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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】硬さ試験機及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/42 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
G01N3/42 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019210086
(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公開番号】P2021081344
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】新座 恒治
(72)【発明者】
【氏名】輿水 文比古
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-326169(JP,A)
【文献】特開2012-078307(JP,A)
【文献】特開2012-185114(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0096093(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機であって、
撮像手段により撮像された試料の表面の画像を取得する画像取得手段と、
前記試料の表面の画像に基づいて、所定の条件により当該画像内において硬さ試験に適さない不適合領域を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された不適合領域以外の領域において試験位置を設定する試験位置設定手段と、
を備え
操作部を介して、ユーザーが手動で試験位置を修正する手動修正モードを備え、
前記手動修正モードの場合に、試料の表面の画像に格子又は同心円を重ね合わせて表示部に表示させる制御部を備え、
前記試験位置設定手段は、前記手動修正モードの場合、前記操作部により指定された試験位置に設定することを特徴とする硬さ試験機。
【請求項2】
前記画像取得手段により取得された前記試料の表面の画像に基づいて、当該試料における一又は複数の試験位置を指定する指定手段を備え、
前記試験位置設定手段は、前記指定手段により指定された試験位置を設定し、当該試験位置が前記不適合領域に含まれる場合、当該試験位置を前記不適合領域に含まれない位置に修正する、
ことを特徴とする請求項1に記載の硬さ試験機。
【請求項3】
前記指定手段は、ユーザー操作に基づいて前記試験位置の配列に関する試験パターンの指定がなされた場合、当該試験パターンに基づいて前記複数の試験位置を指定し、
前記試験位置設定手段は、前記指定手段により指定された各試験位置のうちの前記不適合領域に含まれる試験位置を対象として、当該試験位置を前記不適合領域に含まれない位置に修正する、
ことを特徴とする請求項2に記載の硬さ試験機。
【請求項4】
前記試験位置設定手段は、前記不適合領域に含まれる試験位置を当該不適合領域に含まれない位置に修正する際、前記試料上の所定の点、線又は面を基準として当該基準から当該試験位置までの距離と同一の距離となる位置に修正することを特徴とする請求項2又は3に記載の硬さ試験機。
【請求項5】
前記指定手段は、ユーザー操作に基づいて前記試験位置の配列に関する試験パターンの指定がなされた場合、当該試験パターンに基づいて前記複数の試験位置を指定し、
前記試験位置設定手段は、前記指定手段により指定された各試験位置のうちの少なくともいずれか一の試験位置が前記不適合領域に含まれる場合、当該各試験位置を前記不適合領域に含まれない位置であり、且つ、前記試験パターンを維持可能な位置に修正する、
ことを特徴とする請求項2に記載の硬さ試験機。
【請求項6】
前記画像取得手段により取得された前記試料の表面の画像を所定の閾値に基づき二値化する二値化手段を備え、
前記特定手段は、前記二値化手段により二値化された画像データに基づいて、前記所定の閾値以下となる領域を前記不適合領域として特定する、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の硬さ試験機。
【請求項7】
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機のコンピュータを、
撮像手段により撮像された試料の表面の画像を取得する画像取得手段、
前記試料の表面の画像に基づいて、所定の条件により当該画像内において硬さ試験に適さない不適合領域を特定する特定手段、
前記特定手段により特定された不適合領域以外の領域において試験位置を設定する試験位置設定手段、
として機能させるプログラムであって、
操作部を介して、ユーザーが手動で試験位置を修正する手動修正モードを備え、
前記手動修正モードの場合に、試料の表面の画像に格子又は同心円を重ね合わせて表示部に表示させる制御部として機能させ、
前記試験位置設定手段は、前記手動修正モードの場合、前記操作部により指定された試験位置に設定するプログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬さ試験機及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の試験力で圧子を試料(ワーク)に押し付けて形成したくぼみの寸法に基づいて試料の硬さを計測する硬さ試験機が知られている。この硬さ試験機では、例えば、一度試験した試料について再試験を行う際に、前回のくぼみの形成された位置を避け、再試験に適した位置を自動的に設定することができる硬さ試験機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-78307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている硬さ試験機では、最初の試験の際は異物の存する位置と試験位置とが重ならないように当該試験位置をユーザーが目視で確認して設定する必要があり、異物の存する位置と試験位置とが重なっていた場合には、ユーザー操作に基づいて当該試験位置を設定し直さなければならないため手間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、試験位置の設定を簡便にすることができる硬さ試験機及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機であって、
