排気量に比較して小さい流量にて前記冷却流体を前記基板の裏面の外周部分に供給する、塗布処理方法。
【請求項2】
前記冷却流体の供給を、前記成膜液の供給が停止した後に開始させる、請求項1記載の塗布処理方法。
【請求項3】
前記冷却流体の供給を、前記基板の回転が停止する前に停止させる、請求項1又は2記載の塗布処理方法。
【請求項4】
前記有機溶剤
はイソプロピルアルコールである、請求項1~3のいずれか一項記載の塗布処理方法。
【請求項5】
前記基板の裏面に近付くにつれて前記基板の外周に近付くように傾斜したラインに沿って、前記基板の裏面の外周部分に前記冷却流体を供給する、請求項1~4のいずれか一項記載の塗布処理方法。
【請求項6】
前記基板の表面の中心に前記成膜液を供給することは、前記基板の表面の中心に向かって開口したノズルに対し、前記成膜液の供給源から、絞り部と、バルブとを順に経て前記成膜液を供給することを含む、請求項1~
5のいずれか一項記載の塗布処理方法。
【請求項7】
サンプル基板の表面の中心に前記成膜液を供給しながら第1回転速度にて前記サンプル基板を回転させ、前記サンプル基板の表面に供給された前記成膜液が前記サンプル基板の外周に到達する前に前記成膜液の供給を停止させることと、前記成膜液の供給が停止した後、第2回転速度にて前記サンプル基板の回転を継続させることと、前記供給期間において前記冷却流体を前記サンプル基板の裏面の外周部分に供給することと、を含むサンプル作成と、前記サンプル作成により前記サンプル基板の表面に形成された被膜の膜厚を測定するサンプル測定とを、前記第1回転速度及び前記供給期間の組み合わせを変更しながら、前記サンプル基板における前記膜厚のばらつきが所定レベル以下となるまで繰り返すことを更に含む、請求項1~
6のいずれか一項記載の塗布処理方法。
【請求項8】
前記サンプル作成と前記サンプル測定とを繰り返すことは、前記供給期間を所定値として前記第1回転速度を変更して、前記サンプル基板における前記膜厚のばらつきを縮小させることを含む、請求項
7記載の塗布処理方法。
【請求項9】
前記サンプル作成と前記サンプル測定とを繰り返すことは、前記第1回転速度を所定値として前記供給期間を変更して、前記サンプル基板における前記膜厚のばらつきを縮小させることを含む、請求項
7又は
8記載の塗布処理方法。
【請求項10】
前記第1回転速度を所定値として前記供給期間を変更して、前記サンプル基板における前記膜厚のばらつきを縮小させることは、前記第1回転速度を所定値として前記供給期間を変更して、前記サンプル基板における前記膜厚の分布を4次以上の偶数次の関数に近付けることを含む、請求項
9記載の塗布処理方法。
【請求項11】
サンプル基板の表面の中心に前記成膜液を供給しながら第1回転速度にて前記サンプル基板を回転させ、前記サンプル基板の表面に供給された前記成膜液が前記サンプル基板の外周に到達する前に前記成膜液の供給を停止させることと、前記成膜液の供給が停止した後、第2回転速度にて前記サンプル基板の回転を継続させることと、前記供給期間において前記冷却流体を前記サンプル基板の裏面の外周部分に供給することとを、前記第1回転速度及び前記供給期間の組み合わせを変更しながら繰り返して複数の前記サンプル基板を作成することと、
前記複数のサンプル基板のそれぞれにおいて、前記表面に形成された被膜の膜厚を測定することと、
前記複数のサンプル基板のそれぞれにおける前記膜厚のばらつきに基づいて、前記膜厚のばらつきを縮小するように前記第1回転速度及び前記供給期間を設定することと、を含む、請求項1~
6のいずれか一項記載の塗布処理方法。
【請求項12】
サンプル基板の表面の中心に成膜液を供給しながら、第1回転速度にて前記サンプル基板を回転させ、前記サンプル基板の表面に供給された前記成膜液が前記サンプル基板の外周に到達する前に前記成膜液の供給を停止させることと、
前記成膜液の供給が停止した後、第2回転速度にて前記サンプル基板の回転を継続させることと、
前記成膜液の供給が停止した後、前記第2回転速度による前記基板の回転が完了するまでの期間の少なくとも一部を含む供給期間において、気液混合の冷却流体を前記サンプル基板の裏面の外周部分に供給することと、
を含むサンプル作成と、
前記サンプル作成により前記サンプル基板の表面に形成された被膜の膜厚を測定するサンプル測定と、
前記第1回転速度を所定値として前記供給期間を変更することと、
を前記サンプル基板における前記膜厚の分布を4次以上の偶数次の関数に近付けるように繰り返して前記供給期間を設定することと、
前記サンプル作成と、
前記サンプル測定と、
前記供給期間を設定済みの値として前記第1回転速度を変更することと、
を前記サンプル基板における前記膜厚のばらつきが所定レベル以下となるまで繰り返して前記第1回転速度を設定することと、
基板の表面の中心に前記成膜液を供給しながら、設定済みの前記第1回転速度にて前記基板を回転させ、前記基板の表面に供給された成膜液が前記基板の外周に到達する前に前記成膜液の供給を停止させることと、
前記成膜液の供給が停止した後、第2回転速度にて前記基板の回転を継続させることと、
設定済みの前記供給期間において前記冷却流体を前記基板の裏面の外周部分に供給することと、を含む塗布処理方法。
【請求項13】
基板を保持して回転させる回転保持部と、
前記回転保持部に保持された前記基板の表面の中心に成膜液を供給する液供給部と、
冷却ガスと有機溶剤との気液混合の冷却流体を前記基板の裏面の外周部分に供給する冷却流体供給部と、
少なくとも前記冷却流体が前記基板の裏面の外周部分に供給される際に、前記基板の収容空間の気体を前記基板の裏面より下方の排気口から排出する排気部と、
前記液供給部により前記基板の表面の中心に前記成膜液を供給させながら第1回転速度にて前記回転保持部により前記基板を回転させ、前記基板の表面に供給された前記成膜液が前記基板の外周に到達する前に、前記液供給部により前記成膜液の供給を停止させる第1塗布制御部と、
前記液供給部による前記成膜液の供給が停止した後、第2回転速度にて前記回転保持部により前記基板の回転を継続させる第2塗布制御部と、
前記液供給部による前記成膜液の供給が停止した後、前記第2回転速度による前記基板の回転が完了するまでの期間の少なくとも一部を含む供給期間において、
前記排気口からの前記気体の排気量に比較して小さい流量にて、前記冷却流体供給部により前記冷却流体を前記基板の裏面の外周部分に供給させる冷却制御部と、を備える塗布処理装置。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項記載の塗布処理方法を塗布処理装置に実行させるためのプログラムを記憶した、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗布処理方法、塗布処理装置及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板を保持する基板保持部と、基板保持部に保持された基板を回転させる回転部と、基板保持部に保持された基板の表面に塗布液を供給する供給部と、基板保持部に保持された基板の上方の所定位置に設けられており、回転部により回転する基板の上方の気流を任意の位置で局所的に変化させる気流制御板と、を有する塗布処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板に形成される被膜の膜厚の面内均一性向上に有効な塗布処理方法及び塗布処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る塗布処理方法は、基板の表面の中心に成膜液を供給しながら、第1回転速度にて基板を回転させ、基板の表面に供給された成膜液が基板の外周に到達する前に成膜液の供給を停止させることと、成膜液の供給が停止した後、第2回転速度にて基板の回転を継続させることと、成膜液の供給が停止した後、第2回転速度による基板の回転が完了するまでの期間の少なくとも一部を含む供給期間において、気液混合の冷却流体を基板の裏面の外周部分に供給することと、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板に形成される被膜の膜厚の面内均一性向上に有効な塗布処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】基板液処理システムの概略構成を例示する模式図である。
【
図2】塗布ユニットの概略構成を例示する模式図である。
【
図3】制御部の機能的な構成を例示するブロック図である。
【
図4】制御部のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【
図5】塗布処理手順を例示するフローチャートである。
【
図6】塗布処理手順を例示するフローチャートである。
【
図7】塗布処理手順を例示するフローチャートである。
【
図8】プリウェット液の塗布におけるウェハの状態を示す模式図である。
【
図9】レジスト液の供給中におけるウェハの状態を示す模式図である。
【
図10】レジスト液の供給停止及び塗広げにおけるウェハの状態を示す模式図である。
【
図11】塗布条件の設定手順を例示するフローチャートである。
【
図12】第1塗布速度と供給期間との自動調節手順を例示するフローチャートである。
【
図13】第1塗布速度の最適化手順を例示するフローチャートである。
【
