(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】水溶性フィルムおよび包装体
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20230907BHJP
B65D 65/46 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C08J5/18 CEX
B65D65/46
(21)【出願番号】P 2020562510
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019051488
(87)【国際公開番号】W WO2020138439
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2018248287
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】岡本 稔
(72)【発明者】
【氏名】清水 さやか
(72)【発明者】
【氏名】風藤 修
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-119853(JP,A)
【文献】特開2016-150769(JP,A)
【文献】特開2017-217866(JP,A)
【文献】特開2017-110213(JP,A)
【文献】特開2017-119434(JP,A)
【文献】特開2002-317112(JP,A)
【文献】国際公開第2015/118978(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/198683(WO,A1)
【文献】特開2019-044021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00- 5/02、 5/12- 5/22
B65D 65/00-65/46
B29C 41/00-41/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール樹脂を含有し、グロス面の平均高さSRc(G)が1.8μm以下であり、最大高さSRz(G)が20μm以上50μm以下である、水溶性フィルム。
【請求項2】
マット面の平均高さSRc(M)と前記グロス面の平均高さSRc(G)との和{SRc(M)+SRc(G)}が2μm以上6μm以下である、請求項1に記載の水溶性フィルム。
【請求項3】
前記マット面の平均高さSRc(M)が1μm以上5μm以下である、請求項
2に記載の水溶性フィルム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の水溶性フィルムが薬剤を収容している包装体。
【請求項5】
グロス面が外表面である、請求項4に記載の包装体。
【請求項6】
前記の薬剤が農薬、洗剤または殺菌剤である、請求項4または5に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種薬剤の包装等に好適に使用されるポリビニルアルコール樹脂を含有する水溶性フィルム、およびそれを用いた包装体に関する。
【0002】
従来から、水溶性フィルムは、その水に対する優れた溶解性を利用して、液体洗剤や農薬や殺菌剤といった各種薬剤の包装や、種子を内包するシードテープ等、幅広い分野で使用されてきた。
【0003】
かかる用途に使用する水溶性フィルムには、主にポリビニルアルコール樹脂(以下、「PVA」と称することがある。)が用いられている。そして、つや消しやフィルム同士の滑り性向上の目的で、フィルム表面に凹凸形状を設けることがある。凹凸形状を設ける方法は、PVA水溶液中にフィラーを含有させておきこれを製膜する方法や、フィルムにエンボス加工を行う方法などがある(例えば特許文献1)。
【0004】
また、特許文献2には、薬剤包装体の作製において、水溶性フィルムを貼り合せる際に、エンボス面同士または非エンボス面同士を貼り合せることで、外観特性にすぐれた薬剤包装体が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-119434
【文献】特開2017-110213
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、意匠性の観点から光沢性のある高級感に優れた包装体の要求が高まっている。この場合、エンボス面のような凹凸の大きな面同士が貼り合され、凹凸の小さい面が表面側となるように包装体が作製されるため、包装体同士の耐ブロッキング性が不足し、保管中や輸送中に包装体が変形したり破れたりすることがあった。
【0007】
本発明は、表面光沢性に優れ、且つ耐ブロッキング性に優れる包装体の製造に好適に用いることができる水溶性フィルム、及びそれを用いた包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検証を進めた結果、ポリビニルアルコール樹脂を含有する水溶性フィルム表面の粗さについて、従来検討されてきた算術平均粗さRaのような線粗さではなく、面粗さにおける凹凸の高さに着目し、特に平均高さ及び最大高さを特定範囲とすることにより、上記課題が達成し得ることを見出した。そして、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は
