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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】端子付電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/048 20060101AFI20230912BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H01R43/048 Z
H01R4/18 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022048246
(22)【出願日】2022-03-24
(62)【分割の表示】P 2019012444の分割
【原出願日】2019-01-28
(65)【公開番号】P2022075941
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】井上 亮
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 裕寿
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09196971(US,B2)
【文献】特開2019-009101(JP,A)
【文献】特開2014-007067(JP,A)
【文献】米国特許第03912358(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/048
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム材料からなる導体と前記導体を被覆する絶縁層とを含む電線、及び中空部を有するアルミニウム材料からなる端子を準備する工程と、
前記中空部内に前記電線の端部で露出する前記導体を挿入させた状態で前記端子を3回以上圧縮して前記端子に複数の圧縮部を形成することにより、前記端子を前記導体に接続する工程と、
を有する端子付電線の製造方法であって、
前記導体に用いられるアルミニウム材料の引張強度は、前記端子に用いられるアルミニウム材料の引張強度よりも大きく、
前記端子を前記導体に接続する工程は、前記中空部の周方向の全周にわたって圧力を加えることにより前記中空部を圧縮変形させて前記複数の圧縮部を形成するとともに、既に形成した隣り合う圧縮部の間に新たな圧縮部を形成する工程を有し、
前記既に形成した隣り合う圧縮部の間に形成された新たな圧縮部は、中空部の周方向の全周にわたって圧縮変形させた圧縮変形部である、
端子付電線の製造方法。
【請求項2】
既に形成した隣り合う圧縮部の間に新たな圧縮部を形成する工程を、前記端子を前記導体に接続する工程の最後に行う、
請求項1に記載の端子付電線の製造方法。
【請求項3】
前記導体の長手方向に沿った前記圧縮部の幅が7mm以下となるように前記圧縮部を形成する、
請求項1または2に記載の端子付電線の製造方法。
【請求項4】
前記圧縮部は、それぞれ等間隔となるように形成される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の端子付電線の製造方法。
【請求項5】
前記端子の圧縮する順番に関する情報が前記端子の圧縮される部位に付され、
最後に圧縮する順番に関する情報が隣り合う2つの前記圧縮部位の間に付されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の端子付電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両等に使用される端子付電線の製造方法及び端子付電線が有する端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線の導体と端子とが接続されてなる端子付電線は、導電性等の観点から、銅又は銅合金で形成された導体と端子が用いられてきたが、近年、軽量化等の観点から、導体と端子とをアルミニウム材料で形成することが検討されている。例えば、特許文献1には、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成される導体に、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成される端子を接続することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6410163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アルミニウムは銅と比較して応力緩和が生じやすい。このため、アルミニウム材料からなる端子をアルミニウム材料からなる導体に接続した場合は、導体と端子との接続部分に作用する応力が時間の経過とともに小さくなる。これに伴い導体と端子との間の接触力が下がり、これらの間の電気抵抗が増加するおそれがある。
導体と端子との間の電気抵抗が大きい状態で、導体に電流を流すと端子付電線に発熱が生じ、この発熱は電線断線や接触不良の要因になり得る。
【0005】
そこで、本発明は、アルミニウム材料からなる導体とアルミニウム材料からなる端子との間の電気抵抗を低く維持して、電気的接続を十分確保できる端子付電線の製造方法及び端子付電線が有する端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、
アルミニウム材料からなる導体と前記導体を被覆する絶縁層とを含む電線、及び中空部を有するアルミニウム材料からなる端子を準備する工程と、
