(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】クレーンの運転支援システム及びクレーンの運転支援方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/46 20060101AFI20230908BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20230908BHJP
B66C 19/00 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
B66C13/46 D
B66C13/00 D
B66C19/00 B
(21)【出願番号】P 2019171309
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-01-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】荒木 宏之
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-059593(JP,A)
【文献】特開2016-193777(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0031681(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-13/56
B66C 19/00-19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体と、前記支持構造体に支持されて荷役対象を蔵置領域から吊り上げる吊具を備えるクレーンの運転を支援する運転支援システムであって、
前記荷役対象を掴んでいない状態の前記吊具、又は、前記荷役対象を掴んだ状態の前記吊具とその掴まれた前記荷役対象を、吊体として、
前記吊体の位置及び姿勢を予め定められた所定の周期で検出して、検出結果を示す位置検出信号を生成する位置検出手段と、
前記位置検出手段に接続されて前記位置検出信号が入力され、前記位置検出信号が示す前記吊体の前記蔵置領域における位置及び姿勢で、かつ所定の視点及び所定の視野で前記吊体を示す画像情報である吊体モデル情報を描画した画像である吊体画像を含む画像である処理画像を前記所定の周期以下の周期で生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段に接続され、前記処理画像を表示する表示手段と、
を備えていて、
前記吊体画像は、前記吊具のトリムおよびリストおよびスキューと、前記吊具の振れ角とが前記姿勢として反映されている
ことを特徴とするクレーンの運転支援システム。
【請求項2】
前記画像生成手段に接続され、前記蔵置領域に蔵置された前記荷役対象の前記蔵置領域における位置を含む情報である荷役対象情報を取得する荷役対象位置取得手段を備え、
前記画像生成手段は、前記荷役対象情報が示す位置で、かつ前記所定の視点及び所定の視野で前記荷役対象を示す画像である荷役対象モデル情報を描画した荷役対象画像を生成して前記吊体画像に重ねた画像を前記処理画像として生成する
請求項1に記載のクレーンの運転支援システム。
【請求項3】
前記画像生成手段は、前記荷役対象画像に示される前記荷役対象と前記吊体画像に示される前記吊体のうち、前記所定の視点から距離が近いものを示す画像が手前側となり遠いものを示す画像が奥側となる状態で前記荷役対象画像と前記吊体画像とを重ねて、前記処理画像として生成する
請求項2に記載のクレーンの運転支援システム。
【請求項4】
前記蔵置領域を移動する、前記クレーン以外の移動体の前記蔵置領域における位置を移動体情報として取得する移動体位置取得手段を備え、
前記画像生成手段は、前記移動体情報が示す位置で、かつ前記所定の視点及び所定の視野で前記移動体を示す画像である移動体モデル情報を描画した移動体画像を生成し、前記吊体画像に重ねた画像を前記処理画像として生成する
請求項1~3のいずれか一項に記載のクレーンの運転支援システム。
【請求項5】
前記画像生成手段は、前記移動体画像に示される前記移動体と前記吊体画像に示される前記吊体のうち、前記所定の視点から距離が近いものを示す画像が手前側となり遠いものを示す画像が奥側となる状態で前記移動体画像と前記吊体画像とを重ねて、前記処理画像として生成する
請求項4に記載のクレーンの運転支援システム。
【請求項6】
支持構造体と、前記支持構造体に支持されて荷役対象を蔵置領域から吊り上げる吊具を備えるクレーンの運転を支援する運転支援システムであって、
前記荷役対象を掴んでいない状態の前記吊具、又は、前記荷役対象を掴んだ状態の前記吊具とその掴まれた前記荷役対象を、吊体として、
前記吊体の位置を予め定められた所定の周期で検出して、検出結果を示す位置検出信号を生成する位置検出手段と、
前記位置検出手段に接続されて前記位置検出信号が入力され、前記位置検出信号が示す前記吊体の前記蔵置領域における位置で、かつ所定の視点及び所定の視野で前記吊体を示す画像情報である吊体モデル情報を描画した画像である吊体画像を含む画像である処理画像を前記所定の周期以下の周期で生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段に接続され、前記処理画像を表示する表示手段と、を備えていて、
前記吊具は前記荷役対象を保持する複数の緊締装置を備え、
前記位置検出手段は、複数の前記緊締装置の位置を検出し、検出した位置から前記吊体の姿勢を検出する手段であり、
前記画像生成手段は、前記位置検出手段が示す前記緊締装置の前記蔵置領域における位置及び算出した前記吊体の姿勢、かつ所定の視点及び所定の視野で前記吊体モデル情報を描画した前記吊体画像を生成することを特徴とするクレーンの運転支援システム。
【請求項7】
前記所定の周期は、前記クレーンを操作する指令を示す信号である制御信号の遅延時間以下である
請求項1~6のいずれか一項に記載のクレーンの運転支援システム。
【請求項8】
前記支持構造体は、第1の向きに張り出した桁と、前記桁に支持されて前記吊体を保持し、前記第1の向きに沿って移動するトロリを備え、
前記所定の視点は、前記吊体の上方であって、前記吊体の真上から前記トロリの移動方向に所定量ずれた位置から前記吊体を見下ろす視点であり、
前記所定の視野は、肉眼の視野角以内である
請求項1~7のいずれか一項に記載のクレーンの運転支援システム。
【請求項9】
支持構造体と、前記支持構造体に支持されて荷役対象を蔵置領域から吊り上げる吊具を備えるクレーンの運転を支援する運転支援方法であって、
前記荷役対象を掴んでいない状態の前記吊具、又は、前記荷役対象を掴んだ状態の前記吊具とその掴まれた前記荷役対象を、吊体として、
前記吊体の位置及び姿勢を予め定められた所定の周期で検出して、検出結果を示す位置検出信号を生成する位置検出工程と、
