(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-07
(45)【発行日】2023-09-15
(54)【発明の名称】トリアゾリジンジオン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 249/12 20060101AFI20230908BHJP
【FI】
C07D249/12 508
(21)【出願番号】P 2020525596
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2019023165
(87)【国際公開番号】W WO2019240142
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2018112194
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100136939
【氏名又は名称】岸武 弘樹
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】松重 操
(72)【発明者】
【氏名】福沢 世傑
(72)【発明者】
【氏名】滝脇 正貴
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-054459(JP,A)
【文献】特開昭57-050974(JP,A)
【文献】OGAWA,S. et al.,Rapid Commun. Mass Spectrom.,2013年,Vol.27,pp.2453-2460
【文献】MALLAKPOUR,S. et al.,Journal of Applied Polymer Science,2007年,Vol.103,pp.947-954
【文献】MALLAKPOUR,S. et al.,Polymer Bulletin,2006年,Vol.56,pp.293-303
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 249/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるトリアゾリジンジオン化合物を含む
水溶液を調製し、
等電点沈殿法により前記トリアゾリジンジオン化合物を析出させる析出工程を含み、
前記
水溶液のpHは、3.0~8.5であり、
前記
水溶液は、
前記トリアゾリジンジオン化合物1質量部に対して
水を3~15容量部含
み、
下記式(2)で示されるセミカルバジド化合物と、塩基とを反応させて、前記式(1)で示されるトリアゾリジンジオン化合物を得る環化工程を含む、トリアゾリジンジオン化合物の製造方法。
【化1】
(式中、R
1は、
2-ジメチルアミノエチル基、3-ジメチルアミノプロピル基、4-ジメチルアミノフェニル基、または、4-ジメチルアミノメチルフェニル基である。)
【化2】
(式中、R
1は、前記式(1)と同様であり、R
2は、酸素原子または窒素原子を含んでもよい炭素数1~20の、アルキル基、アラルキル基、または置換フェニル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアゾリジンジオン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、代謝産物を網羅的に解析する、メタボローム解析が注目を集めている。メタボローム解析とは、質量分析や核磁気共鳴法等により試料を分析し、得られたデータを解析する手法であり、医薬品や食品の分野における開発等に役立てられている。しかしながら、質量分析法については、ターゲット化合物の検出感度が低い場合があり、その対応として、ターゲット化合物を誘導体化して高感度化させる方法が実施されている。
【0003】
質量分析法による検出感度が低いターゲット化合物としては、例えば、25hydroxyvitamin D3が挙げられる。25hydroxyvitamin D3は、生命活動に必須であるビタミンDの代謝産物の一つであり、ビタミンDが欠乏すると、くる病、骨粗鬆症等を発症する。したがって、ビタミンD、およびその代謝産物を追跡することは、病気の発見、予防に非常に有用と考えられている。
【0004】
しかしながら、ビタミンD等のステロイド化合物を生体内で正確に追跡する技術は、未だ確立されておらず、現在においては、試薬を用いて誘導体化して高感度化し、分析を実施している。具体的には、誘導体化試薬としてクックソン型試薬を用いて、ビタミンDを誘導体化し、質量分析によって検出を行っている(非特許文献1参照)。
【0005】
ここで、クックソン試薬中でも、下記の構造式(9)で示される4-(ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオン(以下、DAPTADと略す)は、反応性が高く、共役ジエンと速やかにDiels-Alder反応を進行するため、血液中のビタミンDの誘導体化等に有益に利用できる化合物である。
【0006】
そして、非特許文献2には、DAPTADの製造方法として、下記の合成ルートが開示されている。すなわち、カルボン酸(3)を、ジフェニルリン酸アジドを用いて、アシルアジド(4)に変換した後、クルチウス転位に付すことでイソシアネート(5)を得て、得られたイソシアネート(5)に対してヒドラジン誘導体(6)を反応させることで、セミカルバジド(7)を得て、得られたセミカルバジド(7)を塩基性条件下で環化することで、トリアゾリジンジオン化合物(8)を生成させる。そして、トリアゾリジンジオン化合物(8)を酸化反応に付すことで、DAPTAD(9)が得られる。
