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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20230908BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230908BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
H01L21/78 S
H01L21/78 M
H01L21/302 105A
H01L21/68 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019135257
(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公開番号】P2021019146
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏行
(72)【発明者】
【氏名】和田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 義雄
(72)【発明者】
【氏名】横尾 晋
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-182093(JP,A)
【文献】特開2018-078168(JP,A)
【文献】特開2015-088686(JP,A)
【文献】特開2019-046865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/3065
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを環状フレームの開口に粘着テープで固定し、フレームユニットを準備するフレームユニット準備ステップと、
エッチングチャンバー内のチャックテーブルで、該フレームユニットのウェーハを該粘着テープを介して吸引保持するフレームユニット保持ステップと、
該環状フレーム及び/又は該環状フレームと該ウェーハとの間で露出する該粘着テープの環状領域をカバー部材で覆い、外部から密閉された密閉空間の内部に該環状フレームと該粘着テープの該環状領域とが収納されて、外部空間から遮蔽し、不活性ガスを該密閉空間の内部に流入させることにより、該密閉空間の内部を陽圧にする遮蔽ステップと、
該フレームユニット保持ステップ及び該遮蔽ステップ実施後、該エッチングチャンバーにガスを供給し、該ウェーハをドライエッチングするドライエッチングステップと、を備えるウェーハの加工方法。
【請求項2】
該環状フレームは樹脂で形成され、該遮蔽ステップでは該環状フレームが該カバー部材で覆われる請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
該ドライエッチングステップでは、該ウェーハにプラズマ状態のガスを供給するプラズマエッチングを実施する請求項1又は2に記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンに代表される半導体基板にデバイスが形成されたデバイスウェーハをドライエッチングする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。ドライエッチングの様態としては、例えばプラズマ状態のガスによるエッチングがある。この技術は、ウェーハを分割予定ライン(ストリート)に沿って分割する分割溝を形成したり、レーザー加工で発生したデブリや熱影響層(ダメージ層)を除去したりすることで抗折強度を向上させる目的でも使用されている。このような加工の場合、加工中や搬送中にウェーハが破損する恐れがあるため、ウェーハは環状フレームの開口にダイシングテープ等の粘着テープによって固定されたフレームユニットの形態で加工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-156973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フレームユニットの形態でプラズマ状態のガスをウェーハに供給すると、ウェーハの外周の粘着テープや環状フレームもプラズマエッチングによって加工される恐れがある。例えば、環状フレームが樹脂製の場合、プラズマエッチングによって変色したり発塵したりする恐れがある。