IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太陽ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】エッチングレジスト組成物
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20230911BHJP
   C08L 95/00 20060101ALI20230911BHJP
   C08L 23/28 20060101ALI20230911BHJP
   C08L 15/02 20060101ALI20230911BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20230911BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20230911BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
C03C15/00 D
C08L95/00
C08L23/28
C08L15/02
C08L15/00
C08K3/30
H01L21/308 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019036475
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2019172971
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2018062179
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】西尾 一則
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 俊春
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-139039(JP,A)
【文献】特開2016-017021(JP,A)
【文献】特開2005-064326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 95/00
C08L 23/00-23/36
C08L 7/00-21/02
C08K 3/00-13/08
H01L 21/302
H01L 21/306-21/308
C03C 15/00-23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムのいずれか少なくとも一種と、
(B)環化ゴムと、
(C)有機溶剤と、
(D)無機フィラーとしての硫酸バリウムと、
を含むことを特徴とするエッチングレジスト組成物。
【請求項3】
ガラスのエッチングに用いられることを特徴とする請求項1または2に記載のエッチングレジスト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱乾燥型エッチングレジスト組成物、特にガラスエッチングに用いられる熱乾燥型エッチング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や、携帯情報端末、カーナビゲーションシステムを始め、様々な電子機器の操作部に採用されているタッチパネル型入力装置(以下、単に「タッチパネル」ともいう)や、光学材料、計測器等のガラス基板の加工には、ガラス基板表面の比較的浅い溝の形成や段彫り等のみならず、穿孔または貫通孔形成のための穴開加工や、ガラス厚の約50%までを腐食させる、いわゆるザグリ加工を行う要求がある。
【0003】
従来、ザグリ加工はドリル等を用いた機械加工で行われてきた。近年、タッチパネル等の軽薄短小化に伴い、加工する穴径を微細化するという要求があり、機械加工では、加工した穴にバリが発生したり、ドリル径を小さくすることにも限界があることから、これらの要求に耐えられなくなりつつあるという指摘があった。そのため、穴径が微細になっても対応可能なエッチングによるザグリ加工が求められるようになってきた。
【0004】
ガラスエッチングが可能なエッチングレジストとしては、これまでに多くの提案がなされているが、エッチング液として用いられるフッ化水素酸や、フッ化水素酸と強酸との混合物はレジストに対する浸透性も強く、通常のスクリーン印刷で得られる膜厚のレジストでは、充分なエッチング耐性が得られない場合が多い。
【0005】
これに対して、エッチング耐性を向上させるため、アスファルトと、シリカ粉末と、有機溶剤とを含有するエッチングレジスト組成物に関する発明が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
