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特許7345995酸化チタン組成物、分散液、酸化チタン組成物を表面層に有する部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】酸化チタン組成物、分散液、酸化チタン組成物を表面層に有する部材
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/053 20060101AFI20230911BHJP
   C01B 39/24 20060101ALI20230911BHJP
   C01B 33/40 20060101ALI20230911BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
C01G23/053
C01B39/24
C01B33/40
A61L9/00 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020106170
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022001538
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋上 幹哉
(72)【発明者】
【氏名】井上 友博
(72)【発明者】
【氏名】古舘 学
【審査官】中村 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-136811(JP,A)
【文献】特開2000-210534(JP,A)
【文献】特開平10-286436(JP,A)
【文献】特開2005-095722(JP,A)
【文献】特表2010-508146(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102794078(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1544852(CN,A)
【文献】特開2001-058002(JP,A)
【文献】特開2009-226351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
C01B 33/00-33/46
C01B 39/00-39/54
C01G 23/00-23/09
B01D 53/00-53/96
F24F 8/00- 8/99
B32B 1/00-43/00
B05D 7/00- 7/26
C08J 7/00- 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン粒子と、
セピオライト及びアタパルジャイトの群から選択される少なくとも一種の成分Aと、
ハイシリカゼオライト及び疎水性シリカの群から選択される少なくとも一種の成分Bと、
水性分散媒と、
を含有してなり、
酸化チタン粒子に対する成分Aの質量の比が0.75~3.25であり、かつ
成分Aに対する成分Bの質量の比が0.25~3.0であり、
酸化チタン粒子の平均粒子径が5~30nmである酸化チタン組成物。
【請求項2】
成分Aがセピオライトであり、成分Bがハイシリカゼオライトである請求項1に記載の酸化チタン組成物。
【請求項3】
成分Bのハイシリカゼオライトの組成が、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)による元素の定量分析から算出されるSiO 2 /Al 2 3 比で30以上80以下である請求項2に記載の酸化チタン組成物。
【請求項4】
酸化チタン粒子の濃度が0.01~30質量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の酸化チタン組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の酸化チタン組成物により形成される表面層を有する部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪臭原因物質を吸着分解するための酸化チタン組成物、該組成物を含む分散液、酸化チタン組成物を表面層に有する部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の健康意識の高まりにより、生活空間の快適性に加え、「安全・安心」が求められており、生活関連製品や建築物から放出される有害な揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)や、汗臭、加齢臭、タバコ臭、生ゴミ臭などの生活に密接した不快なにおいの抑制のために、消臭効果を有する材料が求められている。
【0003】
