IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】共重合体およびポジ型レジスト組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/22 20060101AFI20230912BHJP
   C08F 212/14 20060101ALI20230912BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C08F220/22
C08F212/14
G03F7/039
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020548568
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2019036643
(87)【国際公開番号】W WO2020066806
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2018179382
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】星野 学
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2001/098833(WO,A1)
【文献】特開2002-156760(JP,A)
【文献】特開2002-351080(JP,A)
【文献】特開2000-338671(JP,A)
【文献】特開2003-021903(JP,A)
【文献】特開2018-106062(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123667(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/22
C08F 212/14
G03F 7/039
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
〔式(I)中、Lは、フッ素原子、フルオロアルキル基、シアノ基およびニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種の電子吸引性基を有する2価の連結基であり、Arは、置換基を有していてもよい芳香環基である。〕
で表される単量体単位(A)と、
下記式(II):
【化2】
〔式(II)中、Rは、アルキル基であり、Rは、アルキル基、ハロゲン原子またはハロゲン化アルキル基であり、pは、0以上5以下の整数であり、Rが複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。〕
で表される単量体単位(B)とを有し、
分子量分布が1.7以下である、共重合体。
【請求項2】
前記Lが、フッ素原子、フルオロアルキル基、シアノ基およびニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種の電子吸引性基を置換基として有するアルキレン基である、請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
α-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位、または、α-クロロアクリル酸ベンジル単位と、
α-メチルスチレン単位または4-フルオロ-α-メチルスチレン単位とを有し、
分子量分布が1.7以下である、共重合体。
【請求項4】
重量平均分子量が80000以下である、請求項1~の何れかに記載の共重合体。
【請求項5】
請求項1~の何れかに記載の共重合体と、溶剤とを含む、ポジ型レジスト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体およびポジ型レジスト組成物に関し、特には、ポジ型レジストとして好適に使用し得る共重合体および当該共重合体を含むポジ型レジスト組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造等の分野において、電子線などの電離放射線や紫外線などの短波長の光(以下、電離放射線と短波長の光とを合わせて「電離放射線等」と称することがある。)の照射により主鎖が切断されて低分子量化する重合体が、主鎖切断型のポジ型レジストとして使用されている。
【0003】
そして、例えば特許文献1には、耐ドライエッチング性に優れるポジ型レジストとして、α-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチルの単独重合体(ポリα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル)よりなるポジ型レジストが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭64-26611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のポリα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチルよりなるポジ型レジストは、耐熱性が低いという点において問題があった。
【0006】
また、近年では、パターンの更なる微細化の要求に伴い、ポジ型レジストには、解像度および明瞭性に優れるレジストパターンの形成を可能にすることも求められている。
【0007】
