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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20230908BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20230908BHJP
   H01L 21/3213 20060101ALI20230908BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20230908BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20230908BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20230908BHJP
   C23F 1/26 20060101ALI20230908BHJP
【FI】
H01L21/308 F
H01L21/28 E
H01L21/88 C
H01L21/88 M
C23F1/26
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020007249
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021114569
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香川 興司
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-195311(JP,A)
【文献】特開2019-079859(JP,A)
【文献】国際公開第2019/008483(WO,A1)
【文献】特開2012-124192(JP,A)
【文献】特開2001-044166(JP,A)
【文献】特開2000-031111(JP,A)
【文献】特開2016-111342(JP,A)
【文献】国際公開第2019/150990(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
H01L 21/28
H01L 21/3213
H01L 21/3205
C23F 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤と触媒と水分調整剤とを含み、前記水分調整剤の割合が前記酸化剤および前記触媒の合計の割合よりも多い第1エッチング液を、モリブデン膜を含む積層膜を有する基板に供給する工程と、
前記基板に対して前記第1エッチング液を供給した後、前記水分調整剤の割合が前記第1エッチング液よりも多い第2エッチング液を前記基板に供給する工程と
を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記酸化剤は、硫酸、硝酸および過酸化水素水の少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記水分調整剤は、有機酸または有機溶媒である、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記有機酸は、酢酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、フタル酸、コハク酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、プロピオン酸およびオルト過ヨウ素酸の少なくとも1つから選択され、
前記有機溶媒は、グリコール類、炭酸プロピレンおよびIPA(イソプロピルアルコール)の少なくとも1つから選択される、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記触媒は、リン酸またはグリコール類である、請求項1~4のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第1エッチング液および前記第2エッチング液の温度は、常温以下である、請求項1~5のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項7】
酸化剤と触媒と水分調整剤とを含み、前記水分調整剤の割合が前記酸化剤および前記触媒の合計の割合よりも多い第1エッチング液を、モリブデン膜を含む積層膜を有する基板に供給する第1エッチング液供給部と、
前記水分調整剤の割合が前記第1エッチング液よりも多い第2エッチング液を前記基板に供給する第2エッチング液供給部と
を備える、基板処理装置。
【請求項8】
前記第1エッチング液供給部から供給される前記第1エッチング液を貯留し、貯留した前記第1エッチング液に複数の前記基板を浸漬させる第1処理槽と、
前記第2エッチング液供給部から供給される前記第2エッチング液を貯留し、貯留した前記第2エッチング液に複数の前記基板を浸漬させる第2処理槽と
を備える、請求項7に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体の製造工程の一つとして、半導体ウエハなどの基板に形成された膜をエッチングするエッチング工程が知られている。
【0003】
特許文献1には、モリブデン膜を含む積層膜をリン酸、硝酸塩、有機酸および水を含むエッチング液を用いてエッチングする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-300618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、モリブデン膜を含む積層膜をエッチングする技術において、積層方向におけるエッチング量のばらつきを低減することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による基板処理方法は、第1エッチング液を供給する工程と、第2エッチング液を供給する工程とを含む。第1エッチング液を供給する工程は、酸化剤と触媒と水分調整剤とを含み、水分調整剤の割合が酸化剤および触媒の合計の割合よりも多い第1エッチング液を、モリブデン膜を含む積層膜を有する基板に供給する。第2エッチング液を供給する工程は、基板に対して第1エッチング液を供給した後、水分調整剤の割合が第1エッチング液よりも多い第2エッチング液を基板に供給する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、モリブデン膜を含む積層膜をエッチングする技術において、積層方向におけるエッチング量のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る基板処理の説明図である。