前記位置検出信号を取得し、前記位置検出信号が示す前記吊体の前記蔵置領域における位置及び姿勢で、かつ所定の視点及び所定の視野で、前記吊体を示す画像である吊体モデル情報を描画した画像であ
り、前記吊具のトリムおよびリストおよびスキューと、前記吊具の振れ角とが前記姿勢として反映されている吊体画像を含む画像である処理画像を前記所定の周期以下の周期で生成する画像生成工程と、
前記処理画像を表示手段に表示する表示工程と、
を実施することを特徴とするクレーンの運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクレーンの運転支援システム及びクレーンの運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
岸壁クレーンや門型クレーンのようにコンテナターミナルでコンテナの荷役を行うクレーンは、コンテナターミナルの自動化による荷役効率の向上や作業員の安全の確保等を目的として、運転室をクレーンから離れた位置に設ける遠隔操作式とする場合がある。
遠隔操作式のクレーンでは、運転手が荷役対象やクレーン側の吊具を目視できない位置に運転室が配置される場合が多い。そのため、遠隔操作式のクレーンではトロリ等に設けられたカメラでクレーンやその周囲の映像を撮像して運転室の表示手段に表示し、運転手が表示された映像を参照してトロリや吊具を操作する。
一方で、カメラ映像等の映像信号は、表示手段とクレーンの距離が遠くなるほど信号が減衰する。そのため、映像信号を光信号やイーサネット(登録商標)信号のように、映像信号よりも減衰に強い信号に変換して伝送する場合がある。例えば特許文献1ではクレーンの映像信号を含む表示・制御用信号の全てがIPデータに変換されている。この場合、映像信号の変換に要する時間だけ伝送信号に遅延が発生する。そのため映像が表示手段に表示されるタイミングが、実際にクレーンが撮像されたタイミングから遅延する問題があった。一方でクレーンの操作に係る指令を伝達する制御信号は、映像信号ほど変換に時間を要しないため、伝送信号に遅延がほとんど発生しない。そのため、運転手の操作が直ちにクレーンの動作に反映され、操作がクレーンの動作に反映されるタイミングに対する、映像が表示手段に表示されるタイミングの遅延が顕著になる。
これに対して特許文献2には、映像伝送の遅延状況を把握して遅延時間が一定以上の場合はクレーンの動作を停止する技術が記載されている。特許文献3には、映像伝送の遅延状況を把握して遅延時間を運転手に知得させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-041132号公報
【文献】特開2012-142789号公報
【文献】特開2016-072727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献2、3の技術では、遅延状況を把握できるだけであり、表示の遅延を解消することができない。そのため、この技術では微細なクレーン操作を行うことが困難であるという問題があった。特に、吊具に振れが生じているクレーンの操作では、吊具が所定の振れ角に達した時点で吊具を動作させることで、振れを抑制したり、コンテナを目標位置に着床したりする技術が求められる。しかしながら映像信号が遅延する場合、所定の振れ角の吊具の映像が表示手段に表示された時点では、実際の吊具は既にその振れ角でない。そのため、映像に基づき、吊具が実際に所定の振れ角に達した時点でクレーンを運転手が動作させることは困難であった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、表示手段に表示される映像に遅延が生じ難いクレーンの運転支援システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するため本発明は支持構造体と、前記支持構造体に支持されて荷役対象を蔵置領域から吊り上げる吊具を備えるクレーンの運転を支援する運転支援システムであって、前記荷役対象を掴んでいない状態の前記吊具、又は、前記荷役対象を掴んだ状態の前記吊具とその掴まれた前記荷役対象を、吊体として、前記吊体の位置及び姿勢を予め定められた所定の周期で検出して、検出結果を示す位置検出信号を生成する位置検出手段と、前記位置検出手段に接続されて前記位置検出信号が入力され、前記位置検出信号が示す前記吊体の前記蔵置領域における位置及び姿勢で、かつ所定の視点及び所定の視野で前記吊体を示す画像情報である吊体モデル情報を描画した画像である吊体画像を含む画像である処理画像を前記所定の周期以下の周期で生成する画像生成手段と、前記画像生成手段に接続され、前記処理画像を表示する表示手段と、を備えていて、前記吊体画像は、前記吊具のトリムおよびリストおよびスキューと、前記吊具の振れ角とが前記姿勢として反映されていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、支持構造体と、前記支持構造体に支持されて荷役対象を蔵置領域から吊り上げる吊具を備えるクレーンの運転を支援する運転支援方法であって、前記荷役対象を掴んでいない状態の前記吊具、又は、前記荷役対象を掴んだ状態の前記吊具とその掴まれた前記荷役対象を、吊体として、前記吊体の位置及び姿勢を予め定められた所定の周期で検出して、検出結果を示す位置検出信号を生成する位置検出工程と、前記位置検出信号を取得し、前記位置検出信号が示す前記吊体の前記蔵置領域における位置及び姿勢で、かつ所定の視点及び所定の視野で、前記吊体を示す画像である吊体モデル情報を描画した画像であり、前記吊具のトリムおよびリストおよびスキューと、前記吊具の振れ角とが前記姿勢として反映されている吊体画像を含む画像である処理画像を前記所定の周期以下の周期で生成する画像生成工程と、前記処理画像を表示手段に表示する表示工程と、を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、吊体のモデル情報に、位置検出手段から所定の周期で入力された位置検出信号を基に実際の吊体の蔵置領域における現在位置情報を反映させた吊体画像が所定の視点及び視野で生成され、表示部に表示される。
この構成では、位置検出信号が主として吊体の位置情報を有する信号であり、かつ所定の周期で取得されるので、伝送の際に信号が変換されたとしても変換に要する時間が短く、映像信号を基にして吊体の映像を表示する場合と比べ、表示の遅延時間が短い。
よって、表示手段に表示される映像に遅延が生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るクレーンの運転支援システムの適用対象であるクレーンを示す側面図である。
【
図2】クレーンの運転支援システムを示す機能ブロック図である。
【
図6】(a)はコンテナ船の甲板上に配置されたコンテナの荷役対象情報を基に、荷役対象モデル情報を描画した荷役対象画像の例を示す図であり、(b)は(a)の荷役対象画像を
図4(a)の吊体画像に重ねて生成した処理画像の例を示す図である。
【