消臭剤による臭気の消臭方法には、化学的消臭法、物理的消臭法などがあり、目的によって使い分けられている。化学的消臭法は、悪臭原因物質を消臭成分と化学反応させることで無臭化するもので、特定の悪臭原因物質に対して選択性の高い消臭が可能である。物理的消臭法は、悪臭原因物質を物理的な吸着により空気中から除去するもので、一つの吸着剤で複数の悪臭原因物質の吸着を同時に行うことが比較的容易である。この吸着剤としては、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ、チタニア、シクロデキストリンなどが使用されている。しかし、吸着剤による脱臭は、悪臭原因物質などで吸着平衡に達すると吸着能力が失われ、吸着剤の交換が必要である。
【0004】
光触媒による臭気の消臭方法は、悪臭原因物質の分解に基づくメカニズムのため、触媒そのものが変化することなく、常に新鮮な表面が保たれ、触媒を補充する必要がない。このような利点から、近年、光触媒で悪臭原因物質を分解する研究が盛んに行われている。しかしながら、一般的に光触媒は吸着能が低いため、消臭速度は緩慢であり、悪臭原因物質の濃度が低い場合は効率的に分解ができない。そのため、光触媒と吸着剤を複合化し、光触媒の吸着能を補う方法がある。
【0005】
特許文献1や特許文献2に記載の発明では、吸着剤としてセピオライトやシリカなどが使用されている。しかし、セピオライトやシリカなどの表面が親水性の吸着剤は、水との親和力が大きく、吸着剤が空気中の水分を吸着してしまい、一度吸着した悪臭原因物質を再び放出することが知られている。
【0006】
特許文献3や特許文献4に記載の発明では、吸着剤として疎水性であるハイシリカゼオライトを使用し、悪臭原因物質が再び放出されることを防いでいる。しかし、吸着剤表面が疎水性であることから親水基を有する気体の吸着能が低い。また、ハイシリカゼオライトは一般的に水への分散性が低く、水性分散液中の粒子の分散安定性が低くなるため、均一な組成物の形成が難しく、組成物の強度が低下しうる。
【0007】
特許文献5に記載の発明では、数多くの悪臭原因物質に対して優れた吸着能を有する活性炭を使用しているが、吸着剤である活性炭が光触媒機能の発揮に必要な光を吸収し、光触媒による悪臭原因物質の分解を阻害するため、光触媒との複合は適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-259003号公報
【文献】特開2002-136811号公報
【文献】特開2008-272651号公報
【文献】特開2018-158316号公報
【文献】特開2003-225572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、悪臭原因物質に対して高い分解力を有し、水分の吸着による悪臭原因物質の再放出が少なく、粒子の分散安定性に優れた酸化チタン組成物、及び酸化チタン組成物を表面に有する部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を行った結果、酸化チタン粒子と、成分A(セピオライト等)と、成分B(ハイシリカゼオライト等)との3種類の粒子を所定の割合で含有するものが、悪臭原因物質に対して高い分解性を示し、水分の吸着による悪臭原因物質の再放出を抑制し、さらに、その分散液は粒子の分散安定性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
[1]
酸化チタン粒子と、
セピオライト及びアタパルジャイトの群から選択される少なくとも一種の成分Aと、
ハイシリカゼオライト及び疎水性シリカの群から選択される少なくとも一種の成分Bと、を含有してなり、
酸化チタン粒子に対する成分Aの質量の比が0.75~3.25であり、かつ
成分Aに対する成分Bの質量の比が0.25~3.0である酸化チタン組成物。
[2]
成分Aがセピオライトであり、成分Bがハイシリカゼオライトである[1]に記載の酸化チタン組成物。
[3]
酸化チタン粒子の平均粒子径が5~30nmである[1]又は[2]に記載の酸化チタン組成物。
[4]
更に、水性分散媒を含む[1]~[3]のいずれか1項に記載の酸化チタン組成物。
[5]
[1]~[3]のいずれか1項に記載の酸化チタン組成物を表面に有する部材。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組成物は、酸化チタン粒子と、成分A(セピオライト等)と、成分B(ハイシリカゼオライト等)との3種類の粒子を所定の割合で含有してなり、悪臭原因物質に対してこれまで以上に高い分解性を示し、水分の吸着による悪臭原因物質の再放出を抑制する。
さらに本発明の分散液は、酸化チタン粒子と、成分A(セピオライト等)と、成分B(ハイシリカゼオライト等)との3種類の粒子を所定の割合で含有してなり、粒子の分散安定性に優れることから、塗工時の作業性に優れ、さらに組成物の強度低下を抑制する。