図2図2は、実施形態に係る基板処理の説明図である。
図3図3は、実施形態に係る基板処理の説明図である。
図4図4は、エッチング液の水分割合を変化させた場合における、モリブデン膜の各位置におけるエッチング量の変化を示すグラフである。
図5図5は、実施形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る第1処理槽の構成を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る第2処理槽の構成を示す図である。
図8図8は、実施形態に係る基板処理装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
図9図9は、変形例に係る処理ユニットの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示による基板処理方法および基板処理装置を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0010】
また、以下参照する各図面では、説明を分かりやすくするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする直交座標系を示す場合がある。また、鉛直軸を回転中心とする回転方向をθ方向と呼ぶ場合がある。
【0011】
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、製造精度、設置精度などのずれを許容するものとする。
【0012】
<基板処理について>
まず、実施形態に係る基板処理の内容について図1図3を参照して説明する。図1図3は、実施形態に係る基板処理の説明図である。
【0013】
図1に示すように、実施形態に係る基板処理は、たとえば、ポリシリコン膜10上に、モリブデン膜11およびシリコン酸化膜12が形成された半導体ウエハ(以下、ウエハWと記載する)をエッチングする。シリコン酸化膜12同士は、ポリシリコン膜10上に互いに間隔をあけて多層に形成され、モリブデン膜11は、これらシリコン酸化膜12を覆うように形成される。
【0014】
このように、基板処理の対象となるウエハWは、モリブデン膜11とシリコン酸化膜12とが交互に積層された積層膜を有しており、エッチング処理前において、シリコン酸化膜12は、モリブデン膜11によって覆われた状態となっている。なお、ウエハWは、少なくともモリブデン膜11を含む積層膜であればよく、積層膜の構成は図1に示す例に特に限定されない。
【0015】
また、ウエハWには、エッチング液が浸入し、積層されたモリブデン膜11をエッチングするための溝15が複数形成されている。
【0016】
実施形態に係る基板処理は、モリブデン膜11をエッチングすることにより、図2に示すように、溝15に面するシリコン酸化膜12の端面を露出させる。その後、モリブデン膜11をさらにエッチングすることにより、図3に示すように、シリコン酸化膜12の端部の上下面を露出させる。
【0017】
溝15が高アスペクト比化するほど、また、積層膜における各層の厚みが薄くなる(微細化する)ほど、モリブデン膜11の積層方向(溝15の深さ方向)におけるエッチング量のばらつきは大きくなる。具体的には、溝15の開口部により近いトップと比べて溝15の底部により近いボトムの方がエッチングされ難くなる。
【0018】
これに対し、本願発明者は、エッチング液における水分の割合を少なくすることで、モリブデン膜11の積層方向におけるエッチング量のばらつきが抑えられることを見出した。図4は、エッチング液の水分割合を変化させた場合における、モリブデン膜11の各位置(トップ、ミドル、ボトム)におけるエッチング量の変化を示すグラフである。
【0019】
図4に示した実験結果の処理条件は、以下の通りである。
処理工程:エッチング液への浸漬(エッチング処理)、その後、DIW(脱イオン水)への浸漬(リンス処理)、その後、乾燥気体を用いた乾燥処理
エッチング液:リン酸(HPO)、硝酸(HNO)および酢酸(CHCOOH)の混合液
エッチング液の温度:常温(23℃)
ウエハWの浸漬時間:水分割合が2.0wt%以上3.5wt%未満の場合は240秒、3.5wt%以上6.0wt%未満の場合は120秒
【0020】
図4に示すグラフにおいて、円形で示されたプロットは、積層された複数のモリブデン膜11のうち溝15の開口部付近に位置するモリブデン膜11(トップ)の結果を示している。また、四角形で示されたプロットは、積層された複数のモリブデン膜11のうち溝15の底部付近に位置するモリブデン膜11(ボトム)の結果を示している。また、三角形で示されたプロットは、積層された複数のモリブデン膜11のうち、深さ方向中央部に位置するモリブデン膜11(ミドル)の結果を示している。
【0021】
図4に示すように、トップのエッチング量とボトムのエッチング量との差は、エッチング液の水分割合が少なくなるほど小さくなる結果となった。この結果から、エッチング液の水分割合を減らすことで、モリブデン膜11の積層方向におけるエッチング量のばらつきが抑えられることがわかる。
【0022】
この実験結果は、たとえば以下のように考察される。すなわち、モリブデン膜11のエッチングのメカニズムは、次のように進行する。まず、化学反応式(1)に示すように、エッチング液中の硝酸(HNO)が電離することによって水素イオン(H)および硝酸イオン(NO )が生じる。