このような提案にかかるエッチングレジスト組成物によれば、確かにエッチング耐性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-17021号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したザグリ加工のようにガラス厚に対して深い浸食を行う場合には、レジストにより被覆されたガラスを浸透性の強いフッ酸等のエッチング液に60分を超えて長時間浸漬することが必要となり、エッチング液のレジストへの染み込み・潜り込みが生じ、場合によってはレジストの剥がれ等の不具合が生じるおそれがあるという新たな懸念がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ザグリ加工のようにガラス厚に対して深い浸食を行う場合でもエッチングレジストのガラス基板等の基材に対する密着性に優れ、フッ酸や水酸化ナトリウム等の強塩基を含むアルカリ水溶液又は硝酸、硫酸、塩酸等の強酸を含むエッチング液における長時間の浸漬に耐え得る、優れた耐薬品性を与えるエッチングレジスト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、本発明の上記目的が、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムのいずれか少なくとも一種と、
(B)環化ゴムと、
(C)有機溶剤と、
を含むことを特徴とするエッチングレジスト組成物により達成されることを見出した。
【0011】
本発明のエッチングレジスト組成物は、(B)環化ゴムを、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムのいずれか少なくとも一種の総量100質量部に対して15から50質量部含むことが好ましい。
【0012】
さらに、本発明のエッチングレジスト組成物は、(D)無機フィラーを含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明のエッチングレジスト組成物は、ガラスのエッチングに用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエッチングレジスト組成物は、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムのいずれか少なくとも一種と、(B)環化ゴムと、(C)有機溶剤と、を含むことにより、基材への密着性に優れ、フッ酸や水酸化ナトリウム等の強塩基を含むアルカリ水溶液又は硝酸、硫酸、塩酸等の強酸を含むエッチング液に対し長時間にわたる耐性(耐薬品性)を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、詳細に説明する。
【0016】
本発明のエッチングレジスト組成物(以下、レジスト組成物ともいう)は、基体をエッチング加工から保護するための組成物であり、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムのいずれか少なくとも一種と、(B)環化ゴムと、(C)有機溶剤と、をと含有し、熱により乾燥して(熱乾燥型)レジストを構成する。
【0017】
すなわち、本発明のエッチングレジスト組成物は、所定の基板(処理対象)、例えば、特にソーダガラス(ソーダライムガラス)、クリスタルガラス、硼珪酸ガラス等のガラスに対し、所定のパターン状にスクリーン印刷等により塗布される。その後、エッチングレジストによりパターン上に被覆された基板は、所定時間加熱される。これにより熱乾燥したエッチングレジストは、エッチング処理の際の基板の保護膜(レジスト)となる。
【0018】
本発明のエッチングレジスト組成物は、スクリーン印刷等の印刷適性を有するほか、基材に対する密着性が高く、優れた耐薬品性を有するため、穴開加工やザグリ加工に要求される過酷な条件下でのエッチングにおいても、エッチング液が基材とレジストとの間やレジストに染み込み・潜り込む可能性が抑制され、レジストの基材からの一部または全体的な剥離も極めて生じにくい。
【0019】
これにより、レジストのパターンに忠実な、高い精度で基材のエッチング加工が行われるため、本発明のエッチングレジストを用いて得られた基材は解像度が極めて優れている。
【0020】
以下、本発明のエッチングレジスト組成物の成分を説明する。
【0021】
[(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムのいずれか少なくとも一種]
