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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】選択成膜方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20230911BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20230911BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20230911BHJP
   H01L 21/283 20060101ALI20230911BHJP
   C23C 16/02 20060101ALI20230911BHJP
   C23C 16/04 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/90 A
H01L21/28 A
H01L21/283 B
H01L21/90 P
C23C16/02
C23C16/04
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2020080178
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021174960
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】東雲 秀司
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 好太
(72)【発明者】
【氏名】石井 勝利
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
(72)【発明者】
【氏名】寺本 章伸
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 智之
(72)【発明者】
【氏名】白井 泰雪
(72)【発明者】
【氏名】間脇 武蔵
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-528597(JP,A)
【文献】特開2011-029554(JP,A)
【文献】特開2009-239283(JP,A)
【文献】特開平07-022320(JP,A)
【文献】特開2019-062142(JP,A)
【文献】特開2015-188028(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203892(WO,A1)
【文献】特開2012-172250(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0010247(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/768
H01L 21/28
H01L 21/283
C23C 16/02
C23C 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面を有する第1の膜と、第2の表面を有する前記第1の膜とは異なる第2の膜とを含む基板を準備する工程と、
第2級アルコールガスおよび/または第3級アルコールガスを前記第2の表面に選択的に吸着させる工程と、
少なくとも原料ガスを供給して前記第1の表面に選択的に膜を形成する工程と、
を有し、
前記第2級アルコールガスおよび前記第3級アルコールガスは、第1級アルコールガスよりも低温で脱水素反応が生じて、前記第1級アルコールガスよりも低温で前記第2の表面に吸着する、選択成膜方法。
【請求項2】
前記第1の膜は金属膜であり、前記第2の膜は絶縁膜である、請求項1に記載の選択成膜方法。
【請求項3】
前記第1の膜を構成する前記金属膜は、Cu、Ru、Co、Ti、TiNの少なくとも一種であり、前記第2の膜を構成する前記絶縁膜は、SiO、SiOC、SiOCN、SiNの少なくとも一種である、請求項2に記載の選択成膜方法。
【請求項4】
表面に自然酸化膜が形成された金属膜と、絶縁膜とを有する基板を準備する工程と、
前記自然酸化膜を還元除去し、前記金属膜の第1の表面を露出させる工程と、
第2級アルコールガスおよび/または第3級アルコールガスを前記絶縁膜の第2の表面に選択的に吸着させる工程と、
少なくとも原料ガスを供給して前記第1の表面に選択的に膜を形成する工程と、
を有し、
前記第2級アルコールガスおよび前記第3級アルコールガスは、第1級アルコールガスよりも低温で脱水素反応が生じて、前記第1級アルコールガスよりも低温で前記第2の表面に吸着する、選択成膜方法。
