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特許7344803距離検出装置、距離検出方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】距離検出装置、距離検出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4865 20200101AFI20230907BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20230907BHJP
   G01S 17/10 20200101ALI20230907BHJP
   A63B 71/06 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G01S7/4865
G01C3/06 120Q
G01S17/10
A63B71/06 U
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020015492
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021124293
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501439264
【氏名又は名称】株式会社ニコンビジョン
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野々村 岳人
(72)【発明者】
【氏名】井上 毅
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-003098(JP,A)
【文献】特開2018-189494(JP,A)
【文献】国際公開第2019/225224(WO,A1)
【文献】特開2018-091760(JP,A)
【文献】国際公開第2016/030923(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/107675(WO,A1)
【文献】特開2004-355139(JP,A)
【文献】特開2012-185084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
G01S 3/80 - 3/86
G01S 5/18 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
G01C 3/00 - 3/32
A63B 71/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
距離検出装置であって、
対象物に向けて光を投光する投光部と、
前記対象物からの反射光を受光する受光部と、
前記投光部による前記光の投光から前記受光部による前記反射光の受光までの受光時間を検出する時間検出部と、
前記時間検出部による前記受光時間の検出結果に基づいて前記対象物までの距離を演算する演算部と、
前記演算部による前記対象物までの距離の演算結果の信頼性を、前記演算結果に対応する距離の前記対象物までの距離に関する参照値からのずれに基づいて評価する評価部と、を備え、前記対象物までの距離に関する参照値は、前記距離検出装置の現在位置の位置情報と前記対象物の位置情報とに基づいて取得される前記現在位置から前記対象物までの距離であ距離検出装置。
【請求項2】
前記評価部は、前記演算部により前記対象物までの距離の演算結果が複数得られた場合に、複数の演算結果のそれぞれの信頼性をそれぞれの演算結果に対応する距離の前記対象物までの距離に関する参照値からのずれに基づいて評価し、該評価結果に基づいて前記複数の演算結果のなかから前記信頼性の高い演算結果を選択する、請求項1に記載の距離検出装置。
【請求項3】
前記評価部は、前記参照値からのずれが小さいほど前記信頼性を高く評価する、請求項2に記載の距離検出装置。
【請求項4】
前記投光部は、前記対象物に向けて光を複数回、投光し、
前記時間検出部は、前記投光部による光の投射毎に、前記受光部により前記反射光を受光することで得られる受光信号の強度が閾値を超えるイベントの発生をそれぞれ前記投光部による前記光の投光から周期的にカウントし、該カウントを前記複数回の光の投光について積算し、該積算結果に基づいて前記受光時間を検出する、請求項1から3のいずれか一項に記載の距離検出装置。
【請求項5】
前記時間検出部は、前記積算結果に含まれるカウントのピークが有限の幅を有している場合、前記ピークの中心位置から前記受光時間を検出する、請求項4に記載の距離検出装置。
【請求項6】
前記時間検出部は、前記積算結果に含まれるカウントのピークが有限の幅を有している場合、前記ピークの最大位置から前記受光時間を検出する、請求項4に記載の距離検出装置。
【請求項7】
前記時間検出部が前記受光時間を誤検出するおそれのある誤検出範囲を設定する設定部をさらに備え、
前記評価部は、前記対象物までの距離の演算結果の信頼性を、さらに前記誤検出範囲に基づいて評価する、請求項1から6のいずれか一項に記載の距離検出装置。
【請求項8】
前記評価部は、前記参照値が示す距離が前記誤検出範囲と重なる場合、前記誤検出範囲に含まれる前記対象物までの距離の演算結果の信頼性を高く評価する、請求項7に記載の距離検出装置。
【請求項9】
前記現在位置を受信する位置受信部をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の距離検出装置。
【請求項10】
前記位置情報を取得する取得部をさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の距離検出装置。
【請求項11】
前記対象物までの距離を表示する表示部をさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の距離検出装置。
