(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】シリコーンゴム球状粒子、シリコーン複合粒子及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/16 20060101AFI20230912BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20230912BHJP
C08G 77/60 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C08L83/16
C08L83/05
C08G77/60
(21)【出願番号】P 2019182137
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大木 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】木村 恒雄
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-078296(JP,A)
【文献】特開2012-046604(JP,A)
【文献】特開2019-151767(JP,A)
【文献】特開2011-219547(JP,A)
【文献】特開2017-145364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00-77/62
C08L 83/00-83/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A-1)下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は独立に、非置換又はハロゲン原子、シアノ基もしくはグリシドキシ基で置換された炭素原子数1~12の1価炭化水素基、又はアルコキシ基である。)
で表されるケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個有する化合物と、
(A-2)
ビニルノルボルネン、又はこれらの混合物との
付加反応生成物であって、かつ付加反応性炭素-炭素二重結合を1分子中に2個以上有する付加反応生成物、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有し、かつフェニル基を有する鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)ヒドロシリル化反応触媒
を含有する組成物の付加硬化反応硬化物からなるシリコーンゴム球状粒子。
【請求項2】
JIS K 6253に規定されるタイプD デュロメータによるゴム硬度が、20以上である請求項1記載のシリコーンゴム球状粒子。
【請求項3】
上記(B)成分が、下記一般式(2)
R
2
3SiO(R
2
2SiO)
nSiR
2
3 (2)
(式中、R
2は独立に、水素原子、非置換又はハロゲン原子、シアノ基もしくはグリシドキシ基で置換された炭素原子数1~12の1価炭化水素基、又はフェニル基であり、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有し、かつフェニル基を有する。)
で表される鎖状オルガノポリシロキサンである請求項1
又は2記載のシリコーンゴム球状粒子。
【請求項4】
上記(A-2)成分が、5-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、6-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、又はこれらの混合物である請求項1~
3のいずれか1項記載のシリコーンゴム球状粒子。
【請求項5】
(A)及び(B)成分を含有する組成物に、界面活性剤と水を添加し、乳化処理を施してエマルションとして、(C)成分の存在下で(A)成分と(B)成分とを付加硬化反応させる工程を含む、請求項1~
4のいずれか1項記載のシリコーンゴム球状粒子を製造する製造方法。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか1項記載のシリコーンゴム球状粒子の表面に、球状のポリオルガノシルセスキオキサンが付着してなるシリコーン複合粒子。
【請求項7】
下記工程(i)及び(ii)を含む請求項
6記載のシリコーン複合粒子を製造する製造方法。
(i)(A)及び(B)成分を含有する組成物に、界面活性剤と水を添加し、乳化処理を施してエマルションとして、(C)成分の存在下で(A)成分と(B)成分との付加硬化反応により、シリコーンゴム球状粒子の水分散液を得る工程、
(ii)(i)で得られたシリコーンゴム球状粒子の水分散液、水及びアルカリ性物質の存在下で、オルガノトリアルコキシシランを加水分解及び縮合反応させ、上記シリコーンゴム球状粒子の表面にポリオルガノシルセスキオキサンを付着させる工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シルフェニレン(環式炭化水素)骨格含有成分からなるシリコーンゴム球状粒子に関するものであり、さらに詳しくは、塗料、インキ、コーティング剤等の表面滑り剤、撥水付与剤;塗膜又は合成樹脂成形品の耐衝撃性、滑り性、ブロッキング防止性、耐摩耗性等を付与する添加剤;プラスチック板やシートの光拡散材;ならびに化粧品材として好適な、シリコーンゴム球状粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シリコーンゴム球状粒子・粉末については、広範囲の産業分野において、その用途の提案がなされている。例えば、合成樹脂材料(特公昭63-12489号公報、特公平6-55805号公報参照)や、合成ゴム材料(特開平2-102263号公報参照)、化粧料(特開平8-12546号公報、特開平8-12545号公報、特公平4-17162号公報、特公平4-66446号公報参照)等への添加配合が示されている。
【0003】
上記に示す通り、例えば、エポキシ樹脂の低応力化剤として、その“柔軟性”を利用したシリコーンゴム球状粒子が配合・使用されている。即ち、電子部品とエポキシ樹脂の熱膨張率の差異により樹脂に対して応力が掛かり、クラックが発生する場合がある。これに対して、シリコーンゴム球状粒子を添加することでクラック発生の防止が可能となる。
【0004】
具体的には、配合線状オルガノポリシロキサンブロックを含むポリマー硬化物の粒子状物を含有したエポキシ樹脂(特開昭58-219218号公報)や、シリコーンゴム粒子の表面をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆した粒子を含有したエポキシ樹脂(特開平8-85753号公報)等が提案されている。
【0005】
他の用途例として、未架橋ジメチルシリコーンゴムとフェニル基含有シロキサン単位を含むシリコーン弾性体粒子からなる硬化物は、光拡散性ジメチルシリコーンゴム組成物
としてLED用の光拡散成型体への利用が提案されている(特開2011-184625号公報)。
【0006】
また、シリコーンゴム球状粒子は、化粧料に柔らかい感触やなめらかさ等の使用感を付与する目的や、光を散乱させて自然な仕上がりを演出する目的、毛穴やシワ等を見えにくくする目的等において、ファンデーション及び化粧下地等のメークアップ化粧料、クリーム及び乳液等の基礎化粧料、サンスクリーン化粧料等、幅広い化粧料に用いられている。
【0007】
例えば、ポリメチルシルセスキオキサン粉末を含有する化粧料(特開昭63-297313号公報)、球状シリコーンゴム粉末を含有するメーキャップ化粧料(特開平8-12524号公報)、シリコーンゴム球状微粒子にポリオルガノシルセスキオキサン樹脂を被覆した複合シリコーン粉体を含有する化粧料(特開平9-20631号公報)が提案されている。これらは、化粧料に対して上述した柔らかな感触や使用感を付与することができる。