前記中空部内に前記電線の端部で露出する前記導体を挿入させた状態で前記端子を3回以上圧縮して前記端子に複数の圧縮部を形成することにより、前記端子を前記導体に接続する工程と、
を有する端子付電線の製造方法であって、
前記端子を前記導体に接続する工程は、前記中空部の周方向の全周にわたって圧力を加えることにより前記中空部を圧縮変形させて前記複数の圧縮部を形成するとともに、既に形成した隣り合う圧縮部の間に新たな圧縮部を形成する工程を有する、
端子付電線の製造方法が提供される。
本発明の第2の態様によれば、
導体を挿入させる中空部を有する端子であって、
前記中空部内に前記導体が挿入された状態で前記端子を圧縮することにより、前記端子が前記導体に接続されるように構成されているとともに、
前記端子に圧縮する順番に関する情報が前記端子の圧縮される部位に付され、
最後に圧縮する順番に関する情報が隣り合う2つの前記圧縮部位の間に付されている、
端子が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アルミニウム材料からなる導体とアルミニウム材料からなる端子との間の電気抵抗を低く維持して、電気的接続を十分確保できる端子付電線の製造方法及び端子付電線が有する端子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る端子付電線が有する端子及び導体であり、端子の中空部内に導体が挿入される前の状態を例示する斜視図である。
図2】一実施形態に係る端子付電線が有する端子の中空部内に導体が挿入された後で、中空部が圧縮される前の状態を例示する断面図である。
図3】一実施形態に係る端子付電線が有する端子を3回圧縮するときの端子付電線の断面図であって、(a)は1回目の圧縮が終了したときの端子付電線の断面図、(b)は2回目の圧縮が終了したときの端子付電線の断面図、(c)は3回目の圧縮が終了したときの端子付電線の断面図である。
図4】一実施形態に係る端子の概略構成図である。
図5】端子付電線が有する端子を2回圧縮するときの端子付電線の断面図であって、(a)は1回目の圧縮が終了したときの端子付電線の断面図、(b)は2回目の圧縮が終了したときの端子付電線の断面図である。
図6】端子付電線が有する端子を3回圧縮するときの端子付電線の断面図であって、(a)は1回目の圧縮が終了したときの端子付電線の断面図、(b)は2回目の圧縮が終了したときの端子付電線の断面図、(c)は3回目の圧縮が終了したときの端子付電線の断面図である。
図7】一実施形態に係る端子付電線が有する端子を4回圧縮するときの圧縮部が形成される部位を示す端子付電線の断面図である。
図8】一実施形態に係る端子付電線が有する端子を5回圧縮するときの圧縮部が形成される部位を示す端子付電線の断面図である。
図9】高温環境暴露試験の概要を示す説明図である。
図10】電気抵抗比の測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面に基づき本発明に係る端子付電線、端子付電線の製造方法及び端子付電線が有する端子を説明する。
<1.端子付電線の構成例>
端子付電線の構成例について説明する。
【0010】
本実施形態の端子付電線1は、図1に示すように、電線2と端子5とを備えている。端子付電線1は、例えば、ビル、風力発電機、鉄道車両や自動車などに用いられる配線材として用いることができる。
【0011】
(電線)
電線2は、いわゆる絶縁電線として構成されており、導体3と、導体3を被覆する絶縁層4とを備えている。電線2の端部で露出する導体3が、端子5の中空部7内に挿入される部分である。
【0012】
導体3は、電線2の芯線を構成している。導体3としては、金属線、もしくは複数の金属素線を撚り合わせた撚り線を用いることができる。導体3を構成する金属材料として、例えば、純アルミニウムあるいはアルミニウム合金(以下、これらを「アルミニウム材料」という)を用いている。純アルミニウムはAl及び不可避不純物から成る材料である。純アルミニウムとしては、例えば、電気用純アルミニウム(ECAl)が挙げられる。アルミニウム合金として、例えば、以下のAl-Zr、Al-Fe-Zr等が挙げられる。
Al-Zrは、0.03~1.5質量%のZrと、0.1~1.0質量%のFe及びSiと、を含み、残部がAlと不可避不純物からなる化学組成を有するアルミニウム合金である。また、Al-Fe-Zrは、0.01~0.10質量%のZrと、0.1質量%以下のSiと、0.2~1.0質量%のFeと、0.01質量%以下のCuと、0.01質量%以下のMnと、0.01質量%以下のMgと、0.01質量%以下のZnと、0.01質量%以下のTiと、0.01質量%以下のVと、を含み、残部がAlと不可避不純物とを有するアルミニウム合金である。
Al-Zrにおいて、「0.1~1.0質量%のFe及びSi」とは、以下の意味を有する。Fe及びSiの両方を含有する場合は、Fe及びSiの合計濃度が0.1~1.0質量%である。Feを含有し、Siを含有しない場合は、Feの濃度が0.1~1.0質量%である。Siを含有し、Feを含有しない場合は、Siの濃度が0.1~1.0質量%である。なお、ここでの「含有しない」とは、例えば、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析で、検出限界以下であることを意味する。
【0013】
絶縁層4は、絶縁材料から形成され、導体3を被覆するように設けられている。絶縁層4の材料としては、例えば、フッ素系樹脂、オレフィン系樹脂、又はシリコーン系樹脂などを用いることができる。絶縁層4は、電線2の長さ方向の全長にわたって設けられるが、本実施形態では、電線2の端末から所定の長さだけ除去され、導体3の端末の一部が露出している。
