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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-08
(45)【発行日】2023-09-19
(54)【発明の名称】セラミックス基板の輸送用の梱包容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/86 20060101AFI20230911BHJP
【FI】
B65D85/86 400
B65D85/86 ZAB
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021574061
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2021002745
(87)【国際公開番号】W WO2021153583
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2020014207
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 政則
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛正
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英樹
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-154582(JP,A)
【文献】特開2003-273189(JP,A)
【文献】特開2019-018866(JP,A)
【文献】特開平11-049266(JP,A)
【文献】特開2014-088194(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0114955(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセラミックス基板が重ねられて成るセラミックス基板セットを収納するセラミックス基板の輸送用の梱包容器であって、
矩形の底面と、
前記底面の4つの縁にそれぞれ接続される4つの側面と、
を設け、
前記セラミックス基板セットの端面に接触して前記セラミックス基板セットを一体として保持するように、前記4つの側面のうち少なくとも対向する2つの側面に、内側向きの高さ2mm以上の側面凸部が設けられ、
前記セラミックス基板セットの端面に接触して前記セラミックス基板セットを一体として保持するように、前記底面に、内側向きの高さ2mm以上の底面凸部が設けられたことを特徴とするセラミックス基板の輸送用の梱包容器。
【請求項2】
前記セラミックス基板セットの両端の2つのセラミックス基板の外側面が、前記4つの側面のうち対向する2つの側面にそれぞれ向き合うように前記セラミックス基板セットを収納する構成を有し、
前記2つの側面のそれぞれに、前記側面凸部として、深さ方向に連続的に延びる2列以上の側面凸部を設け、
前記底面に、前記底面凸部として、前記2つの側面の一方側から他方側への方向に連続的に延びる2列以上の底面凸部を設けることを特徴とする請求項1記載のセラミックス基板の輸送用の梱包容器。
【請求項3】
前記セラミックス基板セットの片端のセラミックス基板の外側面が、前記底面に向き合うように前記セラミックス基板セットを収納する構成を有し、
前記4つの側面のそれぞれに、前記側面凸部として、深さ方向に連続的に延びる2列以上の側面凸部を設けることを特徴とする請求項1記載のセラミックス基板の輸送用の梱包容器。
【請求項4】
前記底面に、前記底面凸部として、前記4つの側面のうち対向する2つの側面の一方側から他方側への方向に連続的に延びる2列の底面凸部を設けることを特徴とする請求項3記載のセラミックス基板の輸送用の梱包容器。
【請求項5】
前記底面に、前記底面凸部として、前記4つの側面のうち対向する2つの側面の一方側から他方側への方向に連続的に延びる2列の底面凸部を設けるとともに、前記4つの側面のうち、他の対向する2つの側面の一方側から他方側への方向に連続的に延びる2列の底面凸部を設けることを特徴とする請求項3記載のセラミックス基板の輸送用の梱包容器。
【請求項6】
前記底面に、前記底面凸部として、前記4つの側面のうち対向する2つの側面の一方側から他方側への方向に断続的に延びる2列の底面凸部を設けることを特徴とする請求項3記載のセラミックス基板の輸送用の梱包容器。
【請求項7】
前記底面に、前記底面凸部として、前記4つの側面のうち対向する2つの側面の一方側から他方側への方向に連続的に延びる1列の底面凸部を設けるとともに、前記4つの側面のうち、他の対向する2つの側面の一方側から他方側への方向に連続的に延びる1列の底面凸部を設け、
