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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】映像処理装置及び映像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/01 20060101AFI20230911BHJP
【FI】
H04N7/01 270
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019134107
(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2021019295
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰子
(72)【発明者】
【氏名】神田 菊文
【審査官】秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-033438(JP,A)
【文献】特開2007-081500(JP,A)
【文献】特開2014-165886(JP,A)
【文献】特開2013-046154(JP,A)
【文献】特開2009-260930(JP,A)
【文献】特開2010-103985(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0255344(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偶数番フレーム及び奇数番フレームからなる高フレームレート映像を処理する映像処理装置であって、
前記偶数番フレーム及び前記奇数番フレームの順序が反転するフレーム反転を検出するフレーム反転検出部を備え、
前記フレーム反転検出部は、
前記高フレームレート映像における対象フレームごとに、前記対象フレームの1つ前の直前フレーム及び前記対象フレームの1つ後の直後フレームの少なくとも一方を含む複数の参照フレームのそれぞれの画像に対する前記対象フレームの画像の差分の大きさを表す差分情報を計算する計算部と、
前記差分情報に基づいて、前記対象フレームについて前記フレーム反転が発生したか否かを判定する判定部と、を有することを特徴とする映像処理装置。
【請求項2】
前記複数の参照フレームは、前記直前フレーム及び前記直後フレームの両方を含むことを特徴とする請求項1に記載の映像処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記対象フレームの1つである第1対象フレームについて前記計算部が計算した前記差分情報が、前記第1対象フレームの1つ前の第2対象フレームについて前記計算部が計算した前記差分情報に比べて増加した場合、前記第1対象フレームについて前記フレーム反転が発生したと判定することを特徴とする請求項2に記載の映像処理装置。
【請求項4】
前記フレーム反転検出部が前記フレーム反転を検出した場合、前記検出したフレーム反転を訂正するフレーム反転訂正部をさらに備える、請求項1に記載の映像処理装置。
【請求項5】
前記複数の参照フレームは、前記直前フレームと、前記対象フレームの3つ前のフレームとを含むことを特徴とする請求項4に記載の映像処理装置。
【請求項6】
前記複数の参照フレームは、前記直後フレームと、前記対象フレームの3つ後のフレームとを含むことを特徴とする請求項4に記載の映像処理装置。
【請求項7】
前記フレーム反転訂正部は、前記対象フレームの1つである第1対象フレームについて前記計算部が計算した前記差分情報が、前記第1対象フレームの1つ前の第2対象フレームについて前記計算部が計算した前記差分情報に比べて増加したか又は減少したかに応じて、前記第1対象フレームが前記フレーム反転により先行したフレームであるか又は前記フレーム反転により後続したフレームであるかを判定することを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の映像処理装置。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1に記載の映像処理装置として機能させる