図7】
図1の吊体の位置、コンテナ、視点、及び視野角の関係を示す図である。
【
図9】
図1におけるコンテナ船の移動体情報を基に、移動体画像を描画して吊体画像及び荷役対象画像に重ねて処理画像を生成した例を示す図である。
【
図11】本実施形態に係るクレーンの運転支援システムを用いた運転支援方法を示すフロー図である。
【
図12】
図11のS9で生成された処理画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づき本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
まず
図1を参照して本実施形態に係るクレーンの運転支援システムの適用対象であるクレーンの概略構成を説明する。ここではクレーンとして、岸壁に接岸したコンテナ船との間でコンテナ荷役を行う岸壁クレーンが例示されている。ただし本実施形態の適用対象はクレーンであればよいので、門型クレーンやジブクレーンでもよい。
【0010】
図1に示すようにクレーン1は、一対の支持構造体3、支持構造体3の下端に設けられ、一対のレール5上をY方向に走行する走行装置7、支持構造体3の上部から第1の向きとしてのX方向海側に張り出した桁9を備える。クレーン1は、桁9に支持されてX方向に走行するトロリ11、トロリ11にワイヤ8で支持されてZ方向に移動してコンテナ10を吊り上げる吊具であるスプレッダ13も備える。
図1に示すクレーン1は遠隔操作方式のクレーンであり、走行装置7、トロリ11、スプレッダ13等を操作する運転室15は、クレーン1と別の場所に設けられる。
以上がクレーン1の概略構成の説明である。
【0011】
次に
図1~
図10を参照して本実施形態に係るクレーンの運転支援システム27の構成を説明する。なお、以下の説明では荷役対象であるコンテナ10を掴んでいない状態のスプレッダ13、又は、コンテナ10を掴んだ状態のスプレッダ13とその掴まれたコンテナ10を吊体12と称す。
【0012】
図2に示すように運転支援システム27は、位置検出手段19、荷役対象位置取得手段25、移動体位置取得手段29、画像生成手段21、及び表示手段23を備える。
運転支援システム27はクレーン1の運転を支援するシステムであり、その概要は、吊体12の位置を予め定められた周期で位置検出手段19が検出し、検出結果に基づき吊体12を画像生成手段21が描画し、表示手段23が表示するシステムである。
【0013】
位置検出手段19は吊体12の位置を予め定められた所定の周期で検出して、検出結果を示す位置検出信号を生成する手段である。
所定の周期とは、吊体12の位置を位置検出手段19が取得する際の所謂サンプリング周期のことである。この周期は、映像信号を基にして吊体12の映像を表示する場合と比べ、吊体12を描画した画像の表示に要する時間が短くなる範囲で適宜設定できるが、クレーン1を操作する指令を示す制御信号の遅延時間よりも短いのが好ましい。
制御信号とは、クレーン1を操作するための指令である。具体的には運転室15の操縦卓を運転手が操作することで、走行装置7、トロリ11、スプレッダ13、あるいはこれらを制御するPLC等の機器に送信される信号を意味する。
また、制御信号の遅延時間とは、制御信号が操縦卓の操作で生成されてから、制御対象が動作を開始するまでに要する時間を意味する。
制御信号の遅延時間よりも所定の周期を短くすることで、運転手の操作がクレーン1の動作に反映されるタイミングに対する、吊体12の画像が生成されるタイミングが、より遅れ難くなる。例えば制御信号の遅延時間が20ms程度の場合、位置検出手段19のサンプリング周期は20ms以下であるのが好ましい。所定の周期は単一の値でもよいし、値を変えられるように位置検出手段19を構成してもよい。
【0014】
吊体12の位置とは、蔵置領域における吊体12の位置を意味する。蔵置領域とはコンテナ10が蔵置された領域を意味する。例えば
図1ではコンテナ船48でコンテナ10が蔵置される暴露甲板93や図示しない船倉等の領域R1が蔵置領域である。また、
図1の領域R2のように、桁9の岸壁側の延在領域であるバックリーチ下方にもコンテナを蔵置する場合、領域R2も蔵置領域になる。吊体12の位置は蔵置領域における所定位置に対する相対位置であるのが好ましい。蔵置領域における吊体12の位置を把握できるためである。ただしGPS座標のような絶対位置でもよい。
【0015】
位置検出手段19は、吊体12の位置を検出できる公知の手段を用いればよい。例えばレーザセンサ、ドップラーレーダ、GPS受信機が挙げられる。
位置検出手段19が設けられる位置は、吊体12の位置を検出できる位置であれば、クレーン1の支持構造体3、桁9、トロリ11等のいずれに設けてもよい。
図1では位置センサ19aをトロリ11に設けた例を図示している。
位置検出手段19が検出する吊体12における具体的な位置は、吊体12全体の位置を代表できるのであれば、任意の位置を設定できる。また、スプレッダ13の表面に位置検出用の凹凸を検出用のマーカとして設け、そのマーカを検出してもよい。
また、レーザセンサを用いる場合はスプレッダ13の任意の範囲を走査して外形を検出することで、その位置を特定してもよい。
具体的な位置としては、スプレッダ13の緊締装置であるツイストロックの位置が好ましい。ツイストロックの位置からスプレッダ13の位置を検出することで、荷役時に運転手が正確に把握する必要があるツイストロックの位置が高精度で反映された吊体画像が得られるためである。
【0016】
ツイストロックの位置を求める場合、ロック部分を直接位置センサ等で検出してもよい。ただしツイストロックはスプレッダ13の底面に設けられることが大半であり、直接検出し難い場合は、ツイストロック上方のスプレッダ13の上面を検出してツイストロックの位置を求めてもよい。
位置検出手段19は運転支援システム27専用にクレーン1に設けてもよい。吊体12の着床時の位置合わせ等のために設けられた既設の位置センサを用いてもよい。
【0017】
位置検出手段19は、吊体12の姿勢も予め定められた所定の周期で検出して、検出結果を位置検出信号として生成する手段でもあるのが好ましい。吊体12の姿勢とは、吊体12の中立姿勢に対する傾きを意味し、例えばトリム、リスト、スキューが挙げられる。トリムは
図1でいうY-Z平面内の傾きであり、リストはX-Z平面内の傾きである。スキューはX-Y平面内の傾きである。吊体12の姿勢にはトロリ11に対するスプレッダ13のX方向のズレ(ワイヤ8のX方向傾斜角)である振れ角も含まれる。
この構成では、吊体12の姿勢も反映させた吊体画像が生成されるので、吊体12の姿勢も吊体画像に反映できる。
位置検出手段19が吊体12の姿勢も検出する場合、角速度センサのように、姿勢を直接検出する構成が挙げられる。振れ角は振れ角センサで求められる。
【0018】
位置検出手段19は、吊体12の姿勢を直接検出せずに複数の位置センサ19aで検出した位置から吊体12の姿勢を検出する構成でもよい。