【請求項12】
対象物に向けて光を投光する投光部と、
前記対象物からの反射光を受光する受光部と、
前記投光部による前記光の投光から前記受光部による前記反射光の受光までの受光時間を検出する時間検出部と、
前記時間検出部による前記受光時間の検出結果に基づいて前記対象物までの距離を演算する演算部と、
前記演算部による前記対象物までの距離の演算結果の信頼性を、前記演算結果に対応する距離の前記対象物までの距離に関する参照値からのずれに基づいて評価する評価部と、
前記時間検出部が前記受光時間を誤検出するおそれのある誤検出範囲を設定する設定部とを備え、
前記評価部は、前記対象物までの距離の演算結果の信頼性を、さらに前記誤検出範囲に基づいて評価する、距離検出装置。
【請求項13】
距離検出装置から対象物に向けて光を投光する段階と、
前記対象物からの反射光を受光する段階と、
前記光の投光から前記反射光の受光までの受光時間を検出する段階と、
前記受光時間の検出結果に基づいて前記対象物までの距離を演算する段階と、
前記対象物までの距離の演算結果の信頼性を、前記演算結果に対応する距離の前記対象物までの距離に関する参照値からのずれに基づいて評価する段階と、
を備え、前記対象物までの距離に関する参照値は、前記距離検出装置の現在位置の位置情報と前記対象物の位置情報とに基づいて取得される前記現在位置から前記対象物までの距離であ距離検出方法。
【請求項14】
前記評価する段階では、前記演算する段階で前記対象物までの距離の演算結果が複数得られた場合に、複数の演算結果のそれぞれの信頼性をそれぞれの演算結果に対応する距離の前記対象物までの距離に関する参照値からのずれに基づいて評価し、該評価結果に基づいて前記複数の演算結果のなかから前記信頼性の高い演算結果を選択する、請求項13に記載の距離検出方法。
【請求項15】
前記評価する段階では、前記参照値からのずれが小さいほど前記信頼性を高く評価する、請求項14に記載の距離検出方法。
【請求項16】
コンピュータに、
距離検出装置から対象物に向けて光を投光する手順と、
前記対象物からの反射光を受光する手順と、
前記光の投光から前記反射光の受光までの受光時間を検出する手順と、
前記受光時間の検出結果に基づいて前記対象物までの距離を演算する手順と、
前記対象物までの距離の演算結果の信頼性を、前記演算結果に対応する距離の前記対象物までの距離に関する参照値からのずれに基づいて評価する手順と、
を実行させ、前記対象物までの距離に関する参照値は、前記距離検出装置の現在位置の位置情報と前記対象物の位置情報とに基づいて取得される前記現在位置から前記対象物までの距離であプログラム。
【請求項17】
前記評価する手順では、前記演算する段階で前記対象物までの距離の演算結果が複数得られた場合に、複数の演算結果のそれぞれの信頼性をそれぞれの演算結果に対応する距離の前記対象物までの距離に関する参照値からのずれに基づいて評価し、該評価結果に基づいて前記複数の演算結果のなかから前記信頼性の高い演算結果を選択する、請求項16に記載のプログラム。
【請求項18】
前記評価する手順では、前記参照値からのずれが小さいほど前記信頼性を高く評価する、請求項17に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離検出装置、距離検出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物に向けて光を投光し、対象物からの反射光を受光するまでの受光時間に基づいて対象物までの距離を測定する距離検出装置において、対象物と異なる別の物体からの反射光を受光するなどにより距離を誤検出することがある。特許文献1には、ゴルフ場において、グリーン上のフラッグを測距する場合に、フラッグが位置し得るグリーンの前後の範囲を地図データに基づいて定め、その範囲内に測距結果が含まれる場合にその結果を表示し、含まれない場合に再度測距する距離検出装置が開示されている。
[特許文献1] 米国特許出願公開第2017/0354858号明細書
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、対象物に向けて光を投光する投光部と、対象物からの反射光を受光する受光部と、投光部による光の投光から受光部による反射光の受光までの受光時間を検出する検出部と、検出部による受光時間の検出結果に基づいて対象物までの距離を演算する演算部と、演算部による対象物までの距離の演算結果の信頼性を、演算結果に対応する距離の対象物までの距離に関する参照値からのずれに基づいて評価する評価部と、を備える距離検出装置が提供される。
【0004】
本発明の第2の態様においては、対象物に向けて光を投光する段階と、対象物からの反射光を受光する段階と、光の投光から反射光の受光までの受光時間を検出する段階と、受光時間の検出結果に基づいて対象物までの距離を演算する段階と、対象物までの距離の演算結果の信頼性を、演算結果に対応する距離の対象物までの距離に関する参照値からのずれに基づいて評価する段階と、を備える距離検出方法が提供される。
【0005】
本発明の第3の態様においては、コンピュータに、対象物に向けて光を投光する手順と、対象物からの反射光を受光する手順と、光の投光から反射光の受光までの受光時間を検出する手順と、受光時間の検出結果に基づいて対象物までの距離を演算する手順と、対象物までの距離の演算結果の信頼性を、演算結果に対応する距離の対象物までの距離に関する参照値からのずれに基づいて評価する手順と、を実行させるプログラムが提供される。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る距離検出装置の構成を示す。
図2】処理部の機能構成を示す。
図3A】時間検出部により作成される対象物までの距離を表す度数ヒストグラム(上段)及び評価部による対象物までの距離に関する参照値(下段)からのずれに基づく信頼性評価の一例を示す。