2列の底面凸部は、前記底面の略中央で交差することを特徴とする請求項3記載のセラミックス基板の輸送用の梱包容器。
【請求項8】
前記底面凸部は、前記底面の縁に沿って矩形に形成される凸部をさらに含むことを特徴とする請求項7記載のセラミックス基板の輸送用の梱包容器。
【請求項9】
前記セラミックス基板セットの片端のセラミックス基板の外側面が、前記底面に向き合うように前記セラミックス基板セットを収納する構成を有し、
前記底面に、前記底面凸部として、前記底面全体の面積に対する面積の割合が25%以上の1つの底面凸部を設けることを特徴とする請求項1記載のセラミックス基板の輸送用の梱包容器。
【請求項10】
前記底面凸部と前記少なくとも対向する2つの側面の側面凸部との少なくとも一方は、半円形状またはコの字形状で突出することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のセラミックス基板の輸送用の梱包容器。
【請求項11】
前記4つの側面が前記底面に対して垂直に立ち上がる形状を有することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のセラミックス基板の輸送用の梱包容器。
【請求項12】
前記4つの側面に開口部が前記底面に対して拡がるようなテーパをつけることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のセラミックス基板の輸送用の梱包容器。
【請求項13】
開口部の枠には、前記底面に略平行で外向きにフランジが形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載のセラミックス基板の輸送用の梱包容器。
【請求項14】
前記セラミックス基板の輸送用の梱包容器の材質がプラスチックであることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のセラミックス基板の輸送用の梱包容器。
【請求項15】
前記複数のセラミックス基板の各セラミックス基板として、窒化珪素基板または窒化珪素金属接合基板を収納する構成を有することを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載のセラミックス基板の輸送用の梱包容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、おおむねセラミックス基板の輸送用の梱包容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パワーエレクトロニクス、次世代パワー半導体等の大電流を必要とする半導体素子の発展に伴って、セラミックス基板の需要は年々増加している。特に、小型化・高性能化に伴い素子の発熱が増加するにつれ、放熱を効率よく行うためにセラミックス基板の厚さは薄くなる傾向にある。
【0003】
電気製品の小型化・高性能化にともない、電子部品は小型化が進むとともに高出力化のために半導体からの発熱量は多くなる傾向にある。セラミックス基板は電子部品の電気絶縁用途として使用されるが、電子部品の小型化にともない放熱特性を向上させるために薄い基板が求められている。セラミックス基板には高電気絶縁性や高放熱特性を備えているものが多いが、硬いが脆いという特性もあり、移動・運搬時には注意を払う必要がある。また、セラミックス基板は、焼結体であるため反りや表面の凹凸があり重ねて梱包した場合に応力がかかり欠け不良や割れ不良の原因になっている。
【0004】
一方で、セラミックス基板の製造コストを下げるために、より大きな形状で製造をすることが行われている。セラミックス基板のなかで高強度・高靭性を有し高い放熱性を兼ね備えた窒化珪素基板では、220mmx220mmx0.32mmの大きさの基板が開示されている(特許文献1)。
【0005】
マガジン型ラックでは輸送容量が大きくなり、さらにセラミックス基板間や周囲に入れる緩衝材は再利用が難しいため、省資源の観点から問題となっていた。
【0006】
また、セラミックス基板同様に破壊しやすいボールレンズについては、収納・梱包し輸送する際に振動や落下による傷を防止するための輸送用の梱包容器が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、セラミックス基板の収納容器の再利用をするときに、例えば海外などに遠距離輸送した場合は、輸送先から製造者に梱包容器を送り返すのにコストがかかることがある。また、梱包容器を再利用しないときにも、省資源の観点から、梱包容器には、できるかぎり簡易的な梱包能力が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6399252号公報
