(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】計量カップとコックとの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/40 20060101AFI20230912BHJP
B65D 75/58 20060101ALI20230912BHJP
B65D 51/24 20060101ALI20230912BHJP
B65D 47/28 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B65D47/40 100
B65D75/58
B65D51/24
B65D47/28 110
(21)【出願番号】P 2019127007
(22)【出願日】2019-07-08
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】桑原 弘嗣
(72)【発明者】
【氏名】林 佑樹
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-285168(JP,A)
【文献】実開昭62-182255(JP,U)
【文献】特開2020-050372(JP,A)
【文献】特開2020-050426(JP,A)
【文献】実開昭63-135865(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0308876(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/40
B65D 75/58
B65D 51/24
B65D 47/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コックに計量カップを着脱容易に取り付けることができる計量カップとコックとの組み合わせであって、
前記コックは、容器に取り付けるための取付部と、前記容器に収容された液体を注出する注出口と、前記注出口を開閉する操作部と、前記計量カップを着脱可能に取り付けるためのカップ保持部と、それらが連結された胴体部とを少なくとも有し、
前記計量カップは、前記コックの注出口から注出する液体を収容する収容部と、前記カップ保持部に取り付けるための係合部とを少なくとも有し、
前記カップ保持部がつばで構成され、前記係合部がスリット部で構成され、前記つばを前記スリット部で上下から挟んでスライド可能とされており、
前記カップ保持部と前記係合部は、前記注出口の開口面に水平に着脱可能に設けられており、前記コックに取り付けられた前記計量カップがスライドして前記コックから取り外され
、前記注出口の開口面が前記収容部の上端の上を通過する際に、前記注出口の開口面と該開口面に対向する前記収容部
の上端との差が
0.1mm以上、1.0mm以下に構成されている、ことを特徴とする計量カップとコックとの組み合わせ。
【請求項2】
前記計量カップは、前記計量カップをスライドさせて前記コックに取り付ける際に前記注出口を前記収容部に導入する段差部を有し、前記コックに取り付けられた前記計量カップがスライドして前記コックから取り外され
、前記注出口の開口面が前記段差部の上端の上を通過する際に、前記注出口の開口面と前記段差部の上端との差が
0.1mm以上、1.0mm以下に構成されている、請求項1に記載の計量カップとコックとの組み合わせ。
【請求項3】
前記つばは、前記コックの胴体部の少なくとも左右位置に突出し、前後方向に延びる平板である、請求項
1又は2に記載の計量カップとコックとの組み合わせ。
【請求項4】
前記スリット部と前記つばとが、上下2段で設けられている、請求項
1~3のいずれか1項に記載の計量カップとコックとの組み合わせ。
【請求項5】
本発明に係る計量カップとコックとの組み合わせにおいて、前記操作部がスクリュー式操作部であって、前記胴体部である注出筒と、該注出筒内で上下して液体経路を開閉するプランジャーとを有し、前記注出筒の下端面と前記プランジャーを最下点まで下げたときの該プランジャーの下端面とが面一である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の計量カップとコックとの組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量カップとコックとの組み合わせに関する。