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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/472 20060101AFI20230907BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
A61F13/472 200
A61F13/533 100
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019230885
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021097854
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003247
【氏名又は名称】弁理士法人小澤知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺原 夏穂
(72)【発明者】
【氏名】木下 英之
(72)【発明者】
【氏名】西谷 和也
(72)【発明者】
【氏名】西村 規世子
【審査官】西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-033622(JP,U)
【文献】特開2004-208919(JP,A)
【文献】特開2013-121416(JP,A)
【文献】特開2017-176743(JP,A)
【文献】特開平09-285486(JP,A)
【文献】特開2010-227286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品であって、
前後方向と、幅方向と、
吸収体と、
前記吸収体よりも非肌面側に配置されている非肌側シートと、
前記非肌側シートの非肌面上に設けられ、かつ前記吸収性物品を着用物品に直接的又は間接的に固定するための粘着部と、
前記吸収体の曲げを誘導する曲げ誘導部と、を有し、
前記曲げ誘導部は、
着用者の排泄口に対向する排泄口領域に少なくとも配置され、かつ前記吸収体の前記幅方向の中心よりも両外側において、前記吸収体の前端縁から離れた位置から後方に延びている一対の前曲げ誘導部と、
前記一対の前曲げ誘導部の間に配置されており、かつ前記排泄口領域よりも後方において前記前後方向に延びている後曲げ誘導部と、を有し、
前記後曲げ誘導部の前端縁は、前記一対の前曲げ誘導部の前端縁よりも後方に位置し、
前記一対の前曲げ誘導部の後端縁は、前記後曲げ誘導部の前記前端縁よりも後方であって、かつ前記後曲げ誘導部の後端縁よりも前方に位置し、
前記一対の前曲げ誘導部と前記後曲げ誘導部とが前記幅方向において重なる重複領域を有し、
前記曲げ誘導部は、第1補助曲げ誘導部を有し、
前記第1補助曲げ誘導部は、前記吸収体の前記幅方向の中心よりも前記幅方向の外側に配置され、かつ後方に向かうにつれて前記幅方向の外側へ延びており、
前記第1補助曲げ誘導部又は前記第1補助曲げ誘導部を延長した延長線は、前記重複領域において、前記後曲げ誘導部まで延びている、吸収性物品。
【請求項2】
吸収性物品であって、
前後方向と、幅方向と、
吸収体と、
前記吸収体よりも非肌面側に配置されている非肌側シートと、
前記非肌側シートの非肌面上に設けられ、かつ前記吸収性物品を着用物品に直接的又は間接的に固定するための粘着部と、
前記吸収体の曲げを誘導する曲げ誘導部と、を有し、
前記曲げ誘導部は、
着用者の排泄口に対向する排泄口領域に少なくとも配置され、かつ前記吸収体の前記幅方向の中心よりも両外側において、前記吸収体の前端縁から離れた位置から後方に延びている一対の前曲げ誘導部と、
前記一対の前曲げ誘導部の間に配置されており、かつ前記排泄口領域よりも後方において前記前後方向に延びている後曲げ誘導部と、を有し、
前記後曲げ誘導部の前端縁は、前記一対の前曲げ誘導部の前端縁よりも後方に位置し、
前記一対の前曲げ誘導部の後端縁は、前記後曲げ誘導部の前記前端縁よりも後方であって、かつ前記後曲げ誘導部の後端縁よりも前方に位置し、
前記曲げ誘導部は、第2補助曲げ誘導部を有し、
前記第2補助曲げ誘導部は、前記吸収体の前記幅方向の中心よりも前記幅方向の外側に配置され、かつ後方に向かうにつれて前記幅方向の内側へ延びており、
前記第2補助曲げ誘導部は、前記前曲げ誘導部の前記後端縁よりも後方に配置されている、吸収性物品。
【請求項3】
前記第2補助曲げ誘導部は、前記前曲げ誘導部よりも前記幅方向の外側に配置されている請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
吸収性物品であって、
前後方向と、幅方向と、
着用者の排泄口に対向する排泄口領域と重なる中央域と、前記中央域よりも前側に位置する前側域と、前記中央域よりも後側に位置する後側域と、
吸収体と、
前記吸収体よりも非肌面側に配置されている非肌側シートと、
前記非肌側シートの非肌面上に設けられ、かつ前記吸収性物品を着用物品に直接的又は間接的に固定するための粘着部と、
前記吸収体の曲げを誘導する曲げ誘導部と、
着用物品の非肌面側に折り返される一対のウイングと、を有し、
前記曲げ誘導部は、
前記排泄口領域に少なくとも配置され、かつ前記吸収体の前記幅方向の中心よりも両外側において、前記吸収体の前端縁から離れた位置から後方に延びている一対の前曲げ誘導部と、
前記一対の前曲げ誘導部の間に配置されており、かつ前記排泄口領域よりも後方において前記前後方向に延びている後曲げ誘導部と、を有し、
前記中央域は、前記ウイングの付け根の前端縁から前記ウイングの付け根の後端縁までの領域であり、
前記後曲げ誘導部の前端縁は、前記一対の前曲げ誘導部の前端縁よりも後方に位置し、
前記一対の前曲げ誘導部の後端縁は、前記後曲げ誘導部の前記前端縁よりも後方であって、かつ前記後曲げ誘導部の後端縁よりも前方に位置し、
前記後曲げ誘導部の前記前端縁及び前記一対の前曲げ誘導部の前記後端縁は、前記中央域に配置されており、
前記後曲げ誘導部の前記後端縁は、前記後側域に配置されている、吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収性物品は、着用物品の非肌面側に折り返されるウイングを有し、
前記後曲げ誘導部の前記前端縁は、前記前後方向において、前記ウイングの前記前後方向の中心よりも後方に位置する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収性物品は、着用物品の非肌面側に折り返されるウイングを有し、
前記一対の前曲げ誘導部の前記後端縁は、前記前後方向において、前記ウイングの前記前後方向の中心から50mm後方の位置よりも前方に位置する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体は、液体を吸収する吸収材料を含む吸収コアを少なくとも有し、
前記前曲げ誘導部の前記幅方向における長さは、前記吸収コアの厚さ以上である請求項1から6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記一対の前曲げ誘導部間の前記幅方向の距離は、10mm以上、50mm以下である請求項1から7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記一対の前曲げ誘導部と前記後曲げ誘導部とが前記幅方向において重なる重複領域を有し、
前記重複領域の後側における前記一対の前曲げ誘導部間の前記幅方向の距離は、前記重複領域の前側における前記一対の前曲げ誘導部間の前記幅方向の距離よりも長い請求項1から8のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記吸収体は、液体を吸収する吸収材料を含む吸収コアを少なくとも有し、
前記一対の前曲げ誘導部は、前記吸収コアを厚さ方向に貫通するスリットである請求項1から9のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記吸収体は、液体を吸収する吸収材料を含む吸収コアを少なくとも有し、
前記吸収コアに肌面側で接合されており、かつ前記吸収体よりも肌面側に配置されている肌側シートを有し、
