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特許7344944ガス供給システム、基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-06
(45)【発行日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ガス供給システム、基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20230907BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20230907BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20230907BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/316 X
C23C16/455
C23C16/52
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021156017
(22)【出願日】2021-09-24
(65)【公開番号】P2023047087
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五島 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 薫
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-151602(JP,A)
【文献】特開2014-236018(JP,A)
【文献】特開平02-092894(JP,A)
【文献】国際公開第2004/007797(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/150615(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/316
C23C 16/455
C23C 16/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを生成する容器と、
前記容器と反応室との間に接続され直管部を有する第1配管と、
前記直管部の第1位置に設けられ前記ガスの圧力を測定する第1圧力測定部と、
前記直管部の前記第1位置より前記ガスの流れの下流側の第2位置に設けられ前記ガスの圧力を測定する第2圧力測定部と、
前記容器に接続され第1不活性ガスを前記容器へ供給する第2配管と、
前記第2配管に設けられ前記第2配管を流れる前記第1不活性ガスの流量を測定可能な第1不活性ガス供給部と、
前記第1圧力測定部からの測定信号と前記第2圧力測定部からの測定信号とから算出された前記直管部の圧力損失に基づき、前記直管部を流れる前記ガスの流量を演算し、演算結果に基づき前記ガスの流量を制御することと、前記直管部を流れる前記ガスの流量と、前記第1不活性ガスの流量と、を基に、前記容器で生成したガスの内の原料の流量を演算することが可能である様に構成された制御部と、
を有するガス供給システム。
【請求項2】
前記制御部は、演算された前記直管部を流れる前記ガスの流量と、前記第1不活性ガスの流量と、前記ガスの特性と、前記第1不活性ガスの特性と、に基づき、前記直管部を流れるガス中の原料の濃度を演算することが可能である様に構成される
請求項に記載のガス供給システム。
【請求項3】
前記第1配管に接続され第2不活性ガスを前記第1配管に供給する第3配管と、
前記第3配管に設けられ前記第3配管を流れる前記第2不活性ガスの流量を測定可能な第2不活性ガス供給部と、を更に有し、
前記制御部は、演算された前記直管部を流れるガスの流量と、前記第1不活性ガスの流量と、前記第2不活性ガスの流量と、を基に、前記容器で気化したガスの内の原料の流量を演算することが可能である様に構成される
請求項又はに記載のガス供給システム。
【請求項4】
前記制御部は、演算された前記直管部を流れる前記ガスの流量と、前記第1不活性ガスの流量と、前記第2不活性ガスの流量と、前記ガスの特性と、前記第1不活性ガスの特性と、前記第2不活性ガスの特性と、に基づき、前記直管部を流れるガス中の原料の濃度を演算することが可能である様に構成される
請求項のガス供給システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1圧力測定部の測定信号としての圧力値と、前記第2圧力測定部の測定信号としての圧力値との差に基づき、前記直管部を流れる前記ガス中の原料の流量を演算することが可能である様に構成される
請求項1~のいずれか一項に記載のガス供給システム。
【請求項6】
前記第1位置と前記第2位置との間に設けられた、1つ以上の第3圧力測定部を更に有し、
前記制御部は、前記第1圧力測定部と前記第2圧力測定部と前記第3圧力測定部とを用いて、前記直管部を流れる前記ガス中の原料の流量を演算することが可能である様に構成される
請求項1~のいずれか一項に記載のガス供給システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記第1圧力測定部と前記第2圧力測定部と前記第3圧力測定部のうち2つの圧力測定部を用いて前記ガスの流量を演算する処理と、
前記第1圧力測定部と前記第2圧力測定部と1つ以上の前記第3圧力測定部とを用いて、前記直管部を流れる前記ガス中の原料の流量を演算する処理と、が変更可能である様に構成される
請求項に記載のガス供給システム。
【請求項8】
前記制御部は、演算された前記直管部を流れる前記ガスの流量を基に、前記第1不活性ガス供給部を制御することによって、前記容器に供給される前記第1不活性ガスの流量を調整することが可能な様に構成される
請求項1~のいずれか一項に記載のガス供給システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記演算によって、前記直管部を流れる前記ガスの流量の減少が検出された場合に、前記第1不活性ガスの流量を増加させ、前記直管部を流れる前記ガスの流量の増加が検出された場合に、前記第1不活性ガスの流量を減少させる様に、前記第1不活性ガス供給部を制御可能に構成される
請求項に記載のガス供給システム。
【請求項10】
前記制御部は、演算された前記直管部を流れる前記ガスの流量を基に、前記第2不活性ガス供給部を制御することによって、前記第1配管に供給される前記第2不活性ガスの流量を調整することが可能な様に構成される
請求項3または4に記載のガス供給システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記第1不活性ガスの流量を増加させた場合に、前記第2不活性ガスの流量を減少させ、前記第1不活性ガスの流量を減少させた場合に、前記第2不活性ガスの流量を増加させる様に、前記第2不活性ガス供給部を制御可能に構成される
請求項10に記載のガス供給システム。
【請求項12】
前記第1圧力測定部と前記第2圧力測定部とは、いずれも絶対圧力計で構成される
請求項1~11のいずれか一項に記載のガス供給システム。
【請求項13】
基板を処理する反応室と、
ガスを生成する容器と、
前記容器と前記反応室との間に接続され直管部を有する第1配管と、
前記直管部の第1位置に設けられ前記ガスの圧力を測定する第1圧力測定部と、
前記直管部の前記第1位置より前記ガスの流れの下流側の第2位置に設けられ前記ガスの圧力を測定する第2圧力測定部と、
前記容器に接続され第1不活性ガスを前記容器へ供給する第2配管と、
前記第2配管に設けられ前記第2配管を流れる前記第1不活性ガスの流量を測定可能な第1不活性ガス供給部と、
前記第1圧力測定部からの測定信号と前記第2圧力測定部からの測定信号とから算出された前記直管部の圧力損失に基づき、前記直管部を流れる前記ガスの流量を演算し、演算結果に基づき前記ガスの流量を制御することと、前記直管部を流れる前記ガスの流量と、前記第1不活性ガスの流量と、を基に、前記容器で生成したガスの内の原料の流量を演算することが可能である様に構成された制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項14】
請求項13に記載の基板処理装置を用いて、
前記容器の中でガスを生成し、
前記直管部の前記第1位置における前記ガスの圧力を前記第1圧力測定部によって測定し、
前記直管部の前記第2位置における前記ガスの圧力を前記第2圧力測定部によって測定し、
前記第1圧力測定部からの測定信号と前記第2圧力測定部からの測定信号とから算出された前記直管部の前記圧力損失に基づき、前記直管部を流れる前記ガスの流量を演算し、
演算結果に基づき前記ガスの流量を制御する工程と、
前記流量を制御したガスを、前記反応室内の基板に供給する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載のガス供給システムにおいて、
前記容器の中でガスを生成し、
前記直管部の前記第1位置における前記ガスの圧力を前記第1圧力測定部によって測定し、
前記直管部の前記第2位置における前記ガスの圧力を前記第2圧力測定部によって測定し、
