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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】真空処理装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/00 20060101AFI20230911BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20230911BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230911BHJP
【FI】
C23C14/00 B
C23C14/50 A
H01L21/68 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019042079
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020143353
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】藤井 佳詞
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-084872(JP,A)
【文献】特開2017-008374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00
C23C 14/50
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空雰囲気の形成が可能な真空チャンバと、真空チャンバ内で被処理基板が設置されるステージと、ステージの周囲に間隔を存して配置される環状の防着板とを備え、ステージが静電チャック用電極を有するチャックプレートを有する真空処理装置において、
ステージに被処理基板を設置して静電チャック用電極に電圧印加して当該被処理基板をステージに吸着した状態で静電チャック用電極を介して被処理基板と少なくともその表面が導電性を持つ防着板との間に交流電圧を印加する交流電源と、交流電圧を印加したときの静電容量を基に防着板と被処理基板との間の隙間を管理する隙間管理手段とを更に備えることを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
真空雰囲気の形成が可能な真空チャンバと、真空チャンバ内で被処理基板が設置されるステージと、ステージの周囲に間隔を存して配置される環状の防着板とを備え、ステージが静電チャック用電極を有するチャックプレートを有する真空処理装置において、
前記ステージが、その外周に沿って間隔を存して設けられる、静電チャック用電極とは別の複数の電極を有し、ステージに被処理基板を設置して静電チャック用電極に電圧印加して当該被処理基板をステージに吸着した状態で、前記複数の電極を介して被処理基板と少なくともその表面が導電性を持つ防着板との間に交流電圧を印加する交流電源と、交流電圧を印加したときの静電容量を基に防着板と被処理基板との間の隙間を管理する隙間管理手段とを更に備えることを特徴とする真空処理装置。
【請求項3】
真空雰囲気の形成が可能な真空チャンバと、真空チャンバ内で被処理基板が設置されるステージと、ステージの周囲に間隔を存して配置される環状の防着板とを備える真空処理装置において、
ステージが、その外周面に周方向に間隔を存して設けられる複数の電極を有し、これら複数の電極から何れか1つの電極を選択する選択手段と、前記複数の電極の中から選択手段により選択されたものと防着板との間に交流電圧を印加する交流電源と、交流電圧を印加したときの静電容量を基に防着板とステージとの間の隙間を管理する隙間管理手段とを更に備えることを特徴とする真空処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空雰囲気の形成が可能な真空チャンバと、真空チャンバ内で被処理基板が設置されるステージと、ステージの周囲に間隔を存して配置される環状の防着板と備える真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造工程においては、真空雰囲気の形成が可能な真空チャンバ内にてシリコンウエハなどの被処理基板に所定の真空処理を施す工程があり、このような工程を実施する真空処理装置として、スパッタリング法による成膜を施すスパッタリング装置が例えば特許文献1で知られている。