【請求項5】
前記自然酸化膜を還元除去する工程は、水素アニール処理または水素プラズマ処理により行われる、請求項4に記載の選択成膜方法。
【請求項6】
前記水素アニール処理または前記水素プラズマ処理は、500℃以下の温度で行われる、請求項5に記載の選択成膜方法。
【請求項7】
前記水素アニール処理は250~400℃の温度で行われ、前記水素プラズマ処理は400℃以下の温度で行われる、請求項6に記載の選択成膜方法。
【請求項8】
前記自然酸化膜を還元除去する工程は、前記第2級アルコールガスおよび/または第3級アルコールガスを前記第2の表面に選択的に吸着させる工程の際に同時に実施する、請求項4に記載の選択成膜方法。
【請求項9】
前記金属膜は、Cu、Ru、Co、Ti、TiNの少なくとも一種であり、前記絶縁膜は、SiO、SiOC、SiOCN、SiNの少なくとも一種である、請求項4から請求項8のいずれか一項に記載の選択成膜方法。
【請求項10】
前記第2級アルコールガスおよび/または第3級アルコールガスを前記第2の表面に選択的に吸着させる工程により吸着された有機層は、前記少なくとも原料ガスによる前記第2の表面への膜形成をブロックする機能を有する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の選択成膜方法。
【請求項11】
前記第2級アルコールガスおよび/または第3級アルコールガスを前記第2の表面に選択的に吸着させる工程は、100~350℃の範囲の温度で行われる、請求項10に記載の選択成膜方法。
【請求項12】
前記第2級アルコールガスおよび/または第3級アルコールガスを前記第2の表面に選択的に吸着させる工程は、100~250℃の範囲の温度で行われる、請求項11に記載の選択成膜方法。
【請求項13】
前記第2級アルコールは、イソプロピルアルコールおよび/または2-ブタノールである、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の選択成膜方法。
【請求項14】
前記第2級アルコールガスおよび/または第3級アルコールガスを前記第2の表面に選択的に吸着させる工程は、前記第2級アルコールガスおよび/または第3級アルコールガスとしてイソプロピルアルコールを用いる場合に、100~150℃の範囲の温度で行う、請求項13に記載の選択成膜方法。
【請求項15】
前記第3級アルコールは、ターシャリブチルアルコールおよび/または2-メチル-2-ブタノールである、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の選択成膜方法。
【請求項16】
前記第2級アルコールガスおよび/または第3級アルコールガスを前記第2の表面に選択的に吸着させる工程と、前記第1の表面に選択的に膜を形成する工程は、2回以上交互に繰り返す、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の選択成膜方法。
【請求項17】
前記第1の表面に選択的に膜を形成する工程により形成された膜は、金属膜または絶縁膜である、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の選択成膜方法。
【請求項18】
前記第1の表面の前記金属膜は、Ru、Cu、Co、Ti、TiNの少なくとも一種であり、前記第1の表面の前記絶縁膜は、SiO、SiOC、SiOCN、SiN、Al、HfO、ZrO、TiO、TiONの少なくとも一種である、請求項17に記載の選択成膜方法。
【請求項19】
前記第1の表面に選択的に膜を形成する工程は、原料ガスおよび反応ガスを供給することにより行われる、請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の選択成膜方法。
【請求項20】
前記第1の表面に選択的に膜を形成する工程は、ALDまたはCVDにより行われる、請求項19に記載の選択成膜方法。
【請求項21】
前記第1の表面に選択的に膜を形成する工程は、450℃以下の温度で行われる、請求項19または請求項20に記載の選択成膜方法。
【請求項22】
反応ガスとしてHO、H、Oのいずれかを用いる、請求項19から請求項21のいずれか一項に記載の選択成膜方法。
【請求項23】
前記第1の表面に選択的に膜を形成する工程は、原料ガスとしてRu(EtCp)を用い、反応ガスとしてOガスを用いて、Ru膜を形成する、請求項22に記載の選択成膜方法。
【請求項24】
前記第1の表面に選択的に膜を形成する工程は、原料ガスとしてTMAを用い、反応ガスとしてHOを用いて、Al膜を形成する、請求項22に記載の選択成膜方法。