【文献】特開2006-69620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年の半導体素子の発熱量の増加によるセラミックス基板部品の薄化および製造時の大型化に伴い、複数のセラミックス基板が重ねられて成るセラミックス基板セット(以下、単に「基板セット」と呼ぶ)が収納された包装容器は、輸送時における外部から包装容器への衝撃や、隣り合うセラミックス基板からの衝撃によるセラミックス基板の欠損を抑制する必要がある。
【0010】
実施形態は、このような課題を解決するものであり、基板セットが収納された梱包容器の輸送時における、外部からの衝撃および隣り合うセラミックス基板からの衝撃を抑制しつつ、基板セットの簡易梱包が可能なセラミックス基板の輸送用の梱包容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器は、複数のセラミックス基板を収納するものであって、矩形の底面と、底面の4つの縁にそれぞれ接続される4つの側面と、を設ける。4つの側面のうち、少なくとも対向する2つの側面に、内側向きの高さ2mm以上の側面凸部が設けられ、底面に、内側向きの高さ2mm以上の底面凸部が設けられる。
【0012】
より好適には、実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器は、基板セットの両端の2つのセラミックス基板の外側面が、4つの側面のうち対向する2つの側面にそれぞれ向き合うように基板セットを収納する構成を有する。そして、2つの側面のそれぞれに、側面凸部として、深さ方向に連続的に延びる2列以上の側面凸部を設け、底面に、底面凸部として、2つの側面の一方側から他方側への方向に連続的に延びる2列以上の側面凸部を設ける。この例について、本発明の第1実施形態の図1図4を用いて後述する。
【0013】
または、実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器は、基板セットの片端のセラミックス基板の外側面が、底面に向き合うように基板セットを収納する構成を有する。そして、4つの側面のそれぞれに、側面凸部として、深さ方向に連続的に延びる2列以上の底面凸部を設ける。この例について、本発明の第2実施形態の図5図11を用いて後述する。
【0014】
または、実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器は、基板セットの片端のセラミックス基板の外側面が、底面に向き合うように基板セットを収納する構成を有する。そして、底面に、底面凸部として、底面全体の面積に対する面積の割合が25%以上の1つの底面凸部を設ける。この例について、本発明の第2実施形態の図12を用いて後述する。
【0015】
梱包容器内の基板セットの表面に対する垂直方向の力により、収納されたセラミックス基板に割れなどの不良が発生しやすい。また、梱包容器内の基板セットの表面に対する水平方向にかかる力により、セラミックス基板の縁に欠けなどの不良が発生しやすい。
【0016】
さらに、梱包容器内の基板セットの隣り合うセラミックス基板同士の間、あるいは梱包容器内の基板セットの両端のセラミックス基板の外側面と梱包容器の側面との間に隙間がある場合には、梱包容器の輸送時の振動等により隣り合うセラミックス基板同士がぶつかりあい、セラミックス基板の割れや欠けなどの不良の原因となる。このとき、セラミックス基板には反りや厚さばらつきがあるため、収納数量を設定して緩衝材を使うことなくセラミックス基板だけを隙間なく梱包容器に収納することは難しい。
【0017】
本発明の第1の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器は、基板セットの両端の2つのセラミックス基板の外側面が、4つの側面のうち対向する2つの側面にそれぞれ向き合うように基板セットを収納するものである。つまり、梱包容器は、基板セットを、各セラミックス基板の縁を下にして収納するものであり、基板セットを縦置きの状態で収納するものである。この梱包容器では、基板セットの両端の2つのセラミックス基板の外側面に向き合う側面に、深さ方向に連続的に延びる内側向きの2列以上、例えば2列の側面凸部を形成する。
【0018】