【0023】
HNO→H+NO ・・・ (1)
【0024】
つづいて、化学反応式(2)に示すように、硝酸イオン(NO )がモリブデンと反応することによって酸化モリブデン(MoO)が生じる。
【0025】
Mo+3NO →MoO+3NO ・・・ (2)
【0026】
つづいて、化学反応式(3)に示すように、エッチング液中のリン酸(HPO)が触媒として機能することによって酸化モリブデン(MoO)をイオン化させる。これにより、モリブデン酸イオン(MoO 2-)が生じる。言い換えれば、モリブデン膜11が溶解する(エッチングされる)。
【0027】
MoO+HPO+HO→MoO 2-+HPO+2H ・・・ (3)
【0028】
また、化学反応式(4)に示すように、モリブデン酸イオン(MoO 2-)の一部は、水素イオン(H)と反応する。これによっても、モリブデン膜11は溶解する(エッチングされる)。
【0029】
MoO42-+H→HMoO4- ・・・ (4)
【0030】
このように、モリブデン膜11のエッチングは、酸化モリブデン(MoO)が水(HO)と反応することによって進行する。したがって、エッチング液中の水分割合が多くなるほどモリブデン膜11のエッチング速度は速くなり、反対に、水分割合が少なくなるほどモリブデン膜11のエッチング速度は遅くなる。
【0031】
モリブデン膜11のエッチングが進行すると、エッチング液中のモリブデン濃度が上昇する。このモリブデン濃度の上昇は、特に、溝15内において顕著である。
【0032】
溝15内のエッチング液は、溝15の外部に存在するエッチング液と置換される。しかしながら、エッチング液中の水分割合が多い場合すなわちモリブデン膜11のエッチング速度が速い場合、エッチング液の置換が間に合わず、溝15の内部、特に溝15の底部付近において、モリブデン濃度の高いエッチング液が残留してしまうおそれがある。
【0033】
これにより、溝15の深さ方向においてエッチング液中のモリブデンの濃度勾配が生じ、溝15の底部付近に位置するモリブデン膜11のエッチング量が、溝15の開口部付近に位置するモリブデン膜11のエッチング量と比べて少なくなる。この結果、モリブデン膜11のエッチング量の積層方向におけるばらつきが生じることとなる。
【0034】
一方、エッチング液の水分量を少なくすると、モリブデン膜11のエッチング速度は低下する。これにより、溝15内におけるモリブデン濃度の上昇が緩やかになるため、溝15内のエッチング液の置換が間に合うようになる。この結果、モリブデン膜11のエッチング量の積層方向におけるばらつきは、エッチング液の水分量が多い場合と比較して少なくなると考えられる。
【0035】
そこで、図4の結果を踏まえ、実施形態に係る基板処理では、水分割合が少ないエッチング液を用いてモリブデン膜11のエッチングを行うこととした。
【0036】
実施形態に係るエッチング液は、酸化剤と、触媒と、水分調整剤とを含む薬液である。
【0037】
酸化剤としては、上述した硝酸(HNO)の他、たとえば、硫酸(HSO)、過酸化水素水(H)などを用いることができる。また、酸化剤は、硫酸(HSO)、硝酸(HNO)および過酸化水素水(H)のうち2つまたは3つを含んでいてもよい。たとえば、酸化剤は、硫酸(HSO)および過酸化水素水(H)を含むSPMであってもよい。このように、酸化剤は、硫酸(HSO)、硝酸(HNO)および過酸化水素水(H)のうちの少なくとも1つから選択され得る。
【0038】
触媒は、上述したリン酸(HPO)の他、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびジエチレングリコール等のグリコール類を用いることができる。
【0039】
水分調整剤は、実質的に水分を含まない物質であることが好ましい。このような水分調整剤としては、たとえば、有機酸や有機溶媒を用いることができる。有機酸は、たとえば、酢酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、フタル酸、コハク酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、プロピオン酸およびオルト過ヨウ素酸の少なくとも1つから選択され得る。また、有機溶媒は、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびジエチレングリコール等のグリコール類、炭酸プロピレンおよびIPA(イソプロピルアルコール)の少なくとも1つから選択され得る。
【0040】
そして、実施形態に係るエッチング液は、重量比において、エッチング液全体に対する水分調整剤の割合が、酸化剤および触媒の合計の割合よりも多くなるように、酸化剤、触媒および水分調整剤が配合される。
【0041】
具体的には、図4に示す実験結果から明らかなように、エッチング液の水分割合が2.2wt%以下である場合に、モリブデン膜11の深さ方向におけるエッチング量のばらつきがほぼなくなることがわかる。この結果から、エッチング液の水分割合は、2.2wt%以下であることが好ましい。エッチング液全体に対する水分調整剤の割合を酸化剤および触媒の合計の割合よりも多くすることで、エッチング液の水分割合を2.2wt%以下とすることが可能である。
【0042】
[基板処理装置の構成]
次に、上述した基板処理を行う基板処理装置の構成について図5を参照して説明する。図5は、実施形態に係る基板処理装置の構成を示す図である。
【0043】
図5に示すように、実施形態に係る基板処理装置1は、キャリア搬入出部2と、ロット形成部3と、ロット載置部4と、ロット搬送部5と、ロット処理部6と、制御部7とを備える。
【0044】
キャリア搬入出部2は、キャリアステージ20と、キャリア搬送機構21と、キャリアストック22、23と、キャリア載置台24とを備える。
【0045】