【請求項25】
前記第1の表面に選択的に膜を形成する工程は、原料ガスとしてTi(NMeを用い、反応ガスとしてHOを用いて、TiO膜を形成する、請求項22に記載の選択成膜方法。
【請求項26】
前記第1の表面に選択的に膜を形成する工程は、原料ガスとしてHf(NMeを用い、反応ガスとしてHOを用いて、HfO膜を形成する、請求項22に記載の選択成膜方法。
【請求項27】
前記第1の表面に選択的に膜を形成する工程は、原料ガスとしてSiH(NMe を用い、反応ガスとしてHOを用いて、SiO膜を形成する、請求項22に記載の選択成膜方法。
【請求項28】
前記第1の表面に選択的に膜を形成する工程は、原料ガスを供給し、熱分解させることにより行われる、請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の選択成膜方法。
【請求項29】
前記第1の表面に選択的に膜を形成する工程は、CVDにより行われる、請求項28に記載の選択成膜方法。
【請求項30】
前記第1の表面に選択的に膜を形成する工程は、原料ガスとしてCo(CO)を用い、熱分解させることによりCo膜を形成する、請求項29に記載の選択成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、選択成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、一般的に、フォトリソグラフィおよびエッチングによりパターン形成が行われている。しかし、近時、半導体デバイスの微細化が益々進んでおり、フォトリソグラフィ精度の限界に達している。
【0003】
このため、配線等の金属膜と絶縁膜とが混在する表面に対して、例えば金属膜に選択的かつ自己整合的に所望の膜を成膜する技術が求められている。
【0004】
このような技術として、特許文献1には、表面に導電膜および絶縁膜が露出した状態の被処理基板上に薄膜を選択的に成膜させる選択成膜方法であって、導電膜の露出表面である第1の表面がRu、RuO、Pt、Pd、CuOおよびCuOのいずれかであり、Ru(EtCp)ガスとOガスとを用いて第1の表面のみに選択的にRu膜を成膜する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-62142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、簡易な手法で汎用性が高い選択成膜方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様に係る選択成膜方法は、第1の表面を有する第1の膜と、第2の表面を有する前記第1の膜とは異なる第2の膜とを含む基板を準備する工程と、第2級アルコールガスおよび/または第3級アルコールガスを前記第2の表面に選択的に吸着させる工程と、少なくとも原料ガスを供給して前記第1の表面に選択的に膜を形成する工程と、を有し、前記第2級アルコールガスおよび前記第3級アルコールガスは、第1級アルコールガスよりも低温で脱水素反応が生じて、前記第1級アルコールガスよりも低温で前記第2の表面に吸着する
【0008】
本開示の第2の態様に係る選択成膜方法は、表面に自然酸化膜が形成された金属膜と、絶縁膜とを有する基板を準備する工程と、前記自然酸化膜を還元除去し、前記金属膜の第1の表面を露出させる工程と、第2級アルコールガスおよび/または第3級アルコールガスを前記絶縁膜の第2の表面に選択的に吸着させる工程と、少なくとも原料ガスを供給して前記第1の表面に選択的に膜を形成する工程と、を有し、前記第2級アルコールガスおよび前記第3級アルコールガスは、第1級アルコールガスよりも低温で脱水素反応が生じて、前記第1級アルコールガスよりも低温で前記第2の表面に吸着する
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易で汎用性が高い選択成膜方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る選択成膜方法を示すフローチャートである。
図2A図1のステップ1を示す工程断面図である。
図2B図1のステップ2を示す工程断面図である。
図2C図1のステップ3を示す工程断面図である。
図3】第2の実施形態に係る選択成膜方法を示すフローチャートである。
図4A図3のステップ11を示す工程断面図である。
図4B図3のステップ12を示す工程断面図である。
図4C図3のステップ13を示す工程断面図である。
図4D図3のステップ14を示す工程断面図である。
図5】エタノールの分解特性を示す図である。
図6】1-プロパノールの分解特性を示す図である。
図7】IPAの分解特性を示す図である。