このような構成により、2列の側面凸部が両端の2つのセラミックス基板平面への垂直方向のクッションとなり、収納された基板セットの各セラミックス基板の割れ不良や欠け不良を防ぐことが可能である。セラミックス基板には小さな反りがあるため、対向する2つの側面の側面凸部から軽く力をかけるようにして基板セットを梱包容器に収納することができる。また、基板セットの挿入後は複数のセラミックス基板の反りが元の形状に戻ることにより基板セットを隙間なく梱包容器に充填することが可能となる。挿入後の基板セットは、対向する2つの側面の側面凸部によるクッションと押さえつけられた基板セットが元に戻ろうとする力により梱包容器内に固定される。
【0019】
1つの側面に設けられる側面凸部(側面凸部も同様)が1つ、例えば1列である場合であっても、側面凸部の幅が広く側面凸部が占める面積の割合が側面全体の25%以上の場合は面で基板セットを固定できるため有用である。側面凸部が占める面積の割合は大きければ固定範囲が大きくなるため、側面凸部が占めるさらに好ましい面積の割合は50%以上である。側面凸部が占める面積の割合が25%未満の場合には基板セットが斜めに挿入され輸送時の振動等により側面凸部を軸にして動くことが考えられるため、側面凸部は2つ以上、例えば2列以上であることが望ましい。
【0020】
また、本発明の第1の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器では、底面に、側面凸部が設けられる2つの側面の一方側から他方側への方向に連続的に延びる内側向きの2列以上、例えば2列の側面凸部を形成する。この底面凸部は、基板セットの下縁に対する垂直方向のクッションとなる。この場合、基板セットの挿入向きは、側面凸部が両端の2つのセラミックス基板の外側面に向き合うようにする。これにより基板セットの下縁が底面凸部により2列で支えられる。
【0021】
底面凸部が1つ、例えば1列の梱包容器は、底面凸部の幅が広く底面凸部が占める割合が底面全体の25%以上の場合などには有用である。基板セットが斜めに挿入され狭い底面凸部を軸にして輸送時の振動等により上下方向に動く恐れがあるため底面凸部は2つ以上であることが望ましい。
【0022】
本発明の第2の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器は、基板セットの片端のセラミックス基板の外側面が、底面に向き合うように基板セットを収納するものである。つまり、梱包容器は、複数のセラミックス基板の平面と平面を重ね合わせて成る基板セットの平面を下にした平面置きの状態で入れた場合のものである。この梱包容器では、4つの側面に、深さ方向に連続的に延びる内側向きの2列以上、例えば2列の側面凸部を形成する。
【0023】
このような構成により、2列の側面凸部がセラミックス基板平面への水平方向のクッションとなり、収納された基板セットの各セラミックス基板の割れ不良や欠け不良を防ぐことが可能である。この第2の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器では、例えば矩形の底面をもった容器の場合は4つの側面のそれぞれに2つ以上の側面凸部が形成される。梱包される複数のセラミックス基板は寸法のばらつきがあるが、梱包容器にクッション性を持たせれば基板セットの自重により挿入することが可能となる。挿入後は梱包容器のクッション性と基板セットの自重により側面と下方から保持される。このため上方から緩衝材などで覆うことにより基板セットが梱包容器に固定される。
【0024】
1つの側面に設けられる側面凸部(側面凸部も同様)が1つ、例えば1列である場合であっても、側面凸部の幅が広く側面凸部が占める面積の割合が側面の25%以上の場合などには有用である。側面凸部が占める面積の割合が側面全体の25%未満の場合には基板セットが固定されずに側面凸部を軸にして動くことが考えられるため、側面凸部は2つ以上、例えば2列以上であることが望ましい。
【0025】
また、底面凸部が1つ、例えば1列の梱包容器は、底面凸部の幅が広く底面凸部が占める割合が底面全体の25%以上の場合などには有用である。底面凸部の面積の割合が底面全体の25%未満の場合には基板セットが斜めに挿入され底面凸部を軸にして深さ方向に動く恐れがあるため、底面凸部は2つ以上、例えば2列以上であることが望ましい。
【0026】
なお、側面凸部(側面凸部も同様)の高さは、基板セットが小さな場合や梱包容器が小さい場合は1mm程度でも有効である。しかし、基板セットをしっかりと保持するためには、側面凸部は2mm以上突出していることが好ましい。
【0027】
ここで、底面の4つの縁にそれぞれ接続される4つの側面は、底面に対して垂直に立ち上がる構成とする。一方で、基板セットの梱包容器への出し入れを行いやすくするために、4つの側面に、開口部が底面に対して拡がるような1°以上のテーパ(開いた傾斜)をつけておくことが効果的である。さらに、基板セットの梱包容器への出し入れをスムーズに行うためには、4つの側面に、3°以上のテーパをつけておくことが好ましい。