【0014】
(端子)
端子5は、筒状部6と延在部8とを備え、これらが一体的に形成されている。端子5は、例えば、パイプの一端側をプレス加工したものである。この一端側は、延在部8に相当する。あるいは、端子5は、例えば、円柱の母材の一端側を穴あけ加工し、他端側をプレス加工したものである。穴あけ加工された一端側は中空部7に相当する。プレス加工された他端側は延在部8に相当する。中空部7は一方において開口した円筒形状を有する。端子5は、例えば、アルミニウム材料によって構成されている。より具体的には、例えば、純アルミニウムあるいはアルミニウム合金が好ましい。純アルミニウムはAl及び不可避不純物から成る材料である。例えば、電気用純アルミニウム(ECAl)が挙げられる。アルミニウム合金として、例えば、以下のAl-Fe-Zr挙げられる。Al-Fe-Zrは、0.01~0.10質量%のZrと、0.1質量%以下のSiと、0.2~1.0質量%のFeと、0.01質量%以下のCuと、0.01質量%以下のMnと、0.01質量%以下のMgと、0.01質量%以下のZnと、0.01質量%以下のTiと、0.01質量%以下のVと、を含み、残部がAlと不可避不純物とを有するアルミニウム合金である。
【0015】
筒状部6は、電線2の端末から露出する導体3に接続される部分として構成されている。本実施形態では、筒状部6は、断面円形の筒状に形成されており、内部は、電線2の端部で露出する導体3を挿入可能な中空部7を形成している。筒状部6の一端部6a(入口部分)から導体3が挿入される。一端部6aは、導体3の外径と同等以上の大きさで開口している。なお、端子5の表面や筒状部6の内面は、SnめっきやAgめっきが施されていてもよい。また、露出する導体3に導電粒子入りのコンパウンドを塗布してから、中空部7に挿入してもよい。また、筒状部6の中空部7にコンパウンドを塗布または充填してから、露出する導体3を挿入してもよい。この導電粒子入りコンパウンドとしては、例えば、Ni-PまたはNi-Bからなる導電粒子やこれらを混合した導電粒子を含有するフッ素系油を用いることができる。
【0016】
延在部8は、外部の接続相手側の端子やボルト等に接続される部分として構成されている。本実施形態では、延在部8は、板状に形成され、外部の端子やボルト等が挿入されるボルト孔9が設けられている。
【0017】
<2.端子付電線の製造方法例>
次に、本実施形態の端子付電線1の製造方法について説明する。
【0018】
本実施形態の端子付電線1は、電線2と端子5を準備する工程、導体3を挿入させた状態で端子5を圧縮することにより、端子5を導体3に接続する工程を順次行うことにより製造することができる。
以下、各工程について図1図3を用いて説明する。
【0019】
(準備工程)
まず、導体3を有する電線2と、端子5とを準備する。導体3と端子5はともにアルミニウム材料からなるものである。図1に示すように、電線2が有する絶縁層4を電線2の長さ方向の端末から所定の長さだけ取り除き、導体3の一部を露出させる。その後、図2に示すように、端子5の筒状部6に形成された中空部7内に電線2の導体3の露出した一部を挿入する。
【0020】
(圧縮・接続工程)
続いて、図3(a)に示すように、端子5の中空部7内に電線2の導体3の露出した一部を挿入した状態で、圧縮部位P1を圧縮して、圧縮部10を形成する。その後、図3(b)に示すように、圧縮部位P3を圧縮して、圧縮部12を形成する。最後に、図3(c)に示すように、圧縮部位P1と圧縮部位P3との間の圧縮部位P2を圧縮して、圧縮部11を形成することにより、端子5を導体3に接続する。
【0021】
これらの圧縮は、例えば圧縮冶具を用いて、圧縮部位P1~P3に筒状部6の周方向の全周にわたって所定の圧力を加えて、筒状部6を圧縮変形(塑性変形)させることにより行う。本実施形態では、圧縮部10~12は、導体3の長手方向(軸方向)に垂直な断面において6角形の断面形状を有している。また、圧縮部10~12は、筒状部6の軸方向(中空部7内に挿入されている導体3の長さ方向)に対して位置をずらしてそれぞれ重ならないように形成されている。以上により、端子5を導体3に圧着接続して、端子付電線1を得ることができる。
【0022】
<3.本実施形態の効果>
本実施形態によれば、以下に述べる一つ又は複数の効果を奏する。
【0023】
(a)本実施形態では、導体3と端子5の応力緩和に起因した導体3と端子5の間の接触力低下を抑制することができるので、導体3と端子5との間の電気抵抗を低く維持することができる。従って、端子付電線1の電気抵抗比の増加を所定以下に抑えることができ、電気的接続を十分に確保できる。具体的には、大気中150℃で50時間加熱する試験(高温環境暴露試験)の実施前と実施後の導体3と端子5との間の電気抵抗比をそれぞれR1、R2とした場合に、((R2-R1)/R1)×100の式で算出される(電気)抵抗比増加率を19%以下に抑えることができる。なお、電気抵抗比とは、後述するいわゆる4端子法により測定したものであり、端子5と導体3との間の電気抵抗と実質的に同義である。計算方法は後述する。
【0024】
(b)本実施形態では、圧縮部10~12を形成するにあたり、筒状部6の周方向の全周にわたって所定の圧力を加えているので、端子5は導体3の全周に均等に圧縮接続することができ、端子5と導体3との接触力を高く維持することができる。
【0025】
<4.変形例>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0026】
