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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】非水系電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20230908BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20230908BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20230908BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230908BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M4/48
H01M4/587
H01M10/052
H01M4/36 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019220792
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2020095956
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2018229157
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】320011605
【氏名又は名称】MUアイオニックソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 藍子
(72)【発明者】
【氏名】丸 直人
【審査官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/014998(WO,A1)
【文献】特開2015-138660(JP,A)
【文献】国際公開第2011/099580(WO,A1)
【文献】特開2017-022108(JP,A)
【文献】特開2014-146517(JP,A)
【文献】特開平11-233141(JP,A)
【文献】国際公開第2013/133361(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/051675(WO,A1)
【文献】特開2014-067490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水系電解液、負極及び正極を含み、該負極がSiを含む非水系電解二次電池であって、該非水系電解液が、非水溶媒及び下記式(1)で表される化合物(1)を含有し、該負極がSiOx(0.5≦x≦1.6)で表される活物質を含有し、かつ該非水系電解液全体に対する化合物(1)の含有量をa質量%、該負極活物質全体に対するSiOxの含有量をb質量%としたときに、0.05≦a/b≦1.50を満たす非水系電解二次電池。
【化1】

(上記式(1)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数6~10のアリール基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数6~10のアリール基で表される基を表し、nは0又は1であり、pは0又は1である。
【請求項2】
前記式(1)におけるRがトリフルオロエチル基であり、かつpが1である、請求項1に記載の非水系電解液二次電池
【請求項3】
化合物(1)として、ホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)及びビス(2,2,2-トリフルオロエチル)メチルホスホナートからなる群より選ばれる少なくと
も一種を含む、請求項1又は2に記載の非水系電解液二次電池
【請求項4】
化合物(1)の含有量が0.01質量%以上10質量%以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非水系電解液二次電池
【請求項5】
前記負極活物質中のSiOxの含有量が0.01質量%以上15質量%以下である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の非水系電解液二次電池
【請求項6】
前記負極が炭素材を主成分とする活物質を含み、かつその含有量が前記負極活物質全体に対して85.0質量%以上99.9質量%以下である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の非水系電解液二次電池
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液二次電池に関する。より具体的には、本発明は、充放電サイク
ル後の放電容量と放電レート特性のバランスに優れた非水系電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン等の電源から自動車用等の駆動用車載電源や定置用大型電源
等の広範な用途において、リチウム二次電池等の非水系電解液二次電池が実用化されてい
る。しかしながら、近年の非水系電解液二次電池に対する高性能化の要求はますます高く
なっており、高エネルギー密度化を達成したうえで、入出力特性、サイクル特性、保存特
性、連続充電特性、安全性等の諸電池特性を高い水準で達成することが求められている。
【0003】
これまで、非水系電解液二次電池を高容量化する目的から、負極活物質としてリチウム
と合金化できる金属または金属酸化物を使用する試みがなされている。しかしながら、リ
チウムと合金化できる化合物は、充放電する際に大きな体積変化を伴うために、電池の劣
化が進行しやすいことが知られている。近年、リチウムと合金化可能な化合物の中でも、
体積変化が比較的に小さい負極活物質として、SiOxが注目されている。
【0004】
また、非水系電解液二次電池のサイクル特性などの電池特性を改善するために、非水系
電解液の添加剤を用いることが先に提案されている。特に、ホスホン酸ジエステル構造を
有する添加剤が優れた性能を有することが知られている。例えば、特許文献1には、非水
系電解液にホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)を含有することにより、
高温耐久性を向上できる技術が開示されている。また、水素原子が置換されたホスホン酸
ジエステルやホスフィン酸エステル構造を有する添加剤も優れた性能を有することが知ら
れている。例えば、特許文献2には、非水系電解液にアルキル基やアリール基で置換され
たホスホン酸ジエステルやホスフィン酸エステルを含有することにより、サイクル特性等
を向上できる技術が開示されている。また、特許文献3には非水系電解液にエステル結合
を有する官能基で置換されたホスホン酸ジエステルを含有することにより、高温保存特性
やガス特性を向上できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-146517号公報
【文献】特開2007-299542号公報
【文献】特開2014-194930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等の検証によれば、上記特許文献1乃至3の技術では、サイクル後の容量とレ
ート特性のバランスが不十分であるという課題が見出された。本発明者等が検討したとこ
ろ、高容量化については、負極活物質としてSiOxやSiを使用することで達成しうる
が、その一方でサイクル特性や放電レート特性が悪くなることが分かった。
本発明は、かかる背景技術に鑑みてなされたものであり、SiOxを含む負極活物質と
、特定の構造を有する添加剤を、特定の比率で組み合わせることで、充放電サイクル後の
容量とレート特性のバランスに優れた非水系電解液二次電池を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、非水系電解液二次電池と
して、非水系電解液として、特定のリン含有エステル化合物を含有し、負極活物質にSi
Oxを含有し、かつリン含有エステル化合物とSiOxの含有量が特定の関係を満たすも
のを用いることで上記課題を解決し得ることを見出した。即ち、本発明の要旨は以下に示
す通りである。
【0008】
[1]非水系電解液、負極及び正極を含み、該負極がSiを含む非水系電解二次電池であ
って、該非水系電解液が、非水溶媒及び下記式(1)で表される化合物(1)を含有し、
該負極がSiOx(0.5≦x≦1.6)で表される活物質を含有し、かつ該非水系電解
液全体に対する化合物(1)の含有量をa質量%、該負極活物質全体に対するSiOxの
含有量をb質量%としたときに、0.05≦a/b≦1.50を満たす非水系電解二次電
池。
【0009】
【化1】
【0010】
(上記式(1)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭
素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数6~10のアリール
基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~
5のアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数6~10のアリール基又は下記
式(2)で表される基を表し、nは0又は1であり、pは0又は1である。)
【0011】
【化2】
【0012】
(上記式(2)中、Rは水素原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~5のア
ルキル基を表し、qは1~5である。)
【0013】
[2]前記式(1)におけるRがトリフルオロエチル基であり、かつpが1である、[
1]に記載の非水系電解液。
【0014】
[3]化合物(1)として、ホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)、ビス
(2,2,2-トリフルオロエチル)メチルホスホナート、ビス(2,2,2-トリフル
オロエチル)ホスホノ酢酸メチル及び[ビス(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ホス
フィニル]酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、[1]又は[2]
に記載の非水系電解液。
【0015】
[4]化合物(1)の含有量が0.01質量%以上10質量%以下である、[1]乃至[
3]に記載の非水系電解液。
【0016】
[5]前記負極活物質中のSiOxの含有量が0.01質量%以上15質量%以下である
、請求項[1]乃至[4]に記載の非水系電解液。
【0017】
[6]前記負極が炭素材を主成分とする活物質を含み、かつその前記負極活物質中の含有
量が85.0質量%以上99.9質量%以下である、請求項[1]乃至[5]に記載の非