粘着テープの場合は特に、粘着層にフッ素(F)が残渣として残りやすく、プラズマエッチング加工後、大気中または密閉容器中で放置されると、大気中の水素(H)とフッ素(F)でフッ化水素(HF)を構成し、デバイスの電極を腐食させる恐れがある。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ウェーハの外周の粘着テープや環状フレームがドライエッチングによって加工されることが抑制されるウェーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウェーハの加工方法は、ウェーハを環状フレームの開口に粘着テープで固定し、フレームユニットを準備するフレームユニット準備ステップと、エッチングチャンバー内のチャックテーブルで、該フレームユニットのウェーハを該粘着テープを介して吸引保持するフレームユニット保持ステップと、該環状フレーム及び/又は該環状フレームと該ウェーハとの間で露出する該粘着テープの環状領域をカバー部材で覆い、外部から密閉された密閉空間の内部に該環状フレームと該粘着テープの該環状領域とが収納されて、外部空間から遮蔽し、不活性ガスを該密閉空間の内部に流入させることにより、該密閉空間の内部を陽圧にする遮蔽ステップと、該フレームユニット保持ステップ及び該遮蔽ステップ実施後、該エッチングチャンバーにガスを供給し、該ウェーハをドライエッチングするドライエッチングステップと、を備える。
【0007】
上述したウェーハの加工方法において、該環状フレームは樹脂で形成され、該遮蔽ステップでは該環状フレームが該カバー部材で覆われてもよい。
【0008】
上述したウェーハの加工方法において、該ドライエッチングステップでは、該ウェーハにプラズマ状態のガスを供給するプラズマエッチングを実施してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、ウェーハの外周の粘着テープや環状フレームがドライエッチングによって加工されることが抑制される効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係るフレームユニットの一例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、実施形態に係るウェーハの加工方法のウェーハにマスク層を被覆するマスク層被覆ステップの状態を示す側面図である。
図4図4は、実施形態に係るウェーハの加工方法のウェーハ上のマスク層に加工溝を加工する分割予定ライン加工ステップの状態を示す側面図である。
図5図5は、実施形態に係るウェーハの加工方法のウェーハにプラズマエッチングを実施するプラズマエッチングステップで用いるプラズマエッチング装置を示す断面図である。
図6図6は、図5で示したエッチングチャンバー内の静電チャックテーブル及びカバー部材の斜視図である。
図7図7は、図6に示された静電チャックテーブル上でかつカバー部材内にフレームユニットを搬入した状態の断面図である。
図8図8は、実施形態に係るウェーハの加工方法のフレームユニット保持ステップ及び遮蔽ステップの静電チャックテーブルとカバー部材とを示す断面図である。
図9図9は、実施形態に係るウェーハの加工方法のドライエッチングステップの静電チャックテーブル及びカバー部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るウェーハの加工方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態に係るフレームユニットの一例を示す斜視図である。図2は、実施形態に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【0013】
図1に示すように、フレームユニット1は、ウェーハ11と、環状フレーム12と、粘着テープ13と、を備える。
【0014】
ウェーハ11は、例えば、シリコン(Si)や炭化珪素(SiC)、サファイア(Al)等の材料で円盤状に形成されている。このウェーハ11の表面111は、格子状に設定された分割予定ライン14(ストリート)で複数の領域に区画されている。各領域には、IC(Integrated Circuit)、LED(Light Emitting Diode)等のデバイス15が設けられる。
【0015】