前記第1圧力測定部からの測定信号と前記第2圧力測定部からの測定信号とから算出された前記直管部の前記圧力損失に基づき、前記直管部を流れる前記ガスの流量を演算し、演算結果に基づき前記ガスの流量を制御する処理を、コンピュータにより前記制御部に実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス供給システム、基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造において、例えば基板の表面に所望の酸化膜を形成する成膜処理のような、基板処理が行われることが知られている。特許文献1には、成膜用のガスを基板が収容された反応室(処理室)に供給するガス供給システムを有し、供給されたガスを用いて基板を処理する基板処理装置が開示されている。
【0003】
一般に、反応室に供給されるガスの流量制御には、マスフローコントローラ(MFC)が用いられる場合が多い。特許文献1においても、原料が蓄積される容器と反応室との間に接続されたガス供給管には、流量制御用のMFCが設けられている。しかし、半導体装置の製造においては、MFCの有無に関わりなく、大流量のガスを安定に流すことができる新規な技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-045880号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上記に鑑みなされたものであって、大流量のガスの安定に流すことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、ガスを生成する容器と、前記容器と反応室との間に接続され直管部を有する第1配管と、前記直管部の第1位置に設けられ前記ガスの圧力を測定する第1圧力測定部と、前記直管部の前記第1位置より前記ガスの流れの下流側の第2位置に設けられ前記ガスの圧力を測定する第2圧力測定部と、前記第1圧力測定部からの測定信号と前記第2圧力測定部からの測定信号とから算出された前記直管部の圧力損失に基づき、前記直管部を流れる前記ガスの流量を演算し、演算結果に基づき前記ガスの流量を制御することが可能である様に構成された制御部と、を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、大流量のガスを安定に流すことができる技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略を示す縦断面図である。
図2図1におけるA-A線概略横断面図である。
図3】本開示の一実施形態における基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図4】本開示の一実施形態における基板処理工程を示すフローチャートである。
図5図5(A)は、基板上にMo含有膜を形成する前の基板の断面を示す図であり、図5(B)は、基板上にMo含有膜を形成した後の基板の断面を示す図である。
図6】本開示の一実施形態におけるガスの流量演算処理を示すフローチャートである。
図7】ガスが流れる直管部を説明する断面図である。
図8図8(A)は、基板処理において一例として設定された、第1の原料ガス、第1の不活性ガス及び第2の不活性ガスのそれぞれの経時的な流量の変化を説明するグラフであり、図8(B)は、演算された第1の原料ガスの流量に基づき制御された、第1の原料ガス、第1の不活性ガス及び第2の不活性ガスのそれぞれの経時的な流量の変化の一例を説明するグラフである。
図9図9(A)は、直管部において2点で圧力を測定する本実施形態に係る圧力損失の算出方法を説明する図であり、図9(B)は、直管部において5点で圧力を測定する第1変形例に係る圧力損失の算出方法を説明する図である。
図10図10(A)は、第2変形例に係るガス供給システムにおいて、第1圧力測定部と差圧計とを用いて圧力損失を算出する場合を説明する図であり、図10(B)は、第2圧力測定部と差圧計とを用いて圧力損失を算出する場合を説明する図である。
図11】第3変形例に係るガス供給システムの構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図11を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
まず、本実施形態に係るガス供給システム12(原料ガス供給システム12とも呼ぶ)が用いられる基板処理装置10の構成を説明する。なお、以下では、基板処理装置10の構成の概要をまず説明すると共に、基板処理装置10の構成のうちガス供給システム12に係る構成については、後の「(2)ガス供給システムの構成」において別に説明する。
【0011】
基板処理装置10は、加熱手段(加熱機構、加熱系)としてのヒータ207が設けられた処理炉202を備える。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0012】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成するアウタチューブ203が配設されている。アウタチューブ203は、例えば石英(SiO)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウタチューブ203の下方には、アウタチューブ203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)などの金属で構成され、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部と、アウタチューブ203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、アウタチューブ203は垂直に据え付けられた状態となる。
【0013】
アウタチューブ203の内側には、反応容器を構成するインナチューブ204が配設されている。インナチューブ204は、例えば石英(SiO)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。主に、アウタチューブ203と、インナチューブ204と、マニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の筒中空部(インナチューブ204の内側)には処理室201が形成されている。
【0014】
処理室201は、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で鉛直方向に多段に配列した状態で収容可能に構成されている。
【0015】
処理室201内には、ノズル410,420がマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420には、ガス供給管310,320が、それぞれ接続されている。ただし、本実施形態の処理炉202は上述の形態に限定されない。
【0016】
ガス供給管310,320には上流側から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)312,322がそれぞれ設けられている。また、ガス供給管310,320には、開閉弁であるバルブ314,324がそれぞれ設けられている。ガス供給管310,320のバルブ314,324の下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管510,520がそれぞれ接続されている。ガス供給管510,520には、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC512,522及び開閉弁であるバルブ514,524がそれぞれ設けられている。
【0017】
ガス供給管310,320の先端部にはノズル410,420がそれぞれ連結接続されている。ノズル410,420は、L字型のノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420の垂直部は、インナチューブ204の径方向外向きに突出し、かつ鉛直方向に延在するように形成されているチャンネル形状(溝形状)の予備室201aの内部に設けられており、予備室201a内にてインナチューブ204の内壁に沿って上方(ウエハ200の配列方向上方)に向かって設けられている。
【0018】
ノズル410,420は、処理室201の下部領域から処理室201の上部領域まで延在するように設けられており、ウエハ200と対向する位置にそれぞれ複数のガス供給孔410a,420aが設けられている。これにより、ノズル410,420のガス供給孔410a,420aからそれぞれウエハ200に処理ガスを供給する。このガス供給孔410a,420aは、インナチューブ204の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同一の開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔410a,420aは上述の形態に限定されない。例えば、インナチューブ204の下部から上部に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔410a,420aから供給されるガスの流量をより均一化することが可能となる。