本発明のエッチングレジスト組成物は、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムのいずれか少なくとも一種を含む。すなわち、(A)成分として、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムの一種類を用いるか、これらのうちの2種類以上の混合物を用いることができる。
【0022】
本発明に用いられる(A1)アスファルトとしては、スレートアスファルトまたはブローンアスファルト等の石油アスファルト、レイクアスファルト、ロックアスファルト、オイルサンドアスファルト等の天然アスファルト、およびポリマーなど添加した改質アスファルト、乳化や粉末化したアスファルト、すなわち公知のアスファルトのいずれも使用可能である。
【0023】
上記のうち、ブローンアスファルトおよびスレートアスファルトが好ましく、ブローンアスファルトが特に好ましく用いられる。
【0024】
本発明で使用する(A1)アスファルトは、針入度(JIS K2207(1996)に準ずる)が20以下、さらに10以下であるものが好ましく、軟化点(JIS K2207(1996)に準ずる)が55℃以上、さらには95℃以上、特に110℃以上のものが好ましく使用される。
【0025】
(A1)アスファルトの針入度が20以下であることにより、これを含むレジスト組成物から得られるレジストの塗膜が柔らかくなりすぎることはなく、所定の硬度を有するレジストとして形成され、レジストに傷等の欠陥が生ずることや、レジストの傷を通して不必要な箇所がエッチングされるような懸念が回避される。
【0026】
また、軟化点が55℃以上とすることにより、エッチング液によるレジストの軟化、損傷が回避され、高温でのエッチングに耐性を有するレジストの形成が可能とされる。
【0027】
ブローンアスファルトは、針入度および軟化点のバランスに優れ、本発明の(A1)アスファルトとして特に好ましく使用される。
【0028】
本発明では、(A2)アスファルトを単独又は複数種類の組み合わせとして使用することができ、2種類以上のアスファルトの組み合わせ使用により、針入度および軟化点の調整のとれた混合物として、本発明の(A1)アスファルトとすることもできる。
【0029】
(A1)アスファルトは、一般に室温で固体であるため、有機溶剤に溶解させて用いることが好ましい。これにより、レジスト組成物の製造、被加工基材に対する塗布、及びレジスト除去(剥離)を、それぞれ円滑に行うことが可能となる。
【0030】
本発明の(A1)アスファルトの溶解に用いられる有機溶剤の例は、後述の(C)有機溶剤の例と同様であり、2種類以上の混合溶媒とすることもできる。
【0031】
アスファルトの溶解用の溶媒と、(C)有機溶剤とを同一にしても、またはレジスト組成物に悪影響を与えない限り、異なる溶媒とすることもできる。
【0032】
[(A2)塩素化ポリプロピレン]
本発明のエッチングレジスト組成物では、(A1)アスファルトに代えて、または(A1)アスファルトに加えて(A2)塩素化ポリプロピレンが用いられる。
【0033】
本発明において、(A2)塩素化ポリプロピレンとしては、ポリプロピレン(単独重合体)の塩素化物の他、ポリプロピレンと低級オレフィンとの共重合体の塩素化物のいずれも使用可能であるが、ポリプロピレン単独重合体(特に鎖状の化合物)の塩素化物が好ましく用いられる。
【0034】
塩素化ポリプロピレンの製造方法は、従来より各種のものが提案されているが、本発明で使用される塩素化ポリプロピレンは所望の特性を有する限り、いずれの製造方法により得られたものであってもよい。
【0035】
例えば、本発明で使用される(A2)塩素化ポリプロピレンは、固相で塩素化する方法、またはポリプロピレンを塩素系溶媒(例えばクロロホルム)、水性溶媒(例えば水)、またはその双方の混合物に溶解または懸濁させて塩素化する方法等の液相で塩素化する方法等により製造可能である。
【0036】
本発明で使用する(A2)塩素化ポリプロピレンの重量平均分子量はGPC分析(ポリスチレン標準)で10,000から120,000、好ましくは30,000から80,000であることが好ましい。(A2)塩素化ポリプロピレンの重量平均分子量が10,000以上であると、乾燥後のレジスト組成物のべたつきが抑制される。また、重量平均分子量を120,000以下とすることにより、レジスト組成物中に含まれる環化ゴムとの相溶性が良好となる。
【0037】
さらに、(A2)塩素化ポリプロピレンの塩素化率は、塩素化ポリプロピレンの全質量に対して、30質量%から70質量%の範囲であることが好ましい。塩素化率30質量%以上の塩素化ポリプロピレンを用いることにより、得られるエッチングレジスト組成物の耐薬品性が特に向上する。一方、塩素化率70質量%以下では、後述の(C)有機溶剤に対する塩素化ポリプロピレンの溶解性が良好であり、均質なレジスト組成物が得られる。