例えばスプレッダ13の緊締装置であるツイストロックの位置を検出する構成とすれば、吊体12の姿勢は検出できる。ツイストロックは平面視で吊体12の図心から等間隔となるようにスプレッダ13の4隅に配置されるため、4つのツイストロックの位置関係から吊体12のトリム等を求められるためである。また、トロリ11の位置も検出すれば、トロリ11と吊体12の位置関係から振れ角が求められるためである。
【0019】
荷役対象位置取得手段25は、蔵置領域に蔵置された荷役対象であるコンテナ10の蔵置領域における位置を含む情報である荷役対象情報を取得する手段であり、必要に応じて設けられる。荷役対象位置取得手段25は、画像生成手段21に接続される。
荷役対象情報はコンテナ10の蔵置領域における位置に関する情報を含むが、位置以外にもコンテナ10を特定できる情報を含んでもよい。コンテナ10を特定できる情報とは、あるコンテナを他のコンテナと区別できる情報を意味する。例えば、コンテナの姿勢、種類、色彩、コンテナに搭載された貨物、あるいはコンテナ表面に記載された識別番号等の情報がコンテナを特定できる情報として挙げられる。
【0020】
荷役対象情報を取得できるのであれば、具体的な荷役対象位置取得手段25の構成は適宜選択できる。例えば
図2に示すクレーン1に設けられた位置センサ25aを用いてコンテナ10の位置を取得してもよい。この場合は位置センサ25aが荷役対象位置取得手段25となる。荷役対象画像71にコンテナ10の識別番号を含める場合は、クレーン1にイメージスキャナ等を設けて、コンテナ10の識別番号をOCR(光学文字認識)で読み取ってもよい。
あるいはコンテナターミナルのTOS(Terminal Operation System)30からコンテナ10の位置や識別番号等に関する情報を荷役対象情報として取得する構成でもよい。この場合、
図2に示すように、TOS30から荷役対象情報を取得するコンピュータの入出力インタフェース25bが荷役対象位置取得手段25となる。
運転支援システム27が荷役対象位置取得手段25を備えることで、蔵置されたコンテナ10の蔵置領域における位置を示す情報からコンテナ10の画像も生成できる。
そのため、蔵置されたコンテナ10と吊体12との位置関係を示す画像が、実際にその位置関係にあるタイミングで描画されるので、運転手がその画像を参照すれば、位置関係に基づく適切な荷役操作ができる。
【0021】
荷役対象位置取得手段25が荷役対象情報を取得する周期は、位置検出手段19が吊体12の位置を検出する周期と同程度であるのが好ましい。これにより、映像信号を基にしてコンテナ10の映像を表示する場合と比べ、表示の遅延時間が短くなる。
なお、
図1ではクレーン1として岸壁クレーンを例示しているが、本実施形態のクレーンは岸壁クレーンではなくコンテナヤードでコンテナ10の荷役を行うヤードクレーンでもよい。この場合ヤードに蔵置されたコンテナ10は、クレーン1等で吊り上げない限りは移動しないので、吊体12ほど表示の遅延時間が問題にならない。そのため、荷役対象位置取得手段25がヤードに蔵置されたコンテナ10の荷役対象情報を取得する周期は、位置検出手段19が吊体12の位置を検出する周期よりも長くてもよい。
【0022】
移動体位置取得手段29は、蔵置領域を移動する、クレーン1以外の移動体の蔵置領域における位置を含む情報を移動体情報として取得する手段であり、必要に応じて設けられる。移動体位置取得手段29は画像生成手段21に接続される。
クレーン1以外の移動体とは、クレーン1以外で蔵置領域内において移動する物体を意味する。例えば運転支援対象以外のクレーン、リーチスタッカ、ストラドルキャリア、トップリフタ等のコンテナ10を吊り上げて搬送する機器、シャシ等のコンテナ搬送車両が挙げられる。またコンテナ船48は蔵置領域であるが移動体でもある。理由は、岸壁に係留されたコンテナ船48は波や潮位の変動、あるいは荷役の進行による重心位置の変化で、蔵置領域である領域R1の暴露甲板93等の位置と姿勢が変化するためである。さらに、コンテナターミナル内を移動する作業員も移動体として例示できる。
【0023】
移動体情報とは、移動体の位置情報を含む情報である。位置情報以外の情報としては、移動体の姿勢、移動体の種類、移動速度、移動する向き等が挙げられる。移動体がコンテナ船48の場合、コンテナ10を蔵置する蔵置領域の1つである暴露甲板93の底面、あるいは甲板上に設けられコンテナ10を固縛する際に作業員の足場となる架橋構造物であるラッシングブリッジ95の位置や姿勢を示す情報が挙げられる。具体的には暴露甲板93やラッシングブリッジ95のサージング(前後揺れ)、スウェイング(左右揺れ)、ヒービング(左右揺れ)、ヨーイング(船首揺れ)、ピッチング(縦揺れ)、ローリング(横揺れ)等の揺れの向き等の状態を示す情報が挙げられる。移動体がシャシの場合は、シャシに搭載しているコンテナ10の種類や識別番号等の情報も挙げられる。移動体がコンテナ10を吊り上げて搬送する機器の場合、その機器が有する吊具の位置や吊り上げたコンテナ10の種類や識別番号等の情報も挙げられる。移動体が作業員の場合は、その位置や歩行する向き等の情報が挙げられる。
【0024】
移動体情報を取得できるのであれば、具体的な移動体位置取得手段29の構成は適宜選択できる。例えばクレーン1自身に移動体の位置を検出する位置センサ29aを設けて移動体位置取得手段29としてもよい。あるいは移動体自身がGPS受信機や位置センサ、角速度センサのような位置や姿勢を検出する機器を備える場合、その機器が検出した移動体の位置や姿勢を示す情報を移動体情報として取得する構成でもよい。
例えば移動体がコンテナ船48の場合、コンテナ船48に備えられた角速度センサが検出したロール角等の位置検出結果を移動体情報として取得してしてもよい。この場合は
図2に示すように、コンテナ船48から位置検出結果を取得するコンピュータの入出力インタフェース29bが移動体位置取得手段29となる。
運転支援システム27が移動体位置取得手段29を備えることで、蔵置領域内を移動するシャシや作業員や船舶を含む画像も生成できる。
【0025】
画像生成手段21は、位置検出信号をもとに吊体12を示す画像情報である吊体モデル情報を描画した画像である吊体画像を生成する手段である。
図2に示すように画像生成手段21は、位置検出手段19に接続されて位置検出信号が入力される。
吊体モデル情報41とは、画像生成手段21が吊体画像を生成する際の吊体12のモデルであり、具体的には吊体12の外形を示す静止画である。スプレッダ13がコンテナ10を掴んだ状態のように吊体12がコンテナ10を含む場合、コンテナ10の外形の情報も含む。吊体12がコンテナ10を含む状態か否かは、スプレッダ13に設けられた片吊り検出用の接触式センサ等の検出結果から判断してもよい。あるいはスプレッダ13の緊締装置がロック状態にあるか否かで判断してもよい。
【0026】
吊体モデル情報41の例を
図3に示す。
図3に示す吊体モデル情報41は、スプレッダ13の外形を示している。