【0019】
ノズル410,420のガス供給孔410a,420aは、後述するボート217の下部から上部までの高さの位置に複数設けられている。そのため、ノズル410,420のガス供給孔410a,420aから処理室201内に供給された処理ガスは、ボート217の下部から上部までに収容されたウエハ200の全域に供給される。ノズル410,420は、処理室201の下部領域から上部領域まで延在するように設けられていればよいが、ボート217の天井付近まで延在するように設けられていることが好ましい。
【0020】
ガス供給管310からは、不活性ガスが、MFC312、バルブ314、ノズル410を介して処理室201内に供給される。また、容器14から処理ガスとしての原料ガスが、バルブ316,ガス供給管310を介して、処理室201内に供給される。
【0021】
ガス供給管320からは、処理ガスとして、還元ガスが、MFC322、バルブ324、ノズル420を介して処理室201内に供給される。
【0022】
ガス供給管510,520からは、不活性ガスとして、例えば窒素(N)ガスが、それぞれMFC512,522、バルブ514,524、ノズル410,420を介して処理室201内に供給される。以下、不活性ガスとしてNガスを用いる例について説明するが、不活性ガスとしては、Nガス以外に、例えば、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いてもよい。
【0023】
主に、ガス供給管310,320、MFC312,322、バルブ314,324、ノズル410,420により処理ガス供給系が構成されるが、ノズル410,420のみを処理ガス供給系と考えてもよい。処理ガス供給系は単にガス供給系と称してもよい。ガス供給管310からMo含有ガスを流す場合、主に、ガス供給管310、MFC312、バルブ314によりMo含有ガス供給系が構成されるが、ノズル410をMo含有ガス供給系に含めて考えてもよい。また、ガス供給管320から還元ガスを流す場合、主に、ガス供給管320、MFC322、バルブ324により還元ガス供給系が構成されるが、ノズル420を還元ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、ガス供給管510,520、MFC512,522、バルブ514,524により不活性ガス供給系が構成される。
【0024】
本実施形態におけるガス供給の方法は、インナチューブ204の内壁と、複数枚のウエハ200の端部とで定義される円環状の縦長の空間内の予備室201a内に配置したノズル410,420を経由してガスを搬送している。そして、ノズル410,420のウエハ200と対向する位置に設けられた複数のガス供給孔410a,420aからインナチューブ204内にガスを噴出させている。より詳細には、ノズル410のガス供給孔410a、ノズル420のガス供給孔420aにより、ウエハ200の表面と平行方向に向かって処理ガス等を噴出させている。
【0025】
排気孔(排気口)204aは、インナチューブ204の側壁であってノズル410,420に対向した位置に形成された貫通孔であり、例えば、鉛直方向に細長く開設されたスリット状の貫通孔である。ノズル410,420のガス供給孔410a,420aから処理室201内に供給され、ウエハ200の表面上を流れたガスは、排気孔204aを介してインナチューブ204とアウタチューブ203との間に形成された隙間で構成された排気路206内に流れる。そして、排気路206内へと流れたガスは、排気管231内に流れ、処理炉202外へと排出される。
【0026】
排気孔204aは、複数のウエハ200と対向する位置に設けられており、ガス供給孔410a,420aから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向に向かって流れた後、排気孔204aを介して排気路206内へと流れる。排気孔204aはスリット状の貫通孔として構成される場合に限らず、複数個の孔により構成されていてもよい。
【0027】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、上流側から順に、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245,APC(Auto Pressure Controller)バルブ243,真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気及び真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができる。主に、排気孔204a,排気路206,排気管231,APCバルブ243及び圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0028】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に鉛直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属で構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219における処理室201の反対側には、ウエハ200を収容するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、アウタチューブ203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって鉛直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入及び搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217及びボート217に収容されたウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送系)として構成されている。
【0029】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で鉛直方向に間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される断熱板218が水平姿勢で多段(図示せず)に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。ただし、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料で構成される筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0030】
図2に示すように、インナチューブ204内には温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電量を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル410,420と同様にL字型に構成されており、インナチューブ204の内壁に沿って設けられている。
【0031】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a,RAM(Random Access Memory)121b,記憶装置121c,I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b,記憶装置121c,I/Oポート121dは、内部バスを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0032】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する半導体装置の製造方法の手順や条件などが記載されたプロセスレシピなどが、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する半導体装置の製造方法における各工程(各ステップ)をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピ、制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、プロセスレシピ及び制御プログラムの組み合わせを含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0033】