図8】1-ブタノールの分解特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
<第1の実施形態>
図1は第1の実施形態に係る選択成膜方法を示すフローチャート、図2A図2C図1に示す各工程を示す工程断面図である。
【0012】
最初に、図2Aに示すような、半導体基体(例えばSi)10上に、第1の膜11と第1の膜11とは異なる材料の第2の膜12が形成された基板1を準備する(ステップ1)。第1の膜11は第1の表面21を有しており、第2の膜12は第2の表面22を有している。このステップ1では、具体的には、処理チャンバー内に設けられたステージ上に基板1が載置された状態とされる。
【0013】
第1の膜11としては金属膜を挙げることができ、好適な例としてCu、Ru、Co、Ti、TiNのいずれか、またはこれらの組み合わせ(Cu、Ru、Co、Ti、TiNの少なくとも一種)が例示される。また、第2の膜12としては絶縁膜を挙げることができ、好適な例としてSiO、SiOC、SiOCN、SiNのいずれか、またはこれらの組み合わせ(SiO、SiOC、SiOCN、SiNの少なくとも一種)が例示される。
【0014】
次に、第2級アルコールガスおよび/または第3級アルコールガスを第2の膜12の第2の表面22に選択的に吸着させる(ステップ2、図2B)。このステップ2は、基板1が収容されたチャンバー内に、第2級アルコールガスおよび/または第3級アルコールガスを導入することにより行われる。吸着により形成された有機層31は第2の表面22の全面に吸着されていればよく、膜になっている必要はない。有機層31は、次の成膜の際に、第2の表面22への成膜をブロックするブロッキング材として機能する。
【0015】
第2級アルコールは、ヒドロキシ基(-OH基)がついた炭素原子が他の炭素原子2個と結合しているアルコールであり、第3級アルコールは、ヒドロキシ基がついた炭素原子が他の炭素原子3個と結合しているアルコールである。
【0016】
第2級アルコールとしては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、2-ブタノールを挙げることができる。また、第3級アルコールとしては、例えばターシャリブチルアルコール(2-メチル-2-プロパノール)、2-メチル-2-ブタノールを挙げることができる。ただし、これらは一例にすぎずこれに限るものではない。
【0017】
第2級アルコールおよび第3級アルコールは、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール等のノルマルタイプのアルコール(第1級アルコール(ヒドロキシ基が末端の炭素原子についたアルコール))に比較して脱水素開始温度が低く、吸着温度を50℃程度低くすることができる。特に、IPAガスはその傾向が大きい。これは、第1級アルコールでは、脱水素により生成されるのはアルデヒドであるのに対し、第2級アルコールおよび第3級アルコールでは、脱水素によりケトンが生成されるからである。すなわち、アルデヒド(アセトアルデヒド、プロパナール等)は生成温度が比較的高いのに対し、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)はそれよりも生成温度が低いため、第2級アルコールおよび第3級アルコールのほうが低温で脱水素反応が生じて吸着する。
【0018】
ステップ2において第2級アルコールガスおよび/または第3級アルコールガスの吸着は100~350℃の温度範囲で実施することができる。より好ましくは100~250℃の範囲である。用いるアルコールによっては100~150℃の温度範囲で実施することができ、特に、IPAガスを用いる場合はこの温度範囲が好適である。ステップ2の時間は、有機層31が第2の表面22の全面に吸着できる程度の時間に設定することが好ましい。第2級アルコールガスおよび第3級アルコールガスは比較的吸着しやすく、1~60secと比較的短時間で吸着させることができる。
【0019】
アルコールガスは絶縁膜表面には吸着しやすいが、Cu等の金属膜表面には吸着し難い性質を有する。このため、第1の膜11が金属膜で第2の膜12が絶縁膜の場合に、アルコールガスを第2の表面22に選択的に吸着させることができる。本実施形態ではアルコールガスとして第2級アルコールガスや第3級アルコールガスを用いるため、上述のような比較的低い温度範囲で第2の表面22に選択的に吸着させて有機層31を形成することができる。
【0020】