撮像手段により撮像された試料の表面の画像を取得する画像取得手段と、
前記試料の表面の画像に基づいて、所定の条件により当該画像内において硬さ試験に適さない不適合領域を特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された不適合領域以外の領域において試験位置を設定する試験位置設定手段と、
を備え
操作部を介して、ユーザーが手動で試験位置を修正する手動修正モードを備え、
前記手動修正モードの場合に、試料の表面の画像に格子又は同心円を重ね合わせて表示部に表示させる制御部を備え、
前記試験位置設定手段は、前記手動修正モードの場合、前記操作部により指定された試験位置に設定することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の硬さ試験機において、
前記画像取得手段により取得された前記試料の表面の画像に基づいて、当該試料における一又は複数の試験位置を指定する指定手段を備え、
前記試験位置設定手段は、前記指定手段により指定された試験位置を設定し、当該試験位置が前記不適合領域に含まれる場合、当該試験位置を前記不適合領域に含まれない位置に修正する、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の硬さ試験機において、
前記指定手段は、ユーザー操作に基づいて前記試験位置の配列に関する試験パターンの指定がなされた場合、当該試験パターンに基づいて前記複数の試験位置を指定し、
前記試験位置設定手段は、前記指定手段により指定された各試験位置のうちの前記不適合領域に含まれる試験位置を対象として、当該試験位置を前記不適合領域に含まれない位置に修正する、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の硬さ試験機において、
前記試験位置設定手段は、前記不適合領域に含まれる試験位置を当該不適合領域に含まれない位置に修正する際、前記試料上の所定の点、線又は面を基準として当該基準から当該試験位置までの距離と同一の距離となる位置に修正することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の硬さ試験機において、
前記指定手段は、ユーザー操作に基づいて前記試験位置の配列に関する試験パターンの指定がなされた場合、当該試験パターンに基づいて前記複数の試験位置を指定し、
前記試験位置設定手段は、前記指定手段により指定された各試験位置のうちの少なくともいずれか一の試験位置が前記不適合領域に含まれる場合、当該各試験位置を前記不適合領域に含まれない位置であり、且つ、前記試験パターンを維持可能な位置に修正する、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬さ試験機において、
前記画像取得手段により取得された前記試料の表面の画像を所定の閾値に基づき二値化する二値化手段を備え、
前記特定手段は、前記二値化手段により二値化された画像データに基づいて、前記所定の閾値以下となる領域を前記不適合領域として特定する、
ことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、
試料の表面に圧子により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料の硬さを測定する硬さ試験機のコンピュータを、
撮像手段により撮像された試料の表面の画像を取得する画像取得手段、
前記試料の表面の画像に基づいて、所定の条件により当該画像内において硬さ試験に適さない不適合領域を特定する特定手段、
前記特定手段により特定された不適合領域以外の領域において試験位置を設定する試験位置設定手段、
として機能させるプログラムであって、
操作部を介して、ユーザーが手動で試験位置を修正する手動修正モードを備え、
前記手動修正モードの場合に、試料の表面の画像に格子又は同心円を重ね合わせて表示部に表示させる制御部として機能させ、
前記試験位置設定手段は、前記手動修正モードの場合、前記操作部により指定された試験位置に設定する
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、試験位置の設定を簡便にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る硬さ試験機の全体構成を示す側面図である。
図2】本発明に係る硬さ試験機の全体構成を示す側面図である。
図3】本発明に係る硬さ試験機の制御構造を示すブロック図である。
図4】本発明に係る硬さ試験機の動作を示すフローチャートである。
図5】(a)は設定当初の各試験位置を試料の表面画像に重ねて表示させた様子を示す図であり、(b)は修正後の各試験位置を試料の表面画像に重ねて表示させた様子を示す図である。
図6】手動修正モードにおいて各試験位置を修正する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
[1.構成の説明]