図14】第1塗布速度の最適化手順を例示するフローチャートである。
【
図15】第1塗布速度と供給期間との自動調節手順の変形例を例示するフローチャートである。
【
図16】第1塗布速度の仮決め手順を例示するフローチャートである。
【
図17】第1塗布速度と供給期間との自動調節手順の変形例を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔基板処理システム〕
図1に示すように、基板処理システム1は、基板に対し、感光性被膜の形成、当該感光性被膜の露光、及び当該感光性被膜の現像を施すシステムである。処理対象の基板は、例えば半導体のウェハWである。感光性被膜は、例えばレジスト膜である。基板処理システム1は、塗布・現像装置2と露光装置3とを備える。露光装置3は、ウェハW(基板)上に形成されたレジスト膜(感光性被膜)の露光処理を行う。具体的には、液浸露光等の方法によりレジスト膜の露光対象部分にエネルギー線を照射する。塗布・現像装置2は、露光装置3による露光処理の前に、ウェハW(基板)の表面にレジスト膜を形成する処理を行い、露光処理後にレジスト膜の現像処理を行う。
【0010】
〔塗布処理装置〕
以下、塗布処理装置の一例として、塗布・現像装置2の構成を説明する。塗布・現像装置2は、キャリアブロック4と、処理ブロック5と、インタフェースブロック6と、制御部100とを備える。
【0011】
キャリアブロック4は、塗布・現像装置2内へのウェハWの導入及び塗布・現像装置2内からのウェハWの導出を行う。例えばキャリアブロック4は、ウェハW用の複数のキャリアCを支持可能であり、受け渡しアームA1を内蔵している。キャリアCは、例えば円形の複数枚のウェハWを収容する。受け渡しアームA1は、キャリアCからウェハWを取り出して処理ブロック5に渡し、処理ブロック5からウェハWを受け取ってキャリアC内に戻す。
【0012】
処理ブロック5は、複数の処理モジュール11,12,13,14を有する。処理モジュール11,12,13は、塗布ユニットU1と、熱処理ユニットU2と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送アームA3とを内蔵している。
【0013】
処理モジュール11は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりウェハWの表面上に下層膜を形成する。処理モジュール11の塗布ユニットU1は、下層膜形成用の成膜液をウェハW上に塗布する。処理モジュール11の熱処理ユニットU2は、下層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0014】
処理モジュール12は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2により下層膜上にレジスト膜を形成する。処理モジュール12の塗布ユニットU1は、レジスト膜形成用の成膜液(以下、「レジスト液」という。)を下層膜の上に塗布する。処理モジュール12の熱処理ユニットU2は、レジスト膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0015】
処理モジュール12は、基板冷却部91と、表面検査部92とを更に有してもよい。基板冷却部91は、塗布ユニットU1がウェハWにレジスト液を塗布する前に、当該ウェハWを冷却する。表面検査部92は、ウェハWの表面Waに形成されたレジスト膜の膜厚に関する情報(以下、「膜厚情報」という。)を取得する。例えば表面検査部92は、膜厚情報の一例として、ウェハWの表面Waの撮像画像における画素値を取得する。画素値とは、画像を構成する画素それぞれの状態を示す数値である。例えば画素値は、画素の色彩の濃淡レベル(例えば白黒画像におけるグレイレベル)を示す数値である。表面Waの撮像画像において、画素値は、画素に対応する撮像対象部分の高さに相関する。すなわち、画素値は、当該撮像対象部分におけるレジスト膜の厚さにも相関する。
【0016】
処理モジュール13は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりレジスト膜上に上層膜を形成する。処理モジュール13の塗布ユニットU1は、上層膜形成用の成膜液をレジスト膜の上に塗布する。処理モジュール13の熱処理ユニットU2は、上層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0017】
処理モジュール14は、現像ユニットU3と、熱処理ユニットU4と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送アームA3とを内蔵している。処理モジュール14は、現像ユニットU3及び熱処理ユニットU4により、露光後のレジスト膜の現像処理を行う。現像ユニットU3は、露光済みのウェハWの表面上に現像液を塗布した後、これをリンス液により洗い流すことで、レジスト膜の現像処理を行う。熱処理ユニットU4は、現像処理に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、現像処理前の加熱処理(PEB:Post Exposure Bake)、現像処理後の加熱処理(PB:Post Bake)等が挙げられる。
【0018】
処理ブロック5内におけるキャリアブロック4側には棚ユニットU10が設けられている。棚ユニットU10は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。棚ユニットU10の近傍には昇降アームA7が設けられている。昇降アームA7は、棚ユニットU10のセル同士の間でウェハWを昇降させる。
【0019】
処理ブロック5内におけるインタフェースブロック6側には棚ユニットU11が設けられている。棚ユニットU11は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。
【0020】
インタフェースブロック6は、露光装置3との間でウェハWの受け渡しを行う。例えばインタフェースブロック6は、受け渡しアームA8を内蔵しており、露光装置3に接続される。受け渡しアームA8は、棚ユニットU11に配置されたウェハWを露光装置3に渡し、露光装置3からウェハWを受け取って棚ユニットU11に戻す。
【0021】
制御部100は、例えば以下の手順で塗布・現像処理を実行するように塗布・現像装置2を制御する。まず制御部100は、キャリアC内のウェハWを棚ユニットU10に搬送するように受け渡しアームA1を制御し、このウェハWを処理モジュール11用のセルに配置するように昇降アームA7を制御する。
【0022】
次に制御部100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール11内の塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2に搬送するように搬送アームA3を制御し、このウェハWの表面上に下層膜を形成するように塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御部100は、下層膜が形成されたウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送アームA3を制御し、このウェハWを処理モジュール12用のセルに配置するように昇降アームA7を制御する。
【0023】
次に制御部100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール12内の塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2に搬送するように搬送アームA3を制御し、このウェハWの下層膜上にレジスト膜を形成するように塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御部100は、ウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送アームA3を制御し、このウェハWを処理モジュール13用のセルに配置するように昇降アームA7を制御する。
【0024】
次に制御部100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール13内の各ユニットに搬送するように搬送アームA3を制御し、このウェハWのレジスト膜上に上層膜を形成するように塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御部100は、ウェハWを棚ユニットU11に搬送するように搬送アームA3を制御する。
【0025】
次に制御部100は、棚ユニットU11のウェハWを露光装置に送り出すように受け渡しアームA8を制御する。その後制御部100は、露光処理が施されたウェハWを露光装置から受け入れて、棚ユニットU11における処理モジュール14用のセルに配置するように受け渡しアームA8を制御する。
【0026】
次に制御部100は、棚ユニットU11のウェハWを処理モジュール14内の各ユニットに搬送するように搬送アームA3を制御し、このウェハWのレジスト膜に現像処理を施すように現像ユニットU3及び熱処理ユニットU4を制御する。その後制御部100は、ウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送アームA3を制御し、このウェハWをキャリアC内に戻すように昇降アームA7及び受け渡しアームA1を制御する。以上で塗布・現像処理が完了する。