金属膜がCuの場合、Cuは温度に対して非常にセンシティブで非常にマイグレーションしやすいことから、金属膜が成膜された後のプロセスの温度は低温であることが好ましい。特に、ステップ2の吸着させる処理を行う際には、金属膜すなわちCuが露出した状態となっているので、特に低温化が要求される。これに対して、本実施形態では、ステップ2の吸着ガスとして第2級アルコールガスや第3級アルコールガスを用いてステップ2を低温化することができるので、Cuのマイグレーション等の悪影響を抑制することができる。そして、以下に説明する、その後に行われるステップ3の成膜処理が低温化できるものであれば、金属膜のマイグレーション等をより有効に抑制でき、成膜の選択性をより高めることが期待される。ステップ2の吸着させる処理が高温で行われる場合には、上述のように金属膜に悪影響が及ぼされる他、次の成膜を低温で行う際に、チャンバーの温度を変更すること、または別チャンバーを用いることが必要となり、生産性が低下する。
【0021】
次に、少なくとも原料ガス(プリカーサ)を供給して、第1の表面21に選択的に膜41を形成する(ステップ3、図2C)。このステップ3の選択成膜性は、有機層31のブロッキング機能により実現される。このときの成膜は、原料ガス(プリカーサ)と反応ガス(リアクタント)との反応によってもよいし、原料ガス(プリカーサ)の熱分解によってもよい。
【0022】
プリカーサとリアクタントとの反応により成膜する場合は、ALDまたはCVDにより行うことができるが、プリカーサとリアクタントを交互に吸着させて表面反応により成膜するALDのほうが好ましい。ALDの場合、有機層31がプリカーサの第2の表面22への吸着を阻害して表面反応をブロックする。このため、膜41の選択成膜性を高く維持することができる。この際の温度は、450℃以下であることが好ましい。
【0023】
プリカーサの分解反応により成膜する場合は、CVDにより行うことができる。プリカーサの分解反応により成膜する例としては、原料ガスとしてコバルトカルボニル(Co(CO))を用いてCo膜を形成する場合、原料ガスとしてルテニウムカルボニル(Ru(CO)12)を用いてRu膜を形成する場合を挙げることができる。
【0024】
膜41は特に限定されず、金属膜でも絶縁膜でもよい。また、プリカーサとリアクタントの組み合わせも、成膜過程で有機層31のブロッキング機能を必要な期間維持できれば特に限定されない。
【0025】
膜41が金属膜の場合、好適な例としてRu、Cu、Co、Ti、TiNのいずれか、またはこれらの組み合わせ(Ru、Cu、Co、Ti、TiNの少なくとも一種)が例示される。また、膜41が絶縁膜の場合、好適な例としてSiO、SiOC、SiOCN、SiN、Al、HfO、ZrO、TiO、TiON、またはこれらの組み合わせ(SiO、SiOC、SiOCN、SiN、Al、HfO、ZrO、TiO、TiONの少なくとも一種)が例示される。
【0026】
膜形成の際のプリカーサとしては成膜しようとする膜に応じて種々のものを用いることができ、有機化合物であっても無機化合物であってもよいが、有機化合物がより好ましい。また、膜形成の際のリアクタントとしては、成膜しようとする膜に応じたものを使用すればよいが、有機層31のブロッキング機能を発揮させる観点から、HO、Hを好適に用いることができる。リアクタントとしてHOを用いることにより膜41として酸化膜が形成され、Hを用いることにより金属膜が形成される。リアクタントとしてHOまたはHを用いた場合は、成膜温度は450℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましい。また、リアクタントとしてはOも好ましく、Oを用いることにより酸化膜または金属膜が形成される。リアクタントとしてOを用いた場合は、成膜温度は300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。もちろん、リアクタントとしてNH等の窒化剤を用いて窒化膜を形成してもよく、さらに他のリアクタントを用いて他の膜を形成してもよい。
【0027】
膜41の材料と、プリカーサおよびリアクタントの好適な例、その際の温度としては以下のようなものが例示される。
(1)膜41の材料:Ru
プリカーサ:Ru(EtCp)
リアクタント:O
温度:300℃以下
(2)膜41の材料:AlO
プリカーサ:TMA(トリメチルアルミニウム)
リアクタント:H
温度:450℃以下
(3)膜41の材料:Co
プリカーサ:Co(CO)
リアクタント:なし
温度:300℃以下
(4)膜41の材料:TiO
プリカーサ:Ti(NMe
リアクタント:H
温度:50~250℃
(5)膜41の材料:HfO
プリカーサ:Hf(NMe
リアクタント:H
温度:50~400℃
(6)膜41の材料:SiO
プリカーサ:SiH(NMe
リアクタント:H
温度:~400℃
【0028】