I/Oポート121dは、MFC312,322,516,526,512,522、バルブ314,316,324,514,518,524,528、圧力センサ16,18,245等に接続されている。また、I/Oポート121dは、APCバルブ243、真空ポンプ246、ヒータ207,307、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0034】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピ等を読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC312,322,512,522による各種ガスの流量調整動作、バルブ314,324,514,524の開閉動作等を制御するように構成されている。また、CPU121aは、APCバルブ243の開閉動作及びAPCバルブ243による圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動及び停止等を制御するように構成されている。また、CPU121aは、回転機構267によるボート217の回転及び回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、ボート217へのウエハ200の収容動作等を制御するように構成されている。
【0035】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0036】
(2)ガス供給システムの構成
次に、本実施形態に係るガス供給システム(原料ガス供給システム)について具体的に説明する。図1に示すように、ガス供給システム12は、容器14と、第1配管としてのガス供給管310と、第2配管515と、第3配管525と、第1圧力測定部16と、第2圧力測定部18と、制御部としてのコントローラ121と、を有する。
【0037】
(原料)
本実施形態では、原料は、50℃~200℃において、0.01~100KPaの飽和蒸気圧となる蒸気圧特性を有する材料である。さらに好ましくは、50℃~200℃において、0.01~5KPaの飽和蒸気圧となる低蒸気圧特性を有する材料である。なお、このような比較的低蒸気圧の特性を有する材料を、低蒸気圧材料(低蒸気圧原料)と呼ぶ。なお、本開示では、容器14内に存在する原料は、固体、液体、気体のいずれであってもよい。なお、常温・常圧で、固体状態の材料かつ低蒸気圧材料であっても良い。
【0038】
原料は、例えば、金属元素と、ハロゲン元素を含む材料であり得る。金属元素は、例えば、Al、Mo、W、Hf、Zr等から選択される。また、ハロゲン元素は、F、Cl、Br、I等から選択される。常温常圧で固体の原料としては、例えば、AlCl、AlCl、MoCl、WCl、HfCl、ZrCl、MoOCl、MoOCl等である。また、常温常圧で液体の原料としては、例えば、Ru、La等の金属元素の原料である。
【0039】
(容器)
容器14の内側には原料が貯蔵される。容器14は、原料を気化又は昇華して原料ガスを生成する。なお、本明細書では、原料が気体へと相変化することを、説明の便宜のため「気化又は昇華」と書き分けることなく、特に限定しない限り、単に「気化」と称する。
【0040】
容器14にはヒータ307が設けられ、ヒータ307によって容器14の温度が調節されることで、原料の気化量が制御される。容器14の温度は、基板処理ごとに変更され得る。また、容器14と、ガス供給管310とガス供給管510との合流部との間には、バルブ316が設けられている。
【0041】
(第1配管)
本開示の第1配管に相当するガス供給管310は、容器14と処理室201との間に接続され、直管部SRを有する。本実施形態の直管部SRは、直円筒状である。なお、本開示では、直管部SRは、直円筒状に限定されず、例えば、底面が三角形状や四角形状である直角筒状であってもよい。圧力損失の算出方法については、後で説明する。
【0042】
直管部SRは、管の軸方向の両端に、第1位置B1と第2位置B2とを備える。第2位置B2は、第1位置B1より原料ガスの流れの下流側に、一定の間隔を空けて位置する。間隔は、適宜設定できるが、本実施形態では例えば、500mmである。直管部SRの第1位置B1には、第1圧力測定部16が設けられる。また、直管部SRの第2位置B2には、第2圧力測定部18が設けられる。図示を省略するが、直管部SRには配管加熱ヒータと断熱材が巻き付けられる。断熱材によって、直管部SRでは、原料ガスの温度が、ガスの流れの方向に対して一定に保持される。
【0043】
本実施形態では、直管部SRにおける第1位置B1と第2位置B2との間の圧力損失は、直管部SRの内側を流れる原料ガスの流量を演算することが可能である様に、所定の圧力損失に構成される。本実施形態では、「所定の圧力損失に構成される」とは、具体的には、原料ガスと内壁面との間で生じる摩擦による圧力損失であることを意味する。
【0044】
このため、本実施形態では、圧力損失が測定される部分には、オリフィスやバルブ等の部材が設けられない。また、エルボ等の曲げ部や絞り部等が形成されない。すなわち、直管部SRの内側では、流路の内径の変化や流路の屈曲等が形成されないことによって、内壁面との間で生じる摩擦以外の圧力損失が「0」となる様に構成される。
【0045】
(第2配管)
第2配管515は、ガス供給管510から分岐した配管であり、容器14に接続され、容器14に第1不活性ガスを供給する。第2配管515には、第1不活性ガスを供給する第1不活性ガス供給部516とバルブ518とが設けられる。第1不活性ガスは、例えば、ArやNであり、原料の気化を促進する。第1不活性ガスの供給を調整することによって、原料の気化量を制御できる。
【0046】
(第1不活性ガス供給部)
第1不活性ガス供給部516は、第2配管515を流れる第1不活性ガスの流量を測定可能であるように、流量制御部又は流量測定部で構成され得る。流量制御部は、例えば、MFC(マスフローコントローラ)であり、流量測定部は、例えば、MFM(マスフローメーター)である。なお、第1不活性ガス供給部としては、MFC又はMFMだけでなく、不活性ガス供給系の一部又は全部を含めて考えてよい。
【0047】
第1不活性ガス供給部516は、第2配管515を介して容器14に第1不活性ガスを供給する。第1不活性ガスが容器14に供給される間、容器14の温度は、一定に保持される。第1不活性ガスの供給によって、容器14内で、第1の原料ガスとしての気化した原料と第1不活性ガスとが混合する。混合ガスは、第2の原料ガスとして生成され、容器14から下流測に送り出される。なお、本開示では、第2配管515、第1不活性ガス供給部516及びバルブ518は、必須ではない。
【0048】
(第3配管)
第3配管525は、ガス供給管520から分岐した配管であり、ガス供給管310に接続されガス供給管310に第2不活性ガスを供給する。第3配管525には、第2不活性ガスを供給する第2不活性ガス供給部526とバルブ528とが設けられる。
【0049】
(第2不活性ガス供給部)
第2不活性ガス供給部526は、第3配管525を流れる第2不活性ガスの流量を測定可能であるように、流量制御部又は流量測定部で構成され得る。流量制御部は、例えば、MFCであり、流量測定部は、例えば、MFMである。第2不活性ガスは、例えば、ArやNであり、原料ガスを希釈するために用いられる。なお、第2不活性ガス供給部としては、MFC又はMFMだけでなく、不活性ガス供給系の一部又は全部を含めて考えてよい。
【0050】
第2不活性ガスの供給によって、容器14から送り出された混合ガスである第2の原料ガスに、更に第2不活性ガスが混合される。そして、気化した原料と第1不活性ガスと第2不活性ガスとを含む混合ガスが、第3の原料ガスとしてガス供給管310の直管部SRに送り出される。なお、本開示では、第3配管525、第2不活性ガス供給部526及びバルブ528は、必須ではない。
【0051】
(圧力測定部)
第1圧力測定部16と第2圧力測定部18とは、ガス供給管310に沿って直列に設けられる。第1圧力測定部16は、第1位置B1における原料ガスの圧力を測定する。第2圧力測定部18は、第2位置B2における原料ガスの圧力を測定する。第1圧力測定部16及び第2圧力測定部18は、例えば圧力センサである。第1圧力測定部16からの測定信号と第2圧力測定部18からの測定信号とは、コントローラ121に入力される。なお、本開示では、測定信号は、圧力自体の数値(圧力値)に限定されない。測定信号としては、例えば、圧力自体の数値に対応して、圧力測定部が設定する数値や記号等の組み合わせを含むデジタル信号等でもよい。本開示では、圧力損失を算出可能な信号であれば、任意の測定信号を採用できる。
【0052】
本実施形態では、第1圧力測定部16と、第2圧力測定部18とは、いずれも絶対圧力計で構成される。すなわち、本実施形態の測定信号は、絶対圧力の値である。絶対圧力計を使用する場合、例えば、ポンプで真空引きを行い、0(ゼロ)Paの状態を、流体の分子が1個もない、圧力計の仮のゼロ点として記憶させることができる。なお、本開示では、圧力計は、絶対圧力計に限定されず、例えば、大気圧を基準としたゲージ圧力を測定する圧力計等、他の任意の圧力計を使用できる。
【0053】
(制御部)
本開示の制御部に相当するコントローラ121は、第1圧力測定部16からの測定信号と第2圧力測定部18からの測定信号とから、第1位置B1と第2位置B2との間の圧力損失を算出する。コントローラ121は、算出された圧力損失に基づき、原料ガス(第3の原料ガス)の流量を演算することが可能である様に構成される。
【0054】
(3)基板処理工程
次に、基板処理工程として、本実施形態に係る基板処理装置10を用いた半導体装置の製造工程を説明する。なお、以下では、半導体装置の製造工程の概要をまず説明すると共に、半導体装置の製造工程のうち原料ガス供給システム12を用いた原料ガス供給方法に係る部分については、後の「(4)原料ガス供給方法」において別に説明する。