【0007】
【0008】
DAPTADを代表とする1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオンの構造を有する化合物は、ジエン化合物と非常に高い反応性を示す反面、非常に不安定な化合物である。すなわち、化合物自体の反応性が極めて高く、多くの有機溶媒中で容易に分解反応が進行する。このため、遮光下、-20℃以下の低温にて保存する必要あり、取り扱いが困難な状況にある。例えば、非特許文献1においても、DAPTAD前駆体であるトリアゾリジンジオン化合物を酸化剤にて酸化してDAPTADを生成させた後は、そのままビタミンD3と反応させてメタボローム解析に利用している。
【0009】
したがって、DAPTADを代表とする1,2,4-トリアゾリン-3,5-ジオンの構造を有する化合物は、トリアゾリンジオン化合物として取り扱うのではなく、その前駆体であるトリアゾリジンジオン化合物として取り扱い、利用する際にトリアゾリンジオン化合物の酸化反応を実施する態様が有望視されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】S.Mallakpour,et al., Journal of Applied Polymer Science, 103(2)(2007) 947-954
【文献】S.Ogawa,et al., Rapid Commun.Mass Spectrom, 27(2013) 2453-2460
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
トリアゾリンジオン化合物の前駆体であるトリアゾリジンジオン化合物の製造方法としては、セミカルバジドを、金属ナトリウムを加えたエタノール中で、塩基性条件下で環化させた後、酢酸で中性(pH6)に付すことにより結晶として取り出し、その後、再結晶を行って単離する方法が示されている(非特許文献1参照)。しかしながら、該方法は、金属ナトリウムを用いることから、工業的な製法であるとはいい難い。また、非特許文献1には、粗結晶の純度、再結晶後の収率、単離した結晶の純度についても、記載が存在していない。
【0012】
また、非特許文献2には、セミカルバジドの塩基性水溶液を加熱することで環化反応を行い、酢酸で中和、水を減圧下で蒸発させた後に、Wakogel(登録商標)100C18を使用してカラムクロマトグラフィーによる精製を実施し、トリアゾリジンジオン化合物を得ることが記載されている。しかしながら本方法は、カラムによる精製が必須となっていることから、工業的に利用するには困難な状況である。
【0013】
上記の通り、DAPTAD等のクックソン型試薬は、血液中のビタミンDの検出等のメタボローム解析に利用されるものであり、微量成分であるビタミンD3等の質量分析において高精度な測定を実現するためには、誘導体化試薬であるクックソン型試薬、さらには、その前駆体であるトリアゾリジンジオン化合物についても、高純度であることが必要である。
【0014】
本発明は、上記の必要性に鑑みてなされたものであり、トリアゾリジンジオン化合物を、高純度、高収率に、工業的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。そして、上記の合成ルートでセミカルバジド化合物を合成した場合には、アジド化反応時の副生物やアジド化剤由来の不純物がセミカルバジド化合物中に含有されており、これらの化合物は酸性から弱アルカリ条件下で水溶性であるという知見を得た。また、セミカルバジド化合物は、塩基の存在下で環化反応によりトリアゾリジンジオン化合物を生成するが、水溶液のpHによってトリアゾリジンジオン化合物の溶解度は大きく異なるという知見を得た。
【0016】
これらの知見に基づき、トリアゾリジンジオン化合物を製造した後のトリアゾリジンジオン化合物を含む水溶液のpHについて検討を進めた結果、酸性から弱アルカリ条件に調整すれば、等電点沈殿法により高純度なトリアゾリジンジオン化合物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、下記式(1)で示されるトリアゾリジンジオン化合物を含む溶液を調製し、前記トリアゾリジンジオン化合物を析出させる析出工程を含み、前記溶液のpHは、3.0~8.5であり、前記溶液は、トリアゾリジンジオン化合物1質量部に対して溶媒を3~15容量部含む、トリアゾリジンジオン化合物の製造方法である。
【0018】
【化2】
(式中、R
1は、置換もしくは非置換のアミノ基を有する有機基である。)
【0019】
前記式(1)におけるR1は、炭素数1~6の置換もしくは非置換のアミノアルキル基、または、置換もしくは非置換のアミノフェニル基もしくはアミノアルキルフェニル基であってもよい。
【0020】
下記式(2)で示されるセミカルバジド化合物と、塩基とを反応させて、前記式(1)で示されるトリアゾリジンジオン化合物を得る環化工程を含んでいてもよい。
【0021】
【化3】
(式中、R
1は、前記式(1)と同様であり、R
2は、酸素原子を含んでもよい炭素数1~20の、アルキル基、アラルキル基、または置換フェニル基である。)
【発明の効果】
【0022】
本発明のトリアゾリジンジオン化合物の製造方法によれば、高純度、高収率に、工業的にトリアゾリジンジオン化合物の結晶を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<トリアゾリジンジオン化合物の製造方法>