さらに詳しくは、洗濯用液体洗剤や柔軟剤等の液体を収容した容器のコックに着脱容易な計量カップで液体を計量した後、その計量カップを取り外す際にコックの液だれを抑制できる、計量カップとコックとの組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯用液体洗剤や柔軟剤等の液体は、ボトル容器やバッグインボックス容器に収容され、所定量を計量カップで計量して使用されている。計量は、計量カップを注出口の下に置き、流路を開いて注出口から液を流下させて行うが、流路を閉じて液の流下を停止しても、最後に液垂れが生じることがあった。液垂れが発生する原因は、注出口の開口面に残った液が最後に液垂れとなって滴下する場合があった。
【0003】
こうした問題に対し、例えば特許文献1では、開閉筒の下端面を閉鎖した構造とすることにより開閉筒内部に液体が侵入しないようにして液垂れの発生を防止している。しかし、この技術は、開閉筒の下端面が抽出筒の先端よりも突出しているため、この部分が何かにぶつかったりした場合、開閉筒が動いて液体が漏れ出すことがあった。特許文献2は、こうした問題を解決したものであり、アルコールを含む液体に対しても液垂れの発生が少なく、口栓の先端に物が当たっても液漏れを生じない注出用口栓を提案している。この技術は、口栓本体と開閉用キャップとプランジャーからなる注出用口栓であって、口栓本体は、装着部と抽出筒と接続筒とからなり、プランジャー下端面は中央部が凹部となり閉鎖されており、プランジャー側面となす角は鋭角で、抽出筒の下端より突出しないことを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-207867号公報
【文献】特開2011-6072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、注出口の開口面に付着した残留液の液だれを抑制することができる、計量カップとコックとの組み合わせを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る計量カップとコックとの組み合わせは、コックに計量カップを着脱容易に取り付けることができる計量カップとコックとの組み合わせであって、前記コックは、容器に取り付けるための取付部と、前記容器に収容された液体を注出する注出口と、前記注出口を開閉する操作部と、前記計量カップを着脱可能に取り付けるためのカップ保持部と、それらが連結された胴体部とを少なくとも有し、前記計量カップは、前記コックの注出口から注出する液体を収容する収容部と、前記カップ保持部に取り付けるための係合部とを少なくとも有し、前記カップ保持部と前記係合部は、前記注出口の開口面に水平に着脱可能に設けられており、前記コックに取り付けられた前記計量カップがスライドして前記コックから取り外される際に、前記注出口の開口面と該開口面に対向する前記収容部上端との差が1.0mm以下に構成されている、ことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、計量カップの係合部とコックのカップ保持部とが注出口の開口面に水平に着脱可能に設けられているので、計量カップがコックから取り外される際に、安定した状態で取り外すことができる。そして、注出口の開口面とその開口面に対向する収容部上端との差が1.0mm以下に維持された状態で注出口が収容部上端の上を通過することになるので、注出後に開口面に付着又は残留している液体は、計量カップが引き抜かれる間に収容部上端でかき落とされる。その結果、注出口の開口面に付着した残留液の液だれを抑制することができる。
【0008】
本発明に係る計量カップとコックとの組み合わせにおいて、前記計量カップは、前記計量カップをスライドさせて前記コックに取り付ける際に前記注出口を前記収容部に導入する段差部を有し、前記コックに取り付けられた前記計量カップがスライドして前記コックから取り外される際に、前記注出口の開口面と前記段差部の上端との差が1.0mm以下に構成されている。こうすることにより、注出口の開口面に付着した残留液の液だれを抑制することができる。
【0009】
本発明に係る計量カップとコックとの組み合わせにおいて、前記カップ保持部がつばで構成され、前記係合部がスリット部で構成され、前記つばを前記スリット部で上下から挟んでスライド可能とする。こうすることにより、一対のスリット部がコックのつばを上下から挟んで安定した状態でスライドすることができる。
【0010】