水系電解液。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、充放電サイクル後の放電容量と放電レート特性のバランスに優れる非
水系電解液二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。以下の説明は、本発明の一例(代表例)であり
、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範
囲内で任意に変更して実施することができる。
【0020】
[非水系電解液二次電池]
本発明の非水系電解液二次電池は、非水系電解液、負極及び正極を含む非水系電解二次電池であって、該非水系電解液が、非水溶媒及び後述の式(1)で表される化合物を含有し、該負極がSiOx(0.5≦x≦1.6)で表される活物質を含有し、該非水系電解液全体に対する化合物(1)の含有量をa質量%、該負極活物質全体に対するSiOxの含有量をb質量%とした時に、0.05≦a/b≦1.5を満たすものである。より具体的には、0.05≦a/b≦1.0であることが好ましい。化合物(1)とSiOxの含有量比であるa/bが上記範囲内であると、化合物(1)のSiOxへの効果が発現し易くなる。
【0021】
本発明の非水系電解液二次電池は、SiOxを含む負極活物質を用いながらも、充放電
サイクル後の放電容量と放電レート特性のバランスに優れるという効果を奏する。本発明
がこのような効果を奏する理由は定かではないが、次の理由によるものと推定される。即
ち、式(1)で表される化合物は、一定の電位の下で、負極に含まれるSiOxと特異的
な反応を起こし、SiOx表面に良好な界面を生成すると推定される。通常、SiOxを
負極活物質として用いた非水系電解液二次電池では、充放電の繰り返しにより、SiOx
と電解液が不可逆的な反応を起こし、SiOx界面が変質することで、サイクル特性やレ
ート特性が悪化する。化合物(1)によって生成されたSiOx表面の良好な界面により
、充放電過程で発生する電解液との副反応が抑制されることで、前期劣化を抑制するもの
と推定される。このとき、化合物(1)は電解液と副反応を起こしうるSiOxの全表面
と反応し、改質する必要性があるため、負極活物質中のSiOxの含有量に応じて、電解
液中に十分に含有される必要がある。その一方で、SiOxの含有量に対して、過剰量の
化合物(1)が含まれるとき、多量の化合物(1)が負極上で還元分解することで、厚い
被膜を生成し、負極中でSiOxやその他活物質の導電パスが切れやすくなり、サイクル
特性やレート特性等の電池諸特性が悪化する。つまり、電解液中の化合物(1)の含有量
の最適値は負極活物質中のSiOxの含有量に依存するものであり、それぞれの含有量に
おいて、特定の組み合わせの範囲のときのみ、優れた効果を発揮するものと推定される。
【0022】
<1.非水系電解液>
本発明に用いる非水系電解液は、非水溶媒及び下記式(1)で表される化合物(1)を
a質量%含み、負極活物質中のSiOxの含有量をb質量%とした時に、0.05≦a/
b≦1.5を満たすものである。
【0023】
【化3】
【0024】
(上記式(1)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭
素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数6~10のアリール
基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~
5のアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数6~10のアリール基又は下記
式(2)で表される基を表し、nは0又は1であり、pは0又は1である。)
【0025】
【化4】
【0026】
(上記式(2)中、Rは水素原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~5のア
ルキル基を表し、qは1~5である。)
【0027】
<1-1.化合物(1)>
本発明に用いる非水系電解液は、前記式(1)で表される化合物を含有する。
具体的にはP-OCH2CF3構造を有する。有機リン酸エステルは酸化物表面と反応すること
が知られているが、負極活物質SiOxに対しても化合物(1)は表面と特異的な反応を起こ
し、良好な界面に改質すると考えられる。SiOx表面と反応させるためには、SiOx表面近傍
に化合物(1)を多く偏在させることが必要だが、電気陰性であるフッ素原子が分子表面
に張り出すことのできるトリフルオロエチル基を有することで、SiOx表面に化合物(1)
が吸着し、表面改質が進行しやすくなると考えられる。以上の理由から、P-OCH2CF3構造
を有する化合物(1)はSiOxを含む負極活物質を用いた電池で良好な効果を発揮すると考
えられる。前記式(1)において、Rは水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有し
ていてもよい炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子を有していてもよい炭素数6~
10のアリール基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有していても
よい炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数6~10のアリ
ール基又は前記式(2)で表される基を表し、nは0又は1であり、pは0又は1である
。前記式(2)において、Rは水素原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~
5のアルキル基を表し、qは1~5である。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素、塩
素、ヨウ素、臭素が挙げられ、これらの中でもフッ素が好ましい。
【0028】
特に、化合物(1)において、Rが、水素原子又はハロゲン原子を有していてもよい
炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、フッ素原子を含む炭素数1~5のアル
キル基であることがより好ましく、トリフルオロエチル基であることが更に好ましい。上
記官能基のとき、SiOx表面に相互作用しやすく、化合物(1)を多く偏在させることがで
きるからである。また、Rは水素原子、ハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~5
のアルキル基、前記式(2)で表される基であることが好ましい。前記式(2)において
は、Rがハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~3のアルキル基であることが好ま
しく、qが1~3であることが好ましい。また、nは1であることが好ましい。また、p
は1であることが好ましい。上記官能基のとき、SiOx表面への相互作用の強さと反応中心
であるリン原子周囲の立体障害の大きさとのバランスが優れるためである。
【0029】
より具体的には、前記式(1)で表される化合物の中でも、ホスホン酸ビス(2,2,
2-トリフルオロエチル)、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)メチルホスホナー
ト、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスホノ酢酸メチル及び[ビス(2,2,
2-トリフルオロエトキシ)ホスフィニル]酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくと
も一種を含むことが好ましい。
【0030】
式(1)で表される化合物の非水系電解液中の含有量は、a質量%と表したとき、負極
活物質中のSiOxの含有量b質量%に対して、0.05≦a/b≦1.50を満たすも
のであれば、特に限定されない。この化合物の含有量aの単独の好ましい範囲としては、
0.01≦a≦10であることが好ましく、0.01≦a≦5であることがより好ましく
、0.2≦a≦3.5であることが更に好ましい。この化合物の含有量aが上記範囲内で
あると、他の電池性能を損なうことなく、充放電サイクル後の放電容量と放電レート特性
への効果がさらに発現し易くなる。非水系電解液中の式(1)で表される化合物の含有量
の測定方法として、核磁気共鳴分析が挙げられる。
【0031】
<1-2.非水溶媒>
本発明に用いる非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様、通常はその主成分とし
て、後術する電解質を溶解する非水溶媒を含有する。ここで用いる非水溶媒について特に
制限はなく、公知の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、好ましくは、飽
和環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、環状カルボン酸エス
テル、エーテル系化合物、及びスルホン系化合物から選ばれる少なくとも1つが挙げられ
るが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて
用いることができる。
【0032】
<1-3-1.飽和環状カーボネート>
飽和環状カーボネートとしては、炭素数2~4のアルキレン基を有するものが挙げられ
る。具体的には、炭素数2~4の飽和環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート
、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカ
ーボネートとプロピレンカーボネートがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性
向上の点から好ましい。飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上
を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
【0033】
飽和環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない
限り任意であるが、1種を単独で用いる場合の含有量の下限は、非水溶媒100体積%中
、通常3体積%以上、好ましくは5体積%以上である。この範囲とすることで、非水系電
解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液二次電池の大電
流放電特性、負極に対する安定性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなる。また上限
は、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下で
ある。この範囲とすることで、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低