【0028】
さらに、梱包容器の開口部の変形を押さえて容器全体の強度を上げるために、開口部の枠には、底面に略平行で外向きに1mm以上の幅をもったフランジが形成されることが効果的である。さらに強度を上げるためにはフランジの幅を3mm以上とすることが好ましい。ここで、略平行は、平行の他、製造上の誤差範囲内の非平行を含む。
【0029】
加えて、収納されるべき基板セットの高さは、梱包容器の高さと同じまたは低くてもよい。その場合、基板セットへの外部からの衝撃を防止するために、収納された基板セットの上部の空間を緩衝材などで覆うことで基板セットを梱包容器に固定する。一方、基板セットの高さが梱包容器の高さよりも高い場合は、同様の目的のために、収納された基板セットの上部に、逆向きにされた梱包容器を被せてもよい。つまり、2つの梱包容器により上下から基板セットを挟み込むことで基板セットを梱包容器に固定してもよい。
【0030】
実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器に収納する基板セットを構成する各セラミックス基板の種類としては、窒化珪素(Si34)基板、窒化アルミニウム(AlN)基板、アルミナ(酸化アルミニウム:Al23)基板などが挙げられるが、高強度・高靭性を有し基板厚さが薄い場合に撓みやすい窒化珪素基板に適している。
【0031】
また、本明細書において、セラミックス基板は、両面または片面に金属板を接合したセラミックス金属接合基板(例えば、窒化珪素金属接合基板)や、金属板により回路を形成したセラミックス回路基板をも含む。つまり、セラミックス基板の輸送用の梱包容器は、セラミックス基板単体だけでなく、両面または片面に金属板を接合したセラミックス金属接合基板や、金属板により回路を形成したセラミックス回路基板を基板セットとして収納することも可能である。
【0032】
セラミックス基板の輸送用の梱包容器はある程度の弾力を有しながら軽くて丈夫であることが必要である。また、梱包容器は、薄くかつ複雑形状に成型しやすいことが望ましい。さらに、梱包容器は、内部の状態が見えるように透明または半透明であることが望ましい。これらの条件を満たす梱包容器の材質としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)などのプラスチックの使用があげられる。また、透明ではないが、紙やサトウキビなどの自然素材はリサイクルしやすく環境にも優しい点で優れているため、梱包容器として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器の外観を示す斜視図。
図2】第1の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器において、側面凸部および底面凸部が半円形状で突出する場合を示す図。
図3】第1の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器に、基板セットが収納された状態を示す断面図。
図4】第1の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器において、側面凸部および底面凸部がコの字形状で突出する場合を示す図。
図5】第2の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器の外観を示す斜視図。
図6】第2の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器において、側面凸部および底面凸部が半円形状で突出する場合を示す上面図。
図7】第2の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器に、基板セットが収納された状態を示す上面図。
図8】第2の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器において、底面凸部が2列ずつ交差する場合の上面図。
図9】第2の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器において、底面凸部が分離している場合の上面図。
図10】第2の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器において、底面凸部が1列ずつ交差する場合の上面図。
図11】第2の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器において、底面凸部が側面から分離している場合の上面図。