キャリアステージ20は、外部から搬送された複数のキャリア9を載置する。キャリア9は、複数(たとえば、25枚)の半導体ウエハ(以下、ウエハWと記載する)を水平姿勢で上下に並べて収容する容器である。キャリア搬送機構21は、キャリアステージ20、キャリアストック22、23およびキャリア載置台24間でキャリア9の搬送を行う。
【0046】
キャリア載置台24に載置されたキャリア9からは、処理される前の複数のウエハWが後述する基板搬送機構30によりロット処理部6に搬出される。また、キャリア載置台24に載置されたキャリア9には、処理された複数のウエハWが基板搬送機構30によりロット処理部6から搬入される。
【0047】
ロット形成部3は、基板搬送機構30を有し、ロットを形成する。ロットは、1または複数のキャリア9に収容されたウエハWを組合せて同時に処理される複数(たとえば、50枚)のウエハWで構成される。1つのロットを形成する複数のウエハWは、互いの板面を対向させた状態で一定の間隔をあけて配列される。
【0048】
基板搬送機構30は、キャリア載置台24に載置されたキャリア9とロット載置部4との間で複数のウエハWを搬送する。
【0049】
ロット載置部4は、ロット搬送台40を有し、ロット搬送部5によってロット形成部3とロット処理部6との間で搬送されるロットを一時的に載置(待機)する。ロット搬送台40は、ロット形成部3で形成された処理される前のロットを載置する搬入側ロット載置台41と、ロット処理部6で処理されたロットを載置する搬出側ロット載置台42とを有する。搬入側ロット載置台41および搬出側ロット載置台42には、1ロット分の複数のウエハWが起立姿勢で前後に並んで載置される。
【0050】
ロット搬送部5は、ロット搬送機構50を有し、ロット載置部4とロット処理部6との間やロット処理部6の内部でロットの搬送を行う。ロット搬送機構50は、レール51と、移動体52と、基板保持体53とを有する。
【0051】
レール51は、ロット載置部4およびロット処理部6に渡って、X軸方向に沿って配置される。移動体52は、複数のウエハWを保持しながらレール51に沿って移動可能に構成される。基板保持体53は、移動体52に設けられ、起立姿勢で前後に並んだ複数のウエハWを保持する。
【0052】
ロット処理部6は、1ロット分の複数のウエハWに対し、エッチング処理や洗浄処理、乾燥処理などを行う。ロット処理部6には、第1エッチング処理装置60と、第2エッチング処理装置70と、基板保持体洗浄処理装置80と、乾燥処理装置90とが、レール51に沿って並んで設けられる。
【0053】
第1エッチング処理装置60および第2エッチング処理装置70は、1ロット分の複数のウエハWに対してエッチング処理を一括で行う。基板保持体洗浄処理装置80は、基板保持体53の洗浄処理を行う。乾燥処理装置90は、1ロット分の複数のウエハWに対して乾燥処理を一括で行う。第1エッチング処理装置60、第2エッチング処理装置70、基板保持体洗浄処理装置80および乾燥処理装置90の台数は、図5の例に限られない。
【0054】
第1エッチング処理装置60は、第1エッチング処理用の処理槽61(以下、「第1処理槽61」と記載する)と、リンス処理用の処理槽62と、基板昇降機構63,64とを備える。また、第2エッチング処理装置70は、第2エッチング処理用の処理槽71(以下、「第2処理槽71」と記載する)と、リンス処理用の処理槽72と、基板昇降機構73,74とを備える。第1エッチング処理装置60および第2エッチング処理装置70は、構成は同様であり、使用するエッチング液が異なる。この点については後述する。
【0055】
処理槽61,71は、1ロット分のウエハWを収容可能であり、エッチング液が貯留される。具体的には、処理槽61,71には、それぞれ水分量が異なるエッチング液が貯留される。処理槽61,71の詳細については後述する。
【0056】
処理槽62,72には、リンス処理用の処理液(脱イオン水等)が貯留される。基板昇降機構63,64,73,74は、ロットを形成する複数のウエハWを起立姿勢で前後に並べた状態で保持する。
【0057】
第1エッチング処理装置60および第2エッチング処理装置70は、ロット搬送部5で搬送されたロットを基板昇降機構63,73で保持し、処理槽61,71のエッチング液に浸漬させてエッチング処理を行う。また、第1エッチング処理装置60および第2エッチング処理装置70は、ロット搬送部5によって処理槽62,72に搬送されたロットを基板昇降機構64,74にて保持し、処理槽62,72のリンス液に浸漬させることによってリンス処理を行う。
【0058】
乾燥処理装置90は、処理槽91と、基板昇降機構92とを有する。処理槽91には、乾燥処理用の処理ガスが供給される。基板昇降機構92には、1ロット分の複数のウエハWが起立姿勢で前後に並んで保持される。
【0059】
乾燥処理装置90は、ロット搬送部5で搬送されたロットを基板昇降機構92で保持し、処理槽91内に供給される乾燥処理用の処理ガスを用いて乾燥処理を行う。処理槽91で乾燥処理されたロットは、ロット搬送部5でロット載置部4に搬送される。
【0060】
基板保持体洗浄処理装置80は、ロット搬送機構50の基板保持体53に洗浄用の処理液を供給し、さらに乾燥ガスを供給することで、基板保持体53の洗浄処理を行う。
【0061】
制御部7は、基板処理装置1の各部(キャリア搬入出部2、ロット形成部3、ロット載置部4、ロット搬送部5、ロット処理部6など)の動作を制御する。制御部7は、スイッチや各種センサなどからの信号に基づいて、基板処理装置1の各部の動作を制御する。
【0062】
制御部7は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含み、図示しない記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理装置1の動作を制御する。制御部7は、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体8を有する。記憶媒体8には、基板処理装置1において実行される各種の処理を制御する上記プログラムが格納される。プログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体8に記憶されていたものであって、他の記憶媒体から制御部7の記憶媒体8にインストールされたものであってもよい。