下を抑制し、ひいては非水系電解液二次電池の入出力特性を更に向上させたり、サイクル
特性や保存特性といった耐久性が更に向上させたりできるために好ましい。
【0034】
<1-3-2.鎖状カーボネート>
鎖状カーボネートとしては、炭素数3~7のものが好ましい。具体的には、炭素数3~
7の鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n
-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカー
ボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチル
メチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t-ブチルメチルカーボネート、
エチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルエチルカーボネート、イソブチルエチル
カーボネート、t-ブチルエチルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、ジメチ
ルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピ
ルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、
メチル-n-プロピルカーボネートが好ましく、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボ
ネート、エチルメチルカーボネートが特に好ましい。
【0035】
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」
と略記する場合がある。)も好適に用いることができる。フッ素化鎖状カーボネートが有
するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好まし
くは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それら
は互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。フッ素化
鎖状カーボネートとしては、フッ素化ジメチルカーボネート誘導体、フッ素化エチルメチ
ルカーボネート誘導体、フッ素化ジエチルカーボネート誘導体等が挙げられる。
【0036】
鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比
率で併用してもよい。
鎖状カーボネートの含有量は特に限定されないが、非水溶媒100体積%中、通常15
体積%以上であり、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上である。
また、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下
である。鎖状カーボネートの含有量を上記範囲とすることによって、非水系電解液の粘度
を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液二次電池の入出
力特性や充放電レート特性を良好な範囲としやすくなる。また、非水系電解液の誘電率の
低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液二次電池の入出力特性や充放電
レート特性を良好な範囲としやすくなる。
【0037】
<1-3-3.鎖状カルボン酸エステル>
鎖状カルボン酸エステルとしては、その構造式中の全炭素数が3~7のものが挙げられ
る。具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢
酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-t-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン
酸エチル、プロピオン酸-n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸-n
-ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸-t-ブチル、酪酸メチル、酪酸エチ
ル、酪酸-n-プロピル、酪酸イソプロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪
酸-n-プロピル、イソ酪酸イソプロピル等が挙げられる。これらの中でも、酢酸メチル
、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸-n-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオ
ン酸エチル、プロピオン酸-n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪
酸エチル等が、粘度低下によるイオン伝導度の向上、及びサイクルや保存といった耐久試
験時の電池膨れの抑制の観点から好ましい。
【0038】
<1-3-4.環状カルボン酸エステル>
環状カルボン酸エステルとしては、その構造式中の全炭素原子数が3~12のものが挙
げられる。具体的には、ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラ
クトン、イプシロンカプロラクトン等が挙げられる。これらの中でも、ガンマブチロラク
トンがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
【0039】
<1-3-5.エーテル系化合物>
エーテル系化合物としては、炭素数3~10の鎖状エーテル、及び炭素数3~6の環状
エーテルが好ましい。
炭素数3~10の鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジ(2-フルオロエチル
)エーテル、ジ(2,2-ジフルオロエチル)エーテル、ジ(2,2,2-トリフルオロ
エチル)エーテル、エチル(2-フルオロエチル)エーテル、エチル(2,2,2-トリ
フルオロエチル)エーテル、エチル(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル
、(2-フルオロエチル)(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、(2-フルオ
ロエチル)(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、(2,2,2-トリフ
ルオロエチル)(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、エチル-n-プロ
ピルエーテル、エチル(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(3,3,3-
トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3-テトラフルオロ-n
-プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)
エーテル、2-フルオロエチル-n-プロピルエーテル、(2-フルオロエチル)(3-
フルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(3,3,3-トリフルオ
ロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオ
ロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフ
ルオロ-n-プロピル)エーテル、2,2,2-トリフルオロエチル-n-プロピルエー
テル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、
(2,2,2-トリフルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エー
テル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プ
ロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタ
フルオロ-n-プロピル)エーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-n-プロ
ピルエーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピ
ル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ
-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(2,2,3,
3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチ
ル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ-n-プロピ
ルエーテル、(n-プロピル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピ
ル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(2,2
,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(2,2,3,
3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(3-フルオロ-n-プロピル)
エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル
)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-
プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフ
ルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エー
テル、(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ
-n-プロピル)エーテル、(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)(2,2,3
,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3-テトラフル
オロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)(