【0008】
上記(特開平9-20631号公報)に記載の製造方法によって得られるものは、シリコーン粒子を被覆しているポリオルガノシルセスキオキサンがおよそ100nmの粒径である為、ファンデーション等のメークアップ化粧料に配合することで、不自然な光沢がない自然な仕上がりとなる効果(ソフトフォーカス効果)を付与できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特公昭63-12489号公報
【文献】特公平6-55805号公報
【文献】特開平2-102263号公報
【文献】特開平8-12546号公報
【文献】特開平8-12545号公報
【文献】特公平4-17162号公報
【文献】特公平4-66446号公報
【文献】特開昭58-219218号公報
【文献】特開平8-85753号公報
【文献】特開2011-184625号公報
【文献】特開昭63-297313号公報
【文献】特開平8-12524号公報
【文献】特開平9-20631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、シリコーンゴム球状粒子は、特性の1つである柔軟性に起因して粒子自身の分散性が低い、すなわち、各種オイル等への配合時において、特に経時での凝集性が高い為、シリコーンゴム球状粒子それ自体(単体)では上記に示すような機能特性を十分に発揮できない問題がある。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、シリコーンゴム球状粒子単体においても分散性が付与され、ゴム硬度の高いシリコーンゴム球状粒子を提供することを目的とする。さらに、本発明は、当該シリコーンゴム球状粒子を含有し、各種材料への配合時において良好な分散性を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、シルフェニレン(環状炭化水素)骨格を有するシリコーン材料を硬化性組成物の成分として用いることで、ゴム硬度の高いシリコーンゴム球状粒子の調製を達成し、各種オイル等への配合時において良好な分散性を付与できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
従って、本発明は下記発明を提供する。
1.(A)(A-1)下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は独立に、非置換又はハロゲン原子、シアノ基もしくはグリシドキシ基で置換された炭素原子数1~12の1価炭化水素基、又はアルコキシ基である。)
で表されるケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個有する化合物と、
(A-2)付加反応性炭素-炭素二重結合を1分子中に2個有する炭化水素化合物との付加反応生成物であって、かつ付加反応性炭素-炭素二重結合を1分子中に2個以上有する付加反応生成物、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有し、かつフェニル基を有する鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)ヒドロシリル化反応触媒
を含有する組成物の付加硬化反応硬化物からなるシリコーンゴム球状粒子。
2.上記JIS K 6253に規定されるタイプD デュロメータによるゴム硬度が、20以上である1記載のシリコーンゴム球状粒子。
3.(A-2)成分が、付加反応性炭素-炭素二重結合を1分子中に2個有する多環式炭化水素化合物である1又は2記載のシリコーンゴム球状粒子。
4.上記(B)成分が、下記一般式(2)
R
2
3SiO(R
2
2SiO)
nSiR
2
3 (2)
(式中、R
2は独立に、水素原子、非置換又はハロゲン原子、シアノ基もしくはグリシドキシ基で置換された炭素原子数1~12の1価炭化水素基、又はフェニル基であり、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有し、かつフェニル基を有する。)
で表される鎖状オルガノポリシロキサンである1~3のいずれかに記載のシリコーンゴム球状粒子。
5.上記(A-2)成分が、5-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、6-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、又はこれらの混合物である1~4のいずれかに記載のシリコーンゴム球状粒子。
6.(A)及び(B)成分を含有する組成物に、界面活性剤と水を添加し、乳化処理を施してエマルションとして、(C)成分の存在下で(A)成分と(B)成分とを付加硬化反応させる工程を含む、1~5のいずれかに記載のシリコーンゴム球状粒子を製造する製造方法。
7.1~5のいずれかに記載のシリコーンゴム球状粒子の表面に、球状のポリオルガノシルセスキオキサンが付着してなることをシリコーン複合粒子。
8.下記工程(i)及び(ii)を含む7記載のシリコーン複合粒子を製造する製造方法。
(i)(A)及び(B)成分を含有する組成物に、界面活性剤と水を添加し、乳化処理を施してエマルションとして、(C)成分の存在下で(A)成分と(B)成分との付加硬化反応により、シリコーンゴム球状粒子の水分散液を得る工程、
(ii)(i)で得られたシリコーンゴム球状粒子の水分散液、水及びアルカリ性物質の存在下で、オルガノトリアルコキシシランを加水分解及び縮合反応させ、上記シリコーンゴム球状粒子の表面にポリオルガノシルセスキオキサンを付着させる工程。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシルフェニレン(環式炭化水素)骨格含有成分からなるシリコーンゴム球状粒子の開発により、分散性の良好なゴム硬度の高いシリコーンゴム球状粒子が得られる。このようなシリコーンゴム球状粒子を用いることにより、各種樹脂への配合に伴う低応力化能の向上(強度増加)や、粒子自体の屈折率が高いことによる光拡散特性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例で得られたシリコーンゴム球状粒子の光学顕微鏡写真である。
【
図2】実施例で得られたシリコーン複合粒子の電子顕微鏡写真である。
【
図3】実施例で得られたシリコーン複合粒子の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[(A)成分]
本発明において、シリコーンゴム球状粒子を構成する硬化性組成物の(A)成分は、
(A-1)下記一般式(1)
【化2】
(式中、R
1は独立に、非置換又はハロゲン原子、シアノ基もしくはグリシドキシ基で置換された炭素原子数1~12の1価炭化水素基、又はアルコキシ基である。)
で表されるケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個有する化合物と、
(A-2)付加反応性炭素-炭素二重結合を1分子中に2個有する炭化水素化合物との付加反応生成物であって、かつ付加反応性炭素-炭素二重結合を1分子中に2個以上有する付加反応生成物である。(A)成分は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0017】
(A)成分の25℃における絶対粘度は7,000~20,000mPa・sが好ましく、10,000~17,000mPa・sがより好ましい。なお、本発明における絶対粘度は、回転粘度計、例えば(東機産業(株)製、TVB-10型)による測定値である。