【0063】
コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体8としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0064】
[処理槽の構成]
次に、第1エッチング処理に用いられる第1処理槽61および第2エッチング処理に用いられる第2処理槽71の構成について図6および図7を参照し説明する。図6は、実施形態に係る第1処理槽61の構成を示す図である。また、図7は、実施形態に係る第2処理槽71の構成を示す図である。
【0065】
図6に示すように、第1処理槽61は、1ロット分のウエハWを第1エッチング液に浸漬させることにより、ウエハW上に形成されたモリブデン膜11をエッチングする第1エッチング処理を行う。
【0066】
第1処理槽61は、内槽100と、外槽110とを備える。また、第1処理槽61は、循環部120と、第1エッチング液供給部130と、個別供給部140とを備える。
【0067】
内槽100は、上方が開放されており、内部に第1エッチング液を貯留する。ロット(複数のウエハW)は、かかる内槽100に浸漬される。
【0068】
外槽110は、上方が開放されており、内槽100の上部周囲に配置される。外槽110には、内槽100からオーバーフローした第1エッチング液が流入する。
【0069】
循環部120は、内槽100と外槽110との間で第1エッチング液を循環させる。循環部120は、循環路121と、ノズル122と、ポンプ123と、フィルタ124と、温度調整部125とを備える。
【0070】
循環路121は、外槽110と内槽100とを接続する。循環路121の一端は、外槽110に接続され、循環路121の他端は、内槽100の内部に配置されたノズル122に接続される。
【0071】
ポンプ123、フィルタ124および温度調整部125は、循環路121に設けられる。ポンプ123は、外槽110内の第1エッチング液を循環路121に送り出す。フィルタ124は、循環路121を流れる第1エッチング液から不純物を除去する。温度調整部125は、たとえば電子冷熱恒温器であり、循環路121を流れる第1エッチング液の温度を常温以下の温度に調整する。ポンプ123および温度調整部125は、制御部7によって制御される。
【0072】
循環部120は、第1エッチング液を外槽110から循環路121経由で内槽100内へ送る。内槽100内に送られた第1エッチング液は、内槽100からオーバーフローすることで、再び外槽110へと流出する。このようにして、第1エッチング液は、内槽100と外槽110との間を循環する。
【0073】
循環部120には、循環路121を流れる第1エッチング液を加熱するヒータが設けられておらず、循環路121を流れる第1エッチング液は、温度調整部125によって、たとえば常温(たとえば、20℃±10℃)に維持される。なお、温度調整部125は、循環路121を流れる第1エッチング液の温度を常温以下の温度に調整する温度調整部が設けられていてもよい。このように、第1処理槽61では、常温以下の第1エッチング液を用いて第1エッチング処理が行われる。
【0074】
モリブデンは卑金属に該当し、イオン化傾向が高く比較的酸化されやすい。このため、加熱された第1エッチング液を用いた場合、モリブデン膜11のエッチング速度が速くなり過ぎて、モリブデン膜11の積層方向におけるエッチング量のばらつきが大きくなるおそれがある。そこで、第1処理槽61では、常温以下の第1エッチング液を用いることとしている。後述する第2処理槽71も同様であり、常温以下の第2エッチング液が用いられる。
【0075】
第1エッチング液供給部130は、第1処理槽61に対して第1エッチング液の新液を供給する。第1エッチング液供給部130は、第1エッチング液供給源131と、第1供給路132と、第1バルブ133と、第1切替部134とを備える。
【0076】
第1エッチング液供給源131は、酸化剤、触媒および水分調整剤が予め混合された第1エッチング液を供給する。第1供給路132は、第1エッチング液供給源131に接続され、第1エッチング液供給源131から供給される第1エッチング液を内槽100または外槽110に供給する。第1バルブ133は、第1供給路132に設けられ、第1供給路132を開閉する。第1切替部134は、第1供給路132に設けられ、第1供給路132を流れる第1エッチング液の流出先を内槽100と外槽110との間で切り替える。
【0077】
第1バルブ133および第1切替部134は、制御部7に電気的に接続されており、制御部7によって制御される。たとえば、制御部7は、空の状態の第1処理槽61に第1エッチング液を貯める場合には、第1バルブ133および第1切替部134を制御して、第1エッチング液供給源131から内槽100に第1エッチング液の新液を供給する。また、制御部7は、第1処理槽61に対して第1エッチング液の補充を行う場合には、第1バルブ133および第1切替部134を制御して、第1エッチング液供給源131から外槽110に第1エッチング液の新液を供給する。
【0078】
個別供給部140は、第1処理槽61に対し、酸化剤、触媒および水分調整剤を個別に供給することができる。個別供給部140は、酸化剤供給源141aと、触媒供給源141bと、水分調整剤供給源141cとを備える。また、個別供給部140は、第2供給路142a~第4供給路142cと、第2バルブ143a~第4バルブ143cと、第2切替部144a~第4切替部144cと、第2流量調整部145a~第4流量調整部145cを備える。
【0079】