[1]ポリビニルアルコール樹脂を含有し、グロス面の平均高さSRc(G)が1.8μm以下であり、最大高さSRz(G)が20μm以上50μm以下である、水溶性フィルム。
[2]マット面の平均高さSRc(M)と前記グロス面の平均高さSRc(G)との和{SRc(M)+SRc(G)}が2μm以上8μm以下である、前記[1]に記載の水溶性フィルム。
[3]前記マット面の平均高さSRc(M)が1μm以上4μm以下である、前記[2]に記載の水溶性フィルム。
[4]前記[1]から[3]のいずれかに記載の水溶性フィルムが薬剤を収容している包装体。
[5]グロス面が外表面である、前記[4]に記載の包装体。
[6]前記の薬剤が農薬、洗剤または殺菌剤である、前記[4]または[5]に記載の包装体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面光沢性に優れ、且つ耐ブロッキング性に優れる包装体の製造に好適に用いることができる水溶性フィルム、及びそれを用いた包装体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】フィルムの摩擦係数を測定するための装置の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0013】
本発明の水溶性フィルムは、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)を含有する。該フィルムの両表面の平均高さ(SRc)を測定した時、SRcが小さいほうの面をグロス面とし、グロス面の平均高さをSRc(G)、最大高さをSRz(G)とすると、本発明の水溶性フィルムはSRc(G)が1.8μm以下であり、最大高さSRz(G)が20μm以上50μm以下である。
【0014】
<フィルムの表面粗さ>
本発明では、フィルムの表面粗さを表す指標として、レーザー顕微鏡(例えば、オリンパス株式会社製「OLS 3100」)を用いて測定した200μm×200μmの範囲における平均高さSRc及び最大高さSRzを用いた。フィルム両面の平均高さSRcを測定し、平均高さSRcが小さいほうの面をグロス面、大きいほうの面をマット面とした。
【0015】
グロス面の平均高さSRc(G)は1.8μm以下であり、1.5μm以下が好ましく、1.2μmがより好ましい。SRc(G)が上記範囲内であると、フィルムがグロス面の表面光沢性に優れる。一方、SRc(G)の下限は、特に限定されるものではないが、生産性の観点から0.3μm以上が好ましい。
【0016】
グロス面の最大高さSRz(G)は20μm以上50μm以下である。SRz(G)が上記範囲内であると、グロス面同士の耐ブロッキング性に優れる。SRz(G)は25μm以上が好ましい。SRz(G)が小さすぎるとグロス面同士の耐ブロッキング性が不十分となる虞がある。一方、SRz(G)の上限は45μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましい。SRz(G)が大きすぎると外観等の他の性能との両立が難しくなる傾向がある。
【0017】
マット面の平均高さSRc(M)は1μm以上5μm以下であることが好ましい。SRc(M)が上記範囲内であると、マット面同士のシール性に優れる。フィルム生産性の観点からはSRc(M)は1.5μm以上が好ましい。SRc(M)の上限は4.5μm以下がより好ましく、4μm以下さらに好ましい。SRc(M)が大きすぎると、マット面同士のシール性が不足する傾向がある。
【0018】
マット面の最大高さSRz(M)は20μm以上80μm以下であることが好ましい。SRz(M)が上記範囲内であると、グロス面とマット面の滑り性を適切に調整しやすく、フィルムをロール状に巻くときに巻き皺が発生しにくくなる。SRz(M)の上限は70μm以下がより好ましく、60μm以下がさらに好ましい。一方、下限は30μm以上がより好ましい。
【0019】
マット面の平均高さSRc(M)とグロス面の平均高さSRc(G)との和{SRc(M)+SRc(G)}は2μm以上6μm以下であることが好ましい。{SRc(M)+SRc(G)}が上記範囲内であると、フィルムがグロス面とマット面とのシール性に優れる。近年、3枚のフィルムを貼り合せて作製した多室型の包装体に異なる2種類以上の薬剤を封入した製品が販売されている。このような多室型の包装体を作製する場合には必ずグロス面とマット面とを貼り合せる必要が生じる。そのため、従来検討されてきたグロス面同士、マット面同士のシール性だけでなく、グロス面とマット面のシール性の向上も必要とされるようになってきている。{SRc(M)+SRc(G)}の上限は5μm以下がより好ましい。一方、下限は2.5μm以上がより好ましく、3μm以上がさらに好ましい。
【0020】
マット面の最大高さSRz(M)とグロス面の最大高さSRz(G)との和{SRz(M)+SRz(G)}は40μm以上100μm以下であることが好ましい。{SRz(M)+SRz(G)}が上記範囲内であると、グロス面とマット面の滑り性が適切となるため、フィルムをロール状に巻くときに巻き皺が発生しにくくなる。{SRz(M)+SRz(G)}の上限は90μm以下が好ましい。一方、下限は50μm以上が好ましい。