【0027】
なお、基板処理装置の具体的な構成は、以上に例示した塗布・現像装置2の構成に限られない。基板処理装置は、塗布ユニットU1と、これを制御可能な制御部100とを備えていればどのようなものであってもよい。
【0028】
〔塗布ユニット〕
続いて、処理モジュール12の塗布ユニットU1の構成を具体的に説明する。
図2に示すように、塗布ユニットU1は、回転保持部20と、液供給部30,40と、ノズル搬送部50,60と、カップ70と、冷却流体供給部80とを有する。
【0029】
回転保持部20は、ウェハWを裏面Wb側から保持して回転させる。例えば回転保持部20は、保持部21と回転駆動部22とを有する。保持部21は、表面Waを上にして水平に配置されたウェハWの中心部(中心を含む部分)を裏面Wb側から支持し、当該ウェハWを例えば真空吸着等により保持する。回転駆動部22は、例えば電動モータ等を動力源として、ウェハWの中心を通る鉛直な軸線まわりに保持部21を回転させる。これによりウェハWも回転する。
【0030】
液供給部30は、回転保持部20に保持されたウェハWの表面Waの中心にレジスト液を供給する。例えば液供給部30は、粘度が5cP以下のレジスト液をウェハWの表面Waに供給する。例えば液供給部30は、ノズル31と、液源32と、バルブ33とを含む。
【0031】
ノズル31は、下方にレジスト液を吐出する。液源32(成膜液の供給源)は、ノズル31にレジスト液を供給する。例えば液源32は、レジスト液を貯留するタンク及びレジスト液を圧送するポンプ等を含む。液源32は、ポンプ等によって、レジスト液の送液圧力を調節し得るように構成されていてもよい。バルブ33は、液源32からノズル31へのレジスト液の流路を開閉する。
【0032】
液供給部30は、液冷却部34と、絞り部35とを更に含んでもよい。液冷却部34は、液源32がノズル31に供給するレジスト液を冷却する。例えば液冷却部34は、液源32において上記タンクに貯留されたレジスト液を冷却する。液冷却部34の具体例としては、空冷式、水冷式、又はヒートポンプ式等の冷却装置が挙げられる。
【0033】
絞り部35は、液源32からノズル31へのレジスト液の送液管路において、液源32とバルブ33との間に設けられている。液供給部30が絞り部35を有する場合、液供給部30によってウェハWの表面Waの中心に成膜液を供給することは、液源32からノズル31、絞り部35と、バルブ33とを順に経て成膜液を供給することを含む。
【0034】
絞り部35は、レジスト液の流路を狭めることによって、上記送液圧力の変化に伴うレジスト液の供給量(単位時間当たりの供給量)の変化を縮小する。以下、送液圧力の変化に伴う供給量の変化の大きさを「供給量の調節分解能」という。絞り部35は、絞り部35を設けた場合の供給量の調節分解能が、絞り部35を設けない場合の供給量の調節分解能に比較して、1/2以下となるように構成されていてもよく、1/3以下となるように構成されていてもよく、1/4以下となるように構成されていてもよい。
【0035】
例えば絞り部35は、上記送液管路の内径に比較して小さい内径の流路を有する。送液管路の内径に対する絞り部35の流路の内径の比率は、例えば5.0~25.0%であり、6.0~20.0%であってもよく、7.5~18.0%であってもよい。絞り部35の具体例としては、オリフィス形の絞りが挙げられるがこれに限られない。絞り部35は、上記供給量の調節分解能を縮小し得る限り、いかなる形状・構造を有していてもよい。
【0036】
液供給部40は、保持部21が保持するウェハWの表面Waにプリウェット液を供給する。例えば液供給部40は、シンナー等の有機溶剤をウェハWの表面Waに供給する。例えば液供給部40は、ノズル41と、液源42と、バルブ43とを含む。
【0037】
ノズル41は、下方にプリウェット液を吐出する。液源42は、ノズル41にプリウェット液を供給する。例えば液源42は、プリウェット液を貯留するタンク及びプリウェット液を圧送するポンプ等を含む。バルブ43は、液源42からノズル41へのプリウェット液の流路を開閉する。バルブ43は、プリウェット液の流路の開度を調節できるように構成されていてもよい。これにより、ノズル41からのプリウェット液の吐出量を調節することが可能となる。
【0038】
ノズル搬送部50は、液供給部30のノズル31を搬送する。例えばノズル搬送部50は、水平搬送部51と、昇降部52とを有する。水平搬送部51は、例えば電動モータ等を動力源としてノズル31を水平な搬送ラインに沿って搬送する。昇降部52は、例えば電動モータ等を動力源としてノズル31を昇降させる。
【0039】
ノズル搬送部60は、液供給部40のノズル41を搬送する。例えばノズル搬送部60は、水平搬送部61と、昇降部62とを有する。水平搬送部61は、例えば電動モータ等を動力源としてノズル41を水平な搬送ラインに沿って搬送する。昇降部62は、例えば電動モータ等を動力源としてノズル41を昇降させる。
【0040】
カップ70は、ウェハWを保持部21と共に収容し、ウェハWから振り切られた各種処理液(例えばレジスト液及びプリウェット液)を回収する。カップ70は、傘部72と、排液部73と、排気部74とを有する。傘部72は、保持部21の下に設けられており、ウェハWから振り切られた各種処理液をカップ70内の外周側の排液領域70aまで導く。排液部73は、傘部72より下方(すなわちウェハWの裏面Wbより下方)にてカップ70内(ウェハWの収容空間)に開口した排液口73aを有し、排液口73aからカップ70外に処理液を排出する。例えば排液口73aは、排液領域70aにおいて傘部72よりも下方に設けられている。このため、傘部72により排液領域70aに導かれた処理液が排液口73aからカップ70外に排出される。
【0041】
排気部74は、保持部21より下方(すなわちウェハWの裏面Wbより下方)にてカップ70内に開口した排気口74aを有し、カップ70内のガス(ウェハWの収容空間の気体)を排気口74aからカップ70外に排出する。例えば排気口74aは、排液領域70aよりも内側の排気領域70bにおいて傘部72よりも下方に設けられている。このため、排液領域70aから排気領域70bに流入したガスが排気口74aからカップ70外に排出される。
【0042】
冷却流体供給部80は、気液混合の冷却流体をウェハWの裏面Wbの外周部分に供給する。これにより、裏面WbのうちウェハWの外周Wcに沿った環状領域が冷却される。例えば、冷却流体供給部80は、ミスト状の冷却液を含む冷却流体をウェハWの裏面Wbの外周部分に供給する。例えば冷却流体供給部80は、噴霧ノズル81と、冷却液供給部82と、冷却ガス供給部83とを有する。
【0043】
噴霧ノズル81は、冷却液に冷却ガスを吹き付けることによって冷却液のミストを吐出する。噴霧ノズル81が冷却液をミストとして供給することにより、冷却液が揮発に至るまでウェハWの裏面Wbの外周部分に留まり易いので、当該外周部分をより効率的に冷却することができる。
【0044】
噴霧ノズル81は、ウェハWの裏面Wbに近付くにつれてウェハWの外周Wcに近付くように傾斜したラインに沿って、ウェハWの裏面Wbの外周部分に冷却流体を供給するように、裏面Wbよりも下方に配置されている。例えば上記ラインに沿った冷却流体の供給方向のベクトルが、鉛直上方に向かうベクトルに対して0~90°の角度をなすように外周Wc側に傾斜していてもよい。上記ラインは、ウェハWの裏面Wbに近付くにつれてウェハWの外周Wcの移動方向に向かうように更に傾斜していてもよい。例えば上記ラインに沿った冷却流体の供給方向のベクトルが、鉛直上方から見て、ウェハWの中心から外方に向かうベクトルに対して0~90°の角度をなすように、ウェハWの回転方向と同じ方向に傾斜していてもよい。これらの傾きによって、冷却流体の付着箇所をよりウェハWの外周部分に集中させることができる。これにより、ウェハWの中心部分の想定外の冷却が抑制される。
【0045】
冷却液供給部82は、噴霧ノズル81に上記冷却液を供給する。冷却液は、例えばイソプロピルアルコール(IPA)、シンナー又はアセトン等の揮発性の溶剤である。特にIPAによれば、その高い揮発性によって、ウェハWの裏面Wbの外周部分をより効率的に冷却することができる。例えば冷却液供給部82は、液源84と、バルブ85とを有する。液源84は、冷却液を貯留するタンク及び冷却液を圧送するポンプ等を含む。バルブ85は、液源84から噴霧ノズル81への冷却液の流路を開閉する。バルブ85は、冷却液の流路の開度を調節できるように構成されていてもよい。これにより、噴霧ノズル81への冷却液の供給量を調節することが可能となる。
【0046】
冷却ガス供給部83は、噴霧ノズル81に上記冷却ガスを供給する。冷却ガスは、例えば窒素ガス等の不活性ガスである。例えば冷却ガス供給部83は、ガス源86と、バルブ87とを有する。ガス源86は、圧縮された冷却ガスを貯留するタンク等を含む。バルブ87は、ガス源86から噴霧ノズル81への冷却ガスの流路を開閉する。バルブ87は、冷却ガスの流路の開度を調節できるように構成されていてもよい。これにより、噴霧ノズル81への冷却ガスの供給量を調節することが可能となる。
【0047】
