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特許7347611ケーブル、ワイヤハーネス、ケーブルの端末加工方法、及びワイヤハーネスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ケーブル、ワイヤハーネス、ケーブルの端末加工方法、及びワイヤハーネスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/18 20060101AFI20230912BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20230912BHJP
   H01B 13/26 20060101ALI20230912BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H01B7/18 C
H01B7/00 301
H01B13/26 Z
H01B13/00 521
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022137048
(22)【出願日】2022-08-30
(62)【分割の表示】P 2018115750の分割
【原出願日】2018-06-19
(65)【公開番号】P2022169755
(43)【公開日】2022-11-09
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 良和
(72)【発明者】
【氏名】村山 知之
(72)【発明者】
【氏名】江島 弘高
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-081075(JP,A)
【文献】特開平06-020529(JP,A)
【文献】特開2017-157521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/18
H01B 7/00
H01B 13/26
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪側と車体側との間にわたって配置される車両用のケーブルであって、
複数の電線と、
前記複数の電線を束ねた集合体の周囲に巻き付けられるテープ部材と、
前記テープ部材の外周を被覆するシースと、を備え、
前記テープ部材は、複数の繊維を絡み合わせて形成されたものであり、
前記テープ部材に、前記テープ部材を貫通する複数のスリット孔が、ケーブル長手方向に対して略垂直な方向に延びるように線状に形成されており、
前記スリット孔をその長手方向に間隔をおいて形成してなるスリット列が、前記長手方向に対して垂直な幅方向に離間して複数形成されており、
前記幅方向に隣り合う前記スリット列は、前記スリット孔の位置が前記長手方向において互いにずれるように形成されており、
前記複数のスリット列は、ケーブル長手方向に対して交差している、
ケーブル。
【請求項2】
前記テープ部材が、紙または不織布からなる、
請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記テープ部材は、前記集合体の周囲に螺旋状に巻き付けられており、
前記スリット孔は、前記テープ部材が前記集合体の周囲に螺旋状に巻き付けられたときにケーブル長手方向に対して略垂直な方向に延びるように形成されている、
請求項1又は2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記テープ部材は、前記集合体の周囲に縦添え巻きされており、
前記スリット孔は、前記テープ部材の幅方向に沿って延びるように形成されている、
請求項1又は2に記載のケーブル。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか1項に記載のケーブルと、
前記複数の電線のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタと、を備えた、
ワイヤハーネス。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか1項に記載のケーブルの端末加工方法であって、
前記シースを除去する工程と、
前記テープ部材を引っ張って前記スリット孔を起点として前記テープ部材を破断させ、前記テープ部材を除去する工程と、
を有するケーブルの端末加工方法。
【請求項7】
請求項に記載のワイヤハーネスの製造方法であって、
前記シースを除去する工程と、
前記テープ部材を引っ張って前記スリット孔を起点として前記テープ部材を破断させ、前記テープ部材を除去する工程と、
前記テープ部材を除去した前記ケーブルの端部に前記コネクタを取り付ける工程と、