図12】第2の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器において、底面凸部が1つである場合の上面図。
【実施形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら、セラミックス基板の輸送用の梱包容器の実施形態について詳細に説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
第1の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器は、複数のセラミックス基板から成る基板セットを縦置き収納するものである。第1の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器について、図1図4を用いて説明する。
【0036】
図1は、第1の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器の外観を示す斜視図である。
【0037】
図1の符号1は、第1の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器に対してセラミックス基板が縦置き収納される前の状態を示す。符号2は複数のセラミックス基板から成る基板セットを示し、符号3は第1の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器を示す。また、複数のセラミックス基板が重ねられる方向、つまり、梱包容器3の底面の1方向をX軸方向と定義する。梱包容器3の底面の1方向をY軸方向と定義する。基板セット2の挿入方向(図1に示す矢印)、つまり、梱包容器3の深さ方向をZ軸方向と定義する。
【0038】
梱包容器3は、矩形(正方形または長方形)の底面(図2に示す底面7)と、その底面の4つの縁にそれぞれ接続される4つの側面(図2に示す背面8a、左面8b、正面8c、右面8d)で構成される。なお、図1図4において、梱包容器3の底面が正方形である場合を例にとって説明する。
【0039】
ここで、梱包容器3の底面と4つの側面との関係は略垂直であり、かつ、梱包容器3の底面と4つの側面とがそれぞれ直角で接続される場合について例示するが、その場合に限定されるものではない。例えば、梱包容器3の4つの側面にテーパをつけてもよいし、梱包容器3の底面と4つの側面とがそれぞれ面取りやR形状で接続されていてもよい。ここで、略垂直は、垂直の他、製造上の誤差範囲内の非垂直を含む。基板セット2は、各セラミックス基板の縁を下にして、図1に示す矢印方向に沿って梱包容器3の開口部より梱包容器3の内部に挿入される。
【0040】
図2は、第1の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器3の構成例を示す。図2は、後述する図4と比較して、梱包容器3の底面凸部5および側面凸部6が半円形状で突出する場合を示す図である。
【0041】
図2の(a)は、梱包容器3を上方から見た図(平面図)であり、(b)は梱包容器3の右面図であり、(c)は(a)のA-A断面図であり、(d)は梱包容器3の正面図であり、(e)は(a)のB-B断面図である。梱包容器3の4つの側面のうち背面8aおよび正面8cには、半円形状が深さ方向に連続的に延びる半円柱形状の側面凸部6が2列ずつ形成されている。梱包容器3の底面7には、半円形状が正面側から背面側(または背面側から正面側)の方向に連続的に延びる半円柱形状の底面凸部5が2列形成されている。凸部5,6は、内側向きの高さ2mm以上であることが好適である。なお、凸部5,6は、平板の一部が変形(例えば、プレス)されることで作製されてもよいし、平板の壁に部材が付着されることで作製されてもよいし、一部に窪みのある鋳型に材料が鋳造されることで作製されてもよい。また、梱包容器3の開口部の枠にはフランジ9が全周にわたり形成されていることが好適である。
【0042】
図3は、基板セット2が収納された状態の梱包容器3を示す正面図である。図3は、(a)のB-B断面図を示す。梱包容器3は、底面7に形成した2列の底面凸部5により基板セット2を2列で支えてクッション性を持たせ輸送中の衝撃を防ぎ、側面に形成した2列の側面凸部6により、基板セット2の、複数のセラミックス基板が重なった面を2本の線で抑えて輸送中の衝撃を防ぐ。
【0043】