ことを特徴とする映像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像処理装置及び映像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フレーム周波数が120Hz(毎秒120フレーム)又は240Hz(毎秒240フレーム)といった高フレームレート映像の普及が進んでいる。高フレームレート映像は、動きが速い被写体を鮮明かつ滑らかに表示できることが特徴であり、スポーツなどのコンテンツに適している。なお、以下において、「映像」とは動画を意味し、「画像」とは静止画を意味するものとする。
【0003】
高フレームレート映像は、フレーム周波数が高い分、非圧縮形式のビットレートが高くなるため、伝送に用いるインターフェースの選択が課題となる。例えば8K 120Hz非圧縮映像(最大144Gbps)を伝送可能なインターフェースとして、ARIB STD-B58に規定されるU-SDIが存在し、カメラ、ディスプレイ、非圧縮レコーダなどの入出力に使用されている。
【0004】
他方、非特許文献1に記載されているように、高フレームレート映像用の符号化・復号装置などでは、コストや実装面を勘案して、入力映像を時空間方向に分割し、4K 60Hz映像までに対応している12G-SDIやDisplay Portなどを複数用いて伝送することがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】“NHK技研 研究年報2017”、P.9、[online]、2018年5月発行、日本放送協会、[2019年3月19日検索]、インターネット<URL:https://www.nhk.or.jp/strl/publica/nenpou-h29/2017-chap01.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に記載されているように60Hz映像用のインターフェースを利用して120Hz映像を取り扱う際には、120Hz入力映像を1フレームずつ間引いた60Hz映像を偶数番フレームと奇数番フレームとの2組に分けて生成し、120Hz映像を出力する際には2組の60Hz映像を合成する。
【0007】
しかしながら、これらの生成や合成時の誤動作により、120Hz出力映像において偶数番フレームと奇数番フレームとの順序が反転することがある。このような異常が発生した際には、フレーム番号が前後することが繰り返されるため、出力映像中で物体が行ったり来たりする不自然な動きを目視によって確認することができるものの、このような状態が生じた瞬間を検出することは困難であるという問題点がある。
【0008】
さらに、フレーム番号情報を持つインターフェースであれば反転したフレームを検出及び訂正して出力することができるが、そうでない場合には検出及び訂正することは困難であるという問題点がある。
【0009】
そこで、本発明は、フレーム番号情報を持たないインターフェースを用いる場合であってもフレーム反転を検出可能な映像処理装置及び映像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様に係る映像処理装置は、偶数番フレーム及び奇数番フレームからなる高フレームレート映像を処理する装置である。前記映像処理装置は、前記偶数番フレーム及び前記奇数番フレームの順序が反転するフレーム反転を検出するフレーム反転検出部を備える。前記フレーム反転検出部は、前記高フレームレート映像における対象フレームごとに、前記対象フレームの1つ前の直前フレーム及び前記対象フレームの1つ後の直後フレームの少なくとも一方を含む複数の参照フレームのそれぞれの画像に対する前記対象フレームの画像の差分の大きさを表す差分情報を計算する計算部と、前記差分情報に基づいて、前記対象フレームについて前記フレーム反転が発生したか否かを判定する判定部とを有する。
【0011】
第2の態様に係る映像処理プログラムは、偶数番フレーム及び奇数番フレームからなる高フレームレート映像を処理するプログラムである。前記映像処理プログラムは、前記偶数番フレーム及び前記奇数番フレームの順序が反転するフレーム反転を検出するフレーム反転検出ステップを含む。前記フレーム反転検出ステップは、前記高フレームレート映像における対象フレームごとに、前記対象フレームの1つ前の直前フレーム及び前記対象フレームの1つ後の直後フレームの少なくとも一方を含む複数の参照フレームのそれぞれの画像に対する前記対象フレームの画像の差分の大きさを表す差分情報を計算する計算ステップと、前記差分情報に基づいて、前記対象フレームについて前記フレーム反転が発生したか否かを判定する判定ステップとを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フレーム番号情報を持たないインターフェースを用いる場合であってもフレーム反転を検出可能な映像処理装置及び映像処理プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態及び第2実施形態に係る映像伝送システムの構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る映像処理装置の構成を示す図である。