このように構成された塗布ユニットU1は、制御部100により制御される。制御部100は、液供給部30によりウェハWの表面Waの中心にレジスト液を供給させながら第1回転速度にて回転保持部20によりウェハWを回転させ、表面Waに供給されたレジスト液がウェハWの外周Wcに到達する前に、液供給部30によりレジスト液の供給を停止させることと、液供給部30によるレジスト液の供給が停止した後、第2回転速度にて回転保持部20によりウェハWの回転を継続させることと、液供給部30によるレジスト液の供給が停止した後、第2回転速度によるウェハWの回転が完了するまでの期間の少なくとも一部を含む供給期間において、冷却流体供給部80により冷却流体を裏面Wbの外周部分に供給させることと、を含む塗布制御を実行するように構成されている。
【0048】
図3に例示するように、制御部100は、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、塗布制御部110と、塗布条件記憶部121と、搬送制御部122とを有する。塗布制御部110は、上記塗布制御を行う。例えば塗布制御部110は、より細分化された機能モジュールとして、プリウェット制御部113と、第1塗布制御部114と、ノズル搬送制御部111,112と、第2塗布制御部115と、冷却制御部116とを含む。
【0049】
プリウェット制御部113は、ウェハWの表面Waにプリウェット液を塗布するように液供給部40と回転保持部20とを制御する。例えばプリウェット制御部113は、回転保持部20によりウェハWを所定の回転速度(以下、「第1プリウェット速度」という。)で回転させながら、液供給部40によりウェハWの表面Waの中心にプリウェット液を供給させ、所定量のプリウェット液を供給した後に液供給部40によるプリウェット液の供給を停止させる。
【0050】
その後プリウェット制御部113は、ウェハWを第1プリウェット速度より高い所定の回転速度(以下、「第2プリウェット速度」という。)で回転させることで、プリウェット液をウェハWの外周Wc側に広げさせる。プリウェット制御部113は、余分なプリウェット液が表面Wa上から振り切られるまで、第2プリウェット速度でのウェハWの回転を回転保持部20に継続させる。第1プリウェット速度は、例えば0~100rpmである。第2プリウェット速度は、例えば1000~3000rpmである。
【0051】
第1塗布制御部114は、ウェハWの表面Waのうち外周Wcよりも内側の領域にレジスト液を塗布するように液供給部30及び回転保持部20を制御する。第1塗布制御部114は、液供給部30により表面Waの中心にレジスト液を供給させながら上記第1回転速度(以下、「第1塗布速度」という。)にて回転保持部20によりウェハWを回転させ、表面Waに供給されたレジスト液が外周Wcに到達する前に、液供給部30によりレジスト液の供給を停止させる。
【0052】
第1塗布制御部114は、液供給部30により表面Waの中心にレジスト液を供給させる際に、粘度が5cP以下であるレジスト液を毎秒0.2cc以下の流量でノズル31から吐出させるように液供給部30を制御してもよい。第1塗布速度は、例えば1000~3000rpmである。
【0053】
第1塗布制御部114が液供給部30によりレジスト液の吐出を停止させるタイミングは、当該タイミングにおいてレジスト液が到達する位置がウェハWの中心からウェハWの半径の0.4~1.0倍(0.4~0.9倍であってもよく、0.4~0.8倍であってもよい。)の位置となるように設定されていてもよい。第1塗布制御部114が液供給部30によりレジスト液の吐出を停止させるタイミングは、当該タイミングにおいてレジスト液が上記環状領域(上記冷却流体が供給される領域)に達するように設定されていてもよい。
【0054】
第1塗布制御部114は、液供給部30によりレジスト液の吐出を停止させるタイミングに合わせて、回転保持部20によるウェハWの回転速度を第1塗布速度より低い所定の回転速度(以下、「リフロー速度」という。)まで低下させてもよい。例えば第1塗布制御部114は、レジスト液の吐出停止に先立って回転保持部20によるウェハWの回転速度をリフロー速度まで低下させる。第1塗布制御部114は、レジスト液の吐出停止と同時に回転保持部20によるウェハWの回転速度をリフロー速度まで低下させてもよい。また、第1塗布制御部114は、レジスト液の吐出停止の後に回転保持部20によるウェハWの回転速度をリフロー速度まで低下させてもよい。リフロー速度は、例えば5~200rpmである。
【0055】
ノズル搬送制御部111は、ノズル41からウェハWの表面Waへのプリウェット液の供給前に、水平搬送部61によりノズル41をウェハWの中心の上方に配置するようにノズル搬送部60を制御する。その後ノズル搬送制御部111は、昇降部62によりノズル41を表面Waに近付けるようにノズル搬送部60を制御する。
【0056】
ノズル搬送制御部111は、ノズル41からウェハWの表面Waへのプリウェット液の供給後に、昇降部62によりノズル41を表面Waから遠ざけるようにノズル搬送部60を制御する。その後ノズル搬送制御部111は、水平搬送部61によりウェハWの上方からノズル41を退避させるようにノズル搬送部60を制御する。
【0057】
ノズル搬送制御部112は、ウェハWの表面Waへのプリウェット液の塗布後、表面Waへのレジスト液の供給前に、水平搬送部51によりノズル31をウェハWの中心の上方に配置するようにノズル搬送部50を制御する。その後ノズル搬送制御部112は、表面Waとノズル31との間隔が所定の塗布用間隔となるまで、昇降部52によりノズル31を表面Waに近付けるようにノズル搬送部50を制御する。塗布用間隔は、ノズル31からのレジスト液の吐出を停止させればノズル31と表面Waとの間にレジスト液を保持し得るように設定されていてもよい。例えば塗布用間隔は、ノズル31の内径の3倍以下であってもよいし、ノズル31の内径の2倍以下であってもよい。
【0058】
ノズル搬送制御部112は、ノズル31からウェハWの表面Waへのレジスト液の供給後に、昇降部52によりノズル31を表面Waから遠ざけるようにノズル搬送部50を制御する。その後ノズル搬送制御部112は、水平搬送部51によりウェハWの上方からノズル31を退避させるようにノズル搬送部50を制御する。例えばノズル搬送制御部112は、ウェハWが上記リフロー速度で回転している期間中に、ノズル搬送部50によりノズル31を表面Waから遠ざける。
【0059】
第2塗布制御部115は、液供給部30によるレジスト液の供給が停止した後、上記第2回転速度(以下、「第2塗布速度」という。)にて回転保持部20によりウェハWの回転を継続させる。第2塗布速度はリフロー速度よりも高い。例えば第2塗布制御部115は、上記リフロー速度でのウェハWの回転が所定期間継続した後に、回転保持部20によるウェハWの回転速度をリフロー速度から第2塗布速度まで上昇させ、その後第2塗布速度でのウェハWの回転を回転保持部20により所定期間継続させる。第2塗布速度は、第1塗布速度より低くてもよい。第2塗布速度は、例えば500~2500rpmである。
【0060】
冷却制御部116は、液供給部30によるレジスト液の供給が停止した後、第2塗布速度によるウェハWの回転が完了するまでの期間の少なくとも一部を含む供給期間において、冷却流体供給部80により冷却流体をウェハWの裏面Wbの外周部分に供給させる。冷却制御部116は、冷却流体供給部80による冷却流体の供給を、液供給部30によるレジスト液の供給が停止した後に開始させてもよい。
【0061】
冷却制御部116は、冷却流体供給部80による冷却流体の供給を、第2塗布速度でのウェハWの回転が停止する前に停止させてもよい。冷却制御部116は、第2塗布速度でのウェハWの回転期間(以下、「第2塗布期間」という。)の半分が経過する前に冷却流体供給部80による冷却流体の供給を停止させてもよい。冷却制御部116は、第2塗布期間の1/4が経過する前に冷却流体供給部80による冷却流体の供給を停止させてもよいし、第2塗布期間の1/8が経過する前に冷却流体供給部80による冷却流体の供給を停止させてもよい。
【0062】
冷却制御部116は、排気口74aからの気体の排気量(単位時間あたりの排気体積)に比較して小さい流量(単位時間あたりの供給体積)にて冷却流体を裏面Wbの外周部分に供給してもよい。なお、冷却流体の流量は、上記冷却液と上記冷却ガスとの合計流量を意味する。
【0063】
塗布条件記憶部121は、塗布制御部110による上記塗布制御の実行条件(以下、「塗布条件」という。)を記憶する。塗布条件の具体例としては、上述した第1プリウェット速度、第2プリウェット速度、第1塗布速度、リフロー速度、第2塗布速度、及び供給期間等が挙げられる。搬送制御部122は、レジスト液の塗布対象のウェハWを搬送するように搬送アームA3を制御する。搬送制御部122は、塗布ユニットU1へのウェハWの搬入に先立って、当該ウェハWを基板冷却部91に搬入するように搬送アームA3を制御してもよい。これにより、塗布ユニットU1による処理に先立ってウェハWが冷却される。搬送制御部122は、塗布ユニットU1から搬出されたウェハWを表面検査部92に搬入するように搬送アームA3を制御してもよい。
【0064】
制御部100は、塗布条件記憶部121が記憶する塗布条件の少なくとも一部を自動設定するように構成されていてもよい。例えば制御部100は、機能モジュールとして、膜厚データ取得部123と、基本条件記憶部124と、条件設定部125とを更に有する。