【0038】
さらに、本発明で用いる(A2)塩素化ポリプロピレンの軟化点は、60から250℃、特に80から200℃の範囲であることが好ましい。軟化点60℃以上の(A2)塩素化ポリプロピレンを用いると乾燥後のレジスト組成物のべたつきが抑制される。軟化点が250℃以下であると環化ゴムとの相溶性が良好となる。
【0039】
(A2)塩素化ポリプロピレンの具体例としては、スーパークロン814HS、スーパークロン390S、スーパークロンHP-215(いずれも日本製紙株式会社製)、ハードレン526P、ハードレン523P(いずれも東洋紡株式会社製)を挙げることができる。
【0040】
[(A3)塩素化ゴム]
塩素化ゴムは天然ゴムや合成ゴム(ポリイソプレン)を塩素化して得られる樹脂で、化学的に安定で酸・アルカリに強くまた耐候性に優れ、トルエン等の芳香族系溶剤やエステル・ケトン類の有機溶剤に容易に溶解する。このため塗料・インキ・接着剤に使われ、特に重防食塗料等に多量に使われ、古くから工業的に製造されている。
【0041】
工業的に塩素化ゴムを製造するには、天然ゴムや合成ゴム等の原料を塩素に不活性な塩素系溶剤である四塩化炭素に溶解させ、この溶液に塩素ガスを通じて塩素化を行う「溶液法」という方法が知られているが、本発明に使用する塩素化ゴムは、所望の特性が得られれば、本製造方法に限定されるものではない。
【0042】
本発明で使用する(A3)塩素化ゴムの重量平均分子量はGPC分析(ポリスチレン標準)で10,000から120,000、好ましくは30,000から80,000であることが好ましい。(A3)塩素化ゴムの重量平均分子量が10,000以上であると、乾燥後のレジスト組成物のべたつきが抑制される。また、重量平均分子量を120,000以下とすることにより、レジスト組成物中に含まれる環化ゴムとの相溶性が良好となる。
【0043】
本発明で使用する(A3)塩素化ゴムの塩素化率は、塩素化ゴムの全質量に対して、30質量%から80質量%の範囲であることが好ましい。塩素化率30質量%以上の塩素化ゴムを用いることにより、得られるエッチングレジスト組成物の耐薬品性が特に向上する。一方、塩素化率80質量%以下では、後述の(C)有機溶剤に対する(A3)塩素化ゴムの溶解性が良好であり、均質なレジスト組成物が得られる。
さらに、本発明で用いる(A3)塩素化ゴムの軟化点は、50から250℃、特に60から150℃の範囲であることが好ましい。軟化点60℃以上の(A3)塩素化ゴムを用いると乾燥後のレジスト組成物のべたつきが抑制される。軟化点が250℃以下であると環化ゴムとの相溶性が良好となる。
【0044】
(A3)塩素化ゴムの具体例としては、YURON CR-10、CR-20(いずれもFENGHUA YURON CHEMICAL INDUSTRY製)を挙げることができる。
【0045】
(A1)アスファルトと同様に、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムも、それぞれ単独種類又は複数種類の組み合わせとして使用することができる。
【0046】
[(B)環化ゴム]
本発明のエッチングレジスト組成物は(B)環化ゴムを含む。
(B)環化ゴムとしては、共役ジエンゴムの環化物またはその誘導体である限り、特に制限されるものではない。(B)環化ゴムの原料として用いられる共役ジエンゴムは、共役ジエン単量体のみの重合体であっても、共役ジエン単量体とその他の単量体との共重合ゴムであってもよい。また、共重合ゴムはランダム共重合ゴム、ブロック共重合ゴムのいずれであってもよい。
【0047】
上記の共重合ゴムを構成する共役ジエン単量体としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエンなどが挙げられる。
【0048】
また、上述の「その他の単量体」としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、o-クロルスチレン、m-クロルスチレン、p-クロルスチレン、p-ブロモスチレン、2-メチル-1,4-ジクロルスチレン、2,4-ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体;
エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの鎖状オレフィン単量体;
シクロペンテン、2-ノルボルネンなどの環状オレフィン単量体;