このウェーハ11の裏面112には、ウェーハ11よりも径の大きい粘着テープ13が貼着されている。粘着テープ13は、樹脂シートとも称せられる。粘着テープ13は、円盤状の形状を有する。粘着テープ13は、絶縁性の合成樹脂により構成された基材層と、基材層の表面及び裏面に積層された粘着性を有する糊層とを備える。ウェーハ11の外周縁113よりも外周側に環状フレーム12の内周縁121が位置する。すなわち、ウェーハ11の外径は、環状フレーム12の内径よりも小さい。環状フレーム12の内周縁121の内側は、開口されている。従って、ウェーハ11の外周側には、環状フレーム12が配置されている。環状フレーム12の裏面は、粘着テープ13の外周部分の表面に貼着されている。すなわち、ウェーハ11が、粘着テープ13を介して環状フレーム12の開口に固定されることによって、ウェーハ11を環状フレーム12の開口に粘着テープ13で固定したフレームユニット1が構成される。なお、環状フレーム12は、プラズマ状態のガス45(図9に示す)に対して耐性を有して、プラズマ状態のガス45によりエッチングされにくい材質のものが適用可能である。実施形態では、環状フレーム12は樹脂により構成されている。
【0016】
図2に示すように、実施形態に係るウェーハの加工方法は、フレームユニット準備ステップ(ST1)と、マスク層被覆ステップ(ST2)と、分割予定ライン加工ステップ(ST3)と、フレームユニット保持ステップ(ST4)と、遮蔽ステップ(ST5)と、ドライエッチングステップ(ST6)と、を備える。
【0017】
前述したように、ウェーハ11を環状フレーム12の開口に粘着テープ13で固定したフレームユニット1を準備するステップがフレームユニット準備ステップST1である。以下、マスク層被覆ステップST2以降について、各ステップごとに説明を進める。
【0018】
(マスク層被覆ステップST2)
マスク層被覆ステップST2は、ウェーハ11の表面111をマスク層26で被覆するステップである。図3は、実施形態に係るウェーハの加工方法のウェーハにマスク層を被覆するマスク層被覆ステップの状態を示す側面図である。マスク層26の被覆は、スピンコーター2を用いて行う。なお、マスク層26は被覆層とも称せられる。スピンコーター2は、スピンナテーブル(保持テーブル)21と、回転軸部22と、クランプ装置23と、ノズル24と、を備える。
【0019】
マスク層被覆ステップST2においては、スピンコーター2の回転駆動源の稼働により、ウェーハ11を吸引及び保持したスピンナテーブル21が回転軸部22を中心に回転して、フレームユニット1を同時に回転させる。マスク層被覆ステップST2においては、スピンコーター2が、図3に示すように、ノズル24から液状樹脂25を滴下するとともに、スピンナテーブル4を回転させることによって、ウェーハ11の表面111に液状樹脂25を塗布する。その後、液状樹脂25を乾燥及び硬化等させることで、ウェーハ11の表面111にマスク層26が形成される。
【0020】
なお、液状樹脂25は、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol:PVA)又はポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone:PVP)等の水溶性の液状の樹脂からなり、硬化するとプラズマエッチングで用いられるプラズマ状態のガス45(図5及び図9に示す)に対して耐性を有して、プラズマ状態のガス45によりエッチングされにくい樹脂により構成されている。
【0021】
(分割予定ライン加工ステップST3)
分割予定ライン加工ステップST3は、ウェーハ11の分割予定ライン上のマスク層26に加工溝を形成するステップである。図4は、実施形態に係るウェーハの加工方法のウェーハ上のマスク層に加工溝を加工する分割予定ライン加工ステップの状態を示す側面図である。分割予定ライン14は、ウェーハ11の表面111を加工した加工溝36であり、分割予定ライン加工ステップは、例えば、図4に示すレーザー加工装置3を用いて行われる。
【0022】
実施形態において、分割予定ライン加工ステップST3では、レーザー加工装置3におけるチャックテーブル31の保持面311に粘着テープ13を介してウェーハ11の裏面側を吸引保持し、クランプ装置33で環状フレーム12をクランプする。そして、レーザー加工装置3が、図4に示すように、レーザー照射ユニット34とチャックテーブル31とを分割予定ライン14(図1参照)に沿って相対的に移動させながらレーザー照射ユニット34から、ウェーハ11に対して吸収性を有する波長のレーザー光線35をマスク層26に照射することにより、ウェーハ11とマスク層26に加工溝36を形成する。