2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3,
3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジメトキシメ
タン、メトキシエトキシメタン、メトキシ(2-フルオロエトキシ)メタン、メトキシ(
2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタンメトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロ
エトキシ)メタン、ジエトキシメタン、エトキシ(2-フルオロエトキシ)メタン、エト
キシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、エトキシ(1,1,2,2-テトラ
フルオロエトキシ)メタン、ジ(2-フルオロエトキシ)メタン、(2-フルオロエトキ
シ)(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、(2-フルオロエトキシ)(1,1
,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタンジ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メ
タン、(2,2,2-トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキ
シ)メタン、ジ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジメトキシエタン
、メトキシエトキシエタン、メトキシ(2-フルオロエトキシ)エタン、メトキシ(2,
2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、メトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエ
トキシ)エタン、ジエトキシエタン、エトキシ(2-フルオロエトキシ)エタン、エトキ
シ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、エトキシ(1,1,2,2-テトラフ
ルオロエトキシ)エタン、ジ(2-フルオロエトキシ)エタン、(2-フルオロエトキシ
)(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、(2-フルオロエトキシ)(1,1,
2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エ
タン、(2,2,2-トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキ
シ)エタン、ジ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、エチレングリコー
ルジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレン
グリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0040】
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メ
チルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、2-メチル-1,3-ジオキサン、4-
メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン等、及びこれらのフッ素化化合物が挙
げられる。これらの中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメ
タン、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチ
ルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力
が高く、リチウムイオン解離性を向上させる点で好ましい。特に好ましくは、粘性が低く
、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシ
メトキシメタンである。
【0041】
<1-3-6.スルホン系化合物>
スルホン系化合物としては、炭素数3~6の環状スルホン、及び炭素数2~6の鎖状ス
ルホンが好ましい。1分子中のスルホニル基の数は、1又は2であることが好ましい。
環状スルホンとしては、モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメ
チレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;ジスルホン化合物であるトリメチレンジ
スルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる
。これらの中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレン
ジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく
、テトラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
【0042】
スルホラン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも
含めて「スルホラン類」と略記する場合がある。)が好ましい。スルホラン誘導体として
は、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアル
キル基で置換されたものが好ましい。
これらの中でも、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、2-フルオロスルホ
ラン、3-フルオロスルホラン、2,2-ジフルオロスルホラン、2,3-ジフルオロス
ルホラン、2,4-ジフルオロスルホラン、2,5-ジフルオロスルホラン、3,4-ジ
フルオロスルホラン、2-フルオロ-3-メチルスルホラン、2-フルオロ-2-メチル
スルホラン、3-フルオロ-3-メチルスルホラン、3-フルオロ-2-メチルスルホラ
ン、4-フルオロ-3-メチルスルホラン、4-フルオロ-2-メチルスルホラン、5-
フルオロ-3-メチルスルホラン、5-フルオロ-2-メチルスルホラン、2-フルオロ
メチルスルホラン、3-フルオロメチルスルホラン、2-ジフルオロメチルスルホラン、
3-ジフルオロメチルスルホラン、2-トリフルオロメチルスルホラン、3-トリフルオ
ロメチルスルホラン、2-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、3-フル
オロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、4-フルオロ-3-(トリフルオロメチ
ル)スルホラン、5-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン等がイオン伝導
度が高く入出力が高い点で好ましい。
【0043】
また、鎖状スルホンとしては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルス
ルホン、n-プロピルメチルスルホン、n-プロピルエチルスルホン、ジ-n-プロピル
スルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジイソプロピル
スルホン、n-ブチルメチルスルホン、n-ブチルエチルスルホン、t-ブチルメチルス
ルホン、t-ブチルエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメ
チルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルス
ルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタ
フルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロ
メチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、パーフルオロエチルメチルスルホ
ン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、ジ(ト
リフルオロエチル)スルホン、パーフルオロジエチルスルホン、フルオロメチル-n-プ
ロピルスルホン、ジフルオロメチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロメチル-n-
プロピルスルホン、フルオロメチルイソプロピルスルホン、ジフルオロメチルイソプロピ
ルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-プロ
ピルスルホン、トリフルオロエチルイソプロピルスルホン、ペンタフルオロエチル-n-
プロピルスルホン、ペンタフルオロエチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-
n-ブチルスルホン、トリフルオロエチル-t-ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル
-n-ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル-t-ブチルスルホン等が挙げられる。
【0044】
これらの中でも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n-
プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n-ブチルメチルスルホン、t
-ブチルメチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチル
スルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジ
フルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエ
チルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスル
ホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチル
ペンタフルオロエチルスルホン、トリフルオロメチル-n-プロピルスルホン、トリフル
オロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-ブチルスルホン、トリフル
オロエチル-t-ブチルスルホン、トリフルオロメチル-n-ブチルスルホン、トリフル
オロメチル-t-ブチルスルホン等がイオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