酸化剤供給源141aは、酸化剤を供給する。酸化剤供給源141aから供給される酸化剤は、たとえば、硝酸(HNO)、硫酸(HSO)、過酸化水素水(H)などである。第2供給路142aは、酸化剤供給源141aに接続され、酸化剤供給源141aから供給される酸化剤を内槽100または外槽110に供給する。第2バルブ143aは、第2供給路142aに設けられ、第2供給路142aを開閉する。第2切替部144aは、第2供給路142aに設けられ、第2供給路142aを流れる酸化剤の流出先を内槽100と外槽110との間で切り替える。第2流量調整部145aは、第2供給路142aに設けられる。第2流量調整部145aは、流量調整弁、流量計などを含んで構成され、内槽100または外槽110に供給される酸化剤の流量を調整する。
【0080】
触媒供給源141bは、触媒を供給する。触媒供給源141bから供給される触媒は、たとえば、リン酸(HPO)またはグリコール類である。第3供給路142bは、触媒供給源141bに接続され、触媒供給源141bから供給される触媒を内槽100または外槽110に供給する。第3バルブ143bは、第3供給路142bに設けられ、第3供給路142bを開閉する。第3切替部144bは、第3供給路142bに設けられ、第3供給路142bを流れる触媒の流出先を内槽100と外槽110との間で切り替える。第3流量調整部145bは、第3供給路142bに設けられる。第3流量調整部145bは、流量調整弁、流量計などを含んで構成され、内槽100または外槽110に供給される触媒の流量を調整する。
【0081】
水分調整剤供給源141cは、水分調整剤を供給する。水分調整剤供給源141cから供給される水分調整剤は、たとえば、酢酸(CHCOOH)または有機酸である。第4供給路142cは、水分調整剤供給源141cに接続され、水分調整剤供給源141cから供給される水分調整剤を内槽100または外槽110に供給する。第4バルブ143cは、第4供給路142cに設けられ、第4供給路142cを開閉する。第4切替部144cは、第4供給路142cに設けられ、第4供給路142cを流れる水分調整剤の流出先を内槽100と外槽110との間で切り替える。第4流量調整部145cは、第4供給路142cに設けられる。第4流量調整部145cは、流量調整弁、流量計などを含んで構成され、内槽100または外槽110に供給される水分調整剤の流量を調整する。
【0082】
第2バルブ143a~第4バルブ143c、第2切替部144a~第4切替部144cおよび第2流量調整部145a~第4流量調整部145cは、制御部7に電気的に接続されており、制御部7によって開閉制御される。
【0083】
たとえば、空の状態の第1処理槽61に第1エッチング液の新液を貯める場合、制御部7は、第2バルブ143a~第4バルブ143c、第2切替部144a~第4切替部144cを制御して、酸化剤、触媒および水分調整剤を内槽100に供給する。このとき、制御部7は、予め設定された水分割合となるように、第2流量調整部145a~第4流量調整部145cを制御して、酸化剤、触媒および水分調整剤の流量を調整する。これにより、第1処理槽61内において酸化剤、触媒および水分調整剤が予め設定された配合比で混合されて第1処理槽61に第1エッチング液が貯留される。
【0084】
また、第1処理槽61に対して第1エッチング液の補充を行う場合、制御部7は、第2バルブ143a~第4バルブ143c、第2切替部144a~第4切替部144cを制御して、酸化剤、触媒および水分調整剤を外槽110に供給する。
【0085】
第1処理槽61内の第1エッチング液の水分量は、変動する可能性がある。たとえば、第1処理槽61内の第1エッチング液の水分量は、揮発等によって少なくなる可能性がある。
【0086】
そこで、制御部7は、第1エッチング液よりも水分量が多いエッチング液が生成される配分となるように、第3流量調整部145bおよび第4流量調整部145cを制御して、触媒および水分調整量の流量を調整してもよい。具体的には、制御部7は、第3流量調整部145bおよび第4流量調整部145cを制御して、触媒に対する水分調整剤の比率を、第1エッチング液を生成する際の触媒に対する水分調整剤の比率よりも低くする。つまり、触媒の割合を増やして水分調整剤の割合を減らすことで、補充されるエッチング液の水分量を、第1エッチング液の水分量よりも多くする。これにより、第1処理槽61内の第1エッチング液の水分量の変動を抑制することができる。
【0087】
次に、第2処理槽71の構成について説明する。第2処理槽71は、1ロット分のウエハWを第2エッチング液に浸漬させることにより、ウエハW上に形成されたモリブデン膜11をエッチングする第2エッチング処理を行う。
【0088】
第2エッチング液は、第1エッチング液と同様に酸化剤と触媒と水分調整剤とを含み、かつ、上述した第1エッチング液よりも水分量が少なくなるように、酸化剤、触媒および水分調整剤が配合されたエッチング液である。すなわち、第2エッチング処理は、第1エッチング処理よりもモリブデン膜11のエッチング速度が遅くなるように設定されている。具体的には、第2エッチング液は、第1エッチング液と比較して、触媒の割合が多く、水分調整剤の割合が少ない。
【0089】
図7に示すように、第2処理槽71は、第1処理槽61と同様の内槽100、外槽110、循環部120を備える。
【0090】
また、第2処理槽71は、第2エッチング液供給部150を備える。第2処理槽71に対して第2エッチング液の新液を供給する。第2エッチング液供給部150は、第2エッチング液供給源151と、第5供給路152と、第5バルブ153と、第5切替部154とを備える。
【0091】
第2エッチング液供給源151は、酸化剤、触媒および水分調整剤が予め混合された第2エッチング液を供給する。第5供給路152は、第2エッチング液供給源151に接続され、第2エッチング液供給源151から供給される第2エッチング液を内槽100または外槽110に供給する。第5バルブ153は、第5供給路152に設けられ、第5供給路152を開閉する。第5切替部154は、第5供給路152に設けられ、第5供給路152を流れる第2エッチング液の流出先を内槽100と外槽110との間で切り替える。
【0092】
第5バルブ153および第5切替部154は、制御部7に電気的に接続されており、制御部7によって制御される。
【0093】