本発明のトリアゾリジンジオン化合物の製造方法は、下記式(1)で示されるトリアゾリジンジオン化合物を含む溶液を調製し、トリアゾリジンジオン化合物を析出させる析出工程を含む。このとき、調製する溶液のpHは3.0~8.5とし、溶液は、トリアゾリジンジオン化合物1質量部に対して溶媒が3~15容量部含まれるようにする。
【0024】
【化4】
(式中、R
1は、置換もしくは非置換のアミノ基を有する有機基である。)
【0025】
さらに、本発明のトリアゾリジンジオン化合物の製造方法は、下記式(2)で示されるセミカルバジド化合物と、塩基とを反応させて、上記式(1)で示されるトリアゾリジンジオン化合物を得る環化工程を含んでいてもよい。環化工程を含む場合には、環化工程の後に、上記した析出工程を実施する。
【0026】
【化5】
(式中、R
1は、前記式(1)と同様であり、R
2は、酸素原子または窒素原子を含んでもよい炭素数1~20の、アルキル基、アラルキル基、または置換フェニル基である。)
【0027】
トリアゾリジンジオン化合物は、上記のpHの範囲で水等への溶解性が低い。このため、例えば、水溶液のpHを上記の範囲に調整することで、トリアゾリジンジオン化合物は析出する。一方で、不純物として含まれている可能性のあるセミカルバジド化合物は、上記pHの範囲では水等への溶解性が高い。したがって、本発明のトリアゾリジンジオン化合物の製造方法において、析出工程で調整する溶液のpHを3.0~8.5の範囲とすることにより、高純度のトリアゾリジンジオン化合物を得ることができる。
【0028】
トリアゾリジンジオン化合物は、保管することを考慮すると、化学純度が高い方が好ましい。好ましくは化学純度が、90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは99.5%以上である。化学純度が100%であることが最も好ましいが、本発明のトリアゾリジンジオン化合物の製造方法によって得られるトリアゾリジンジオン化合物は、原料である上記式(2)に示されるセミカルバジド化合物や、その加水分解物が含まれていてもよい。
【0029】
[トリアゾリジンジオン化合物]
本発明の製造方法にて用いられるトリアゾリジンジオン化合物は、上記式(1)で示される構造を有する。
【0030】
ここで、上記式(1)におけるR1は、炭素数1~6の置換もしくは非置換のアミノアルキル基、または、置換もしくは非置換のアミノフェニル基もしくはアミノアルキルフェニル基であることが好ましい。
【0031】
これらの中でも、3-ジメチルアミノプロピル基、4-ジメチルアミノフェニル基、または4-ジメチルアミノメチルフェニル基からなる群より選ばれる基をR1とする化合物を好ましく使用でき、原料の入手のしやすさや安定性の観点から、4-ジメチルアミノフェニル基または4-ジメチルアミノメチルフェニル基である化合物を、最も好ましく使用することができる。
【0032】
[環化工程]
本発明のトリアゾリジンジオン化合物の製造方法が、環化工程を含む場合には、上記式(2)で示されるセミカルバジド化合物と、塩基とを反応させて、上記式(1)で示されるトリアゾリジンジオン化合物を得る。具体的には、上記式(2)で示されるセミカルバジド化合物と、塩基とを、溶媒中で接触させる。
【0033】
(セミカルバジド化合物)
上記式(2)におけるR2は、上記した通り、酸素原子または窒素原子を含んでもよい炭素数1~20の、アルキル基、アラルキル基、または置換フェニル基であるが、中でも、入手容易性、価格等の観点から、炭素数1~4のアルキル基であることが好ましい。
【0034】
(塩基)
環化工程で使用できる塩基としては、特に制限されるものではない。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基、アンモニア、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ピリジン、ピペラジン等の有機塩基を用いることができる。製造コストの観点から、水酸化ナトリウムや炭酸カリウム等の無機塩基を用いることが好ましく、炭酸カリウムを用いることが最も好ましい。
【0035】
環化工程で使用する塩基の量も、特に制限されるものではないが、反応速度と生成物であるトリアゾリジンジオン化合物の安定性とを考慮すると、溶媒のpHが9~14の範囲となる量とすることが好ましく、10~14の範囲となる量とすることがさらに好ましく、13~14の範囲となる量とすることが最も好ましい。
【0036】
(溶媒)
使用する溶媒としては、生成物であるトリアゾリジンジオン化合物および塩基を溶解させるものであれば特に制限されるものではなく、原料であるセミカルバジド化合物は、必ずしも溶解しなくともよい。例えば、水、メタノール、エタノール等のプロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のヘテロ原子を有する溶媒等が挙げられる。上記の溶媒は単独で使用しても、複数種類を混合して使用してもよい。高純度のトリアゾリジンジオン化合物を製造するためには、プロトン性極性溶媒を使用することが好ましく、コストの観点から、水を用いることが最も好ましい。
【0037】
(セミカルバジド化合物と塩基と溶媒との混合方法)
セミカルバジド化合物と塩基と溶媒とを混合する方法は、特に制限されるものではなく、例えば、撹拌装置を備えた反応容器内で実施することができる。また、各成分を反応容器内に添加する順序も、特に制限されるものではない。例えば、セミカルバジド化合物を溶媒に溶解または懸濁させた後に、塩基を添加して反応を行うことができる。あるいは、塩基を溶媒に溶解させた後、セミカルバジド化合物を添加することもできる。セミカルバジド化合物および塩基は、それぞれ単独で添加することもできるが、予め溶媒に溶かした後に添加することもできる。