【0018】
[(A-1)成分]
(A-1)成分は、下記一般式(1)
【化3】
(式中、R
1は独立に、非置換又はハロゲン原子、シアノ基もしくはグリシドキシ基で置換された炭素原子数1~12の1価炭化水素基、又はアルコキシ基である。)
で表されるケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個有する化合物であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0019】
一般式(1)中のR1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o-,m-,p-トリル等のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基;p-ビニルフェニル基等のアルケニルアリール基;及びこれらの基中の炭素原子に結合した1個以上の水素原子が、ハロゲン原子、シアノ基もしくはグリシドキシ基で置換された、例えば、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;2-シアノエチル基;3-グリシドキシプロピル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1~4のものが好ましい。R1としては、アルケニル基及びアルケニルアリール基以外のものが好ましく、その全てがメチル基であるものが好ましい。
【0020】
一般式(1)で示される化合物としては、例えば、
【化4】
上記構造式で示される、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、
【化5】
上記構造式で示される1,3-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン等のシルフェニレン化合物が挙げられる。
【0021】
[(A-2)成分]
上記(A)成分の反応原料となる(A-2)成分は、付加反応性炭素-炭素二重結合を1分子中に2個有する炭化水素化合物であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、「付加反応性」とは、Si-H基と周知のヒドロシリル化反応により、付加反応し得る性質を意味する。
【0022】
(A-2)成分は、(i)炭化水素の骨格を形成している炭素原子のうち、隣接する2つの炭素原子間に付加反応性炭素-炭素二重結合を形成しているもの、(ii)炭化水素の骨格を形成している炭素原子に結合した水素原子が、付加反応性炭素-炭素二重結合含有基によって置換されているもの、(iii)炭化水素の骨格を形成している炭素原子のうち、隣接する2つの炭素原子間に付加反応性炭素-炭素二重結合が形成されており、かつ、炭化水素の骨格を形成している炭素原子に結合した水素原子が、付加反応性炭素-炭素二重結合含有基によって置換されているもの、いずれであってもよい。上記炭化水素の骨格としては多環式炭化水素化合物であることが好ましい。
【0023】
上記(A-2)成分としては、例えば、下記構造式:
【化6】
で表される5-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、又は下記構造式:
【化7】
で表される6-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、又はこれらの混合物が挙げられる。以下、これらを区別する必要がない場合、「ビニルノルボルネン」と総称する場合がある。
【0024】
なお、ビニルノルボルネンにおけるビニル基の置換位置は、シス配置(エキソ型)、又はトランス配置(エンド型)のいずれであってもよく、配置の相違によってこの成分の反応性等については特段の差異が認められないことから、両配置の異性体の組み合わせであってもよい。
【0025】
[(A)成分の製造方法]
(A)成分の製造方法としては、例えば下記が挙げられる。Si-H基を1分子中に2個有する上記(A-1)成分1モルに対し、付加反応性炭素-炭素二重結合を1分子中に2個有する上記(A-2)成分を1~10モル以下、好ましくは1モルを超え5モル以下の過剰量を、ヒドロシリル化反応触媒の存在下において付加反応させることで、Si-H基を有しない(残存していない)付加反応生成物として得ることができる。
【0026】
ヒドロシリル化反応触媒としては、従来公知のものを全て使用することができ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。ヒドロシリル化反応触媒としては、例えば、白金金属担持カーボン粉末、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応生成物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒;ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等、白金族金属系触媒が挙げられる。付加反応条件、溶媒の使用等については特に限定されず、従来公知の通りでよい。
【0027】
ヒドロシリル化反応触媒の量は、触媒としての有効量であればよく、特に限定されるものでないが、(A-1)及び(B-1)成分の合計質量に対し、白金族金属原子の質量換算で、通常1~500ppm(質量)が好ましく、2~100ppmがより好ましい。
【0028】
(A)成分の製造方法において、(A-1)成分に対し過剰モル量の上記(A-2)成分を用いることから、(A)成分は、(A-2)成分の構造に由来する付加反応性炭素-炭素二重結合を1分子中に2個有するものである。さらに、上記(A-1)成分に由来する残基(Si-H基)が、(A-2)成分の構造に由来する付加反応性炭素-炭素二重結合を有しない、炭化水素の2価の残基によって結合されている構造を含むものであってもよい。
【0029】
(A)成分としては例えば、下記一般式(2):
Y1-X-(Y2-X)p-Y1 (2)
(式中、Xは(A-1)成分による化合物の2価の残基であり、Y1は上記(A-2)成分による炭化水素化合物の1価の残基であり、Y2は(A-2)成分の2価の残基であり、pは0~10、好ましくは0~5の整数である。)
で表される化合物が挙げられる。なお、(Y2-X)で示される繰り返し単位の数を示すpの値は、上記(A-1)成分1モルに対して反応させる、上記(A-2)成分の過剰モル量を調整することにより設定・変更可能である。
【0030】
上記一般式(2)中のY
1としては、例えば、下記構造式:
【化8】
で示される1価の残基が挙げられる。以下、上記6つの構造体を区別する必要がない場合、これらを「NB基」と称し、「NB」と略記する場合がある。
中でも、反応性の観点から下記2つの構造式にて示されるものが好ましい。
【化9】
【0031】
上記一般式(2)中のY
2としては、例えば、下記構造式:
【化10】
で示される2価の残基が挙げられる。但し、上記構造式で示される非対称な2価の残基は、その左右方向が記載の通りに限定されるものではなく、実質上、個々の上記構造を紙面上で180°回転させた構造も含むものとする。
【0032】
一般式(2)で示される(A)成分の好適な具体例を以下に示すが、構造としてこれに限定されるものではない。
【化11】
(式中、pは0~10の整数)
【0033】
[(B)成分]
本発明における、シリコーンゴム球状粒子を構成する硬化性組成物の(B)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有し、かつフェニル基を有する鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。(B)成分中のSi-H基が、(A)成分中の1分子中に2個有する付加反応性炭素-炭素二重結合と、ヒドロシリル化反応により付加することで、3次元網目状の硬化物が得られる。(B)成分は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0034】