前記一対の前曲げ誘導部は、前記肌側シート及び前記吸収コアを覆うコアラップの少なくとも一方と共に前記吸収コアが肌面側から非肌面側へ圧搾された圧搾部であり、
前記後曲げ誘導部は、前記非肌側シート及び前記コアラップの少なくとも一方と共に前記吸収コアが非肌面側から肌面側へ圧搾された圧搾部である請求項1から10のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記前曲げ誘導部の前記幅方向の長さは、前記後曲げ誘導部の前記幅方向の長さよりも長い請求項1から11のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記吸収性物品を前記前後方向に折り畳むための折り目が前記幅方向に延びるように形成されており、
前記折り目は、前記一対の前曲げ誘導部と前記後曲げ誘導部とが前記幅方向において重なる重複領域と異なる位置に形成されている請求項1から12のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体の曲げを誘導する曲げ誘導部を有する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吸収体の曲げを誘導し、かつ前後方向及び幅方向のそれぞれに延びている複数の曲げ誘導部を有する吸収性物品が開示されている。これにより、吸収体が、複数の曲げ誘導部によってブロック状に区画されて、身体に沿って変形し易くすることができる。
【0003】
しかしながら、前後方向に沿った曲げ誘導部が、吸収体の前方から後方にかけて連続的に延びているため、当該曲げ誘導部を基点とした吸収体の曲げが前方から後方まで伝搬し易い。その結果、吸収体が幅方向に曲がる形状が、吸収体の前側と後側とで同じになり易い。幅方向における着用者の身体の形状は、前側(例えば、膣口付近)と後側(例えば、臀部)とで異なるため、特許文献1の吸収性物品では、着用者の身体に十分にフィットしないことがあった。
【0004】
特許文献2の図4には、一対の前曲げ誘導部と後曲げ誘導部とを備えた吸収性物品が開示されている。一対の前曲げ誘導部は、吸収性物品の前端縁から後曲げ誘導部の前端縁の前後方向の位置まで前後方向に延びている。後曲げ誘導部は、吸収性物品の前端部からある程度離れた位置から吸収性物品の後端部へ前後方向に延びている。
【0005】
吸収性物品の前側では、幅方向に沿った吸収性物品の断面において、一対の前曲げ誘導部を基点として吸収性物品が凹状に曲がることが可能である。吸収性物品が凹状に曲がることによって吸収性物品が排泄口(特に、膣口)を包み込むことができるため、吸収性物品が刺激に敏感な排泄口に当たり難くしつつ、吸収性物品を身体にフィットさせることができる。一方で、吸収性物品の後側では、後曲げ誘導部を基点として吸収性物品が身体側へ向かって凸状に曲がることが可能である。吸収性物品が凸状に曲がることによって臀部の割れ目に沿って吸収性物品を配置でき、吸収性物品を身体にフィットさせることができる。このように、前後方向において、吸収性物品が、着用者の身体にフィットし易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-239722
【文献】特表1998-502843
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の吸収性物品では、前後方向において、一対の前曲げ誘導部が配置されている前側の領域と、後曲げ誘導部が配置されている後側の領域とは、各曲げ誘導部を基点として吸収性物品が幅方向に曲がることで、吸収性物品が前後方向に曲がり難くなる一方で、前側の領域と後側の領域とに挟まれている境界では、吸収性物品が前後方向に折れ曲がり易くなる。従って、上述の吸収性物品は、吸収性物品の側面視においてV字状に変形し易かった。吸収性物品1の折れによって、境界付近では、吸収性物品と着用者の体との間に隙間が発生して、吸収性物品が着用者の身体に沿ってフィットできないことがある。その結果、排泄物(特に体液)が幅方向に着用者の肌を伝って移動し、吸収性物品と着用者の体との間の隙間から排泄物が漏れる(いわゆる、横漏れが発生する)虞があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、吸収性物品を身体に沿ってフィットさせる吸収性物品を提供することを目的とする。
【0009】
一態様に係る吸収性物品は、前後方向と、幅方向と、吸収体と、前記吸収体よりも非肌面側に配置されている非肌側シートと、前記非肌側シートの非肌面上に設けられ、かつ前記吸収性物品を着用物品に直接的又は間接的に固定するための粘着部と、前記吸収体の曲げを誘導する曲げ誘導部と、を有する。前記曲げ誘導部は、着用者の排泄口に対向する排泄口領域に少なくとも配置され、かつ前記吸収体の前記幅方向の中心よりも両外側において、前記吸収体の前端縁から離れた位置から後方に延びている一対の前曲げ誘導部と、前記一対の前曲げ誘導部の間に配置されており、かつ前記排泄口領域よりも後方において前記前後方向に延びている後曲げ誘導部と、を有する。前記後曲げ誘導部の前端縁は、前記一対の前曲げ誘導部の前端縁よりも後方に位置する。前記一対の前曲げ誘導部の後端縁は、前記後曲げ誘導部の前記前端縁よりも後方であって、かつ前記後曲げ誘導部の後端縁よりも前方に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、肌面側から視た実施形態に係る吸収性物品の模式平面図である。
図2図2は、非肌面側から視た実施形態に係る吸収性物品の模式平面図である。
図3図3Aは、図1のF3A-F3A線に沿った吸収体の模式断面図であり、図3Bは、図1のF3B-F3B線に沿った吸収体の模式断面図であり、図3Cは、図1のF3C-F3C線に沿った吸収体の模式断面図である。
図4図4は、実施形態に係る吸収性物品の模式斜視図である。
図5図5Aは、図4のF5A-F5A線に沿った吸収コアの模式断面図であり、図5Bは、図4のF5B-F5B線に沿った吸収コアの模式断面図であり、図5Cは、図4のF5C-F5C線に沿った吸収コアの模式断面図である。
図6図6は、実施形態に係る吸収性物品の着用時の吸収体を説明するための図である。
図7図7は、曲げ誘導部を説明するための図である。
図8図8は、変更例1に係る吸収性物品を説明するための図である。
図9図9Aは、肌面側から視た変更例2に係る吸収性物品の模式平面図であり、図9Bは、肌面側から視た変更例3に係る吸収性物品の模式平面図である。
図10図10は、変更例2に係る吸収性物品の着用時の吸収体を説明するための図である。
図11図11は、肌面側から視た変更例4に係る吸収性物品の模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)実施形態の概要
一態様に係る吸収性物品は、前後方向と、幅方向と、吸収体と、前記吸収体よりも非肌面側に配置されている非肌側シートと、前記非肌側シートの非肌面上に設けられ、かつ前記吸収性物品を着用物品に直接的又は間接的に固定するための粘着部と、前記吸収体の曲げを誘導する曲げ誘導部と、を有する。前記曲げ誘導部は、着用者の排泄口に対向する排泄口領域に少なくとも配置され、かつ前記吸収体の前記幅方向の中心よりも両外側において、前記吸収体の前端縁から離れた位置から後方に延びている一対の前曲げ誘導部と、前記一対の前曲げ誘導部の間に配置されており、かつ前記排泄口領域よりも後方において前記前後方向に延びている後曲げ誘導部と、を有する。前記後曲げ誘導部の前端縁は、前記一対の前曲げ誘導部の前端縁よりも後方に位置する。前記一対の前曲げ誘導部の後端縁は、前記後曲げ誘導部の前記前端縁よりも後方であって、かつ前記後曲げ誘導部の後端縁よりも前方に位置する。本態様に係る吸収性物品によれば、排泄口から会陰を通り臀部まで、吸収性物品を着用者の身体にフィットし易くすることができる。
【0012】
好ましい一態様によれば、前記吸収性物品は、着用物品の非肌面側に折り返されるウイングを有し、前記後曲げ誘導部の前記前端縁は、前記前後方向において、前記ウイングの前記前後方向の中心よりも後方に位置する。一般的に、吸収性物品は、ウイングの前後方向の中心の位置が、排泄口(膣口)に対向するように設計されている。このため、後曲げ誘導部の前端縁が、ウイングの前後方向の中心よりも後方に位置することで、吸収性物品の装着時に、排泄口が、ウイングの前後方向の中心から前後にズレて配置されたとしても、重複領域が会陰に対向する位置に配置され易くすることができる。会陰において、吸収性物品を着用者の身体にフィットし易くなり、吸収性物品を着用者の身体にフィットし易くすることができる。