図3に示す吊体モデル情報41が示すスプレッダ13は、20フィートコンテナと40フィートコンテナの両方を荷役可能であり、固定フレーム43、可動フレーム45、ツイストロック保持部47、及びツイストロック49の外形が描写されている。固定フレーム43はトロリ11にワイヤ8で吊り上げられる平面視矩形の部材である。可動フレーム45は固定フレーム43の水平方向であるY方向両端からY方向に2本ずつ突設された平面視矩形の2対の桁であり、一部が固定フレーム43に収納される。可動フレーム45はコンテナ10のサイズに応じて固定フレーム43に収納されるY方向長さを調整できる。ツイストロック保持部47はツイストロック49を保持する1対の桁であり、Y方向の同じ向きに突設された可動フレーム45の端部をX方向に連結する。ツイストロック49はコンテナ10を掴む緊締装置であり、1対のツイストロック保持部47の両端に2か所ずつ設けられる。
【0027】
図3に示すように吊体モデル情報41は吊体12の三次元形状を示す情報が好ましい。三次元形状を示す情報とすることで、吊体画像を三次元で生成できるためである。三次元形状を示す情報とは、デカルト座標系でいうx、y、z全ての座標を備える情報を意味する。三次元形状を示す情報は、極座標等の他の座標系の情報でもよい。
吊体12の種類が複数ある場合、吊体モデル情報41は吊体12の種類ごとに異なる情報であるのが好ましい。例えばコンテナ10のサイズごとに異なる構造のスプレッダ13を用いる場合は、構造が異なるスプレッダ13に対応した吊体モデル情報41を用意する。この構成とすることで、スプレッダ13の交換等で吊体12の種類が変わった場合でも、交換後のスプレッダ13の外形を示す吊体画像を生成できる。
【0028】
吊体モデル情報41を見た運転手が吊体12を描画した画像であると認識できる程度の情報量の画像であれば、吊体モデル情報41は、実際の吊体12の映像よりも情報量が少ない画像でもよい。具体的には外形線や構造物の一部を省略した画像でもよい。例えば
図3に示す吊体モデル情報41は固定フレーム43、可動フレーム45、ツイストロック保持部47が6面体で簡略化されて描画されている。実際の吊体12の映像よりも情報量が少ない画像を吊体モデル情報41とすることで、吊体画像の生成に要する時間をより短くできるので、吊体画像を生成する際の遅延がより生じ難くなる。
ただし、吊体モデル情報41は映像と同程度に吊体12の外形を把握できる情報量の画像でもよい。このような吊体モデル情報41を用いることで、映像信号を基に描画した吊体映像から得られる情報量と同程度の情報量を吊体画像から得られる。
【0029】
図3では吊体モデル情報41は不透明な画像であるが、ワイヤーフレームのような透明な画像、あるいは半透明な画像でもよい。このような画像を吊体モデル情報41として用いることで、吊体画像の生成に要する時間をより短くできるので、描画の遅延がより生じ難くなる。さらに、視点から見て吊体画像に隠れた後背の画像を表示できるので、吊体12以外の画像の情報量をより多くできる。
【0030】
画像生成手段21は、所定の視点及び所定の視野で吊体モデル情報41を描画することで、吊体画像を生成する。視点とは、吊体12を描画する際の立脚点を意味する。より具体的には、仮に運転手が吊体12を所定の位置から肉眼で見ている場合の当該所定の位置と、その位置からの視線の向きを意味する。視野とは、吊体画像を描画する範囲を示すものであり、具体的には視点を中心とした視野角を意味する。
【0031】
吊体12が吊体画像内に描画されるのであれば、視点は任意の位置を設定できる。具体的な視点は、遠隔操作でないクレーン1の運転室15からの視点と同じとする場合を例示できる。具体的には、吊体12の真上からトロリ11の移動方向に所定量ずれた位置から吊体12を見下ろす視点を例示できる。
図1ではこのような視点V1として、トロリ11から、トロリ11の走行方向であるX方向の陸側にずれた位置P1から吊体12を見下ろす向きA1となる視点を例示している。通常の遠隔操作でないクレーン1の運転室15は、トロリ11の陸側端部に設けられており、運転手は運転室から吊体12を見下ろしながら操作を行っている。そのため、吊体12の真上からトロリ11の移動方向に所定量ずれた位置から吊体12を見下ろす視点とすることで、遠隔操作でない従来のクレーン1と同じ視点で吊体12を描画した吊体画像51が生成される。
例えば視点V1と吊体12の位置が
図1に示す位置関係であった場合、
図3に示す吊体モデル情報41、吊体12の位置、及び視点V1に基づき生成される吊体画像51は
図4(a)に示す画像となる。
この視点V1は、遠隔操作でない従来のクレーン1の運転に慣れた運転手が、従来のクレーン1と同じ感覚で荷役操作を行える点で有利である。
【0032】
一方で、例えばこの視点ではスプレッダ13に吊り上げられたコンテナ10がスプレッダ13に隠れて見にくい等の場合は、他の視点でもよい。例えば吊体12を水平方向から見る位置を視点としてもよい。
【0033】
吊体12を水平方向に近い視点で描画した吊体画像51の例を
図4(b)に示す。
図4(b)では、
図1の視点V2を視点として、吊体モデル情報41を描画した吊体画像51である。視点V2は、視点V1とX,Y座標は同じとし、Z座標をより低くして、吊体12の水平位置近傍とした位置P2から、吊体12を向きA2で見る視点である。
【0034】
さらに、吊体12の長手方向側面の真上から吊体12を見下ろす視点も例示できる。
この視点は、
図1のX-Y平面上における吊体12の位置関係がそのまま吊体画像51として描写される。そのためスプレッダ13が掴んだコンテナ10を、蔵置されたコンテナ10に着床させる際に、スプレッダ13が掴んだコンテナ10と蔵置されたコンテナ10の側面の画面上における位置が一致すれば水平方向の位置合せが完了する。この構成は、遠隔操作でない従来のクレーン1の運転に慣れていない運転手でも着床の際の水平方向の位置合わせが容易である点で有利である。
【0035】
吊体12が吊体画像51内に描画されるのであれば、視野は任意の範囲を設定できる。具体的な視野は肉眼の視野角以内が好ましい。視野角を肉眼の視野角以内とすることで、遠隔操作でないクレーンの運転室からの運転手の視野と同じ視野で吊体画像51が生成される。そのため遠隔操作でない従来のクレーンの運転に慣れた運転手が、従来のクレーンと同じ感覚で荷役操作を行える。より好ましくは肉眼の有効視野角内である。
【0036】
なお、吊体画像51は、視点から吊体12を見る向きに垂直な平面に吊体12を投影した画像になる。そのため吊体画像51の生成の際に画像生成手段21は、取得した吊体12の位置座標を座標変換で該投影面に投影し、ピクセル変換した座標を算出する。
また、人間の視野は水平方向に並んだ2つの眼球の視野を重ねたものなので、人間の視野を正確に再現しようとすると、投影面における吊体画像51の外周は水平方向を長軸方向とした楕円に近い形状なる。ただし、吊体画像51が楕円に近い形状の場合は、公知の矩形のモニタを表示手段23に用いた場合に4隅に映像が表示されない部分が生じるため、楕円の内接四角形等を視野としてもよい。