本実施形態では、圧縮部10~12を形成するにあたり、圧縮部位P1を最初に圧縮し、次に圧縮部位P3を圧縮したが、これに限定されるものではなく、圧縮部位P1と圧縮部位P3の間のP2を最後に圧縮するのであれば、圧縮部位P3を最初に圧縮し、次に圧縮部位P1を圧縮してもよい。このような圧縮順でも、端子付電線1の電気抵抗比の増加を19%以下に抑えることができる。
【0027】
本実施形態では、圧縮部が3つ(圧縮箇所が3か所)である場合を例に挙げたが、これに限定されることはなく、図7に示すように端子5が4か所、図8に示すように端子5が5か所圧縮されてもよい。4か所圧縮する場合には、4番目に形成される圧縮部は、既に形成された複数の圧縮部のうちの隣り合う2つの圧縮部の間に形成されることが好ましく、例えば、圧縮部位P1、P4、P2、P3の順で圧縮するのが好ましい。このような順番で圧縮すると、導体3と端子5の応力緩和に起因する導体3と端子5の間の接触力低下を抑制することができるので、端子付電線1の電気抵抗比の増加を抑えることができる。
【0028】
また、4番目(最後)に形成される圧縮部が、既に形成された隣り合う圧縮部の間に形成されなくても、例えば、圧縮部位P1、P3、P2、P4の順で圧縮するように、3番目に形成される圧縮部が、既に形成された隣り合う圧縮部の間に形成されてもよい。ただし、最後に形成される圧縮部が、既に形成された隣り合う圧縮部の間に形成されることがより好ましい。
【0029】
また、端子5を5か所圧縮する場合には、圧縮部は、既に形成された複数の圧縮部のうちの隣り合う2つの圧縮部の間に形成されることが好ましい。特に、5番目に形成される圧縮部は、既に形成された複数の圧縮部のうちの隣り合う2つの圧縮部の間に形成されることがより好ましい。さらには、3番目以降に形成される圧縮部は、全て隣り合う2つの圧縮部の間に形成されることが好ましい。例えば、圧縮部位P1、P5、P3、P2、P4の順で圧縮するのが好ましい。このような順番で圧縮すると、導体3と端子5の応力緩和に起因する導体3と端子5の間の接触力低下を抑制することができるので、端子付電線1の電気抵抗比の増加を抑えることができる。
【0030】
また、端子5を構成するアルミニウム材料には純アルミニウム及びアルミニウム合金、導体3を構成するアルミニウム材料には純アルミニウム及びアルミニウム合金が挙げられる。純アルミニウムはAl及び不可避不純物から成る材料である。純アルミニウムには、例えば、電気用純アルミニウム(ECAl)が挙げられる。端子5のアルミニウム合金として、以下のAl-Fe-Zrが挙げられる。導体3のアルミニウム合金として、以下のAl-Fe-Zr、Al-Zrが挙げられる。Al-Fe-Zrは、0.01~0.10質量%のZrと、0.1質量%以下のSiと、0.2~1.0質量%のFeと、0.01質量%以下のCuと、0.01質量%以下のMnと、0.01質量%以下のMgと、0.01質量%以下のZnと、0.01質量%以下のTiと、0.01質量%以下のVと、を含み、残部がAlと不可避不純物とを有するアルミニウム合金である。Al-Zrは、0.03~1.5質量%のZrと、0.1~1.0質量%のFe及びSiと、を含み、残部がAlと不可避不純物からなる化学組成を有するアルミニウム合金である。上記の端子5と導体3のアルミニウム材料の組合せでは、導体3と端子5の応力緩和に起因する導体3と端子5の間の接触力低下を抑制することができるので、端子付電線1の電気抵抗比の増加を抑えることができる。
【0031】
本実施形態では特に限定されていないが、導体3の圧縮比は50%以上95%以下であることが好ましい。ここで、圧縮比とは、中空部7内に導体3が挿入された端子5が圧縮されたときの、導体3の長手方向に垂直な断面における、端子5の非圧縮部に対応する導体3の断面積と圧縮部に対応する導体3の断面積の比であり、端子5の非圧縮部に対応する導体3の断面積及び圧縮部に対応する導体3の断面積をそれぞれC1(mm)、C2(mm)とした場合に、(C2/C1)×100の式で算出される。上記の圧縮比であれば、導体3と端子5の応力緩和に起因する導体3と端子5の間の接触力低下を抑制することができるので、端子付電線1の電気抵抗比の増加を抑えることができる。
【0032】
また、圧縮部10、11、12のそれぞれの圧縮部の幅は7mm以下であることが好ましい。上記の圧縮部の幅であれば、導体3と端子5の応力緩和に起因する導体3と端子5の間の接触力低下を抑制することができるので、端子付電線1の電気抵抗比の増加を抑えることができる。また、圧縮部の幅は2mm以上5mm以下であればさらに好ましい。2mm以上5mm以下であれば、さらに電気抵抗比の増加を19%以下に抑えることができる。また、圧縮部の幅は3mm以上4mm以下であればまたさらに好ましい。3mm以上4mm以下であれば、電気抵抗比の増加をさらに抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態では特に限定されていないが、圧縮部10、11、12はそれぞれ等間隔で設けられていることが好ましい。圧縮部10、11、12がそれぞれ等間隔で設けられていると、端子付電線1の電気抵抗比の増加を抑えることができる。
【0034】
本実施形態では、圧縮部10~12は、それぞれ重ならないように形成されている場合を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、それぞれの圧縮部が少しずつ重なるように形成されていてもよい。
【0035】
本実施形態では、圧縮部10~12は、導体3の長手方向(軸方向)に垂直な断面において6角形の断面形状を有している場合を例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、他の多角形状を有していてもよいし、円形状を有していてもよい。