したがって、本発明の酸化チタン組成物を表面に有する部材により、生活関連製品や建築物から放出される有害な揮発性有機化合物(VOC)や、汗臭、加齢臭、タバコ臭、生ゴミ臭などの生活に密接した不快なにおいの抑制などの効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき詳しく説明する。
【0014】
<酸化チタン粒子>
酸化チタン粒子の結晶相としては、通常、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型の3つが知られているが、主として、アナターゼ型又はルチル型のものを使用することが好ましい。なお、ここでいう「主として」とは、酸化チタン粒子結晶全体のうち、通常50質量%以上をいい、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0015】
酸化チタン粒子としては、その悪臭原因物質分解性能を高めるために、酸化チタン粒子に、白金、金、銀、パラジウム、鉄、銅、亜鉛、ニッケルなどの金属化合物を担持させたものや、錫、窒素、硫黄、炭素、遷移金属などの元素をドープさせたものを使用することもでき、更に光触媒用酸化チタンも使用することができる。
光触媒用酸化チタンを使用すると、光が照射された時に悪臭原因物質分解性能がより強く得られるため、より好ましい。
光触媒用酸化チタンは一般的な光触媒酸化チタンであり、さらには400~800nmの可視光に応答するように設計された可視光応答型光触媒酸化チタンであることが好ましい。
【0016】
ここで、本明細書における悪臭原因物質とは、例えばアンモニア、酢酸、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、酢酸エチル、エチレン、ベンゼン、アセトン、ピリジン、イソ吉草酸、ノネナール、インドール等の臭気成分等を含む。
【0017】
酸化チタン粒子は、レーザー光を用いた動的光散乱法により測定される体積基準の50%累積分布径D50(以下、「平均粒子径」ということがある。)が、5~30nmであることが好ましく、より好ましくは5~20nmである。これは、平均粒子径が、5nm未満の場合、消臭性能が不十分になることがあり、30nm超過の場合、水性分散媒に分散した場合その分散液が不透明となることがあるためである。なお、平均粒子径を測定する装置としては、例えば、ELSZ-2000ZS(大塚電子(株)製)、ナノトラックUPA-EX150(日機装(株)製)、LA-910(堀場製作所(株)製)等を使用することができる。
【0018】
<成分A>
成分Aは、セピオライト及びアタパルジャイトの群から選択される少なくとも一種類であり、1種単独で用いても複数種を併用してもよい。
セピオライトは、含水ケイ酸マグネシウムからなる表面に多数の活性水酸基を有する粘土性鉱物である。タルクのような二次元の結晶構造とは異なり、セピオライトは三次元の鎖状構造である2:1リボン構造をとる。本発明では、セピオライトの他に、セピオライトと類似した構造を持つホルマイト系粘土鉱物であるアタパルジャイト(マグネシウム-アルミニウムケイ酸( Mg,Al)2Si410(OH)・6H2Oの鎖構造塩;CAS登録番号:12174-11-7)を用いてもよく、好ましくはセピオライトを使用することがよい。
成分Aの比表面積は100m2/g以上1000m2/g以下、より好ましくは120m2/g以上500m2/g以下であることが悪臭原因物質の吸着、分解率の点で好ましく、また、その形状において何ら限定されるものではなく、繊維状のほか、塊状、粒状のいずれも用いることができる。なお、比表面積はガス吸着法により測定した値である。
【0019】
<成分B>
成分Bは、ハイシリカゼオライト及び疎水性シリカの群から選択される少なくとも一種であり、1種単独で用いても複数種を併用してもよい。
ハイシリカゼオライトの組成は、アルミナよりもシリカの割合が多い結晶性含水アルミのシリケートであり、ハイシリカゼオライトは結晶内部の空洞が疎水性となっている。一般的にSiO2/Al23比が重量換算で10以上のゼオライトをハイシリカゼオライトと称している。ハイシリカゼオライトの一般式はA2/nO・Al23z・xSiO2・yH2O(A=Na、Ca、Kなどの金属カチオン,n=原子価))で表され、ゼオライト骨格のSiO2/Al23比が低い場合は親水性が強く、SiO2/Al23比が高い場合は疎水性が強く現れる。その分かれ目は一般的には約30といわれるため、成分Bとして使用するハイシリカゼオライトのSiO2/Al23比は30以上80以下が好ましい。なお、SiO2/Al23比は誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)による元素の定量分析から算出することができる。
ハイシリカゼオライト中に存在する交換可能な水素イオンを銅イオン等の金属イオンで交換したものを成分Bとして用いてもよい。本発明では、成分Bとしてハイシリカゼオライトと同様に吸着材表面が疎水性である疎水性シリカなどを用いてもよく、好ましくはハイシリカゼオライトを用いることがよい。