本発明に係る計量カップとコックとの組み合わせにおいて、前記つばは、前記コックの胴体部の少なくとも左右位置に突出し、前後方向に延びる平板である。こうすることにより、左右位置に形成されたつばに、計量カップのスリット部をスライドさせて取り付けることができ、計量カップを取り外す際も上記の差を維持した状態で計量カップをスライドさせて取り外すことができる。
【0011】
本発明に係る計量カップとコックとの組み合わせにおいて、前記スリット部と前記つばとが、上下2段で設けられている。こうすることにより、上記の差を安定且つ正確に維持した状態で注出口の先端が段差部上端の上を通過する。
【0012】
本発明に係る計量カップとコックとの組み合わせにおいて、前記操作部がスクリュー式操作部であって、前記胴体部である注出筒と、該注出筒内で上下して液体経路を開閉するプランジャーとを有し、前記注出筒の下端面と前記プランジャーを最下点まで下げたときの該プランジャーの下端面とが面一である。こうすることにより、注出口の先端に付着又は残留する液の量を極力少なくすることができるので、注出口先端に僅かに付着又は残留している液体をも、計量カップが引き抜かれる間に段差部上端でかき落とすことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、注出口の開口面に付着した残留液の液だれを抑制することができる、計量カップとコックとの組み合わせを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る計量カップとコックとの組み合わせの一例を示す側面図である。
【
図4】計量カップを取り外す際に、注出口の開口面が収容部上端の上を通過する態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る計量カップとコックとの組み合わせについて図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は下記実施の形態に記載の内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や使用例も含む。また、本発明に係る要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更や上記実施の形態の組み合わせを施してもよい。
【0016】
本発明に係る計量カップ10とコック20との組み合わせ30は、
図1に示すように、コック20に計量カップ10を着脱容易に取り付けることができる組み合わせ構造体である。コック20は、
図2にその一例を示すように、容器10に取り付けるための取付部27と、容器10に収容された液体を注出する注出口23と、注出口23を開閉する操作部22と、計量カップ10を着脱可能に取り付けるためのカップ保持部24と、それらが連結された胴体部21とを少なくとも有している。計量カップ10は、
図3にその一例を示すように、コック20の注出口23から注出する液体を収容する収容部1と、カップ保持部24に取り付けるための係合部2とを少なくとも有している。
【0017】
本発明では、
図1及び
図4に示すように、係合部2は,カップ保持部24に係合する位置に設けられており、その係合部2とカップ保持部24とは、注出口23の開口面23’に水平に着脱可能に設けられている。そして、コック20に取り付けられた計量カップ10がスライドしてコック20から取り外される際に、注出口23の開口面23’とその開口面23’に対向する収容部上端3aとの差Gが1.0mm以下に構成されていることに特徴がある。
【0018】
この組み合わせ構造体は、
図4に示すように、計量カップ10の係合部2とコック20のカップ保持部24とが注出口23の開口面23’に水平に着脱可能に設けられているので、計量カップ10がコック20から取り外される際に、安定した状態で取り外すことができる。そして、注出口23の開口面23’とその開口面23’に対向する収容部上端3aとの差が1.0mm以下に維持された状態で注出口23が収容部上端3aの上を通過することになるので、注出後に開口面23’に付着又は残留している液体は、計量カップ10が引き抜かれる間に収容部上端3aでかき落とされる。その結果、注出口23の開口面23’に付着した残留液の液だれを抑制することができる。
【0019】