【0037】
画像生成手段21は、位置検出信号が示す吊体12の蔵置領域における位置で吊体モデル情報41を描画することで吊体画像51を得る。
この構成では、吊体12がコンテナ10の吊り上げやトロリ11の走行等で、その位置が変動した場合に、変動後の位置で吊体画像51が描画されるため、肉眼で吊体12を見る場合と同様に位置の変動を運転手が吊体画像51で把握できる。
またカメラ映像の場合は映像の視点がカメラの位置に依存するが、本実施形態で吊体画像51を描画する視点は位置検出手段19の設置位置に依存しない点も有利である。
画像生成手段21は、吊体画像51を所定の周期で生成する。この周期は、位置検出信号を取得する際の周期以下が好ましい。これは、位置検出信号が取得した位置情報が必ず吊体画像51に反映されるためである。
【0038】
ここで、伝送される位置検出信号は主として吊体12の位置情報を有する情報であり、かつ所定の周期で伝送されるので、伝送の際に信号が変換されたとしても変換に要する時間が映像信号と比べて短い。そのため、カメラ等で取得した映像信号を基にして吊体12の映像を生成する場合と比べ、吊体画像51を生成する際の遅延時間が短い。生成する際の遅延時間とは、本実施形態では位置検出信号が取得されてから表示手段23に吊体画像51が表示されるまでに要する時間を意味する。映像の場合、カメラが吊体12の映像を撮像してから表示手段23にその映像が表示されるまでに要する時間が遅延時間である。以下の説明も同様である。
【0039】
位置検出信号が吊体12の姿勢を含む情報も備える場合、画像生成手段21は位置検出信号が示す吊体12の蔵置領域における位置、姿勢で吊体画像51を生成する。
角速度センサ等で吊体12の中立姿勢に対する傾斜角を求めている場合、位置検出信号が示す吊体12の姿勢に応じて、デカルト座標系の場合、x、y、z軸回りに所定の角度だけ吊体モデル情報41を回転させた画像を吊体画像51として生成する。
一方で、複数の位置センサで検出した位置から吊体12の姿勢を検出する構成の場合は、取得した位置の変動に応じて変動後の位置座標で吊体モデル情報41を描画すれば、吊体12の姿勢を描画できる。
【0040】
なお、所定の周期で吊体画像51を生成する際には、吊体モデル情報41を全て描画し直してもよい。ただし、位置や姿勢が変動した部分のみを再描画する構成でもよい。
図3に示す吊体モデル情報41をモデルにする場合、可動フレーム45が伸縮した場合は、伸縮した可動フレーム45及び可動フレーム45と共に位置が変動するツイストロック保持部47、及びツイストロック49のみを再描画してもよい。
【0041】
運転支援システム27が荷役対象位置取得手段25を備える場合、画像生成手段21は荷役対象位置取得手段25が取得した荷役対象情報を基に、荷役対象モデル情報を描画した荷役対象画像を生成してもよい。この場合、荷役対象画像を吊体画像51に重ねた画像が処理画像81として生成される。
荷役対象モデル情報とは、画像生成手段21が荷役対象画像を生成する際のモデルであり、具体的には荷役対象の外形を示す情報である。荷役対象がコンテナ10である場合、コンテナ10の外形を示す静止画である。
【0042】
荷役対象モデル情報61の例を
図5に示す。
図5に示す荷役対象モデル情報61は、ドライコンテナの外形を示すモデルであり、箱体63、扉65、長孔67、及びコンテナ識別番号表示領域69の外形が少なくとも描写されている。
箱体63はコンテナ10の外壁であり、ここでは外形が直方体に近い形状である。扉65はコンテナ10内に貨物を搬入する場合、又はコンテナ10内の貨物を搬出する際に開放される外壁の少なくとも1面であり、
図5では直方体の正方形を構成する側面に設けられる。長孔67はスプレッダ13がコンテナ10を吊り上げる際にツイストロック49が挿入される孔であり、ここでは箱体63の上面の四隅に設けられ、長手方向はコンテナ10の長手方向であるY方向に沿う。コンテナ識別番号表示領域69はコンテナ10の識別番号が表示される部分である。
【0043】
荷役対象モデル情報61は吊体モデル情報41と同様に、三次元形状を示す情報であるのが好ましい。サイズの異なるコンテナ10が蔵置領域に混在する場合等、荷役対象の種類が複数ある場合、荷役対象モデル情報61は吊体モデル情報41と同様に荷役対象の種類ごとに予め画像生成手段21が保持する情報であるのが好ましい。
【0044】
荷役対象モデル情報61は、吊体モデル情報41と同様、画像が荷役対象であることが分かる画像であれば、外形線の一部を省略する等して実際の荷役対象の映像よりも情報量が少ない画像としてもよい。例えば一般にコンテナ10は強度を確保するために側壁を波形に曲げ加工したコルゲート形状を有するが、
図5に示す荷役対象モデル情報61では、コルゲート形状は省略されている。ただし、荷役対象モデル情報61は吊体画像51と同様に、映像と同程度に荷役対象の外形を把握できる情報量でもよい。荷役対象モデル情報61は吊体モデル情報41と同様に透明あるいは半透明な画像でもよい。
【0045】
画像生成手段21は荷役対象位置取得手段25が取得した荷役対象情報を基に、荷役対象モデル情報61を描画した荷役対象画像71を生成する。荷役対象画像71を描画する際の視点、視野は吊体画像51と同じとするのが好ましい。吊体画像51と荷役対象画像71の視点、視野を同じとすることで、吊体画像51と荷役対象画像71をさらに座標変換や拡大縮小処理をせずにそのまま重ねることができる。
図1におけるコンテナ船48の暴露甲板93上に配置されたコンテナ10の荷役対象情報を基に、
図1の視点V1で荷役対象モデル情報61を描画した荷役対象画像71の例を
図6(a)に示す。また、
図5(a)に示す吊体画像51と、
図6(a)に示す荷役対象画像71を重ねることで生成された処理画像81の例を
図6(b)に示す。
【0046】
画像生成手段21が荷役対象画像71を生成して吊体画像51に重ねた画像を処理画像81として生成することで、
図6(b)に示すように蔵置されたコンテナ10の蔵置領域における位置を示す情報から荷役対象画像71が吊体画像51に重ねて描画される。荷役対象画像71及び処理画像81の生成の周期は、制御信号の遅延時間以下が好ましく、位置検出手段19が吊体12の位置を取得する際のサンプリング周期と同程度が、より好ましい。
この構成では、
図6(b)に示す、荷役対象画像71に含まれるコンテナ10と、吊体12との位置関係を示す処理画像81が、実際にコンテナ10と吊体12がその位置関係にあるタイミングで描画される。そのため、コンテナ10と吊体12の位置関係に基づく適切な荷役操作ができる。
例えばスプレッダ13が吊り上げたコンテナ10を、暴露甲板93内にあるコンテナ10の上に蔵置する作業を運転手が行うとする。この際、吊体12に振れが生じている場合、吊体12が所定の振れ角に達した時点で運転手が吊体12を動作させることで、振れを抑制したり、吊り上げたコンテナ10を目標位置に着床したりする場合がある。