(B)成分としては、下記一般式(2)
R2
3SiO(R2
2SiO)nSiR2
3 (2)
(式中、R2は独立に、水素原子、非置換又はハロゲン原子、シアノ基もしくはグリシドキシ基で置換された炭素原子数1~12の1価炭化水素基、又はフェニル基であり、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有し、かつフェニル基を有する。)
で表される鎖状オルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0035】
(B)成分の25℃における動粘度は、10~1,000mm2/sが好ましく、20~250mm2/sがより好ましい。なお、動粘度は、オストワルド粘度計による測定値である。
【0036】
一般式(3)中のR2の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o-,m-,p-トリル等のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基;p-ビニルフェニル基等のアルケニルアリール基;及び、これらの基中の炭素原子に結合した1個以上の水素原子が、ハロゲン原子、シアノ基もしくはグリシドキシ基で置換された、例えば、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;2-シアノエチル基;3-グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
【0037】
(A)成分と相溶化し透明な材料とするためには、分子中に1個以上のフェニル基を有することが好ましい。R2としては、工業的に製造することが容易であり、入手しやすい点から、メチル基とフェニル基が好ましい。
【0038】
一般式(2)で示される(B)成分の好適な具体例を以下に示すが、構造としてこれに限定されるものではない。
Me3SiO-(MeHSiO)3-(Ph2SiO)2-SiMe3
Me3SiO-(MeHSiO)4-(Ph2SiO)2-SiMe3
HMe2SiO-(MeHSiO)1-(Ph2SiO)2-SiMe2H
HMe2SiO-(MeHSiO)2-(Ph2SiO)2-SiMe2H
(式中、Meはメチル基、phはフェニル基である。)
【0039】
(A)成分及び(B)成分の配合量は、各成分中の付加反応性炭素-炭素二重結合の合計1モル当たり、同じく各成分中のSi-H基の合計量が、通常0.5~3.0モル、好ましくは0.8~1.5モルとするのがよい。このような範囲内の配合量とすることで、シリコーンゴム球状粒子として、より十分な硬度を有する硬化物が得られる。
【0040】
[(C)成分]
本発明における、シリコーンゴム球状粒子を構成する硬化性組成物に含まれる(C)成分:ヒドロシリル化反応触媒は、上記[(A)成分の製造方法]にて記載したものと同様である。
【0041】
(C)成分の配合量は、触媒としての有効量であればよく、特に限定されるものでないが、(A)及び(B)成分の合計質量に対し、白金族金属原子の質量換算で、通常1~500ppm(質量)が好ましく、2~100ppmがより好ましい。このような範囲内の配合量とすることで、十分な付加硬化反応に要する時間が適度なものとなり、得られる硬化物が着色する等の問題を生じるおそれがない。
【0042】
[その他の配合成分]
本発明のシリコーンゴム球状粒子を構成する硬化性組成物は、(A)~(C)成分に加え、本発明の目的・効果を損なわない範囲において、他の成分を適量配合することは任意である。他の成分としては以下のものが挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0043】
[酸化防止剤]
本発明の硬化性組成物中においては、(A)成分中の付加反応性炭素-炭素二重結合が未反応のまま残存している場合があり、必要に応じ、酸化防止剤を添加することにより着色を未然に防止することが可能である。
【0044】
酸化防止剤としては、従来公知のものを全て使用することができる。例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)等が挙げられる。
【0045】
酸化防止剤を使用する場合、その配合量は酸化防止剤としての有効量であればよく、特に制限されないが、上記(A)及び(B)成分との合計質量に対して、通常10~10,000ppm(質量)が好ましく、100~1,000ppmがより好ましい。このような範囲内の配合量とすることで、酸化防止能力がより十分に発揮され、着色、白濁、酸化劣化等の発生のない硬化物が得られる。
【0046】
[粘度・硬度調整剤]
本発明の硬化性組成物を構成する(A)及び(B)成分の粘度、シリコーンゴム球状粒子の硬度等を調整するため、ケイ素原子に結合したアルケニル基、又はSi-H基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン、網状オルガノポリシロキサン;非反応性の(即ち、ケイ素原子に結合したアルケニル基、及びSi-H基を有さない)直鎖状もしくは環状オルガノポリシロキサン、又はシルフェニレン系化合物等を配合してもよい。
【0047】
[その他]
ポットライフを確保する点から、1-エチニルシクロヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等の付加反応制御剤を配合してもよい。さらに、硬度向上の点から、ヒュームドシリカ等の無機化合物よりなる充填剤を配合してもよい。
【0048】
[シリコーンゴム球状粒子]
本発明におけるシリコーンゴム球状粒子は、(A)~(C)成分を含有する硬化組成物の付加硬化反応硬化物からなるシリコーンゴム球状粒子である。本発明において「球状」とは、真球だけでなく、若干歪んだ球体も包含するが、半球状は含まない。このような粒子の形状は、粒子を二次元に投影した時の円形度として評価できる。円形度とは(粒子面積に等しい円の周囲長)/(粒子周囲長)と定義するものであり、電子顕微鏡等で得られる画像の解析により測定することができる。本発明における「球状」とは、平均円形度が0.8~1.2の範囲にあるものであり、0.85~1.1が好ましく、0.90~1.0がより好ましい。
【0049】
シリコーンゴム球状粒子の粒径は特に限定されないが、体積平均粒径(MV値)が0.5~100μmが好ましく、0.5~40μmがより好ましい。体積平均粒径が上記下限未満である場合、得られるシリコーンゴム球状粒子は凝集性が高くなり、一次粒子まで容易に分散しなくなると共に、粉体の流動性が低下するおそれがある。体積平均粒径が上記上限以上である場合、得られるシリコーンゴム球状粒子は粉体の流動性が低下し、ざらつき感が出るおそれがある。なお、体積平均粒径は、シリコーンゴム球状粒子の粒径に合わせ、1μm以上は電気抵抗法にて、1μm未満はレーザー回折/散乱法にて測定される。
【0050】
シリコーンゴム球状粒子は、べたつきのないことが好ましく、そのゴム硬度は、JIS K 6253に規定されるタイプD デュロメータによる測定において20以上が好ましく、30~90がより好ましい。ゴム硬度が上記下限未満である場合、得られるシリコーンゴム球状粒子の凝集性が高くなり、一次粒子にまで容易に分散しないおそれがある。
【0051】