そこで、本発明は、耐熱性に優れ、且つ、解像度および明瞭性に優れるレジストパターンの形成が可能な主鎖切断型のポジ型レジストとして良好に使用可能な共重合体、および、該共重合体を含むポジ型レジスト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、芳香環を含有する所定の単量体を用いて形成した共重合体であって、所定の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)を有する共重合体が、耐熱性に優れると共に解像度および明瞭性に優れるレジストパターンを形成可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の共重合体は、下記式(I):
【化1】
〔式(I)中、Lは、単結合または2価の連結基であり、Arは、置換基を有していてもよい芳香環基である。〕
で表される単量体単位(A)と、下記式(II):
【化2】
〔式(II)中、Rは、アルキル基であり、Rは、アルキル基、ハロゲン原子またはハロゲン化アルキル基であり、pは、0以上5以下の整数であり、Rが複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。〕
で表される単量体単位(B)とを有し、分子量分布が1.7以下であることを特徴とする。
上記単量体単位(A)および単量体単位(B)を有する共重合体は、耐熱性に優れており、主鎖切断型のポジ型レジストとして良好に使用することができる。また、単量体単位(A)および単量体単位(B)を有する共重合体の分子量分布が上記範囲内であれば、解像度および明瞭性に優れるレジストパターンを形成することができる。
なお、本発明において、「分子量分布」は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)を算出して求めることができる。そして、本発明において、「数平均分子量」および「重量平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用し、標準ポリスチレン換算値として測定することができる。
【0010】
ここで、本発明の共重合体は、前記Lが、置換基を有していてもよいアルキレン基であることが好ましい。Lが置換基を有していてもよいアルキレン基であれば、耐熱性を十分に向上させることができるからである。
【0011】
また、本発明の共重合体は、前記Lが、電子吸引性基を有する2価の連結基であることが好ましい。Lが電子吸引性基を有する2価の連結基であれば、電離放射線等に対する感度を向上させることができるからである。
【0012】
そして、前記電子吸引性基は、フッ素原子、フルオロアルキル基、シアノ基およびニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。電子吸引性基がフッ素原子、フルオロアルキル基、シアノ基およびニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種であれば、電離放射線等に対する感度を十分に向上させることができるからである。
【0013】
更に、本発明の共重合体は、前記単量体単位(A)が、α-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位、または、α-クロロアクリル酸ベンジル単位であり、前記単量体単位(B)が、α-メチルスチレン単位または4-フルオロ-α-メチルスチレン単位であることが好ましい。共重合体が上述した単量体単位を有していれば、電離放射線等に対する感度および耐熱性を十分に向上させることができるからである。
【0014】
そして、本発明の共重合体は、重量平均分子量が80000以下であることが好ましい。重量平均分子量が上記上限値以下であれば、電離放射線等に対する感度を向上させることができるからである。
【0015】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のポジ型レジスト組成物は、上述した共重合体の何れかと、溶剤とを含むことを特徴とする。上述した共重合体をポジ型レジストとして含有すれば、耐熱性に優れるレジスト膜を形成することができると共に、解像度および明瞭性に優れるレジストパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の共重合体によれば、耐熱性に優れ、且つ、解像度および明瞭性に優れるレジストパターンの形成が可能な主鎖切断型のポジ型レジストを提供することができる。
また、本発明のポジ型レジスト組成物によれば、耐熱性に優れるレジスト膜、並びに、解像度および明瞭性に優れるレジストパターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、本発明において、「置換基を有していてもよい」とは、「無置換の、または、置換基を有する」を意味する。
【0018】
ここで、本発明の共重合体は、電子線などの電離放射線や紫外線などの短波長の光の照射により主鎖が切断されて低分子量化する、主鎖切断型のポジ型レジストとして良好に使用することができる。また、本発明のポジ型レジスト組成物は、ポジ型レジストとして本発明の共重合体を含むものであり、例えば、半導体、フォトマスク、モールドなどの製造プロセスにおいてレジストパターンを形成する際に用いることができる。
【0019】
(共重合体)
本発明の共重合体は、下記式(I):
【化3】
〔式(I)中、Lは、単結合または2価の連結基であり、Arは、置換基を有していてもよい芳香環基である。〕で表される単量体単位(A)と、
下記式(II):