このものは、真空チャンバを有し、その上部にはスパッタリング用ターゲットが配置され、真空チャンバ内の下部にはターゲットに対向させて被処理基板が設置されるステージが設けられている。ステージは、例えば筒状の輪郭を持つ金属製の基台と、基台上面に設けられるチャックプレートとを備え、チャックプレートに埋設した静電チャック用の電極に所定電圧を印加することで、チャックプレート表面に被処理基板が静電吸着されるようになっている。
【0003】
上記スパッタリング装置により被処理基板に成膜する場合、ターゲットのスパッタリングにより生じたスパッタ粒子は、ターゲット表面から所定の余弦則に従って飛散するが、被処理基板以外にも付着、堆積してしまう。このため、一般に、ステージ(チャックプレート)の周囲に、同心かつ所定の隙間を存してプラテンリングやカバーリングとも称される環状の防着板をセットし、ステージの周囲でかつ被処理基板より下方の空間(チャックプレート表面に被処理基板を静電吸着させたときに、チャックプレートから径方向外側で延出する被処理基板の裏面を含む)へのスパッタ粒子の回り込み付着を防止している。そして、防着板は、その表面の堆積膜が所定膜厚に達する前に、ブラスト等の堆積膜の剥離処理が施されて繰り返し再利用される。
【0004】
ここで、被処理基板に対して成膜を施した後、成膜済みの被処理基板をステージから真空搬送ロボットに受け渡して真空チャンバから搬出する際、被処理基板に割れや欠けが生じる所謂搬送トラブルが発生する場合があることが判明した。そこで、本願発明者は、鋭意研究を重ね、次のことを知見するのに至った。
【0005】
即ち、防着板に対して剥離処理を繰返し実施すると、防着板がやせ細りして変形する(例えば、チャックプレート表面に被処理基板を静電吸着させたときに、チャックプレートから径方向外側で延出する被処理基板の裏面に対峙する防着板の内縁側部分の肉厚が薄くなったり、環状の防着板の内縁部が局所的に削られて防着板の内径が局所的に大きくなったりする)。また、剥離処理済みの防着板をセットする場合に、ステージに対して径方向一方に位置ずれした姿勢で、または、ステージに対して傾いた姿勢で防着板がセットされることがある(所謂防着板の誤セット)。このような場合、防着板の内縁部とステージの側面との間の隙間や、防着板と被処理基板の裏面との間の隙間に、局所的に大きくなる箇所が生じることになる。このような状態でスパッタリングすると、隙間の大きい箇所からはより多くのスパッタ粒子が回り込むことで、被処理基板の裏面や、ステージの側面及びその上面外周縁部にもスパッタ粒子が付着、堆積することになり、これに起因して、ステージへの被処理基板の局所的な張り付きが発生して搬送トラブルが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-91861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、搬送トラブルの発生を未然に防止することができる真空処理装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、真空雰囲気の形成が可能な真空チャンバと、真空チャンバ内で被処理基板が設置されるステージと、ステージの周囲に間隔を存して配置される環状の防着板とを備え、ステージが静電チャック用電極を有するチャックプレートを有する本発明の真空処理装置は、ステージに被処理基板を設置して静電チャック用電極に電圧印加して当該被処理基板をステージに吸着した状態で静電チャック用電極を介して被処理基板と少なくともその表面が導電性を持つ防着板との間に交流電圧を印加する交流電源と、交流電圧を印加したときの静電容量を基に防着板と被処理基板との間の隙間を管理する隙間管理手段とを更に備えることを特徴とする。これにより、静電チャック用電極が静電容量を求めるための電極として兼用されるため、構成部品の点数を少なくでき、有利である。
【0009】