【0021】
本発明では、かかるパラメータを上記範囲にコントロールすることが重要である。そのコントロールの方法としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂の種類(けん化度、変性量、未変性PVA/変性PVAのブレンド比等)を調整する方法、可塑剤の添加量を調整する方法、有機または無機の充填剤を添加する方法、フィルム製造条件(支持体の表面温度、熱処理条件、ドロー条件等)を調整する方法、支持体表面の凹凸形状を調整する方法、エンボス加工条件(フィルム水分率、加工温度、加工圧力、加工時間等)を調整する方法、またはこれらの組み合わせで調整する方法が挙げられる。
【0022】
<ポリビニルアルコール樹脂>
本発明の水溶性フィルムは、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)を含有する。
PVAとしては、ビニルエステルモノマーを重合して得られるビニルエステル重合体をけん化することにより製造された重合体を使用することができる。
ビニルエステルモノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリアン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等を挙げることができる。これらの中でも、ビニルエステルモノマーとしては、酢酸ビニルが好ましい。
【0023】
ビニルエステル重合体は、単量体として1種または2種以上のビニルエステルモノマーのみを用いて得られた重合体が好ましく、単量体として1種のビニルエステルモノマーのみを用いて得られた重合体がより好ましい。なお、ビニルエステル重合体は、1種または2種以上のビニルエステルモノマーと、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0024】
この他のモノマーとしては、例えば、エチレン;プロピレン、1-ブテン、イソブテン等の炭素数3~30のオレフィン;アクリル酸またはその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸またはその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル;アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N-メチロールアクリルアミドまたはその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩、N-メチロールメタクリルアミドまたはその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン等のN-ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;イタコン酸またはその塩、エステルもしくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。
なお、ビニルエステル重合体は、これらの他のモノマーのうちの1種または2種以上に由来する構造単位を有することができる。
【0025】
ビニルエステル重合体に占める他のモノマーに由来する構造単位の割合(以下、「変性度」と呼ぶことがある。)は、水溶性フィルムのシール性および機械的強度の双方を高める観点から、ビニルエステル重合体を構成する全構造単位のモル数に基づいて、15モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましい。
【0026】
PVAの重合度は、特に制限されないが、下記範囲が好ましい。すなわち、重合度の下限は、水溶性フィルムの十分な機械的強度を確保する観点から、200以上が好ましく、300以上がより好ましく、500以上がさらに好ましい。一方、重合度の上限は、PVAの生産性や水溶性フィルムの生産性等を高める観点から、8,000以下が好ましく、5,000以下がより好ましく、3,000以下がさらに好ましい。
【0027】
ここで、重合度とは、JIS K 6726-1994の記載に準じて測定される平均重合度を意味する。すなわち、本明細書において、重合度は、PVAの残存酢酸基をけん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から、次式により求められる。
重合度Po = ([η]×104/8.29)(1/0.62)
【0028】
本発明において、PVAのけん化度から上記変性度を引いた値は、64~97モル%が好ましい。当該値をかかる範囲に調整することにより、水溶性フィルムのシール性と機械的強度とを両立することができる。当該値の下限は、70モル%以上がより好ましく、75モル%以上がさらに好ましい。一方、当該値の上限は、93モル以下がより好ましく、91モル%以下がさらに好ましく、90モル%以下が特に好ましい。
【0029】