【化4】
〔式(II)中、Rは、アルキル基であり、Rは、アルキル基、ハロゲン原子またはハロゲン化アルキル基であり、pは、0以上5以下の整数であり、Rが複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。〕で表される単量体単位(B)とを有する。また、本発明の共重合体は、分子量分布が1.7以下である。
【0020】
なお、本発明の共重合体は、単量体単位(A)および単量体単位(B)以外の任意の単量体単位を含んでいてもよいが、共重合体を構成する全単量体単位中で単量体単位(A)および単量体単位(B)が占める割合は、合計で90mol%以上であることが好ましく、100mol%である(即ち、共重合体は単量体単位(A)および単量体単位(B)のみを含む)ことがより好ましい。
【0021】
そして、本発明の共重合体は、所定の単量体単位(A)および単量体単位(B)の双方を含んでいるので、何れか一方の単量体単位のみを含む単独重合体等と比較し、電離放射線等(例えば、電子線、KrFレーザー、ArFレーザー、EUVレーザーなど)が照射された際に主鎖が切断され易く(即ち、電離放射線等に対する感度が高く)、且つ、耐熱性に優れている。
また、本発明の共重合体は、分子量分布が上記上限値以下であるので、ポジ型レジストとしてレジストパターンの形成に用いた際に、解像度および明瞭性に優れるレジストパターンの形成が可能になる。
【0022】
<単量体単位(A)>
ここで、単量体単位(A)は、下記式(III):
【化5】
〔式(III)中、LおよびArは、式(I)と同様である。〕で表される単量体(a)に由来する構造単位である。
【0023】
そして、共重合体を構成する全単量体単位中の単量体単位(A)の割合は、特に限定されることなく、例えば30mol%以上70mol%以下とすることができる。
【0024】
ここで、式(I)および式(III)中のLを構成し得る、2価の連結基としては、特に限定されることなく、例えば、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基などが挙げられる。
【0025】
そして、置換基を有していてもよいアルキレン基のアルキレン基としては、特に限定されることなく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基などの鎖状アルキレン基、および、1,4-シクロヘキシレン基などの環状アルキレン基が挙げられる。中でも、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基などの炭素数1~6の鎖状アルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基などの炭素数1~6の直鎖状アルキレン基がより好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などの炭素数1~3の直鎖状アルキレン基が更に好ましい。
【0026】
また、置換基を有していてもよいアルケニレン基のアルケニレン基としては、特に限定されることなく、例えば、エテニレン基、2-プロペニレン基、2-ブテニレン基、3-ブテニレン基などの鎖状アルケニレン基、および、シクロヘキセニレン基などの環状アルケニレン基が挙げられる。中でも、アルケニレン基としては、エテニレン基、2-プロペニレン基、2-ブテニレン基、3-ブテニレン基などの炭素数2~6の直鎖状アルケニレン基が好ましい。
【0027】
上述した中でも、電離放射線等に対する感度および耐熱性を十分に向上させる観点からは、2価の連結基としては、置換基を有していてもよいアルキレン基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1~6の鎖状アルキレン基がより好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1~6の直鎖状アルキレン基が更に好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1~3の直鎖状アルキレン基が特に好ましい。
【0028】
また、電離放射線等に対する感度を更に向上させる観点からは、式(I)および式(III)中のLを構成し得る2価の連結基は、電子吸引性基を1つ以上有することが好ましい。中でも、2価の連結基が置換基として電子吸引性基を有するアルキレン基または置換基として電子吸引性基を有するアルケニレン基である場合、電子吸引性基は、式(I)および式(III)中のカルボニル炭素に隣接するOと結合する炭素に結合していることが好ましい。
【0029】
なお、電離放射線等に対する感度を十分に向上させ得る電子吸引性基としては、特に限定されることなく、例えば、フッ素原子、フルオロアルキル基、シアノ基およびニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。また、フルオロアルキル基としては、特に限定されることなく、例えば、炭素数1~5のフルオロアルキル基が挙げられる。中でも、フルオロアルキル基としては、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0030】
そして、電離放射線等に対する感度および耐熱性を十分に向上させる観点からは、式(I)および式(III)中のLとしては、メチレン基、シアノメチレン基、トリフルオロメチルメチレン基またはビス(トリフルオロメチル)メチレン基が好ましく、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基がより好ましい。