【0055】
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、ウエハ200上に、例えば3DNANDのコントロールゲート電極として用いられるモリブデン(Mo)を含有するMo含有膜を形成する工程の一例について、図4図5(A)及び図5(B)を用いて説明する。ここでは、図5(A)に示すように、表面に、非遷移金属元素であるアルミニウム(Al)が含まれた金属含有膜であり、金属酸化膜である酸化アルミニウム(AlO)膜が形成されたウエハ200を用いる。そして、後述する基板処理工程により、図5(B)に示すように、AlO膜が形成されたウエハ200上にMo含有膜を形成する。Mo含有膜を形成する工程は、上述した基板処理装置10の処理炉202を用いて実行される。以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0056】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体」を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面」を意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0057】
(ウエハ搬入)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて、処理室201内に搬入(ボートロード)され、処理容器に収容される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介してアウタチューブ203の下端開口を閉塞した状態となる。
【0058】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ243がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。
【0059】
また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。以下において、ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば300℃以上600℃以下の範囲内の温度となるような温度に設定して行う。また、ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0060】
[ステップS10]
(金属含有ガス供給)
【0061】
バルブ314を開き、容器314に不活性ガスを流す。また、バルブ316を開き、容器14からガス供給管310内に原料ガスである金属含有ガスを流す。金属含有ガスは、MFC312により調整された不活性ガスの流量により流量調整され、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対して金属含有ガスが供給される。このとき同時にバルブ514を開き、ガス供給管510内に不活性ガスを流す。ガス供給管510内を流れた不活性ガスは、MFC512により流量調整され、金属含有ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル420内への金属含有ガスの侵入を防止するために、バルブ524を開き、ガス供給管520内に不活性ガスを流す。不活性ガスは、ガス供給管320、ノズル420を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0062】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力であって、例えば1000Paとする。MFC312で制御する不活性ガスの供給流量は、例えば0.1~1.0slm、好ましくは0.1~0.5slmの範囲内の流量とする。MFC512,522で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~20slmの範囲内の流量とする。なお、本開示における「1~3990Pa」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味するよって、例えば、「1~3990Pa」とは、「1Pa以上3990Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0063】
このとき処理室201内に流しているガスは金属含有ガスと不活性ガスのみである。ここで金属含有ガスとしては、モリブデン(Mo)含有ガスを用いることができる。Mo含有ガスとしては、例えばMoClガス、MoOClガス、MoOClガスを用いることができる。金属含有ガスの供給により、ウエハ200(表面の下地膜であるAlO膜)上に金属含有層が形成される。ここで、金属含有ガスとして、MoOClガス、MoOClガスのいずれかを用いた場合、金属含有層は、Mo含有層である。Mo含有層は、ClやOを含むMo層であってもよいし、MoOCl(MoOCl)の吸着層であってもよいし、それらの両方を含んでいてもよい。また、Mo含有層は、Moを主成分とする膜であり、Mo元素の他に、Cl、O、H、等の元素を含み得る膜である。
【0064】
[ステップS11(第1パージ工程)]
(残留ガス除去)
金属含有ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって例えば0.01~10秒後に、ガス供給管310のバルブ316(バルブ314)を閉じて、金属含有ガスの供給を停止する。つまり、金属含有ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~10秒の範囲内の時間とする。このとき排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは金属含有層形成に寄与した後の金属含有ガスを処理室201内から排除する。すなわち、処理室201内をパージする。このときバルブ514,524は開いたままとして、不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。不活性ガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留する未反応もしくは金属含有層形成に寄与した後の金属含有ガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0065】
[ステップS12]
(還元ガス供給)
処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ324を開き、ガス供給管320内に、還元ガスを流す。還元ガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、還元ガスが供給される。このとき同時にバルブ524を開き、ガス供給管520内に不活性ガスを流す。ガス供給管520内を流れた不活性ガスは、MFC522により流量調整される。不活性ガスは、還元ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル410内への還元ガスの侵入を防止するために、バルブ514を開き、ガス供給管510内に不活性ガスを流す。不活性ガスは、ガス供給管310、ノズル410を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0066】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力であって、例えば2000Paとする。MFC322で制御する還元ガスの供給流量は、例えば1~50slm、好ましくは15~30slmの範囲内の流量とする。MFC512,522で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~30slmの範囲内の流量とする。還元ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~120秒の範囲内の時間とする。
【0067】
このとき処理室201内に流しているガスは、還元ガスと不活性ガスのみである。ここで、還元ガスとしては、例えば水素(H)ガス、重水素(D2)ガス、活性化した水素を含むガス、等を用いることができる。還元ガスとしてHガスを用いた場合、Hガスは、ステップS10でウエハ200上に形成されたMo含有層の少なくとも一部と置換反応する。すなわち、Mo含有層中のOや塩素(Cl)が、Hと反応し、Mo層から脱離して、水蒸気(HO)や塩化水素(HCl)や塩素(Cl)等の反応副生成物として処理室201内から排出される。そして、ウエハ200上にMoを含みClとOを実質的に含まない金属層(Mo層)が形成される。
【0068】
[ステップS13(第2パージ工程)]
(残留ガス除去)
金属層を形成した後、バルブ324を閉じて、還元ガスの供給を停止する。
【0069】