図3B】時間検出部により作成される対象物までの距離を表す度数ヒストグラム(上段)及び評価部による対象物までの距離に関する参照値(下段)からのずれに基づく信頼性評価の別の例を示す。
図3C】時間検出部により作成される対象物までの距離を表す度数ヒストグラム(上段)及び評価部による対象物までの距離に関する参照値(下段)からのずれに基づく信頼性評価のさらに別の例を示す。
図4A】度数ヒストグラムに表れるピークが有限の幅を有する場合における演算結果の信頼性評価の一例を示す。
図4B】度数ヒストグラムに表れるピークが有限の幅を有する場合における演算結果の信頼性評価の別の例を示す。
図4C】度数ヒストグラムに表れるピークが有限の幅を有する場合における演算結果の信頼性評価のさらに別の例を示す。
図5】対象物までの距離に関する参照情報が有限の距離範囲を指す場合における演算結果の信頼性評価の一例を示す。
図6A】設定部により霧モヤ等に由来する誤検出範囲が設定された場合における演算結果の信頼性評価の一例を示す。
図6B】設定部により霧モヤ等に由来する誤検出範囲が設定された場合における演算結果の信頼性評価の別の例を示す。
図7】本実施形態に係る距離検出装置により実行される距離検出方法の動作フローを示す。
図8】変形例に係る処理部の機能構成を示す。
図9】対象物が距離測定装置より上方又は下方に位置する場合における傾斜を考慮した距離検出を示す。
図10】本実施形態に係るコンピュータの構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1に、本実施形態に係る距離検出装置10の構成を示す。ここで、投光部100が測定光を出射する方向、すなわち光線Bの矢印方向を前方、その逆方向、すなわち光線Aの矢印方向を後方とする。距離検出装置10は、対象物までの距離を検出する装置であり、投光部100、レチクルプレート140、接眼レンズ150、制御部132、受光部200、変換部240、及び処理部300を備える。
【0010】
投光部100は、対象物に向けて測定光を複数回、投光するユニットである。投光部100は、発光部130、正立プリズム120、及び対物レンズ110を有する。
【0011】
発光部130は、光源を用いて、一定の周期でパルス状の測定光(すなわち、光線B)を正立プリズム120に向けて出射する。光源として、たとえば、赤外線を発振する半導体レーザを採用することができる。発光部130は、一回の測距動作において、予め定められた数、例えば320発のパルス状の測定光を一定の周期、例えば500~700μ秒の周期で出射する。
【0012】
正立プリズム120は、発光部130から射出された測定光を前方に送るとともに、入射光線を後方の接眼レンズ150に送る光学素子である。正立プリズム120として、例えばダハプリズム、ポロプリズム等を採用することができる。正立プリズム120は、可視光帯域の光を反射し、赤外帯域の光を透過するダイクロイック反射面122、並びに可視光帯域及び赤外帯域の両方に対して高い反射率を有する全反射面124、126を有する。測定光(光線B)は、正立プリズム120においてダイクロイック反射面122を透過し、そして全反射面124において反射されて、光線Bとして距離検出装置10内を前方に伝播する。入射光線(光線A)は、正立プリズム120においてダイクロイック反射面122、全反射面124、126および他の反射面により反射される。それにより、入射光線により形成される倒立鏡像が正立正像に反転される。
【0013】
対物レンズ110は、正立プリズム120から出力される光線Bをコリメートし、光線Bとして距離検出装置10の前方に送る光学素子である。
【0014】
レチクルプレート140は、対物レンズ110の焦点位置に配置される。レチクルプレート140は、視準指標(不図示)及び表示部141を有する。視準指標は、例えば十字線、矩形枠、円形枠等の形状を有する。視準指標は、可視光に対して透明な板に印刷、食刻等により形成されてもよいし、透過型の液晶を用いて表示されてもよい。表示部141は、透過型の液晶等を用いて、対象物までの距離の計測結果を、文字、画像等によりユーザに示す。表示部141をレチクルプレート140に直接設けることに代えて、反射型の液晶と、当該液晶を用いた表示像をレチクルプレート140に導く光学系とにより構成してもよい。表示部141は、測距結果の他、電池の残量、アラート、時計等を併せて表示してもよい。なお、距離検出装置10とは別の装置が有する表示部に測距結果を表示させてもよい。
【0015】
接眼レンズ150は、入射光線を集光して光線Aとして後方に送る光学素子である。距離検出装置10の内部においてその前端を正立プリズム120の後端に対向する。
【0016】
正立プリズム120、対物レンズ110、レチクルプレート140、及び接眼レンズ150は、ユーザが対象物に対して距離検出装置10を視準する視準部を構成する。視準部は、投光部100と光学系の一部を共有し、これにより距離検出装置10において投光部100と視準部とで見かけの光軸が一致する。
【0017】
視準部には、距離検出装置10の前方に位置する対象物から反射又は散乱された光のうち、対物レンズ110の見込み角の範囲内を伝播する光線Aが入射する。光線Aは、対物レンズ110を介して光線Aとして集光し、正立プリズム120、レチクルプレート140、及び接眼レンズ150を通じて、距離検出装置10の後方に光線Aとして出射される。これにより、ユーザは、接眼レンズ150を通じて対象物の正立正像を観察することができる。
【0018】
ユーザが接眼レンズ150を通じて観察する対象物の像には、レチクルプレート140に配された視準指標が重畳される。それにより、ユーザは、接眼レンズ150を通じて観察する像に視準指標を重畳させることにより、距離検出装置10を対象物に視準する。この場合に、上記の通り投光部100と視準部とは見かけの光軸が一致するので、視準指標の示す位置に測定光が照射される。
【0019】