図3】第1実施形態に係る映像処理装置の動作を示す図である。
図4】第1実施形態に係る映像処理装置の動作を示す図である。
図5】第1実施形態に係る映像処理装置の動作を示す図である。
図6】第1実施形態に係る映像処理装置の動作フロー例を示す図である。
図7】第2実施形態に係る映像処理装置の構成を示す図である。
図8】第2実施形態に係る映像処理装置の動作を示す図である。
図9】第2実施形態に係る映像処理装置の動作を示す図である。
図10】第2実施形態に係る映像処理装置の動作を示す図である。
図11】第2実施形態に係る映像処理装置の動作フロー例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、実施形態に係る映像処理装置について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0015】
<第1実施形態>
(映像伝送システムの構成)
まず、本実施形態に係る映像伝送システムについて説明する。図1は、本実施形態に係る映像伝送システムの構成を示す図である。
【0016】
図1(a)に示すように、本実施形態に係る映像伝送システムは、送信側装置1と、受信側装置2とを有する。
【0017】
送信側装置1には、フレーム周波数が120Hz(毎秒120フレーム)又は240Hz(毎秒240フレーム)といった高フレームレート映像が入力される。以下において、高フレームレート映像のフレーム周波数が120Hzである一例について主として説明する。
【0018】
送信側装置1は、60Hz映像用のインターフェースを2つ利用して120Hz映像を受信側装置2に伝送する。具体的には、送信側装置1は、分割部11を有する。
【0019】
分割部11は、図1(b)に示すように、120Hz入力映像を1フレームずつ間引いた60Hz映像を偶数番フレーム(even frames)と奇数番フレーム(odd frames)との2組に分けて生成し、2組の60Hz映像を2つの60Hz映像用のインターフェースを介して受信側装置2に伝送する。本実施形態において、60Hz映像用のインターフェースは、フレーム番号情報を持たないインターフェースであるものとする。
【0020】
受信側装置2は、偶数番フレームと奇数番フレームとを送信側装置1から受信する。受信側装置2は、合成部21と、映像処理装置22とを有する。
【0021】
合成部21は、図1(b)に示すように、受信した偶数番フレーム及び奇数番フレームを合成し、高フレームレート映像である120Hz合成映像を映像処理装置22に出力する。ここで、分割部11又は合成部21の誤動作により、合成部21が出力する120Hz出力映像において、偶数番フレームと奇数番フレームとの順序が反転することがある。
【0022】
映像処理装置22は、合成部21が出力する高フレームレート映像である120Hz合成映像を処理する。本実施形態において、映像処理装置22は、偶数番フレーム及び奇数番フレームの順序が反転するフレーム反転を検出する。
【0023】
(映像処理装置の構成)
次に、本実施形態に係る映像処理装置22の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る映像処理装置22の構成を示す図である。
【0024】
図2に示すように、本実施形態に係る映像処理装置22は、入力部221と、バッファ部222と、フレーム反転検出部223と、出力部224とを有する。
【0025】
入力部221には、高フレームレート映像である120Hz合成映像が入力される。入力部221は、入力された120Hz合成映像をバッファ部222に出力する。
【0026】
バッファ部222は、入力部221から出力される120Hz映像を構成する各フレームを入力順に一時的に蓄積する。
【0027】