【0013】
好ましい一態様によれば、前記吸収性物品は、着用物品の非肌面側に折り返されるウイングを有し、前記一対の前曲げ誘導部の前記後端縁は、前記前後方向において、前記ウイングの前記前後方向の中心から50mm後方の位置よりも前方に位置する。一般的に、ウイングの前後方向の中心から50mm後方の位置よりも後方の吸収性物品は、臀部の割れ目が深い領域に対向し易い。ここで、一対の前曲げ誘導部の後端縁よりも後側では、前曲げ誘導部に起因した吸収体の曲げが抑制されるため、後曲げ誘導部に起因した吸収性物品の身体側への凸状の曲げの高さを確保することができる。これにより、臀部の割れ目が深い領域において、吸収性物品を身体にフィットさせ易くなる。
【0014】
好ましい一態様によれば、前記吸収性物品は、前記一対の前曲げ誘導部と前記後曲げ誘導部とが前記幅方向において重なる重複領域を有し、前記曲げ誘導部は、第1補助曲げ誘導部を有し、前記第1補助曲げ誘導部は、前記吸収体の前記幅方向の中心よりも前記幅方向の外側に配置され、かつ後方に向かうにつれて前記幅方向の外側へ延びており、前記第1補助曲げ誘導部又は前記第1補助曲げ誘導部を延長した延長線は、前記重複領域において、前記後曲げ誘導部まで延びている。幅方向に沿った吸収性物品の断面において後曲げ誘導部を基点として吸収体が身体側へ向かって凸状に曲がる場合に、第1補助曲げ誘導部(又は延長線)と後曲げ誘導部との交差点から吸収体が身体側へ立ち上がり易くなる。これにより、重複領域よりも後方で、吸収体をスムーズに凸状に変形させることができ、吸収性物品を身体にフィットさせ易くなる。
【0015】
好ましい一態様によれば、前記曲げ誘導部は、第2補助曲げ誘導部を有し、前記第2補助曲げ誘導部は、前記吸収体の前記幅方向の中心よりも前記幅方向の外側に配置され、かつ後方に向かうにつれて前記幅方向の内側へ延びており、前記第2補助曲げ誘導部は、前記前曲げ誘導部の前記後端縁よりも後方に配置されている。これにより、第2補助曲げ誘導部を基点として吸収体が曲がった場合、第2補助曲げ誘導部よりも後方の吸収体が、幅方向の外側へ向かうほど身体側へ立ち上がり易くなる。第2補助曲げ誘導部よりも後側の吸収体が臀部のラインに沿って配置され易い。その結果、吸収性物品を身体にフィットさせることができる。
【0016】
好ましい一態様によれば、前記第2補助曲げ誘導部は、前記前曲げ誘導部よりも前記幅方向の外側に配置されている。前曲げ誘導部よりも後方へ向かいながら幅方向の外側へ拡散する排泄物が、第2補助曲げ誘導部に到達した場合、第2補助曲げ誘導部に拡散が阻害される。これにより、前曲げ誘導部よりも後方において幅方向の外側へ排泄物が拡散することを抑制できる。
【0017】
好ましい一態様によれば、前記吸収体は、液体を吸収する吸収材料を含む吸収コアを少なくとも有し、前記前曲げ誘導部の前記幅方向における長さは、前記吸収コアの厚さ以上である。これにより、前曲げ誘導部を基点に吸収体が幅方向に曲げられた場合に、前曲げ誘導部を挟んで配置されている吸収体どうしが当たって曲げを阻害することを抑制でき、吸収性物品が身体にフィットし易くなる。
【0018】
好ましい一態様によれば、前記一対の前曲げ誘導部間の前記幅方向の距離は、10mm以上、50mm以下である。一対の前曲げ誘導部間の幅方向の距離が10mm以上であることにより、幅方向において、一対の前曲げ誘導部間の面積を確保することができ、吸収性物品が、排泄口に局部的に当たらずに面状に当たり易くなる。また、排泄口領域における鼠径部-鼠径部間の幅方向の距離は、一般的に50mm以下であるため、一対の前曲げ誘導部間の幅方向の距離を50mm以下とすることにより、一対の前曲げ誘導部間に配置されている吸収体が、一対の前曲げ誘導部を基点に変形することで、鼠径部間に収まり易くなる。これにより、幅方向に沿った断面において、吸収体が、一対の前曲げ誘導部を基点としたN字状に変形し難くなるため、吸収性物品が身体にフィットし易くできる。
【0019】
好ましい一態様によれば、吸収性物品は、前記一対の前曲げ誘導部と前記後曲げ誘導部とが前記幅方向において重なる重複領域を有し、前記重複領域の後側における前記一対の前曲げ誘導部間の前記幅方向の距離は、前記重複領域の前側における前記一対の前曲げ誘導部間の前記幅方向の距離よりも長い。これにより、重複領域における後側では、前曲げ誘導部と後曲げ誘導部との幅方向の長さが長くなるため、後曲げ誘導部を基点として吸収体が身体側へ向かって凸状に曲がることによる突出した吸収体の高さが高くなり易い。会陰では、肛門に向かうにつれて臀部の割れ目の深さが深くなるため、肛門近くに配置されやすい重複領域における後側において、吸収性物品が身体によりフィットし易くなる。
【0020】
好ましい一態様によれば、前記吸収体は、液体を吸収する吸収材料を含む吸収コアを少なくとも有し、前記一対の前曲げ誘導部は、前記吸収コアを厚さ方向に貫通するスリットである。これにより、吸収コアが前曲げ誘導部を境界として分断されるため、一対の前曲げ誘導部間に排泄された排泄物は、前曲げ誘導部よりも幅方向の外側へ拡散し難くなる。その結果、排泄物の横漏れを抑制できる。
【0021】
好ましい一態様によれば、前記吸収体は、液体を吸収する吸収材料を含む吸収コアを少なくとも有し、前記吸収コアに肌面側で接合されており、かつ前記吸収体よりも肌面側に配置されている肌側シートを有し、前記一対の前曲げ誘導部は、前記肌側シート及び前記吸収コアを覆うコアラップの少なくとも一方と共に前記吸収コアが肌面側から非肌面側へ圧搾された圧搾部であり、前記後曲げ誘導部は、前記非肌側シート及び前記コアラップの少なくとも一方と共に前記吸収コアが非肌面側から肌面側へ圧搾された圧搾部である。これにより、幅方向に沿った吸収性物品の断面において、一対の前曲げ誘導部を基点として吸収体が凹状に曲がり易くなるとともに、後曲げ誘導部を基点として吸収体を身体側へ向かって凸状に曲がり易くなることで、排泄口から会陰を通り臀部まで、吸収性物品を着用者の身体にフィットし易くすることができる。
【0022】
好ましい一態様によれば、前記前曲げ誘導部の前記幅方向の長さは、前記後曲げ誘導部の前記幅方向の長さよりも長い。排泄口領域に配置される前曲げ誘導部の幅方向の長さを広くすることで、排泄物が幅方向に拡散することを抑制できる。
【0023】
好ましい一態様によれば、前記吸収性物品を前記前後方向に折り畳むための折り目が前記幅方向に延びるように形成されており、前記折り目は、前記一対の前曲げ誘導部と前記後曲げ誘導部とが前記幅方向において重なる重複領域と異なる位置に形成されている。これにより、重複領域において、吸収体が幅方向に折れるように曲がり難くなることを避けて、前後方向において吸収体の凹状への変形と吸収体の凸状への変形とをスムーズに切り替え易くすることができる。
【0024】
(2)吸収性物品1の概略構成
実施形態に係る吸収性物品1について、図1から図7を用いて説明する。吸収性物品は、生理用ナプキン、パンティライナー、大人用失禁パッド又は尿取りパッドのような吸収性物品であってよい。以下の実施形態では、吸収性物品の一例として使い捨ての生理用ナプキンについて説明する。
【0025】
なお、図4は、吸収性物品1の中央域S3に幅方向Wの内側に向かう力Fが掛かった状態を示す。図6は、吸収性物品1が固定された着用物品WAを股下まで引き上げた状態であり、吸収コア31が変形する前の状態を示す。図7Aは、曲げ誘導部80がスリットであるケースを示し、図7Bは、曲げ誘導部80が低坪量部86であるケースを示す。図7A及び図7Bのそれぞれの左図は、排泄物(体液)の拡散状態を説明するための吸収コア31の一部の模式平面図である。図7Aの右図は、図7Aの左図のF7A-F7Aに沿った吸収コア31の一部の模式断面図である。図7Bの右図は、図7Bの左図のF7B-F7Bに沿った吸収コア31の一部の模式断面図である。なお、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なる場合があることに留意すべきである。模式断面図において、説明の便宜上、各部材が厚さ方向Tにおいて離間していることがあるが、実際の製品においては厚さ方向Tに接している。