【0045】
<1-4.電解質>
本発明に用いる非水系電解液は通常、電解質が含まれる。特に、本発明が提供する非水
系電解液二次電池がリチウムイオン二次電池である場合には、通常リチウム塩が含まれる

本発明に用いる非水系電解液に用いることができるリチウム塩としては、例えば、Li
ClO、LiBF、LiPF、LiAsF、LiTaF、LiCFSO
LiCSO、Li(FSON、Li(CFSON、Li(C
SON、Li(CF)SOC、LiBF(C)、LiB(C
、LiB(C、LiPF(C等が挙げられる。これらの
うち、好ましいものは、LiPF、LiBF、LiClO、Li(FSO
及びLi(CFSONから選ばれる少なくとも1つであり、より好ましいものは
LiPF、LiBF、Li(FSON及びLi(CFSONから選ば
れる少なくとも1つであり、更に好ましいのは、LiPF及びLi(FSONの
うちの少なくとも一方であり、特に好ましいものはLiPFである。以上に挙げたリチ
ウム塩は1種類のみで用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
本発明に用いる非水系電解液の最終的な組成中におけるリチウム塩等の電解質の濃度は
、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、好ましくは0.5mol/L以上
であり、より好ましくは0.6mol/L以上であり、更に好ましくは0.7mol/L
以上であり、一方、好ましくは3mol/L以下であり、より好ましくは2mol/L以
下であり、更に好ましくは1.8mol/L以下である。リチウム塩の含有量が上記範囲
内であることによりイオン電導度を適切に高めることができる。
なお、以上に挙げたリチウム塩の含有量を測定する方法としては特に制限はなく、公知
の方法を任意に用いることができる。このような方法としては例えば、イオンクロマトグ
ラフィー、F磁気共鳴分光法等が挙げられる。
【0047】
<1-5.その他の添加剤>
本発明に用いる非水系電解液は、以上に挙げた各種化合物の他に、マロノニトリル、ス
クシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル
、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル等のシ
アノ基を有する化合物、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-フェニレンジイソシアネート、1
,4-フェニレンジイソシアネート、1,2-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1
,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベン
ゼン等のイソシアナト化合物、アクリル酸無水物、2-メチルアクリル酸無水物、3-メ
チルアクリル酸無水物、安息香酸無水物、2-メチル安息香酸無水物、4-メチル安息香
酸無水物、4-tert-ブチル安息香酸無水物、4-フルオロ安息香酸無水物、2,3
,4,5,6-ペンタフルオロ安息香酸無水物、メトキシギ酸無水物、エトキシギ酸無水
物、無水コハク酸、無水マレイン酸等のカルボン酸無水物化合物、ビニレンカーボネート
、ビニルエチレンカーボネート等の不飽和結合を有する環状カーボネート、1,3-プロ
パンスルトン等のスルホン酸エステル化合物、ジフルオロリン酸リチウムのようなリン酸
塩やフルオロスルホン酸リチウムのようなスルホン酸塩等が添加されていてもよい。ただ
し、ここで挙げたジフルオロリン酸リチウムやフルオロスルホン酸リチウムはリチウム塩
に該当するものであるが、非水系電解液に使用される非水溶媒に対する電離度の観点から
電解質として扱わず、添加剤と位置付けるものとする。また、過充電防止剤として、シク
ロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ビフェニル、アルキル
ビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、ジフェニルエーテル、ジベン
ゾフラン等の各種添加剤を本発明の効果を著しく損なわない範囲で配合することができる
。これらの化合物は適宜組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、容量維持率の観点
から、ビニレンカーボネート、ジフルオロリン酸リチウム、フルオロスルホン酸リチウム
が特に好ましく、特にはこれらを組み合わせて用いることが好ましい。
【0048】
<2.負極>
本発明に用いる負極は、SiOx(0.5≦x≦1.6)で表される活物質をb質量%
含み、非水電解液中の化合物(1)の含有量をa質量%とした時に、0.05≦a/b≦
1.5を満たすものである。
【0049】
<2-1.SiOx>
本発明に用いる負極は、SiOx(0.5≦x≦1.6)を含む。SiOxにおけるx
は、より好ましくは0.7~1.3であり、特に好ましくは0.8~1.2である。xが
上記範囲であると、Liイオン等のアルカリイオンの出入りのしやすい高活性な非晶質の
SiOxとなる。
負極活物質中のSiOxにおけるxの測定方法として、アルカリ溶融や希フッ化水素酸
で溶解した水溶液の誘導結合プラズマ発光分析法またはモリブデン青吸光光度法によるSi
の定量分析、酸素窒素水素分析装置または酸素窒素分析装置によるOの定量分析が挙げら
れる。
【0050】
さらに、SiOxにSi、O以外の元素がドープされていてもよい。Si、O以外の元
素がドープされたSiOxは、粒子内部の化学構造が安定化することにより初期充放電効
率、サイクル特性の向上が見込まれる。ドープされる元素は通常、周期表第18族以外の
元素であれば任意の元素から選ぶことができるが、Si、O以外の元素がドープされたS
iOxがより安定であるためには周期表第4周期までの元素が好ましい。具体的には、周
期表第4周期までのアルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Ga、Ge、N、P、As
、Se等の元素から選ぶことができる。Si、O以外の元素がドープされたSiOxのリ
チウムイオン受け入れ性を向上させるためには、ドープされる元素は周期表第4周期まで
のアルカリ金属、アルカリ土類金属であることが好ましく、Mg、Ca、Liがより好ま
しく、Liが更に好ましい。これらは1種のみでも、2種以上を組み合わせて用いること
もできる。また、SiOxは、表面の少なくとも一部に非晶質炭素からなる炭素層を備え
た複合型のSiOx粒子であってもよい。ここで、「表面の少なくとも一部に非晶質炭素
からなる炭素層を備えた」とは、炭素層が酸化珪素粒子の表面の一部又は全部を層状に覆
う形態のみならず、炭素層が表面の一部又は全部に付着・添着する形態をも包含する。炭
素層は、表面の全部を被覆するように備えていてもよく、一部を被覆あるいは付着・添着
してもよい。
【0051】
SiOx(0.5≦x≦1.6)の活物質中の含有量は、b質量%と表したとき、非水
系電解液中の化合物(1)の含有量a質量%に対して、0.05≦a/b≦1.50を満
たすものであれば、特に限定されない。SiOxの含有量bの単独の好ましい範囲として
は、0.01≦b≦15であることが好ましく、1≦b≦11であることがより好ましい
。SiOxの含有量bが上記範囲内であると、他の電池性能を損なうことなく、充放電サ
イクル後の放電容量と放電レート特性が両立し易くなる。負極活物質中のSiOx含有量
の測定方法として、アルカリ溶融や希フッ化水素酸で溶解した水溶液の誘導結合プラズマ
発光分析法またはモリブデン青吸光光度法によるSiの定量分析、酸素窒素水素分析装置ま
たは酸素窒素分析装置によるOの定量分析が挙げられる。負極活物質に炭素材が共存する
場合は、C原子の定量として炭素硫黄分析装置または有機元素分析装置での分析が挙げら
れる。
【0052】
<2-2.炭素材>
本発明に用いる負極は炭素材を主成分とする活物質(炭素材を50質量%以上含む活物
質)を含むことが好ましい。具体的には、黒鉛、非晶質炭素、黒鉛化度の小さい炭素質物
が挙げられる。黒鉛の種類としては、天然黒鉛、人造黒鉛等が挙げられる。また、これら
を炭素質物、例えば非晶質炭素や黒鉛化物で被覆したものを用いてもよい。非晶質炭素と
しては、例えば、バルクメソフェーズを焼成した粒子や、炭素前駆体を不融化処理し、焼
成した粒子が挙げられる。
【0053】
黒鉛化度の小さい炭素質物粒子としては、有機物を通常2500℃未満の温度で焼成し
たものが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合
わせて併用してもよい。
炭素材の活物質中の含有量は、85.0質量%以上99.9質量%以下であることが好
ましく、89.0質量%以上99.0質量%以下であることがより好ましく、94.0質
量%以上99.0質量%以下であることが更に好ましい。含有量が上記範囲のとき、充放
電サイクル後の放電容量と放電レート特性が両立し易くなる。
【0054】
<3.正極>
本発明に用いる非水系二次電池の正極の活物質となる正極材料としては、例えば、基本
組成がLiCoOで表されるリチウムコバルト複合酸化物、LiNiOで表されるリ
チウムニッケル複合酸化物、LiMnO及びLiMnで表されるリチウムマンガ
ン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物、二酸化マンガン等の遷移金属酸化物、並
びにこれらの複合酸化物混合物等を用いればよい。更にはTiS、FeS、Nb
、Mo、CoS、V、CrO、V、FeO、GeO及びL
i(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O、LiFePO等を用いればよく、容量密
度の観点から、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O2、Li(Ni0.5Mn
.2Co0.3)O2、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O2、Li(Ni0.
Mn0.1Co0.1)O2、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O等が
特に好ましい。
【0055】
<4.セパレータ>
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この
場合、本発明に用いる非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
セパレータの材料や形状については特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない
限り、公知のものを任意に採用することができる。これらの中でも、本発明に用いる非水
系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液