を有するワイヤハーネスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル、ワイヤハーネス、ケーブルの端末加工方法、及びワイヤハーネスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のワイヤハーネスに用いられるケーブルとして、複数の電線と、複数の電線を束ねた集合体の周囲に巻き付けられるテープ部材と、テープ部材の外周を被覆するシースと、を備えたものが知られている。テープ部材としては、紙や不織布からなるものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-62863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ケーブルの端部においては、シースとテープ部材を除去する端末加工がおこなわれる。この端末加工の際には、シースを除去するために刃を入れるが、例えばこの刃がテープ部材まで入らなかった場合、テープ部材に切れ目が入らずテープ部材の除去が困難となる場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、シースとテープ部材を除去する端末加工の際に、テープ部材の除去の作業性を向上させることが可能なケーブル、ワイヤハーネス、ケーブルの端末加工方法、及びワイヤハーネスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、車輪側と車体側との間にわたって配置される車両用のケーブルであって、複数の電線と、前記複数の電線を束ねた集合体の周囲に巻き付けられるテープ部材と、前記テープ部材の外周を被覆するシースと、を備え、前記テープ部材は、複数の繊維を絡み合わせて形成されたものであり、前記テープ部材に、前記テープ部材を貫通する複数のスリット孔が、ケーブル長手方向に対して略垂直な方向に延びるように線状に形成されており、前記スリット孔をその長手方向に間隔をおいて形成してなるスリット列が、前記長手方向に対して垂直な幅方向に離間して複数形成されており、前記幅方向に隣り合う前記スリット列は、前記スリット孔の位置が前記長手方向において互いにずれるように形成されており、前記複数のスリット列は、ケーブル長手方向に対して交差している、ケーブル、及びそのケーブルの端末加工方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、前記ケーブルと、前記複数の電線のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタと、を備えたワイヤハーネス、及びそのワイヤハーネスの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シースとテープ部材を除去する端末加工の際に、テープ部材の除去の作業性を向上させることが可能なケーブル、ワイヤハーネス、ケーブルの端末加工方法、及びワイヤハーネスの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係るケーブルを用いた車両の構成を示す模式図である。
図2】(a)は本発明の一実施の形態に係るケーブルの横断面図であり、(b)はテープ部材の巻き付け状態を説明する説明図である。
図3】(a)は図2のケーブルに用いたテープ部材の平面図であり、(b),(c)はテープ部材の一変形例を示す平面図である。
図4】(a)はテープ部材の一変形例を示す平面図であり、(b)は(a)のテープ部材を集合体に巻き付けた際の斜視図である。
図5】本発明の一変形例に係るケーブルにおいて、テープ部材の巻き付け状態を説明する説明図である。
図6】本実施の形態に係るワイヤハーネスの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0011】
(ワイヤハーネスを適用する車両の説明)
図1は、本実施の形態に係るケーブルが用いられた車両の構成を示す模式図である。
【0012】
車両1は、車体10に4つのタイヤハウス100を有し、2つの前輪11及び2つの後輪12がそれぞれのタイヤハウス100内に配置されている。本実施の形態では、車両1が前輪駆動車であり、前輪11がエンジンや電動モータからなる図略の駆動源の駆動力を受けて駆動される。すなわち、本実施の形態では、前輪11が駆動輪であり、後輪12が
従動輪である。
【0013】
また、車両1は、2つの電動パーキングブレーキ装置130と、制御装置14とを有している。電動パーキングブレーキ装置130は、2つの後輪12のそれぞれに対応して設けられ、制御装置14から供給される電流によって作動して、後輪12に制動力を発生させる。制御装置14は、車室内に設けられたパーキングブレーキ作動スイッチ140の操作状態を検出可能であり、運転者は、このパーキングブレーキ作動スイッチ140をオン/オフ操作することで、電動パーキングブレーキ装置130の作動状態と非作動状態とを切り替えることが可能である。
【0014】