疎水性シリカとは、トリメチルシリル化剤を用いて疎水化処理を行った酸化ケイ素化合物である。成分Bとして使用する疎水性シリカの疎水化度は20以上が好ましく、疎水化度は高いほどよく、上限値は特に限定されない。なお、本明細書における疎水化度は、水とメタノールの混合溶液に処理粉体が膨潤し始めるメタノール容量%で表示される濃度であり、以下の条件で測定したものを指す。
<疎水化度の測定方法>
200mLのビーカーに純水50mLを入れ、サンプル0.2gを加え、マグネットスターラーで攪拌する。メタノールを入れたビュレットの先端を液中に入れ、攪拌下でメタノールを滴下し、サンプルが完全に水中に分散するまでに要したメタノール添加量をYmLとしたとき、次式で得られる。
疎水化度M={Y/(50+Y)}×100
また、成分Bの平均粒子径は50μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。これは平均粒子径が50μmより大きくなると分散液中での粒子の分散安定性が低下するとともに、組成物の強度の低下が懸念されるためである。なお、平均粒子径はレーザー光を用いた動的光散乱法により測定されるものである。
【0020】
<酸化チタン組成物>
本発明の酸化チタン組成物は、酸化チタン粒子と成分Aと成分Bとを含有してなり、酸化チタン粒子に対する成分Aの質量の比が0.75~3.25であり、かつ成分Aに対する成分Bの質量の比が0.25~3.0である組成物である。
酸化チタン粒子に対する成分Aの質量の比が0.75より小さくなると悪臭原因物質への吸着効果が十分に得られず、悪臭原因物質の分解率が低下し、3.25より大きくなると酸化チタンの光触媒活性の発揮に必要な光の進行を妨げ、悪臭原因物質の分解率が低下するとともに、水分の吸着による悪臭原因物質の再放出が無視できなくなり好ましくない。また、成分Aに対する成分Bの質量の比が0.25よりも小さくなると悪臭原因物質への吸着効果が十分に得られず、悪臭原因物質の分解率が低下し、3.0よりも大きくなると酸化チタンの光触媒活性の発揮に必要な光の進行を妨げ、悪臭原因物質の分解率が低下し好ましくない。悪臭原因物質への吸着効果および悪臭原因物質の分解率向上の観点から、成分Aに対する成分Bの質量の比は1.25~2.5がより好ましい。
【0021】
<酸化チタン分散液>
本発明の酸化チタン組成物の一態様として、上記酸化チタン粒子、成分A及び成分Bに加えて、更に水性分散媒を含有する酸化チタン組成物(酸化チタン分散液)も挙げられる。本発明の酸化チタン分散液は粒子の分散安定性に優れるため、後述する部材に適用する場合に均一な酸化チタンの表面層を形成できる。したがって、酸化チタン分散液として使用することが好ましい。
【0022】
酸化チタン分散液の水性分散媒としては、通常、水性溶媒が使用され、水を用いることが好ましいが、水と混合可能な水溶性有機溶媒、水と水溶性有機溶媒とを任意の割合で混合した混合溶媒を用いてもよい。水としては、例えば、脱イオン水、蒸留水、純水等が好ましい。また、水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル等のグリコールエーテル類が好ましい。水性分散媒は、これらの1種又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。混合溶媒を用いる場合には、混合溶媒中の水溶性有機溶媒の割合が0質量%より多く、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
本発明の酸化チタン分散液は、酸化チタン粒子と成分Aと成分Bとを含有してなり、酸化チタン粒子に対する成分Aの質量の比が0.75~3.25であり、かつ成分Aに対する成分Bの質量の比が0.25~3.0である分散液である。
酸化チタン粒子に対する成分Aの質量の比が0.75より小さくなると分散液の分散安定性が悪く、組成物の強度の低下が懸念され、3.25より大きくなると組成物の悪臭原因物質の分解率が低下し好ましくない。また、成分Aに対する成分Bの質量の比が0.25よりも小さくなると組成物の悪臭原因物質の分解率が低下し、3.0よりも大きくなると分散液中の粒子の分散安定性が悪く、組成物の強度の低下が懸念され好ましくない。悪臭原因物質への吸着効果、悪臭原因物質の分解率向上および分散液中の粒子の分散安定性の観点から、成分Aに対する成分Bの質量の比は1.25~2.5がより好ましい。
【0023】
酸化チタン分散液中の酸化チタン粒子の濃度は、後述される所要の厚さの酸化チタン組成物(表面層)の作製し易さの観点から、0.01~30質量%が好ましく、特に0.5~20質量%が好ましい。
【0024】
本発明の酸化チタン組成物の製造方法は、酸化チタン粒子、成分A及び成分Bを上述した比となるように混合すればよく、特に限定されない。