性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
【0056】
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン
等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィ
ルター等を用いることができる。これらの中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレ
フィンであり、さらに好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用
いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0057】
上記セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく
、10μm以上がより好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好まし
く、30μm以下がより好ましい。セパレータが、上記範囲より薄過ぎると、絶縁性や機
械的強度が低下する場合がある。また、上記範囲より厚過ぎると、レート特性等の電池性
能が低下する場合があるばかりでなく、非水系電解液二次電池全体としてのエネルギー密
度が低下する場合がある。
【0058】
さらに、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパ
レータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%
以上がより好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下
がより好ましい。空孔率が、上記範囲より小さ過ぎると、膜抵抗が大きくなってレート特
性が悪化する傾向がある。また、上記範囲より大き過ぎると、セパレータの機械的強度が
低下し、絶縁性が低下する傾向にある。
【0059】
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm
以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると
、短絡が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低
下する場合がある。
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物類、窒化ア
ルミや窒化ケイ素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられ
、粒子形状若しくは繊維形状のものが用いられる。
【0060】
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄
膜形状では、孔径が0.01~1μm、厚さが5~50μmのものが好適に用いられる。
前記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて前記無機物の粒子を含有する複
合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる
。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着剤
として多孔層を形成させることが挙げられる。
【0061】
<5.導電材>
上述の正極及び負極は、導電性の向上のために、導電材を含むことがある。導電材とし
ては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金
属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボ
ンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料等が挙げられる。なお、こ
れらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても
よい。
【0062】
導電材は、正極材若しくは負極材の100質量部に対し、通常0.01質量部以上、好
ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、また、通常50質量部以下、
好ましくは30質量部以下、より好ましくは15質量部以下含有するように用いられる。
含有量が上記範囲よりも下回ると、導電性が不十分となる場合がある。また、上記範囲よ
りも上回ると、電池容量が低下する場合がある。
【0063】
<6.結着剤>
上述の正極及び負極は、結着性の向上のために、結着剤を含むことがある。結着剤は、
非水系電解液や電極製造時用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に限定されない。
塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であれ
ばよいが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の
樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタ
ジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴ
ム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添
加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・
ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又は
その水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック-1,2-ポリ
ブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフ
ィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフ
ルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレ
ン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝
導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いて
もよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0064】
結着剤の割合は、正極材若しくは負極材の100質量部に対し、通常0.1質量部以上
であり、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、また、通常50質量部
以下であり、30質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下
がさらに好ましい。結着剤の割合が、上記範囲内であると電極の結着性を十分保持でき電
極の機械的強度が保たれ、サイクル特性、電池容量及び導電性の点から好ましい。
【0065】
<7.液体媒体>
スラリーを形成するための液体媒体としては、活物質、導電材、結着剤、並びに必要に
応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に
制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系媒体の例としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。有機
系媒体の例としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、
メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセト
ン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチ
ル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン等の
アミン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N-メチ
ルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;
ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド等の非プロトン性極性溶媒等を
挙げることができる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意
の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0066】
<8.増粘剤>
スラリーを形成するための液体媒体として水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレン
・ブタジエンゴム(SBR)等のラテックスを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘
剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。
増粘剤としては、本発明の効果を著しく制限しない限り制限はないが、具体的には、カ
ルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセ
ルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれ
らの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ
及び比率で併用してもよい。
【0067】
さらに増粘剤を使用する場合には、正極材若しくは負極材の100質量部に対し、通常
0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.6質量部以上、ま
た、通常5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下が望まし
い。上記範囲を下回ると著しく塗布性が低下する場合があり、また上記範囲を上回ると、
活物質層に占める活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や活物質間の抵抗が
増大する場合がある。
【0068】
<9.集電体>
集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体
例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル、銅等の