【0065】
膜厚データ取得部123は、上記膜厚情報を表面検査部92から取得する。基本条件記憶部124は、レジスト液の種類ごとに予め設定された複数種類の塗布条件を記憶する。条件設定部125は、レジスト液の種類に対応する塗布条件を塗布条件記憶部121が記憶する複数の塗布条件から選択し、選択した塗布条件(以下、「基本条件」という。)の少なくとも一部を自動調節する。例えば条件設定部125は、基本条件のうち、少なくとも第1塗布速度と供給期間とを自動調節する。
【0066】
一例として、条件設定部125は、条件出し用のウェハW(サンプル基板)の表面Waの中心にレジスト液を供給しながら第1塗布速度にてウェハWを回転させ、サンプル基板の表面Waに供給されたレジスト液がサンプル基板の外周Wcに到達する前にレジスト液の供給を停止させることと、レジスト液の供給が停止した後、第2塗布速度にてサンプル基板の回転を継続させることと、上記供給期間において冷却流体をサンプル基板の裏面Wbの外周部分に供給することと、を含むサンプル作成と、サンプル作成によりサンプル基板の表面Waに形成された被膜の膜厚を測定するサンプル測定とを、第1塗布速度及び供給期間の組み合わせを変更しながら、サンプル基板における膜厚のばらつきが所定レベル以下となるまで繰り返す。
【0067】
サンプル作成において、条件設定部125は、サンプル基板に対する上記塗布制御を塗布制御部110に実行させる。サンプル測定において、条件設定部125は、表面検査部92に搬入されたサンプル基板の膜厚情報を、膜厚データ取得部123により表面検査部92から取得する。また、条件設定部125は、サンプル作成及びサンプル測定の対象となるサンプル基板を搬送するように、搬送制御部122により搬送アームA3を制御する。
【0068】
サンプル作成とサンプル測定とを繰り返すことは、供給期間を所定値として第1塗布速度を変更してサンプル基板における膜厚のばらつきを縮小することを含んでいてもよい。例えばサンプル作成とサンプル測定とを繰り返すことは、供給期間を所定値として第1塗布速度を変更しながらサンプル作成とサンプル測定とを繰り返して、サンプル基板における膜厚のばらつきを最小値に近付けることを含んでいてもよい。ここでの所定値は、サンプル作成の度に変更されてもよい。サンプル作成とサンプル測定とを繰り返すことは、第1塗布速度を所定値として供給時間を変更してサンプル基板における膜厚のばらつきを縮小することを含んでいてもよい。例えばサンプル作成とサンプル測定とを繰り返すことは、第1塗布速度を所定値として供給時間を変更してサンプル基板における膜厚のばらつきを4次以上の偶数次の関数に近付けることを含んでいてもよい。サンプル作成とサンプル測定とを繰り返すことは、第1塗布速度を所定値として供給期間を変更しながらサンプル作成とサンプル測定とを繰り返して、サンプル基板における膜厚の分布を4次関数に近付けることを含んでいてもよい。ここでの所定値は、サンプル作成の度に変更されてもよい。
【0069】
条件設定部125は、第1塗布速度及び供給期間の組み合わせを変更しながら上記サンプル作成を繰り返して複数のサンプル基板を作成することと、複数のサンプル基板のそれぞれにおいて、表面Waに形成された被膜の膜厚を測定する(すなわち上記「サンプル測定」を実行する)ことと、複数のサンプル基板のそれぞれにおける膜厚のばらつきに基づいて、膜厚のばらつきを縮小するように第1塗布速度及び供給期間を設定することと、を実行してもよい。例えば条件設定部125は、複数のサンプル基板のそれぞれにおける膜厚のばらつきに基づいて、膜厚のばらつきと第1塗布速度及び供給期間との関係を関数化し、得られた関数に基づいて膜厚のばらつきを最小値に近付ける第1塗布速度及び供給期間を導出してもよい。
【0070】
図4は、制御部100のハードウェア構成を示すブロック図である。制御部100は、一つ又は複数の制御用コンピュータにより構成される。
図4に示すように、制御部100は、回路190を有する。回路190は、少なくとも一つのプロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、タイマ194と、入出力ポート195とを含む。ストレージ193は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。ストレージ193は、液供給部30によりウェハWの表面Waの中心にレジスト液を供給させながら第1塗布速度にて回転保持部20によりウェハWを回転させ、表面Waに供給されたレジスト液がウェハWの外周Wcに到達する前に、液供給部30によりレジスト液の供給を停止させることと、液供給部30によるレジスト液の供給が停止した後、第2塗布速度にて回転保持部20によりウェハWの回転を継続させることと、液供給部30によるレジスト液の供給が停止した後、第2塗布速度によるウェハWの回転が完了するまでの期間の少なくとも一部を含む供給期間において、冷却流体供給部80により冷却流体を裏面Wbの外周部分に供給させることと、を制御部100に実行させるためのプログラムを記憶している。例えばストレージ193は、上述した制御部100の各機能モジュールを制御部100により構成するためのプログラムを記憶していてもよい。
【0071】
メモリ192は、ストレージ193の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ191による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ191は、メモリ192と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。タイマ194は、例えば一定周期の基準パルスをカウントすることで経過時間を計測する。入出力ポート195は、プロセッサ191からの指令に従って、回転保持部20、液供給部30,40、ノズル搬送部50,60、冷却流体供給部80、表面検査部92及び搬送アームA3との間で電気信号の入出力を行う。
【0072】
なお、制御部100のハードウェア構成は、必ずしもプログラムにより各機能モジュールを構成するものに限られない。例えば制御部100の上記機能モジュールの少なくとも一部は、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0073】
〔塗布処理手順〕
以下、塗布処理方法の一例として、処理モジュール12において実行される塗布処理手順を説明する。この塗布処理手順は、ウェハWの表面Waの中心にレジスト液を供給しながら、第1塗布速度にてウェハWを回転させ、表面Waに供給されたレジスト液がウェハWの外周Wcに到達する前にレジスト液の供給を停止させることと、レジスト液の供給が停止した後、第2塗布速度にてウェハWの回転を継続させることと、レジスト液の供給が停止した後、第2塗布速度によるウェハWの回転が完了するまでの期間の少なくとも一部を含む供給期間において、上記冷却流体をウェハWの裏面Wbの外周部分に供給することと、を含む。
【0074】
上述した塗布ユニットU1において、冷却流体供給部80による冷却流体の供給は、カップ70内のガスが排気部74によりカップ70外に排出されている状態で行われる。このため、塗布ユニットU1における塗布処理手順は、少なくとも冷却流体をウェハWの裏面Wbの外周部分に供給する際に、ウェハWの収容空間の気体をウェハWの裏面Wbより下方の排気口74aから排出することを更に含む。
【0075】
また、上述した塗布ユニットU1において、レジスト液は、絞り部35とバルブ33とを順に経て液源32からノズル31に供給される。このため、ウェハWの表面Waの中心にレジスト液を供給することは、ノズル31に対し、液源32から、絞り部35と、バルブ33とを順に経て成膜液を供給することを含む。更に、上述した塗布ユニットU1においては、液源32のタンクにおいてレジスト液が冷却される。このため、塗布ユニットU1における塗布処理手順は、ウェハWに供給されるレジスト液を冷却することを含む。
【0076】
図5に示すように、制御部100は、まずステップS01,S02,S03,S04,S05,S06,S07,S08,S09,S11を順に実行する。ステップS01では、搬送制御部122が、ウェハWを基板冷却部91に搬入するように搬送アームA3を制御する。ステップS02では、搬送制御部122が、ウェハWを基板冷却部91から搬出するように搬送アームA3を制御する。ステップS03では、搬送制御部122が、基板冷却部91から搬出したウェハWを塗布ユニットU1に搬入し、保持部21上に設置するように搬送アームA3を制御する。
【0077】
ステップS04では、搬送制御部122が、搬送アームA3により保持部21上に設置されたウェハWを保持部21により保持させるように回転保持部20を制御する。ステップS05では、ノズル搬送制御部111が、水平搬送部61によりノズル41をウェハWの中心の上方に配置するようにノズル搬送部60を制御する。その後ノズル搬送制御部111は、昇降部62によりノズル41を表面Waに近付けるようにノズル搬送部60を制御する(
図8の(a)参照)。
【0078】
ステップS06では、プリウェット制御部113が、回転保持部20により、上記第1プリウェット速度ω1でのウェハWの回転を開始させる。ステップS07では、プリウェット制御部113が、液供給部40によりウェハWの表面Waに所定量のプリウェット液を供給させる(