【0026】
吸収性物品10は、前後方向Lと幅方向Wと厚さ方向Tとを有してよい。前後方向Lは、着用者の前側(腹側)から後側(背側)に延びる方向、又は着用者の後側から前側に延びる方向である。幅方向Wは、前後方向Lと直交する方向である。厚さ方向Tは、着用者の肌面側から非肌面側へ延びる方向(T2)、又は着用者の非肌面側から肌面側へ延びる方向(T1)である。また、厚さ方向Tは、前後方向L及び幅方向Wに直交する方向である。肌面側は、使用時に、着用者の肌に面する側に相当する。非肌面側は、使用時に、肌面側とは反対側、すなわち着用者の肌とは反対に向けられる側に相当する。
【0027】
図1に示すように、吸収性物品1は、前側域S1、後側域S2及び中央域S3を有してよい。前側域S1は、中央域S3よりも前側に位置し、後側域S2は、中央域S3よりも後側に位置する。中央域S3は、着用者の排泄口(例えば、膣口)に当接する領域を含む。吸収性物品1がウイング4を有する場合には、中央域S3は、ウイング4の付け根の前端縁4Fからウイング4の付け根の後端縁4Rまでの領域であってよい。なお、吸収性物品1がウイング4を有さない場合、吸収性物品1を前後方向Lに3等分にすることで得られる前側の領域が、前側域S1であり、後側の領域が後側域S2であり、前側域S1と後側域S2との間の中央の領域が中央域S3であってよい。
【0028】
吸収性物品1は、本体部2と一対のウイング4とを有してよい。本体部2は、着用物品WAの肌面側T1に配置される部分である。本体部2は、前後方向Lにおいて前側域S1から後側域S2まで延びる。本体部2は、吸収体30を含む。一対のウイング4は、着用物品WAの非肌面側T2に折り返される。ウイング4は、本体部2よりも幅方向Wの外側に延出する。ウイング4は、中央域S3において、本体部2の幅方向Wの両側に一対で設けられる。
【0029】
吸収性物品10は、吸収体30、肌側シート42、非肌側シート44、及び粘着部50を有してよい。図3に示すように、吸収体30は、液体を吸収する吸収材料を含む吸収コア31を少なくとも有する。吸収コア31(吸収材料)は、例えば、パルプ及び高吸収性ポリマーの少なくとも一方により構成されてよい。吸収体30は、吸収コア31を覆うコアラップ32を有してよい。コアラップ32は、吸収コア31に当接し、吸収コア31の厚さ方向Tの一方を少なくとも覆う。コアラップ32は、厚さ方向Tにおいて吸収コア31を挟んでよい。コアラップ32は、吸収コア31の側方で折り返されることによって吸収コア31を包んでよい。コアラップ32は、例えば、ティッシュ、不織布等によって構成されていてよい。
【0030】
肌側シート42は、吸収体30よりも肌面側T1に配置される。肌側シート42は、着用者の肌に対向するトップシートを有する。肌側シート42は、トップシートと吸収体30との間に配置される中間シートを有してもよい。肌側シート42は、例えば、液透過性の不織布によって構成されてよい。非肌側シート44は、吸収体30よりも非肌面側T2に配置される。非肌側シート44は、着用物品WAに対向するバックシートを有する。非肌側シート44は、バックシートと吸収体30との間に配置されるシートを有してもよい。非肌側シート20は、例えば、液不透過性の合成樹脂フィルムによって構成されてよい。
【0031】
粘着部50は、非肌側シート44の非肌面上に設けられる。図2に示すように、粘着部50は、本体部2に設けられてよいし、ウイング4に設けられてよい。粘着部50は、吸収性物品1を着用物品WAに直接的又は間接的に固定するためのものである。吸収性物品1は、粘着部50を介して着用物品WAに直接的に固定されてよい。或いは、吸収性物品1は、着用物品WAに固定された他の物品(例えば、他の吸収性物品)に粘着部50を介して固定されることで、着用物品WAに間接的に固定されてよい。
【0032】
粘着部50は、幅方向Wにおいて一対の前曲げ誘導部81の間に配置される中央粘着部51、幅方向Wにおいて一対の前曲げ誘導部81よりも外側に配置され、後側域S2よりも前方に配置されている一対の前サイド粘着部52、幅方向Wにおいて後曲げ誘導部82よりも外側に配置され、前側域S1よりも後方に配置されている一対の後サイド粘着部53、及び、ウイング4に設けられるウイング粘着部54の少なくともいずれかを有してよい。中央粘着部51、前サイド粘着部52、及び後サイド粘着部53は、本体部2に設けられてよい。また、中央粘着部51、前サイド粘着部52、及び後サイド粘着部53は、前後方向Lに延びてよい。
【0033】
中央粘着部51は、後曲げ誘導部82よりも前方に配置されてよい。中央粘着部51の後端縁51Rは、後曲げ誘導部82の前端縁82Fよりも前方に配置されてよい。中央粘着部51の後端縁51Rと後曲げ誘導部82の前端縁82Fとの間の前後方向Lの距離は、吸収コア31の厚さTC以上であってよい。前サイド粘着部52の外側縁は、後サイド粘着部53の外側縁よりも幅方向Wの外側に配置されてよい。前サイド粘着部の後端縁52Rは、前曲げ誘導部81の後端縁81Rよりも前方に配置されてよい。前サイド粘着部の後端縁52Rと前曲げ誘導部81の後端縁81Rとの間の前後方向Lの距離は、吸収コア31の厚さTC以上であってよい。また、後サイド粘着部53の前端縁は、前曲げ誘導部81の後端縁81Rよりも後方に配置されてよい。従って、前曲げ誘導部81の後端縁81Rは、幅方向Wにおいて、粘着部50と重ならなくてよい。前曲げ誘導部81の後端縁81Rを通る幅方向Wに沿った直線上に粘着部50が配置されず、当該直線上以外の領域に、粘着部50が配置されてよい。
【0034】
吸収性物品1には、吸収性物品1を前後方向Lに折り畳むための折り目FLが幅方向に延びるように形成されてよい。吸収性物品1には、複数の折り目FLが形成されてよい。吸収性物品1が包装シート100によって個別に包装される場合には、折り目FLは、吸収性物品1と包装シート100とに形成されてよい。吸収性物品1は、折り目FLを基点に折られることで、折り目FLに前後方向Lに隣接する肌側シート42どうしが向かい合ってよい。折り目FLとして、2つの折り目である、第1折り目FL1と、第1折り目FL1よりも後方に位置する第2折り目FL2とが形成されてよい。第1折り目FL1は、ウイング4の前端縁4Fよりも前方に位置してよく、第2折り目FL2は、ウイング4の後端縁4Rよりも後方に位置してよい。なお、折り目FLは、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0035】
図6に示すように、吸収性物品1は、着用者の排泄口に対向する排泄口領域ERを有してよい。排泄口領域ERは、排泄口、特に膣口に対向する領域である。排泄口領域ERは、尿道口に対向する領域を含んでよい。排泄口領域ERは、少なくとも中央域S3と重なる。排泄口領域ERは、後側域S2と重なってよいし、後側域S2と重ならなくてよい。また、吸収性物品1は、着用者の膣口から肛門までの領域である会陰に対向する会陰領域PRを有してよい。会陰領域PRは、少なくとも中央域S3と重なる。会陰領域PRは、後側域S2と重なってよいし、後側域S2と重ならなくてよい。また、吸収性物品1は、着用者の肛門よりも後方の領域に対向する臀部領域BRを有してよい。臀部領域BRは、後側域S2と重なる。
【0036】
(3)曲げ誘導部80
曲げ誘導部80について、図1から図7を用いて説明する。曲げ誘導部80は、吸収体30の曲げを誘導する。吸収体30は、曲げ誘導部80によって剛性差が生じる。吸収体30は、剛性差によって曲げ誘導部80を基点として曲がり易くなる。実施形態では、曲げ誘導部80は、吸収コア31を厚さ方向に貫通するスリットである。曲げ誘導部80は、一対の前曲げ誘導部81と後曲げ誘導部82とを有する。
【0037】
一対の前曲げ誘導部81は、着用者の排泄口に対向する排泄口領域ERに少なくとも配置される。一対の前曲げ誘導部81は、吸収体30の幅方向Wの中心よりも両外側において、吸収体30の前端縁30Fから離れた位置から後方に延びる。前曲げ誘導部81は、前後方向Lに延びてよい。前曲げ誘導部81は、排泄口領域ERよりも前方にも配置されてよく、排泄口領域ERよりも後方にも配置されてよい。前曲げ誘導部81は、第1折り目FL1と厚さ方向Tに重なってよい。