【0031】
また、式(I)および式(III)中のArとしては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基が挙げられる。
【0032】
そして、芳香族炭化水素環基としては、特に限定されることなく、例えば、ベンゼン環基、ビフェニル環基、ナフタレン環基、アズレン環基、アントラセン環基、フェナントレン環基、ピレン環基、クリセン環基、ナフタセン環基、トリフェニレン環基、o-テルフェニル環基、m-テルフェニル環基、p-テルフェニル環基、アセナフテン環基、コロネン環基、フルオレン環基、フルオラントレン環基、ペンタセン環基、ペリレン環基、ペンタフェン環基、ピセン環基、ピラントレン環基などが挙げられる。
【0033】
また、芳香族複素環基としては、特に限定されることなく、例えば、フラン環基、チオフェン環基、ピリジン環基、ピリダジン環基、ピリミジン環基、ピラジン環基、トリアジン環基、オキサジアゾール環基、トリアゾール環基、イミダゾール環基、ピラゾール環基、チアゾール環基、インドール環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、キノキサリン環基、キナゾリン環基、フタラジン環基、ベンゾフラン環基、ジベンゾフラン環基、ベンゾチオフェン環基、ジベンゾチオフェン環基、カルバゾール環基等が挙げられる。
【0034】
更に、Arが有し得る置換基としては、特に限定されることなく、例えば、アルキル基、フッ素原子およびフルオロアルキル基が挙げられる。そして、Arが有し得る置換基としてのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの炭素数1~6の鎖状アルキル基が挙げられる。また、Arが有し得る置換基としてのフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロプロピル基などの炭素数1~5のフルオロアルキル基が挙げられる。
【0035】
中でも、電離放射線等に対する感度および耐熱性を十分に向上させる観点からは、式(I)および式(III)中のArとしては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基が好ましく、非置換の芳香族炭化水素環基がより好ましく、ベンゼン環基(フェニル基)が更に好ましい。
【0036】
そして、電離放射線等に対する感度および耐熱性を十分に向上させる観点からは、上述した式(I)で表される単量体単位(A)を形成し得る、上述した式(III)で表される単量体(a)としては、α-クロロアクリル酸ベンジルおよびα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチルが好ましく、α-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチルがより好ましい。即ち、共重合体は、α-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位およびα-クロロアクリル酸ベンジル単位の少なくとも一方を有することが好ましく、α-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位を有することがより好ましい。
【0037】
<単量体単位(B)>
また、単量体単位(B)は、下記式(IV):
【化6】
〔式(IV)中、RおよびR、並びに、pは、式(II)と同様である。〕で表される単量体(b)に由来する構造単位である。
【0038】
そして、共重合体を構成する全単量体単位中の単量体単位(B)の割合は、特に限定されることなく、例えば30mol%以上70mol%以下とすることができる。
【0039】
ここで、式(II)および式(IV)中のR~Rを構成し得るアルキル基としては、特に限定されることなく、例えば非置換の炭素数1~5のアルキル基が挙げられる。中でも、R~Rを構成し得るアルキル基としては、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0040】
また、式(II)および式(IV)中のRを構成し得るハロゲン原子としては、特に限定されることなく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。中でも、ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0041】
更に、式(II)および式(IV)中のRを構成し得るハロゲン化アルキル基としては、特に限定されることなく、例えば炭素数1~5のフルオロアルキル基が挙げられる。中でも、ハロゲン化アルキル基としては、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0042】
そして、共重合体の調製の容易性および電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(II)および式(IV)中のRは、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0043】
また、共重合体の調製の容易性および電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(II)および式(IV)中のpは、0または1であることが好ましい。
【0044】