【0038】
(反応条件)
セミカルバジド化合物と塩基とを混合する際の温度、すなわち反応温度(反応系内の温度)は、特に制限されるものではない。例えば、60~100℃の範囲とすることができる。本反応で、不純物を抑制しつつ、短時間で反応を完結させるためには、反応温度を70~100℃の範囲とすることが好ましく、80~100℃の範囲とすることがより好ましい。
【0039】
反応時間も特に制限されるものではなく、通常、0.5~5時間の範囲にあれば十分であり、0.5~3時間であることが好ましく、0.5~2時間であることがさらに好ましい。ここで、反応時間とは、セミカルバジド化合物と塩基との全量が混合されている時間を意味する。また本発明においては、原料となるセミカルバジド化合物の反応割合を確認しながら、反応時間を決定することもできる。
【0040】
反応圧力も、特に制限されるものではなく、大気圧下、減圧下、加圧下のいずれであってもよい。また、反応時の雰囲気も特に制限されるものではなく、例えば、空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下等で実施することができる。製造コストの観点からは、空気雰囲気下で実施することが好ましい。
【0041】
(不純物除去)
環化工程によってトリアゾリジンジオン化合物を製造した後、析出工程を実施する前に、不純物を取り除いてもよい。環化工程終了後、不純物が固体として析出している場合には、濾過により取り除くことができる。また、不純物が固体として析出していなくても、有機溶媒と接触させることにより、不純物を取り除くことができる。トリアゾリジンジオン化合物に含まれる不純物を取り除くことにより、本発明の製造方法によって最終的に得られるトリアゾリジンジオン化合物の純度を高めることができる。
【0042】
不純物の除去にあたっては、除去効率を考慮すると、水と混和しない有機溶媒を使用することが好ましい。好適な有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル等のエーテル系溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒の中でも、水よりも比重の重い有機溶媒を用いると、反応容器の下部から不純物を含有する有機溶媒を取り出すことができるため、操作性の観点から有用である。かかる有機溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒が挙げられる。
【0043】
[析出工程]
析出工程では、上記式(1)で示されるトリアゾリジンジオン化合物を含む溶液を調製し、トリアゾリジンジオン化合物を析出させる。このとき、溶液のpHは3.0~8.5とし、溶液を、トリアゾリジンジオン化合物1質量部に対して溶媒が3~15容量部含まれるようにする。
【0044】
(溶液のpH)
調製する溶液のpHは、3.0~8.5の範囲であればよく、例えば、4.5~8.5の範囲、5.0~8.0の範囲、または5.5~7.5の範囲であってもよい。あるいは、3.0~6.5の範囲、3.5~6.0の範囲、または4.0~5.5の範囲であってもよい。
【0045】
(溶液の量)
調製する溶液の量は、あまり少なすぎると、トリアゾリジンジオン化合物が十分に溶解せず、精製効果が低くなる傾向にあり、あまり多すぎると、収量が低下する。トリアゾリジンジオン化合物1質量部に対して溶媒が3~15容量部の範囲で含まれるようにし、好ましくは3~10容量部の範囲で含まれるようにし、特に好ましくは3~8容量部の範囲で溶媒が含まれるようにする。
【0046】
(pHの調整方法)
トリアゾリジンジオン化合物を含む溶液のpHの調整方法は、特に制限されるものではないが、例えば、トリアゾリジンジオン化合物を水等に溶解させた後、酸を添加して、pHを調整する方法、トリアゾリジンジオン化合物を塩基性水溶液に溶解させた後、酸を添加して、pHを調整する方法が挙げられる。
【0047】
また、上記の環化工程によって得られる反応溶液に、直接酸を添加することにより、トリアゾリジンジオン化合物を含む溶液のpHを3.0~6.5の範囲とすることもできる。この場合、反応条件によっては溶液量が多くなる場合があるが、かかる場合には、酸を添加してpHを調整した後に溶媒を留去して、上記の範囲となるように溶液の量を調整してもよい。あるいは、反応終了後に溶媒を所定の割合となるまで留去した後に、酸を添加してpHを調整してもよい。
【0048】
(酸)
pHを調整するために使用する酸は、特に制限されるものではなく、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸等の有機酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸を使用することができる。またこれらの酸は、水溶液として使用することもできる。好ましい酸としては、塩酸、硫酸等の無機酸が挙げられる。中でも、価格や、精製の容易さから、塩酸を用いることが最も好ましい。なお、酸の使用量としては、トリアゾリジンジオン化合物を含む溶液が、所望のpHとなるまで添加すれば十分である。
【0049】
また仮に、溶液のpHが、析出工程で必要となるpHよりも高酸性側になった場合には、塩基を添加して、上記pHの範囲に調整することができる。使用する塩基に特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基を好ましく使用することができる。中でも、pH調整が容易となる観点から、炭酸カリウムを好ましく使用することができる。