【0036】
本実施形態では特に限定されていないが、端子5に圧縮される順番に関する情報が付されていることが好ましい。例えば、図4に示すように、筒状部6の圧縮部位P1、P2、P3に対応する部位に、それぞれ「1番目」、「3番目」、「2番目」という文字列が付されていることが好ましいが、これに限定されず、圧縮部位P1と圧縮部位P3の間の圧縮部位P2に「3番目」と付されていれば、圧縮部位P3に「1番目」と付され、圧縮部位P1に「2番目」と付されていてもよい。なお、圧縮される順番に関する情報は、「1番目」、「2番目」、「3番目」という文字列に限定されるものではなく、圧縮される順番がわかるものであればどのようなものが付されてもよい。また、文字列は、刻印されていてもよいし、記載されてもよい。端子5に圧縮する順番に関する情報が付されていると、確実に、最後に形成する圧縮部を、既に形成された複数の圧縮部のうちの隣り合う2つの圧縮部の間に形成することができる。
【0037】
本実施形態では、端子付電線について端子付き電線を例に挙げて説明したが、本発明がこれに限定されることはなく、例えば端子付きケーブルにも適用可能である。
【実験例】
【0038】
次に、本発明について実験例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されない。
【0039】
(実験例1)
実験例1では、図3(a)~(c)に示すように、中空部7内に導体3を挿入した端子5を圧縮部位P1、P3、P2の順で3回圧縮した。また、導体3の長手方向に沿った圧縮部の幅を3mmとし、3つの圧縮部をそれぞれ等間隔に形成して、端子付電線1を得た。隣り合う圧縮部の間隔(導体3の長手方向に沿った非圧縮部の幅)は、約9mmとした。端子5及び導体3のアルミニウム材料には、同組成のAl-Fe-Zrを使用した。Al-Fe-Zrは、0.6質量%のFeと、0.02質量%のZrと、0.06質量%のSiと、0.002質量%のCuと、0.002質量%のMnと、合計で0.006質量%のTi及びVと、を含み、残部がAlから成るアルミニウム合金である。導体3の断面積は50mmとした。導体を構成する全ての素線は同じ材料から成る。導体を構成する素線の直径は0.45mmである。素線の本数は309本である。図9に示すように、端子5を圧縮して導体3に接続した後、端子付電線1を150℃に設定した恒温槽14内に配置し、大気中で50時間保持する高温環境暴露試験を行った。高温環境暴露試験は通電試験環境を模擬した。また、延在部8が外部の接続相手側の端子やボルト等に接続されたことを想定し、延在部8にアルミニウム板13をボルト(不図示)で固定した。図9では、アルミニウム板を延在部8の下側に固定した場合を示したが、延在部8の上側に固定した場合でも、延在部8の下側に固定した場合と同様な結果が得られる。下記表1に示した実験例2~9においても同じ条件で試験を行った。
【0040】
(実験例2)
実験例2は、下記表1に示すように、圧縮部の幅を5mm、隣り合う圧縮部の間隔(導体3の長手方向に沿った非圧縮部の幅)を約7mmに変更した以外は実験例1と同様に端子付電線1を作製した。
【0041】
(実験例3)
実験例3は、下記表1に示すように、端子5を圧縮する順番を圧縮部位P3、P1、P2に変更し、圧縮部の幅を5mm、隣り合う圧縮部の間隔(導体3の長手方向に沿った非圧縮部の幅)を約7mmとした以外は実験例1と同様に端子付電線1を作製した。
【0042】
(実験例4)
実験例4は、圧縮部の幅を7mm、隣り合う圧縮部の間隔(導体3の長手方向に沿った非圧縮部の幅)を約4mmに変更した以外は実験例1と同様に端子付電線1を作製した。
【0043】
(実験例5)
実験例5は、図5(a)、(b)に示すように、中空部7内に導体3を挿入した端子5を圧縮部位P1、P2の順で2回圧縮した。また、導体3の長手方向に沿った圧縮部の幅を10mmとして、端子付電線1を得た。
【0044】
(実験例6)
実験例6は、下記表1に示すように、端子5を圧縮する順番を圧縮部位P1、P2、P3に変更した以外は、実験例1と同様に端子付電線1を作製した。
【0045】
(実験例7)
実験例7は、図6(a)~(c)に示すように、中空部7内に導体3を挿入した端子5を圧縮部位P1、P2、P3の順で3回圧縮した。端子5を圧縮する順番を圧縮部位P1、P2、P3に変更し、圧縮部の幅を5mm、隣り合う圧縮部の間隔(導体3の長手方向に沿った非圧縮部の幅)を約7mmとした以外は実験例1と同様に端子付電線1を作製した。
【0046】
(実験例8)
実験例8は、下記表1に示すように、端子5を圧縮する順番を圧縮部位P2、P1、P3に変更し、圧縮部の幅を5mm、隣り合う圧縮部の間隔(導体3の長手方向に沿った非圧縮部の幅)を約7mmとした以外は実験例1と同様に端子付電線1を作製した。
【0047】
(実験例9)
実験例9は、下記表1に示すように、端子5を圧縮する順番を圧縮部位P1、P2、P3に変更し、圧縮部の幅を7mm、隣り合う圧縮部の間隔(導体3の長手方向に沿った非圧縮部の幅)を約4mmとした以外は実験例1と同様に端子付電線1を作製した。
【0048】
上記実験例1~9における端子付電線1の抵抗比増加率等を下記表1にまとめた。
【0049】
【表1】
【0050】
(抵抗比増加率の測定)
ここで、抵抗比増加率とは、端子付電線1を150℃に設定した恒温槽14内に配置し、大気中で50時間保持する試験(高温環境暴露試験)実施前の電気抵抗比(初期抵抗比)に対する当該試験実施後の電気抵抗比の変化率である。抵抗比増加率は、試験の実施前と実施後の導体3と端子5との間の電気抵抗比をそれぞれR1、R2とした場合に、((R2-R1)/R1)×100の式で算出される。
【0051】
(電気抵抗比の測定)