例えば、停車時おいて運転者がパーキングブレーキ作動スイッチ140をオフ状態からオン状態にすると、制御装置14は、所定時間(例えば1秒間)にわたって電動パーキングブレーキ装置130を作動させるための作動電流を出力する。これにより、電動パーキングブレーキ装置130が作動し、後輪12に制動力を発生させる。この電動パーキングブレーキ装置130の作動状態は、制御装置14から電動パーキングブレーキ装置130を非作動状態にするための電流が出力されるまで維持される。このように、電動パーキングブレーキ装置130は、主として車両1の停止後に制動力を発生させる。
【0015】
制御装置14は、運転者の操作によってパーキングブレーキ作動スイッチ140がオン状態からオフ状態にされた場合に、電動パーキングブレーキ装置130を非作動状態にするための電流を出力する。なお、制御装置14は、パーキングブレーキ作動スイッチ140がオフ状態にされた場合の他、例えばアクセルペダルが踏込操作された場合にも、電動パーキングブレーキ装置130を非作動状態にするための電流を出力する。
【0016】
また、前輪11及び後輪12には、車輪速を検出するための車輪速センサ(ABSセンサ)131が設けられている。車輪速センサ131は、それ自体は周知のものであり、前輪11又は後輪12と共に回転する環状の磁気エンコーダの磁界を検出する磁界検出素子を有し、この磁界の向きが変化する周期によって車輪速(前輪11又は後輪12の回転速度)を検出する。
【0017】
制御装置14と、前輪11の車輪速センサ131とは、複数の電線からなる前輪用電線群151、及び前輪用ワイヤハーネス152によって電気的に接続されている。前輪用電線群151と前輪用ワイヤハーネス152とは、車体10に固定された中継ボックス153内で接続されている。中継ボックス153は、左右一対の前輪11のそれぞれの近傍に配置されている。
【0018】
また、制御装置14と、後輪12の電動パーキングブレーキ装置130及び車輪速センサ131とは、複数の電線からなる後輪用電線群154、及び本実施の形態に係るケーブル3を用いたワイヤハーネス2によって電気的に接続されている。後輪用電線群154とワイヤハーネス2とは、車体10に固定された中継ボックス155内で接続されている。中継ボックス155は、左右一対の後輪12のそれぞれの近傍に配置されている。
【0019】
前輪用電線群151は、束ねられた状態で車体10に設けられた配線路150に配置されている。また、後輪用電線群154も、前輪用電線群151と同様に、束ねられた状態で車体10に設けられた配線路150に配置されている。
【0020】
前輪用ワイヤハーネス152は、一端部が前輪11の車輪速センサ131に接続され、他端部が中継ボックス153に収容されている。後輪用のワイヤハーネス2は、一端部が後輪12の電動パーキングブレーキ装置130及び車輪速センサ131に接続され、他端部が中継ボックス155に収容されている。
【0021】
(ケーブル3の構成)
図2(a)は本実施の形態に係るケーブル3の横断面図であり、図2(b)はテープ部材の巻き付け状態を説明する説明図である。
【0022】
図2(a),(b)に示すように、ケーブル3は、複数の電線30と、複数の電線30を束ねた集合体34の周囲に巻き付けられるテープ部材36と、テープ部材36の外周を被覆するシース37と、を備えている。本実施の形態では、複数の電線30は、一対の電源線31と一対の信号線32の合計4本の絶縁電線からなる。
【0023】
ケーブル3では、一対の信号線32は、互いに撚り合わせられており、その周囲に内部シース331が一括被覆されて信号ケーブル33が形成されている。また、ケーブル3では、一対の電源線31と、信号ケーブル33と、介在35とが撚り合わせられ集合体34が形成されており、この集合体34の周囲に、螺旋状にテープ部材36が巻き付けられている。なお、図2(b)では、図の簡略化のため介在35を省略している。
【0024】
一対の電源線31は、電動パーキングブレーキ装置130に電流を供給するために用いられる。一対の信号線32は、車輪速センサ131の検出信号を制御装置14に伝送するために用いられる。つまり、一対の信号線32は、車両1の走行時に、車両1の走行状態を示す車両状態量の検出信号を制御装置14に伝送する。
【0025】
一対の電源線31は、銅等の良導電性の導線からなる中心導体310を絶縁性の樹脂からなる絶縁体311で被覆した絶縁電線である。中心導体310は、複数の素線からなる撚線である。絶縁体311は、例えば架橋PE(ポリエチレン)又は難燃架橋PE(ポリエチレン)からなる。
【0026】
信号線32は、銅等の良導電性の導線からなる中心導体320を絶縁性の樹脂からなる絶縁体321で被覆した絶縁電線である。中心導体320は、複数の素線からなる撚線である。絶縁体321は、例えば架橋PE(ポリエチレン)又は難燃架橋PE(ポリエチレン)からなる。信号線32の外径は、電源線31の外径よりも小さい。撚り合された一対の信号線32を被覆する内部シース331は、柔軟性及び耐久性に優れた軟質の熱可塑性ウレタンからなる。
【0027】