シリコーンゴム球状粒子は、これを構成する硬化性組成物((A)、(B)成分他を含む)の屈折率が、ATAGO製デジタル屈折率計RX-5000(波長:589nm、25℃)の測定において、1.45以上の範囲であることが好ましく、1.50以上が好ましい。上限は特に限定されないが、樹脂との屈折率差がある方が好ましく、およそ2.00以下であることが好ましい。屈折率が上記下限未満である場合、樹脂等への配合時において十分な光拡散特性を示さないおそれがある。
【0052】
シリコーンゴム球状粒子は、粒子表面に後述するノニオン性界面活性剤を有してもよく、粒子中においてノニオン性界面活性剤を含有してもよい。製造方法は後に詳細に説明する。
【0053】
[シリコーン複合粒子]
本発明のシリコーン複合粒子は、上記シリコーンゴム球状粒子の表面に、球状のポリオルガノシルセスキオキサンが付着してなるものであり、吸着していてもよい。球状のポリオルガノシルセスキオキサンが付着することで、光散乱能が向上する。
【0054】
[ポリオルガノシルセスキオキサン]
上記シリコーン複合粒子におけるポリオルガノシルセスキオキサンの形状は、球状であり、球状又は半球状であることが好ましい。その粒径は10~400nmが好ましく、50~200nmがより好ましい。ポリオルガノシルセスキオキサンの粒径が上記下限未満の場合、光散乱能が低下し、得られるシリコーン複合粒子の光散乱特性を十分に得られないおそれがある。また、粒径が上記上限を超えると、得られるシリコーン複合粒子の感触は乏しくなり、また光散乱性が低下するおそれがある。ただし、ポリオルガノシルセスキオキサンの粒径は、上記シリコーンゴム球状粒子の粒径よりも小さいことが必要である。
【0055】
ポリオルガノシルセスキオキサンは、シリコーンゴム球状粒子の表面の全部又は一部に付着する。具体的にはまばらに付着していてもよいし、表面に隙間なく付着していてもよいが、光散乱特性に優れるシリコーン複合粒子が得られる点から、付着密度の高い方が好ましい。なお、ポリオルガノシルセスキオキサンの形状、粒径、及びシリコーンゴム球状粒子表面での付着密度は、得られたシリコーン複合粒子を電子顕微鏡にて観察することにより確認できる。
【0056】
上記ポリオルガノシルセスキオキサンは、例えば、R3SiO3/2で示される単位が、三次元網目状に架橋したレジン状固体物である。上記R3は、非置換又は置換の炭素数1~20の1価炭化水素基である。R3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;及び、これら官能基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子等の原子、アミノ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、エポキシ基、グリシドキシ基又はカルボキシル基等の置換基で置換した炭化水素基等が挙げられる。
【0057】
後述する製造方法により、シリコーンゴム球状粒子の表面にポリオルガノシルセスキオキサンを付着させるためには、上記R3の50モル%以上がメチル基、ビニル基又はフェニル基であることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上が上記基であるとよい。
【0058】
シリコーンゴム球状粒子の表面に付着するポリオルガノシルセスキオキサンの量は、シリコーンゴム球状粒子100質量部に対して1~50質量部が好ましく、2~25質量部がより好ましい。ポリオルガノシルセスキオキサンの量が上記下限未満である場合、得られるシリコーン複合粒子の光散乱能が低下するおそれがある。
【0059】
ポリオルガノシルセスキオキサンは、得られるシリコーン複合粒子の非凝集性、分散性等の特性や、粉体の流動性に伴うさらさら感等を損なわない範囲において、R3SiO3/2単位の他に、R3
2SiO2/2単位、R3
3SiO1/2単位、及びSiO4/2単位から選ばれる1種以上を含んでいてもよい。このようなポリオルガノシルセスキオキサンにおいては、R3SiO3/2単位の含有率が、全シロキサン単位中70~100モル%の範囲が好ましく、80~100モル%の範囲がより好ましい。
【0060】
[シリコーンゴム球状粒子の製造方法]
シリコーンゴム球状粒子は、例えば以下の方法で得ることができる。
(A)及び(B)成分を含有する組成物に、界面活性剤と水を添加し、乳化処理を施してエマルションとして、(C)成分の存在下で(A)成分と(B)成分とを付加硬化反応させる方法が挙げられる。このような架橋・ゴム化する方法により得られる。詳細は以下のシリコーン複合粒子の製造方法(i)で説明する。
【0061】
[シリコーン複合粒子の製造方法]
シリコーン複合粒子は、例えば以下工程を含む製造方法で得ることができる。
(i)(A)及び(B)成分を含有する組成物に、界面活性剤と水を添加し、乳化処理を施してエマルションとして、(C)成分の存在下で(A)成分と(B)成分との付加硬化反応により、シリコーンゴム球状粒子の水分散液を得る工程、
(ii)(i)で得られたシリコーンゴム球状粒子の水分散液、水及びアルカリ性物質の存在下で、オルガノトリアルコキシシランを加水分解及び縮合反応させ、上記シリコーンゴム球状粒子の表面にポリオルガノシルセスキオキサンを付着させる工程。
【0062】
(i)(A)及び(B)成分を含有する組成物に、界面活性剤と水を添加し、乳化処理を施してエマルションとして、(C)成分の存在下で(A)成分と(B)成分との付加硬化反応により、シリコーンゴム球状粒子の水分散液を得る工程
水分散液は、シリコーンオイルを含浸したシリコーンゴム球状粒子の水分散液という形での製造も可能である。なお、(C)成分は付加硬化反応前であれば、どの時点で添加してもよい。
【0063】
シリコーンゴム球状粒子に含浸させる液体としては、オルガノポリシロキサンが挙げられる。オルガノポリシロキサンとしては、平均組成式R4
aSiO(4-a)/2で示すことができ、R4は、非置換又は置換の炭素数1~20の1価炭化水素基であり、aは1≦a≦3で示される正数であり、好ましくは0.5≦a≦2.3である。
【0064】
R4としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;及び、これら基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子等の原子、及び/又はアミノ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、エポキシ基、グリシドキシ基、メルカプト基、カルボキシル基等の置換基で置換した、炭化水素基等が挙げられる。
なお、工業的には、全R4基中の50モル%以上がメチル基であることが望ましい。
【0065】
上記オルガノポリシロキサンは、25℃における粘度:100,000mm2/s以下であることが好ましく、10,000mm2/s以下であることがより好ましい。粘度が上記上限を超える場合、この製造方法により粒度分布の狭いシリコーンゴム球状粒子が得られないおそれがある。なお、上記粘度は、オストワルド粘度計による25℃下での測定値を示すものである。
【0066】
界面活性剤は、(A)及び(B)成分を含有する組成物と水との混合により乳化させ、エマルションを形成させるための「乳化剤」として使用するものである。界面活性剤は特に限定されず、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び、両イオン性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0067】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0068】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、モノアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルアミノ酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、ジアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0069】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルジメチルアンモニウム塩、ジポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、モノアルキルアミン塩、モノアルキルアミドアミン塩等が挙げられる。