中でも、共重合体の耐熱性、並びに、得られるレジストパターンの解像度および明瞭性を向上させる観点からは、式(II)および式(IV)中のpが1であり、Rがフッ素原子または炭素数1~5のフルオロアルキル基であることが好ましく、pが1であり、Rがフッ素原子または炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であることがより好ましく、pが1であり、Rがフッ素原子であることが更に好ましい。
【0045】
そして、上述した式(II)で表される単量体単位(B)を形成し得る、上述した式(IV)で表される単量体(b)としては、特に限定されることなく、例えば、以下の(b-1)~(b-12)等のα-メチルスチレンおよびその誘導体が挙げられる。
【化7】
【0046】
なお、共重合体の調製の容易性、並びに、電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性および耐熱性を向上させる観点からは、単量体単位(B)は、α-メチルスチレンまたは4-フルオロ-α-メチルスチレンに由来する構造単位であることが好ましく、共重合体の耐熱性、並びに、得られるレジストパターンの解像度および明瞭性を更に向上させる観点からは、単量体単位(B)は、4-フルオロ-α-メチルスチレンに由来する構造単位であることがより好ましい。即ち、共重合体は、α-メチルスチレン単位または4-フルオロ-α-メチルスチレン単位を有することが好ましく、4-フルオロ-α-メチルスチレン単位を有することがより好ましい。
【0047】
<共重合体の性状>
そして、共重合体は、分子量分布が1.7以下であることが必要であり、共重合体の分子量分布は、1.2以上であることが好ましく、1.5以下であることが好ましい。分子量分布が上記上限値以下であれば、共重合体を用いて形成されるレジストパターンの解像度および明瞭性を十分に向上させることができる。また、分子量分布が上記下限値以上であれば、共重合体の調製が容易となる。
【0048】
また、共重合体の重量平均分子量は、好ましくは10000以上、より好ましくは30000以上、更に好ましくは40000以上であり、好ましくは80000以下、より好ましくは70000以下、更に好ましくは60000以下である。重量平均分子量が上記上限値以下であれば、電離放射線等に対する感度を向上させることができる。また、重量平均分子量が上記下限値以上であれば、共重合体を用いて形成されるレジストパターンの解像度および明瞭性を十分に向上させることができる。
更に、共重合体の数平均分子量は、好ましくは6000以上、より好ましくは24000以上であり、好ましくは66000以下、より好ましくは49000以下である。数平均分子量が上記範囲内であれば、電離放射線等に対する感度を適度に向上させることができる。
【0049】
(共重合体の調製方法)
そして、上述した単量体単位(A)および単量体単位(B)を有する共重合体は、例えば、単量体(a)と単量体(b)とを含む単量体組成物を重合させた後、得られた共重合体を回収し、任意に精製することにより調製することができる。
なお、共重合体の組成、分子量分布、重量平均分子量および数平均分子量は、重合条件および精製条件を変更することにより調整することができる。具体的には、例えば、重量平均分子量および数平均分子量は、重合温度を高くすれば、小さくすることができる。また、重量平均分子量および数平均分子量は、重合時間を短くすれば、小さくすることができる。更に、精製を行えば、分子量分布を小さくすることができる。
【0050】
<単量体組成物の重合>
ここで、本発明の共重合体の調製に用いる単量体組成物としては、単量体(a)および単量体(b)を含む単量体成分と、任意の溶媒と、重合開始剤と、任意に添加される添加剤との混合物を用いることができる。そして、単量体組成物の重合は、既知の方法を用いて行うことができる。中でも、溶媒としては、シクロペンタノンなどを用いることが好ましく、重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
【0051】
また、単量体組成物を重合して得られた重合物は、特に限定されることなく、重合物を含む溶液にテトラヒドロフラン等の良溶媒を添加した後、良溶媒を添加した溶液をメタノール等の貧溶媒中に滴下して重合物を凝固させることにより回収することができる。
【0052】
<重合物の精製>
なお、得られた重合物を精製する場合に用いる精製方法としては、特に限定されることなく、再沈殿法やカラムクロマトグラフィー法などの既知の精製方法が挙げられる。中でも、精製方法としては、再沈殿法を用いることが好ましい。
なお、重合物の精製は、複数回繰り返して実施してもよい。
【0053】
そして、再沈殿法による重合物の精製は、例えば、得られた重合物をテトラヒドロフラン等の良溶媒に溶解した後、得られた溶液を、テトラヒドロフラン等の良溶媒とメタノール等の貧溶媒との混合溶媒に滴下し、重合物の一部を析出させることにより行うことが好ましい。このように、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中に重合物の溶液を滴下して精製を行えば、良溶媒および貧溶媒の種類や混合比率を変更することにより、得られる共重合体の分子量分布、重量平均分子量および数平均分子量を容易に調整することができる。具体的には、例えば、混合溶媒中の良溶媒の割合を高めるほど、混合溶媒中で析出する共重合体の分子量を大きくすることができる。
【0054】