また、さらに水性分散媒を含有する酸化チタン組成物の場合は、酸化チタン粒子分散液、成分A及び成分Bを上述した比となるように混合すればよい。特に限定されないが、水性分散媒を含有する酸化チタン組成物の製造方法は、過酸化チタンなどの酸化チタン前駆体水溶液を水熱処理で結晶成長させ、得られた酸化チタン粒子分散液に成分A、成分Bを添加することが好ましい。
【0025】
<酸化チタンを含有した表面層を有する部材>
上記の酸化チタン分散液は、部材の表面に悪臭原因物質の分解性を持つ組成物を形成させる目的で使用することができる。部材は、それぞれの目的、用途に応じた様々な形状を有することができる。
【0026】
ここで、本明細書における部材とは、例えば、建築物の壁材、壁紙、天井材、床材、タイル、レンガ、木板、樹脂板、金属板、畳、浴室材等の室内の建築材;自動車や電車等の壁材、天井材、床材、シート、手すり、つり革等の車内の内装材;カーテン、ブラインド、敷物、間仕切り板、ガラス、鏡、フィルム、机、椅子、ベッド、収納棚等の家具や生活関連製品;脱臭フィルター、空気清浄器、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、パソコン、プリンター、タブレット、タッチパネル、電話機等の家電製品等が挙げられ、特に脱臭フィルターなどが適している。
【0027】
ここで、部材の材料としては、例えば、有機材料、無機材料が挙げられる。
【0028】
有機材料としては、例えば、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、ポリアセタール、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルイミド(PEEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド樹脂(PA)、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂等の合成樹脂材料;天然ゴム等の天然材料;及び上記合成樹脂材料と天然材料との半合成材料が挙げられる。これらは、フィルム、シート、繊維材料、繊維製品、その他の成型品、積層体等の所要の形状、構成に加工されていてもよい。
【0029】
無機材料としては、例えば、非金属無機材料、金属無機材料が包含される。
非金属無機材料としては、例えば、ガラス、セラミック、石材、石膏等が挙げられる。これらは、タイル、硝子、ミラー、壁、フィルター、意匠材等の様々な形に加工されていてもよい。
金属無機材料としては、例えば、鋳鉄、鋼材、鉄、鉄合金、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、窒化アルミニウム、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、粘土鉱物、アルミナ、チタニア、シリカ、ニッケル、ニッケル合金、亜鉛ダイキャスト等が挙げられる。これらは、上記金属無機材料のメッキが施されていてもよいし、上記有機材料が塗布されていてもよいし、上記有機材料又は非金属無機材料の表面に施すメッキであってもよい。
【0030】
部材表面に酸化チタン組成物を形成する方法としては、酸化チタン分散液を、例えば、上記部材の表面に、スプレーコート、フローコート、ディップコート、スピンコート、メイヤーバーコート、リバースロールコート、グラビアコート、ナイフコート、キスコート、ダイコートなどの方法により塗布した後、乾燥したり、フィルム転写したりする方法が挙げられる。
【0031】
塗布後の乾燥温度は塗布対象部材により種々定され得るが、好ましくは0~1000℃、より好ましくは10~800℃、更に好ましくは20~700℃である。これは、0℃未満の場合、前記分散液及び/又はコーティング液が凍結して使用できなくなるおそれがある。600℃以上でセピオライトやゼオライトの結晶水が完全に脱水するため、700℃より高い温度での焼結は不経済であるばかりか、組成物の強度も低下しやすいことがある。
【0032】
塗布後の乾燥時間は塗布方法、乾燥温度により適宜選定され得るが、好ましくは10分~72時間、より好ましくは20分~48時間である。これは、10分未満の場合、部材表面への組成物の定着が不十分となることがあり、3日超過の場合、製造における経済性が悪く好ましくないためである。
【0033】
上記の部材表面の組成物(表面層)の厚さは適宜選定され得るが、好ましくは100nm~50μm、より好ましくは200nm~50μm、更に好ましくは500nm~30μmである。これは、上記層厚が100nm未満の場合、悪臭原因物質の分解性が不十分となることがあり、50μm超過の場合、部材の表面から表面層が剥離し易くなることがあるためである。
【実施例
【0034】
以下に、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本発明における性能試験は次のようにして行った。
【0035】