なお、「前後方向Y」とは、バックインボックス等の液体容器にコック20が取り付けられ、そのコック20に計量カップ10が取り付けられている場合の、液体容器側から計量カップ10の方向及びその逆方向のことをいう。「手前」というときは、その前後方向Yでの計量カップ10の側であり、「奥」又は「奥側」というときは、その前後方向Yでのコック20の側である。「左右方向X」とは、手前から見た場合の左右の方向のことである。「上下方向Z」とは、注出口23から液体が落ちる方向及びその逆方向のことをいう。また、本発明では、より分かり易くするために、前後方向Yを、取り付け方向A(奥側方向)と取り外し方向B(手間側方向)として説明している。
【0020】
以下、各構成要素について詳しく説明する。
【0021】
[計量カップ]
計量カップ10は、
図1及び
図3に示すように、コック20が有するカップ保持部24に着脱可能に取り付けることができ、コック20の注出口23から注出する液体を計量する。計量カップ10は、収容部1と係合部2とを有している。この収容部1と係合部2とは一体成形体で少なくとも構成されていることが好ましい。一体成形された計量カップ10は、従来技術と比較して形状の制約が少なく、1ピースで射出成形が可能なため、安価で量産可能である点で有利である。「有する」としたのは、これら以外の構造要素をさらに含んでいてもよいことを意味している。「一体成形体で少なくとも構成されている」としたのは、一体成形体だけで構成されていてもよいし、一体成形体にさらに別部材が追加されていてもよいことを意味している。「一体成形体」や「一体成形」は、射出成形機で成形された一体物の意味である。こうした計量カップ10の形態は、下記の各構成要素を有し、その作用効果を同じくするものであれば、図示の形態に限定されず、各種の構造形態であってもよい。
【0022】
(収容部)
収容部1は、液体を収容する部分である。液体は、液体容器(例えばバックインボックス等)に取り付けられたコック20の注出口23から注出されるものであり、洗濯用液体洗剤や柔軟剤等のように、所定量を計量して用いる液体であることが好ましい。収容部1の手前側の側面には、目盛り4が付されていてもよい。また、計量カップ10全体の色や透明度も特に限定されないが、目盛り4によって収容液体を透けてみる場合は、計量カップ10は、透明、半透明、又は透けて見える白色系の色合いであることが好ましい。
【0023】
収容部1の形状は特に限定されないが、液体を収容しやすい円形又は略円形や多角形又は略多角形のカップ状容器であればよく、円形又は略円形のカッブ状容器が好ましい。収容部1の底1bは通常は平らであり、底1bの周縁1cは滑らかな曲面になっていることが好ましい。側面1dには滑り止めの凹凸が縦方向、横方向及び斜め方向から選ばれるいずれか1又は横2以上の方向に配列されていてもよい。上方は開口しており、上縁部1aで開口部が形成されている。開口部からは、収容された液体の注出量を目視により容易に確認することができる。手前側は、コック20が取り付けられる側の反対側であるが、図示の例では、係合部2よりも低い位置に段差状にえぐれた形態になっている。こうすることにより、収容された液体の量を手前側から容易に目視確認することができる。なお、これに限定されず、段差状にえぐれておらず、係合部2と同じ高さの上縁部1aで開口部が構成されていてもよい。「略円筒形」とは、収容部1を平面視した形状が円形に近い形状であることを意味し、「略多角筒形」とは、収容部1を平面視した形状が多角形に近い形状であることを意味する。
【0024】
(係合部)
係合部2は、計量カップ10をコック20のカップ保持部24に係合させて取り付けるためのものである。係合部2とカップ保持部24とは、注出口23の開口面23’に水平に着脱可能に設けられている。そのため、計量カップ10がコック20から取り外される際に、安定した状態で取り外される。係合部2は、こうした機能と作用効果を奏するものであればその形態は特に限定されないが、スライド可能なスリット21bを備えたスリット部2(同じ符号を用いる。)とすることが好ましい。係合部2をスリット部2とした場合は、カップ保持部24をつば24(同じ符号を用いる。)とすることが好ましい。以下の説明では、主に、係合部2をスリット部2とし、カップ保持部24をつば24として説明する。
【0025】
スリット部2は、つば24を上下から挟んで、計量カップ10をスライド可能とし、コック20に着脱可能に取り付けるように機能する。このようにスライド可能としたので、計量カップ10がコック20から取り外される際に、安定した状態で取り外すことができる。スリット部2は、計量カップ10を構成する段差部3の上方位置に、収容部1の上縁部1aに平行又は略平行となるように設けられている。