フレーム反転検出部223は、バッファ部222に蓄積されたフレームからフレームを順次読み出し、偶数番フレーム及び奇数番フレームの順序が反転するフレーム反転を検出する。フレーム反転検出部223は、フレーム反転が検出されない場合、バッファ部222から読み出したフレームを出力部224に順次出力する。一方、フレーム反転検出部223は、フレーム反転が検出された場合、フレーム反転が検出されたことを示す情報を出力部224に出力する。フレーム反転検出部223は、計算部223aと、判定部223bとを有する。
【0028】
計算部223aは、高フレームレート映像(120Hz映像)における対象フレームごとに、複数の参照フレームのそれぞれの画像に対する対象フレームの画像の差分の大きさを表す差分情報を計算する。本実施形態において、複数の参照フレームは、対象フレームの1つ前の直前フレームと対象フレームの1つ後の直後フレームとを含む。
【0029】
判定部223bは、計算部223aが計算する差分情報に基づいて、対象フレームについてフレーム反転が発生したか否かを判定する。本実施形態において、判定部223bは、対象フレームの1つである第1対象フレームについて計算部223aが計算した差分情報が、第1対象フレームの1つ前の第2対象フレームについて計算部223aが計算した差分情報に比べて増加した場合、第1対象フレームについてフレーム反転が発生したと判定する。
【0030】
出力部224は、フレーム反転検出部223から出力されるフレームを外部(例えば、外部の表示装置)に順次出力する。出力部224は、フレーム反転検出部223から出力されるフレームの画像を順次出力する表示装置であってもよい。出力部224は、フレーム反転が検出されたことを示す情報をフレーム反転検出部223が出力する場合、当該情報を出力する。
【0031】
(映像処理装置の動作)
次に、本実施形態に係る映像処理装置22の動作について説明する。図3乃至図4は、本実施形態に係る映像処理装置22の動作を示す図である。図3乃至図4において、横軸のフレーム番号(Frame number)は正しい表示順におけるフレーム番号を示している。
【0032】
図3(a)は、ある映像内で等速運動をする物体の画面位置(縦軸)とフレーム表示順(横軸)の関係を示す。図3(a)に示す画面位置(position)は、例えば1つのフレームの画像に含まれる物体の水平方向(x)又は垂直方向(y)の位置を示している。
【0033】
図3(a)に示すように、画像に含まれる物体の位置は、フレーム番号の増加につれて等間隔で変化する。全ての物体が等速運動をしているわけではないが、高フレームレート映像では連続するフレームの時間問隔が短く、変化が微小であるため、ここでは近似的に等速運動しているものとして扱っている。
【0034】
図3(b)及び(c)は、図3(a)の映像にフレーム反転が起きた場合を示している。
【0035】
具体的には、図3(b)は、偶数番フレームが奇数番フレームよりも先行した場合を示している。フレーム番号“4”以降の偶数番フレームが奇数番フレームよりも先行し、フレーム番号が0,1,2,4,3,6,5,・・・となっている。
【0036】
図3(c)は、奇数番フレームが偶数番フレームよりも先行した場合を示している。フレーム番号“3”以降の奇数番フレームが偶数番フレームよりも先行し、フレーム番号が0,1,3,2,5,4,7,6,・・・となっている。
【0037】
ここで、n番目のフレーム(対象フレーム)の物体の画面位置PをPとし、n-1番目のフレーム(直前フレーム)の物体の画面位置PをPn-1とし、n+1番目のフレーム(直後フレーム)の物体の画面位置PをPn+1とすると、Pの時問方向の二階微分ΔPの絶対値は、次の式(1)により計算される。
【0038】
|ΔP|=|2P-Pn-1-Pn+1| ・・・(1)
図3(a)乃至(c)のそれぞれに対する|ΔP|の計算結果を図4(a)乃至(c)に示す。
【0039】
図4(a)に示すように、図3における映像の物体は等速運動をしているため、|ΔP|は0になる。一方、フレーム反転が発生した図3(b)及び(c)は、物体の位置が増減を繰り返すため、ΔPは正負の値を交互にとり、その絶対値|ΔP|は徐々に大きくなった後、一定値を取る。このような原理によって、フレーム反転検出部223は、フレーム反転を検出することが可能である。
【0040】
同様の手法を8K 120Hz映像に適用した結果を図5に示す。
【0041】
図5は、n番目のフレームの輝度コンポーネントYをYとし、時間方向の二階微分ΔY=2Y-Yn-1-Yn+1の分散(Variance)を縦軸にとった場合を示している。
【0042】