【0070】
両イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルジメチルカルボキシベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルカルボキシベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。
【0071】
界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、少量で(A)~(C)成分を含有する硬化性組成物を乳化することができ、かつ微細であり粒度分布の狭いシリコーンゴム球状粒子の製造ができる観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0072】
上記界面活性剤の使用量は、(A)及び(B)成分を含有する組成物100質量部に対し、0.01~20質量部が好ましく、0.05~5質量部がより好ましい。界面活性剤の使用量が上記上限を超えると、この製造方法により、ポリオルガノシルセスキオキサンをシリコーンゴム球状粒子表面への付着が困難となるおそれがある。一方、使用量が上記下限未満である場合、微細かつ粒度分布の狭いシリコーンゴム球状粒子を得ることが困難となるおそれがある。
【0073】
乳化方法は、一般的な乳化分散機を用いて行えばよく、これに制限されない。該乳化分散機としては、例えば、ホモミキサー等の高速回転せん断撹拌機、ホモディスパー等の高速回転遠心放射型撹拌機、ホモジナイザー等の高圧噴射式乳化分散機、コロイドミル、超音波乳化機等が挙げられる。
【0074】
シリコーンゴム球状粒子の水分散液は、上述の乳化方法により得られたエマルションに(C)成分を添加し、付加硬化反応をさせることで製造できる。
【0075】
(C)成分はヒドロシリル化反応触媒(白金族金属系触媒)である。ここで、触媒の水に対する分散性が低い場合、触媒を界面活性剤に溶解した状態でエマルション中へ添加するのが好ましい。この際、使用する界面活性剤は、上記記載のものを使用すればよく、中でもノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0076】
(C)触媒は、(A)及び(B)成分を含有する組成物中に予め添加してもよい。この場合、乳化工程が終了する前の状態でシリコーン組成物が硬化しないよう、反応性、温度及び反応時間を考慮して乳化を行うのが好ましい。また、シリコーン組成物中に、予め反応制御剤を配合してもよい。
【0077】
付加硬化反応は、室温下で行ってもよいが、反応が完結しない場合は100℃未満の加熱下で行ってもよい。温度条件としては、20~60℃が好ましく、30~50℃がより好ましい。反応温度が上記下限未満の場合、硬化反応が十分に進行しないおそれがある。一方、上記上限を超えると、エマルションの安定性が低下し、目的とするシリコーンゴム球状粒子を得られないおそれがある。シリコーン複合粒子にしない場合は、ここでシリコーンゴム球状粒子を粉体として取り出す。方法は後述するシリコーン複合粒子を粉体として取り出す工程と同じであり、例えば、シリコーンゴム球状粒子に含浸している液体、水分等を揮発除去することで、粉体としてのシリコーンゴム球状粒子を得る。
【0078】
(ii)(i)で得られたシリコーンゴム球状粒子の水分散液、水及びアルカリ性物質の存在下で、オルガノトリアルコキシシランを加水分解及び縮合反応させ、上記シリコーンゴム球状粒子の表面にポリオルガノシルセスキオキサンを付着させる工程
水分散液は、そのままの状態で(ii)工程に使用してもいいが、必要に応じてさらに水を添加してもよい。シリコーンゴム球状粒子は、水100質量部に対し1~150質量部含まれていることが好ましく、5~70質量部の範囲がより好ましい。水の量に対するシリコーンゴム球状粒子の量が上記下限未満である場合、シリコーン複合粒子の生成効率が低くなるおそれがある。上記上限を超えると、シリコーンゴム球状粒子表面へのポリオルガノシルセスキオキサンの付着が困難となったり、粒子凝集や融着が生じるおそれがある。
【0079】
シリコーン複合粒子を製造する工程において、ポリオルガノシルセスキオキサンの付着性や、得られるシリコーン複合粒子のサイズを制御する目的として、界面活性剤や水溶性高分子化合物等を上記水分散液に予め添加してもよい。
【0080】
シリコーンゴム球状粒子の水分散液へさらに添加する界面活性剤としては、特には限定されず、上記のものを使用すればよい。なお、添加する界面活性剤は、シリコーンゴム球状粒子の水分散液中に含まれる界面活性剤と同じでも、異なってもよく、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。ここで添加する界面活性剤の量は、特に限定されるものではないが、シリコーンゴム球状粒子の水分散液100質量部に対して、0.01~20質量部の範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.05~5質量部であるのが好ましい。
【0081】
シリコーンゴム球状粒子の水分散液に添加する水溶性高分子化合物は、特には限定されず、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。水溶性高分子化合物としては、非イオン性水溶性高分子化合物、アニオン性水溶性高分子化合物、カチオン性水溶性高分子化合物、及び両イオン性水溶性高分子化合物等が挙げられる。
【0082】
非イオン性水溶性高分子化合物としては、例えば、ビニルアルコールと酢酸ビニルとの共重合体、アクリルアミドの重合体、ビニルピロリドンの重合体、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合体、ポリエチレングリコール、イソプロピルアクリルアミドの重合体、メチルビニルエーテルの重合体、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、グアガム、キサンタンガム等が挙げられる。
【0083】
アニオン性水溶性高分子化合物としては、例えば、アクリル酸ナトリウムの重合体、アクリル酸ナトリウムとマレイン酸ナトリウムの共重合体、アクリル酸ナトリウムとアクリルアミドの共重合体、スチレンスルホン酸ナトリウムの重合体、ポリイソプレンスルホン酸ナトリウムとスチレンの共重合体、ナフタレンスルホン酸ナトリウムの重合体、カルボキシメチルデンプン、リン酸デンプン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、カラギーナン、ヒアルロン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0084】
カチオン性水溶性高分子化合物としては、例えば、ジメチルジアリルアンモニウムクロライドの重合体、ビニルイミダゾリンの重合体、メチルビニルイミダゾリウムクロライドの重合体、アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの重合体、エチレンイミンの重合体、アリルアミン塩酸塩の重合体、カチオン化デンプン、カチオン化セルロース、キトサン、及び、これらに非イオン性基やアニオン性基を持つモノマーを共重合した誘導体等が挙げられる。