図1及び
図3の例では、段差部3の上方は、段差部3を形成するために切り欠いた切り欠き部2cとなっているが、その切り欠き部2cは計量カップ10の奥側に位置する。その切り欠き部2cの位置から手前側の対向側面にスリット部2が設けられている。そのスリット部2は、その対向側面に左右一対設けられている。
【0026】
左右一対のスリット部2,2は、計量カップ10がスライドしてコック20から取り外される際に、コック20のつば24を上下から挟み、計量カップ10を前後方法Yに安定した状態で水平にスライドさせるように機能する。本発明では、計量カップ10が水平にスライドして注出口23の開口面23’が収容部上端3a(段差部上端)の上を通過する際に、常に、注出口23の開口面23’と収容部上端3aとの差Gが1.0mm以下になっている。この状態でスライドすることにより、注出後に注出口23の開口面23’に付着又は残留している液体は、計量カップ10をスライドさせて引き抜く間に収容部上端3a(段差部上端)でかき落とされる。その結果、注出口23の開口面23’に付着又は残留する液をかき落として液だれを抑制できる。なお、その差Gの下限は、スライドによって注出口23の開口面23’と収容部上端3a(段差部上端)とが接触しない程度であれば特に限定されないが、0.1mmとすることができる。
【0027】
本発明者が行った実験では、液体洗剤を注出した後に計量カップ10をスライドさせて引き抜いてから30秒間で液だれするかどうかを試験した。その結果、注出口23の開口面23’と収容部上端3a(段差部上端)との差Gが0.1mm、0.5mm及び1.0mmの場合は、計量カップ10を引き抜く間に注出口23の開口面23’に付着又は残留していた液が収容部上端3a(段差部上端)でかき落とされ、液だれしなかった。一方、注出口23の開口面23’と収容部上端3a(段差部上端)との差Gが1.5mmの場合は、計量カップ10を引き抜く間に注出口23の開口面23’に付着又は残留していた液が収容部上端3a(段差部上端)で十分にかき落とされず、液だれした。
【0028】
スリット部2は、左右一対であってもよいが、
図1等に示すように、上下2段のスリット部2a,2bとして設けられていることが好ましい。この上下2段のスリット部2a,2bは、コック20が備える上下2段のつば24a,24bにそれぞれ対応するものであり、そのつば24a,24bをそれぞれ上下から挟み、より安定した状態で水平にスライドする。こうすることにより、上記した差Gを安定且つ正確に維持した状態で注出口23の開口面23’が収容部上端3a(段差部上端)の上を水平に通過することができる。
【0029】
スリット部2は、コック20のつば24にスライドして取り付けられる。取り付け相手のつば24は、
図2に示すように、コック20の胴体部21の少なくとも左右位置に突出し、前後方向Yに延びる平板形状として設けられている。左右位置に形成されたつば24に対し、左右一対のスリット部2をはめ込んで取り付ける。スリット部2の隙間幅は、つば24の厚さよりもわずかに大きいことが好ましい。このわずかな大きさが、クリアランスとなって計量カップ10のスライド動作を滑らかに行わせることになる。クリアランスの程度は任意に調整される。前後方向Yに延びるスリット部2の長さは特に限定されないが、がたつきなく安定にはめ込まれた状態が維持できる長さであることが望ましい。
【0030】
スリット部2は、細長い隙間で形成されたスリット2b1と、スリット2b1の下に位置する側面部分2b2と、スリット2b1の上に位置する帯状の側面部分2b3とで構成されている。スリット部2の形状は、側面部分2b2,2b3が有する弾性作用の付勢力により、スリット部2がコック20から外れるのを防ぐ係止構造であることが好ましい。係止構造は特に限定されず、種々の構造形態とすることができる。この計量カップ10は、射出成形等で一体成形されるので、スリット部2や段差部3も収容部1とともに一体成形されることが好ましい。なお、スリット部2や段差部3を別体として計量カップ10に付加さしてもよい。
【0031】
図1等に示す計量カップ10は、カバー42(42a,42b)を備えたスリット部2であるが、カバー42はあってもなくてもよい。なお、カバー42は、側面部分2b2,2b3を補強するよう作用し、カバー42を設けない場合に比べて側面部分2b2,2b3を折れ難くすることができる。カバー42は、収容部1から段差部3に繋がる凹形状の湾曲部に設けられ、