電源線31及び信号線32は、シールド導体により被覆されていない。つまり、電源線31と信号線32との間には、電磁波を遮蔽する導電性の部材が配置されていない。これは、電源線31に電流が流れるのは主として車両1の停車中であり、信号線32が電気信号を伝送するのは主として車両1の走行中であるため、信号線32と電源線31との間には、シールド導体を設ける必要がないことに着目したものである。つまり、一対の電源線31に電流が流れた場合、この電流により発生する電磁波は、一対の信号線32の電位差に影響を及ぼし得るが、制御装置14は、車速がゼロである車両1の停車中には、信号線32の電気信号を無視することができ、車両1の走行に悪影響を及ぼさないようにすることができる。また、信号線32がシールド導体に被覆されていないことにより、ケーブル3の柔軟性が増し、屈曲性が高まると共に、ケーブル3の軽量化ならびに低コスト化にも寄与することができる。
【0028】
介在35としては、ケーブル3の長手方向に延びる複数の糸状(繊維状)の部材を用いるとよい。介在35は、集合体34の外周にテープ部材36を巻き付けた際の断面形状を円形状に近づける役割を果たす。介在35としては、ポリプロピレンヤーンや、スフ糸(レーヨンステープルファイバー)、アラミド繊維、ナイロン繊維、あるいは繊維系プラスチック等の繊維状体や、紙もしくは綿糸を用いることができる。
【0029】
シース37は、絶縁性の樹脂からなる。本実施の形態では、シース37は、柔軟性及び耐久性に優れた軟質の熱可塑性ウレタンからなる。
【0030】
(テープ部材36の構成)
図3(a)は、テープ部材36の平面図である。ケーブル3では、テープ部材36として、複数の繊維を絡み合わせて形成されたものを用いる。より具体的には、テープ部材36として、繊維として主としてパルプ等の植物繊維を用いた紙、又は、繊維として羊毛等の動物繊維やレーヨン等の化学繊維を用いた不織布からなるものを用いることができる。ここでは、テープ部材36として、化学繊維からなる不織布を用いた。
【0031】
図2(b)及び図3(a)に示すように、本実施の形態に係るケーブル3では、テープ部材36に、テープ部材36の長手方向に周期的に、テープ部材36を貫通する複数の孔361が形成されている。複数の繊維を絡み合わせて紙や不織布を製造する際には、複数の繊維間の隙間に起因する微小な孔が自然と形成される。本実施の形態では、この微小な孔よりも大きい孔361を形成する。本実施の形態において、孔361は、穴あけ加工を行い意図的に加工により形成されたものであり、テープ部材36の長手方向に周期的に形成されている。
【0032】
テープ部材36に複数の孔361を形成することにより、孔361がミシン目のような役割を果たし、孔361が起点となってテープ部材36が破断しやすくなるので、端末加工時にテープ部材36の端末部分を除去しやすくなる。
【0033】
また、孔361を形成しない従来のケーブルでは、テープ部材36の端末部分を除去する際にテープ部材36を引きちぎると、テープ部材36を構成する繊維が毛羽立ってしまい、コネクタの接続等の後の加工の加工性に影響を及ぼしてしまう場合があった。本実施の形態のように孔361を形成することによって、当該孔361の部分では予め繊維が切断された状態となるため、テープ部材36の端末部分を除去した際の毛羽立ちを抑え、コネクタ接続等のその後の工程の加工性を向上することが可能になる。なお、孔361が起点となって破断が生じると、孔361から徐々にひびが拡がり比較的きれいに破断が生じるため、破断面において毛羽立ちが生じにくくなる。
【0034】
さらに、孔361を形成することにより、テープ部材36の内部に溜まった水分(湿気)が外部へと抜けやすくなる。その結果、シース37の被覆時にテープ部材36の内部に溜まった水分が膨張してシース37に発泡が生じて外観が劣化してしまうことも抑制可能になる。
【0035】
本実施の形態では、孔361として、線状のスリット孔361aを形成している。孔361をスリット孔361aとすることにより、ケーブル3の屈曲時にスリット孔361aが開き、テープ部材36が屈曲に応じて柔軟に変形するようになるため、ケーブル3の柔軟性、すなわち曲げ易さ(可撓性)が向上する。また、孔361をスリット孔361aとすることで、テープ部材36の端末部分を除去する際に、スリット孔361aが開くことでスリット孔361aが破断の起点になり易く、端末加工性もより向上する。
【0036】
なお、スリット孔361aは、テープ部材36を集合体34に巻き付けた際に、ケーブル長手方向(集合体34の長手方向)に対して交差する方向に延びるように形成される。これは、ケーブル長手方向に対して平行な方向に延びるようにスリット孔361aが形成されていると、ケーブル3を曲げた際や、端末加工時にテープ部材36を引っ張った際に、スリット孔361aが開かず、柔軟性の向上や端末加工時の加工性の向上の効果が十分に得られない場合があるためである。つまり、スリット孔361aをケーブル長手方向に
対して交差する方向に延びるように形成することで、ケーブル3の柔軟性を向上すると共に、端末加工時の加工性を向上できる。
【0037】