ここで、PVAのけん化度は、けん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステルモノマー単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して、ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。
PVAのけん化度は、JIS K 6726-1994の記載に準じて測定することができる。
【0030】
水溶性フィルムは、1種類のPVAを単独で含有してもよいし、重合度、けん化度および変性度等が互いに異なる2種以上のPVAを含有してもよい。
【0031】
水溶性フィルムにおけるPVAの含有量の上限は、100質量%以下が好ましい。一方、PVAの含有量の下限は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましい。
【0032】
<可塑剤>
水溶性フィルムは、可塑剤を含有することが好ましい。可塑剤を含むことにより、水溶性フィルムに、他のプラスチックフィルムと同等の柔軟性を付与することができる。このため、水溶性フィルムは、衝撃強度等の機械的強度や二次加工時の工程通過性等が良好になる。
可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ソルビトール等の多価アルコール等が挙げられる。これらの可塑剤は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水溶性フィルムの表面へブリードアウトが抑制されるという観点から、可塑剤としては、エチレングリコールまたはグリセリンが好ましく、グリセリンがより好ましい。
【0033】
水溶性フィルムにおける可塑剤の含有量の下限は、PVA100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。一方、可塑剤の含有量の上限は、PVA100質量部に対して、70質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。可塑剤の含有量が上記範囲であると、水溶性フィルムの衝撃強度等の機械的特性の改善効果を十分に得ることができる。また、水溶性フィルムが柔軟になり過ぎて取り扱い性が低下したり、表面へのブリードアウト等の問題を生じたりするのを好適に防止または抑制することができる。
【0034】
<澱粉/水溶性高分子>
水溶性フィルムは、澱粉および/またはPVA以外の水溶性高分子を含有してもよい。澱粉および/またはPVA以外の水溶性高分子を含むことにより、水溶性フィルムに機械的強度を付与したり、取り扱い時における水溶性フィルムの耐湿性を維持したり、あるいは溶解時における水の吸収による水溶性フィルムの柔軟化の速度を調節したりすることができる。
【0035】
澱粉としては、例えば、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、小麦澱粉、コメ澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉等の天然澱粉類;エーテル化加工、エステル化加工、酸化加工等が施された加工澱粉類等が挙げられるが、特に加工澱粉類が好ましい。
【0036】
水溶性フィルムにおける澱粉の含有量は、PVA100質量部に対して、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。澱粉の含有量が上記範囲であると、水溶性フィルムの工程通過性が悪化するのを防止または抑制することができる。
【0037】
PVA以外の水溶性高分子としては、例えば、デキストリン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、シェラック、アラビアゴム、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸の共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸の共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロース、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0038】
水溶性フィルムにおけるPVA以外の水溶性高分子の含有量は、PVA100質量部に対して、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。PVA以外の水溶性高分子の含有量が上記範囲であると、水溶性フィルムの水溶性を十分に高めることができる。
【0039】
<界面活性剤>
水溶性フィルムは、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤を含むことにより、水溶性フィルムの取り扱い性や、製造時における水溶性フィルムの製膜装置からの剥離性を向上することができる。
界面活性剤としては、特に制限されず、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等を用いることができる。