【0023】
(フレームユニット保持ステップST4及び遮蔽ステップST5)
図5は、実施形態に係るウェーハの加工方法のウェーハにプラズマエッチングを実施するプラズマエッチングステップで用いるプラズマエッチング装置を示す断面図である。図6は、図5で示したエッチングチャンバー内の静電チャックテーブル及びカバー部材の斜視図である。図7は、図6に示された静電チャックテーブル上でかつカバー部材内にフレームユニットを搬入した状態の断面図である。図8は、実施形態に係るウェーハの加工方法のフレームユニット保持ステップ及び遮蔽ステップの静電チャックテーブルとカバー部材とを示す断面図である。
【0024】
フレームユニット保持ステップST4は、図5に示されたプラズマエッチング装置4内の静電チャックテーブル6(チャックテーブル)でフレームユニット1のウェーハ11を粘着テープ13を介して吸引保持するステップである。また、遮蔽ステップST5は、環状フレーム12及び/又は環状フレーム12とウェーハ11との間で露出する粘着テープ13の環状領域131をカバー部材5で覆い、外部空間から遮蔽するステップである。なお、粘着テープ13の環状領域131は、図5から図8に示すように、粘着テープ13の部位のうち、環状フレーム12とウェーハ11との間で露出するリング状の領域である。
【0025】
図5に示すように、プラズマエッチング装置4は、エッチングチャンバー41と、静電チャックテーブル6(チャックテーブル)と、を備える。エッチングチャンバー41の内部には、プラズマ処理室411が設けられる。エッチングチャンバー41は、底壁412と、上壁413と、側壁414と、ガス供給管43と、を備える。上壁413には、ガス供給管43が設けられている。エッチングチャンバー41は、プラズマ状態のガス45(図5の矢印及び図9に示す)がガス供給管43を介してプラズマ処理室411内に供給される。側壁414には、開口415が設けられる。ゲート44は、図示しないアクチュエータによって上下動する。ゲート44の上下動によって、開口415が開閉可能となる。なお、エッチングチャンバー41には、図示しない排気路が接続されており、内部の雰囲気が排気される。
【0026】
静電チャックテーブル6は、円盤状の形状を有し、静電吸着力でウェーハ11を粘着テープ13を介して吸引保持する。図7に示すように、静電チャックテーブル6は、底面62と、上面63と、側面64と、を備える。上面63は、粘着テープ13の裏面が貼着される保持面である。静電チャックテーブル6の外周部には、上下方向(厚さ方向)に貫通する貫通孔66が設けられる。貫通孔66は、下側の小径部661と、上側の大径部662と、に分かれる。大径部662は、上面63から下方に凹んだ凹部である。上面63の貫通孔66寄りの外周側に断面が円弧状の溝が全周に亘って設けられ、この溝にOリング50が嵌め込まれている。Oリング50は、弾性を有するゴム等で形成されている。
【0027】
また、図5から図9に示すように、プラズマエッチング装置4において、静電チャックテーブル6の上側には、カバー部材5が配置される。図7に示すように、カバー部材5は、外周壁部51と、内周壁部52と、上壁部53と、底壁部54と、連結部55と、を備える。外周壁部51と内周壁部52とは、周方向に沿って延びる円筒状の形状を有する。外周壁部51は、内径が環状フレーム12の外径よりも大きな円筒状に形成されている。外周壁部51の外周面511は、静電チャックテーブル6の外周面64に対して、静電チャックテーブル6の径方向位置が同一である。外周壁部51の底面512は、上面63の外縁部631と当接可能である。
【0028】
内周壁部52は、内径がウェーハ11の外径よりも大きくかつ外径が環状フレーム12の内径よりも小さな円筒状に形成されている。内周壁部52の内周面521は、内周側に行くにつれて下側に向かう傾斜面に形成されている。底面522には、断面が円弧状の溝が全周に亘って設けられ、この溝にOリング50が嵌め込まれている。Oリング50は、弾性を有するゴム等で形成されている。底面522は、粘着テープ13の表面に当接可能である。具体的には、粘着テープ13の表面のうち、ウェーハ11と環状フレーム12との間の部分に底面522が当接する。上壁部53は、リング状に形成され、外周壁部51の上端と内周壁部52の上端とを連結している。底壁部54は、内径が環状フレーム12の内径よりも小さなリング状に形成され、外周壁部51の図6の右側の端部を除いて、図7の左側に示すように、連結部55を介して外周壁部51と外縁部が一体に連結されている。一方、図7の右側の端部に示す底壁部54は、外周壁部51の図7の右側の端部と連結されていないため、外周壁部51と底壁部54の間に外周側開口57が開口している。外周側開口57は、図7の矢印INで示すように、フレームユニット1を出し入れすることが可能である。また、底壁部54の径方向の幅は、66の大径部662の幅と等しい。さらに、底面522と底壁部54との間には、内周側開口58が設けられる。