図8の(b)参照)。ステップS08では、プリウェット制御部113が、回転保持部20により、ウェハWの回転速度を上記第1プリウェット速度ω1から第2プリウェット速度ω2に上昇させる。これにより、ノズル41からウェハWの表面Waに供給されたプリウェット液が遠心力でウェハWの外周Wc側に広がり、余分なプリウェット液がウェハWの周囲に振り切られる(
図8の(c)参照)。
【0079】
ステップS09では、ノズル搬送制御部111が、昇降部62によりノズル41を表面Waから遠ざけ、水平搬送部61によりウェハWの上方からノズル41を退避させるようにノズル搬送部60を制御する。ステップS11では、プリウェット制御部113が、ウェハWが第2プリウェット速度ω2での回転を開始したタイミングを基準として所定時間が経過するのを待機する。所定時間は、余分なプリウェット液が十分に振り切られるように、事前の実機試験又はシミュレーション等により設定されている。
【0080】
次に、制御部100は、
図6に示すようにステップS12,S13,S14,S15,S16,S17,S18,S19,S21を順に実行する。ステップS12では、第1塗布制御部114が、回転保持部20により、ウェハWの回転速度を上記第2プリウェット速度ω2から第1塗布速度ω3に変更する。ステップS13では、ノズル搬送制御部112が、水平搬送部51によりノズル31をウェハWの中心の上方に配置するようにノズル搬送部50を制御する(
図9の(a)参照)。ステップS14では、ノズル搬送制御部112が、表面Waとノズル31との間隔が上記塗布用間隔となるまで、昇降部52によりノズル31を表面Waに近付けるようにノズル搬送部50を制御する(
図9の(b)参照)。
【0081】
ステップS15では、ウェハWの表面Waとノズル31との間隔が上記塗布用間隔に保たれた状態で、第1塗布制御部114が、液供給部30により、ノズル31からウェハWの表面Waへのレジスト液の供給を開始させる(
図9の(c)参照)。ステップS16では、ノズル31からのレジスト液の吐出が開始したタイミングを基準として所定時間が経過するのを第1塗布制御部114が待機する。所定時間は、レジスト膜の膜厚を目標膜厚とするのに十分な量のレジスト液を供給し得るように、事前の実機試験又はシミュレーション等により設定されている。
【0082】
ステップS17では、第1塗布制御部114が、回転保持部20により、ウェハWの回転速度を上記第1塗布速度ω3から上記リフロー速度ω4に低下させる。ステップS18では、第1塗布制御部114が、液供給部30により、ノズル31からのレジスト液の吐出を停止させる。ステップS19では、ノズル搬送制御部112が、昇降部52によりノズル31を表面Waから遠ざけるようにノズル搬送部50を制御する(
図10の(a)参照)。ステップS21では、ノズル搬送制御部112が、水平搬送部51によりウェハWの上方からノズル31を退避させるようにノズル搬送部50を制御する。
【0083】
次に、制御部100は、
図7に示すようにステップS22,S23,S24,S25,S26,S27,S28,S29を実行する。ステップS22では、第2塗布制御部115が、回転保持部20により、ウェハWの回転速度を上記リフロー速度ω4から第2塗布速度ω5に上昇させる。ステップS23では、冷却制御部116が、冷却流体供給部80による冷却流体の供給を開始させる(
図10の(b)参照)。
【0084】
ステップS24では、冷却制御部116が、ウェハWが第2塗布速度ω5での回転を開始したタイミングを基準として所定時間が経過するのを待機する。所定時間は、レジスト膜の膜厚の均一性を向上させる観点で、事前の実機試験又はシミュレーション等により設定されている。ステップS25では、冷却制御部116が、冷却流体供給部80により、噴霧ノズル81からウェハWの裏面Wbへの冷却流体の供給を停止させる。
【0085】
ステップS26では、第2塗布制御部115が、ウェハWが第2塗布速度での回転を開始したタイミングを基準として所定時間が経過するのを待機する。この間も、外周Wc側へのレジスト液の広がりが継続し、余分なレジスト液が表面Wa上から振り切られる(
図10の(c)参照)。所定時間は、レジスト膜の膜厚の均一性を向上させる観点で、事前の実機試験又はシミュレーション等により設定されている。ステップS27では、第1塗布制御部114が、回転保持部20によりウェハWの回転を停止させる。
【0086】
ステップS28では、搬送制御部122が、保持部21によりウェハWを解放させるように回転保持部20を制御する。ステップS29では、搬送制御部122が、ウェハWを塗布ユニットU1から搬出するように搬送アームA3を制御する。その後搬送制御部122は、塗布ユニットU1から搬出したウェハWを表面検査部92に搬入するように搬送アームA3を制御してもよい。以上で塗布処理手順が完了する。
【0087】
〔塗布条件の設定手順〕
上述したように、制御部100は、塗布条件記憶部121が記憶する塗布条件の少なくとも一部を自動設定するように構成されていてもよい。以下、塗布条件の設定手順を例示する。
【0088】
図11に示すように、制御部100は、ステップS31,S32,S33を順に実行する。ステップS31では、条件設定部125が、レジスト液の種類を示す情報を取得する。レジスト液の種類を示す情報は、例えば操作者によって制御部100に入力される。ステップS32では、条件設定部125が、レジスト液の種類に対応する塗布条件(上記基本条件)を塗布条件記憶部121が記憶する複数の塗布条件から選択する。ステップS33では、条件設定部125が、基本条件の少なくとも一部を自動調節する。例えば条件設定部125は、基本条件のうち、第1塗布速度と供給期間とを自動調節する。以上で塗布条件の設定手順が完了する。
【0089】
図12は、ステップS33における第1塗布速度と供給期間との自動調節手順を例示するフローチャートである。
図12に示すように、制御部100は、まずステップS41,S42,S43を実行する。ステップS41では、条件設定部125が、基本条件における供給期間をゼロに設定する。ステップS42では、条件設定部125が、サンプル基板における膜厚のばらつきを最小値に近付けるように第1塗布速度(第1回転速度)を設定する。以下、これを「第1塗布速度の最適化」という。第1塗布速度の最適化手順の具体例については後述する。ステップS43では、ステップS42において設定された第1塗布速度における膜厚のばらつきが許容最大値未満であるか否かを条件設定部125が確認する。
【0090】
ステップS43において膜厚のばらつきが許容最大値以上であると判定した場合、制御部100はステップS44を実行する。ステップS44では、条件設定部125が、基本条件における供給期間に、予め設定された1ピッチ分の調節値を加算する。その後、制御部100は処理をステップS42に戻す。以後、膜厚のばらつきが許容最大値未満となるまで、供給期間の変更と、変更後の供給期間に対する第1塗布速度の最適化とが繰り返される。ステップS43において膜厚のばらつきが許容最大値未満であると判定した場合、第1塗布速度及び供給期間の自動調節が完了する。
【0091】
図13は、第1塗布速度の最適化手順を例示するフローチャートである。
図13に示すように、制御部100は、まずステップS51,S52,S53,S54,S55,S56,S57,S58を実行する。ステップS51では、条件設定部125が、上記サンプル基板を基板冷却部91から塗布ユニットU1に順次搬送するように、搬送制御部122により搬送アームA3を制御し、当該サンプル基板に対する上記塗布制御を塗布制御部110に実行させる。
【0092】
ステップS52では、条件設定部125が、塗布制御後のサンプル基板を表面検査部92に搬送するように、搬送制御部122により搬送アームA3を制御し、表面検査部92に搬入されたサンプル基板の膜厚情報を、膜厚データ取得部123により表面検査部92から取得する。
【0093】
ステップS53では、条件設定部125が、ステップS52において取得した膜厚情報に基づいて、膜厚のばらつきを算出する。例えば条件設定部125は、サンプル基板の複数箇所における膜厚の標準偏差に基づいて、膜厚のばらつきを算出する。より具体的に、条件設定部125は、上記標準偏差の3倍を膜厚のばらつきを示す数値として算出する。
【0094】
ステップS54では、条件設定部125が、第1塗布速度(第1回転速度)に、予め設定された1ピッチ分の調節値を加算する。ステップS55,S56,S57では、条件設定部125が、次のサンプル基板に対して、ステップS51,S52,S53と同様の処理を実行し、当該他のサンプル基板に対して膜厚のばらつきを算出する。ステップS58では、ステップS57において算出した膜厚のばらつきが、ステップS53において算出した膜厚のばらつきに対して増加したか否かを条件設定部125が確認する。
【0095】
ステップS58において、ステップS57において算出した膜厚のばらつきがステップS53において算出した膜厚のばらつきに対して増加したと判定した場合、制御部100はステップS59を実行する。ステップS59では、条件設定部125が、上記調節値の加算による第1塗布速度の増減方向を変更する。例えば条件設定部125は、調節値の符号を反転させる。
【0096】