【0040】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸カリウム等のカルボン酸型界面活性剤;オクチルサルフェート等の硫酸エステル型界面活性剤;ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型界面活性剤等が挙げられる。
【0041】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型界面活性剤;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型界面活性剤;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型界面活性剤;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型界面活性剤;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型界面活性剤;ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型界面活性剤;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型界面活性剤等が挙げられる。
【0042】
このような界面活性剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水溶性フィルムの製膜時におけるスジ状欠点などの表面異常の低減効果に優れること等から、界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤が好ましく、アルカノールアミド型界面活性剤がより好ましく、脂肪族カルボン酸(例えば、炭素数8~30の飽和または不飽和脂肪族カルボン酸等)のジアルカノールアミド(例えば、ジエタノールアミド等)がさらに好ましい。
【0043】
水溶性フィルムにおける界面活性剤の含有量の下限は、PVA100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましい。一方、界面活性剤の含有量の上限は、PVA100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下がさらに好ましく、0.3質量部以下が特に好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲であると、製造時における水溶性フィルムの製膜装置からの剥離性が良好になるとともに、水溶性フィルム同士の間でのブロッキングの発生等の問題が生じ難くなる。また、水溶性フィルムの表面への界面活性剤のブリードアウトや、界面活性剤の凝集による水溶性フィルムの外観の悪化等の問題も生じ難い。
【0044】
<その他の成分>
水溶性フィルムは、可塑剤、澱粉、PVA以外の水溶性高分子、界面活性剤以外に、水分、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、架橋剤、着色剤、充填剤、防腐剤、防黴剤、他の高分子化合物等の成分を、本発明の効果を妨げない範囲で含有してもよい。
PVA、可塑剤、澱粉、PVA以外の水溶性高分子および界面活性剤の質量の合計値が水溶性フィルムの全質量に占める割合は、60~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましく、90~100質量%がさらに好ましい。
【0045】
<水溶性フィルム>
本発明の水溶性フィルムの、10℃の脱イオン水に浸漬したときの完溶時間は特に制限されないが、下記範囲が好ましい。完溶時間の上限は、150秒以内が好ましく、90秒以内がより好ましく、60秒以内がさらに好ましく、45秒以内が特に好ましい。完溶時間の上限が上記範囲の水溶性フィルムは、比較的早期に溶解が完了するため、薬剤等の包装用(包材用)フィルムとして好適に使用することができる。一方、完溶時間の下限は、5秒以上が好ましく、10秒以上がより好ましく、15秒以上がさらに好ましく、20秒以上が特に好ましい。このように完溶時間が短か過ぎない水溶性フィルムであれば、雰囲気中の水分の吸収による水溶性フィルム同士の間でのブロッキングの発生や、機械的強度の低下等の問題が生じ難くなる。
【0046】
水溶性フィルムを10℃の脱イオン水に浸漬したときの完溶時間は、以下のようにして測定することができる。
<1> 水溶性フィルムを20℃-65%RHに調整した恒温恒湿器内に、16時間以上置いて調湿する。
<2> 調湿した水溶性フィルムから、長さ40mm×幅35mmの長方形のサンプルを切り出した後、長さ35mm×幅23mmの長方形の窓(穴)が開口した50mm×50mmのプラスチック板2枚の間に、サンプルの長さ方向が窓の長さ方向に平行でかつ窓がサンプルの幅方向のほぼ中央に位置するように挟み込んで固定する。
【0047】
<3> 500mLのビーカーに300mLの脱イオン水を入れ、回転数280rpmで3cm長のバーを備えたマグネティックスターラーで攪拌しつつ、水温を10℃に調整する。
<4> 上記<2>においてプラスチック板に固定したサンプルを、マグネティックスターラーのバーに接触させないように注意しながら、ビーカー内の脱イオン水に完全に浸漬する。