【0029】
また、底壁部54の下側には、上下方向に延びる支持配管42が固定されている。支持配管42は、内部が中空になっており、内部を不活性ガス40が流通する。不活性ガス40は、例えばヘリウムガスである。さらに、支持配管42の上端は、底壁部54に一体になっているため、カバー部材5を上下動させる際の支持体としても機能する。すなわち、図示しないアクチュエータによって、支持配管42を介してカバー部材5を上下動させることができる。
【0030】
フレームユニット保持ステップST4では、図7に示すように、カバー部材5を静電チャックテーブル6に対して上昇させて外周側開口57を開放した状態で、この外周側開口57からフレームユニット1を挿入すると、環状フレーム12及び粘着テープ13の環状領域131(図5及び図7参照)が、カバー部材5の外周壁部51と内周壁部52と上壁部53とで囲まれる領域に配置される。
【0031】
フレームユニット保持ステップST4及び遮蔽ステップST5では、図8に示すように、支持配管42及びカバー部材5を下降させて、カバー部材5の底壁部54を大径部662に嵌合させる。すると、上面63の外縁部631と外周壁部51の底面512とが当接し、内周壁部52の底面522と粘着テープ13とが当接すると共に、Oリング50が弾性変形してシール機能を発揮する。
【0032】
また、フレームユニット保持ステップST4では、カバー部材5が下降し、底壁部54が凹部である大径部662に嵌合すると、粘着テープ13を介してウェーハ11が静電チャックテーブル6の上面63に載置される。フレームユニット保持ステップST4では、静電チャックテーブル6に静電吸着力を発生させる電力を供給して、上面63に粘着テープ13を介してウェーハ11を吸引保持する。
【0033】
カバー部材5の底壁部54を大径部662に嵌合させた状態では、カバー部材5と、静電チャックテーブル6とによって密閉空間7が設けられる。ここで、密閉空間7の内部には、環状フレーム12と、粘着テープ13の環状領域131とが収納される。このように、遮蔽ステップST5では、環状フレーム12と粘着テープ13の環状領域131とをカバー部材5で覆うことで、外部空間から遮蔽することができる。なお、支持配管42から不活性ガス40を密閉空間7の内部に流入させることにより、密閉空間7の内部を陽圧にする。
【0034】
次いで、図5から図7を用いて、フレームユニットの保持治具100について説明する。フレームユニットの保持治具100は、プラズマエッチング装置4のエッチングチャンバー41内において、ウェーハ11を環状フレーム12の開口に粘着テープ13で固定したフレームユニット1を保持する治具である。保持治具100は、静電チャックテーブル6(チャックテーブル)と、カバー部材5と、密閉空間7と、内周側開口58と、外周側開口57と、を備える。静電チャックテーブル6は、ウェーハ11を吸引保持する。カバー部材5は、静電チャックテーブル6に近付く方向(図5から図7の下方向)及び静電チャックテーブル6から離れる方向(図5から図7の上方向)に移動自在に設けられた円環状の部材である。密閉空間7は、静電チャックテーブル6とカバー部材5とが互いに近付いた状態で、フレームユニット1の環状フレーム12を収容するとともに、外部から密閉された空間である。内周側開口58は、カバー部材5の内周側に設けられる。内周側開口58を開放すると、環状フレーム12を密閉空間7に出し入れ自在となる。
【0035】
また、内周側開口58と外周側開口57は、カバー部材5と静電チャックテーブル6とが互いに近付くと塞がれる。さらに、カバー部材5は、内周壁部52の底面522を備える。底面522は、粘着テープ13と当接すると密閉空間7を形成する。密閉空間7の内部には、粘着テープ13の環状領域131が収容される。
【0036】
(ドライエッチングステップST6)