ここで、本願発明者らの試行錯誤の研究によれば、隙間がその全体に亘って略一定となるステージの周囲の正規位置に防着板がセットされた状態と比較して、防着板のやせ細りや誤セットに起因して上記隙間が(局所的に)変化していると、ステージに設置された被処理基板と防着板との間の静電容量も変化する知見を得た。このような知見を基に、本発明では、被処理基板と防着板との間に交流電圧を印加する交流電源と、このときの静電容量を基に防着板と被処理基板との間の隙間を管理する隙間管理手段とを設ける構成を採用した。これによれば、予め実験的に求められる防着板の正規位置での静電容量を基準値とし、測定される静電容量が基準値から所定範囲を超えて変化していると、スパッタリングによる成膜時に、ステージへの被処理基板の局所的な張り付きが招来する防着板のやせ細りや誤セットがあると判断できる。結果として、ステージへの被処理基板の局所的な張り付きに起因した搬送トラブルを未然に防止することができる。尚、本発明には、治具である管理用基板を用いて測定した静電容量を基に、防着板と被処理基板との間の隙間を管理する場合を含むものとする。
【0011】
また、真空雰囲気の形成が可能な真空チャンバと、真空チャンバ内で被処理基板が設置されるステージと、ステージの周囲に間隔を存して配置される環状の防着板とを備え、ステージが静電チャック用電極を有するチャックプレートを有する真空処理装置において、前記ステージが、その外周に沿って間隔を存して設けられる、静電チャック用電極とは別の複数の電極を有し、ステージに被処理基板を設置して静電チャック用電極に電圧印加して当該被処理基板をステージに吸着した状態で、前記複数の電極を介して被処理基板と少なくともその表面が導電性を持つ防着板との間に交流電圧を印加する交流電源と、交流電圧を印加したときの静電容量を基に防着板と被処理基板との間の隙間を管理する隙間管理手段とを更に備えることが好ましい。これによれば、各電極を介して基板と防着板との間に交流電圧が印加され、それぞれの静電容量を測定することができ、静電容量の局所的な偏り(方向)を検出することができる。その結果として、防着板とステージとの位置関係、つまり、防着板がどの方向に誤セットされているかを検出することができる。
【0012】
上記課題を解決するために、真空雰囲気の形成が可能な真空チャンバと、真空チャンバ内で被処理基板が設置されるステージと、ステージの周囲に間隔を存して配置される環状の防着板とを備える真空処理装置において、ステージが、その外周面に周方向に間隔を存して設けられる複数の電極を有し、これら複数の電極から何れか1つの電極を選択する選択手段と、前記複数の電極の中から選択手段により選択されたものと防着板との間に交流電圧を印加する交流電源と、交流電圧を印加したときの静電容量を基に防着板とステージとの間の隙間を管理する隙間管理手段とを更に備えることを特徴とする。


【0013】
上記知見を基に、本発明では、ステージの外周面に設けられた各電極と防着板との間に交流電圧を印加する交流電源と、そのときの静電容量を基に防着板とステージ外周面との間の隙間を管理する隙間管理手段とを設ける構成を採用した。これによれば、予め実験的に求められる防着板の正規位置での静電容量を基準値とし、測定される静電容量が基準値から所定範囲を超えて変化していると、スパッタリングによる成膜時に、ステージへの被処理基板の局所的な張り付きが招来する防着板のやせ細りや誤セットがあると判断できる。結果として、ステージへの被処理基板の局所的な張り付きに起因した搬送トラブルを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態のスパッタリング装置を示す模式図。
図2図1の一部を拡大して示す図。
図3】(a)及び(b)は、本発明の変形例を示す模式図。
図4】(a)は、本発明の変形例を示す模式的断面図であり、(b)は、図4(a)に示す管理用基板の模式的底面図。
図5】(a)及び(b)は、本発明の変形例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、被処理基板をシリコンウエハ(以下、「基板Sw」という)とし、基板Sw表面に所定の薄膜をスパッタリング法により成膜するスパッタリング装置を例に本発明の真空処理装置の実施形態を説明する。以下においては、方向を示す用語は、図1に示す設置姿勢を基準とする。
【0016】