<5> 脱イオン水に浸漬してから、脱イオン水中に分散したサンプル片が目視にて完全に消失するまでの時間を測定する。
上記の方法で測定される完溶時間はサンプルの厚みに依存するが、本明細書においては厚みに関係なく上記大きさのサンプルが完全に溶解するまでを完溶時間とした。
【0048】
水溶性フィルムの厚みは、特に制限されないが、下記範囲が好ましい。すなわち、厚みの上限は、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましく、50μm以下が特に好ましい。一方、厚みの下限は、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましく、20μm以上が特に好ましい。上記範囲の厚みは大き過ぎないため、水溶性フィルムの二次加工性が悪化するのを好適に防止することができる一方、小さ過ぎもしないため、水溶性フィルムに十分な機械的強度を確保することができる。
なお、水溶性フィルムの厚みは、任意の10箇所(例えば、水溶性フィルムの長さ方向に引いた直線上にある任意の10箇所)の厚みを測定し、それらの平均値として求めることができる。
【0049】
<水溶性フィルムの製造方法>
本発明の水溶性フィルムの製造方法は、特に制限されず、例えば、次のような方法を使用することができる。
PVAに溶媒、添加剤等を加えて均一化させた製膜原液を、流延製膜法、湿式製膜法(貧溶媒中への吐出)、乾湿式製膜法、ゲル製膜法(製膜原液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去する方法)、あるいはこれらの組み合わせにより製膜する方法や、押出機等を使用して得られた製膜原液をTダイ等から押出すことにより製膜する溶融押出製膜法やインフレーション成形法等が挙げられる。これらの中でも、水溶性フィルムの製造方法としては、流延製膜法および溶融押出製膜法が好ましい。これらの方法を用いれば、均質な水溶性フィルムを生産性よく得ることができる。
以下、水溶性フィルムを流延製膜法または溶融押出製膜法を用いて製造する方法について説明する。
【0050】
まず、PVAと、溶媒と、必要に応じて可塑剤等の添加剤とを含有する製膜原液を用意する。なお、製膜原液が添加剤を含有する場合、製膜原液における添加剤のPVAに対する比率は、前述した得られる水溶性フィルムにおける添加剤のPVAに対する比率と実質的に等しい。
次に、製膜原液を、金属ロールや金属ベルト等の回転する支持体上へ膜状に流涎(供給)する。これにより、支持体上に製膜原液の液状被膜を形成する。液状被膜は、支持体上で加熱されて溶媒が除去されることにより、固化してフィルム化する。
固化した長尺のフィルムは、支持体より剥離されて、必要に応じて乾燥ロール、乾燥炉等により乾燥されて、さらに必要に応じて熱処理されて、ロール状に巻き取られる。
【0051】
上記製膜原液の揮発分率(製膜時等に揮発や蒸発によって除去される溶媒等の揮発性成分の濃度)は、50~90質量%が好ましく、55~80質量%がより好ましい。揮発分率が上記範囲であると、製膜原液の粘度を好適な範囲に調整することができるので、水溶性フィルム(液状被膜)の製膜性が向上するとともに、均一な厚みを有する水溶性フィルムを得易くなる。
【0052】
ここで、本明細書における「製膜原液の揮発分率」とは、下記の式により求めた値をいう。
製膜原液の揮発分率(質量%)={(Wa-Wb)/Wa}×100
式中、Waは、製膜原液の質量(g)を表し、Wbは、Wa(g)の製膜原液を105℃の電熱乾燥機中で16時間乾燥した後の質量(g)を表す。
【0053】
製膜原液の調整方法としては、特に制限されず、例えば、PVAと、可塑剤、界面活性剤等の添加剤とを溶解タンク等で溶解させる方法や、一軸または二軸押出機を使用して含水状態のPVAを、可塑剤、界面活性剤等の添加剤と共に溶融混錬する方法等が挙げられる。
【0054】
製膜原液を流涎する支持体の表面温度は、50~110℃が好ましく、60~100℃がより好ましく、65~95℃がさらに好ましい。表面温度が上記範囲であると、液状被膜の乾燥が適度な速度で進むことにより、液状被膜の乾燥に要する時間が長くなり過ぎないので、水溶性フィルムの生産性が低下することもない。また、液状被膜の乾燥が適度な速度で進むことにより、水溶性フィルムの表面に発泡等の異常が生じ難い。
【0055】
支持体上で液状被膜を加熱すると同時に、液状被膜の非接触面側の全領域に、風速1~10m/秒の熱風を均一に吹き付けてもよい。これにより、液状被膜の乾燥速度を調節することができる。非接触面側に吹き付ける熱風の温度は、50~150℃が好ましく、70~120℃がより好ましい。熱風の温度が上記範囲であると、液状被膜の乾燥効率や乾燥の均一性等をより高めることができる。
【0056】
水溶性フィルムは、支持体上で好ましくは揮発分率5~50質量%にまで乾燥(溶媒除去)された後、支持体から剥離され、必要に応じてさらに乾燥される。
乾燥の方法としては、特に制限されず、乾燥炉に通過させる方法や、乾燥ロールに接触させる方法が挙げられる。