制御部132は、投光部100(発光部130)から出射される測定光の強度、出射回数、周期等を制御するユニットである。また、制御部132は、測定光の出射タイミングを処理部300に送信することもできる。これにより、処理部300は、投光部100による各測定光の投射に応じて、受光部200から出力される反射光の検出信号を処理することができる。制御部132は、距離検出装置10の筐体に設けられた操作ボタン133を含み、ユーザがこれを押下することで、後述する測距動作を開始する。
【0020】
受光部200は、対象物からの反射光を受光して、電気信号形式の検出信号を出力するユニットである。受光部200は、受光レンズ210、帯域透過フィルター220、及び受光素子230を含む。
【0021】
受光レンズ210は、対象物からの反射光(すなわち、光線C)を集光して、光線Cとして受光素子230に送る光学素子である。なお、受光レンズ210は、投光部100の対物レンズ110と異なる光軸を有する。
【0022】
帯域透過フィルター220は、反射光を含む狭い帯域の光を透過し、他の帯域の光を遮断又は減衰する光学素子である。帯域透過フィルター220は、受光レンズ210の後方に配されている。
【0023】
受光素子230は、反射光を受光して、その強度に対応する電気信号(検出信号とも呼ぶ)を出力する素子である。受光素子230は、例えば測定光の帯域に対して感度を有するフォトダイオード、フォトトランジスタ等を採用することができる。受光素子230は、帯域透過フィルター220の後方に配されている。なお、測定光に対して背景光の影響を排除するという観点から、受光素子230の受光面積はより小さいことが好ましい。
【0024】
上述の構成の受光部200において、受光レンズ210に、距離検出装置10の前方に位置する対象物から反射又は散乱された光線Cが入射する。光線Cは、受光レンズ210により集光されて光線Cとして帯域透過フィルター220を通過し、そして受光素子230により受光される。受光素子230は、受光した光の強度に対応した検出信号を変換部240に向けて出力する。
【0025】
変換部240は、例えば増幅器を含み、これにより受光素子230から出力された検出信号を増幅する。変換部240は、さらに、検出信号を差動信号に変換してもよい。それにより、伝送ノイズを低減することができる。変換部240は、増幅した検出信号を検出信号として処理部300に供給する。
【0026】
処理部300は、変換部240から出力される検出信号に基づいて、反射光の受光時間、すなわち、投光部100による各測定光の投光に対して、対象物により反射された当該測定光の反射光を受光部200(受光素子230)が受光した時間Tを決定し、さらに検出した時間Tから対象物までの距離を決定するユニットである。処理部300は、コンパレータ、プロセッサ、及び通信装置(いずれも不図示)を含む。
【0027】
コンパレータは、変換部240に接続され、これから出力される検出信号の強度を予め設定された閾値に対して比較し、大きい(小さい)場合に信号「1」(信号「0」)を出力する素子である。
【0028】
プロセッサは、処理プログラムを実行することにより、処理部300に、コンパレータの出力信号に基づいて対象物までの距離を決定する機能を発現させる。なお、処理プログラムは、例えばROM(不図示)に記憶され、それをプロセッサが読み出してRAMに展開することで起動される。
【0029】
通信装置は、外部デバイスと無線通信する装置である。
【0030】
図2に、処理部300の機能構成を示す。処理部300は、時間検出部310、演算部320、位置受信部350、取得部360、及び設定部370を有する。
【0031】
時間検出部310は、投光部100による測定光の投光から受光部200による反射光の受光までの受光時間を検出する。本実施形態では、ヒストグラム法を採用する。すなわち、時間検出部310は、投光部100による測定光の投射毎に、受光部200により反射光を受光することで得られる受光信号の強度が閾値を超えるイベントの発生をそれぞれ投光部100による測定光の投光から周期的にカウントし、このカウントを複数回の測定光の投光について積算し、この積算結果に基づいて受光時間を検出する。その検出結果は演算部320に送信される。なお、受光時間の検出は先述のヒストグラム法に限定されない。例えば、投光部100による測定光の投光毎に受光時間を算出し、投光毎に算出された受光時間の平均値に基づいて受光時間を検出することもできる。
【0032】
時間検出部310は、制御部132から送信される各測定光の出射タイミングによりトリガされて当該測定光の投射に対して共通のサンプリング周期(例えば、サンプリング周波数200MHz~300MHz、すなわち、1/200000~1/300000秒経過するごとに)でコンパレータの出力信号をそれぞれサンプリングし、各周期において信号「1」の場合にカウントする(カウンタ値を1つインクリメントする)。このように、イベントの発生の有無を各サンプリングタイミングでカウントする。時間検出部310は、イベントの発生のカウントをメモリに格納し、投光部100による複数回の測定光の投射について積算して、測定光の投射からの時間に対するイベントの発生回数のヒストグラムを作成する。
【0033】
時間検出部310は、投光部100によるすべての測定光の投射が終わると、イベントのカウントの積算結果、すなわちヒストグラムがカウントのピークを呈するサンプリングタイミングを検出する。このサンプリングタイミングが、測定光が射出されてから反射光が受光されるまでの受光時間Tを示すことになる。なお、受光信号が所定の信号幅を有していることなどに応じて、ヒストグラムに含まれるカウントのピークが有限の幅を有することがある。斯かる場合、時間検出部310は、ピークの中心位置、ピークの最大位置、又はピークの立ち上がりエッジの位置から受光時間Tを検出してよい。
【0034】