そして、上述したステップS11(第1パージ工程)と同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくは金属層の形成に寄与した後の還元ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。すなわち、処理室201内をパージする。
【0070】
(所定回数実施)
上記したステップS10~ステップS13の工程を順に行うサイクルを1回以上(所定回数(n回))行うことにより、ウエハ200上に、所定の厚さ(例えば0.5~20.0nm)の金属含有膜を形成する。上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。また、ステップS10~ステップS13の工程をそれぞれ少なくとも1回以上行ってもよい。
【0071】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ガス供給管510,520のそれぞれから不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。不活性ガスはパージガスとして作用し、これにより処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0072】
(ウエハ搬出)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、アウタチューブ203の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200がボート217に支持された状態でアウタチューブ203の下端からアウタチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0073】
(4)原料ガス供給方法
次に、本実施形態に係る原料ガス供給システム12を用いて行われる原料ガス供給方法を、図6図8を参照して具体的に説明する。原料ガス供給方法は、図4中のステップS10の、原料ガスとして金属含有ガスを反応室である処理室201に供給する工程の際に実施される。
【0074】
まず、図6中のステップS20に示すように、容器14の中で原料を気化して第1の原料ガスを生成する。次に、ステップS21に示すように、第1不活性ガスを容器14に供給して、原料の気化を促進する。すなわち、第1の原料ガスと第1不活性ガスとが混合した第2の原料ガスが生成される。そして、第2の原料ガスを容器14の下流測に流す。
【0075】
次に、ステップS22に示すように、第2不活性ガスをガス供給管310に供給して、第2の原料ガスを希釈する。本実施形態では、第1不活性ガス及び第2不活性ガスとして、例えばNガス等、いずれも同じ種類のガスが使用される。すなわち、第2の原料ガスと第2不活性ガスとが混合した第3の原料ガスが生成する。生成された第3の原料ガスは、直管部SRへ流れる。
【0076】
次に、ステップS23に示すように、直管部SRの第1位置B1における第3の原料ガスの圧力を測定すると共に、ステップS24に示すように、直管部SRの第2位置B2における第3の原料ガスの圧力を測定する。測定された第1位置B1の圧力の値及び第2位置B2の圧力の値は、コントローラ121へ入力される。
【0077】
次に、ステップS25に示すように、第1位置B1の圧力と第2位置B2の圧力とから、第1位置B1と第2位置B2との間の圧力損失Δpを算出する。
【0078】
<原料ガスの流量演算処理>
次に、ステップS26に示すように、算出された圧力損失Δpに基づき、直管部SRを流れる第3の原料ガスの流量を演算する。また、第1の原料ガスの流量及び濃度が算出される。
【0079】
具体的には、まず、図7に示すように、直管部SRを流れる流体の流量Qmixと、第1位置B1の圧力pと第2位置B2の圧力pとの差圧である圧力損失Δpとの間には、以下の式(1)に示す比例関係が成り立つ。式(1)は、ハーゲン・ポアズイユの式に基づく。
【0080】
【数1】
【0081】
ここで、dは、直管部SRの配管の内径である。Lは、第1位置B1と第2位置B2との間隔である。πは、円周率である。d、L及びπは、いずれも既知の定数である。
【0082】
μmixは、成膜原料(プリカーサ)である第1の原料ガスと、気化促進用のキャリアガスである第1不活性ガスと、希釈ガスである第2不活性ガスを含む第3の原料ガスの粘性係数である。μmixは、含まれるそれぞれのガスの濃度により変化する未知数である。また、Qmixは、第3の原料ガスの体積流量である。なお、数1の式には適宜、補正係数を追加して計算しても良い。補正係数を追加して計算することにより、計算精度を向上させることが可能になる。
【0083】
本実施形態では、第1不活性ガス及び第2不活性ガスが同種のガスである。また、第1不活性ガス及び第2不活性ガスの流量はMFCで制御されるため、それぞれの流量の値を得ることができる。このため、第1の原料ガスと第1不活性ガスと第2不活性ガスとが混合された第3の原料ガスに対して、気化した原料である第1の原料ガスの濃度を算出することができる。
【0084】
次に、第1の原料ガスのモル濃度をx、第1不活性ガスと第2不活性ガスとの和に対応するガスのモル濃度をx(x=1-x)、とする。また、それぞれのガスが、単体で存在するときの粘性係数をμ,μとする。このとき、第1の原料ガス、第1不活性ガス及び第2不活性ガスが混合した第3の原料ガスの粘性係数μmixは、以下の(2)及び(3)の式によって表される。
【0085】
【数2】
【0086】
【数3】
【0087】
ここで、M,Mはそれぞれ、第1の原料ガスと、第1不活性ガスと第2不活性ガスとの和に対応するガスのそれぞれの分子量(モル質量)である。また、(T,P)=(273.15K,101325Pa)の状態を標準状態と呼ぶ。また、標準状態における、第3の原料ガス、第1の原料ガス、並びに、第1不活性ガスと第2不活性ガスとの和に対応するガスのそれぞれのガスの体積流量を、Q´mix,Q´,Q´とすると、以下の(4)及び(5)の関係式が成り立つ。
【0088】
【数4】
【0089】
【数5】
【0090】
なお、式(4)及び式(5)中の変数のうち、右肩に´(ダッシュ)が付された変数は、[SLM]又は[SCCM]単位での流量を意味する。任意の温度T、圧力pにおける流量Qと、標準状態における流量Q´との間には、以下の式(6)の関係が成り立つ。
【0091】
【数6】
【0092】
ここで、温度T及び圧力pは、直管部SRの温度及び平均圧力にそれぞれ等しく、いずれも測定可能な値である。上記の式(1)から式(6)において、独立な未知数は、流量Qmixとxである。未知数の解は、二分法による繰り返し計算を行うことで求めることができる。
【0093】
上記の演算によって、第1の原料ガスの流量及び濃度が算出される。なお、第1の原料ガス、並びに、第1不活性ガスと第2不活性ガスとの和に対応するガスの、それぞれのモル濃度、粘性係数、分子量、蒸気圧特性の少なくとも1つ以上は、本開示の「ガスの特性」に相当する。
【0094】
<演算結果に基づく制御動作>
コントローラ121は、演算された第1の原料ガスの流量を基に、第1不活性ガス供給部516を制御すると共に、第1不活性ガス供給部516の制御によって、容器14に供給される第1不活性ガスの流量を調整することが可能な様に構成される。
【0095】
また、コントローラ121は、演算された第1の原料ガスの流量を基に、第2不活性ガス供給部526を制御すると共に、第2不活性ガス供給部526の制御によって、ガス供給管310に供給される第2不活性ガスの流量を調整することが可能な様に構成される。
【0096】
図8(A)中には、基板処理において設定された、第1の原料ガスとしてのプリカーサ、第1不活性ガスとしてのキャリアガス、及び、第2不活性ガスとしての希釈ガスのそれぞれの経時的な流量の変化が例示されている。容器14の中の第1の原料ガスの流量は、経時的に一定である。また、第1不活性ガスと第2不活性ガスとの和に対応するガスの流量も、経時的に一定である。また、第1不活性ガスの流量は、経時的に漸増すると共に、第2不活性ガスの流量は、経時的に漸減する。
【0097】
一方、図8(B)中には、演算された第1の原料ガスの流量に基づき制御された、第1の原料ガス、第1の不活性ガス及び第2の不活性ガスのそれぞれの経時的な流量の変化が例示されている。
【0098】
図8(B)に示すように、本実施形態では、コントローラ121は、演算によって、第1の原料ガスの流量の減少が検出された場合に、処理室201に供給される第3の原料ガスの総流量を一定に保つように、第1不活性ガスの流量を増加させる。また、コントローラ121は、第1不活性ガスの流量を増加させた場合、処理室201に供給される第3の原料ガス中の第1の原料ガスの濃度を一定に保つように、第2不活性ガスの流量を減少させる。
【0099】
また、コントローラ121は、演算によって、第1の原料ガスの流量の増加が検出された場合に、処理室201に供給される第3の原料ガスの総流量を一定に保つように、第1不活性ガスの流量を減少させる。また、コントローラ121は、第1不活性ガスの流量を減少させた場合、第3の原料ガス中の第1の原料ガスの濃度を一定に保つように、第2不活性ガスの流量を増加させる。すなわち、本実施形態では、演算結果に基づいて、第1の原料ガスの流量、第2の原料ガスの流量、及び、第3の原料ガスの流量のいずれもが制御される。また、第2の原料ガス又は第3の原料ガス中における、第1の原料ガスの濃度も制御される。