【0038】
前曲げ誘導部81の前端縁81Fは、吸収体30の前端縁30Fよりも後方に位置する。前曲げ誘導部81の前端縁81Fは、第1折り目FL1よりも後方に位置してよいし、ウイング4の前端縁4Fよりも後方に位置してよいし、ウイング4の前後方向Lの中心WCよりも後方に位置してよい。一方で、前曲げ誘導部81の前端縁81Fは、ウイング4の中心WCよりも前方に位置してよいし、ウイング4の前端縁4Fよりも前方に位置してよいし、第1折り目FL1よりも前方に位置してもよい。
【0039】
一対の前曲げ誘導部81の後端縁81Rは、後曲げ誘導部82の前端縁82Fよりも後方であって、かつ後曲げ誘導部82の後端縁82Rよりも前方に位置する。一対の前曲げ誘導部81の後端縁81Rは、ウイング4の中心WCから50mm後方の位置よりも前方に位置してよい。前曲げ誘導部81の後端縁81Rは、第2折り目FL2よりも前方に位置してよいし、ウイング4の後端縁4Rよりも前方に位置してよい。一方で、前曲げ誘導部81の後端縁81Rは、ウイング4の後端縁4Rよりも後方に位置してよいし、第2折り目FL2よりも後方に位置してよいし、ウイング4の中心WCから50mm後方の位置よりも後方に位置してよい。
【0040】
後曲げ誘導部82は、幅方向Wにおいて一対の前曲げ誘導部81の間に配置される。後曲げ誘導部82は、排泄口領域ERよりも後方において前後方向Lに延びる。従って、後曲げ誘導部82は、吸収体30の後端縁30R(吸収コア31の後端縁)まで延びていてよい。後曲げ誘導部82は、ウイング4の中心WCから50mm後方の位置まで延びていてよいし、ウイング4の中心WCから90mm後方の位置まで延びていてよい。後曲げ誘導部82は、少なくとも会陰領域PRに配置される。後曲げ誘導部82は、排泄口領域ERに配置されてよく、会陰領域PRよりも後方に配置されてよい。後曲げ誘導部82は、粘着部50と厚さ方向Tに重ならない位置に配置されてよい。
【0041】
後曲げ誘導部82の前端縁82Fは、一対の前曲げ誘導部81の前端縁81Fよりも後方に位置する。後曲げ誘導部82の前端縁82Fは、一対の前曲げ誘導部81の後端縁81Rよりも前方に位置する。後曲げ誘導部82の前端縁82Fは、ウイング4の前後方向Lの中心WCよりも後方に位置してよい。後曲げ誘導部82の前端縁82Fは、ウイング4の後端縁4Rよりも後方に位置してよく、第2折り目FL2よりも後方に位置してよい。
【0042】
後曲げ誘導部82の後端縁82Rは、一対の前曲げ誘導部81の後端縁81Rよりも後方に位置する。後曲げ誘導部82の後端縁82Rは、ウイング4の後端縁4Rよりも後方に位置してよいし、第2折り目FL2よりも後方に位置してよいし、ウイング4の中心WCから50mm後方の位置よりも後方に位置してよいし、ウイング4の中心WCから90mm後方の位置よりも後方に位置してよい。一方で、後曲げ誘導部82の後端縁82Rは、ウイング4の後端縁4Rよりも前方に位置してよいし、第2折り目FL2よりも前方に位置してよいし、ウイング4の中心WCから50mm後方の位置よりも前方に位置してよいし、ウイング4の中心WCから90mm後方の位置よりも前方に位置してよい。
【0043】
図3に示すように、前曲げ誘導部81の幅方向Wにおける長さ81Wは、吸収コア31の厚さTC以上であってよい。長さ81Wは、例えば、1mm以上であってよく、10mm以下であってよい。後曲げ誘導部82の幅方向Wにおける長さ82Wは、吸収コア31の厚さTC以上であってよい。長さ82Wは、例えば、1mm以上であってよく、10mm以下であってよい。前曲げ誘導部81の幅方向Wの長さ81Wは、後曲げ誘導部82の幅方向Wの長さ82Wよりも長くてよい。また、一対の前曲げ誘導部81間の幅方向Wの距離81Dは、10mm以上、50mm以下であってよい。距離81Dは、30mm以下であってよい。
【0044】
吸収性物品1は、一対の前曲げ誘導部81と後曲げ誘導部82とが幅方向Wにおいて重なる重複領域ORを有してよい。前後方向Lにおいて、重複領域ORは、後曲げ誘導部82の前端縁82Fから前曲げ誘導部81の後端縁81Rまでの領域である。折り目FLは、重複領域ORと異なる位置に形成されてよい。例えば、第1折り目FL1は、重複領域ORよりも前方に形成されてよく、第2折り目FL2は、重複領域ORよりも後方に形成されてよい。
【0045】
(4)吸収性物品1の状態
吸収性物品1の状態について、図1から図7を用いて説明する。図4に示すように、例えば、吸収性物品1が着用者の両脚に挟まれることにより、特に、中央域S3には幅方向Wの内側へ向かう力Fが働く。ここで、吸収体30に力Fが働いた場合、曲げ誘導部80の配置によって、以下のように吸収体30が変形可能である。幅方向Wにおいて後曲げ誘導部82が配置されず一対の前曲げ誘導部81が配置されている領域(例えば、排泄口領域ER)では、図5Aに示すように、一対の前曲げ誘導部81を基点として吸収体30が凹状に曲がることができる。また、幅方向Wにおいて一対の前曲げ誘導部81と後曲げ誘導部82とが配置されている領域(例えば、会陰領域PR)では、図5Bに示すように、一対の前曲げ誘導部81及び後曲げ誘導部82を基点として吸収体30がW字状に曲がることができる。また、幅方向Wにおいて一対の前曲げ誘導部81が配置されず後曲げ誘導部82が配置されている領域では、図5Cに示すように、後曲げ誘導部82を基点として吸収体30が着用者の身体側へ向かって凸状に曲がることができる。
【0046】
上述した通り、一対の前曲げ誘導部81の後端縁81Rは、後曲げ誘導部82の前端縁82Fよりも後方に位置するため、吸収性物品1には重複領域ORが設けられる。重複領域ORでは、一対の前曲げ誘導部81及び後曲げ誘導部82を基点として吸収体30が幅方向Wに曲がり易い。また、重複領域ORよりも前側では一対の前曲げ誘導部81を基点として、吸収体30が幅方向Wに曲がり易く、重複領域ORよりも後側では一対の後曲げ誘導部82を基点として幅方向Wに曲がり易い。吸収体30が幅方向Wに曲がることで、前後方向Lの曲げに対する剛性が高くなり、吸収性物品1が前後方向Lに折れ曲がり難くなる。従って、吸収性物品1の側面視において、吸収性物品1がV字状に変形し難くできる。これにより、V字状の変形による吸収性物品1と着用者の身体との間の隙間の発生を抑制して、排泄物が着用者の身体を幅方向Wに伝って生じる排泄物の横漏れを抑制できる。
【0047】
また、図5Aに示すように、幅方向Wに沿った吸収性物品1の断面において一対の前曲げ誘導部81を基点として吸収体30が凹状に曲がることによって、吸収性物品1が排泄口(特に、膣口)を包み込むことができる。一方で、一対の前曲げ誘導部81は、吸収体30の前端縁30Fから離れた位置から後方に延びているため、一対の前曲げ誘導部81よりも前側の吸収体30(吸収体30の前側部分)には、一対の前曲げ誘導部81を基点とした凹状の変形が伝搬しない。従って、吸収体30の前側部分は、着用者の身体に沿って変形し易い。吸収体30の前側部分を前後方向Lにおいて着用者の身体に沿わせ易くなり、吸収性物品1を着用者の身体にフィットし易くすることができる。
【0048】
図6に示すように、着用者が、吸収性物品1を固定した着用物品WAを身体側へ引き上げた際に、排泄口領域ERよりも後方で延びている後曲げ誘導部82が、臀部の割れ目に入り込む。従って、図5Cに示すように、幅方向Wに沿った吸収性物品1の断面において後曲げ誘導部82を基点として吸収体30を身体側へ向かって凸状に曲げることができる。これにより、臀部の割れ目に沿って吸収性物品1を配置できる。
【0049】
また、重複領域ORでは、後曲げ誘導部82の幅方向Wにおける両外側に一対の前曲げ誘導部81が配置されている。従って、一対の前曲げ誘導部81よりも幅方向Wの内側では、吸収体30が身体側へ凸状に曲がり易くなるものの、一対の前曲げ誘導部81よりも幅方向Wの外側にまで、吸収体30が身体側へ凸状に曲がる変形が伝わることを抑制できる。加えて、重複領域ORでは、一対の前曲げ誘導部81と後曲げ誘導部82とを基点として吸収体30が変形できるため、前後方向Lにおいて吸収体30の凹状への変形と吸収体30の凸状への変形とがスムーズに切り替えることができる。これにより、吸収体30の凹状への変形と吸収体30の凸状への変形とにより吸収体30に負荷が掛かり難くなり、これらの吸収体30の変形が両立し易くなる。