図9は、実施形態に係るウェーハの加工方法のドライエッチングの静電チャックテーブル及びカバー部材を示す断面図である。ドライエッチングステップST6は、フレームユニット保持ステップST4及び遮蔽ステップST5実施後、エッチングチャンバー41にガス45を供給し、ウェーハ11をドライエッチングするステップである。ドライエッチングステップST6においては、遮蔽ステップST5で環状フレーム12と粘着テープ13の環状領域131とをカバー部材5で覆ったまま、図5に示すように、ガス供給管43からプラズマ処理室411の内部にプラズマ状態のガス45を流入する。プラズマ状態のガス45によって、ウェーハ11にドライエッチングを施す。ここで、環状フレーム12と粘着テープ13の環状領域131とはカバー部材5で遮蔽されているため、環状フレーム12及び粘着テープ13の環状領域131は、ドライエッチングが施されることが抑制される。なお、ドライエッチングには、例えば、プラズマエッチングと、反応ガス中に材料を曝すガスエッチングとが含まれる。また、実施形態におけるドライエッチングの目的は、分割予定ライン加工ステップST3におけるレーザー加工で発生したデブリや熱影響層(ダメージ層)を除去することで抗折強度を向上させることであるが、本発明は、これに限定されずに、ウェーハ11を分割予定ライン14に沿って矩形チップに分断する加工にもドライエッチングを適用することが可能である。
【0037】
なお、実施形態では、エッチングチャンバー41の外部においてプラズマ状態のガス45をエッチングチャンバー41の内部にガス供給管43を介して導入する所謂リモートプラズマ方式のエッチング装置を用いる。しかし、本発明では、エッチングチャンバー41の内部に上部電極からプラズマ前のエッチングガスを供給して、各電極に高周波電力を印加して、エッチングチャンバー41の内部でエッチングガスをプラズマ化する所謂ダイレクトプラズマ方式のエッチング装置を用いても良い。
【0038】
以上、説明した実施形態に係るウェーハの加工方法は、ウェーハ11を環状フレーム12の開口に粘着テープ13で固定し、フレームユニット1を準備するフレームユニット準備ステップと、エッチングチャンバー41内の静電チャックテーブル6(チャックテーブル)で、フレームユニット1のウェーハ11を粘着テープ13を介して吸引保持するフレームユニット保持ステップと、環状フレーム12及び粘着テープ13の環状領域131をカバー部材5で覆い、外部空間から遮蔽する遮蔽ステップと、フレームユニット保持ステップ及び遮蔽ステップ実施後、エッチングチャンバー41にガス45を供給し、ウェーハ11をドライエッチングするドライエッチングステップと、を備える。
【0039】
このように、ドライエッチング中に環状フレーム12や粘着テープ13の環状領域131をカバー部材5で覆い外気から遮蔽することで、環状フレーム12や粘着テープ13の環状領域131がドライエッチングによって変質したりフッ素の残渣が残ったりすることが抑制されるという効果を奏する。例えば、粘着テープ13にフッ素(F)が残渣として残るとデバイスの電極を腐食させる恐れがあるが、本実施形態によれば、このデバイスの電極の腐食を抑制することができる。
【0040】
また、実施形態では、環状フレーム12は樹脂で形成され、遮蔽ステップでは環状フレーム12がカバー部材5で覆われるため、環状フレーム12がドライエッチングによって変色したり、発塵したりすることが抑制されるという効果を奏する。
【0041】
さらに、ドライエッチングステップとしてプラズマエッチングを実施する場合、分割予定ライン(ストリート)14として設定される幅を縮小してウェーハ11毎のデバイスの数を増やすことができ、また、加工時間を短縮することができるという効果を奏する。
【0042】
なお、実施形態では、フレームユニット保持ステップST4の後に遮蔽ステップST5を行う形態を説明したが、遮蔽ステップST5の後にフレームユニット保持ステップST4を行っても良い。更には、フレームユニット保持ステップST4と遮蔽ステップST5とを同時に行っても良い。
【0043】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 フレームユニット
5 カバー部材
6 静電チャックテーブル(チャックテーブル)
11 ウェーハ
12 環状フレーム
13 粘着テープ
131 環状領域
41 エッチングチャンバー
45 ガス
ST1 フレームユニット準備ステップ
ST4 フレームユニット保持ステップ
ST5 遮蔽ステップ
ST6 ドライエッチングステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9