図3に示すように、スリット2b1を全て覆うように設けられていてもよいし、スリット2b1の一部を覆うように設けられていてもよく、特に限定されない。
【0032】
(段差部)
段差部3は、スリット部2をスライドさせてつば24に取り付ける際に、注出口23が収容部1に当たることなく容易に収容部1内に導く部位であり、収容部1の一部分を構成している。段差部3の構造は、スリット部2から下方に延びる凹みである。その凹み程度は、段差部上端3aからスリット部2までの長さが、コック20のつば24から注出口23先端までの長さよりも長い必要がある。ここでの段差部上端3aは、既述したように、同一の符号で説明した収容部上端3aと同じである。さらに、上記のように、注出口23の開口面23’と段差部上端3aとの差Gが1.0mm以下になるように、コック20のつば24の位置と、そのつば24に取り付けられる計量カップ10のスリット部2との位置とを設計する。こうすることにより、計量カップ10をスライドさせて取り付ける際に、注出口23が計量カップ10の収容部1に当たることを防ぐことができるとともに、計量カップ10を取り外し方向Bに引き抜く際に、注出口23の開口面23’に付着又は残留する液を段差部上端3aでかき落とすことができる。こうした段差部3は、スリット部2のところでも説明したように、スリット部2の下方に位置して、収容部1の上縁部1aを切り欠く形状とすることで形成される。
【0033】
段差部3は、収容部1の一部を構成する、又は、収容部1への連通口を有する。段差部3は、注出口23が収容部1に当たることなく容易に収容部内に導くので、その段差部3が収容部1の一部を構成するか、収容部1への連通口(図示しない)を有するように構成されていることにより、注出口23から注出される液体を段差部3がかき落とした後に収容部1に収容することができる。「一部を構成する」とは、段差部3でも液体を収容して、計量カップ10全体の収容量の一部として含まれることを意味する。「収容部1への連通口を有する」とは、上記のように容器の一部を構成するか否かにかかわらず、段差部3と収容部1とが中間壁で区分けされており、その中間壁の下部に収容部1に液体を通過させる連通口を有する形態を包含する意味である。こうした理由は、段差部3がスリット部2の下方に設けられるものであり、そのスリット部2がコック20の胴体部21周りのつば24にはめ込まれるので、スリット部2の下方にはコック20の注出口23が位置することになっているからである。
【0034】
[コック]
コック20は、
図2に示すように、上記した計量カップ10を着脱容易に取り付ける対象であり、計量カップ10と組み合わせて用いられる。コック20は、容器に取り付けるための取付部27と、容器に収容された液体を注出する注出口23と、注出口23を開閉する操作部22と、計量カップ10を着脱可能に取り付けるためのカップ保持部24と、それらが連結された胴体部21とで少なくとも構成されている。なお、例えば、バックインボックス等の容器の口部(図示しない)は、外装箱に固定されており、コック20の取付部27は、そうした口部に取り付けられる。
【0035】
カップ保持部24は、計量カップ10を着脱可能に取り付けるためのものである。こうした機能と作用効果を奏するものであればその形態は特に限定されないが、係合部2をスリット21bを備えたスリット部2とした場合には、カップ保持部24をつば24とすることが好ましい。
【0036】
つば24は、計量カップ10が備えるスリット部2を着脱可能に取り付ける部分である。つば24は、胴体部21の少なくとも左右位置に突出し、前後方向Yに延びる平板である。こうすることにより、左右位置に形成されたつば24に、計量カップ10のスリット部2をスライドさせて取り付けることができる。つば24の大きさは特に限定されないが、計量カップ10の寸法に応じてスリット部2の長さや左右の間隔が決まってくるので、それに対応させた寸法であることが好ましい。
【0037】
つば24の胴体部側には、スリット部2のスライドをガイドするガイド部25が設けられている。このガイド部25は、計量カップ10が備えるスリット部上下の側面部分2b2,2b3を当接して摺動する部位として機能する。ガイド部25と側面部分2b2,2b3とで、係止構造とすることができる。例えば、ガイド部25を中央が凹んだ湾曲凹形状や中央が凸の湾曲凸形状とし、側面部分2b2,2b3も同様の形状とすることにより、側面部分2b2,2b3の付勢力Fにより、スリット部2がつば24から外れるのを防ぐことができる。なお、