【0050】
また、図6に示すように、会陰では、膣口から肛門にかけて徐々に臀部の割れ目の深さが増していく。重複領域ORが会陰に対向する位置に配置された場合、吸収体30の凹状への変形(吸収体30の幅方向Wの中央の高さが低い状態)から吸収体30の凸状への変形(吸収体30の幅方向Wの中央の高さが高い状態)へとスムーズに切り替えられることで、割れ目の深さに合わせて吸収体30の幅方向Wの中央の高さを高くすることができる。これにより、着用者の身体と吸収性物品1との隙間が大きくならず、吸収性物品1を着用者の身体にフィットし易くなる。
【0051】
以上のように、実施形態に係る吸収性物品1によれば、排泄口から会陰を通り臀部まで、吸収性物品1を着用者の身体にフィットし易くすることができる。
【0052】
一般的に、吸収性物品1は、ウイング4の中心WCの位置が、排泄口(膣口)に対向するように設計されている。このため、後曲げ誘導部82の前端縁82Fが、ウイング4の中心WCよりも後方に位置することで、吸収性物品1の装着時に、排泄口が、ウイング4の中心WCから前後にズレて配置されたとしても、重複領域が会陰に対向する位置に配置され易くすることができる。会陰において、吸収性物品1を着用者の身体にフィットし易くなり、吸収性物品1を着用者の身体にフィットし易くすることができる。
【0053】
一般的に、ウイング4の中心WCから50mm後方の位置よりも後方の吸収性物品1は、臀部の割れ目が深い領域に対向し易い。ここで、一対の前曲げ誘導部81の後端縁81Rよりも後側では、前曲げ誘導部81に起因した吸収体30の曲げが抑制されるため、後曲げ誘導部82に起因した吸収性物品の身体側への凸状の曲げの高さを確保することができる。従って、一対の前曲げ誘導部81の後端縁81Rが、ウイング4の中心WCから50mm後方の位置よりも前方に位置することで、臀部の割れ目が深い領域において、吸収性物品1を身体にフィットさせ易くなる。
【0054】
また、前曲げ誘導部81の幅方向Wの長さ81Wは、吸収コア31の厚さTC以上であってよい。これにより、前曲げ誘導部81を基点に吸収体30が幅方向Wに曲げられた場合に、前曲げ誘導部81を挟んで配置されている吸収体30どうしが当たって曲げを阻害することを抑制でき、吸収性物品1が身体にフィットし易くなる。なお、前曲げ誘導部81の長さ81Wは、1mm以上である場合、吸収性物品1の着用により吸収体30が撚れても、前曲げ誘導部81が潰され難くなる。これにより、前曲げ誘導部81(の機能)を維持し易くなり、一対の前曲げ誘導部81を基点として吸収体30が凹状に曲がることができる。また、前曲げ誘導部81の長さ81Wは、10mm以下である場合、使用者が、前曲げ誘導部81の幅が広く感じ難くなり、使用者が、排泄物の漏れに対する不安を感じることを抑制できる。特に、前曲げ誘導部81がスリットである場合に、前曲げ誘導部81の長さ81Wは、10mm以下であることが好ましい。
【0055】
一対の前曲げ誘導部81間の幅方向Wの距離81Dは、10mm以上であってよい。これにより、幅方向Wにおいて、一対の前曲げ誘導部81間の面積を確保することができ、吸収性物品1が、排泄口に局部的に当たらずに面状に当たり易くなる。
【0056】
また、一対の前曲げ誘導部81間の幅方向Wの距離81Dが広くて、一対の前曲げ誘導部81間に配置された吸収体30が鼠径部-鼠径部間に収まらない場合、幅方向Wに沿った断面において、吸収体30が一対の前曲げ誘導部81を基点としてN字状に変形して、吸収性物品1が身体にフィットし難くなることがある。ここで、排泄口領域ERにおける鼠径部-鼠径部間の幅方向Wの距離は、一般的に50mm以下である。そこで、一対の前曲げ誘導部81間の幅方向の距離81Dを50mm以下とすることにより、吸収体30が、一対の前曲げ誘導部81を基点に変形した場合に、鼠径部-鼠径部間に収まり易くなる。これにより、幅方向Wに沿った断面において、吸収体30が、一対の前曲げ誘導部81を基点としてN字状に変形せずに凹状に変形し易くなるため、吸収性物品1を身体にフィットし易くできる。
【0057】
また、図3及び図7Aに示すように、一対の前曲げ誘導部81は、吸収コア31を厚さ方向Tに貫通するスリットであってよい。これにより、図7Aに示すように、吸収コア31が前曲げ誘導部81を境界として分断されるため、一対の前曲げ誘導部81間に排泄された排泄物(例えば、経血などの体液)は、前曲げ誘導部81よりも幅方向Wの外側へ拡散し難くなる。その結果、排泄物の横漏れを抑制できる。
【0058】
例えば、吸収コア31の幅が、例えば50mm以下である場合、曲げ誘導部80がスリットであってよい。これにより、一対の前曲げ誘導部81間に排泄された排泄物が、吸収コア31の側端縁へ到達し難くなるため、排泄物の横漏れを防ぐことができる。また、前曲げ誘導部81から吸収コア31の側端縁までの幅方向Wの最小長さが、例えば10mm以下である場合、曲げ誘導部80がスリットであってよい。また、吸収コア31の厚さTCが、例えば3.5mmより厚い場合、曲げ誘導部80がスリットであってよい。これにより、スリットは剛性が0であるため、曲げ誘導部80によって吸収コア31の幅方向Wにおける剛性差を大きくすることができる。厚みのある吸収コア31が曲げ誘導部80を基点として幅方向Wに変形し易くなり、吸収性物品1を身体にフィットし易くできる。
【0059】
図7Bに示すように、一対の前曲げ誘導部81は、周囲よりも坪量が低い低坪量部であってよい。具体的には、一対の前曲げ誘導部81の坪量は、幅方向Wにおいて一対の前曲げ誘導部81に隣接する吸収コア31の隣接部分33の坪量よりも低くてよい。低坪量部は、坪量が0より大きい。一対の前曲げ誘導部81の吸収材料の密度と隣接部分33の吸収材料の密度が同等である場合、曲げ誘導部80の厚さが、隣接部分33の厚さよりも薄い。これにより、前曲げ誘導部81は、隣接部分33と比較して、厚さ方向Tにおける排泄物が拡散する領域が狭くなり、一対の前曲げ誘導部81よりも幅方向Wの外側へ拡散し難くなる(いわゆる、ボトルネック)。従って、まず一対の前曲げ誘導部81間の吸収コア31で排泄物を吸収して、排泄物の量が一対の前曲げ誘導部81間の吸収コア部分の吸収量を上回ると、一対の前曲げ誘導部81よりも幅方向Wの外側に配置されている吸収コア部分で排泄物を吸収し始める。これにより、吸収性物品1の使用時間が長くなり、排泄物の量が多い場合であっても、排泄物の漏れを抑制できる。
【0060】
例えば、吸収コア31の厚さTCが、例えば1.5mmより厚く、3.5mm以下である場合、前曲げ誘導部81が低坪量部であってよい。主に吸収コア31で排泄物を吸収しつつも排泄物の量が多い場合には、一対の曲げ誘導部80よりも幅方向Wの外側の吸収コア31で排泄物を吸収できる。
【0061】
曲げ誘導部80に対応する低坪量部は、肌面側T1に偏って配置されてよい、すなわち、吸収体30が非肌面側T2から肌面側T1へ凹むことで曲げ誘導部80が設けられてよい。また、曲げ誘導部80に対応する低坪量部は、非肌面側T2に偏って配置されてよい、すなわち、吸収体30が肌面側T1から非肌面側T2へ凹むことで曲げ誘導部80が設けられてよい。なお、一対の前曲げ誘導部81に対応する低坪量部が、非肌面側T2に偏って配置されてよい。これにより、前曲げ誘導部81が存在する非肌面側T2の部分の剛性よりも、前曲げ誘導部81よりも肌面側T1の部分の剛性が低くなるため、吸収体30に幅方向Wの内側へ力Fが働いた場合、一対の前曲げ誘導部81を基点として吸収体30が凹状に曲がり易くなる。また、後曲げ誘導部82に対応する低坪量部が、肌面側T1に偏って配置されてよい。これにより、後曲げ誘導部82が存在する肌面側T1の部分の剛性よりも、後曲げ誘導部82よりも非肌面側T2の部分の剛性が低くなるため、吸収体30に幅方向Wの内側へ力Fが働いた場合、後曲げ誘導部82を基点として吸収体30が着用者の身体側へ凸状に曲がり易くなる。
【0062】
また、前曲げ誘導部81の幅方向Wの長さ81Wは、後曲げ誘導部82の幅方向Wの長さ82Wよりも長くてよい。排泄口領域ERに配置される前曲げ誘導部81の長さ81Wを広くすることで排泄物が幅方向Wに拡散することを抑制できる。一方で、後曲げ誘導部82の幅方向Wの長さ82Wが狭くなるため、後曲げ誘導部82がスリットである場合、吸収体30が着用者の身体側へ向かって凸状に曲がった際に、後曲げ誘導部82に幅方向Wの両側に隣接する吸収コア31の隣接部分33どうしが近づき易くなる。これにより、臀部の割れ目の深くに配置される吸収材料の量が低くなり難く、割れ目に沿った背側への排泄物の伝い漏れを抑制できる。