複数の乾燥ロールを用いて水溶性フィルムを乾燥させる場合は、水溶性フィルムの一方の面と他方の面とを交互に乾燥ロールに接触させることが好ましい。これにより、水溶性フィルムの両面におけるPVAの結晶化度を均一化させることができる。この場合、乾燥ロールの数は、3個以上が好ましく、4個以上がより好ましく、5~30個がさらに好ましい。
【0057】
乾燥炉または乾燥ロールの温度は、40~110℃が好ましい。乾燥炉または乾燥ロールの温度の上限は、100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましく、85℃以下が特に好ましい。一方、乾燥炉または乾燥ロールの温度の下限は、45℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
【0058】
乾燥後の水溶性フィルムには、必要に応じてさらに熱処理を行うことができる。熱処理を行うことにより、水溶性フィルムの機械的強度、水溶性、複屈折率等の特性を調整することができる。熱処理の温度は、60~135℃が好ましい。熱処理温度の上限は、130℃以下がより好ましい。
【0059】
水溶性フィルム表面を所望の表面粗さとするために、支持体表面に凹凸を施して製膜時に凹凸形状を有する水溶性フィルムを得る方法や、エンボス加工により水溶性フィルムに凹凸形状を施す方法を採用することができる。例えば、グロス面となる面に接触する支持体表面に平均の深さが1.8μm以下、最大深さが20μm以上50μ以下の凹部を形成することで、目的の表面粗さを有する水溶性フィルムを得ることができる。
【0060】
支持体表面に凹凸形状を施して製膜時に凹凸形状を有する水溶性フィルムを得る場合、フィルムの乾燥温度は50~170℃が好ましく、60~140℃がより好ましい。支持体上での乾燥時間は、0.5~20分が好ましく、1~15分がより好ましい。
【0061】
エンボス加工により水溶性フィルムに凹凸形状を施す場合、加工温度は60~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましい。加工圧力は0.1~15MPaが好ましく、0.3~8MPaがより好ましい。エンボス加工のフィルム搬送速度は5m/分以上が好ましく、10~30m/分がより好ましい。
【0062】
このようにして製造された水溶性フィルムは、必要に応じて、さらに、調湿処理、フィルム両端部(耳部)のカット等を施した後、円筒状のコアの上にロール状に巻き取られ、防湿包装されて製品となる。
【0063】
<用途>
本発明の水溶性フィルム(水溶性フィルム)は、一般の水溶性フィルムが適用される各種のフィルム用途に、より好適に使用することができる。
かかるフィルム用途としては、例えば、薬剤包装用フィルム、液圧転写用ベースフィルム、刺繍用基材フィルム、人工大理石成形用離型フィルム、種子包装用フィルム、汚物収容袋用フィルム等が挙げられる。これらの中でも、本発明の水溶性フィルムは、薬剤包装用フィルムに適用することが好ましい。
【0064】
本発明の水溶性フィルムを薬剤包装用フィルムに適用する場合、薬剤の種類としては、例えば、農薬、洗剤(漂白剤を含む)、殺菌剤等が挙げられる。
薬剤の物性は、特に制限されず、酸性であっても、中性であっても、アルカリ性であってもよい。
また、薬剤は、ホウ素含有化合物またはハロゲン含有化合物を含有してもよい。
【0065】
薬剤の形態としては、粉末状、塊状、ゲル状および液体状のいずれであってもよい。
包装形態も、特に制限されず、取り扱いの観点から薬剤を単位量ずつ包装(好ましくは密封包装)するユニット包装の形態が好ましい。
本発明の水溶性フィルムを薬剤包装用フィルムに適用して薬剤を包装することにより、本発明の包装体が得られる。換言すれば、本発明の包装体は、本発明の水溶性フィルムで構成された包材(カプセル)と、この包材に内包された薬剤とを含む。
【0066】
本発明の水溶性フィルムを、マット面同士を貼り合せてグロス面が表面側となるように包装体を製造することによって、表面光沢性に優れ、且つ耐ブロッキング性に優れる包装体を得ることができる。
フィルムを貼り合せる方法としては、特に限定されず公知の方法を採用することができ、例えば、熱シール、水シール、糊シールなどが挙げられ、中でも水シールが好ましい。
【実施例】
【0067】
以下に、本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら限定されない。なお、以下の実施例および比較例において採用された評価項目とその方法は、下記の通りである。
【0068】
(1)フィルム表面の平均高さSRcおよび最大高さSRz
水溶性フィルムをスライドガラス状に固定し、レーザー顕微鏡で表面粗さを分析した。20倍の測定画像から200×200μmの選択範囲におけるSRcおよびSRzを装置内で自動計算させ、各々10箇所の平均値を分析値とした。詳細な測定条件及び計算条件は以下の通りである。
【0069】
測定装置 :OLS 3100(オリンパス株式会社製)
測定条件 :Manual測定、ピッチ…0.30、ステップ…約80~150(サンプルによって適宜調節した)
最小高さの識別:断面曲線…Pzの10%、粗さ曲線…Rzの10%、うねり曲線…Wzの10%
最小長さの識別:基準長さ(画面視野)の1%
切断レベル差算出対象負荷長さ率:Rmr1…30%、Rmr2…60%
【0070】
(2)光沢度