例えば、フレーム反転検出部223の計算部223aは、各対象フレームについて、画像位置(x、y)ごとにΔYを計算するととともに、フレーム単位で分散を計算する。本実施形態において、ΔYの分散は、複数の参照フレームのそれぞれの画像に対する対象フレームの画像の差分の大きさを表す差分情報に相当する。
【0043】
以下において、ΔYの分散を差分情報として用いる一例について主として説明するが、ΔYの他の統計量、例えばΔYの平均を差分情報として用いてもよい。
【0044】
また、本実施形態において、フレーム反転検出部223の計算部223aは、8Kのフレーム全体を計算に使用しているが、計算量を減らすため、4Kなどに縮小してから計算を行ってもよいし、画像の一部分、例えば中央の2K領域などに対して計算を行ってもよい。
【0045】
図5(a)はフレーム番号順に正しく表示される場合、図5(b)及び(c)はそれぞれ偶数番フレーム及び奇数番フレームが先行するフレーム反転が発生した場合を示している。
【0046】
図5(a)に比べて、図5(b)及び(c)のΔYの分散が大きい。このため、フレーム反転検出部223の判定部223bは、ΔYの分散に基づいて、対象フレームについてフレーム反転が発生したか否かを判定可能である。例えば、フレーム反転検出部223の判定部223bは、ある1つのフレーム(第1対象フレーム)について計算したΔYの分散が、このフレームの直前のフレーム(第2対象フレーム)について計算したΔYn-1の分散に比べて増加した場合、第1対象フレームについてフレーム反転が発生したと判定する。
【0047】
(映像処理装置の動作フローの一例)
次に、本実施形態に係る映像処理装置22の動作フロー例について説明する。図6は、本実施形態に係る映像処理装置22の動作フロー例を示す図である。
【0048】
図6に示すように、ステップS11において、フレーム反転検出部223の計算部223aは、n番目のフレームのΔYの分散(Vとする)を差分情報として計算する。
【0049】
ステップS12において、フレーム反転検出部223の判定部223bは、1つ前(n-1番目)のフレームのΔYn-1の分散(Vn-1とする)とVとを比較し、VがVn-1から増加したか否かを判定する。
【0050】
フレーム反転検出部223の判定部223bは、Vn-1とVとをそのまま比較することに限らず、Vn-1に係数を付与したものをVと比較してもよい。例えば、フレーム反転検出部223の判定部223bは、Vと1.2×Vn-1とを比較し、Vが1.2×Vn-1から増加した(V>1.2×Vn-1)か否かを判定してもよい。
【0051】
また、フレーム反転検出部223の判定部223bは、Vが複数フレーム連続して増加したか否かを判定してもよい。例えば、フレーム反転検出部223の判定部223bは、V>Vn-1>Vn-2という条件が満たされたか否かを判定してもよい。このような判定は、シーンチェンジ(絵柄が変化したこと)による誤検出を防ぐために有効である。さらに、フレーム反転検出部223の判定部223bは、上述したような係数を導入し、V>Vn-1>Vn-2かつV>1.1×Vn-2という条件が満たされたか否かを判定してもよい。このような判定は、固定撮影の映像など、フレーム反転による分散の変化が小さい場合に特に効果的である。
【0052】
なお、係数の値は“1.2”や“1.1”とする場合に限らず、他の値を選択してもよい。
【0053】
ステップS12において「Yes」である場合、ステップS13において、フレーム反転検出部223の判定部223bは、n番目のフレームについてフレーム反転が発生していると判定し、処理を終了する。
【0054】
一方、ステップS12において「No」である場合、ステップS14において、フレーム反転検出部223の判定部223bは、1つ後(n+1番目)のフレームが最後であるか否かを判定する。ステップS12において「Yes」である場合は処理を終了する。
【0055】
ステップS12において「No」である場合、ステップS15において、フレーム反転検出部223の計算部223aは、n+1をnに代入し、ステップS11からの処理を再開する。
【0056】
なお、図6のステップS13でフレーム反転を検出した際に処理を終了しているが、フレーム反転検出部223の判定部223bは、その後にステップS14に処理を進め、フレーム反転が元に戻ったか否かを判定しても良い。その際は、フレーム反転を検出する前後のVを保存しておき、フレーム反転を検出する前のVに近づいたこと(ステップS12の逆)を判定するようにすればよい。
【0057】