1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネンなどの非共役ジエン単量体;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。 前記共役ジエン単量体及びその他の単量体は、単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
天然ゴム、合成ゴムを酸で処理する事により、ゴム分子中の鎖状分子の一部を環化して得られる。その製造方法は、各種のものが提案されているが本発明での(B)環化ゴムは、その何れかに特定されるものではない。
【0050】
具体的には、天然ゴム又は合成ゴムを酸処理することによって得られ、例えば、濃硫酸やp-トルエンスルホン酸のような有機スルホン酸類、クロロスルホン酸等、あるいはTiCl4等のルイス酸を直接、天然ゴム又は合成ゴム等のゴム成分に作用させるか、或いはゴム溶液に作用させることにより、ゴム分子中の鎖状分子の一部を環化して2重結合を減少させる方法等で製造される。
【0051】
使用する(B)環化ゴムに分子量は、GPC分析(ポリスチレン標準)で重量平均分子量5000~50000、好ましくは10000~30000とされる。
【0052】
重量平均分子量が5000の(B)環化ゴムを使用することにより、エッチング組成物の耐薬品が良好となる。重量平均分子量が50000以下の(B)環化ゴムを使用することにより、(B)環化ゴムと、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび(A3)塩素化ゴムのいずれか((A1)~(A3)のうち使用するすべて)との相溶性が良好とされる。
【0053】
本発明で使用する環化ゴムは、軟化点が60~200℃、好ましくは、100~150℃であることが望ましい。(B)環化ゴムの軟化点が60℃以上であることにより、指触乾燥性が良好となり、作業効率が向上する。また、(B)環化ゴムの軟化点が150℃以下の場合には、(A1)アスファルトとの相溶性が良好となり、レジスト組成物の均一化に寄与する。
【0054】
環化ゴムの具体例としては、アルペックスCK-514、アルペックスCK-450等(いずれも日本サイテックスインダストリーズ株式会社製)が挙げられる。
【0055】
(B)環化ゴムの配合量は、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレンおよび/または(A3)塩素化ゴムの合計の100質量部に対して3~60質量部、好ましくは15~50質量部、特に好ましくは20~40質量部である。(B)環化ゴムの配合量が3質量部以上であることにより、基材に対するエッチング組成物の接着性が十分となり、15質量部以上となることにより、例えば組成物が均質化することにより、レジスト組成物の基体に対する印刷性が向上する。また、(B)環化ゴムの割合を60質量部以下、特に40%以下とした場合に、(A1)アスファルトとの相溶性が良く、印刷した塗膜のレベリング性、消泡性も良好に得られる。
【0056】
(A1)アスファルトと(A2)塩素化ポリプロピレン若しくは(A3)塩素化ゴムとの質量比を(65:35)~(55:45)とし、上記の配合量の(B)環化ゴムを用いることにより、レジストのエッチング耐性を向上させることができる。
【0057】
[(C)有機溶剤]
本発明で使用する(C)有機溶剤としては、アスファルトやその他の成分を溶解させることができるものであればよい。例えば、メチルエチルケトンやシクロヘキサノン等のケトン類、トルエンやキシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、石油エーテルや石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤類などが挙げられる。
【0058】
ソルベントナフサ等の石油系溶剤類、芳香族炭化水素系溶剤、またはこれら相互の混合溶剤が好適に使用でき、これらを用いることにより、特に(A1)アスファルトの良好な溶解性が得られる。
【0059】
本発明においては、特に、芳香族系溶剤を使用することが好ましく、更に150℃以上の沸点を持つ芳香族系溶剤が好ましい。
【0060】
150℃以上の沸点を持つ芳香族系溶剤としてはスワゾール(登録商標)1000、1500、1800(丸善石油化学株式会社製)、T-Sol (登録商標)100、150、200(エクソンモービル社製)、カクタスファインSF01、SF-02(JXTGエネルギー株式会社製)等が挙げられる。150℃以上の沸点を持つ芳香族系溶剤を使用すると、特に樹脂の溶解性、印刷適性が良好で表面状態の優れた印刷物が得られる。また、引火点が高いため取り扱い上、安全性が高いという利点がある。