【0063】
また、重複領域ORに折り目FLが形成されている場合、吸収体30の剛性が、幅方向Wに沿って延びる折り目FLに沿って高くなる。吸収体30に部分的に剛性が高くなるため、吸収体30が幅方向に折れるように曲がり難くなる。そこで、折り目FLが重複領域ORと異なる位置に形成されてよい。これにより、重複領域ORにおいて、吸収体30が幅方向Wに折れるように曲がり難くなることを避けて、前後方向Lにおいて吸収体30の凹状への変形と吸収体30の凸状への変形とをスムーズに切り替え易くすることができる。
【0064】
なお、幅方向Wの中心に沿って延びる後曲げ誘導部82が粘着部50と厚さ方向Tに重なる場合には、後曲げ誘導部82を基点として吸収体30が着用者の身体側へ凸状に曲がった際に、幅方向Wの中心の両側の粘着部50どうしが接触して接合され易くなる。そこで、粘着部50どうしが接触することを避けるために、後曲げ誘導部82は、粘着部50と厚さ方向Tに重ならない位置に配置されてよい。これにより、粘着部50どうしが接合され難くなるため、着用者の姿勢変化による凸状の吸収体30が平面状の吸収体30へ変形する際に、この変形が阻害され難くできる。これにより、着用者の動きに伴う身体のラインに吸収性物品1が追従し続けることができ、吸収性物品1を身体にフィットさせ続け易くなる。
【0065】
また、肌側シート42どうしが向かい合うように第1折り目FL1を基点として吸収性物品1が着用者の身体に沿って前後方向Lに曲がり易くなるため、前曲げ誘導部81が、第1折り目FL1と厚さ方向Tに重なる場合、前曲げ誘導部81も着用者の身体に沿って配置され易くなる。着用者が座位姿勢の場合に、前曲げ誘導部81の第1折り目FL1よりも前側部分が上方へ配置され易くなる。これにより、排泄物が前曲げ誘導部81に沿って前方へ拡散した場合に、前曲げ誘導部81の前端縁81Fの前側の吸収コア31まで到達し難くなるため、前端縁81Fの前側の吸収コア31から平面方向(特に幅方向Wの外側)へ拡散することを抑制できる。
【0066】
中央粘着部51の後端縁と後曲げ誘導部82の前端縁82Fとの間の前後方向Lの距離は、吸収コア31の厚さTC以上であってよい。これにより、中央粘着部51によって吸収性物品1が着用物品WAに密着した領域から後曲げ誘導部82が離れるため、後曲げ誘導部82を基点として吸収体30が凸状に曲がり易くできる。前サイド粘着部52の外側縁は、後サイド粘着部53の外側縁よりも幅方向Wの外側に配置されてよい。これにより、前サイド粘着部52により剛性が高い部分が、後サイド粘着部53により剛性が高い部分よりも幅方向Wの外側に位置するため、前サイド粘着部52を介して、幅方向Wの内側へ向かう力Fが、前曲げ誘導部81に先に掛かり易くなる。その結果、吸収体30が凹状に先に曲がることで、排泄口付近で吸収体30を着用者の身体にフィットし易くし、排泄物の漏れを抑制できる。
【0067】
(5)変更例
変更例に係る吸収性物品1について、図8から図11を用いて説明する。図8Aの左図は、排泄物(体液)の拡散状態を説明するための吸収コア31の一部の模式平面図である。図8Aの右図は、図8Aの左図のF8A-F8Aに沿った吸収コア31の一部の模式断面図である。図8Bは、吸収コア31が曲がる前の状態を示し、図8Cは、吸収コア31が曲がった後の状態を示す。なお、以下において、既出の説明と同様の内容は、説明を省略する。
【0068】
変更例1に係る吸収性物品1について、図8を用いて説明する。変更例1に係る吸収性物品1では、曲げ誘導部80が圧搾部である。図8Aに示すように、曲げ誘導部80は、少なくとも吸収コア31が厚さ方向Tに圧搾された圧搾部であってよい。一対の前曲げ誘導部81は、肌側シート42及びコアラップ32の少なくとも一方と共に吸収コア31が肌面側T1から非肌面側T2へ圧搾された圧搾部であってよい。後曲げ誘導部82は、非肌側シート44及びコアラップ32の少なくとも一方と共に吸収コア31が非肌面側T2から肌面側T1へ圧搾された圧搾部であってよい。圧搾部は、非肌側シート44が圧搾されずに、吸収コア31とコアラップ32とのみが圧搾されていてもよい。
【0069】
図8Bに示すように、肌側シート42及び/又はコアラップ32は、前曲げ誘導部81を設けるための圧搾によって肌面側T1から非肌面側T2へ強く押される。圧搾部(前曲げ誘導部81)の両側方において肌側シート42及び/又はコアラップ32が、圧搾部の方へ強く引っ張られて、吸収体30に圧搾部の方へ向かう力が働く。しかしながら、吸収コア31の剛性により圧搾部の方向(図8Bの幅方向W)へ移動できず、図8Cに示すように、圧搾部の両側方の吸収体30が肌面側T1へ持ち上げられるように曲がり易くなる。従って、幅方向Wに沿った吸収性物品1の断面において、一対の前曲げ誘導部81を基点として吸収体が凹状に曲がり易くなる。
【0070】
一方で、非肌側シート44及び/又はコアラップ32は、後曲げ誘導部82を設けるための圧搾によって非肌面側T2から肌面側T1へ強く押される。これにより、吸収体30に圧搾部(後曲げ誘導部82)の方へ向かう力が働くものの、吸収コア31の剛性により、圧搾部の両側方の吸収体30が非肌面側T2へ持ち上げられるように曲がり易くなる。従って、幅方向Wに沿った吸収性物品1の断面において、後曲げ誘導部82を基点として吸収体30を身体側へ向かって凸状に曲がり易くなる。
【0071】
このように、幅方向Wに沿った吸収性物品1の断面において、一対の前曲げ誘導部81を基点として吸収体が凹状に曲がり易くなり、後曲げ誘導部82を基点として吸収体30を身体側へ向かって凸状に曲がり易くなるため、排泄口から会陰を通り臀部まで、吸収性物品1を着用者の身体にフィットし易くすることができる。
【0072】
また、一対の前曲げ誘導部81が圧搾部である場合、一対の前曲げ誘導部81の密度は、隣接部分33の密度よりも高くなる。これにより、排泄物が毛細管現象により一対の前曲げ誘導部81に引き込まれ易くなる。一対の前曲げ誘導部81に吸収される排泄物の量が多くなるため、図8Aの左図に示すように、排泄物を前後方向Lに拡散し易くなる。これにより、一対の前曲げ誘導部81よりも幅方向Wの外側へ拡散し難くなり、排泄物の漏れを抑制できる。
【0073】
前曲げ誘導部81及び後曲げ誘導部82が圧搾部である場合、前曲げ誘導部81の幅方向Wの長さ81Wは、後曲げ誘導部82の幅方向Wの長さ82Wよりも長くてよい。これにより、前後方向Lにおいて吸収コア31の広い部分で排泄物を吸収し易くなり、排泄物の漏れを抑制できる。一方で、後曲げ誘導部82の長さ82Wが狭くなるため、後曲げ誘導部82が圧搾部である場合には、吸収体30が着用者の身体側へ向かって凸状に曲がった際に、凸状の吸収体30の頂点の幅を狭くすることができる。これにより、臀部の割れ目の深くまで、凸状の吸収体30が入り込み易くなり、吸収性物品1を着用者の身体にフィットさせ易くできる。
【0074】
次に、変更例2及び変更例3に係る吸収性物品1について、図9及び図10を用いて説明する。図9に示すように、変更例2及び変更例3に係る吸収性物品1では、曲げ誘導部80は、第1補助曲げ誘導部831を有する。第1補助曲げ誘導部831は、吸収体30の幅方向Wの中心よりも幅方向Wの外側に配置される。第1補助曲げ誘導部831は、後方に向かうにつれて幅方向Wの外側へ延びる。図9Aに示すように、第1補助曲げ誘導部831は、重複領域ORにおいて、後曲げ誘導部82まで延びてよい。従って、第1補助曲げ誘導部831は、後曲げ誘導部82と交差してよい。図9Bに示すように、第1補助曲げ誘導部831は、重複領域ORにおいて後曲げ誘導部82まで延びない場合、第1補助曲げ誘導部831を延長した延長線ELが、重複領域ORにおいて後曲げ誘導部82まで延びていてよい。従って、延長線ELは、後曲げ誘導部82と交差してよい。延長線ELは、第1補助曲げ誘導部831が延びる方向に沿った延長線である。第1補助曲げ誘導部831又は延長線ELと後曲げ誘導部82とのなす角度θは、10度以上、80度以下であってよい。
【0075】