なお、再沈殿法により重合物を精製する場合、本発明の共重合体としては、所望の性状を満たせば、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中で析出した重合物を用いてもよいし、混合溶媒中で析出しなかった重合物(即ち、混合溶媒中に溶解している重合物)を用いてもよい。ここで、混合溶媒中で析出しなかった重合物は、濃縮乾固などの既知の手法を用いて混合溶媒中から回収することができる。
【0055】
(ポジ型レジスト組成物)
本発明のポジ型レジスト組成物は、上述した共重合体と、溶剤とを含み、任意に、レジスト組成物に配合され得る既知の添加剤を更に含有する。そして、本発明のポジ型レジスト組成物は、上述した共重合体をポジ型レジストとして含有しているので、耐熱性に優れるレジスト膜の形成に好適に用いることができると共に、レジストパターンの形成に用いた際に、解像度および明瞭性に優れるレジストパターンの形成が可能になる。
【0056】
<溶剤>
なお、溶剤としては、上述した共重合体を溶解可能な溶剤であれば特に限定されることはなく、例えば特許第5938536号公報に記載の溶剤などの既知の溶剤を用いることができる。中でも、適度な粘度のポジ型レジスト組成物を得てポジ型レジスト組成物の塗工性を向上させる観点からは、溶剤としては、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、 シクロペンタノン、シクロヘキサノンまたは酢酸イソアミルを用いることが好ましい。
【実施例
【0057】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、得られた共重合体の重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布、耐熱性、ガラス転移温度、感度およびγ値、並びに、レジストパターンの解像度は、下記の方法で評価した。
【0058】
<重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布>
得られた共重合体についてゲル浸透クロマトグラフィーを用いて重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
具体的には、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー製、HLC-8220)を使用し、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、共重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を標準ポリスチレン換算値として求めた。そして、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
<耐熱性>
得られた共重合体について、示差熱熱重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、STA7000)を使用し、窒素気流下、10℃/分の昇温条件で0.5%重量減少温度および1.0%重量減少温度を測定した。0.5%重量減少温度および1.0%重量減少温度が高いほど、耐熱性に優れていることを示す。
<ガラス転移温度>
得られた共重合体について、示差熱熱重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、STA7000)を使用し、窒素気流下、10℃/分の昇温条件で、ガラス転移温度を測定した。
<感度およびγ値>
スピンコーター(ミカサ製、MS-A150)を使用し、濃度11質量%のポジ型レジスト組成物を直径4インチのシリコンウェハ上に厚さ500nmになるように塗布した。そして、塗布したポジ型レジスト組成物を温度160℃のホットプレートで5分間加熱して、シリコンウェハ上にレジスト膜を形成した。そして、電子線描画装置(エリオニクス社製、ELS-S50)を用いて、電子線の照射量が互いに異なるパターン(寸法500μm×500μm)をレジスト膜上に複数描画し、レジスト用現像液としてフッ素系溶剤(三井・デュポンフロロケミカル社製、バートレルXF(登録商標)、CFCFHCFHCFCF)を用いて温度23℃で1分間の現像処理を行った後、リンス液としてフッ素系溶剤(3M社製、Novec(登録商標)7100、メチルノナフルオロブチルエーテル)を用いて10秒間リンスした。なお、電子線の照射量は、4μC/cmから200μC/cmの範囲内で4μC/cmずつ異ならせた。次に、描画した部分のレジスト膜の厚みを光学式膜厚計(SCREENセミコンダクタソリューション社製、ラムダエース)で測定し、電子線の総照射量の常用対数と、現像後のレジスト膜の残膜率(=現像後のレジスト膜の膜厚/シリコンウェハ上に形成したレジスト膜の膜厚)との関係を示す感度曲線を作成した。
そして、得られた感度曲線(横軸:電子線の総照射量の常用対数、縦軸:レジスト膜の残膜率(0≦残膜率≦1.00))について、残膜率0.20~0.80の範囲において感度曲線を二次関数にフィッティングし、得られた二次関数(残膜率と総照射量の常用対数との関数)上の残膜率0の点と残膜率0.50の点とを結ぶ直線(感度曲線の傾きの近似線)を作成した。また、得られた直線(残膜率と総照射量の常用対数との関数)の残膜率が0となる際の、電子線の総照射量Eth(μC/cm)を求めた。なお、Ethの値が小さいほど、感度が高く、ポジ型レジストとしての共重合体が少ない照射量で良好に切断され得ることを示す。