なお、図2では底面7の底面凸部5と側面の側面凸部6とが繋がっているが、それらは別々の位置、つまり、繋がらない位置に形成してもよい。また、側面の2つの側面凸部6は、側面を縦断するように深さ方向に延びるように形成されているが、Y軸およびX軸の平行方向にも凸部を追加形成しても良い。また、側面の側面凸部6が途中で分離していても良い、つまり、側面凸部6が連続的ではなく、断続的であってもよい。あるいは側面の側面凸部6を1列ずつ垂直に形成しても良い。さらには、側面の側面凸部6が、端部から連続しておらず途中で分離し2列ずつあっても良い。また、側面の側面凸部6の面積の割合が側面全体の25%以上の1つの側面凸部であっても良い。
【0044】
それぞれ2列ずつある凸部5,6は1列でも効果があるが、基板セット2を支えるために2列以上あることが望ましい。
【0045】
また、凸部5,6の形状は半円(半円柱)形状ではなく図4に示すように四角(直方体)形状で突出させることも可能である。
【0046】
図4は、第1の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器3の構成例を示す。図4は、図2と比較して、梱包容器3の底面凸部5および側面凸部6がコの字形状(U-shape)で突出する場合を示す図である。なお、底面凸部5と側面凸部6との少なくとも一方は、半円形状(図2に図示)またはコの字形状(図4に図示)で突出していればよい。
【0047】
図4の(a)は、梱包容器3を上方から見た図(平面図)であり、(b)は梱包容器3の右面図であり、(c)は(a)のC-C断面図であり、(d)は梱包容器3の正面図であり、(e)は(a)のD-D断面図である。梱包容器3の4つの側面のうち背面8aおよび正面8cには、深さ方向に連続的に延びるコの字形状の側面凸部6が2列ずつ形成されている。梱包容器3の底面7には、正面側から背面側(または背面側から正面側)に延びるコの字形状の底面凸部5が2列形成されている。なお、梱包容器3の開口部の枠にはフランジ9が全周にわたり形成されていることが好適である。
【0048】
図4に示すような凸部5,6がコの字形状である場合は、図2に示す半円形状の場合よりも大きな面積で抑えることが可能である。なお、図4ではコの字の角部が直角であるが、プラスチックなどで容器を作る場合には角部に面取りが施される。さらに、凸部5,6は、三角形状など面から凸部分が形成されていれば、どのような形状でも効果がある。
【0049】
また、図4に示す凸部5,6は面全体に広がっている必要はなく、複数のセラミックス基板2と接する箇所にのみ形成すればよい。
【0050】
なお、梱包容器3の、基板セット2の両端の2つのセラミックス基板の外側面に向き合う側面凸部6が連続である必要はなく、途中で分離して当該2つのセラミックス基板を何カ所かで抑える形状でもよい。
【0051】
さらに、基板セット2の出し入れを行いやすくするために、梱包容器3の側面に、開口部が底面7に対して拡がるような1°以上のテーパ(開いた傾斜)をつけておくことが効果的である。また、梱包容器3の開口部の強度を持たせるために、開口部の枠には幅1mm以上のフランジ9を全周にわたり形成することが効果的である。
【0052】
第1の実施形態にかかる梱包容器3によれば、基板セット2が縦置き収納された梱包容器3の輸送時における、外部からの衝撃および重ねられたセラミックス基板間の衝撃を抑制しつつ、セラミックス基板の簡易梱包が可能である。
【0053】
(第2の実施形態)
第2の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器は、複数のセラミックス基板から成る基板セットを平置き収納するものである。第2の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器について、図5図12を用いて説明する。
【0054】
図5は、第2の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器の外観を示す斜視図である。
【0055】
図5の符号12は、第2の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器に対してセラミックス基板が平置き収納される前の状態を示す。符号2は複数のセラミックス基板から成る基板セットを示し、符号4は第2の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器を示す。また、複数のセラミックス基板が重ねられる方向、つまり、梱包容器4の底面の1方向をX軸方向と定義する。梱包容器4の底面の1方向をY軸方向と定義する。基板セット2の挿入方向(図5に示す矢印)、つまり、梱包容器4の深さ方向をZ軸方向と定義する。
【0056】
梱包容器4は、矩形(正方形または長方形)の底面と、その底面の縁にそれぞれ接続される4つの側面(図6に示す背面8a、左面8b、正面8c、右面8d)で構成される。なお、図5図12において、梱包容器4の底面が正方形である場合を例にとって説明する。