第1補助曲げ誘導部831を基点として、吸収体30が、第1補助曲げ誘導部831に沿って曲がり易くなる。また、吸収体30が、第1補助曲げ誘導部831に沿って曲げられた場合に、第1補助曲げ誘導部831の延長線ELに沿って吸収体30が曲げられ易くなる。図10に示すように、幅方向Wに沿った吸収性物品1の断面において後曲げ誘導部82を基点として吸収体30が身体側へ向かって凸状に曲がる場合に、第1補助曲げ誘導部831(又は延長線EL)と後曲げ誘導部82との交差点から吸収体30が身体側へ立ち上がり易くなる。これにより、重複領域ORよりも後方で、吸収体30をスムーズに凸状に変形させることができ、吸収性物品1を身体にフィットさせ易くなる。また、第1補助曲げ誘導部831又は延長線ELと後曲げ誘導部82とのなす角度θは、10度以上、80度以下である場合、吸収体30をよりスムーズに凸状に変形させることができる。
【0076】
図9及び図10に示すように、変更例2及び変更例3に係る吸収性物品1では、曲げ誘導部80は、第2補助曲げ誘導部832を有する。第2補助曲げ誘導部832は、吸収体30の幅方向Wの中心よりも幅方向Wの外側に配置される。第2補助曲げ誘導部832は、後方に向かうにつれて幅方向Wの内側へ延びる。第2補助曲げ誘導部832は、前曲げ誘導部81の後端縁81Rよりも後方に配置されてよい。
【0077】
図10に示すように、第2補助曲げ誘導部832を基点として吸収体30が曲がった場合、第2補助曲げ誘導部832よりも後側の吸収体30の部分301において幅方向Wの外側へ向かうほど身体側へ立ち上がり易くなる。吸収体30の部分301が臀部のラインに沿って配置され易くなり、吸収性物品を身体にフィットさせることができる。後方へ伝う排泄物が吸収体30の部分301に吸収され易くなり、排泄物の伝い漏れを抑制できる。
【0078】
第2補助曲げ誘導部832は、前曲げ誘導部81よりも幅方向Wの外側へ配置されてよい。また、第2補助曲げ誘導部832は、前曲げ誘導部81よりも幅方向Wの内側へも配置されてよい。これにより、前曲げ誘導部81よりも後方へ向かいながら幅方向Wの外側へ拡散する排泄物が、第2補助曲げ誘導部832に到達した場合、第2補助曲げ誘導部832に拡散が阻害される。これにより、前曲げ誘導部81よりも後方において幅方向Wの外側へ排泄物が拡散することを抑制できる。
【0079】
なお、第1補助曲げ誘導部831は、スリット、低坪量部、圧搾部のいずれかであってよい。第1補助曲げ誘導部831は、複数の圧搾部が間欠的に並んで配置されることにより構成されてよい。複数の圧搾部が並ぶ方向が、第1補助曲げ誘導部831が延びる方向であってよい。第2補助曲げ誘導部832も第1補助曲げ誘導部831と同様に、スリット、低坪量部、圧搾部のいずれかであってよい。また、第2補助曲げ誘導部832がスリットである場合、吸収コア31が第2補助曲げ誘導部832を境界として分断されるため、排泄物が第2補助曲げ誘導部832を超えて後方まで拡散し難くなる。また、第2補助曲げ誘導部832が低坪量部である場合、第2補助曲げ誘導部832では拡散する吸収材料が減るため、第2補助曲げ誘導部832がボトルネックとなる。これにより、排泄物が第2補助曲げ誘導部832を超えて後方まで拡散し難くなる。また、第2補助曲げ誘導部832が圧搾部である場合、第2補助曲げ誘導部832に沿って排泄物が拡散し易くなるため、排泄物が第2補助曲げ誘導部832を超えて後方まで拡散し難くなる。
【0080】
図9に示すように、前曲げ誘導部81の前端縁81F及び後端縁81Rの少なくとも一方は、円弧状であってよい。これにより、前曲げ誘導部81の前端縁81F(後端縁81R)が幅方向Wに沿って延びる場合と比較して、吸収コア31の面積を大きくでき、吸収量を増加することができる。特に、前曲げ誘導部81に沿って排泄物が拡散する場合に、排泄物が前曲げ誘導部81の前端縁81F(後端縁81R)に触れる表面積が増える。排泄物が前曲げ誘導部81の前端縁81Fよりも前側の吸収コア31に吸収され易くでき、排泄物のリウェットを抑制できる。
【0081】
変更例4に係る吸収性物品1について、図11を用いて説明する。変更例4に係る吸収性物品1では、重複領域ORの後側における一対の前曲げ誘導部81間の幅方向Wの距離81D2は、重複領域ORの前側における一対の前曲げ誘導部81間の幅方向Wの距離81D1よりも長い。図11に示すように、重複領域ORにおいて、一対の前曲げ誘導部81が、後方に向かうにつれて幅方向Wの外側へ延びてよい。重複領域ORの前側は、重複領域ORを前後方向Lに二等分する中心線よりも前側の重複領域ORであり、重複領域ORの後側は、当該中心線よりも後側の重複領域ORである。
【0082】
変更例4に係る吸収性物品1において、重複領域ORにおける後側では、前曲げ誘導部81と後曲げ誘導部82との幅方向Wの長さが長くなるため、後曲げ誘導部82を基点として吸収体30が身体側へ向かって凸状に曲がることによる突出した吸収体の高さが高くなり易い。会陰では、肛門に向かうにつれて臀部の割れ目の深さが深くなるため、肛門近くに配置されやすい重複領域ORにおける後側において、吸収性物品1が身体によりフィットし易くなる。
【0083】
(5)その他実施形態
上述の実施形態及び変更例は、例示説明を目的とするものであり、他の態様により本発明が実施されてよい。例えば、曲げ誘導部80は、前曲げ誘導部81よりも後方において、幅方向Wに延びる1以上の幅曲げ誘導部を有してよい。幅曲げ誘導部は、例えば、吸収コア31の一方の側端縁から他方の側端縁まで幅方向Wに沿って延びてよい。幅曲げ誘導部は、例えば、ウイング4の中心WCから50mm後方の位置に厚さ方向Tに重なってよい。ウイング4の中心WCから50mm後方の位置は、一般的に肛門に対向し易い。このため、吸収性物品1が肛門付近で前後方向Lに曲がり易くなり、吸収性物品1を身体にフィットさせ易くなる。また、幅曲げ誘導部は、例えば、ウイング4の中心WCから90mm後方の位置に厚さ方向Tに重なってよい。ウイング4の中心WCから90mm後方の位置は、一般的に、臀部のカーブが始まる臀部の後方下端の位置に対向し易い。このため、吸収性物品1が臀部の後方下端で前後方向Lに曲がり易くなり、吸収性物品1を身体にフィットさせ易くなる。
【0084】
また、重複領域ORの前端縁よりも後方において、吸収性物品1のうち吸収体30と厚さ方向Tに重なる領域に、格子状の圧搾部が形成されてよい。この場合、格子状の圧搾部の一部が、第1補助曲げ誘導部831及び第2補助曲げ誘導部832であってよい。
【0085】
また、一対の前曲げ誘導部81及び後曲げ誘導部82以外に、スリット、低坪量部、及び圧搾部の少なくともいずれかの他の曲げ誘導部80が設けられる場合、設けられた全ての他の曲げ誘導部80は、前後方向Lに沿った直線及び幅方向Wに沿った直線に対して傾斜して延びてよい。或いは、設けられた全ての他の曲げ誘導部80は、吸収性物品1の平面視において、前後方向Lに沿った直線及び幅方向Wに沿った直線のそれぞれとのなす角度が10度以上、80度以下であってよい。或いは、一対の前曲げ誘導部81及び後曲げ誘導部82以外に、他の曲げ誘導部80(スリット、低坪量部、及び圧搾部)が設けられなくてよい。幅方向Wの内側に向かう力Fが、他の曲げ誘導部80により分散されるおそれがなくなり、一対の前曲げ誘導部81及び後曲げ誘導部82による吸収コア31の変形が、より起こり易くしてよい。
【0086】
上述の実施形態、各変更例及びその他実施形態に係る吸収性物品1に係る構成は、適宜組み合わせることが可能であることに留意すべきである。本発明が本明細書中に説明した内容に限定されるものではない。特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 :吸収性物品
4 :ウイング
10 :吸収性物品
20 :非肌側シート
30 :吸収体
31 :吸収コア
32 :コアラップ
42 :肌側シート
44 :非肌側シート
50 :粘着部
80 :曲げ誘導部
81 :前曲げ誘導部
82 :後曲げ誘導部
831 :第1補助曲げ誘導部
832 :第2補助曲げ誘導部
EL :延長線
ER :排泄口領域
FL :折り目
L :前後方向
OR :重複領域
T :厚さ方向
T1 :肌面側
T2 :非肌面側
W :幅方向
WA :着用物品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11