ここで、画像生成手段21が荷役対象画像71を生成して吊体画像51に重ねた画像を処理画像81として生成する場合、吊体12が所定の振れ角に達した時点で、その振れ角に対応する位置と姿勢で処理画像81が生成される。
そのため、処理画像81に基づき、吊体12が実際に所定の振れ角に達した時点でクレーン1を運転手が動作させることが可能になる。
【0047】
画像生成手段21は、荷役対象画像71を吊体画像51に所定の視点から距離が近い順に裏側に重ねた画像を処理画像81として生成するのが好ましい。
例えば吊体12の位置と、暴露甲板93上のコンテナ10a、10b、及び視点V1の位置関係、及び視野角αが
図6(a)及び
図7に示す関係にあるとする。
この場合、吊体12とコンテナ10a、10bを比較すると、
図7に示すように視点V1からの距離が最も近いのは吊体12である。そのため、吊体12が最前面に描画される。さらに、吊体12の裏側にコンテナ10a、10bが重ねられることで、
図6(b)に示す処理画像81が生成される。なお、
図7の破線L1、L2は視点V1から吊体12を見た場合の吊体12のZ方向の両端部と視点V1の立脚点である位置P1を結ぶ直線である。領域R3は吊体12に隠れて視点V1から見えない領域である。コンテナ10aの一部はこの領域R3内に位置するため、
図6(b)に示す処理画像81にはコンテナ10aの一部しか表示されない。コンテナ10bはこの領域R3内に全体が位置するので、
図6(b)に示す処理画像81にはコンテナ10bは表示されていない。
【0048】
このように、荷役対象画像71を吊体画像51に所定の視点から距離が近い順に裏側に重ねることで、視点V1からスプレッダ13及びコンテナ10a、10bを目視した場合と同じ位置関係で構造物が描画される。そのため、視点V1から見て他の構造物への視界を遮る構造物が把握できる。例えば
図6(b)に示す処理画像81では、コンテナ10aの一部が吊体12に遮られて見えないのが分かる。
なお、処理画像81を描画する際に荷役対象画像71と吊体画像51を生成する順番は任意に設定できる。例えば所定の視点から距離が遠い順に荷役対象画像71と吊体画像51を生成して表側に重ねた画像を処理画像81として生成してもよい。
【0049】
運転支援システム27が移動体位置取得手段29を備える場合、画像生成手段21は移動体位置取得手段29が取得した移動体情報を基に処理画像81を生成してもよい。具体的には、移動体情報を基に移動体モデル情報を描画した移動体画像を生成して吊体画像51に重ねた画像を処理画像81として生成してもよい。
移動体モデル情報とは、画像生成手段21が移動体画像を生成する際のモデルであり、具体的には移動体の外形を示す情報である。移動体がコンテナ船48の場合、移動体モデル情報はコンテナ船48のコンテナ10を蔵置する暴露甲板93の位置と形状、暴露甲板93に蔵置したラッシングブリッジ95の位置と形状等である。また、コンテナ10を蔵置する船倉や、船倉内に設けられ、コンテナ10を蔵置する際のガイドとなるセルガイドの位置も挙げられる。移動体が作業員の場合は、作業員の外観や位置を示す情報である。移動体がシャシである場合、シャシの外形を示す静止画が挙げられる。
【0050】
移動体モデル情報の例を
図8に示す。
図8の移動体モデル情報91は、コンテナ船48の甲板上の外形を示すもので、暴露甲板93及びラッシングブリッジ95が描画されている。移動体モデル情報91は、吊体モデル情報41と同様に、三次元形状を示す情報であるのが好ましい。移動体の種類が複数ある場合、移動体モデル情報は移動体の種類ごとに予め画像生成手段21が保持する情報であるのが好ましい。
例えば、
図8では移動体モデル情報91aとして作業員の外形を示す情報も示している。ただし、移動体モデル情報91と移動体モデル情報91aは別のモデル情報であり、別箇に画像生成手段21が有している。
【0051】
移動体モデル情報91、91aは、画像が移動体であることが分かる程度の情報量であれば、吊体画像51と同様に実際の移動体の映像よりも情報量が少ない画像でもよい。移動体モデル情報91、91aは吊体モデル情報41と同様に透明あるいは半透明な画像でもよい。
【0052】
画像生成手段21は移動体情報を基に、移動体モデル情報91、91aを描画した移動体画像を生成する。移動体画像を描画する際の視点、視野は吊体画像51と同じとするのが好ましい。理由は吊体画像51を描画する場合と同様である。描画の周期も吊体画像51を生成する周期以下とするのが好ましい。
【0053】
図1におけるコンテナ船48の移動体情報を基に、
図1の視点V1で移動体画像99を描画して吊体画像51及び荷役対象画像71に重ねて処理画像81を生成した例を
図9に示す。画像生成手段21が移動体画像99を吊体画像51に重ねた画像を処理画像81として生成することで、蔵置領域における移動体の位置を示す情報から移動体画像99が吊体画像51に重ねて描画される。そのため蔵置領域を移動する移動体と吊体12との位置関係を示す画像が、実際にその位置関係にあるタイミングで描画され、位置関係に基づく適切な荷役操作ができる。特に移動体がコンテナ船48の場合、サージング等による暴露甲板93の移動を反映した処理画像81を生成できる。
画像生成手段21が移動体画像99を生成する際は、荷役対象画像71を吊体画像51に重ねる場合と同様に移動体画像99を吊体画像51に所定の視点から距離が近い順に裏側に重ねた画像を処理画像81として生成するのが好ましい。
【0054】
画像生成手段21は吊体画像51、荷役対象画像71、及び移動体画像99に、これらの画像以外の画像や文字を含む画像を重ねて処理画像81を生成してもよい。このような、吊体画像51、荷役対象画像71、及び移動体画像99以外の画像である補助画像の例を
図10に示す。
図10に示すように補助画像101は、運転室画像103、クレーンステータス表示画像105、強調表示画像107を備える。
【0055】
運転室画像103は、視点V1のように、遠隔操作でない従来のクレーンの運転室から見た視野で処理画像81を生成する際に、運転手から見た運転室内の内装を示す画像である。クレーンステータス表示画像105は、クレーンの運転の際に運転手が参照する数値や文字、図形等の情報を表示する部分である。具体的な情報としては、スプレッダ13が吊り上げているコンテナ10、あるいは吊り上げようとしているコンテナ10の識別番号が挙げられる。あるいは、クレーン1の主巻/横行/走行/旋回等の動作や速度のような、実行中の荷役作業を示す文字、図形も挙げられる。さらに、クレーン1の下にシャシが存在する場合はそのシャシのトレーラ位置情報が挙げられる。
また、
図1の領域R1にコンテナ10の蔵置ブロックやシャシの走行レーンのような、固定設置物がある場合、その外観を示す画像や映像も補助画像101に含まれる。
【0056】
強調表示画像107は処理画像81中の所定の画像を強調表示する画像である。ここでは処理画像81中の移動体画像99の1つである作業員の画像の周囲を2重丸で囲むことで、その位置を強調する画像を例示する画像である。