【0061】
本発明においては、150℃以上の沸点を持つ芳香族系溶剤を単独で用いるか、もしくは150℃以上の沸点を持つ芳香族系溶剤を含む溶媒混合物、すなわち当該芳香族系溶媒と相溶性の高い溶媒(例えばメチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒)を含むもの等、(A1)アスファルト、(A2)塩素化ポリプロピレン及び(B)環化ゴムの溶解性の高いものを併用することができる。
【0062】
(C)有機溶剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。また、(C)有機溶剤の配合量は、目的に応じた任意の量とすることができるが、本発明のレジスト組成物における20質量%~80質量%、特に30~50%とされることが好ましい。
【0063】
[その他の成分]
この他、本発明のレジスト組成物には、必要に応じて、無機フィラー、増粘剤、流動性改質剤、表面張力調整剤、密着性付与剤またはカプリング剤、界面活性剤、着色剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類の少なくとも1種を、さらに配合することができる。上記成分は、各成分(A)~(C)の性能を損なわず、添加による所望の効果が得られる範囲で、適宜使用量を調節して使用される。
【0064】
上記のフィラーの具体例としては、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、タルク、クレー、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウムの無機フィラー等が使用可能であり、好ましくは硫酸バリウムまたはタルクが、単独または2種以上の組み合わせで使用される。これらの無機フィラーは、レジスト組成物調整の際の粘度を適度に調整し、加熱乾燥時の硬化収縮を抑制し、基板との密着性を向上させる役割を果たす。このうち、基板との密着性を良好とするために硫酸バリウムが特に好ましく用いられる。
【0065】
無機フィラーの平均一次粒径は15μm以下であることが好ましく、更に好ましくは10μm以下である。平均一次粒径(D50)は、レーザー回折/散乱法により測定することができる。
【0066】
フィラーの配合量は特に限定的ではないが、エッチングレジスト組成物全量(溶剤を含む)に対して、8質量%~100質量%、特に20~60質量%の割合で用いることが好ましい。8質量%、特に20質量%以上であれば、組成物のチキソ性が高まり印刷精度が良好とされ、100質量%以下であればレベリング性が向上する。
【0067】
使用可能な消泡剤の例としては、シリコーン系消泡剤、フッ素系消泡剤、アクリル系消泡剤が挙げられる。シリコーン系の消泡剤としてはビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK(登録商標)-063、-065、-066N、-081、-141、-323、および信越化学株式会社製のKS-66、KS-69、X-50-1105G等、フッ素系消泡剤としてはDIC株式会社製のメガファックRS、F-554、F-557等、アクリル系消泡剤としては楠本化成株式会社製のディスパロンOX-880EF、OX-70などが挙げられる。
【0068】
このほか、着色剤としては、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックを、
増粘剤としては、ベントナイト、微紛シリカを含む公知慣用の増粘剤を、
シランカップリング剤としては、γ-クロロプロピルメトキシシラン等のハロゲン含有シランカップリング剤、ビニルエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン等のビニル基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイルイ含有シランカップリング剤、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のグリシジル基含有シランカップリング剤、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト含有シランカプリング剤、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤を挙げることができる。
【0069】
上記添加剤のなかでも特に消泡剤及び/又はレベリング剤を配合することにより、表面平滑性の劣化を防止し、ボイドやピンホールによる層間絶縁性の劣化も防止することができる、シランカップリング剤を配合することにより基体表面との密着性を向上させることができる。