図14に示すように、制御部100は、次に、ステップS61を実行する。ステップS58において、ステップS57において算出した膜厚のばらつきがステップS53において算出した膜厚のばらつきに対して増加していないと判定した場合、制御部100は、ステップS59を実行することなくステップS61を実行する。ステップS61では、条件設定部125が、第1塗布速度に、予め設定された1ピッチ分の調節値を加算する。
【0097】
制御部100は、次にステップS62,S63,S64,S65を実行する。ステップS62,S63,S64では、条件設定部125が、次のサンプル基板に対して、ステップS51,S52,S53と同様の処理を実行し、当該次のサンプル基板に対して膜厚のばらつきを算出する。ステップS65では、次のサンプル基板の膜厚のばらつきが、前回算出した膜厚のばらつきに対して増加したか否かを条件設定部125が確認する。
【0098】
ステップS65において、次のサンプル基板の膜厚のばらつきが、前回算出した膜厚のばらつきに対して増加していないと判定した場合、制御部100は処理をステップS61に戻す。以後、膜厚のばらつきが減少する限り、第1塗布速度に対する調節値の加算と、上記サンプル作成、サンプル測定及び膜厚のばらつきの算出が繰り返される。
【0099】
ステップS65において次のサンプル基板の膜厚のばらつきが、前回算出した膜厚のばらつきに対して増加していると判定した場合、制御部100はステップS66を実行する。ステップS66では、条件設定部125が、第1塗布速度から、1ピッチ分の調節値を減算する。以上で第1塗布速度の最適化手順が完了する。
【0100】
図15は、ステップS33における第1塗布速度と供給期間との自動調節手順の変形例を示すフローチャートである。
図15に示すように、制御部100は、まずステップS71,S72,S73,S74,S75,S76,S77を実行する。ステップS71では、条件設定部125が、基本条件における供給期間をゼロに設定する。ステップS72では、条件設定部125が、後述する供給期間の最適化を図り易くするように、第1塗布速度を仮決めする。第1塗布速度の仮決め手順については後述する。ステップS73では、条件設定部125が、ステップS51と同様にサンプル作成を行う。ステップS74では、条件設定部125が、ステップS52と同様にサンプル測定を行う。
【0101】
ステップS75では、条件設定部125が、サンプル測定において得られた膜厚分布に対し、4次関数のフィッティングを行う。具体的には、条件設定部125は、ウェハWの中心からの距離と膜厚との関係(以下、「膜厚プロファイル」という。)に最も近似する4次関数を導出する。ステップS76では、条件設定部125が、膜厚プロファイルと4次関数との差分を導出する。
【0102】
ここで、ステップS75においては、膜厚プロファイルの一部領域に対して4次関数のフィッティングを行い、ステップS76においては、上記一部領域の範囲外において膜厚プロファイルと4次関数との差分を導出してもよい。例えば条件設定部125は、ステップS75において、ウェハWの中心から外周Wc近傍の所定位置までの範囲の膜厚プロファイルに最も近似する4次関数を導出する。この場合、条件設定部125は、ステップS76において、上記所定位置よりも外側において膜厚プロファイルと4次関数との差分を導出する。条件設定部125は、膜厚プロファイルの全域に対して4次関数のフィッティングを行い、膜厚プロファイルと4次関数との全域における差分の二乗和または二乗和の平方根等を算出してもよい。
【0103】
ステップS77では、膜厚プロファイルと4次関数との差分が、前回算出した差分に対して増加したか否かを条件設定部125が確認する。
【0104】
ステップS77において膜厚プロファイルと4次関数との差分が、前回算出した差分に対して増加していないと判定した場合、制御部100はステップS78を実行する。ステップS78では、条件設定部125が、供給期間に1ピッチ分の上記調節値を加算する。その後、制御部100は処理をステップS72に戻す。以後、膜厚プロファイルと4次関数との差分が減少する限り、供給期間に対する上記調節値の加算と、上記サンプル作成、サンプル測定、4次関数のフィッティング、及び差分の導出が繰り返される。
【0105】
ステップS77において、膜厚プロファイルと4次関数との差分が、前回算出した差分に対して増加していると判定した場合、制御部100はステップS79を実行する。ステップS79では、条件設定部125が、供給期間から、1ピッチ分の調節値を減算する。ステップS71~S79によって、膜厚プロファイルと4次関数との差分を最小値に近付けるように供給期間が設定される。以下、これを「供給期間の最適化」という。
【0106】
次に、制御部100はステップS81を実行する。ステップS81では、条件設定部125が、上記供給期間の最適化により設定された供給期間に対する第1塗布速度を最適化する。第1塗布速度の最適化手順は、
図13及び
図14で例示した手順と同じである。以上で第1塗布速度及び供給期間の自動調節が完了する。
【0107】
図16は、ステップS72における第1塗布速度の仮決め手順を例示するフローチャートである。この手順は、第1塗布速度の複数の候補が予め定められた状態で実行される。
図16に示すように、制御部100は、まずステップS91,S92,S93,S94,S95を実行する。ステップS91では、条件設定部125が、第1塗布速度を複数の候補における最小の候補に設定する。ステップS92,ステップS93,ステップS94では、条件設定部125が、次のサンプル基板に対して、ステップS51,S52,S53と同様の処理を実行し、当該次のサンプル基板に対して膜厚のばらつきを算出する。ステップS95では、条件設定部125が、全候補について、サンプル作成、サンプル測定及び膜厚のばらつきの算出が完了したか否かを確認する。
【0108】
ステップS95においてサンプル作成、サンプル測定及び膜厚のばらつきの算出が完了していない候補が残っていると判定した場合、制御部100はステップS96を実行する。ステップS96では、条件設定部125が、第1塗布速度を複数の候補における次の候補に設定する。その後、制御部100は処理をステップS92に戻す。以後、全候補について膜厚のばらつきの算出が完了するまで、第1塗布速度の変更、サンプル作成、サンプル測定及び膜厚のばらつきの算出が繰り返される。
【0109】
ステップS95において全候補についてサンプル作成、サンプル測定及び膜厚のばらつきの算出が完了したと判定した場合、制御部100はステップS97を実行する。条件設定部125は、第1塗布速度を、膜厚のばらつきが最小であった候補に仮決めする。以上で第1塗布速度の仮決め手順が完了する。
【0110】
図17は、ステップS33における第1塗布速度と供給期間との自動調節手順の変形例を示すフローチャートである。この手順は、第1塗布速度及び供給期間の複数の組み合わせが予め定められた状態で実行される。
図17に示すように、制御部100はまずステップS101,S102,S103,S104,S105を実行する。ステップS101では、条件設定部125が、複数の組み合わせから最初の組み合わせを選択する。ステップS102,S103,S104では、条件設定部125が、次のサンプル基板に対して、ステップS51,S52,S53と同様の処理を実行し、当該次のサンプル基板に対して膜厚のばらつきを算出する。ステップS105では、全組み合わせについて、サンプル作成、サンプル測定及び膜厚のばらつきの算出が完了したか否かを条件設定部125が確認する。
【0111】
ステップS105においてサンプル作成、サンプル測定及び膜厚のばらつきの測定が完了していない組み合わせが残っていると判定した場合、制御部100はステップS106を実行する。ステップS106では、条件設定部125が、複数の組み合わせから次の組み合わせを選択する。その後、制御部100は処理をステップS102に戻す。以後、全組み合わせについて膜厚のばらつきの算出が完了するまで、次の組み合わせの選択、サンプル作成、サンプル測定及び膜厚のばらつきの算出が繰り返される。
【0112】
ステップS105において全組み合わせについてサンプル作成、サンプル測定及び膜厚のばらつきの測定が完了したと判定した場合、制御部100はステップS107を実行する。ステップS107では、条件設定部125が、複数の組み合わせのそれぞれにおける膜厚のばらつきに基づいて、膜厚のばらつきを縮小するように第1塗布速度及び供給期間を設定する。例えば条件設定部125は、複数の組み合わせのそれぞれにおける膜厚のばらつきに基づいて、膜厚のばらつきと第1塗布速度及び供給期間との関係を関数化し、得られた関数に基づいて膜厚のばらつきを最小値に近付ける第1塗布速度及び供給期間を導出する。以上で第1塗布速度及び供給期間の自動調節が完了する。
【0113】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、塗布処理方法は、ウェハWの表面Waの中心に成膜液を供給しながら、第1塗布速度にてウェハWを回転させ、ウェハWの表面Waに供給された成膜液がウェハWの外周Wcに到達する前に成膜液の供給を停止させることと、成膜液の供給が停止した後、第2塗布速度にてウェハWの回転を継続させることと、成膜液の供給が停止した後、第2塗布速度によるウェハWの回転が完了するまでの期間の少なくとも一部を含む供給期間において、気液混合の冷却流体をウェハWの裏面Wbの外周部分に供給することと、を含む。