演算部320は、時間検出部310による受光時間Tの検出結果に基づいて対象物までの距離を演算する。演算部320は、受光時間Tの検出結果から対象物までの距離をTc/2(cは光速)の計算を行い算出する。測定光が発せられた測定位置から対象物までの往復に相当する距離を光が移動するのに要した時間が受光時間Tであるので、受光時間Tの2分の1に光速を掛けることになる。対象物までの距離の演算結果は評価部340に送信される。
【0035】
評価部340は、演算部320による対象物までの距離の演算結果の信頼性を、対象物までの距離に関する参照情報が指す参照値からのずれに基づいて評価するユニットである。距離検出装置10は、ユーザにより操作されて対象物に向けて測定光を投光するため、誤って対象物と異なる別の物体に測定光を投光する、対象物の手前に網(ネット)、ガラス、霧モヤ等の障害物がある場合にそれらに、又はそれらを通過して対象物に測定光を投光するなどにより、対象物までの距離を誤検出することがある。斯かる場合に、評価部340により演算結果の信頼性を評価することで、対象物までの正しい距離を提供することが可能となる。評価部340による対象物までの距離の演算結果の信頼性評価については後述する。
【0036】
対象物までの距離に関する参照情報(及び参照値)は、距離検出装置10の現在位置と対象物の位置情報とに基づいて取得される。参照情報(及び参照値)は、距離検出装置10による対象物までの距離の検出精度(すなわち、受光時間Tの検出精度)より精度は劣るが、取得する都度値が変わることがほとんどほとんどない信頼性の高い値(すなわち、再現性の高い値)であり、例えば後述するように全地球測位システム(GPS)データを用いて取得することができる。
【0037】
演算部320により対象物までの距離の演算結果が複数得られた場合、評価部340は、複数の演算結果のそれぞれについてそれぞれの演算結果に対応する距離の対象物までの距離に関する参照値からのずれに基づいて信頼性を評価する。評価部340は、参照値からのずれが最も小さい、特に距離検出装置10の検出誤差の範囲内で参照値と一致する演算結果を最も信頼性が高いと評価してよい。
【0038】
信頼性が評価された対象物までの距離の演算結果は、表示部141に送信される。それにより、演算結果がレチクルプレート140に表示され、ユーザが接眼レンズ150を通じて観察する測定対象物の像に対象物までの距離の演算結果が重畳される。
【0039】
位置受信部350は、距離検出装置10の現在位置に関する位置情報を受信するユニットである。位置受信部350は、例えば、ユーザが操作ボタン133を押下して測距動作を開始するのに応じて、GPS衛星から発せられるGPS信号等を受信することにより現在位置を取得することができる。取得した現在位置の位置情報は、取得部360に送信される。なお、位置受信部350がGPS信号等を直接受信するに限らず、距離検出装置10とは独立の外部デバイスを介して間接的に受信してもよい。
【0040】
取得部360は、対象物の位置情報を取得するユニットである。対象物の位置情報は、予めメモリ(不図示)等に格納された地図情報において対象物を特定すること或いは地図情報を有する外部デバイスに無線通信して対象物を特定することで取得することができる。地図情報は、建築物等、位置の指標となる指標物の位置情報(緯度及び経度、方位等)を含む情報であってよい。なお、地図情報は予めメモリ等に格納するに限らず、必要に応じて無線通信により距離検出装置10とは独立の外部デバイスからダウンロードしてメモリ等に格納してもよい。取得部360は、位置受信部350から受信した現在位置の位置情報と対象物の位置情報とに基づいて、現在位置から対象物までの距離を取得する。取得された距離は、対象物までの距離に関する参照値として評価部340に送信される。
【0041】
設定部370は、時間検出部310が受光時間Tを誤検出するおそれのある誤検出範囲を設定するユニットである。受光時間Tの誤検出の原因として、例えば霧モヤ等が発生した環境内での距離検出装置10の使用が考えられる。霧モヤによる誤検出範囲は、経験的に一意に設定できることが知られており、例えば数メートルから数10メートルの距離範囲と固定してもよい。設定された誤検出範囲はメモリ(不図示)に格納される。設定部370は、距離検出装置10が使用される都度、霧モヤの濃さを検出して自動で、又は手動で誤検出範囲を設定してもよい。
【0042】
設定部370により誤検出範囲が設定された場合、評価部340は、メモリから誤検出範囲を読み取り、さらにこれに基づいて対象物までの距離の演算結果の信頼性を評価する。例えば、評価部340は、対象物までの距離の演算結果が誤検出範囲に含まれる場合にその信頼性を低く評価する。
【0043】
評価部340による対象物までの距離の演算結果の信頼性評価について説明する。
【0044】
図3Aから図6Bに、距離検出装置10による距離検出において時間検出部310により作成される対象物までの距離を表す度数ヒストグラム(上段)及び対象物までの距離に関する参照情報が指す参照値(下段)の一例を示す。なお、度数ヒストグラムにおいて受光時間(t)が距離(tc/2)に変換されている。距離検出装置10は、先述のとおり、ユーザにより操作されて対象物に向けて測定光を投光するため、誤って対象物と異なる別の物体に測定光を投光する、対象物の手前に網(ネット)、ガラス、霧モヤ等の障害物がある場合にそれらに、又はそれらを通過して対象物に測定光を投光するなどにより、対象物までの距離を誤検出することがある。
【0045】
図3Aから図3Cにそれぞれ示す度数ヒストグラムでは、対象物からの反射光に由来する高いピークP1、P4、又はP5とともに、障害物からの反射光に由来する低いピークP2、P3、又はP6が現れている。この場合、演算部320により対象物までの距離の演算結果が2つ得られることになる。ここで、ピークの高さは距離に応じて変わり得るため、高いピークP1、P4、P5が対象物からの反射光に由来するピークと判断するのは妥当でない。そこで、評価部340は、複数の演算結果のそれぞれの信頼性を対象物までの距離に関する参照情報が指す参照値に基づいて評価する。
【0046】