図1を参照して、SMは、本実施形態のスパッタリング装置である。スパッタリング装置SMは、真空雰囲気の形成が可能な真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1の上面開口にはカソードユニット2が着脱自在に取付けられている。カソードユニット2は、ターゲット21と、このターゲット21の上方に配置される磁石ユニット22とで構成されている。ターゲット21としては、基板Sw表面に成膜しようとする薄膜に応じて、アルミニウム、銅、チタンやアルミナなど公知のものが利用される。そして、ターゲット21は、バッキングプレート21aに装着した状態で、そのスパッタ面21bを下方にした姿勢で、真空チャンバ1の上壁に設けた真空シール兼用の絶縁体31を介して真空チャンバ1の上部に取り付けられる。
【0017】
ターゲット21には、ターゲット種に応じて直流電源や交流電源などから構成されるスパッタ電源21cからの出力21dが接続され、ターゲット種に応じて、例えば負の電位を持つ直流電力や所定周波数の高周波電力(交流電力)が投入できるようになっている。磁石ユニット22は、ターゲット21のスパッタ面21bの下方空間に磁場を発生させ、スパッタリング時にスパッタ面21bの下方で電離した電子等を捕捉してターゲット21から飛散したスパッタ粒子を効率よくイオン化する公知の閉鎖磁場若しくはカスプ磁場構造を有するものであり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0018】
真空チャンバ1の下部には、ターゲット21に対向させてステージ4が配置されている。ステージ4は、真空チャンバ1の下部に設けた絶縁体32を介して設置される、筒状の輪郭を持つ金属製(例えばステンレス製)の基台41と、この基台41の上面に設けた例えば窒化アルミニウム製のチャックプレート42とを備える。チャックプレート42は、基台41より一回り小さい外径を持つ上面を有すると共に、チャックプレート42の側面の下部から径方向外方に延出する延出部分42aを有する。チャックプレート42には静電チャック用の少なくとも1つ(本実施形態では2つ)の電極42bが埋設されており、この電極42bにチャック電源43たる直流電源から直流電圧を印加することで、チャックプレート42上面に基板Swを静電吸着できるようになっている。尚、本実施形態では、チャックプレート42の上面が基板Swよりも小さい外径を有するため、チャックプレート42上面に基板Swを静電吸着させたときに、チャックプレート42から径方向外側で基板Swが延出している。
【0019】
真空チャンバ1の側壁には、スパッタガスを導入するガス管5が接続され、ガス管5がマスフローコントローラ51を介して図示省略のガス源に連通している。スパッタガスには、真空チャンバ1にプラズマを形成する際に導入されるアルゴンガス等の希ガスだけでなく、酸素ガスや窒素ガスなどの反応ガスが含まれる。真空チャンバ1の下壁にはまた、ターボ分子ポンプやロータリポンプなどで構成される真空ポンプ61に通じる排気管62が接続され、真空チャンバ1内を一定速度で真空引きし、スパッタリング時にはスパッタガスを導入した状態で真空チャンバ1を所定圧力に保持できるようにしている。
【0020】
真空チャンバ1内でステージ4の周囲には、ステージ4の周囲でかつ基板Swより下方の空間(チャックプレート42上面に基板Swを静電吸着させたときに、チャックプレート42から径方向外側で延出する基板Swの裏面を含む)へのスパッタ粒子の回り込み付着を防止する防着板として機能するプラテンリング7が隙間を存して設けられている。プラテンリング7はアルミナ、ステンレス等の公知の材料製であり、プラテンリング7がアルミナのような絶縁体製である場合、その表面が金属膜で被覆される。プラテンリング7は、チャックプレート42の延出部分42a上面に絶縁体33を介して設けられている。尚、プラテンリング7(の内縁側部分71)の肉厚は、プラテンリング7と基板Swとの間の隙間Cgが所定範囲となるように定寸されている。
【0021】