作業員の画像は移動体画像99の一つとして処理画像81中に表示することは可能である。しかしながら
図1や
図10に示すように、処理画像81を生成する際の視点V1が、トロリ11と同程度の高さにある場合、蔵置領域内を移動する作業員と視点V1の立脚点である位置P1の距離が極めて遠くなる。そのため、処理画像81中の作業員の表示サイズが小さすぎて見難い場合がある。そこで強調表示画像107を用いて作業員の画像の周囲を強調表示すると、処理画像中における作業員の位置を見やすくできる。
補助画像101を生成する際の視点は吊体画像51を生成する際の視点と同様としてもよいし、視点に関係なく表示してもよい。また、補助画像101を生成するタイミングは吊体画像51を生成するタイミングと同じとするのが好ましい。
【0057】
画像生成手段21は、処理画像81を所定の周期以下で生成できる構成であれば、公知のコンピュータを用い、コンピュータの記憶部に、吊体モデル情報41、荷役対象モデル情報61、移動体モデル情報91、補助画像101を記憶する構成にすればよい。
ただし、吊体モデル情報41、荷役対象モデル情報61、移動体モデル情報91、及び補助画像101は必要に応じて外部記憶装置や、ネットワークから取得してもよい。
【0058】
図1及び
図2に示す表示手段23は、処理画像81を表示する装置であり、画像生成手段21に接続される。処理画像81を表示できるのであれば表示手段23は公知のモニタ等を適宜用いればよい。表示手段23における処理画像81の表示領域は、処理画像81を運転手が見やすい範囲で適宜設定すればよい。
【0059】
次に
図11及び
図12を参照して本実施形態に係るクレーン1の運転支援システム27を用いた運転支援方法について説明する。
まず、運転支援システム27の各構成に対応する装置の電源をONにして運転支援システム27を起動する(
図11のS0)。
【0060】
次に、位置検出手段19は吊体12の位置を予め定められた所定の周期で検出して、検出結果を示す位置検出信号を生成する(
図11のS1、位置検出工程)。
位置検出手段19が吊体12の位置の検出を開始する始期は適宜設定できる。例えば位置検出手段19が動作可能になった時点で検出を開始してもよい。画像生成手段21等が位置検出手段19に検出開始の指示を示す信号を送信し、この信号を位置検出手段19が受信した時点で検出を開始してもよい。位置検出信号が生成されると、位置検出手段19は位置検出信号を画像生成手段21に送信する。
運転支援システム27が荷役対象位置取得手段25を備える場合、荷役対象位置取得手段25は、荷役対象情報を取得する(
図11のS2)。取得した荷役対象情報は画像生成手段21に送信される。
運転支援システム27が移動体位置取得手段29を備える場合、移動体位置取得手段29は、移動体情報を取得する(
図11のS3)。取得した移動体情報は画像生成手段21に送信される。
運転支援システム27が補助画像101を処理画像81に表示する場合、補助画像101の表示に必要な情報も取得する(
図11のS4)。補助画像101の表示に必要な情報とは、例えば補助画像101がクレーンステータスを表示する場合、クレーンステータスである。
S1~S4の順番は任意に設定できる。S1~S4は平行して実施してもよい。
【0061】
次に、画像生成手段21は、位置検出信号が示す吊体12の蔵置領域における位置で、かつ所定の視点及び所定の視野で、吊体モデル情報41を描画した画像である吊体画像51を所定の周期で生成する(
図11のS5、画像生成工程)。スプレッダ13の種類が複数ある場合は、位置検出信号に含まれるスプレッダ13の種類の情報を基に、対応する吊体モデル情報41を画像生成手段21が選択して吊体画像51を生成する。
S2を実施している場合、画像生成手段21は、荷役対象情報が示す位置で、かつ所定の視点及び所定の視野で荷役対象モデル情報61を描画した荷役対象画像71を生成する(
図11のS6)。この際、荷役対象が複数種類存在する場合は、荷役対象情報に含まれる荷役対象の種類の情報を基に、対応する荷役対象モデル情報61を画像生成手段21が選択して荷役対象画像71を生成する。
S3を実施している場合、画像生成手段21は、移動体情報が示す位置で、かつ所定の視点及び所定の視野で移動体モデル情報91を描画した移動体画像99を生成する(
図11のS7)。移動体が複数存在する場合は、移動体情報に含まれる移動体の種類の情報を基に、対応する移動体モデル情報91を画像生成手段21が選択して移動体画像99を生成する。
S4を実施している場合、画像生成手段21は、補助画像用の情報を基に対応する補助画像101を生成する(
図11のS8)。
S5~S8の順番は任意に設定できる。S5~S8は平行して実施してもよい。
【0062】
次に、画像生成手段21は吊体画像51、荷役対象画像71、移動体画像99、及び補助画像101を所定の視点から距離が近い順に裏側に重ねて所定の周期以下で処理画像81を生成する(
図11のS9)。生成した処理画像81は表示手段23に送信される。吊体画像51、荷役対象画像71、移動体画像99、及び補助画像101を
図1の視点V1で生成して重ねた処理画像81の例を
図12に示す。
最後に、処理画像81を受信した表示手段23は、処理画像81を表示する(
図11のS10、表示工程)。
【0063】
このように本実施形態では、運転支援システム27が位置検出手段19、画像生成手段21、及び表示手段23を備える。この構成では吊体モデル情報41に、位置検出手段19から所定の周期で入力された位置検出信号を基に吊体12の現在位置情報を反映させた吊体画像51が生成される。
そのため、伝送の際に位置検出信号が変換されたとしても変換に要する時間が短く、映像信号を基にして吊体12の映像を表示する場合と比べ、表示の遅延時間が短い。
よって、表示手段23に表示される吊体12の画像に遅延が生じ難い。
【符号の説明】
【0064】
1 クレーン
3 支持構造体
5 レール
7 走行装置
8 ワイヤ
9 桁
10、10a、10b コンテナ
11 トロリ
12 吊体
13 スプレッダ
15 運転室
19 位置検出手段
19a 位置センサ
21 画像生成手段
23 表示手段
25 荷役対象位置取得手段
25a 位置センサ
25b 入出力インタフェース
27 運転支援システム
29 移動体位置取得手段
29a 位置センサ
29b 入出力インタフェース
30 TOS
41 吊体モデル情報
43 固定フレーム
45 可動フレーム
47 ツイストロック保持部
48 コンテナ船
49 ツイストロック
51 吊体画像
61 荷役対象モデル情報
63 箱体
65 扉
67 長孔
69 コンテナ識別番号表示領域
71 荷役対象画像
81 処理画像
91、91a 移動体モデル情報
93 暴露甲板
95 ラッシングブリッジ
99 移動体画像
101 補助画像
103 運転室画像
105 クレーンステータス表示画像
107 強調表示画像