金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。これらの中
でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
【0069】
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金
属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素質材料の場
合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。
なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
集電体の厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm
以上がより好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、50μ
m以下がより好ましい。薄膜が、上記範囲内であると集電体として必要な強度が保たれ、
また取り扱い性の点からも好ましい。
【0070】
<10.電池設計>
[電極群]
電極群は、前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介してなる積層構造のもの、
及び前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもの
のいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称す
る。)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり
、80%以下が好ましい。電極群占有率が、上記範囲を下回ると、電池容量が小さくなる
。また、上記範囲を上回ると空隙スペースが少なく、電池が高温になることによって部材
が膨張したり電解質の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、電池として
の充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、さらには、内部圧力を外に
逃がすガス放出弁が作動する場合がある。
【0071】
[集電構造]
集電構造は特に限定されるものではないが、本発明に用いる非水系電解液による放電特
性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にする
ことが好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、本発明に用いる非水系電解液を使
用した効果は特に良好に発揮される。
【0072】
電極群が前述の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形
成される構造が好適に用いられる。1枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大
きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電
極群が前述の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端
子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0073】
[外装ケース]
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に限定され
るものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアル
ミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(
ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム
合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0074】
前記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属
同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して前記金属
類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。前記ラミネートフィルムを用いる外装ケ
ースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。
シール性を上げるために、前記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異な
る樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする
場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極
性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0075】
[保護素子]
前述の保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Po
sitive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サ
ーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流
を遮断する弁(電流遮断弁)等が挙げられる。前記保護素子は高電流の通常使用で作動し
ない条件のものを選択することが好ましく、高出力の観点から、保護素子がなくても異常
発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
【0076】
[外装体]
本発明の非水系電解液二次電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレー
タ等を外装体内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本発明の効果を著しく
損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
具体的には、外装体の材質は任意であるが、通常は、例えばニッケルメッキを施した鉄
、ステンレス、アルミニウム又はその合金、ニッケル、チタン等が用いられる。
また、外装体の形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大
型等のいずれであってもよい。
【実施例
【0077】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要
旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
(実施例1)
[負極の作製]
負極活物質として、黒鉛とSiO(x=1の市販品)の混合物を用いた。黒鉛とSiO
の合計量に対するSiOの含有量が5質量%となるように混合した。この混合物94質量
%に、増粘剤及びバインダーとして、カルボキシメチルセルロースナトリウムが3質量%
となるように水性ディスパージョンを加え、さらにカーボンブラックが3質量%となるよ
うに水性ディスパージョンを加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られた
スラリーを厚さ20μmの銅箔に塗布して乾燥し、プレス機で圧延したものを、直径12
.5mmの円板状に切り出して、実施例1の負極とした。
【0079】
[対極の作製]
乾燥アルゴン雰囲気下、リチウム金属箔を直径14mmの円板状に切り出して対極とし
た。
【0080】
[電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(
EMC)との混合物(体積比30:70)に乾燥したLiPFを1mol/Lの割合と
なるように溶解して電解液を調整し、基本電解液とした。この基本電解液にホスホン酸ビ
ス(2,2,2-トリフルオロエチル)を濃度が3.0質量%となるように混合して、実
施例1の電解液とした。
【0081】
[コイン型リチウム二次電池の製造]
上記の負極、対極、電解液、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、電解液、セ
パレータ、対極の順に積層し、コイン型の金属容器内に密封することで、コイン型リチウ
ムイオン二次電池を作製した。
【0082】
[充放電サイクル後放電容量と放電レート特性の評価]
0.05C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとす
る。以下同様。)の電流値で16時間充電したのち、0.1Cの電流値でリチウム対極に
対して1500mVまで放電した。その後、0.05Cの電流値で5mVまで充電し、0
.1Cの電流値で1500mVまで放電することを2回繰り返し、電池を安定化させた。
その後、充放電サイクル測定として、低レートでの充放電を1回、高レートでの充放電を
9回繰り返す、計10回の充放電サイクルを1セットとし、これを4セット、合計40サ
イクルの充放電を行った。低レートでの充放電は、電流値0.05Cで5mVまで充電し
たのち、電流値0.1Cで1500mVまで放電した。高レートでの充放電は、電流値0
.5Cで5mVまで充電したのち、電流値1Cで1500mVまで放電した。充放電サイ
クル後の放電容量として、40サイクル目の放電容量(mAh/g)を求めた。放電容量
は、電極中に含まれる活物質の重量で割ることで、単位重量当たりの容量とした。また、
充放電サイクル後のレート特性として、40サイクルの充放電後に低レートでの充放電を
1回行い、[(40サイクル目の放電容量)/(40サイクル後の低レートでの放電容量
)]×100からレート特性(%)を求めた。それぞれの結果を表1に示す。
【0083】
(実施例2)
黒鉛とSiOの合計量に対するSiOの含有量が10質量%となるように混合した負極
活物質を用いたことと、ホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)の濃度が1
.0重量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同様にしてコイン型リチウム二次電
池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例3)
実施例2のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、ビス(2,
2,2-トリフルオロエチル)メチルホスホナートを用いたこと以外は、実施例2と同様
にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