また、真空チャンバ1内には、ターゲット21のスパッタリングにより発生するスパッタ粒子の真空チャンバ1の内壁面への付着を防止する、例えばステンレス製の防着板8が設けられている。防着板8は、夫々が筒状の輪郭を持つ上防着板81と下防着板82とで構成されている。上防着板81は、真空チャンバ1上部に設けた係止部11を介して吊設されている。下防着板82は、真空チャンバ1の下壁を貫通してのびる駆動手段83からの駆動軸83aが連結されている。駆動手段83によって下防着板82は、図示する成膜位置と、成膜位置から下防着板82を所定の高さ位置まで上動させて、図外の真空搬送ロボットによるステージ4への基板Swの受渡が実施される搬送位置との間で上下動される。
【0022】
上記スパッタリング装置SMは、マイクロコンピュータ、記憶素子やシーケンサ等を備えた制御手段CUを備え、この制御手段CUが、スパッタ電源21c、チャック電源43、マスフローコントローラ51、真空ポンプ61や駆動手段83等の各部品の作動を統括して制御する。詳細は後述するが、制御手段CUは、交流電源44、スイッチ45や電流計46の作動を制御し、基板Swとプラテンリング7との間の静電容量を測定し、測定した静電容量を基に基板Swとプラテンリング7との間の隙間Cgを管理する。このため、制御手段CUは、特許請求の範囲の隙間管理手段に対応する。尚、静電容量の測定方法としては公知の方法を用いることができるため、本実施形態では詳細な説明を省略する。以下に、ターゲット21をアルミニウムとし、上記スパッタリング装置SMによって基板Sw表面にアルミニウム膜を成膜する場合を例に成膜方法を説明する。
【0023】
真空チャンバ1内に、ターゲット21、プラテンリング7や防着板8などの各種の部品をセットした後、真空ポンプ61を作動させて気密保持された真空チャンバ1内を真空排気する。次に、図外の真空搬送ロボットによりステージ4のチャックプレート42上面に基板Wを設置する。真空搬送ロボットが退避すると、下防着板82を搬送位置から成膜位置に下動する。そして、静電チャック用の電極42bに対してチャック電源43から直流電圧を印加することで、チャックプレート42上面に基板Swを静電吸着する。
【0024】
真空チャンバ1内の圧力が所定圧力(例えば、10-5Pa)に達すると、ガス管5を介してスパッタガスとしてのアルゴンガスを一定の流量(例えば、アルゴン分圧が0.5Pa)で導入し、これに併せてターゲット21にスパッタ電源21cから負の電位を持つ所定電力(例えば、3~50kW)を投入する。これにより、真空チャンバ1内にプラズマが形成され、プラズマ中のアルゴンガスのイオンでターゲット21のスパッタ面21bがスパッタリングされ、ターゲット21からのスパッタ粒子が基板Swに付着、堆積してアルミニウム膜が成膜される。
【0025】
ここで、プラテンリング7のやせ細りや誤セットに起因して基板Swとプラテンリング7との間の隙間Cgが(局所的に)大きくなる箇所が生じることがあり、この状態でスパッタリングすると、隙間Cgの大きい箇所からより多くのスパッタ粒子が回り込み、ステージ4への基板Swの局所的な張り付きが発生して搬送トラブルが発生する。このような搬送トラブルは生産性の低下を招来するため、未然に防止する必要がある。
【0026】
そこで、本実施形態では、チャックプレート42上面に基板Swを静電吸着した状態で、スイッチ45をオン操作すると、電極42bを介して基板Swとプラテンリング7との間に交流電圧を印加する交流電源44と、交流電源44から交流電圧を印加したときに流れる電流値を測定する電流計46とを設け、制御手段CUが、交流電圧と電流計46から入力される電流値とから静電容量を測定できるように構成した。本願発明者らの知見によれば、隙間Cgがその全体に亘って略一定となるステージ4の周辺の正規位置にプラテンリング7がセットされた状態と比較して、プラテンリング7のやせ細りや誤セットに起因して上記隙間Cgが局所的に変化すると、静電容量も変化する。従って、予め実験的に求められるプラテンリング7の正規位置での静電容量を基準値とし(後述する実験1参照)、測定される静電容量が基準値から所定範囲を超えて変化していると、スパッタリングによる成膜時に、ステージ4への基板Swの局所的な張り付きを招来するプラテンリング7のやせ細りや誤セットがあると判断できる。その結果として、ステージ4への基板Swの局所的な張り付きに起因した搬送トラブルを未然に防止することができる。
【0027】