図3Aに示す例では、参照情報が指す参照値は、2つのピークP1及びP2のうち、ピークP1が示す距離(距離の演算結果)に一致する。評価部340は、ピークP1が示す距離(距離の演算結果)の信頼性が高いと評価し、その演算結果を最終結果として選択し、表示部141に対象物までの距離として表示させる。他方、図3Bに示す例では、参照情報が指す参照値は、2つのピークP3及びP4のうち、ピークP4が示す距離(距離の演算結果)に一致する。評価部340は、ピークP4が示す距離(距離の演算結果)の信頼性が高いと評価し、その演算結果を最終結果として選択して表示部141に対象物までの距離として表示させる。このように、複数の演算結果のなかから信頼性の高い演算結果を選択することで、正しい対象物までの距離を提供することが可能となる。
【0047】
図3Cに示す例では、参照情報が指す参照値は、2つのピークP5及びP6が示す距離(距離の演算結果)のいずれにも一致しない。このように演算部320により対象物までの距離の演算結果が複数得られる場合、評価部340は、複数の演算結果のそれぞれの信頼性を対象物までの距離に関する参照情報が指す参照値からのずれに基づいて評価する。ここで、評価部340は、参照値からのずれが小さいほど信頼性を高く評価する。評価部340は、ピークP5及びP6のそれぞれについて参照値からのずれd5及びd6を演算し、それらを比較して最小のずれd5を与えるピークP5が対象物からの反射光に由来するピークであり、これが示す距離(距離の演算結果)の信頼性が最も高いと評価し、その演算結果を最終結果として選択して表示部141に対象物までの距離として表示させる。このように、複数の演算結果のなかから信頼性の高い演算結果を選択することで、正しい対象物までの距離を提供することが可能となる。また、参照値からのずれに基づいて距離の演算結果の信頼性を評価することで、すなわちずれの有無だけでなく、ずれがある場合の程度に基づいて信頼性を評価することで、演算結果及び参照情報ともに範囲を有しない場合においても演算結果の信頼性を評価することができる。
【0048】
図4Aから図4Cに、度数ヒストグラムに表れるピークが有限の幅を有する場合における演算結果の信頼性評価の例を示す。図4Aに示す例では、時間検出部310はピークPの幅を算出し、その中心位置を受光時間Tとして検出する。斯かる場合、評価部340は、ピークPの中心位置に対応する距離に対して参照値からのずれdを算出する。図4Bに示す例では、時間検出部310はピークPの最大位置を受光時間Tとして検出する。斯かる場合、評価部340は、ピークPの最大位置に対応する距離に対して参照値からのずれdを算出する。図4Cに示す例では、時間検出部310はピークPの立ち上がりエッジ(距離が小さい側のエッジ)の位置を受光時間Tとして検出する。斯かる場合、評価部340は、ピークPの立ち上がりエッジの位置に対応する距離に対して参照値からのずれdを算出する。評価部340は、度数ヒストグラムに複数のピークが現れた場合に、このように算出したずれdに基づいて複数の演算結果の信頼性を評価する。
【0049】
図5に、対象物までの距離に関する参照情報が有限の距離範囲を指す場合における演算結果の信頼性評価の例を示す。例えば、ゴルフ場のグリーン上にあるフラッグを対象物とする場合、フラッグ、すなわちカップの位置は日々変更され得ることから、参照情報として、フラッグが位置し得るグリーンの前後の距離範囲を距離検出装置10の現在位置と対象物の位置情報に基づいて取得されることがある。斯かる場合、参照情報は、有限の距離幅を有する参照範囲を指す。評価部340は、度数ヒストグラムに複数のピークP7及びP8が現れた場合に、参照範囲内に位置するピークP7が、対象物からの反射光に由来するピークであり、これが示す距離(距離の演算結果)の信頼性が最も高いと評価し、その演算結果を最終結果として選択して表示部141に対象物までの距離として表示させる。
【0050】
なお、参照情報が示す参照範囲内に複数のピークが現れた場合、それぞれのピークが示す距離を演算し、それらの演算結果のなかから最短距離又は最長距離を選択して表示部141に対象物までの距離として表示させてもよい。斯かる場合、最短距離及び最長距離のいずれを表示部141に表示させるかの選択を、ユーザにより使用前に設定させるようにしてもよい。
【0051】
なお、距離検出装置10の現在位置をGPS衛星から発せられるGPS信号等を受信することにより取得する場合に、GPS信号を受信する際に生じる誤差により参照情報が有限の距離幅の誤差を含むことがある。そこで、評価部340は、有限の誤差の範囲内に位置するピークが対象物からの反射光に由来するピークであるとして、これが示す距離(距離の演算結果)の信頼性を評価してもよい。なお、参照情報が有限の距離幅の誤差を含んでいる場合、評価部340は、参照情報の距離幅の中心位置を求め、複数の演算結果のそれぞれの信頼性を、演算結果に対応する距離と対象物までの距離に関する参照情報の中心位置のずれに基づいて評価してもよい。
【0052】
図6A及び図6Bに、設定部370により霧モヤ等に由来する誤検出範囲が設定された場合における演算結果の信頼性評価の一例を示す。これらに示す度数ヒストグラムでは、対象物からの反射光に由来するピークP9又はP12とともに、霧モヤからの散乱光等に伴う偽のピークP10又はP11が現れている。
【0053】
図6Aに示す例では、対象物からの反射光に由来するピークP9は誤検出範囲外に、霧モヤからの散乱光等に伴う偽のピークP10は誤検出範囲内に含まれている。斯かる場合、評価部340は、メモリから誤検出範囲を読み取り、さらにこれに基づいて対象物までの距離の演算結果の信頼性を評価する。例えば、評価部340は、対象物までの距離に関する参照情報が指す参照値が誤検出範囲と重なるか否か判断する。参照値が示す距離が誤検出範囲と重ならないと判断した場合、評価部340は、参照値からのずれの大小にかかわらず、ピークP10が示す距離(距離の演算結果)が誤検出範囲に含まれる場合にその信頼性を低く評価する。誤検出範囲はデフォルト値(固定値)であるため、信頼性評価処理を効率化することができる。その結果、評価部340は、実質的に、誤検出範囲外に位置するピークP9についてのみ参照値からのずれdを算出し、これに基づいてピークP9が示す距離(距離の演算結果)の信頼性を評価する。