(1)酸化チタン分散液の50%累積分布径(D50
酸化チタン分散液のD50は、粒度分布測定装置(ELSZ-2000ZS(大塚電子(株)製))を使用して、レーザー光を用いた動的光散乱法により測定される体積基準の50%累積分布径として算出した。
【0036】
(2)アセトアルデヒドガスの再放出試験
評価用サンプルを1Lガスバッグに入れ、ガスバッグの中に100ppm濃度のアセトアルデヒドガス300mLを注入し、45分間静置後、吸着平衡に達したものとし、アセトアルデヒドガス濃度を測定した。吸着平衡後のサンプルを取り出し、新しい1Lガスバッグに入れ、ガスバッグの中に相対湿度100%の空気300mLを注入した。15分間静置後、評価用サンプルから放出したアセトアルデヒドの濃度を測定した。再放出されたアセトアルデヒドの割合を式1によって算出した。この時、1Lガスバッグは1つ口コック付テドラーバッグ(アズワン(株))を使用し、アセトアルデヒドのガス濃度はアセトアルデヒド検知管92L(株式会社ガステック)を使用し測定をし、次の基準で評価した。
・良好(〇と表示)・・・再放出されたアセトアルデヒドの割合が5%未満
・やや不良(△と表示)・・・再放出されたアセトアルデヒドの割合が5~10%
・不良(×と表示)・・・再放出されたアセトアルデヒドの割合が10%超
式1:再放出されたアセトアルデヒドの割合[%]=再放出されたアセトアルデヒド濃度/(初期濃度-吸着平衡時のアセトアルデヒド濃度)×100
【0037】
(3)アセトアルデヒドガス分解性能評価試験
吸着平衡に達した評価用サンプルを1Lガスバッグに入れ、ガスバッグ内に20ppm濃度のアセトアルデヒドガス700mLを注入し、初期のアセトアルデヒドガス濃度を測定した。2.0(mW/cm2)の紫外線を20分間照射後、アセトアルデヒドのガス濃度の測定を行った。試験光源にはUVLEDランプ(商品型番“HLDL-600X480U6-PSC”シーシーエス(株))を使用した。悪臭ガスの分解率は式2により算出し、次の基準で評価した。
・良好(〇と表示)・・・分解率が90%超
・やや不良(△と表示)・・・分解率が70~90%
・不良(×と表示)・・・分解率が70%未満
式2:分解率[%]=(初期濃度-残存濃度)/初期濃度×100
【0038】
(4)酸化チタン分散液の分散安定性評価
調製した酸化チタン分散液の分散安定性の測定は多検体・分散安定性評価粒子分布測定装置(日本ルフト社製、LUMiSiZER610)を使用した。LUMiSiZERは調製した酸化チタン分散液0.4mLを、セル(日本ルフト社製、PC2mm各セル)に入れ、サイクル設定パラメーターは、2500rpm、300プロファイル、測定間隔10秒、25℃、光係数1に設定した。測定位置115mmにおける遠心分離開始60秒後の透過度を測定し、次の基準で評価した。
・良好(〇と表示)・・・遠心分離開始60秒後の測定位置115mmにおける透過度0~50%未満
・不良(×と表示)・・・遠心分離開始60秒後の測定位置115mmにおける透過度50%以上
【0039】
(5)総合評価
アセトアルデヒドガス再放出試験、アセトアルデヒドガス分解性能評価試験、及び酸化チタン分散液の分散安定性評価試験の結果から次の基準で総合的に評価した。
・非常に良好(Aと表示)・・・各評価の合計点数が6点
・良好(Bと表示)・・・各評価の合計点数が5点
・やや不良(Cと表示)・・・各評価の合計点数が3~4点
・不良(Dと表示)・・・各評価の合計点数が0~2点
〇・・・2点、△・・・1点、×・・・0点として計算
【0040】
<酸化チタン粒子分散液の調製>
[製造例1]
36質量%の塩化チタン(IV)水溶液を純水で10倍に希釈した後、10質量%のアンモニア水を徐々に添加して中和、加水分解することにより水酸化チタンの沈殿物を得た。このときの溶液のpHは8であった。得られた水酸化チタンの沈殿物を、純水の添加とデカンテーションを繰り返して脱イオン処理した。この脱イオン処理後の水酸化チタン沈殿物に過酸化水素/水酸化チタン(モル比)が10となるように35質量%過酸化水素水を添加し、その後60℃で2時間して十分に反応させ、ペルオキソチタン酸溶液(1a)(固形分濃度1質量%)を得た。
容積500mLのオートクレーブに、ペルオキソチタン溶液(1a)400mL仕込み、これを150℃の条件下、90分間水熱処理し、その後、純水を添加して濃度調整を行うことにより、酸化チタン粒子(1A)の分散液(固形分濃度2.0質量%)を得た。
分散液中の酸化チタン粒子のD50は18nmであった。
【0041】
[実施例1]
<酸化チタン分散液の調製>
酸化チタン粒子分散液(1A)20mLとセピオライト(楠本化成(株)PANGEL AD:Si12Mg830(OH)4(OH24・8H2O (CAS63800-37-3))0.8gとハイシリカゼオライト (ユニオン昭和(株)USKY-700)1.0gを混合分散させて、酸化チタン分散液を得た。分散液の組成を表1に示し、使用した材料の平均粒子径および比表面積を表2に示す。