図2に示すように、上下2段につば24a,24bが設けられている場合は、ガイド部25a,25bもそれぞれのつば24a,24bに沿って設けられている。スリット部2とつば24とを上下2段で設けることにより、上記の差Gを安定且つ正確に維持した状態で注出口23を段差部上端3aの上を水平に通過させることができる。
【0038】
注出口23は、容器に収容された液体を注出する部分であり、注出口23の開口面23’から注出される液体は、取り付けられた計量カップ10に液体を供給する。注出口23は、計量カップ10の着脱時に、段差部3の存在によって計量カップ10に当たることがない。
【0039】
操作部22は、注出口23を開閉する部分であり、コック20の形態に応じてプッシュ式、スクリュー式、レバー式等での開閉機能を操作する部分である。本発明では、これらいずれの形式のコックにも適用できる。
【0040】
操作部22がスクリュー式操作部(スクリュー式コックともいう。)である場合、そのスクリュー式コックは、胴体部である注出筒28と、その注出筒28内で上下して液体経路を開閉するプランジャー29とを有している。注出筒28の下端面28aと、プランジャー29を最下点まで下げたときのプランジャーの下端面29aとは、面一になっている。「面一」とは、同一平面を構成する面ということである。こうすることにより、注出口23の開口面23’に付着又は残留する液の量を極力少なくすることができるので、注出口23が段差部3の上を通過する際に、注出口先端の開口面23’に僅かに付着又は残留している液体をも、計量カップ10が取り外し方向Bに引き抜かれる間に段差部上端3aでかき落とすことができる。
【0041】
図4は、計量カップ10を取り外し方向Bに取り外す場合の形態を示している。コック20に装着した計量カップ10を取り外し方向Bに取り外すとき、最初に、注出筒28の奥側の下端面28a(注出口23の奥側端部23b)が、段差部上端3aの上を差Gを維持した状態で水平に通過する。次いで、プランジャーの下端面29a(注出口23の先端)が、段差部上端3aの上を差Gを維持した状態で水平に通過する。最後に、注出筒28の手前側の下端面28a(注出口23の手前側端部23a)が、段差部上端3aの上を差Gを維持した状態で水平に通過する。上記したように、注出筒28の下端面28aと、プランジャー29を最下点まで下げたときのプランジャーの下端面29aとは、面一になっているので、注出口先端の開口面23’に僅かに付着又は残留している液体をも、計量カップ10が取り外し方向Bに引き抜かれる間に段差部上端3aでかき落とすことができる。
【0042】
なお、
図4等では、スクリュー式コックを例示して説明しているが、プッシュ式コックやレバー式コックでは、注出筒の内方が窪んでいる場合があるが、その場合でも、注出筒28の下端面28aに付着又は残留した液体を段差部上端3aがかき落とすことができ、スクリュー式コックの場合と同様の効果を奏することができる。
【0043】
以上説明したように、本発明は、注出口23の開口面23’と収容部上端3aとの差Gが所定値以下に維持された状態で注出口23が段差部3の上を通過するので、注出後に注出口先端の開口面23’に付着又は残留している液体は、計量カップ10が取り外し方向Bに引き抜かれる間に収容部上端3aでかき落とされる。その結果、注出口の開口面23’に付着又は残留する液を除去して液だれを抑制できる。
【符号の説明】
【0044】
1 収容部
1a 上縁部
1b 底
1c 底の周縁
1d 側面
2 係合部(スリット部)
2a 下段側係合部(下段側スリット部)
2b 上段側係合部(上段側スリット部)
2b1 スリット
2b2 側面部分
2b3 側面部分
2c 切り欠き部
3 段差部
3a 収容部上端(段差部の上端)
3b 段差部の下面
4 目盛り
10 計量カップ
20 コック
21 胴体部
22 操作部
23 注出口
23’ 注出口開口面
23a 注出口の手前側端部
23b 注出口の奥側端部
24,24a,24b カップ保持部(つば)
25,25a,25b ガイド部
27 取付部
28 注出筒
28a 注出筒の下端面
29 プランジャー
29a プランジャーの下端面
30 組み合わせ
42,42a,42b カバー
A 取り付け方向(奥側方向)
B 取り外し方向(手前側方向)
G 注出口先端と段差部上端との差
X 左右方向
Y 前後方向
Z 上下方向