【0054】
図6Bに示す例では、霧モヤからの散乱光等に伴う偽のピークP11は誤検出範囲外に、対象物からの反射光に由来するピークP12は誤検出範囲内に含まれている。斯かる場合、評価部340は、メモリから誤検出範囲を読み取り、さらにこれに基づいて対象物までの距離の演算結果の信頼性を評価する。例えば、評価部340は、対象物までの距離に関する参照情報が指す参照値が誤検出範囲と重なるか否か判断する。参照値が示す距離が誤検出範囲に重なると判断した場合、評価部340は、誤検出範囲に含まれるピークP12(距離の演算結果)の信頼性を高く評価する又は低く評価しない。つまり、評価部340は、ピークP11及びP12が誤検出範囲に含まれるか否かにかかわらず、それぞれについて参照値からのずれd11及びd12を算出し、実質的に、参照値からのずれのみに基づいてピークP11及びP12が示す距離(距離の演算結果)の信頼性を評価する。斯かる場合、評価部340は、ピークP12は誤検出範囲に含まれているにも関わらず、参照値からのずれd12≪d11であることから、ピークP12が対象物からの反射光に由来するピークであり、これが示す距離(距離の演算結果)の信頼性が最も高いと評価する。
【0055】
このように、度数ヒストグラムに現れるピーク(対象物までの距離の演算結果)が誤検出範囲に含まれる場合であっても、参照値が示す距離が誤検出範囲と重なることで演算結果の信頼性を不当に低く評価するのを回避し、高精度な距離検出を可能とする。
【0056】
図7に、本実施形態に係る距離検出装置10により実行される距離検出方法の動作フローを示す。動作フローは、ユーザにより操作ボタン133が押下されることに応じて、制御部132により開始される。なお、1回の距離検出において、測定光を複数(N≫1)回投射するものとする。
【0057】
ステップS1では、初期設定を行う。例えば、位置受信部350により、GPS衛星から発せられるGPS信号等を受信して距離検出装置10の現在位置に関する位置情報を受信する。取得部360により、予めメモリ(不図示)等に格納された地図情報において対象物を特定する或いは地図情報を有する外部デバイスに無線通信して対象物を特定して、対象物の位置情報を取得する。取得部360は、現在位置の位置情報と対象物の位置情報とに基づいて、現在位置から対象物までの距離を取得する。設定部370により、霧モヤ等により時間検出部310が受光時間Tを誤検出するおそれのある誤検出範囲を設定してもよい。
【0058】
ステップS2では、制御部132により、カウンタnを初期化(ゼロに設定)する。
【0059】
ステップS3では、投光部100により、対象物に向けて測定光を投光する。
【0060】
ステップS4では、受光部200により、対象物により反射された測定光、すなわち反射光を受光する。
【0061】
ステップS5では、処理部300(時間検出部310)により、ステップS3における投光部100による測定光の投射に対して、ステップS4において受光部200により反射光を受光することで得られる受光信号の強度が閾値を超えるイベントの発生をそれぞれ投光部100による測定光の投光から周期的にカウントし、該カウントを積算し、積算結果をメモリに格納する。
【0062】
ステップS6では、制御部132により、カウンタnを1インクリメントする。
【0063】
ステップS7では、制御部132により、カウンタnがN以上であるか判断する。カウンタnがN未満の場合、ステップS3に戻り、ステップS3~S7を繰り返す。すなわち、投光部100により測定光をN回対象物に向けて投光し、処理部300により、投光部100による各測定光の投射に対して受光信号の強度が閾値を超えるイベントの発生がそれぞれ測定光の投光から周期的にカウントされ、N回の測定光の投射について積算される。それにより、N回目の投光後は、対象物までの距離を表す度数ヒストグラムが作成される。
【0064】
カウンタnがN以上の場合、次のステップS8に進む。
【0065】
ステップS8では、時間検出部310により、ステップS3~S7において作成された対象物までの距離を表す度数ヒストグラムを用いて、投光部100による測定光の投光から受光部200による反射光の受光までの受光時間Tを検出する。受光時間Tの検出の詳細は先述のとおりである。
【0066】
ステップS9では、演算部320により、ステップS8において得られた受光時間Tの検出結果に基づいて対象物までの距離Tc/2(cは光速)を演算する。
【0067】
ステップS10では、評価部340により、対象物までの距離の演算結果の信頼性を、演算結果に対応する距離の対象物までの距離に関する参照値からのずれに基づいて評価する。評価部340は、ステップS9において対象物までの距離の演算結果が複数得られた場合に、複数の演算結果のそれぞれの信頼性を演算結果に対応する距離の対象物までの距離に関する参照値からのずれに基づいて評価し、その評価結果に基づいて複数の演算結果のなかから信頼性の高い演算結果を選択する。ここで、評価部340は、参照値からのずれが小さいほど信頼性を高く評価するから、参照値からのずれが最も小さい演算結果を選択する。参照値からのずれに基づく演算結果の信頼性評価については先述のとおりである。
【0068】
ステップS11では、評価部340により、信頼性が評価された対象物までの距離の演算結果が表示部141に送信される。それにより、演算結果がレチクルプレート140に表示され、測距方法の動作フローを終了する。
【0069】