また、下記の式を用いてγ値を求めた。なお、下記の式中、Eは、残膜率0.20~0.80の範囲において感度曲線を二次関数にフィッティングし、得られた二次関数(残膜率と総照射量の常用対数との関数)に対して残膜率0を代入した際に得られる総照射量の対数である。また、Eは、得られた二次関数上の残膜率0の点と残膜率0.50の点とを結ぶ直線(感度曲線の傾きの近似線)を作成し、得られた直線(残膜率と総照射量の常用対数との関数)に対して残膜率1.00を代入した際に得られる総照射量の対数である。そして、下記式は、残膜率0と1.00との間での上記直線の傾きを表している。なお、γ値の値が大きいほど、感度曲線の傾きが大きく、明瞭なパターンを良好に形成し得ることを示す。
【数1】
<レジストパターンの解像度>
スピンコーター(ミカサ社製、MS-A150)を使用し、濃度2質量%のポジ型レジスト組成物を直径4インチのシリコンウェハ上に塗布した。次いで、塗布したポジ型レジスト組成物を温度160℃のホットプレートで5分間加熱して、シリコンウェハ上に厚さ50nmのレジスト膜を形成した。そして、電子線描画装置(エリオニクス社製、ELS-S50)を用いて、レジスト膜を最適露光量(Eop)で露光して、パターンを描画した。その後、レジスト用現像液としてフッ素系溶剤(三井・デュポンフロロケミカル社製、バートレルXF(登録商標)、CFCFHCFHCFCF)を用いて温度23℃で1分間の現像処理を行った。その後、リンス液としてフッ素系溶剤(3M社製、Novec(登録商標)7100、メチルノナフルオロブチルエーテル)を用いて10秒間リンスしてレジストパターンを形成した。なお、最適露光量(Eop)は、それぞれ、上記で測定したEthの約2倍の値を目安として、適宜設定した。また、レジストパターンのライン(未露光領域)とスペース(露光領域)は、それぞれ18nm、20nm(即ち、ハーフピッチ18nm、20nm)とした。
そして、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて倍率100,000倍で観察し、パターンが形成しているハーフピッチを解像度とした。
【0059】
(実施例1)
<共重合体の調製>
[重合物の合成]
撹拌子を入れたガラス製のアンプルに、単量体(a)としてのα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル3.00gと、単量体(b)としてのα-メチルスチレン2.493gと、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.0039534gとを加えて密封し、窒素ガスで加圧、脱圧を10回繰り返して系内の酸素を除去した。
そして、系内を78℃に加温し、3.5時間反応を行った。次に、系内にテトラヒドロフラン10gを加え、得られた溶液をメタノール300mL中に滴下して重合物を析出させた。その後、析出した重合物をろ過で回収した。
[重合物の精製]
次いで、得られた重合物を100gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、得られた溶液をTHF150gとメタノール(MeOH)850gとの混合溶媒に滴下し、白色の凝固物(α-メチルスチレン単位およびα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位を含有する共重合体)を析出させた。その後、析出した共重合体を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の共重合体を得た。そして、得られた共重合体について、重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布、耐熱性およびガラス転移温度を測定した。結果を表1に示す。
なお、得られた共重合体は、α-メチルスチレン単位とα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位とを50モル%ずつ含んでいた。
<ポジ型レジスト組成物の調製>
得られた共重合体を溶剤としての酢酸イソアミルに溶解させ、共重合体の濃度が11質量%および2質量%であるレジスト溶液(ポジ型レジスト組成物)をそれぞれ調製した。
そして、共重合体の濃度が11質量%であるレジスト溶液からなるポジ型レジスト組成物を用いて、共重合体の感度およびγ値を評価した。また、共重合体の濃度が2質量%であるレジスト溶液からなるポジ型レジスト組成物を用いて、レジストパターンの解像度を評価した。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例2)
重合物の精製時に使用する混合溶媒を、THF200gとMeOH800gとの混合溶媒に変更した以外は実施例1と同様にして、共重合体およびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例3)
重合物の精製時に使用する混合溶媒を、THF250gとMeOH750gとの混合溶媒に変更した以外は実施例1と同様にして、共重合体およびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例4)
重合物の精製時に使用する混合溶媒を、THF300gとMeOH700gとの混合溶媒に変更した以外は実施例1と同様にして、共重合体およびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
(比較例1)
重合物の精製を実施せず、ろ過により回収した重合物をポジ型レジスト組成物の調製に用いた以外は実施例1と同様にして、共重合体(重合物)およびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例2)