【0070】
本発明のレジスト組成物の25℃における粘度は、1から1500dPa・sの範囲、特に10から1000dPa・sの範囲にあると好ましい。エッチングレジスト組成物の粘度が1dPa・s以上であると、レジスト組成物が加熱乾燥により、エッチングレジストとして基板を良好に保護可能な膜厚で塗膜になる。一方、エッチングレジスト組成物の粘度が1500dPa・s以下であると、組成物が扱いやすく、スクリーン印刷等による印刷に好適であり、エッチング後のレジスト剥離処理も簡単かつ経済的に行われる。
【0071】
なお、本発明のエッチングレジスト組成物は、主に熱乾燥型に好適に用いられるが、必要に応じ熱硬化性材料、例えばエポキシ化合物、硬化剤等を含んでいてもよい。
【0072】
また、本発明のエッチングレジスト組成物を用いた基板の製造方法においては、上述のエッチングレジスト組成物を均一な溶液又は分散液として調整後、ガラス基板等の基板に対してスクリーン印刷等により、5~100μm、好ましくは30~90μm、より好ましくは45~85μmの膜厚で、所望のパターン状に印刷する。更に、パターン状のエッチングレジスト組成物は、例えば、50~200℃、好ましくは80~150℃における5~90分、好ましくは20~60分の乾燥炉等における加熱により有機溶剤を蒸発させて乾燥させ、乾燥塗膜を形成することができる。乾燥塗膜の膜厚は、エッチング液の性状に応じて、3~70μm、特に30~60μmの範囲が好ましい。この範囲の膜厚を有するエッチングレジストは、エッチング液に対して十分な耐性を有するため、エッチング処理における基板の保護の観点から有効である。ただし、本発明のレジスト組成物は、乾燥温度および乾燥時間の要求を満たせば、70μmを超過する膜厚としてもよい。上記膜厚は、一般的な印刷条件により得られるものである。
【0073】
ここで本発明のレジスト組成物は、スクリーン印刷法の他、グラビア法、グラビアオフセット法などの印刷方法においても適用可能である。また、レジスト組成物は複数回に分けて塗布することもできる。その際の塗布方式としては、従来より知られる2コート1ベークなどのウエットオンウエット印刷や、2コート2ベークなどのドライオンウエット印刷が可能である。
【0074】
その後、所望のパターンで乾燥したレジストで被覆された基板は、エッチング液によりエッチング処理に付される。エッチング処理により、レジストに被覆されていない基板部分がエッチングされる。これにより所定パターンのガラス成型品を得ることができる。
【0075】
エッチング液としては、フッ化水素酸単独若しくはフッ化水素酸を含むエッチング液(例えば、フッ化水素酸と、鉱酸(硝酸、リン酸等)との混合物、場合により酢酸等の弱酸のいずれか1種以上を含む)が挙げられる。
【0076】
本発明のレジスト組成物から得られるレジストは、上述の熱乾燥後にはエッチング液に対して優れた耐性を有することから、エッチング処理中に基板からの剥離が生じずに、基板を高精度でエッチング処理することができる。
【0077】
本発明のエッチングレジスト組成物は加熱による熱乾燥を行えば、光硬化ないし熱硬化を行わなくとも、基板に良好に密着したレジストを構成し、基板をエッチング液から良好に保護する。更には高精度のエッチングを可能とし、エッチング完了後にはケトン類、エステル類、芳香族炭化水素類、石油系溶剤類等の溶剤を用いて短時間で容易に除去可能である。エッチングレジスト除去用には、特に、溶解性の観点と経済性の観点より石油系溶剤を用いることが好ましい。
【0078】
なお、本発明のエッチングレジスト組成物は、フッ化水素酸系エッチング液だけではなく、強酸系、弱酸系、強アルカリ系、弱アルカリ系、腐食性物質系の各種エッチング液によるエッチングにおいても非常に優れた耐性と基板に対する優れた密着性を有する。
【0079】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は質量部を意味するものとする。
【実施例
【0080】
[実施例1~11及び比較例1~4]
I.エッチングレジスト組成物の作製
表1に示す成分をそれぞれ記載した割合(単位:部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで分散および混練して、実施例1から11(本発明の組成物)、および比較例1から4(比較組成物)の各エッチングレジスト組成物を得た。
【0081】
II.エッチングレジストの製造
[製造条件1]
80メッシュのポリエステル版に所定の感光性乳剤を膜厚80μmで付すことにより作製されたスクリーン印刷版を用いて、厚さ1.8mmソーダライムガラス板(基体)に、下記のとおりエッチングレジストを印刷した。