次に、上記効果を確認するために、上記スパッタリング装置SMを用いて次の実験を行った。即ち、実験1では、基板SwをΦ300nmのシリコンウエハとし、ターゲット21をΦ400mmのAl製のものを用い、ステージ4のチャックプレート42上に基板Swを設置し、電極42bに電圧印加して基板Swを静電吸着した。本実験1では、プラテンリング7は、静電吸着された基板Swとプラテンリング7との間の隙間Cgがその全体に亘って略一定となる位置(正規位置)にセットされ、当該隙間Cgは0.23mmであった。この状態で基板Swとプラテンリング7との間に例えば10kHzの交流電圧を10V印加し、このときの静電容量は1nFであり、この測定された静電容量を基準値とした。そして、真空チャンバ1内の圧力が所定圧力(例えば、1×10-5Pa)に達すると、マスフローコントローラ51を制御してアルゴンガスを所定の流量(例えば、100sccm)で導入した。これと併せて、スパッタ電源21cからターゲット21に負の電位を持つ直流電力を例えば5kW投入することにより、真空チャンバ1内にプラズマ雰囲気が形成され、ターゲット21のスパッタ面21bをスパッタリングすることで飛散したスパッタ粒子を基板Swに付着、堆積させてアルミニウム膜を成膜した。成膜後、基板Swをステージ4から真空搬送ロボットに受け渡す際、ステージ4(チャックプレート42)への基板Swの局所的な張り付きはなく、搬送トラブルが発生しないことが確認された。
【0028】
次に、実験2として、ブラストによる剥離処理が繰り返し施されてやせ細った(内縁側部分71の肉厚が薄くなった)プラテンリング7をセットし、チャックプレート42上に基板Swを静電吸着した。静電吸着された基板Swとプラテンリング7との間の隙間Cgは0.59mmに変化し、この状態で静電容量を測定したところ、0.3nFであった。そして、上記実験1と同様の条件を用いて、基板Swにアルミニウム膜を成膜した。成膜後、基板Swをステージ4から真空搬送ロボットに受け渡す際、ステージ4(チャックプレート42)への基板Swの局所的な張り付きが発生したことが確認された。このため、測定される静電容量が基準値から-0.7nFを超えて変化すると、プラテンリング7のやせ細りがあると判断できることが判った。
【0029】
以上の実験によれば、隙間Cgの変化に伴い、測定される静電容量も変化することが確認された。さらに、ステージ4への基板Swの局所的な張り付きを招来するプラテンリング7のやせ細りや誤セットがあると、測定される静電容量が基準値から予め実験等により設定した所定範囲(±0.7nF)を超えて変化することが判った。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、真空処理装置をスパッタリング装置SMとした場合を例に説明したが、真空チャンバ内に、ステージの周囲に間隔を存してリング状の防着板が設けられる真空処理装置であれば、これに限定されるものではなく、本発明を例えばドライエッチング装置にも適用できる。ドライエッチング装置においても防着板の表面に反応生成物が付着して堆積膜が形成され、この堆積膜を剥離するブラスト等の剥離処理が施されるため、本発明を適用することで上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0031】
上記実施形態では、電極42bを介して基板Swとプラテンリング7との間に交流電圧を印加したが、図3に示すように、チャックプレート42の上面(基板Sw載置面)に、チャックプレート42の外周に沿って間隔を存して複数個(図3に示す例では4個)の電極42cを設け、スイッチ47a,47bの操作により何れか1つの電極42cを選択し、交流電源44からその選択した電極42cを介して基板Swとプラテンリング7との間に交流電圧を印加できるように構成してもよい。この場合、交流電圧を印加する電極42cをスイッチ47a,47bにより変更して夫々の静電容量(またはインピーダンス値)を測定することができ、静電容量の局所的な偏り(方向)を検出することができる。これによりプラテンリング7とチャックプレート42の位置関係、つまり、プラテンリング7がどの方向に誤セットされているかを検出することができる。あるいは、成膜処理中に電極42cを変更して夫々の静電容量(またはインピーダンス値)を測定し、測定した静電容量(インピーダンス値)に差異が生じた場合には、その差異に応じて基板Swの搬送位置を調整し、局所的な隙間の変化による搬送トラブルを未然に防止することができる。