上記ステップ2およびステップ3は、真空雰囲気で行うことが好ましく、例えば、13~1333Paの範囲で行うことができる。また、ステップ2およびステップ3は同一のチャンバーで連続して行うことができる。ステップ2およびステップ3を同一のチャンバーで行う場合は、両ステップを同じ温度で行うことが好ましい。
【0029】
上記ステップ2およびステップ3は、2回以上交互に繰り返してもよい。膜41の成膜の際に、ステップ3のリアクタントの種類によっては、成膜の際に有機層31が侵食される場合があるが、ステップ2とステップ3を繰り返すことにより、膜41が所望の膜厚に達するまで有機層31のブロッキング機能を維持して選択成膜を行うことができる。
【0030】
特許文献1に示された選択成膜技術は、導電膜上に導電膜を形成し、絶縁膜上に絶縁膜を形成することを主眼としており、選択成膜のための下地膜および成膜する膜の材料、プリカーサおよびリアクタントが限定される。これに対して、本実施形態では、IPAのような第2級アルコールガスや第3級アルコールガスといった一般的な有機化合物を選択的に吸着させて成膜をブロックするブロッキング材として機能させるという簡易な手法で、制約が少なく汎用性の高い選択成膜を実現できる。また、IPAのような第2級アルコールガスや第3級アルコールガスは吸着温度を低くすることができるのでCu等の金属膜が存在する場合に有利である。また、これらは取り扱いが容易であり、比較的高い吸着性を有するので、手間がかからず処理時間も短い。また、適用温度範囲が広いというメリットもある。
【0031】
<第2の実施形態>
図3は第2の実施形態に係る選択成膜方法を示すフローチャート、図4図3に示す各工程を示す工程断面図である。
【0032】
金属は大気中に保持されることにより、その表面に不可避的に自然酸化膜が形成されるため、本実施形態では自然酸化膜を有する基板に対する選択成膜について説明する。
【0033】
最初に、図4Aに示すような、半導体基体(例えばSi)10上に、金属膜51と絶縁膜52が形成され、金属膜51の表面に自然酸化膜51aが形成された基板1´を準備する(ステップ11)。絶縁膜52は第2の表面62を有している。このステップ11では、具体的には、処理チャンバー内に設けられたステージ上に基板1´を載置する。
【0034】
金属膜51の好適な例として、Cu、Ru、Co、Ti、TiNのいずれか、またはこれらの組み合わせ(Ru、Cu、CoTi、TiNの少なくとも一種)が例示される。また、絶縁膜52の好適な例としてSiO、SiOC、SiOCN、SiNのいずれか、またはこれらの組み合わせ(SiO、SiOC、SiOCN、SiNの少なくとも一種)が例示される。自然酸化膜51aは、金属膜51の表面に形成される酸化膜であり、Cu、Ru、Co、Tiの少なくとも一種の酸化膜が例示される。
【0035】
次に、前処理として全面に還元処理を行い、自然酸化膜51aを還元除去し、金属膜51の第1の表面61を露出させる(ステップ12、図4B)。このとき、絶縁膜52の第2の表面62はそのままの状態で、自然酸化膜51aのみ除去される。自然酸化膜51aを除去するのは、金属酸化膜には-OH基を含む有機化合物が吸着しやすく、選択吸着性が得難いからである。
【0036】
このステップ12は、水素アニールまたは水素プラズマ処理により行うことができる。このときの温度は500℃以下、さらには400℃以下が好ましく、水素アニールでは250~400℃がより好ましく、水素プラズマ処理では水素アニールより低い温度、例えば400℃以下がより好ましい。水素アニールの場合は、基板1´が収容されたチャンバー内に水素ガス(Hガス)を導入しつつ基板1´をアニールする。水素プラズマ処理の場合は、チャンバー内の基板1´に対して水素プラズマを作用させることにより行われる。ステップ12の還元処理は、-OH基を含む有機化合物を用いて行うこともできる。この場合は、次のステップ13の吸着工程と同時処理とすることができる。ただし、自然酸化膜が厚く形成されている場合には、水素アニール、水素プラズマ処理が好ましい。
【0037】
次に、第2級アルコールガスおよび/または第3級アルコールガスを絶縁膜52の第2の表面62に選択的に吸着させる(ステップ13、図4C)。このステップ13は、第1の実施形態のステップ2と同様に行うことができる。吸着により形成された有機層31は第1の実施形態と同様、選択的吸着性とブロッキング機能を有し、第2の表面62に選択的に吸着され、成膜の際に、第2の表面62への成膜をブロックする。本実施形態においても、第2級アルコールとして、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、2-ブタノールを用いることができ、第3級アルコールとしては、例えばターシャリブチルアルコール(2-メチル-2-プロパノール)、2-メチル-2-ブタノールを用いることができる。処理温度についても、第1の実施形態のステップ2と同様である。