ここで、端子付電線1の高温環境暴露試験実施前の電気抵抗比(初期抵抗比)R1の測定は、いわゆる4端子法により行った。4端子法について、図10を用いて説明する。
【0052】
最初に、端子付電線1の全体に、定電流1Aを供給し、点Pと点Qとの間の電気抵抗値R0を測定する。ここで、点Pは、端子5の筒状部6の一端であって、挿入された導体3の先端部に対応する部位である。点Qは、導体3のうち、端子5と接触していない部位である。点Sは、端子5の筒状部6の他端であって、導体3が挿入される入り口部分の部位である。初期抵抗比R1は、点Pと点Sとの距離をL1とし、点Qと点Sとの距離をL2とし、導体3の単位長さ当たりの電気抵抗値をαとした場合に、(R0-L2×α)/(L1×α)の式で算出される。導体3の単位長さ当たりの電気抵抗値は事前に測定するか、もしくはL2間の電気抵抗値を測定し、L2間の長さで除算し、単位長さ当たりの電気抵抗値として使用してもよい。
【0053】
また、高温環境暴露試験実施後の電気抵抗比R2の測定は、端子付電線1を室温まで冷却した後に、試験実施前の電気抵抗比(初期抵抗比)の値を測定するときと同様の上記4端子法で行った。具体的には、高温環境暴露試験実施後の端子付電線1の全体に、定電流1Aを供給し、点Pと点Qとの間の電気抵抗値Rを測定する。導体3の単位長さ当たりの電気抵抗値αは、高温環境暴露試験実施前後で変化せず同じ値を用いる。電気抵抗比R2は、(R-L2×α)/(L1×α)の式で算出される。なお、抵抗値の測定は、日置電気株式会社製の抵抗計を使用した。
【0054】
(圧縮比の測定)
圧縮比は、上述のとおり、中空部7内に導体3が挿入された端子5が圧縮されたときの、導体3の長手方向に垂直な断面における、端子5の非圧縮部に対応する導体3の断面積と圧縮部に対応する導体3の断面積の比であり、端子5の非圧縮部に対応する導体3の断面積及び圧縮部に対応する導体3の断面積をそれぞれC1(mm)、C2(mm)とした場合に、(C2/C1)×100の式で算出される。
【0055】
以上の結果から、実験例1~4では、3つの圧縮部が形成され、最後に形成される圧縮部は、既に形成された隣り合う2つの圧縮部の間に形成することで、抵抗比増加率を抑制できることが確認された。
【0056】
端子5が圧縮されるときは、導体3の径方向だけでなく、軸方向にも力が生じる。そのため、3つ目の圧縮部が形成されるときに生じる導体3が軸方向へ伸びる力は、既に形成されている2つの圧縮部によって抑制される場合がある。このため、3番目の圧縮部が圧縮されたときには、3番目の圧縮部の端子5と導体3との接触力だけでなく、1番目の圧縮部と3番目の圧縮部の間の端子5と導体3との接触力と、2番目の圧縮部と3番目の圧縮部の間の端子5と導体3との接触力も増加する場合がある。これにより、端子付電線1の抵抗比の増加を抑えることができる場合がある。
【0057】
また、実験例1、2では、圧縮部の幅を小さくするほど抵抗比増加率が低くなることが確認された。これに対し、実験例6、7では、圧縮部の幅を大きくするほど抵抗比増加率が低くなることが確認された。
【0058】
また、実験例5の抵抗比増加率は60%と一番高くなることが確認された。実験例6~9では、3つの圧縮部が形成され、最後に形成される圧縮部は、既に形成された隣り合う2つの圧縮部の間に形成しないことで、抵抗比増加率が実験例1~4より高くなることが確認された。
【0059】
さらに、端子5を圧縮する回数を4回、5回とした端子付電線1を実験例に基づき説明する。
【0060】
(実験例10)
実験例10では、図7に示すように、中空部7内に導体3を挿入した端子5を圧縮部位P1、P4、P2、P3の順で4回圧縮した。また、導体3の長手方向に沿った圧縮部の幅を3mmとし、4つの圧縮部をそれぞれ等間隔に形成して、端子付電線1を得た。隣り合う圧縮部の間隔(導体3の長手方向に沿った非圧縮部の幅)は、約6mmとした。端子5及び導体3のアルミニウム材料には、同組成のAl-Fe-Zrを使用した。Al-Fe-Zrは、0.6質量%のFeと、0.02質量%のZrと、0.06質量%のSiと、0.002質量%のCuと、0.002質量%のMnと、合計で0.006質量%のTi及びVと、を含み、残部がAlから成るアルミニウム合金である。導体3の断面積は50mmとした。導体を構成する全ての素線は同じ材料から成る。導体を構成する素線の直径は0.45mmである。素線の本数は309本である。端子5を圧縮して導体3に接続した後、端子付電線1を大気中で、150℃で50時間加熱する上記高温環境暴露試験を行った。下記表2に示す実験例11~22においても同じ条件で高温環境暴露試験を行った。高温環境暴露試験は実験例1~9と同様の方法で行った。また、電気抵抗比の測定、圧縮比の測定も実験例1~9と同様の方法で行った。
【0061】
(実験例11)
実験例11は、下記表2に示すように、端子5を圧縮する順番をP1、P2、P4、P3に変更した以外は実験例10と同様に端子付電線1を作製した。
【0062】
(実験例12)
実験例12は、下記表2に示すように、端子5を圧縮する順番をP1、P4、P3、P2に変更した以外は実験例10と同様に端子付電線1を作製した。
【0063】
(実験例13)
実験例13は、下記表2に示すように、端子5を圧縮する順番をP2、P1、P4、P3に変更した以外は実験例10と同様に端子付電線1を作製した。
【0064】
(実験例14)
実験例14は、下記表2に示すように、端子5を圧縮する順番をP4、P1、P2、P3に変更した以外は実験例10と同様に端子付電線1を作製した。
【0065】
(実験例15)
実験例15は、下記表2に示すように、端子5を圧縮する順番をP3、P1、P4、P2に変更した以外は実験例10と同様に端子付電線1を作製した。