個別供給部160は、第2処理槽71に対し、酸化剤、触媒および水分調整剤を個別に供給する。個別供給部160は、個別供給部140と同様の構成を有する。具体的には、個別供給部160は、酸化剤供給源161aと、触媒供給源161bと、水分調整剤供給源161cとを備える。また、個別供給部160は、第6供給路162a~第8供給路162cと、第6バルブ163a~第8バルブ163cと、第6切替部164a~第8切替部164cと、第6流量調整部165a~第8流量調整部165cを備える。
【0094】
第6バルブ163a~第8バルブ163c、第6切替部164a~第8切替部164cおよび第6流量調整部165a~第8流量調整部165cは、制御部7に電気的に接続されており、制御部7によって開閉制御される。
【0095】
[基板処理装置の具体的動作]
次に、実施形態に係る基板処理装置1の具体的動作について図8を参照して説明する。図8は、実施形態に係る基板処理装置1が実行する処理の手順を示すフローチャートである。図8に示す処理手順は、制御部7による制御に従って実行される。
【0096】
図8に示すように、基板処理装置1では、ロットを形成する複数のウエハWに対し、第1エッチング液を用いた第1エッチング処理が行われる(ステップS101)。第1エッチング処理では、複数のウエハWを基板昇降機構63を用いて降下させることにより、第1処理槽61の内槽100に貯留された第1エッチング液に複数のウエハWが浸漬される。
【0097】
第1エッチング処理は、ウエハW上に形成された積層膜が、図1に示す初期状態から図2に示す端面露出状態となるまで行われる。すなわち、第1エッチング処理は、溝15に面するシリコン酸化膜12の端面がモリブデン膜11から露出するまでモリブデン膜11をエッチングする。
【0098】
本願発明者は、シリコン酸化膜12間に位置するモリブデン膜11をエッチングする後述する第2エッチング処理と比較して、第1エッチング処理では、モリブデン膜11の積層方向におけるエッチング量のばらつきが生じ難いことを実験により確認している。そこで、基板処理装置1では、第2エッチング液と比べて水分量が多い、言い換えれば触媒の量が少ない第1エッチング液を用いて第1エッチング処理を行うこととした。これにより、基板処理の処理時間を短縮することができる。
【0099】
つづいて、基板処理装置1では、ロットを形成する複数のウエハWに対し、第2エッチング液を用いた第2エッチング処理が行われる(ステップS102)。第2エッチング処理では、第1エッチング処理を終えた複数のウエハWが、第1処理槽61から第2処理槽71へ搬送される。その後、複数のウエハWは、基板昇降機構73によって降下され、第2処理槽71の内槽100に貯留された第2エッチング液に浸漬される。
【0100】
第2エッチング処理では、ウエハW上に形成された積層膜が、図2に示す端面露出状態から図3に示す積層面露出状態となるまで行われる。すなわち、第2エッチング処理は、シリコン酸化膜12間に位置するモリブデン膜11をエッチングすることによって、シリコン酸化膜12の積層面(上下面)を露出させる。
【0101】
基板処理装置1では、第1エッチング液と比べて触媒の量が多い、言い換えれば水分量が少ない第2エッチング液を用いて第2エッチング液を行うこととした。これにより、モリブデン膜11の積層方向におけるエッチング量のばらつきを抑制することができる。
【0102】
つづいて、基板処理装置1では、リンス処理が行われる(ステップS103)。リンス処理では、第2エッチング処理を終えた複数のウエハWがリンス処理用の処理槽72に搬送されて、処理槽72に貯留されたリンス液(脱イオン水等)に浸漬される。これにより、複数のウエハWから第2エッチング液が洗い流される。
【0103】
つづいて、基板処理装置1では、乾燥処理が行われる(ステップS104)。乾燥処理では、リンス処理を終えた複数のウエハWが乾燥処理用の処理槽91に搬送され、複数のウエハWの表面に付着したリンス液が処理ガスにより除去される。これにより、複数のウエハWが乾燥する。
【0104】
その後、乾燥処理を終えた複数のウエハWは、キャリアステージ20に載置されたキャリア9に収容される。これにより、1ロット分の基板処理が終了する。
【0105】
なお、基板処理装置1は、第1エッチング処理および第2エッチング処理を1つの処理槽(たとえば、第1処理槽61および第2処理槽71の一方)のみを用いて行うことも可能である。この場合、第1エッチング処理を終えた後、個別供給部140(個別供給部160)を用いて、触媒および水分調整剤の比率を変更することで、処理槽61(処理槽71)に貯留されるエッチング液を第1エッチング液から第2エッチング液に変更すればよい。この場合、第2エッチング液を予め用意しておく必要がなくなる。
【0106】
[変形例]
実施形態に係る基板処理は、ウエハWを1枚ずつ処理する枚葉式の処理ユニットにも適用可能である。図9は、変形例に係る処理ユニットの構成例を示す図である。
【0107】
図9に示すように、変形例に係る処理ユニット200は、チャンバ220と、基板保持機構230と、ノズル240と、回収カップ250とを備える。
【0108】
チャンバ220は、基板保持機構230とノズル240と回収カップ250とを収容する。チャンバ220の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU221は、チャンバ220内にダウンフローを形成する。
【0109】
基板保持機構230は、保持部231と、支柱部232と、駆動部233とを備える。保持部231は、ウエハWを水平に保持する。支柱部232は、鉛直方向に延在する部材であり、基端部が駆動部233によって回転可能に支持され、先端部において保持部231を水平に支持する。駆動部233は、支柱部232を鉛直軸まわりに回転させる。かかる基板保持機構230は、駆動部233を用いて支柱部232を回転させることによって支柱部232に支持された保持部231を回転させ、これにより、保持部231に保持されたウエハWを回転させる。
【0110】