本実施形態に係る距離検出装置10によれば、対象物に向けて光を投光する投光部100、対象物からの反射光を受光する受光部200、投光部100による測定光の投光から受光部200による反射光の受光までの受光時間を検出する時間検出部310、時間検出部310による受光時間の検出結果に基づいて対象物までの距離を演算する演算部320、及び演算部320による対象物までの距離の演算結果の信頼性を、演算結果に対応する距離の対象物までの距離に関する参照値からのずれに基づいて評価する評価部340を備える。時間検出部310による受光時間の誤検出のおそれがある場合に、演算部320による対象物までの距離の演算結果の信頼性を対象物までの距離に関する参照値からのずれに基づいて評価することで、信頼性が評価された演算結果により対象物までの正しい距離を提供することが可能となる。
【0070】
なお、複数の演算結果のなかから信頼性が最も高い結果を1つ選択することに代えて、信頼性が閾値以上のものを選択してもよく、信頼性が閾値を超えるものがない場合はエラーを表示してもよい。この手法により、演算結果が1つの場合であっても、信頼性の評価を行うことができる。
【0071】
図8に、変形例に係る処理部301の機能構成を示す。処理部301は、先述の実施形態に係る処理部300に対してさらに迎角補正部330を有する。例えば、図9に示すように、対象物が距離検出装置10より上方又は下方に位置する場合、水平面に対する光軸の傾斜を考慮して対象物までの水平距離を検出しなければならない。そこで、迎角補正部330は、ジャイロセンサ等により仰角θを検出し、仰角θ及び演算部320から出力される対象物までの直線距離Dの演算結果を用いて、水平距離d=Dcos(θ)を算出する。水平距離dの算出結果は、対象物までの距離として評価部340に送信される。なお、複数の演算結果を得られている場合は、Dを演算結果として、各演算結果に対して水平距離d=Dcos(θ)を算出してもよい。
【0072】
なお、地図情報上で位置を特定することができない対象物の距離検出を行う場合、まず、ユーザは、地図情報上で位置を特定することができる建築物等の指標を定める。次いで、ユーザは、距離検出装置10を所持して対象物の位置まで移動する。そして、ユーザは、距離検出装置10を用いて指標として定めた建築物等までの距離を検出する。このとき、距離検出装置10の現在位置に関する位置情報はGPS衛星から発せられるGPS信号等を受信することで取得することができる。指標の位置情報は地図情報から特定されている。現在位置の位置情報と指標の位置情報とに基づいて指標から対象物までの距離に関する参照値を取得することができる。このように距離検出することで、対象物を地図情報上で特定することができない場合においても、指標から対象物までの距離の演算結果の信頼性を指標から対象物までの距離に関する参照値からのずれに基づいて評価することができる。
【0073】
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0074】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0075】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0076】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0077】
図10は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0078】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インタフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0079】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0080】
通信インタフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0081】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0082】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0083】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0084】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0085】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0086】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0087】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0088】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0089】
10…距離検出装置、100…投光部、110…対物レンズ、120…正立プリズム、122…ダイクロイック反射面、124,126…全反射面、130…発光部、132…制御部、133…操作ボタン、140…レチクルプレート、141…表示部、150…接眼レンズ、200…受光部、210…受光レンズ、220…帯域透過フィルター、230…受光素子、240…変換部、300,301…処理部、310…時間検出部、320…演算部、330…迎角補正部、340…評価部、350…位置受信部、360…取得部、370…設定部、2200…コンピュータ、2201…DVD-ROM、2210…ホストコントローラ、2214…RAM、2216…グラフィックコントローラ、2218…ディスプレイデバイス、2220…入/出力コントローラ、2222…通信インタフェース、2224…ハードディスクドライブ、2226…DVD-ROMドライブ、2240…入/出力チップ、2242…キーボード。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10