(実施例4)
実施例1のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、ビス(2,
2,2-トリフルオロエチル)ホスホノ酢酸メチルを用いたこと以外は、実施例1と同様
にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例5)
実施例2のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、ビス(2,
2,2-トリフルオロエチル)ホスホノ酢酸メチルを用いたこと以外は、実施例2と同様
にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例6)
実施例1のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、[ビス(2
,2,2-トリフルオロエトキシ)ホスフィニル]酢酸エチルを用いたこと以外は、実施
例1と同様にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
(実施例7)
実施例2のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、[ビス(2
,2,2-トリフルオロエトキシ)ホスフィニル]酢酸エチルを用いたこと以外は、実施
例2と同様にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
(比較例1)
実施例2のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)の濃度が0.1質量%
となるようにしたこと以外は、実施例2と同様にしてコイン型リチウム二次電池を作製し
評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
(比較例2)
実施例2のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)の濃度が20.0質量
%となるようにしたこと以外は、実施例2と同様にしてコイン型リチウム二次電池を作製
し評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
(比較例3)
黒鉛とSiOの合計量に対するSiOの含有量が25質量%となるように混合した負極
活物質を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評
価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
(比較例4)
比較例3のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)の濃度が50.0質量
%となるようにしたこと以外は、比較例3と同様にしてコイン型リチウム二次電池を作製
し評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
(比較例5)
比較例1のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、ビス(2,
2,2-トリフルオロエチル)メチルホスホナートを用いたこと以外は、比較例1と同様
にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
(比較例6)
比較例2のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、ビス(2,
2,2-トリフルオロエチル)メチルホスホナートを用いたこと以外は、比較例2と同様
にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
(比較例7)
比較例3のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、ビス(2,
2,2-トリフルオロエチル)メチルホスホナートを用いたこと以外は、比較例3と同様
にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
(比較例8)
比較例4のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、ビス(2,
2,2-トリフルオロエチル)メチルホスホナートを用いたこと以外は、比較例4と同様
にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
(比較例9)
比較例1のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、ビス(2,
2,2-トリフルオロエチル)ホスホノ酢酸メチルを用いたこと以外は、比較例1と同様
にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
(比較例10)
比較例2のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、ビス(2,
2,2-トリフルオロエチル)ホスホノ酢酸メチルを用いたこと以外は、比較例2と同様
にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
(比較例11)
比較例3のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、ビス(2,
2,2-トリフルオロエチル)ホスホノ酢酸メチルを用いたこと以外は、比較例3と同様
にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
(比較例12)
比較例4のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、ビス(2,
2,2-トリフルオロエチル)ホスホノ酢酸メチルを用いたこと以外は、比較例4と同様
にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
(比較例13)
比較例1のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、[ビス(2
,2,2-トリフルオロエトキシ)ホスフィニル]酢酸エチルを用いたこと以外は、比較
例1と同様にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
(比較例14)
比較例2のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、[ビス(2
,2,2-トリフルオロエトキシ)ホスフィニル]酢酸エチルを用いたこと以外は、比較
例2と同様にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
(比較例15)
比較例3のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、[ビス(2
,2,2-トリフルオロエトキシ)ホスフィニル]酢酸エチルを用いたこと以外は、比較
例3と同様にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
(比較例16)
比較例4のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、[ビス(2
,2,2-トリフルオロエトキシ)ホスフィニル]酢酸エチルを用いたこと以外は、比較
例4と同様にしてコイン型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
(比較例17)
実施例2のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、フェニルホ
スホン酸ジメチルを用いたこと以外は、実施例2と同様にしてコイン型リチウム二次電池
を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
(比較例18)
実施例2のホスホン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)代わりに、ホスホノ酢
酸トリエチルを用いたこと以外は、実施例2と同様にしてコイン型リチウム二次電池を作
製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
(比較例19)
負極活物質としてSiOの代わりにSiを用いたこと以外は、実施例7と同様にしてコイン
型リチウム二次電池を作製し評価を行った。結果を表2に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
上記の表1から明らかなように、実施例1~7で製造した電池は、比較例1~19に対
して充放電サイクル後の放電容量と放電レート特性のバランスが優れていることが分かる
。実施例1~2と比較例1~4、実施例3と比較例5~8、実施例4~5と比較例9~1
2、実施例6~7と比較例13~16から分かるように、化合物(1)とSiOxの含有量の
比が本発明に該当する範囲外であるとき、容量または/及びレート特性が低くなることが
分かる。また、実施例2,3,5,7と比較例17~18から、化合物(1)はP-OCH2CF
3の部分構造を有することが必要であることが分かる。さらに、実施例7と比較例19か
ら、負極活物質が金属酸化物であるSiOxのとき効果を発現することが分かる。
なお、以上の表1に示した各実施例・比較例におけるサイクル試験期間はモデル的に比
較的短期間として行なっているが、有意な差が確認されている。実際の非水電解液二次電
池の使用は数年に及ぶ場合もあるため、これら結果の差は長期間の使用を想定した場合、
更に顕著な差になるものと理解することができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の非水系電解液二次電池は、充放電サイクル後の放電容量と放電レート特性のバ
ランスに優れる。このため、本発明の非水系二次電池は、公知の各種の用途に用いること
が可能である。具体例としては、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイル
パソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリン
ター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポ
ータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯
テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、バイク、原動機付自
転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、家庭
用バックアップ電源、事業所用バックアップ電源、負荷平準化用電源、自然エネルギー貯
蔵電源、リチウムイオンキャパシタ等が挙げられる。