本実施の形態では、テープ部材36は、集合体34の周囲に螺旋状に巻き付けられている。この場合、スリット孔361aは、テープ部材36の長手方向に沿って延びるように形成されていることが望ましい。テープ部材36を集合体34の周囲に螺旋状に巻き付ける際には、テープ部材36にある程度張力を付与する必要があるが、スリット孔361aをテープ部材36の長手方向に沿って延びるように形成することで、テープ部材36の巻き付け時に張力を付与してもスリット孔361aが開かなくなり、テープ部材36の巻き付け時にテープ部材36が意図せず破断してしまうことを抑制可能になる。
【0038】
スリット孔361aは、テープ部材36の平面視(図3(a)の平面図)において、2次元的に周期的に形成されている。本実施の形態では、スリット孔361aをその長手方向に等間隔に形成してなるスリット列362が、スリット孔361aの長手方向に対して垂直な幅方向に離間して複数(ここでは5列)形成されている。本実施の形態においては、スリット孔361aの長手方向はテープ部材36の長手方向と一致しており、スリット孔361aの幅方向は、テープ部材36の幅方向と一致している。
【0039】
さらに、本実施の形態では、幅方向に隣り合うスリット列362は、スリット孔361aの位置が長手方向において互いにずれるように形成されている。ここでは、奇数列のスリット孔361aの間に偶数列のスリット孔361aが配置されるように千鳥状にスリット孔361aを形成している。これにより、テープ部材36の長手方向に対して傾斜した方向に破断し易くなり、端末加工時によりテープ部材36の端末部分を除去しやすくなる。
【0040】
スリット孔361aの長さLは、1mm以上10mm以下であるとよい。スリット孔361aの長さLが1mm未満であると、ケーブル3の柔軟性向上の効果が十分に得られない場合があり、スリット孔361aの長さLが10mmを超えると、シース37の被覆時にスリット孔361aからテープ部材36よりも内側に樹脂が流れ込んでしまい、端末加工性が低下してしまうおそれがあるためである。スリット孔361aの長手方向に隣り合うスリット孔361aの間隔Dは、端末加工時にテープ部材36が容易に破断できる程度の長さとすればよく、好ましくは、スリット孔361aの長さL以下に設定されるとよい。
【0041】
なお、本実施の形態では、千鳥状にスリット孔361aを形成したが、これに限らず、図3(b)に示すように、スリット孔361aをマトリクス状に形成してもよい。図3(b)の例では、スリット孔361aは、長手方向及び幅方向に等間隔に配置されている。ただし、図3(b)の例では、テープ部材36の長手方向の一部においてスリット孔361aが形成されていない部分ができ、当該部分の突っ張りによりケーブル3を曲げにくくなるおそれがある。よって、スリット孔361aの長手方向とテープ部材36の長手方向とを一致させる場合には、千鳥状にスリット孔361aを形成すること(あるいは隣り合うスリット列362において、スリット孔361aの位置を長手方向にずらすこと)がより望ましい。なお、マトリクス状にスリット孔361aを形成する場合には、スリット孔361aの長手方向をテープ部材36の長手方向に対して傾斜させ、テープ部材36の長手方向においてスリット孔361aが形成されていない部分が生じないように構成するとよい。
【0042】
また、本実施の形態では孔361として線状のスリット孔361aを形成したが、図3(c)に示すように、孔361は、点状あるいは円形状のドット孔361bであってもよい。ただし、スリット孔361aに比較してドット孔361bは破断の起点となりにくく
、またドット孔361bはスリット孔361aのように開かないためケーブル3の柔軟性を十分に向上させることができない場合もある。よって、孔361は、スリット孔361aであることがより望ましいといえる。孔361としてドット孔361bを用いる場合、端末加工時に破断の起点となりやすくするため、ドット孔361bの最大径(最も開口が大きくなる位置での開口幅)を、少なくとも0.3mm以上とすることが望ましい。
【0043】
さらに、端末加工時により破断しやすくするという観点からは、図4(a),(b)に示すように、テープ部材36の巻き付け角度を考慮して、テープ部材36の長手方向とスリット孔361aの長手方向とのなす角度を適宜調整し、テープ部材36を集合体34に巻き付けた際に、ケーブル長手方向に対して略垂直な(例えば80度以上100度以下の)方向に延びるようにスリット孔361aを形成してもよい。
【0044】
また、本実施の形態では、テープ部材36を集合体34の周囲に螺旋状に巻き付ける場合を説明したが、図5に示すように、テープ部材36を集合体34の周囲に縦添え巻きしてもよい。この場合、スリット孔361aをテープ部材36の幅方向に沿って延びるように形成することで、端末加工時により破断が発生しやすくなり、端末加工時の加工性が向上する。なお、この場合のテープ部材36の長手方向とスリット孔361aの長手方向とのなす角度は、厳密に90度である必要はなく、例えば80度以上100度以下の範囲内とすればよい。
【0045】
(ワイヤハーネス2の構成)