【0050】
(析出条件)
析出工程における溶液の温度は、特に制限されるものではなく、製造条件を勘案して適宜設定すればよい。トリアゾリジンジオン化合物の安定性の観点からは、0~40℃の範囲とすることが好ましく、10~30℃の範囲がさらに好ましく、15~25℃の範囲が最も好ましい。
【0051】
析出工程における時間についても、特に制限されるものではなく、製造条件等を勘案して適宜設定すればよいが、通常、30分~1時間程度で十分である。
【0052】
析出工程における雰囲気は、特に制限されるものではなく、例えば、空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、乾燥空気雰囲気下の何れの雰囲気下であってもよい。また、大気圧下、減圧下、加圧下の何れの圧力下でも、実施することができる。
【0053】
[トリアゾリジンジオン化合物の単離]
本発明のトリアゾリジンジオン化合物の製造方法によれば、トリアゾリジンジオン化合物は溶液中で固体として析出する。したがって、公知の単離方法により、トリアゾリジンジオン化合物を単離することができる。具体的には、トリアゾリジンジオン化合物を含む懸濁液を、減圧濾過や加圧濾過、あるいは遠心分離等の方法により固液分離し、トリアゾリジンジオン化合物の固体を単離することができる。
【0054】
固液分離後の固体は、常圧化、減圧下、あるいは、窒素やアルゴン等の不活性ガスの通気下において、乾燥させることにより、溶媒を除去することができる。乾燥温度は、室温~100℃の範囲であることが好ましい。乾燥時間は、溶媒等の残留量を確認しながら適宜設定すればよいが、通常1~24時間の範囲である。
【0055】
[トリアゾリジンジオン化合物の精製]
本発明のトリアゾリジンジオン化合物の製造方法によって得られたトリアゾリジンジオン化合物は、公知の方法によって精製することができる。例えば、プロトン性、または非プロトン性極性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン等)によって再結晶することが好ましい。再結晶に用いるプロトン性、または非プロトン性極性溶媒は、水を含んでいてもよい。
【0056】
本発明のトリアゾリジンジオン化合物の製造方法によって得られたトリアゾリジンジオン化合物を、再結晶溶媒に溶解する際の温度は、特に制限されるものではないが、20~100℃の範囲で行うことが好ましく、40~80℃の範囲で行うことがさらに好ましい。
【0057】
再結晶溶媒の使用量は、溶解させる対象物、すなわち、トリアゾリジンジオン化合物を含む対象物1gに対して、5~50mLとすることが好ましく、5~20mLとすることがさらに好ましい。また、結晶を析出させる際の温度は、0~20℃の範囲とすることが好ましく、0~5℃の範囲がさらに好ましい。得られた結晶は、公知の方法で乾燥することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0059】
<化学純度測定(HPLC純度)>
本発明におけるトリアゾリジンジオン化合物の純度測定は、HPLCを用いて、以下の条件で行った。HPLC純度は、HPLC測定におけるトリアゾリジンジオン化合物の面積%として算出した。
(測定条件)
装置: 高速液体クロマトグラフ(ウォーターズ社製2695)
検出器: 紫外可視分光検出器(ウォーターズ社製2489)
検出波長: 210nm
カラム: Inertsil ODS-3(4.6mm×250mm、粒子径:5μm)(GLサイエンス社製)
移動相A: アセトニトリル/緩衝液=5/95
移動相B: アセトニトリル/緩衝液=30/70
緩衝液: リン酸二水素アンモニウム69.0gと、イオンペア剤として1-ペンタンスルホン酸ナトリウム52.3gとを、水3000mLに溶かし、塩酸を加えてpH2.0に調整
移動相の送液: 移動相A(0~10分)→移動相B(20~40分)のように変えて濃度勾配制御した。
カラム温度: 40℃付近の一定温度
注入量: 10μL
サンプル濃度: 0.75g/mL
【0060】
なお、上記の測定条件によるHPLCで分析によれば、トリアゾリジンジオン化合物のピークは、保持時間9分付近に現れる。また、不純物ピークは、保持時間17~20分に現れる。
【0061】
<実施例1>
[1-エトキシカルボニル-4-(4’-ジメチルアミノフェニル)セミカルバジドの合成]
2Lのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、ジムロート、ガス導入管を取り付けた。フラスコに、4-ジメチルアミノ安息香酸100.00g(0.61mol)、脱水トルエン1000mLを仕込み、窒素フロー下で撹拌したところ、白色スラリーとなった。
【0062】
白色スラリーに、トリエチルアミン73.51g(0.73mol)、ジフェニルリン酸アジド199.92g(0.73mol)を添加したところ、系内温度が33℃まで上昇し、淡黄色透明溶液となった。フラスコをオイルバス(100℃)につけて加熱し、系内温度90~100℃にて、1時間反応を実施した。系内温度70℃付近から、窒素の発生が見られ、濃橙色溶液となった。
【0063】
フラスコを、オイルバスから外して放冷し、系内温度が40℃付近に到達してから、カルバジン酸エチル75.63g(0.73mol)を添加したところ、系内温度が53℃まで上昇し、二層の橙色溶液となった。1時間反応を実施した後、反応混合物を5Lのエルレンマイヤーフラスコに移し、蒸留水2000mLを加え、メカニカルスターラーを用いて3時間撹拌を行った。
【0064】