【0066】
(実験例16)
実験例16は、下記表2に示すように、端子5を圧縮する順番をP3、P4、P1、P2に変更した以外は実験例10と同様に端子付電線1を作製した。
【0067】
(実験例17)
実験例17では、図8に示すように、中空部7内に導体3を挿入した端子5を圧縮部P1、P5、P3、P2、P4の順で5回圧縮した。また、導体3の長手方向に沿った圧縮部の幅を3mmとし、隣り合う圧縮部の間隔(導体3の長手方向に沿った非圧縮部の幅)は、約4mmとした。5つの圧縮部をそれぞれ等間隔に形成して、端子付電線1を得た。
【0068】
(実験例18)
実験例18は、下記表2に示すように、端子5を圧縮する順番をP1、P4、P3、P5、P2に変更した以外は実験例17と同様に端子付電線1を作製した。
【0069】
(実験例19)
実験例19は、図5(a)、(b)に示すように、中空部7内に導体3を挿入した端子5を圧縮部位P1、P2の順で2回圧縮した。また、導体3の長手方向に沿った圧縮部の幅を10mmとして、端子付電線1を得た。実験例19は、表1に示した実験例5と同じである。
【0070】
(実験例20)
実験例20は、下記表2に示すように、端子5を圧縮する順番をP1、P2、P3、P4に変更した以外は、実験例10と同様に端子付電線1を作製した。
【0071】
(実験例21)
実験例21は、下記表2に示すように、端子5を圧縮する順番をP1、P3、P2、P4に変更した以外は、実験例10と同様に端子付電線1を作製した。
【0072】
(実験例22)
実験例22は、下記表2に示すように、端子5を圧縮する順番をP3、P1、P2、P4に変更した以外は、実験例10と同様に端子付電線1を作製した。
【0073】
上記実験例10~22における端子付電線1の抵抗比増加率等を下記表2にまとめた。
【0074】
【表2】
【0075】
以上の結果から、実験例10~16では、4つの圧縮部が形成され、最後に形成される圧縮部は、既に形成された複数の圧縮部のうちの隣り合う2つの圧縮部の間に形成することで、抵抗比増加率を13%以下に抑制できることが確認された。また、実験例17、18では、5つの圧縮部が形成され、最後に形成される圧縮部は、既に形成された複数の圧縮部のうちの隣り合う2つの圧縮部の間に形成することで、抵抗比増加率を7%以下に抑制できることが確認された。
実験例10~18では、圧縮回数が4回のときよりも5回のときの方が、抵抗比増加率が低くなることが確認された。実験例21、22では、4つの圧縮部が形成され、最後に形成される圧縮部は、既に形成された隣り合う圧縮部の間に形成されないものの、3番目に形成される圧縮部が、既に形成された隣り合う圧縮部の間に形成することで、抵抗比増加率を16%以下に抑制できることが確認された。
【0076】
また、導体3の圧縮比が一番小さく、圧縮回数が一番少ない実験例19の抵抗比増加率が一番大きくなることが確認された。
また、実験例20~22では、実験例20の抵抗比増加率が一番高くなることが確認された。
【0077】
(実験例23)
実験例23では、図3(a)~(c)に示すように、中空部7内に導体3を挿入した端子5を圧縮部位P1、P3、P2の順で3回圧縮した。また、導体3の長手方向に沿った圧縮部の幅を5mmとし、3つの圧縮部をそれぞれ等間隔に形成して、端子付電線1を得た。隣り合う圧縮部の間隔(導体3の長手方向に沿った非圧縮部の幅)は、約7mmとした。端子5のアルミニウム材料にはECAl、導体3のアルミニウム材料にはAl-Fe-Zrを使用した。ECAlはA1070相当のECAlである。Al-Fe-Zrは、0.6質量%のFeと、0.02質量%のZrと、0.06質量%のSiと、0.002質量%のCuと、0.002質量%のMnと、合計で0.006質量%のTi及びVと、を含み、残部がAlから成るアルミニウム合金である。導体3の断面積は50mmとした。端子5を圧縮して導体3に接続した後、端子付電線1に対して大気中で150℃、50時間の条件で高温環境暴露試験を行った。下記表3に示す実験例24においても同じ条件で試験を行った。高温環境暴露試験は実験例1~22と同様の方法で行った。また、電気抵抗比の測定、圧縮比の測定も実験例1~22と同様の方法で行った。
なお、表3に示す実験例25は、表1に示した実験例2と同じである。
【0078】
(実験例24)
実験例24は、下記表3に示すように、導体3のアルミニウム材料をAl-Zrに変更した以外は実験例23と同様に端子付電線1を作製した。Al-Zrは、0.34質量%のZrと、0.15質量%のFeと、0.1質量%のSiと、合計で0.03質量%のTi及びVと、を含み、残部がAlから成るアルミニウム合金である。また、電気抵抗比の測定、圧縮比の測定も実験例1~22と同様の方法で行った。
【0079】
以上の結果から、実験例23、24では、3つの圧縮部が形成され、最後に形成される圧縮部は、既に形成された複数の圧縮部のうちの隣り合う2つの圧縮部の間に形成され、端子5と導体3のアルミニウム材料の組合せを変更することで、電気抵抗比の増加を実験例25と比較してさらに抑制できることが確認された。
【0080】
中空部7内に導体3を挿入した端子5に圧縮加重が加えられ、端子5及び導体3は圧縮される。圧縮加重を完全に除いた後、端子5及び導体3は、ヤング率に従ってスプリングバック(応力が緩和)する。よって、圧縮荷重を完全に除いたとき、導体3の外周面と、端子5の内周面との間には、互いに押し付け合う荷重が生じる。このスプリングバック量は、導体3を構成するアルミニウム材料の引張強度を大きくし、相対的に端子5を構成するアルミニウム材料の引張強度を、導体3を構成するアルミニウム材料の引張強度より小さくすることで大きくなる。実験例25より、実験例23の方がスプリングバック量は大きい。また、実験例23より実験例24の方がスプリングバック量は大きい。スプリングバック量が大きい方が、導体3の外周面と、端子5の内周面との間に発生する互いに押し付け合う荷重が大きくなる。その結果、スプリングバック量が増加することにより、抵抗比増加率がさらに抑制できることを確認した。