【0085】
両イオン性水溶性高分子化合物としては、例えば、アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸とアクリルアミドの共重合体、メタアクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸とアクリルアミドの共重合体等が挙げられる。
【0086】
水溶性高分子化合物を用いる場合、その配合量は、本工程より得られる乳化物中において0.01~50質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましく、0.3~10質量%がさらに好ましい。
【0087】
シリコーン複合粒子は、(i)で得られたシリコーンゴム球状粒子の水分散液、水及びアルカリ性物質の存在下で、オルガノトリアルコキシシランを加水分解及び縮合反応させ、上記シリコーンゴム球状粒子の表面にポリオルガノシルセスキオキサンを付着させることにより得られる。
【0088】
アルカリ性物質は、オルガノトリアルコキシシランを加水分解、及び縮合反応させる触媒として使用する。アルカリ性物質は、特には限定されず、オルガノトリアルコキシシランの加水分解、及び縮合反応を進行させるものであればよい。アルカリ性物質は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。アルカリ性物質としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;アンモニア;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド;又は、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン等のアミン類等を使用することができる。中でも、得られるシリコーン複合粒子の粉体から、揮発により容易に除去可能なアルカリ性物質である、アンモニアが最も好ましい。なお、アンモニアは、市販のアンモニア水溶液を使用することが可能である。
【0089】
アルカリ性物質の添加量としては、シリコーンゴム球状粒子の水分散液におけるpHが、好ましくは9.0~14.0の範囲、より好ましくは9.5~13.0の範囲となる量が好ましい。pHが上記範囲内であれば、オルガノトリアルコキシシランの加水分解及び縮合反応を十分に進行させることができ、得られるポリオルガノシルセスキオキサンは、シリコーンゴム球状粒子表面により十分量付着することができる。
【0090】
アルカリ性物質の添加方法としては、シリコーンゴム球状粒子の水分散液に対し、オルガノトリアルコキシシランの添加前に予め配合してもよいし、オルガノトリアルコキシシランの添加後に配合してもよい。
【0091】
オルガノトリアルコキシシランは、例えば、一般式:R3Si(OR5)3で示されるものが挙げられる。R3は非置換又は置換の炭素数1~20の1価炭化水素基であり、上記記載の通りである。R5は、非置換の炭素原子数1~6の1価炭化水素基である。R5としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられるが、反応性の観点からメチル基であることが好ましい。
【0092】
ポリオルガノシルセスキオキサン中にR3
2SiO2/2単位、R3
3SiO1/2単位及び、SiO4/2単位の少なくとも1種をさらに配合させる場合、各々に対応するR3
2Si(OR5)2、R3
3SiOR5、及び、Si(OR5)4のうち、少なくとも1種を添加すればよい。R3Si(OR5)3の含有率は、例えば、全原料中70~100モル%が好ましく、80~100モル%がより好ましい。
【0093】
オルガノトリアルコキシシランの添加量は、シリコーンゴム球状粒子100質量部に対し、ポリオルガノシルセスキオキサンの量が1~50質量部となる範囲が好ましく、2~25質量部の範囲となる量がより好ましい。
【0094】
オルガノトリアルコキシシランの添加方法は、プロペラ翼、平板翼等の通常の攪拌機を用いて行うことが好ましい。
【0095】
シリコーンゴム球状粒子の水分散液にアルカリ性物質を配合した後、オルガノトリアルコキシシランを添加する場合、オルガノトリアルコキシシランを一度に添加してもよいが、時間を掛けて徐々に添加する方が好ましい。反応液の温度は0~40℃が好ましく、0~30℃がより好ましい。温度が上記範囲内にあれば、シリコーンゴム球状粒子の表面にポリオルガノシルセスキオキサンを容易に付着させることができる。なお、撹拌は、オルガノトリアルコキシシランの添加後、アルコキシシランの加水分解及び縮合反応が完結するまで継続する。加水分解、及び縮合反応を完結させるため、反応を室温下又は40~100℃程度の加熱下で行ってもよく、アルカリ性物質を適宜追加してもよい。なお、シリコーン複合粒子の製造方法については、アルカリ性物質を添加する前段階においてオルガノトリアルコキシシランを添加しても差し支えない。
【0096】
シリコーン複合粒子は、シリコーンゴム球状粒子の表面にポリオルガノシルセスキオキサンを付着させた後、シリコーンゴム球状粒子に含浸している液体及び水分等を揮発除去することで、粉体としてのシリコーン複合粒子を得る。
【0097】
シリコーン複合粒子に含浸している液体を揮発により除去する工程は、従来公知の方法に従えばよい。含浸している液体の沸点が高く、揮発により除去できない場合、又は低温で揮発除去したい場合、除去工程の前段階において、沸点の低い溶剤等を用いて洗浄置換すればよい。
【0098】
洗浄置換に用いる溶剤は、従来公知のものを使用すればよい。例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素;ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール;クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチル、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;エチルアセテート、イソプロピルアセテート、エチルアセトアセテート、ベンジルアセテート等のエステル;エチルエーテル、ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、及び、1,4-ジオキサン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン等が挙げられる。
【0099】
粉体として取り出す工程における処理操作として、予め、ろ過分離、遠心分離、デカンテーション等の方法を用いて分散液を濃縮する方法が挙げられる。具体的には、例えば、分散液/濃縮物に溶剤を添加し、プロペラ翼、平板翼等の通常の撹拌機を用いて混合した後、該ろ過分離、遠心分離、デカンテーション等の方法で固液分離する。
【0100】
シリコーン複合粒子中に含浸している液体、洗浄により置換された溶剤又は水分の揮発除去は、常圧下、又は減圧下にて加熱処理を施すことで除去できる。例えば、分散液を加熱下で静置して水分を除去する方法、分散液を加熱下で撹拌流動させながら除去する方法、スプレードライヤーのような熱風気流中に分散液を噴霧させる方法、流動熱媒体を利用する方法等が挙げられる。なお、該操作の前処理として、上記分散液を濃縮する方法を採用してもよい。
【0101】
シリコーン複合粒子の粉体が凝集している場合、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミル等の粉砕機を用いて解砕する方法が挙げられる。