【0114】
この塗布処理方法によれば、ウェハWの表面Waの中心に成膜液を供給しながら、第1塗布速度にてウェハWを回転させ、ウェハWの表面Waに供給された成膜液がウェハWの外周Wcに到達する前に成膜液の供給を停止させることで、ウェハWの外周Wcよりも内側の領域に成膜液の液膜が形成される。その後、ウェハWが第2塗布速度で回転することによって、液膜がウェハWの外周Wcまで広げられる。
【0115】
ウェハWが回転すると、液膜の外周部分は、液膜の中心部分に比較して高速で移動する。このため、液膜の中心部分に比較して液膜の外周部分においては成膜液の乾燥が進行し易く、液膜の流動性が低下し易い。液膜の中心部分に比較して外周部分の流動性が低下すると、液膜中の成膜液が外周部分に偏り、これにより膜厚の面内均一性が低下する場合がある。特に、成膜液の供給が停止した後においては、外周部分における流動性の低下と、これに起因する膜厚の面内均一性の低下が生じ易い。
【0116】
これに対し、本塗布処理方法によれば、成膜液の供給が停止した後、第2塗布速度によるウェハWの回転が完了するまでの期間の少なくとも一部の期間において、気液混合の冷却流体がウェハWの裏面Wbの外周部分に供給される。これにより、ウェハWの外周部分が効率よく冷却されるので、成膜液の供給が停止した後においても、外周部分における流動性の低下が抑制される。従って、膜厚の面内均一性向上に有効である。
【0117】
本実施形態の効果を確認すべく、以下2つのサンプルを作成し、膜厚のばらつきを比較した。
サンプル1)上述したステップS01~S29の手順に従って、ウェハWの表面Waにレジスト膜を形成した。レジスト液の流量を、毎秒0.2ccとした。第1塗布速度及び供給期間については、膜厚のばらつきを最小値に近付けるように予め設定された値とした。
サンプル2)ウェハWの冷却、液源32におけるレジスト液の冷却、及びウェハWの裏面Wbの外周部分に対する冷却流体の供給を行わず、その他はステップS01~S29と同じ手順に従って、ウェハWの表面Waにレジスト膜を形成した。レジスト液の流量を、毎秒0.2ccとした。第1塗布速度については、膜厚のばらつきを最小値に近付けるように予め設定された値とした。
【0118】
サンプル1における膜厚のばらつきと、サンプル2における膜厚のばらつきとを測定した結果、サンプル1における膜厚のばらつきは、サンプル2における膜厚のばらつきの約15%であった。この結果から、ウェハWの冷却、液源32におけるレジスト液の冷却、及びウェハWの裏面Wbの外周部分に対する冷却流体の供給によって、膜厚のばらつきが大幅に低減されていることが確認された。
【0119】
冷却流体の供給を、成膜液の供給が停止した後に開始させてもよい。この場合、成膜液の供給が停止するまでの間に、液膜の外周部分における成膜液の乾燥を適度に進行させることで、より多くの成膜液をウェハW上に留めることができる。これにより、液膜の膜厚が過小となることが抑制される。
【0120】
冷却流体の供給を、ウェハWの回転が停止する前に停止させてもよい。冷却流体の供給によれば、ウェハWの外周部分における成膜液の流動性低下が抑制される反面で、成膜液の乾燥は遅延する。これに対し、ウェハWの回転が停止する前に冷却流体の供給を停止することによって、膜厚の均一性と、成膜液の乾燥効率との両立を図ることができる。
【0121】
冷却流体は有機溶剤を含んでいてもよい。この場合、ウェハWの外周部分をより効果的に冷却することができる。従って、膜厚の面内均一性向上に更に有効である。
【0122】
ウェハWの裏面Wbに近付くにつれてウェハWの外周Wcに近付くように傾斜したラインに沿って、ウェハWの裏面Wbの外周部分に冷却流体を供給してもよい。この場合、冷却流体による冷却作用をウェハWの外周部分に更に集中させることができる。従って、膜厚の面内均一性向上に更に有効である。
【0123】
塗布処理方法は、少なくとも冷却流体をウェハWの裏面Wbの外周部分に供給する際に、ウェハWの収容空間の気体をウェハWの裏面Wbより下方の排気口74aから排出することを更に含み、排気口74aからの気体の排気量に比較して小さい流量にて冷却流体をウェハWの裏面Wbの外周部分に供給してもよい。この場合、ウェハWの表面Wa側に回り込んだ冷却流体によって液膜が変質することを抑制することができる。
【0124】
ウェハWの表面Waの中心に成膜液を供給することは、ウェハWの表面Waの中心に向かって開口したノズル31に対し、液源32から、絞り部35と、バルブ33とを順に経て成膜液を供給することを含んでいてもよい。ノズル31から吐出される成膜液の量(以下、「吐出量」という。)は、液源32からの成膜液の供給圧力のばらつきに応じてばらつく。吐出量のばらつきは、膜厚の面内均一性に影響する。これに対し、絞り部35を介して成膜液を供給することによって、供給圧力のばらつきに応じた吐出量のばらつきが抑制される。また、絞り部35がバルブ33よりも上流(液源32側)に配置されることによって、バルブ33の開閉時における吐出量のオーバーシュートも抑制される。従って、膜厚の面内均一性向上に更に有効である。
【0125】
塗布処理方法は、サンプル基板の表面の中心に成膜液を供給しながら第1塗布速度にてサンプル基板を回転させ、サンプル基板の表面に供給された成膜液がサンプル基板の外周に到達する前に成膜液の供給を停止させることと、成膜液の供給が停止した後、第2塗布速度にてサンプル基板の回転を継続させることと、供給期間において冷却流体をサンプル基板の裏面の外周部分に供給することと、を含むサンプル作成と、サンプル作成によりサンプル基板の表面に形成された被膜の膜厚を測定するサンプル測定とを、第1塗布速度及び供給期間の組み合わせを変更しながら、サンプル基板における膜厚のばらつきが所定レベル以下となるまで繰り返すことを更に含んでいてもよい。膜厚の面内均一性には、第1塗布速度及び供給期間が大きく影響する。これに対し、上記サンプル作成とサンプル測定とを、サンプル基板における膜厚のばらつきが所定レベル以下となるまで繰り返すことにより、第1塗布速度と供給期間を適切に設定することができる。従って、膜厚の面内均一性の向上に更に有効である。
【0126】
サンプル作成とサンプル測定とを繰り返すことは、供給期間を所定値として第1塗布速度を変更して、サンプル基板における膜厚のばらつきを最小値に近付けることを含んでいてもよく、第1塗布速度を所定値として供給期間を変更して、サンプル基板における膜厚のばらつきを縮小させることを含んでいてもよい。この場合、第1塗布速度と供給期間とをより効率的に設定することができる。
【0127】
第1塗布速度を所定値として供給期間を変更して、サンプル基板における膜厚のばらつきを縮小させることは、第1塗布速度を所定値として供給期間を変更して、サンプル基板における膜厚の分布を4次以上の偶数次の関数に近付けることを含んでいてもよい。第1塗布速度が最適化される前の段階における膜厚プロファイルは、ウェハWの中心からある距離の位置まで膜厚が徐々に厚くなり、当該位置から外周Wcまで膜厚が徐々に小さくなるプロファイルとなる傾向がある。そして、当該プロファイルを4次以上の偶数次の関数(特に4次関数)に近付けておくことにより、第1塗布速度の最適化後の膜厚ばらつきが小さくなる傾向がある。従って、第1塗布速度を所定値として供給期間を変更しながらサンプル作成とサンプル測定とを繰り返す際に、膜厚の分布を4次以上の偶数次の関数に近付けておくことで、第1塗布速度と供給期間とをより効率的に設定することができる。
【0128】
塗布処理方法は、サンプル基板の表面の中心に成膜液を供給しながら第1塗布速度にてサンプル基板を回転させ、サンプル基板の表面に供給された成膜液がサンプル基板の外周に到達する前に成膜液の供給を停止させることと、成膜液の供給が停止した後、第2塗布速度にてサンプル基板の回転を継続させることと、供給期間において冷却流体をサンプル基板の裏面の外周部分に供給することとを、第1塗布速度及び供給期間の組み合わせを変更しながら繰り返して複数のサンプル基板を作成することと、複数のサンプル基板のそれぞれにおいて、表面に形成された被膜の膜厚を測定することと、複数のサンプル基板のそれぞれにおける膜厚のばらつきに基づいて、膜厚のばらつきを縮小するように第1塗布速度及び供給期間を設定することと、を含んでいてもよい。この場合、第1塗布速度及び供給期間と、膜厚のばらつきとの関係を示すデータに基づくことで、第1塗布速度と供給期間を適切に設定することができる。従って、膜厚の面内均一性の向上に更に有効である。
【0129】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。処理対象の基板は、半導体ウェハに限られず、例えばガラス基板、マスク基板、FPD(Flat Panel Display)等であってもよい。上述した塗布処理方法は、レジスト膜以外(例えば上述した下層膜及び上層膜)の成膜にも適用可能である。
【符号の説明】
【0130】
2…塗布・現像装置(塗布処理装置)、20…回転保持部、30…液供給部、31…ノズル、32…液源(成膜液の供給源)、33…バルブ、35…絞り部、74a…排気口、80…冷却流体供給部、114…第1塗布制御部、115…第2塗布制御部、116…冷却制御部、W…ウェハ(基板)、Wa…表面、Wb…裏面、Wc…外周。