【0081】
上記実験例23~25における端子付電線1の抵抗比増加率等を下記表3にまとめた。
【0082】
【表3】
【0083】
本実験例では、導体3の断面積を50mmとしたが、本実施形態はこれに限定されるものではない。本発明の効果は、導体3の断面積の大きさによらず得られるが、例えば応力緩和の影響が無視できない50mm~400mmの大きな断面積を有する導体であっても、抵抗比増加率を小さく維持することができ、特に有意義である。
【0084】
<5.本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0085】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
アルミニウム材料からなる導体と前記導体を被覆する絶縁層とを含む電線と、
前記電線の端部で露出する前記導体が挿入される中空部を有し、前記中空部内に前記導体が挿入された状態で前記中空部が圧縮されることにより、前記導体に接続されるアルミニウム材料からなる端子と、
を有する端子付電線であって、
前記端子付電線を150℃で50時間加熱する試験の実施前と実施後の前記導体と前記端子との間の電気抵抗比をそれぞれR1、R2とした場合に、((R2-R1)/R1)×100の式で算出される抵抗比増加率(%)が、19%以下である、端子付電線が提供される。
【0086】
(付記2)
好ましくは、
前記導体に用いられるアルミニウム材料の引張強度は、前記端子に用いられるアルミニウム材料の引張強度よりも大きい、
付記1に記載の端子付電線が提供される。
【0087】
(付記3)
好ましくは、
前記導体は、0.03~1.5質量%のZrと、0.1~1.0質量%のFe及びSiと、を含み、残部がAlと不可避不純物とを有するアルミニウム合金であり、
前記端子は、Alと不可避不純物とを有する純アルミニウムである、
付記1又は2に記載の端子付電線が提供される。
【0088】
(付記4)
好ましくは、
前記導体は、0.01~0.10質量%のZrと、0.1質量%以下のSiと、0.2~1.0質量%のFeと、0.01質量%以下のCuと、0.01質量%以下のMnと、0.01質量%以下のMgと、0.01質量%以下のZnと、0.01質量%以下のTiと、0.01質量%以下のVとを含み、残部がAlと不可避不純物とを有するアルミニウム合金あり、
前記端子は、Alと不可避不純物とを有する純アルミニウムである、
付記1から3のいずれか1つに記載の端子付電線が提供される。
【0089】
(付記5)
好ましくは、
前記導体の長手方向に沿った前記圧縮部の幅は7mm以下である、
付記1から4のいずれか1つに記載の端子付電線が提供される。
【0090】
(付記6)
好ましくは、
前記圧縮部は、それぞれ等間隔に設けられている、
付記1から5のいずれか1つに記載の端子付電線が提供される。
【0091】
(付記7)
好ましくは、
前記導体の断面積は、50mm以上である、
付記1から6のいずれか1つに記載の端子付電線が提供される。
【0092】
(付記8)
本発明の他の一態様によれば、
アルミニウム材料からなる導体と前記導体を被覆する絶縁層とを含む電線、及び中空部を有するアルミニウム材料からなる端子を準備する工程と、
前記中空部内に前記電線の端部で露出する前記導体を挿入させた状態で前記端子を3回以上圧縮して前記端子に複数の圧縮部を形成することにより、前記端子を前記導体に接続する工程と、
を有する端子付電線の製造方法であって、
前記端子を前記導体に接続する工程は、既に形成した隣り合う圧縮部の間に新たな圧縮部を形成する工程を有する、端子付電線の製造方法が提供される。
【0093】
(付記9)
既に形成した隣り合う圧縮部の間に新たな圧縮部を形成する工程を、前記端子を前記導体に接続する工程の最後に行う、
付記8に記載の端子付電線の製造方法が提供される。
【0094】
(付記10)
本発明の他の一態様によれば、
導体を挿入させる中空部を有する端子であって、
前記中空部内に前記導体が挿入された状態で前記端子を圧縮することにより、前記端子が前記導体に接続されるように構成されているとともに、
前記端子に圧縮する順番に関する情報が付されている、端子が提供される。
【0095】
(付記11)
好ましくは、
前記端子の圧縮される部位に圧縮する順番が付されている、
付記10に記載の端子が提供される。
【0096】
(付記12)
本発明の他の一態様によれば、
端子の中空部内に導体が挿入された状態で前記端子を3か所以上圧縮することにより、前記端子を前記導体に接続させる冶具であって、
前記冶具が前記端子を圧縮することにより、前記導体の長手方向に沿って最終的に3つ以上の圧縮部が前記端子に形成され、前記3つ以上の圧縮部のうち3つ目以降に形成される圧縮部の少なくとも1つは、既に形成した複数の圧縮部のうちの隣り合う圧縮部の間に形成されるように構成されている、冶具が提供される。
【符号の説明】
【0097】
1 端子付電線
2 電線
3 導体
4 絶縁層
5 端子
6 筒状部
6a 一端部
7 中空部
8 延在部
9 ボルト孔
10、11、12 圧縮部
P1、P2、P3 圧縮部位
13 アルミニウム板13
14 恒温槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10