このように、本実施形態によれば、フレーム番号情報を持たないインターフェースを用いる場合であっても、各フレームの画像に基づいて、高フレームレート映像の偶数、奇数番フレームの反転を検出できる。
【0058】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を主として説明する。
【0059】
第1実施形態ではフレーム反転を検出することができるが、フレーム反転を訂正することはできない。本実施形態では、フレーム反転を検出した際にそのフレーム反転を訂正できるようにする。
【0060】
(映像処理装置の構成)
図7は、本実施形態に係る映像処理装置22の構成を示す図である。
【0061】
図7に示すように、本実施形態に係る映像処理装置22は、フレーム反転訂正部225をさらに有する点で第1実施形態とは異なっている。フレーム反転訂正部225は、フレーム反転検出部223がフレーム反転を検出した場合、検出したフレーム反転を訂正し、訂正後のフレームを出力部224に出力する。
【0062】
また、本実施形態において、フレーム反転検出部223の計算部223aは、対象フレームについて差分情報を計算する際に参照する複数の参照フレームとして、対象フレームの1つ前のフレーム(直前フレーム)と、対象フレームの3つ前のフレームとを用いる。
【0063】
或いは、フレーム反転検出部223の計算部223aは、対象フレームについて差分情報を計算する際に参照する複数の参照フレームとして、対象フレームの1つ後のフレーム(直後フレーム)と、対象フレームの3つ後のフレームとを用いてもよい。
【0064】
フレーム反転訂正部225は、対象フレームの1つである第1対象フレームについて計算部223aが計算した差分情報が、第1対象フレームの1つ前の第2対象フレームについて計算部223aが計算した差分情報に比べて増加した場合、第1対象フレームがフレーム反転により先行したフレームであると判定し、第1対象フレームの順序を後にするように訂正する。
【0065】
一方、フレーム反転訂正部225は、対象フレームの1つである第1対象フレームについて計算部223aが計算した差分情報が、第1対象フレームの1つ前の第2対象フレームについて計算部223aが計算した差分情報に比べて減少した場合、第1対象フレームがフレーム反転により後続したフレームであると判定し、第1対象フレームの順序を前にするように訂正する。
【0066】
(映像処理装置の動作)
次に、本実施形態に係る映像処理装置22の動作について説明する。図8乃至図10は、本実施形態に係る映像処理装置22の動作を示す図である。図8乃至図10において、横軸のフレーム番号(Frame number)は正しい表示順におけるフレーム番号を示している。
【0067】
図8及び図9に、図3と同じ例における|2P-Pn-1-Pn-3|及び|2P-Pn+1-Pn+3|の計算結果をそれぞれ示す。具体的には、図8(a)及び図9(a)は表示順が正しい場合を示し、図8(b)及び図9(b)は偶数番フレームが奇数番フレームよりも先行した場合を示し、図8(c)及び図9(c)は奇数番フレームが偶数番フレームよりも先行した場合を示している。
【0068】
図8(a)及び図9(a)に示すように、表示順が正しい場合は、|2P-Pn-1-Pn-3|及び|2P-Pn+1-Pn+3|の計算結果は同じ値になり、一定値をとる。
【0069】
一方、図8(b)及び(c)に示すように、|2P-Pn-1-Pn-3|の計算結果は、反転した先行するフレーム(すなわち、図8(b)及び(c)の横軸のそれぞれ偶数、奇数番フレーム)では、表示順が正しい場合よりも大きい値になり、反転した後続するフレーム(すなわち、図8(b)及び(c)の横軸のそれぞれ奇数、偶数番フレーム)では、0になる。0になるときは、正しい表示順で、第1実施形態で示した二階微分ΔPを計算していることに相当する。
【0070】
また、|2P-Pn+1-Pn+3|を計算した図9(b)及び(c)は、図8(b)及び(c)と先行、後続フレームの関係が逆になる。
【0071】
したがって、|2P-Pn-1-Pn-3|及び|2P-Pn+1-Pn+3|の少なくともいずれかを計算することにより、n番目のフレームが反転した先行、後続フレームのいずれかであるかを判定し、フレーム反転を訂正することができる。
【0072】
図10は、8K 120Hz映像に対して同様の手法を適用した例を示している。具体的には、フレーム反転検出部223の計算部223aが、n番目のフレーム(横軸)の輝度コンポーネントYをYとし、前方差分Difprev=2Y-Yn-1-Yn-3の分散を計算した例を示している。同様に、図9に相当する計算は後方差分DifBack=2Y-Yn+1-Yn+3の分散によって求められる。