反応混合物を桐山ロート(No.5B)で濾過し、蒸留水400mL、トルエン400mLで洗浄し、ベージュ色の固体を得た。得られた固体を真空乾燥(40℃、12時間)し、1-エトキシカルボニル-4-(4’-ジメチルアミノフェニル)セミカルバジドのベージュ色固体を得た。収量は141.96g、収率は88.1%、HPLC純度は88.4%であった。
【0065】
[4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオンの合成]
300mLのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、ジムロートを取り付けた。フラスコに、上記で得られた1-エトキシカルボニル-4-(4’-ジメチルアミノフェニル)セミカルバジド10.00g(37.6mmol)、炭酸カリウム(無水)10.00g(72.4mmol)、蒸留水200mLを仕込み、撹拌した。このとき、セミカルバジドは溶解せず、懸濁していた。フラスコをオイルバス(110℃)につけて加熱し、系内温度95℃にて、2時間反応を実施した。このとき、反応混合物は黄色懸濁液となった。
【0066】
(pH調整)
フラスコをオイルバスから外して放冷し、濾紙(No.2)にて濾過して不溶分を除去した。続いて、エバポレーターにて水を留去し、50g程度(50mL)まで濃縮した。濃縮液をコニカルビーカーに移し、ビューレットを用いて濃塩酸を加えることにより、pH調整を行った。11.7mL滴下したところで(pH=4.79)、pH調整を完了した。このときのトリアゾリジン化合物1質量部(理論収量)に対する溶媒量は、6.5容量部であった。
【0067】
得られたスラリーを桐山ロート(No.5B)で濾過し、蒸留水50mLで洗浄した。得られた固体を真空乾燥(40℃、12時間)し、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオンの白色固体を得た。収量は6.77g、収率は81.9%、HPLC純度は98.5%であった。
【0068】
<実施例2>
[1-エトキシカルボニル-4-(3-ジメチルアミノエチル)セミカルバジドの合成]
2Lのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、ジムロート、ガス導入管を取り付けた。フラスコに、3-ジメチルアミノプロピオン酸塩酸塩92.99g(0.61mol)、脱水トルエン1000mLを仕込み、窒素フロー下で撹拌したところ、白色スラリーとなった。
【0069】
白色スラリーに、トリエチルアミン147.02g(1.46mol)、ジフェニルリン酸アジド199.92g(0.73mol)を添加したところ、系内温度が40℃まで上昇し、淡黄色透明溶液になった。フラスコをオイルバス(100℃)につけて加熱し、系内温度90~100℃にて、1時間反応を実施した。系内温度70℃付近から、窒素の発生が見られ、濃橙色溶液になった。
【0070】
フラスコをオイルバスから外して放冷し、系内温度が40℃付近に到達してから、カルバジン酸エチル75.63g(0.73mol)を添加したところ、系内温度が47℃まで上昇し、二層の橙色溶液になった。1時間反応を実施した後、反応混合物を5Lのエルレンマイヤーフラスコに移し、蒸留水2000mLを加え、メカニカルスターラーを用いて3時間撹拌を行った。
【0071】
反応混合物を桐山ロート(No.5B)で濾過し、蒸留水400mL、トルエン400mLで洗浄し、ベージュ色の固体を得た。得られた固体を真空乾燥(40℃、12時間)し、1-エトキシカルボニル-4-(3-ジメチルアミノエチル)セミカルバジドのベージュ色固体を得た。収量は120.65g、収率は85.8%、HPLC純度は86.1%であった。
【0072】
[4-(3-ジメチルアミノエチル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオンの合成]
300mLのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、ジムロートを取り付けた。フラスコに、上記で得られた1-エトキシカルボニル-4-(3-ジメチルアミノエチル)セミカルバジド8.73g(37.6mmol)、炭酸カリウム(無水)10.00g(72.4mmol)、蒸留水200mLを仕込み、撹拌した。このとき、セミカルバジドは溶解せず、懸濁していた。フラスコをオイルバス(110℃)につけて加熱し、系内温度95℃にて、2時間反応を実施した。このとき、反応混合物は黄色懸濁液となった。
【0073】
(pH調製)
フラスコをオイルバスから外して放冷し、濾紙(No.2)にて濾過して不溶分を除去した。続いて、エバポレーターにて水を留去し、50g程度(50mL)まで濃縮した。濃縮液をコニカルビーカーに移し、ビューレットを用いて濃塩酸を加えて、pH調整を行った。11.5mL滴下したところで(pH=6.01)、pH調整を完了した。このときのトリアゾリジン化合物1質量部(理論収量)に対する溶媒量は、7.8容量部であった。
【0074】
得られたスラリーを桐山ロート(No.5B)で濾過し、蒸留水50mLで洗浄した。得られた固体を真空乾燥(40℃、12時間)し、4-(3-ジメチルアミノエチル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオンの白色固体を得た。収量は8.27g、収率は84.6%、HPLC純度は98.1%であった。
【0075】
<実施例3>
[1-エトキシカルボニル-4-(3-ジメチルアミノプロピル)セミカルバジドの合成]
2Lのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、ジムロート、ガス導入管を取り付けた。フラスコに、4-ジメチルアミノ酪酸塩酸塩101.48g(0.61mol)、脱水トルエン1000mLを仕込み、窒素フロー下で撹拌したところ、白色スラリーとなった。
白色スラリーに、トリエチルアミン147.02g(1.46mol)、ジフェニルリン酸アジド199.92g(0.73mol)を添加したところ、系内温度が40℃まで上昇し、淡黄色透明溶液になった。フラスコをオイルバス(100℃)につけて加熱し、系内温度90~100℃にて、1時間反応を実施した。系内温度70℃付近から、窒素の発生が見られ、濃橙色溶液になった。
【0076】
フラスコをオイルバスから外して放冷し、系内温度が40℃付近に到達してから、カルバジン酸エチル75.63g(0.73mol)を添加したところ、系内温度が47℃まで上昇し、二層の橙色溶液になった。1時間反応を実施した後、反応混合物を5Lのエルレンマイヤーフラスコに移し、蒸留水2000mLを加え、メカニカルスターラーを用いて3時間撹拌を行った。
【0077】
反応混合物を桐山ロート(No.5B)で濾過し、蒸留水400mL、トルエン400mLで洗浄し、ベージュ色の固体を得た。得られた固体を真空乾燥(40℃、12時間)し、1-エトキシカルボニル-4-(3-ジメチルアミノプロピル)セミカルバジドのベージュ色固体を得た。収量は120.65g、収率は85.8%、HPLC純度は86.1%であった。
【0078】
[4-(3-ジメチルアミノプロピル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオンの合成]
300mLのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、ジムロートを取り付けた。フラスコに、上記で得られた1-エトキシカルボニル-4-(3-ジメチルアミノプロピル)セミカルバジド8.73g(37.6mmol)、炭酸カリウム(無水)10.00g(72.4mmol)、蒸留水200mLを仕込み、撹拌した。このとき、セミカルバジドは溶解せず、懸濁していた。フラスコをオイルバス(110℃)につけて加熱し、系内温度95℃にて、2時間反応を実施した。このとき、反応混合物は黄色懸濁液となった。
【0079】
(pH調製)
フラスコをオイルバスから外して放冷し、濾紙(No.2)にて濾過して不溶分を除去した。続いて、エバポレーターにて水を留去し、50g程度(50mL)まで濃縮した。濃縮液をコニカルビーカーに移し、ビューレットを用いて濃塩酸を加えて、pH調整を行った。11.5mL滴下したところで(pH=6.01)、pH調整を完了した。このときのトリアゾリジン化合物1質量部(理論収量)に対する溶媒量は7.8容量部であった。
【0080】
得られたスラリーを桐山ロート(No.5B)で濾過し、蒸留水50mLで洗浄した。得られた固体を真空乾燥(40℃、12時間)し、4-(3-ジメチルアミノプロピル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオンの白色固体を得た。収量は5.02g、収率は71.7%、HPLC純度は97.7%であった。
【0081】
<実施例4>
[1-エトキシカルボニル-4-(3-ジメチルアミノプロピル)セミカルバジドの合成]
2Lのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、ジムロート、ガス導入管を取り付けた。フラスコに、4-ジメチルアミノ酪酸塩酸塩101.48g(0.61mol)、脱水トルエン1000mLを仕込み、窒素フロー下で撹拌したところ、白色スラリーとなった。
【0082】
白色スラリーに、トリエチルアミン147.02g(1.46mol)、ジフェニルリン酸アジド199.92g(0.73mol)を添加したところ、系内温度が40℃まで上昇し、淡黄色透明溶液になった。フラスコをオイルバス(100℃)につけて加熱し、系内温度90~100℃にて、1時間反応を実施した。系内温度70℃付近から、窒素の発生が見られ、濃橙色溶液になった。
【0083】
フラスコをオイルバスから外して放冷し、系内温度が40℃付近に到達してから、カルバジン酸エチル75.63g(0.73mol)を添加したところ、系内温度が47℃まで上昇し、二層の橙色溶液になった。1時間反応を実施した後、反応混合物を5Lのエルレンマイヤーフラスコに移し、蒸留水2000mLを加え、メカニカルスターラーを用いて3時間撹拌を行った。
【0084】
反応混合物を桐山ロート(No.5B)で濾過し、蒸留水400mL、トルエン400mLで洗浄し、ベージュ色の固体を得た。得られた固体を真空乾燥(40℃、12時間)し、1-エトキシカルボニル-4-(3-ジメチルアミノプロピル)セミカルバジドのベージュ色固体を得た。収量は120.65g、収率は85.8%、HPLC純度は86.1%であった。
【0085】
[4-(3-ジメチルアミノプロピル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオンの合成]
300mLのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、ジムロートを取り付けた。フラスコに、上記で得られた1-エトキシカルボニル-4-(3-ジメチルアミノプロピル)セミカルバジド8.73g(37.6mmol)、炭酸カリウム(無水)10.00g(72.4mmol)、蒸留水200mLを仕込み、撹拌した。このとき、セミカルバジドは溶解せず、懸濁していた。フラスコをオイルバス(110℃)につけて加熱し、系内温度95℃にて、2時間反応を実施した。このとき、反応混合物は黄色懸濁液となった。