重合物の精製時に使用する混合溶媒を、THF100gとMeOH900gとの混合溶媒に変更した以外は実施例1と同様にして、共重合体およびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例3)
重合物の精製時に使用する混合溶媒を、THF350gとMeOH650gとの混合溶媒に変更した以外は実施例1と同様にして、共重合体およびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
(実施例5)
<共重合体の調製>
撹拌子を入れたガラス製のアンプルに、単量体(a)としてのα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル3.00gと、単量体(b)としての4-フルオロ-α-メチルスチレン2.873gと、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.0039534gとを加えて密封し、窒素ガスで加圧、脱圧を10回繰り返して系内の酸素を除去した。
そして、系内を78℃に加温し、3.5時間反応を行った。次に、系内にテトラヒドロフラン10gを加え、得られた溶液をメタノール300mL中に滴下して重合物を析出させた。その後、析出した重合物をろ過で回収し、共重合体を得た。そして、得られた共重合体について、重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布、耐熱性およびガラス転移温度を測定した。結果を表2に示す。
なお、得られた共重合体は、4-フルオロ-α-メチルスチレン単位とα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位とを50モル%ずつ含んでいた。
<ポジ型レジスト組成物の調製>
得られた共重合体を溶剤としての酢酸イソアミルに溶解させ、共重合体の濃度が11質量%および2質量%であるレジスト溶液(ポジ型レジスト組成物)をそれぞれ調製した。
そして、共重合体の濃度が11質量%であるレジスト溶液からなるポジ型レジスト組成物を用いて、共重合体の感度およびγ値を評価した。また、共重合体の濃度が2質量%であるレジスト溶液からなるポジ型レジスト組成物を用いて、レジストパターンの解像度を評価した。結果を表2に示す。
【0068】
(実施例6)
共重合体の調製時に、ろ過により得られた重合物を100gのTHFに溶解させ、得られた溶液をTHF50gとMeOH950gとの混合溶媒に滴下し、白色の凝固物(4-フルオロ-α-メチルスチレン単位およびα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位を含有する共重合体)を析出させた。その後、析出した共重合体を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の共重合体を得た。それ以外は実施例5と同様にして、ポジ型レジスト組成物を調製した。そして、実施例5と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0069】
(実施例7)
使用する混合溶媒を、THF100gとMeOH900gとの混合溶媒に変更した以外は実施例6と同様にして、共重合体およびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、実施例5と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0070】
(実施例8)
使用する混合溶媒を、THF150gとMeOH850gとの混合溶媒に変更した以外は実施例6と同様にして、共重合体およびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、実施例5と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0071】
(実施例9)
使用する混合溶媒を、THF200gとMeOH800gとの混合溶媒に変更した以外は実施例6と同様にして、共重合体およびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、実施例5と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0072】
(比較例4)
使用する混合溶媒を、THF250gとMeOH750gとの混合溶媒に変更した以外は実施例6と同様にして、共重合体およびポジ型レジスト組成物を調製した。そして、実施例5と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
表1より、実施例1~4の共重合体は、分子量分布の大きい比較例1~3の共重合体よりも耐熱性に優れており、解像度および明瞭性に優れるレジストパターンの形成が可能であることが分かる。
また、表2より、実施例5~9の共重合体は、分子量分布の大きい比較例4の共重合体よりも耐熱性に優れており、解像度および明瞭性に優れるレジストパターンの形成が可能であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の共重合体によれば、耐熱性に優れ、且つ、解像度および明瞭性に優れるレジストパターンの形成が可能な主鎖切断型のポジ型レジストを提供することができる。
また、本発明のポジ型レジスト組成物によれば、耐熱性に優れるレジスト膜、並びに、解像度および明瞭性に優れるレジストパターンを形成することができる。