【0042】
<評価用サンプルの作製>
プラズマ表面処理を施したPETフィルム(東レ(株)ルミラーT60)に酸化チタン分散液をバーコーター(第一理化(株)No.7)で厚さが16.0μmになるように塗布した。80℃に設定したオーブンで30分間乾燥させて、塗工部を10cm角に切り取り、フィルム上に酸化チタン組成物を形成した評価サンプルを得た。
得られた評価サンプルについてアセトアルデヒドガス再放出試験(表3)、アセトアルデヒドガス分解性能評価試験(表4)を行い、結果を各表に示す。
また、酸化チタン分散液について分散安定性評価試験(表5)を行い、結果を表に示す。さらに、総合評価を表6に示す。
【0043】
[実施例2]
酸化チタン粒子分散液(1A)20mLにセピオライト(楠本化成(株)PANGEL AD)0.4gとハイシリカゼオライト(ユニオン昭和(株)USKY-700)0.5gを混合分散させて、酸化チタン分散液を得たこと以外は実施例1と同様に評価した(表1)。得られた酸化チタン分散液又は評価サンプルについて、アセトアルデヒドガス再放出試験(表3)、アセトアルデヒドガス分解性能評価試験(表4)、分散安定性試験(表5)を行い、結果を各表に示す。また総合評価を表6に示す。
【0044】
[実施例3]
酸化チタン粒子分散液(1A)20mLにセピオライト(楠本化成(株)PANGEL AD)1.2gとハイシリカゼオライト(ユニオン昭和(株)USKY-700)1.5gを混合分散させて、酸化チタン分散液を得たこと以外は実施例1と同様に評価した(表1)。得られた酸化チタン分散液又は評価サンプルについて、アセトアルデヒドガス再放出試験(表3)、アセトアルデヒドガス分解性能評価試験(表4)、分散安定性試験(表5)を行い、結果を各表に示す。また総合評価を表6に示す。
【0045】
[実施例4]
酸化チタン粒子分散液(1A)20mLにセピオライト(楠本化成(株)PANGEL AD)0.8gとハイシリカゼオライト(ユニオン昭和(株)USKY-700)0.4gを混合分散させて、酸化チタン分散液を得たこと以外は実施例1と同様に評価した(表1)。得られた酸化チタン分散液又は評価サンプルについて、アセトアルデヒドガス再放出試験(表3)、アセトアルデヒドガス分解性能評価試験(表4)、分散安定性試験(表5)を行い、結果を各表に示す。また総合評価を表6に示す。
【0046】
[実施例5]
酸化チタン粒子分散液(1A)20mLにセピオライト(楠本化成(株)PANGEL AD)0.8gとハイシリカゼオライト(ユニオン昭和(株)USKY-700)2.0gを混合分散させて、酸化チタン分散液を得たこと以外は実施例1と同様に評価した(表1)。得られた酸化チタン分散液又は評価サンプルについて、アセトアルデヒドガス再放出試験(表3)、アセトアルデヒドガス分解性能評価試験(表4)、分散安定性試験(表5)を行い、結果を各表に示す。また総合評価を表6に示す。
【0047】
[実施例6]
酸化チタン粒子分散液(1A)20mLにセピオライト(楠本化成(株)PANSIL)0.8gとハイシリカゼオライト(ユニオン昭和(株)USKY-700)2.0gを混合分散させて、酸化チタン分散液を得たこと以外は実施例1と同様に評価した(表1)。得られた酸化チタン分散液又は評価サンプルについて、アセトアルデヒドガス再放出試験(表3)、アセトアルデヒドガス分解性能評価試験(表4)、分散安定性試験(表5)を行い、結果を各表に示す。また総合評価を表6に示す。
【0048】
[実施例7]
酸化チタン粒子分散液(1A)20mLにアタパルジャイト(BASF Attagel40)0.8gとハイシリカゼオライト(ユニオン昭和(株)USKY-700)2.0gを混合分散させて、酸化チタン分散液を得たこと以外は実施例1と同様に評価した(表1)。得られた酸化チタン分散液又は評価サンプルについて、アセトアルデヒドガス再放出試験(表3)、アセトアルデヒドガス分解性能評価試験(表4)、分散安定性試験(表5)を行い、結果を各表に示す。また総合評価を表6に示す。
【0049】
[実施例8]
酸化チタン粒子分散液(1A)20mLにセピオライト(楠本化成(株)PANGEL AD)0.8gと疎水性シリカ(旭化成ワッカーシリコーン(株)HDK(登録商標)H30、M値52)2.0gを混合分散させて、酸化チタン分散液を得たこと以外は実施例1と同様に評価した(表1)。得られた酸化チタン分散液又は評価サンプルについて、アセトアルデヒドガス再放出試験(表3)、アセトアルデヒドガス分解性能評価試験(表4)、分散安定性試験(表5)を行い、結果を各表に示す。また総合評価を表6に示す。
【0050】
[実施例9]
酸化チタン粒子分散液(1A)20mLにセピオライト(楠本化成(株)PANGEL AD)1.2gとハイシリカゼオライト(ユニオン昭和(株)USKY-700)3.0gを混合分散させて、酸化チタン分散液を得たこと以外は実施例1と同様に評価した(表1)。得られた酸化チタン分散液又は評価サンプルについて、アセトアルデヒドガス再放出試験(表3)、アセトアルデヒドガス分解性能評価試験(表4)、分散安定性試験(表5)を行い、結果を各表に示す。また総合評価を表6に示す。