【実施例】
【0102】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0103】
[合成例](A)成分
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び温度計を備えた5Lの4つ口フラスコに、ビニルノルボルネン(商品名:V0062、東京化成社製;5-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エンと6-ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エンとの等モル量の異性体混合物)1,785g(14.88モル)、及びトルエン455gを加え、オイルバスを用いて85℃に加熱した。これに、5質量%の白金金属を担持したカーボン粉末3.6gを添加し、撹拌しながら1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン1,698g(8.75モル)を180分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに110℃で加熱撹拌を24時間行った後、室温まで冷却した。その後、白金金属担持カーボンをろ過して除去し、トルエン及び過剰のビニルノルボルネンを減圧留去して、無色透明なオイル状の反応生成物(25℃における粘度:12,820mPa・s)3,362gを得た。
【0104】
反応生成物について、FT-IR、NMR、GPC等により分析した結果、当該物質は、
(1)p-フェニレン基を2個有する化合物:約41モル%(下記に代表的な構造の一例を示す)、
【化12】
(2)p-フェニレン基を3個有する化合物:約32モル%、
【化13】
及び、
(3)p-フェニレン基を4個以上有する化合物:約27モル%
の混合物であることが判明した。上記NBは前述の通りである。
また、上記(1)、(2)及び(3)混合物全体中の付加反応性炭素-炭素二重結合の含有割合は、0.36モル/100gであった。
【0105】
[実施例1]
(A)成分を硬化性組成物に用いたシリコーンゴム球状粒子/複合粒子の調製
合成例で得られた動粘度:14,600mm
2/sの下記(A)成分109g、
【化14】
(B)下記式で示され、動粘度:20mm
2/sのメチル/フェニルハイドロジェンポリシロキサン99g(多環状不飽和基1個に対し、ヒドロシリル基が1.13個となる配合量)、
【化15】
を容量500mLのデスカップに仕込み、ホモミキサーを用いて2,000rpmで撹拌分散させた。次いで、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤:POE(9)ラウリルエーテル(エマルゲン109P;花王(株)製)2.4gを、予め水22gに溶解させた界面活性剤水溶液を調製し、これを先のデスカップへ全量投入した(仕込み)。
【0106】
仕込みの後、ホモミキサーを油/水界面に配置させ、1,000rpmで緩やかに撹拌したところ増粘し、水中油滴型であることを確認したため、さらに4,000~5,000rpmの範囲内において10分間撹拌を継続した結果、白色均一な水中油滴型(以下、O/W型と称す)乳化物を得た(乳化)。
【0107】
得られたO/W型乳化物を、ホモミキサーを用いて1,000rpm前後で撹拌を行いながら、水167gを徐々に添加し、O/W型乳化物を希釈したO/W型乳化液を得た。得られたO/W型乳化液を、錨型撹拌翼による撹拌装置の付いた容量1Lのデスカップに移し、20~25℃に温調した後、撹拌下で(C)塩化白金酸-オレフィン錯体のトルエン溶液(白金含有量:0.5質量%)0.6gとPOE(9)ラウリルエーテル(エマルゲン109P;花王(株)製)0.6gの混合溶解物を添加し、同温度で1~2時間撹拌を行った。その後、40℃に温調してから2時間撹拌を行い、付加硬化反応を十分に進行させた結果、シリコーンゴム球状粒子の水分散液を得た(ゴム化)。
【0108】
得られたシリコーンゴム球状粒子の水分散液中のシリコーンゴム球状粒子の形状を、光学顕微鏡装置「ECLIPSE LV100POL」((株)Nikon製)にて観察したところ、その形態は球状であることを確認した。体積平均粒径を電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定した結果、1.9μmであった。
【0109】
シリコーンゴム球状粒子のゴム硬度を、JIS K 6253に準拠し、以下のように測定した。(A)成分、メチル/フェニルハイドロジェンポリシロキサン、及び塩化白金酸-オレフィン錯体のトルエン溶液(白金含有量:0.5質量%)を、上記記載の配合割合にて混合し、厚みが10mmとなるようアルミシャーレに流し込んだ。その後、40~60℃下で24時間の加熱処理を施すことでシリコーンゴムを得た。この得られたシリコーンゴムをアルミシャーレから外し、ゴムの硬度をデュロメータD硬度計により測定した結果、60であった。
【0110】
シリコーンゴム球状粒子の水分散液334gを、錨型撹拌翼による撹拌装置の付いた容量2Lのガラスフラスコに移し、水534g、28質量%アンモニア水16.4g及び、40質量%ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体水溶液(MEポリマーH40W;東邦化学工業(株)製)0.3gを添加した(仕込み)。
【0111】
先に仕込んだ容量2Lのガラスフラスコを5~10℃に温調した後、メチルトリメトキシシラン(KBM-13;信越化学工業(株)製)15.4g(シリコーンゴム球状粒子100質量部に対して4.2質量部)を、20分間掛けて滴下し、この間の液温を5~10℃に保ちながら、さらに1時間撹拌を行った。次いで、55~60℃まで加熱し、当該温度を保持したまま1時間撹拌を行い、メチルトリメトキシシランの加水分解及び縮合反応を十分に進行・完結させ(複合化)、シリコーン複合粒子の水分散液が得られた。
【0112】
シリコーン複合粒子の水分散液を、加圧ろ過器を用いて、水分約30質量%に脱水・濃縮した。この脱水・濃縮物を錨型撹拌翼による撹拌装置の付いた容量2Lのガラスフラスコに移し、水1,000mLを添加して30分間撹拌を行った後、加圧ろ過器を用いて脱水した。なお、この加圧ろ過器による脱水工程を計3回繰り返した。その後、脱水・濃縮物を、減圧乾燥機中で3×10-3Paの減圧度、60℃の加熱下で乾燥し、水分を除去した。最後に、得られた乾燥物をジェットミルで解砕した結果、流動性のあるシリコーン複合粒子を得た。
【0113】
得られたシリコーン複合粒子を、界面活性剤を用いて水に分散させ、電気抵抗法粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター(株)製)を用いて測定した結果、体積平均粒径2μmであった。シリコーン複合粒子を、電子顕微鏡(走査型顕微鏡S-4700;日立ハイテクノロジーズ(株)製)で観察したところ、粒子表面において粒径100nm以下の粒状ポリメチルシルセスキオキサンが無数に付着していることを確認した。なお、その付着量は、シリコーンゴム球状粒子100質量%に対して3.8質量%であった。
【0114】
(A)成分として、合成例で得られた(2)p-フェニレン基を3個有する化合物を用いる以外は、実施例1と同様の方法で、シリコーン複合粒子を得た。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明におけるシリコーンゴム球状粒子及び複合粒子は、高硬度、かつ高屈折率材料であり、粒子の分散性及び高い光拡散性能を有することが期待できるため、各種樹脂の低応力化材や光拡散材等に有用であることが期待できる。