ノズル240は、保持部231に保持されたウエハWの上方に配置され、かかるウエハWに対して各種の処理液を供給する。
【0111】
回収カップ250は、保持部231を取り囲むように配置され、保持部231の回転によってウエハWから飛散する処理液を捕集する。回収カップ250の底部には、排液口251が形成されており、回収カップ250によって捕集された処理液は、かかる排液口251から処理ユニット200の外部へ排出される。また、回収カップ250の底部には、FFU221から供給される気体を処理ユニット200の外部へ排出する排気口252が形成される。
【0112】
処理ユニット200は、さらに、第1エッチング液供給部260と、第2エッチング液供給部270と、リンス液供給部280とを備える。
【0113】
第1エッチング液供給部260は、第1エッチング液供給源261と、第9バルブ262とを備え、第1エッチング液供給源261から供給される第1エッチング液をノズル240に供給する。第2エッチング液供給部270は、第2エッチング液供給源271と、第10バルブ272とを備え、第2エッチング液供給源271から供給される第2エッチング液をノズル240に供給する。リンス液供給部280は、リンス液供給源281と、第11バルブ282とを備え、リンス液供給源281から供給されるリンス液(脱イオン水等)をノズル240に供給する。
【0114】
かかる処理ユニット200では、まず、第1エッチング処理が行われる。第1エッチング処理では、第9バルブ262が所定時間開かれることにより、基板保持機構230に保持されて回転するウエハWに対して第1エッチング液が供給される。
【0115】
つづいて、処理ユニット200では、第2エッチング処理が行われる。第2エッチング処理では、第10バルブ272が所定時間開かれることにより、基板保持機構230に保持されて回転するウエハWに対して第2エッチング液が供給される。なお、上述したように、第1エッチング液および第2エッチング液の温度は、常温以下である。
【0116】
つづいて、処理ユニット200では、リンス処理が行われる。リンス処理では、第11バルブ282が所定時間開かれることにより、基板保持機構230に保持されて回転するウエハWに対してリンス液が供給される。その後、処理ユニット200では、乾燥処理が行われる。乾燥処理では、ウエハWの回転速度を増加させてウエハWからリンス液を振り切ることによってウエハWを乾燥させる。乾燥処理を終えると、1枚のウエハWに対する基板処理が終了する。
【0117】
上述してきたように、実施形態に係る基板処理方法は、第1エッチング液を供給する工程と、第2エッチング液を供給する工程とを含む。第1エッチング液を供給する工程は、酸化剤と触媒と水分調整剤とを含み、水分調整剤の割合が酸化剤および触媒の合計の割合よりも多い第1エッチング液を、モリブデン膜(一例として、モリブデン膜11)を含む積層膜を有する基板(一例として、ウエハW)に供給する(一例として、第1エッチング処理)。第2エッチング液を供給する工程は、基板に対して第1エッチング液を供給した後、水分調整剤の割合が第1エッチング液よりも多い第2エッチング液を基板に供給する(一例として、第2エッチング処理)。したがって、実施形態に係る基板処理方法によれば、モリブデン膜を含む積層膜をエッチングする技術において、積層方向におけるエッチング量のばらつきを低減することができる。また、基板処理の処理時間を短縮しつつ、積層方向におけるエッチング量のばらつきを低減することができる。
【0118】
第1エッチング液および第2エッチング液の温度は、常温以下であってもよい。これにより、モリブデン膜のエッチング速度が速くなり過ぎて、モリブデン膜の積層方向におけるエッチング量のばらつきが大きくなることを抑制することができる。
【0119】
また、実施形態に係る基板処理装置(一例として、第1エッチング処理装置60、第2エッチング処理装置70および処理ユニット200)は、第1エッチング液供給部(一例として、第1エッチング液供給部130,260、個別供給部140)と、第2エッチング液供給部(一例として、第2エッチング液供給部150,270、個別供給部160)を備える。第1エッチング液供給部は、酸化剤と触媒と水分調整剤とを含み、水分調整剤の割合が酸化剤および触媒の合計の割合よりも多い第1エッチング液を、モリブデン膜を含む積層膜を有する基板に供給する。第2エッチング液供給部は、水分調整剤の割合が第1エッチング液よりも多い第2エッチング液を基板に供給する。したがって、実施形態に係る基板処理装置によれば、モリブデン膜を含む積層膜をエッチングする技術において、積層方向におけるエッチング量のばらつきを低減することができる。また、基板処理の処理時間を短縮しつつ、積層方向におけるエッチング量のばらつきを低減することができる。
【0120】
基板処理装置は、第1処理槽(一例として、第1処理槽61)と、第2処理槽(一例として、第2処理槽71)とを備えていてもよい。第1処理槽は、第1エッチング液供給部から供給される第1エッチング液を貯留し、貯留した第1エッチング液に複数の基板を浸漬させる。第2処理槽は、第2エッチング液供給部から供給される第2エッチング液を貯留し、貯留した第2エッチング液に複数の基板を浸漬させる。これにより、たとえば、液交換を行うことなく、複数の基板に対して第1エッチング処理および第2エッチング処理を行うことができる。
【0121】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0122】
1 :基板処理装置
7 :制御部
8 :記憶媒体
10 :ポリシリコン膜
11 :モリブデン膜
12 :シリコン酸化膜
15 :溝
60 :第1エッチング処理装置
61 :第1処理槽
70 :第2エッチング処理装置
71 :第2処理槽
100 :内槽
110 :外槽
120 :循環部
130 :第1エッチング液供給部
140 :個別供給部
150 :第2エッチング液供給部
160 :個別供給部
W :ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9