【0032】
上記実施形態では、基板Swとプラテンリング7との間の隙間Cgを管理する場合を例に説明したが、環状の防着板はプラテンリング7に限定されず、例えば基板Swと下防着板82との間の隙間Cg2を管理する場合にも本発明を適用することができる。この場合、図4に示すように、治具である管理用基板9を用いて静電容量を測定し、その静電容量を基に基板Swと下防着板82との間の隙間Cg2を管理することができる。管理用基板9は、円板状の基部91と、基部91の外周部から下方に&#64085;出する環状の突出部92とで構成されており、突出部92の一部である第1部分92aが導電性材料で形成され、残りの第2部分92bが絶縁材料で形成されている。下防着板82の下面には電極82aが設けられ、この電極82aを介して下防着板82に通電できるようになっている。尚、突出部92の一部だけでなく、基部91の一部も導電性材料で形成されていてもよい。図4に示すように、管理用基板9を配置し、管理用基板9の第1部分92aとステージ42上面に設けられた図4(a)に示す右側の電極42cとを接触させる。この状態で、図3に示す例と同様にスイッチ47a,47bの操作により上記電極82cを選択し、交流電源44からその選択した電極42cと下防着板82の電極82aとの間に交流電圧を印加し、静電容量(またはインピーダンス値)を測定する。そして、管理用基板9を周方向に90度回転させた後、静電容量(またはインピーダンス値)を測定する。これを繰り返して、静電容量の局所的な偏り(方向)を検出することができる。これにより、プラテンリング7がどの方向に誤セットされているかを検出することができる。尚、管理用基板9としては、図4に示すものに限定されず、スイッチ47a,47bにより選択された電極42cと接触して導通する導電性部分を有するものであればよい。
【0033】
また、チャックプレートが基板Swよりも大きい面積を持つ場合には、基板Swの径方向外側で露出するチャックプレートの周縁部を覆うカバーリングと称される環状の防着板が一般に配置されるが、基板Swとカバーリングとの間の隙間を管理する場合にも本発明を適用することができる。
【0034】
また、ステージ42の外周面42dとプラテンリング7との隙間Cg3を管理する場合にも本発明を適用することができる。即ち、図5に示すように、ステージ42の外周面42dに周方向に間隔を存して複数(図5に示す例では4個)の電極42eを設け、図3に示す例と同様にスイッチ47a,47bの操作により何れか1つの電極42eを選択し、交流電源44からその選択した電極42eとプラテンリング7との間に交流電圧を印加できるように構成してもよい。この場合も、交流電圧を印加する電極42eを変更して夫々の静電容量(またはインピーダンス値)を測定し、静電容量の局所的な偏り(方向)を検出することができる。これによりプラテンリング7とチャックプレート42の位置関係、つまり、プラテンリング7がどの方向に誤セットされているかを検出することができる。あるいは、成膜処理中に電極42eを変更して夫々の静電容量(またはインピーダンス値)を測定し、測定した静電容量(インピーダンス値)に差異が生じた場合には、その差異に応じて基板Swの搬送位置を調整し、局所的な隙間の変化による搬送トラブルを未然に防止することができる。尚、図5に示す例では、ステージ42の外周面42dにのみ電極(静電チャック用電極を除く)42eを設けているが、ステージ42の上面から外周面42dに亘って電極42eを設けてもよい。また、絶縁体33の上面に電極33aを設け、この電極33aを介してプラテンリング7に通電しているが、プラテンリング7に直接通電してもよい。
【符号の説明】
【0035】
Cg…プラテンリングと基板との間の隙間、Cg2…下防着板と基板との間の隙間、Cg3…プラテンリングとステージとの間の隙間、CU…制御手段(隙間管理手段)、SM…スパッタリング装置(真空処理装置)、Sw…基板(被処理基板)、1…真空チャンバ、4…ステージ、41…基台、42…チャックプレート、42c…静電チャック用の電極、42e…電極、43…交流電源、7…プラテンリング(防着板)、82…下防着板(防着板)。
図1
図2
図3
図4
図5