【0086】
(pH調製)
フラスコをオイルバスから外して放冷し、濾紙(No.2)にて濾過して不溶分を除去した。続いて、エバポレーターにて水を留去し、50g程度(50mL)まで濃縮した。濃縮液をコニカルビーカーに移し、ビューレットを用いて濃塩酸を加えて、pH調整を行った。4.8mL滴下したところで(pH=7.46)、pH調整を完了した。このときのトリアゾリジン化合物1質量部(理論収量)に対する溶媒量は、6.8容量部であった。
【0087】
得られたスラリーを桐山ロート(No.5B)で濾過し、蒸留水50mLで洗浄した。得られた固体を真空乾燥(40℃、12時間)し、4-(3-ジメチルアミノプロピル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオンの白色固体を得た。収量は5.92g、収率は84.6%、HPLC純度は98.1%であった。
【0088】
<実施例5>
[1-エトキシカルボニル-4-(4’-ジメチルアミノメチルフェニル)セミカルバジドの合成]
2Lのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、ジムロート、ガス導入管を取り付けた。フラスコに、4-ジメチルアミノメチル安息香酸109.32g(0.61mol)、脱水トルエン1000mLを仕込み、窒素フロー下で撹拌したところ、白色スラリーとなった。
【0089】
白色スラリーに、トリエチルアミン73.51g(0.73mol)、ジフェニルリン酸アジド199.92g(0.73mol)を添加したところ、系内温度が30℃まで上昇し、淡黄色透明溶液となった。フラスコをオイルバス(100℃)につけて加熱し、系内温度90~100℃にて、1時間反応を実施した。系内温度70℃付近から、窒素の発生が見られ、濃橙色溶液となった。
【0090】
フラスコを、オイルバスから外して放冷し、系内温度が40℃付近に到達してから、カルバジン酸エチル75.63g(0.73mol)を添加したところ、系内温度が46℃まで上昇し、二層の橙色溶液となった。1時間反応を実施した後、反応混合物を5Lのエルレンマイヤーフラスコに移し、蒸留水2000mLを加え、メカニカルスターラーを用いて3時間撹拌を行った。
【0091】
反応混合物を桐山ロート(No.5B)で濾過し、蒸留水400mL、トルエン400mLで洗浄し、ベージュ色の固体を得た。得られた固体を真空乾燥(40℃、12時間)し、1-エトキシカルボニル-4-(4’-ジメチルアミノメチルフェニル)セミカルバジドのベージュ色固体を得た。収量は123.32g、収率は86.3%、HPLC純度は89.6%であった。
[4-(4’-ジメチルアミノメチルフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオンの合成]
【0092】
300mLのガラス製四つ口フラスコに、メカニカルスターラー、温度計、ジムロートを取り付けた。フラスコに、上記で得られた1-エトキシカルボニル-4-(4’-ジメチルアミノメチルフェニル)セミカルバジド10.54g(37.6mmol)、炭酸カリウム(無水)10.00g(72.4mmol)、蒸留水200mLを仕込み、撹拌した。このとき、セミカルバジドは溶解せず、懸濁していた。フラスコをオイルバス(110℃)につけて加熱し、系内温度95℃にて、2時間反応を実施した。このとき、反応混合物は黄色懸濁液となった。
【0093】
(pH調整)
フラスコをオイルバスから外して放冷し、濾紙(No.2)にて濾過して不溶分を除去した。続いて、エバポレーターにて水を留去し、50g程度(50mL)まで濃縮した。濃縮液をコニカルビーカーに移し、ビューレットを用いて濃塩酸を加えることにより、pH調整を行った。10.7mL滴下したところで(pH=6.68)、pH調整を完了した。このときのトリアゾリジン化合物1質量部(理論収量)に対する溶媒量は、5.9容量部であった。
【0094】
得られたスラリーを桐山ロート(No.5B)で濾過し、蒸留水50mLで洗浄した。得られた固体を真空乾燥(40℃、12時間)し、4-(4’-ジメチルアミノメチルフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオンの白色固体を得た。収量は7.34g、収率は83.3%、HPLC純度は98.3%であった。
【0095】
<比較例1>
pH調整において、加える濃塩酸の量を13.0mLにした以外は、実施例1と同様にして、4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオンの合成を行った。その結果、pH=2.70となり、得られた4-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオンの収量は5.54g、収率は67.0%、HPLC純度は98.1%であった。このときのトリアゾリジン化合物1質量部(理論収量)に対する溶媒量は、6.6容量部であった。
【0096】
<比較例2>
エバポレーターによる水の留去を行わなかった以外は、実施例1と同様にして11.7mLの濃塩酸を添加して(pH=4.79)、4-(4’-(ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオンを含む溶液の調製を行った。得られた4-(4’-ジメチルアミノフェニル)-1,2,4-トリアゾリジン-3,5-ジオンの収量は1.61g、収率は19.5%、HPLC純度は97.3%であった。このときのトリアゾリジン化合物1質量部(理論収量)に対する溶媒量は、26.3容量部であった。