【0057】
ここで、梱包容器4の底面と4つの側面との関係は略垂直であり、かつ、梱包容器4の底面と4つの側面とがそれぞれ直角で接続される場合について例示するが、その場合に限定されるものではない。例えば、梱包容器4の4つの側面にテーパをつけてもよいし、梱包容器4の底面と4つの側面とがそれぞれ面取りやR形状で接続されていてもよい。基板セット2は、基板セット2の片方のセラミックス基板の外側面を下にして、図5に示す矢印方向に沿って梱包容器4の開口部より梱包容器4の内部に挿入される。
【0058】
図6は、第2の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器4の上面図を示す。梱包容器4のすべての側面(8a、8b、8c、8d)には、半円形状が深さ方向に連続的に延びる半円柱形状の側面凸部6が2列ずつ形成されている。梱包容器4の底面には、半円形状が背面8a側から正面8c側への方向(X軸の平行方向)に連続的に延びる半円柱形状の底面凸部5が2列形成されている。凸部5,6は、内側向きの高さ2mm以上であることが好適である。なお、開口部の枠にはフランジ9が全周にわたり形成されることが好適である。
【0059】
図7は、第2の実施形態にかかるセラミックス基板の輸送用の梱包容器4に、基板セット2が収納された状態の梱包容器4を示す上面図を示す。底面に形成した2つ、例えば2列の底面凸部5(図6に図示)により基板セット2を線で支えることにより衝撃を防ぐとともに、4つの側面にそれぞれ形成した2つ、例えば2列の側面凸部6により基板セット2の縁を線で抑えることにより衝撃を防ぐ。
【0060】
なお、図6では底面の底面凸部5と対向する2つの側面の側面凸部6とが繋がっているが、それらは別々の位置、つまり、繋がらない位置に形成してもよい。また、底面の2列の底面凸部5は、背面8aから正面8cへの方向(X軸の平行方向)に延びるように形成されているが、その場合に限定されるものではない。例えば、図8に示すように、底面凸部5は、X軸の平行方向に加え、Y軸の平行方向にも延びる凸部を含んでも良い。また、例えば、図9に示すように、底面に、4つの側面のうち対向する2つの側面の一方側から他方側への方向(X軸の平行方向)に断続的な底面凸部5を形成しても良い。
【0061】
あるいは、例えば、図10に示すように、底面に、4つの側面のうち対向する2つの側面の一方側から他方側への方向(X軸の平行方向)に連続的に延びる1列、かつ、4つの側面のうち、他の対向する2つの側面の一方側から他方側への方向(Y軸の平行方向)に連続的に延びる1列の底面凸部5を形成しても良い。その場合、2列の底面凸部は、底面の略中央で交差することが好適である。ここで、略中央は、中央の他、製造上の誤差範囲内の非中央を含む。さらには、例えば、図11に示すように、底面凸部5が端部から連続しておらず、途中で分離し2列ずつあっても良い。つまり、底面凸部5は、底面の縁に沿って矩形に形成される凸部をさらに含んでもよい。また、図12に示すように、底面凸部5は、底面凸部5の面積の割合が底面全体の25%以上の1つの凸部であっても良い。
【0062】
図6で、底面と4つの側面にそれぞれ2列ずつある凸部は1列でも効果があるが、基板セット2を支えるために2列以上あることが望ましい。
【0063】
また、底面と4つの側面に設けられる凸部は半円形状で突出することに限定されるものではなく、四角形状や三角形状など面から凸部分がでていれば、どのような形状で突出していても効果がある。
【0064】
また、底面と4つの側面に設けられる凸部は、各面全体に広がっている必要はなく、基板セット2と接する箇所にのみ形成すればよい。
【0065】
さらに、セラミックス基板の出し入れを行いやすくするために、4つの側面に、開口部が底面に対して拡がるような1°以上のテーパ(開いた傾斜)をつけておくことが効果的である。また、梱包容器4の開口部の強度を持たせるために、開口部の枠には幅1mm以上のフランジを全周にわたり形成することが効果的である。
【0066】
第2の実施形態にかかる梱包容器4によれば、基板セット2が平置き収納された梱包容器4の輸送時における、外部からの衝撃および重ねられたセラミックス基板間の衝撃を抑制しつつ、セラミックス基板の簡易梱包が可能である。
【0067】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、基板セットが収納された梱包容器の輸送時における、外部からの衝撃および重ねられたセラミックス基板間の衝撃を抑制しつつ、セラミックス基板の簡易梱包が可能である。
【0068】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12