【0100】
(5)本実施形態による効果
本実施形態では、ガス供給管310は、直管部SRを有し、直管部SRにおける上流側の第1位置B1と下流測の第2位置B2との間の圧力損失が、内側を流れる原料ガスの流量を演算することが可能である様に所定の圧力損失に構成される。
【0101】
また、原料ガスの流量は、例えば、ハーゲン・ポアズイユの式で規定される、体積流量と圧力損失との比例関係を用いて算出される。そして、算出された原料ガスの流量と、基板処理のために設定された原料ガスの流量との比較結果を用いて、設定された流量が達成されるように、後続の原料ガス供給処理を調整可能である。
【0102】
ここで、本実施形態では、ガス供給管310において圧力損失が測定される部分である、第1位置B1と第2位置B2との間の部分は、シンプルな直管部SRである。このため、第1位置B1と第2位置B2との間で測定される圧力損失は、原料ガスがガス供給管310内を通過する際の内壁面との間の摩擦による圧力損失のみである。よって、本実施形態では、原料ガス供給システム12の構成を簡易化でき、結果、原料ガスの流量を制御するための圧力測定の精度を向上させることができる。よって、本実施形態によれば、簡易な構成であっても原料ガスの流量を適切に制御できる。
【0103】
また、一般に、原料ガスの流量制御には、MFCが用いられる場合が多い。しかし、MFCによる流量制御の場合、MFCにおける流体の圧力損失が大きくなるため、適切な制御を行うためには、MFC上流側の配管内圧力を高くする必要がある。一方、現在、基板処理装置の原料ガス供給システム12では、原料の種類は多様化している。例えば、HfClやZrClのような、比較的低い蒸気圧で気化する材料(低蒸気圧原料)が、原料として使用される場合がある。
【0104】
原料ガスが低蒸気圧原料ガスであり、かつ、原料ガスの流れの下流側にMFCが配置される場合、MFC上流側の配管内の低蒸気圧原料ガス中の原料分圧が、飽和蒸気圧を超えてしまう懸念がある。この場合、必要な流量が流れなくなる課題がある。また、飽和蒸気圧を超えた低蒸気圧原料が、固化又は液化してしまう場合がある。
【0105】
圧力損失を小さく抑えることが可能な流量制御の方法の例として、例えば赤外線(IR)センサを用いた方法が考えられる。しかし、IRセンサは、コストが嵩むという課題がある。また、定期的なメンテナンスも必要になるため、メンテナンスの負担が大きくなるという課題もある。
【0106】
ここで、本実施形態では、固体状態の低蒸気圧原料を気化して原料ガスが生成される。本実施形態は、低蒸気圧原料を気化した原料ガスであっても、MFCを必要とすることなく、原料ガスの流量を適切に制御できるので、MFCを用いる場合の様に必要な流量を流せなくなることを抑制できる。すわなち、MFCと比較して大きな流量のガスを安定して流すことができる。また、本実施形態では、簡易な構成で原料ガスの流量を適切に制御できるので、IRセンサのような複雑な構造を必要としないで済む。このため、本実施形態は、低蒸気圧原料を用いて原料ガスを生成する場合に、特に有効である。
【0107】
また、本実施形態では、気化した原料である第1の原料ガスの流量が算出されるため、原料ガス供給処理におけるフィードバック制御を適切に行うことができる。
【0108】
また、本実施形態では、第1の原料ガスの流量に加え濃度も算出されるので、原料ガス供給処理におけるフィードバック制御をより適切に行うことができる。
【0109】
また、本実施形態では、第1圧力測定部16と、第2圧力測定部18とは、いずれも絶対圧力計で構成される。ここで、例えば、低蒸気圧原料の原料ガス流量の演算のように、体積流量から質量流量に換算する作業が生じる際、換算において絶対圧力の平均値が求められる場合がある。このため、絶対圧力計による圧力の測定は、原料ガス流量の演算精度を向上させることができる点で有利である。
【0110】
また、本実施形態では、コントローラ121は、演算によって、第1の原料ガスの流量の増減の変化が検出された場合に、処理室201に供給される第3の原料ガスの総流量を一定に保つように、第1不活性ガスの流量を増減させる。このため、単位時間当たりの第3の原料ガスの供給量を一定に保つことができるので、基板処理に必要な第3の原料ガスの不足を防止することができる。
【0111】
また、本実施形態では、コントローラ121は、第1不活性ガスの流量を増減させた場合、第3の原料ガス中の第1の原料ガスの濃度を一定に保つように第2不活性ガスの流量を増減させる。このため、基板処理における成膜品質のバラつきの一定化を図ることができる。
【0112】
また、本実施形態に係る原料ガス供給システム12を備える基板処理装置10によれば、基板処理装置10を簡易に構成できると共に、流量が適切に制御された第3の原料ガスを用いて、基板の品質を向上できる。
【0113】
同様に、本実施形態に係る原料ガス供給システム12を備える基板処理装置10を用いた半導体装置の製造方法によれば、流量が適切に制御された原料ガスを用いて、品質を向上させた半導体装置を製造できる。
【0114】
また、本実施形態に係る原料ガス供給システム12において、原料ガス供給方法を実行する一連の処理を、コンピュータによりコントローラ121に実行させるプログラムを作成してもよい。作成されたプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納できる。
【0115】
(6)他の実施形態
以上、本開示の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0116】
例えば、上記実施形態では、Mo含有ガスを用いる場合を例にして説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0117】
また、上記実施形態では、還元ガスとしてHガスを用いる場合を例にして説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0118】
また、上記実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型装置である基板処理装置を用いて成膜する例について説明したが、本開示はこれに限定されない。本開示は、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜する場合にも、好適に適用できる。
【0119】
(第1変形例)
例えば、本開示では、第1位置B1と第2位置B2との間に、1つ以上の第3圧力測定部が更に設けられてもよい。すなわち、圧力測定部に設けられる圧力計の個数は、3個以上であってよい。図9(A)中には、2個の圧力計を用いた2点測定の場合が例示されている。2点測定の場合、圧力計の誤差が大きくなる場合があり、結果、流量計算式のΔp/Lを正確に見積もることが難しくなる懸念がある。一方、図9(B)中には、第1位置B1と第2位置B2との間に、3個の第3圧力測定部19としての圧力計が設けられた第1変形例の場合の測定方法が例示されている。
【0120】
第1変形例では、3個以上の複数点の圧力を測定し、測定された複数の圧力を用いた最小二乗近似法によって、第1位置B1と第2位置B2との間の圧力損失(圧力勾配)を、より精度を高めて求めることができる。すなわち、圧力計の誤差を小さくできる。このため、流量の演算精度を向上できる。特に、第1変形例は、圧力計のフルスケールに対し差圧が小さい場合において、流量演算が必要とする精度に対し、個々の圧力計の誤差が無視できない場合に有用である。
【0121】
第1変形例のように、3個以上の複数点の圧力を測定する場合、コントローラ121は、第1圧力測定部16と第2圧力測定部18と第3圧力測定部とを用いて、原料ガスの流量を演算することになる。
【0122】
第1圧力測定部16と、第2圧力測定部18と、1個以上の第3圧力測定部とが設けられている場合、原料ガスの流量を演算する処理の際、2つの圧力測定部が用いられるか、又は、すべての圧力測定部が用いられるかいずれか選択される。具体的には、コントローラ121には、2つの圧力測定部を用いる演算プログラムと、すべての圧力測定部を用いる演算プログラムと、が両方備えられ、処理に用いられる演算プログラムが、選択された圧力測定部の個数に応じて変更可能である様に構成される。
【0123】
また、2つの圧力測定部が用いられる場合、コントローラ121は、第1圧力測定部16と第2圧力測定部18と第3圧力測定部のうち、任意の2つの圧力測定部を選択できると共に、選択された2つの圧力測定部を用いて原料ガスの流量を演算する処理を行う。また、すべての圧力測定部が用いられる場合、コントローラ121は、第1圧力測定部16と第2圧力測定部18と第3圧力測定部のすべての圧力測定部を用いて原料ガスの流量を演算する処理を行う。
【0124】
(第2変形例)
また、図10に示すように、本開示では、上流側の第1圧力測定部16及び下流側の第2圧力測定部18のうち一方の圧力計を、差圧計17に置き換えて、第1位置B1と第2位置B2とのそれぞれの圧力を測定してもよい。図10(A)中には、第2位置B2に圧力計の替わりに差圧計17が配置された場合が、また、図10(B)中には、第1位置B1に圧力計の替わりに差圧計17が配置された場合が、それぞれ例示されている。