【0051】
[実施例10]
酸化チタン粒子分散液(1A)20mLにセピオライト (楠本化成(株)PANGEL AD)0.4gとハイシリカゼオライト (ユニオン昭和(株)USKY-700)0.2gを混合分散させて、酸化チタン分散液を得たこと以外は実施例1と同様に評価した(表1)。得られた酸化チタン分散液又は評価サンプルについて、アセトアルデヒドガス再放出試験(表3)、アセトアルデヒドガス分解性能評価試験(表4)、分散安定性試験(表5)を行い、結果を各表に示す。また総合評価を表6に示す。
【0052】
[比較例1]
酸化チタン粒子分散液(1A)20mLにセピオライト(楠本化成(株)PANGEL AD)0.2gとハイシリカゼオライト(ユニオン昭和(株)USKY-700)0.5gを混合分散させて、酸化チタン分散液を得たこと以外は実施例1と同様に評価した(表1)。得られた酸化チタン分散液又は評価サンプルについて、アセトアルデヒドガス再放出試験(表3)、アセトアルデヒドガス分解性能評価試験(表4)、分散安定性試験(表5)を行い、結果を各表に示す。また総合評価を表6に示す。
【0053】
[比較例2]
酸化チタン粒子分散液(1A)20mLにセピオライト(楠本化成(株)PANGEL AD)1.4gとハイシリカゼオライト(ユニオン昭和(株)USKY-700)0.7gを混合分散させて、酸化チタン分散液を得たこと以外は実施例1と同様に評価した(表1)。得られた酸化チタン分散液又は評価サンプルについて、アセトアルデヒドガス再放出試験(表3)、アセトアルデヒドガス分解性能評価試験(表4)、分散安定性試験(表5)を行い、結果を各表に示す。また総合評価を表6に示す。
【0054】
[比較例3]
酸化チタン粒子分散液(1A)20mLにセピオライト(楠本化成(株)PANGEL AD)0.8gとハイシリカゼオライト(ユニオン昭和(株)USKY-700)0.1gを混合分散させて、酸化チタン分散液を得たこと以外は実施例1と同様に評価した(表1)。得られた酸化チタン分散液又は評価サンプルについて、アセトアルデヒドガス再放出試験(表3)、アセトアルデヒドガス分解性能評価試験(表4)、分散安定性試験(表5)を行い、結果を各表に示す。また総合評価を表6に示す。
【0055】
[比較例4]
酸化チタン粒子分散液(1A)20mLにセピオライト(楠本化成(株)PANGEL AD)0.8gとハイシリカゼオライト(ユニオン昭和(株)USKY-700)2.8gを混合分散させて、酸化チタン分散液を得たこと以外は実施例1と同様に評価した(表1)。得られた酸化チタン分散液又は評価サンプルについて、アセトアルデヒドガス再放出試験(表3)、アセトアルデヒドガス分解性能評価試験(表4)、分散安定性試験(表5)を行い、結果を各表に示す。また総合評価を表6に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
実施例1~10から分かるように、酸化チタン粒子に対する成分Aの質量の比が0.75~3.25であり、かつ成分Aに対する成分Bの質量の比が0.25~3.0である酸化チタン組成物は、悪臭原因物質の分解性に優れ、一度吸着した悪臭原因物質を再び放出しがたく、また、その分散液は粒子の分散安定性に優れる。
【0063】
実施例6から分かるように、比表面積の異なるセピオライトを用いた場合でも、悪臭原因物質の分解性に優れ、一度吸着した悪臭原因物質を再放出しがたく、また、その分散液は粒子の分散安定性に優れる。
【0064】
実施例7から分かるように、アタパルジャイトを用いた場合でも、悪臭原因物質の分解性に優れ、一度吸着した悪臭原因物質を再放出しがたく、また、その分散液は粒子の分散安定性に優れる。
【0065】
実施例8から分かるように、疎水性シリカを用いた場合でも、悪臭原因物質の分解性に優れ、一度吸着した悪臭原因物質を再放出しがたく、また、その分散液は粒子の分散安定性に優れる。
【0066】
比較例1から分かるように、組成物中の成分A量が少ない場合、吸着剤から得られる効果が小さいため、悪臭原因物質の分解性が低く、さらに分散液の粒子の分散安定性が悪い。
【0067】
比較例2から分かるように、組成物中の成分A量が過剰な場合、成分Aに吸着したアセトアルデヒドが再び放出されやすい。
【0068】
比較例3から分かるように、組成物中の成分B量が少ない場合、アセトアルデヒドへの吸着力が弱いため、アセトアルデヒドの分解性が低く、さらに、一度吸着したアセトアルデヒドを再び放出する割合が大きい。
【0069】
比較例4から分かるように、組成物中の成分B量が過剰な場合、分散液の粒子の分散安定性は低下する。
【0070】
以上の結果から、本発明の組成物は悪臭原因物質を効率的に分解可能であり、悪臭原因物質の再放出を抑制し、その分散液は粒子の分散安定性に優れる。