【0038】
次に、少なくとも原料ガス(プリカーサ)を供給して、第1の表面61に選択的に膜41を形成する(ステップ14、図4D)。このステップ14の選択成膜性は、有機層31のブロッキング機能により実現される。このときの成膜は、第1の実施形態のステップ3と同様、原料ガス(プリカーサ)と反応ガス(リアクタント)との反応によってもよいし、原料ガス(プリカーサ)の熱分解によってもよい。プリカーサとリアクタントとの反応により成膜する場合は、ALDまたはCVDにより行うことができるが、ALDのほうが好ましい。プリカーサの分解反応により成膜する場合は、CVDにより行うことができる。このステップ14を実施する際のプリカーサ、リアクタント、およびこれらの組み合わせ、ならびに温度等は、第1の実施形態のステップ3と同様である。
【0039】
上記ステップ12~ステップ14は、真空雰囲気で行うことが好ましく、例えば、13~1333Paの範囲で行うことができる。また、ステップ12~ステップ14は同一のチャンバーで連続して行うことができる。ステップ12~ステップ14を同一のチャンバーで行う場合は、これらステップを同じ温度で行うことが好ましい。第1の実施形態のステップ2およびステップ3と同様、ステップ13およびステップ14は、2回以上交互に繰り返してもよい。
【0040】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様、IPAのような第2級アルコールガスや第3級アルコールガスといった一般的な有機化合物を選択的に吸着させて成膜をブロックするブロッキング材として機能させるという簡易な手法で、制約が少なく汎用性の高い選択成膜を実現できる。また、IPAのような第2級アルコールガスや第3級アルコールガスは吸着温度を低くすることができるのでCu等の金属膜が存在する場合に有利である。
【0041】
<実験例>
次に、実験例について説明する。
ここでは、エタノール、1-プロパノール、IPA、1-ブタノールのSiO配管上での分解特性を調査した。SiO配管を450℃で2時間のArガスベーキングを行った後、温度を上昇させながら各ガスを供給した。
【0042】
その際のIRスペクトルによる分析結果を図5~8に示す。エタノールの場合は、図5に示すように、150℃付近で脱水素が開始されてアセトアルデヒドが生成され、温度が上昇するに従いアセトアルデヒドの量が増加することが確認された。1-プロパノールの場合は、図6に示すように、同様に150℃付近で脱水素が開始されてプロパナールが生成され、温度が上昇するに従いプロパナールの量が増加することが確認された。1-ブタノールの場合は、図8に示すように、同様に150℃付近で脱水素が開始されてブタナールが生成され、温度が上昇するに従いブタナールの量が増加することが確認された。すなわち、ノルマルタイプのアルコール(第1級アルコール)であるエタノール、1-プロパノール、1-ブタノールの場合は、脱水素開始温度がいずれも150℃付近であり、脱水素によりアルデヒドが生成されることが確認された。
【0043】
これに対し、第2級アルコールであるIPAの場合は、図7に示すように、脱水素によりケトンであるアセトンが生成され、脱水素開始温度が100℃程度と他のガスと比較して低いことが確認された。すなわち、IPAの場合は、100℃という低温でIPAが分解してアセトンが生成され、表面に吸着して有機層が形成されることが確認された。
【0044】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0045】
例えば、上記実施の形態では、基体上に第1の膜(金属膜)および第2の膜(絶縁膜)を形成した基板を模式的に記載し(図2A図2C図4A図4D)、一般的な例について説明した。しかし、これに限らず種々のデバイスに適用することができ、第1の膜および第2の膜は、適用されるデバイスに応じて種々の形態をとることができる。また、上記実施形態では、2つの膜の表面の一方に選択的に膜形成する場合について説明したが、これに限らず、3つ以上の膜に対する選択成膜に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1,1´;基板
10;基体
11;第1の膜
12;第2の膜
21,61;第1の表面
22,62;第2の表面
31;吸着層
41;膜
51;金属膜
52;絶縁膜
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8