【0073】
本実施形態において、前方差分Difprevの分散は、複数の参照フレームのそれぞれの画像に対する対象フレームの画像の差分の大きさを表す差分情報に相当する。前方差分Difprevを計算することにより、n番目のフレームが反転した先行、後続フレームのいずれかであるかを判定し、フレーム反転を訂正することができる。
【0074】
本実施形態では、フレーム反転の訂正に前方差分Difprevのみを用いる一例について説明するが、後方差分DifBackのみを用いてフレーム反転を訂正してもよいし、前方差分Difprev及び後方差分DifBackの両方を用いても良い。また、フレーム反転の検出に第1実施形態の手法を用いた後、本実施形態に係る訂正処理を行っても良い。
【0075】
(映像処理装置の動作フローの一例)
次に、本実施形態に係る映像処理装置22の動作フロー例について説明する。図11は、本実施形態に係る映像処理装置22の動作フロー例を示す図である。
【0076】
図11に示すように、ステップS21において、フレーム反転検出部223の計算部223aは、n番目のフレームの前方差分Difprevの分散を差分情報として計算する。
【0077】
ステップS22において、フレーム反転検出部223の判定部223bは、Difprevがn-1番目のフレームの前方差分Difprevn-1の分散と同程度(例えば、±5%など)であるか否かを判定する。
【0078】
ステップS22において「Yes」である場合、フレーム反転検出部223の判定部223bは、フレーム反転が発生していないと判定し、ステップS26に処理を進める。
【0079】
一方、ステップS22において「No」である場合、フレーム反転検出部223の判定部223bは、フレーム反転が発生していると判定し、ステップS23に処理を進める。
【0080】
ステップS23において、フレーム反転訂正部225は、DifprevがDifprevn-1に対して増加したか否かを判定する。
【0081】
ステップS23において「Yes」である場合、ステップS24において、フレーム反転訂正部225は、n番目のフレームがフレーム反転によって先行したフレームであると判定し、n番目のフレームの表示順を1つ後に訂正し、ステップS26に処理を進める。
【0082】
一方、ステップS23において「No」である場合、ステップS25において、フレーム反転訂正部225は、n番目のフレームがフレーム反転によって後続したフレームであると判定し、n番目のフレームの表示順を1つ前に訂正し、ステップS26に処理を進める。
【0083】
一方、ステップS26において、フレーム反転検出部223の判定部223b又はフレーム反転訂正部225は、n番目のフレームが最後のフレームであるか否かを判定する。ステップS26において「Yes」である場合は処理を終了する。ステップS26において「No」である場合、ステップS27において、フレーム反転検出部223の計算部223aは、n+1をnに代入し、ステップS21からの処理を再開する。なお、ステップS24またはS25で表示順を訂正した場合、ステップS21乃至S23のDifprevおよびDifprevn-1は訂正が適用された後の状態で計算される。
【0084】
このように、本実施形態によれば、フレーム番号情報を持たないインターフェースを用いる場合であっても、各フレームの画像に基づいて、高フレームレート映像の偶数、奇数番フレームの反転を訂正できる。
【0085】
<その他の実施形態>
映像処理装置22が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。また、映像処理装置22が行う各処理を実行する回路を集積化し、映像処理装置22を半導体集積回路(チップセット、SoC)により構成してもよい。
【0086】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 :送信側装置
2 :受信側装置
11 :分割部
21 :合成部
22 :映像処理装置
221 :入力部
222 :バッファ部
223 :フレーム反転検出部
223a :計算部
223b :判定部
224 :出力部
225 :フレーム反転訂正部
図1
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図11