【0125】
差圧計17としては、具体的には例えば、隔膜を用いて計測する型の差圧計を使用できる。差圧計17の使用によって、2個の圧力計を用いる場合に比べて、圧力計のゼロ点ズレによる測定誤差が生じ難くなり、結果、流量測定精度を向上させることができる。
【0126】
(第3変形例)
また、図11に示すように、本開示では、容器14の上流側に、第1不活性ガスの温度を制御する温度制御部HXが設けられてもよい。温度制御部HXは、コントローラ121に接続される。温度制御部HXは、例えば調温可能な配管ヒータや温度センサ等を含むことができる。
【0127】
第3変形例では、第1不活性ガスの温度は、成膜中にコントローラ121のフィードバック制御によって、温度制御部HXを介して変更できる。第1不活性ガスの温度が変更されることで、原料を気化する容器14内部の温度が変化し、変化に応じて原料の飽和蒸気圧が変化する。このため、原料の最大気化量を制御することが可能となる。
【0128】
例えば、第1不活性ガスの温度を増加させるように温度制御部HXを操作すると、容器14内の温度が上昇する為、飽和蒸気圧が上昇する。このため、容器14内に気化できる原料が増え、結果、処理室201に供給される原料の流量を増加することができる。また、第1不活性ガスが容器14に供給された後、容器14の温度を変更することにより、原料の飽和蒸気圧を速やかに変えることができる。
【0129】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0130】
(付記1)
ガスを生成する容器と、
前記容器と反応室との間に接続され直管部を有する第1配管と、
前記直管部の第1位置に設けられ前記ガスの圧力を測定する第1圧力測定部と、
前記直管部の前記第1位置より前記ガスの流れの下流側の第2位置に設けられ前記ガスの圧力を測定する第2圧力測定部と、
前記第1圧力測定部からの測定信号と前記第2圧力測定部からの測定信号とから算出された前記直管部の圧力損失に基づき、前記直管部を流れる前記ガスの流量を演算し、演算結果に基づき前記ガスの流量を制御することが可能である様に構成された制御部と、
を有するガス供給システム、が提供される。
【0131】
(付記2)
付記1のガス供給システムであって、好ましくは、
前記容器に接続され第1不活性ガスを前記容器へ供給する第2配管と、
前記第2配管に設けられ前記第2配管を流れる前記第1不活性ガスの流量を測定可能な第1不活性ガス供給部と、を更に有し、
前記制御部は、演算された前記直管部を流れるガスの流量と、前記第1不活性ガスの流量と、を基に、前記容器で生成したガスの内の原料の流量を演算する。
【0132】
(付記3)
付記2のガス供給システムであって、好ましくは、
前記制御部は、演算された前記直管部を流れる前記ガスの流量と、前記第1不活性ガスの流量と、前記ガスの特性と、前記第1不活性ガスの特性と、に基づき、前記直管部を流れるガス中の原料の濃度を演算する。
【0133】
(付記4)
付記2又は3のガス供給システムであって、好ましくは、
前記第1配管に接続され第2不活性ガスを前記第1配管に供給する第3配管と、
前記第3配管に設けられ前記第3配管を流れる前記第2不活性ガスの流量を測定可能な第2不活性ガス供給部と、を更に有し、
前記制御部は、演算された前記直管部を流れるガスの流量と、前記第1不活性ガスの流量と、前記第2不活性ガスの流量と、を基に、前記容器で気化したガスの内の原料の流量を演算する。
【0134】
(付記5)
付記4のガス供給システムであって、好ましくは、
前記制御部は、演算された前記直管部を流れる前記ガスの流量と、前記第1不活性ガスの流量と、前記第2不活性ガスの流量と、前記ガスの特性と、前記第1不活性ガスの特性と、前記第2不活性ガスの特性と、に基づき、前記直管部を流れるガス中の原料の濃度を演算する。
【0135】
(付記6)
付記1~5のいずれかのガス供給システムであって、好ましくは、
前記制御部は、前記第1圧力測定部の測定信号としての圧力値と、前記第2圧力測定部の測定信号としての圧力値との差に基づき、前記直管部を流れる前記ガス中の原料の流量を演算する。
【0136】
(付記7)
付記1~6のいずれかのガス供給システムであって、好ましくは、
前記第1位置と前記第2位置との間に設けられた、1つ以上の第3圧力測定部を更に有し、
前記制御部は、前記第1圧力測定部と前記第2圧力測定部と前記第3圧力測定部とを用いて、前記直管部を流れる前記ガス中の原料の流量を演算する。
【0137】
(付記8)
付記7のガス供給システムであって、好ましくは、
前記制御部は、
前記第1圧力測定部と前記第2圧力測定部と前記第3圧力測定部のうち2つの圧力測定部を用いて前記ガスの流量を演算する処理と、
前記第1圧力測定部と前記第2圧力測定部と1つ以上の前記第3圧力測定部とを用いて、前記直管部を流れる前記ガス中の原料の流量を演算する処理と、が変更可能である様に構成される。
【0138】
(付記9)
付記1~8のいずれかのガス供給システムであって、好ましくは、
前記制御部は、演算された前記直管部を流れる前記ガスの流量を基に、前記第1不活性ガス供給部を制御することによって、前記容器に供給される前記第1不活性ガスの流量を調整することが可能な様に構成される。
【0139】
(付記10)
付記9のガス供給システムであって、好ましくは、
前記制御部は、前記演算によって、前記直管部を流れる前記ガスの流量の減少が検出された場合に、前記第1不活性ガスの流量を増加させ、前記直管部を流れる前記ガスの流量の増加が検出された場合に、前記第1不活性ガスの流量を減少させる様に、前記第1不活性ガス供給部を制御可能に構成される。
【0140】
(付記11)
付記1~10のいずれかのガス供給システムであって、好ましくは、
前記制御部は、演算された前記直管部を流れる前記ガスの流量を基に、前記第2不活性ガス供給部を制御することによって、前記第1配管に供給される前記第2不活性ガスの流量を調整することが可能な様に構成される。
【0141】
(付記12)
付記11のガス供給システムであって、好ましくは、
前記制御部は、前記第1不活性ガスの流量を増加させた場合に、前記第2不活性ガスの流量を減少させ、前記第1不活性ガスの流量を減少させた場合に、前記第2不活性ガスの流量を増加させる様に、前記第2不活性ガス供給部を制御可能に構成される。
【0142】
(付記13)
付記1~12のいずれかのガス供給システムであって、好ましくは、
前記第1圧力測定部と前記第2圧力測定部とは、いずれも絶対圧力計で構成される。
【0143】
(付記14)
基板を処理する反応室と、
ガスを生成する容器と、
前記容器と前記反応室との間に接続され直管部を有する第1配管と、
前記直管部の第1位置に設けられ前記ガスの圧力を測定する第1圧力測定部と、
前記直管部の前記第1位置より前記ガスの流れの下流側の第2位置に設けられ前記ガスの圧力を測定する第2圧力測定部と、
前記第1圧力測定部からの測定信号と前記第2圧力測定部からの測定信号とから算出された前記直管部の圧力損失に基づき、前記直管部を流れる前記ガスの流量を演算し、演算結果に基づき前記ガスの流量を制御することが可能である様に構成された制御部と、
を有する基板処理装置、が提供される。
なお、付記14の基板処理装置に付記2~13のいずれかの態様が組み合わせられてもよい。
【0144】
(付記15)
付記14の基板処理装置を用いて、
前記容器の中でガスを生成し、
前記直管部の前記第1位置における前記ガスの圧力を前記第1圧力測定部によって測定し、
前記直管部の前記第2位置における前記ガスの圧力を前記第2圧力測定部によって測定し、
前記第1圧力測定部からの測定信号と前記第2圧力測定部からの測定信号とから算出された前記直管部の前記圧力損失に基づき、前記直管部を流れる前記ガスの流量を演算し、演算結果に基づき前記ガスの流量を制御する工程と、
前記流量を制御したガスを前記反応室内の基板に供給する工程と、
を有する半導体装置の製造方法、が提供される。
なお、付記15の半導体装置の製造方法に付記2~13のいずれかの態様が組み合わせられてもよい。
【0145】
(付記16)
付記1のガス供給システムにおいて、
前記容器の中でガスを生成し、
前記直管部の前記第1位置における前記ガスの圧力を前記第1圧力測定部によって測定し、
前記直管部の前記第2位置における前記ガスの圧力を前記第2圧力測定部によって測定し、
前記第1圧力測定部からの測定信号と前記第2圧力測定部からの測定信号とから算出された前記直管部の前記圧力損失に基づき、前記直管部を流れる前記ガスの流量を演算し、演算結果に基づき前記ガスの流量を制御する処理を、コンピュータにより前記制御部に実行させるプログラム、が提供される。
なお、付記15のプログラムに付記2~13のいずれかの態様が組み合わせられてもよい。
【符号の説明】
【0146】
10 基板処理装置
12 ガス供給システム
14 容器
16 第1圧力測定部(圧力センサ)
18 第2圧力測定部(圧力センサ)
121 コントローラ(制御部)
200 ウエハ(基板)
201 処理室(反応室)
310 ガス供給管(第1配管)
515 第2配管
SR 直管部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11