水溶性フィルムを製膜方向(MD)約5cm×幅方向(TD)約5cmのサイズの正方形サンプルに切り出し、23℃-35%RHの環境下に16時間以上保持して調湿した。調湿後のサンプルのグロス面を光沢計にて、MDおよびTD方向の角度60°での光沢度を測定し、平均値を光沢度とした。
【0071】
(3)静止摩擦係数
水溶性フィルムの静摩擦係数をASTM D1894に準じて
図1の装置で測定した。フィルムサンプルを23℃-35%RHの環境下に16時間以上保持して調湿した。同環境下で、引張試験機に上部クリップ18および下部連結部24を固定し、切り出した2枚のサンプルを摩擦固定治具10の表面および12.7cm×12.7cmの大きさの摩擦スレッド12にそれぞれ固定した。サンプルはグロス面同士が接し、且つスレッドが動く方向がMD方向と平行になるように設置した。プルコード20にて滑車22を介して摩擦スレッド12を滑車がわに引き上げた。スレッドが移動を開始する力、すなわち試験力の第1のピークを測定した。測定は3回行い、平均値をスレッド重量で除した値を静摩擦係数とした。
【0072】
(4)水シール強度
水溶性フィルムを水シールで貼り合せてシール強度を測定し、シール性を評価した。貼り合せる際のフィルムの表裏を変更することによって、グロス面同士を貼り合せた場合のシール強度(G-Gシール強度)およびグロス面とマット面を貼り合せた場合のシール強度(G-Mシール強度)をそれぞれ測定した。
水溶性フィルムから製膜方向(MD)約30cm×幅方向(TD)約10cmのサイズの長方形サンプル2枚を切り出し、23℃-35%RHの環境下に16時間以上保持して調湿した。同環境下で調湿後のサンプル1枚を台上に置き、フィルムの四隅を粘着テープで固定した。さらにその上にもう1枚のサンプルを重ねて、10cmの辺の両端を粘着テープで固定し、固定されてない端部を140/10アニロックスローラーを使用して、ESIPROOFプルーフィングローラーに通した。0.5mLの脱イオン水を、ESIPROOFプルーフィングローラーのドクターブレード上に注ぎ、ローラーを約7.5cm/秒の速度で引いて、2枚のサンプルを貼り合せた。なおこの時、ローラーはサンプルの端まで引かず、引張試験機のチャックにセットするために、サンプルの端に貼り合せていない部分を残した。貼り合せたサンプルから、MDを長辺とする25mm幅の短冊状の試験片を3枚切り出した。
貼り合せてから10分間放置した後、試験片を引張試験機にセットして、JIS K6854-3:1999に基づいたT型はく離試験に準拠して引張速度254mm/分ではく離し、得られたはく離力(3つ)の平均値をシール強度とした。
【0073】
<実施例1>
まず、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られたPVA(けん化度88モル%、粘度平均重合度1700)100質量部、可塑剤としてグリセリン10質量部、界面活性剤としてラウリン酸ジエタノールアミド0.1質量部および水を配合して、製膜原液を調製した。なお、製膜原液の揮発分率は、68質量%であった。
次に、製膜原液をTダイから支持体である金属ロール(表面温度80℃)上に膜状に吐出して、金属ロール上に液状被膜を形成した。金属ロール上で、液状被膜の金属ロールとの非接触面の全体に、85℃の熱風を5m/秒の速度で吹き付けて乾燥した。これにより、水溶性フィルムを得た。
【0074】
次いで、水溶性フィルムを金属ロールから剥離して、水溶性フィルムの一方の面と他方の面とを複数の乾燥ロール(表面温度75℃)に交互に接触させて乾燥を行った。続いて、金属ロールと接していないほうの面に、表面粗さ(算術平均粗さRa)が3μmの梨地模様を有するエンボスロールおよびゴムロールであるバックアップロールを用いて、エンボスロール温度120℃、バックアップロール温度50℃および線圧25kg/cmの条件下、フィルムを12m/分の速度で進行させながらエンボス加工を行った後、円筒状のコア上にロール状に巻き取った。得られた水溶性フィルムは、厚み35μmであった。
得られた水溶性フィルムの表面粗さ、光沢度、静摩擦係数及び水シール強度を測定した。また、得られた水溶性フィルムの10℃の脱イオン水に浸漬したときの完溶時間を上記の方法で測定したところ、58秒であった。
【0075】
<実施例2、3及び比較例1、2>
フィルム厚み及びエンボス加工条件を表1のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして水溶性フィルムを得た。得られた水溶性フィルムの表面粗さ、光沢度、静摩擦係数及び水シール強度を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
【0077】
表1から明らかなように、本発明の水溶性フィルムは表面光沢に優れ、かつ耐ブロッキング性に優れている。
本発明の水溶性フィルムを薬剤等を収納する包装体に用いることで、得られる包装体は耐ブロッキングに優れ、保管中や輸送中に包装体が変形したり破れたりすることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0078】
10:摩擦固定冶具
12:摩擦スレッド
14:フィルム
18:上部グリップ
20:プルコード
22:滑車
24:下部連結部