【0082】
上記のソーダライムガラスをあらかじめアルコールで洗浄し、表面を乾燥させ、次いで、実施例1から11、および比較例1から4の各レジスト組成物を、上記のスクリーン印刷版により、一辺が20mm、パターン幅が5mmの正方形として印刷した。
【0083】
印刷されたレジスト組成物を、熱風循環式乾燥機(ヤマト科学社製DF-610)により、乾燥温度120℃にて30分加熱して、溶剤を蒸発、乾燥させて膜厚50μmのエッチングレジスト(製造条件1の試験片)を得た。
【0084】
[製造条件2]
製造条件1と同様の条件で印刷、乾燥したエッチングレジスト上に、製造条件1に基づく同様の印刷、乾燥を再度行なった。得られたエッチングレジスト(製造条件2の試験片)の乾燥膜厚は80μmであった。
【0085】
III.エッチング耐性試験
製造条件1の試験片(膜厚50μm)および製造条件2の試験片(膜厚80μm)を以下のエッチング条件1~6による浸漬処理に付した。
【0086】
エッチング条件
条件1:10%フッ化水素酸、液温30℃、浸漬時間60分
条件2:10%フッ化水素酸、液温30℃、浸漬時間90分
条件3:10%フッ化水素酸、液温30℃、浸漬時間120分
条件4:15%フッ化水素酸、液温30℃、浸漬時間60分
条件5:15%フッ化水素酸、液温30℃、浸漬時間90分
条件6:15%フッ化水素酸、液温30℃、浸漬時間120分
【0087】
浸漬時間経過後に、試験片をエッチング液から取り出し、水洗、乾燥後、目視にて評価した。
【0088】
評価基準は以下のとおりである。
【0089】
〇:外観異常なし(全く剥がれが無い)
△:少なくとも部分的に塗膜へのエッチング液の染み込みが見られる
×:脱膜
【0090】
評価結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
表中の材料の詳細は以下のとおりである。
【0093】
KB-2:アスファルトピッチ、九重電機株式会社製(ブローンアスファルト系:針入度6~10、軟化点110℃)
スーパークロンHP-215:塩素化ポリプロピレン、日本製紙株式会社製(重量平均分子量約80000、塩素化率68%、軟化点200℃)
スーパークロン814HS:塩素化ポリプロピレン、日本製紙株式会社製(重量平均分子量約40000、塩素化率41%、軟化点80℃)
YURON CR-20 塩素化ゴム(FENGHUA YURON CHEMICAL INDUSTRY製)(塩素化率68%、軟化点200℃)
ALPEX(登録商標)CK-450:環化ゴム(重量平均分子量約23000、軟化点約130℃)
イプゾール150:芳香族炭化水素(炭素数10)混合溶剤、出光興産株式会社製
KS66:ジメチルポリシロキサン、信越化学工業株式会社製
MA-100:カーボンブラック、三菱化学株式会社製、
オルベンM:ベントナイト、白石工業株式会社製
KBM-403:シランカップリング剤、信越化学工業株式会社製
沈降性硫酸バリウム110:硫酸バリウム、堺化学工業株式会社製
【0094】
実施例の結果より、本発明のエッチングレジストレジスト組成物は、(A1)アスファルト(A2)塩素化ポリプロピレン、および(A3)塩素化ゴムのいずれか少なくとも1種と、(B)環化ゴムと、(C)有機溶剤とを組み合わせて使用することにより、フッ化水素酸によるエッチング液において60分を上回る長時間のエッチングにも優れた耐性を示し、基板に比較的深い開口または貫通孔を形成するようなエッチング加工に好適に用いられることがわかる。
【0095】
本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【0096】
例えば、上記実施例では、主にガラス基板のエッチングについて記載したが、本発明のレジスト組成物は、金属基板や合成ゴム等を含むプラスチック基板のエッチング等にも使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上説明したように、本発明のエッチングレジスト組成物は、ガラスエッチング耐性、保存安定性及びレジスト除去性に優れ、タッチパネル、光学材料、および計測器等のガラス躯体(基板)のエッチングに適用される。
【0098】
本発明のレジスト組成物及びこれを用いた製造法によると、スクリーン印刷によるガラス基板への塗布により、複雑な処理工程を得ずに、回路・配線図の描画、貫通孔、凹穴等の形成が行われるため、操作及び経済性の両面で効果的である。
【0099】
また、本発明のレジスト組成物の基材への高い密着性により、基材上に描画された所望のレジストパターン通りの高精度のエッチングが行われるため、携帯電話等、意匠性を重視した製品への適用にも有用である。