図6は、本実施の形態に係るワイヤハーネス2の概略構成図である。図6に示すように、ワイヤハーネス2は、上述の本実施の形態に係るケーブル3と、ケーブル3の複数の電線30のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタと、を備えている。
【0046】
図6では、図示左側が車輪12側の端部を示し、図示右側が車体10側(中継ボックス155側)の端部を示している。以下の説明では、ワイヤハーネス2の車輪12側の端部を「一端部」、車体10側(中継ボックス155側)の端部を「他端部」という。
【0047】
一対の電源線31の一端部には、電動パーキングブレーキ装置130との接続のための車輪側電源コネクタ21が取り付けられ、一対の電源線31の他端部には、中継ボックス155内における後輪用電線群154との接続のための車体側電源コネクタ22が取り付けられている。
【0048】
信号ケーブル33(一対の信号線32)の一端部には、車輪速センサ131が取り付けられ、信号ケーブル33(一対の信号線32)の他端部には、中継ボックス155内における後輪用電線群154との接続のための車体側信号用コネクタ23が取り付けられている。
【0049】
なお、ここでは、一対の電源線31の他端部と信号ケーブル33の他端部に、個別にコネクタ22,23を設ける場合を説明したが、一対の電源線31と信号ケーブル33とを一括して接続する共用のコネクタを設けてもよい。
【0050】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るケーブル3では、テープ部材36に、テープ部材36を貫通する複数の孔361が形成されている。これにより、孔361を起点として破断が起きやすくなるためテープ部材36の端末部分の除去が容易となり、シース37とテープ部材36を除去する端末加工の際に、テープ部材36の除去の作業性を向上させることが可能になる。また、孔361を形成することで、テープ部材36を構成する繊維が予め切断された状態となっており、かつ、端末加工時に孔361を起点として徐々にひ
びが拡がり比較的きれいに破断が生じるため、テープ部材36の端末部分の除去時に毛羽立ちが発生しにくく、コネクタ接続等の後工程での加工性が向上する。すなわち、本実施の形態によれば、端末加工やその後の工程において、加工性の向上を図ることが可能である。さらに、孔361を形成することで、テープ部材36に囲まれた空間から外部に水分を逃がしやすくでき、シース37の発泡による外観不良を抑制可能になる。本発明は、テープ部材36として、比較的破断しにくい不織布を用いる場合に、特に有効である。
【0051】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0052】
[1]複数の電線(30)と、前記複数の電線(30)を束ねた集合体(34)の周囲に巻き付けられるテープ部材(36)と、前記テープ部材(36)の外周を被覆するシース(37)と、を備え、前記テープ部材(36)は、複数の繊維を絡み合わせて形成されたものであり、前記テープ部材(36)に、前記テープ部材(36)を貫通する複数の孔(361)が形成されている、ケーブル(3)。
【0053】
[2]前記テープ部材(36)が、紙または不織布からなる、[1]に記載のケーブル(3)。
【0054】
[3]前記孔(361)は、ケーブル長手方向に対して交差する方向に延びる線状のスリット孔(361a)である、[1]または[2]に記載のケーブル(3)。
【0055】
[4]前記テープ部材(36)は、前記集合体(34)の周囲に螺旋状に巻き付けられており、前記スリット孔(361a)は、前記テープ部材(36)の長手方向に沿って延びるように形成されている、[3]に記載のケーブル(3)。
【0056】
[5]前記テープ部材(36)は、前記集合体(34)の周囲に縦添え巻きされており、前記スリット孔(361a)は、前記テープ部材(36)の幅方向に沿って延びるように形成されている、[3]に記載のケーブル。
【0057】
[6]前記スリット孔(361a)をその長手方向に等間隔に形成してなるスリット列(362)が、前記長手方向に対して垂直な幅方向に離間して複数形成されており、前記幅方向に隣り合う前記スリット列(362)は、前記スリット孔(361a)の位置が前記長手方向において互いにずれるように形成されている、[3]乃至[5]の何れか1項に記載のケーブル(3)。
【0058】
[7]前記スリット孔(361a)の長さが、1mm以上10mm以下である、[3]乃至[6]の何れか1項に記載のケーブル(3)。
【0059】
[8][1]乃至[7]の何れか1項に記載のケーブル(3)と、前記複数の電線(30)のうち、少なくとも何れかの端部に取り付けられたコネクタと、を備えた、ワイヤハーネス(2)。
【0060】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
2…ワイヤハーネス
3…ケーブル
30…電線
34…集合体
36…テープ部材
361…孔
361a…スリット孔
362…スリット列
37…シース
図1
図2
図3
図4
図5
図6