本実施形態に係る硬さ試験機1は、図1図3に示すように、各構成部材が配設される試験機本体2と、試験機本体2に回動自在に支持される荷重アーム3と、荷重アーム3に作用力(試験力)を付与し、荷重アーム3を作動させるアーム作動部4と、荷重アーム3の下方の試験機本体2に回転自在に備えられたターレット8と、ターレット8に取り付けられ、先端部に圧子5を備える圧子軸6と、ターレット8に取り付けられた対物レンズ7と、ターレット8に対向配置され、試料Sが載置される試料台9と、試料台9上の試料Sに形成されたくぼみを撮像する撮像部10と、試験力や試料Sの想定硬さを入力する操作部15と、試料Sの表面や試料Sの表面に形成されるくぼみの画像を表示する表示部16と、制御部100と、を備えて構成されている。なお、硬さ試験機1では、制御部100により、各部の動作制御が行われる。
【0017】
荷重アーム3は、アーム本体31と、アーム本体31の一端部31aを試験機本体2に軸支する回動軸32と、を備えて構成されている。
アーム本体31の他端側は、第1の他端部31bと第2の他端部31cとの二股に分岐している。第1の他端部31bは、可撓性を有する板ばね状に形成されている。
アーム本体31の下面側には、アーム本体31の下面と試験機本体2との間にコイルばね33aにより弾性支持される荷重軸33が備えられている。
また、アーム本体31には、荷重アーム3(アーム本体31)が作動した際の、第1の他端部31bと第2の他端部31cとの開き量を検出するアーム変位検出部34が備えられている。
【0018】
アーム本体31は、一端部31aが回動軸32により試験機本体2に回動自在に軸支されるとともに、第1の他端部31bに荷重アーム3を作動させる試験力としての作用力を発生させるアーム作動部4が接続されている。そして、アーム本体31は、そのアーム作動部4の動作に伴い、回動軸32を中心とした回動を行う。アーム本体31は、この下方への回動に伴い、荷重軸33を下方へと押圧し、移動させる。そして、荷重軸33は、アーム本体31(荷重アーム3)の駆動、動作を圧子軸6に伝達する(図1参照)。
【0019】
アーム変位検出部34は、所定の間隔の目盛が刻まれたスケールと、スケールの目盛を光学的に読み取るリニアエンコーダと、を備えて構成されている。アーム変位検出部34は、圧子軸6等を介して圧子5を試料Sに押し込む際の第1の他端部31bと第2の他端部31cとの開き量(ばね変位量)を検出し、その検出した開き量に基づくアーム変位信号を制御部100に出力する。なお、この開き量は、圧子5が試料Sを押し込む押圧力(試験力)又は試料Sに加わる荷重に対応している。
【0020】
アーム作動部4は、サーボモータ41と、ボールネジ43と、サーボモータ41のモータ軸41aとボールネジ43のネジ軸43aとに掛け渡されるタイミングベルト42と、ボールネジ43に保持される固定治具44と、を備えて構成されている。なお、アーム作動部4は、固定治具44の板ばね44aが、アーム本体31の第1の他端部31bに固定されることにより、荷重アーム3に接続されている。
【0021】
サーボモータ41は、制御部100から入力された駆動制御信号に基づいて駆動する。サーボモータ41のモータ軸41aは、サーボモータ41の駆動により回転する。モータ軸41aの駆動力は、タイミングベルト42を介してボールネジ43のネジ軸43aに伝達され、ボールネジ43を回転させる。固定治具44は、ボールネジ43の回転駆動により、上下に移動する。
このように、アーム作動部4は、サーボモータ41の駆動に基づいて固定治具44を上下動させ、固定治具44と接続しているアーム本体31の第1の他端部31bにその駆動(駆動力)を伝達させて、アーム本体31(荷重アーム3)を回動させる。なお、板ばね44aは、アーム作動部4が荷重アーム3を動作させる際、撓むようになっている。
【0022】
試料台9は、試料Sが載置される試料ステージ91と、試料ステージ91の下面に設けられた電動ステージ92と、電動ステージ92の下面に設けられたステージ昇降部93と、を備えて構成されている。
電動ステージ92は、制御部100が出力する制御信号に応じて駆動する駆動機構部(図示省略)により駆動され、圧子軸6に垂直な方向(水平方向)に移動可能としている。
ステージ昇降部93は、ねじ部93aを備え、ねじ部93aを回転させることにより、試料ステージ91を試験機本体2に対して上下に移動可能としている。
【0023】
ターレット8は、ターレット本体81と、ターレット本体81を試験機本体2に回転自在に軸支する回転軸82と、を備えて構成されている。
ターレット本体81には、圧子軸6と、対物レンズ7と、圧子軸6の変位量を検出する圧子軸変位検出部20と、が備えられている。なお、圧子軸6は、圧子軸保持部61を介してターレット本体81に備えられている。
ターレット本体81は、回転軸82を中心として回転することにより、圧子軸6や対物レンズ7の配置を切り替えることができる。
【0024】
圧子軸保持部61は、縦保持部材61aと、縦保持部材61aから横方向に延出する板ばね61b、61bと、を備えて構成されている。圧子軸6は、圧子軸保持部61の板ばね61b、61bに弾性支持され、試料ステージ91の試料Sの載置面、特に、試料ステージ91に載置された試料の表面(上面)に対して垂直に備えられている。
圧子軸6の下端部には、圧子5が交換可能に備えられている。例えば、ビッカース硬さ試験を実施する場合には、圧子5として、ビッカース用の四角錐圧子(対面角が136±0.5°)を使用する。本実施形態では、圧子5としてビッカース用の四角錐圧子が使用されている。
硬さ試験機1は、図1に示すように、ターレット8(ターレット本体81)を回転させ、圧子軸6を荷重軸33に対応する配置に切り替えることにより、荷重アーム3の回動に伴い荷重軸33が下方へ移動する動作の作用力を、圧子軸6に伝達することができる。これにより、硬さ試験機1は、圧子5を試料Sに押し当てて押し込むことが可能となる。
【0025】
対物レンズ7は、撮像部10の顕微鏡部11に付随するレンズ部である。硬さ試験機1は、図2に示すように、ターレット8(ターレット本体81)を回転させ、対物レンズ7を撮像部10に対応する配置に切り替えることで、撮像部10による試料Sの撮像が可能となる。
【0026】
圧子軸変位検出部20は、所定の間隔の目盛が刻まれたスケールと、スケールの目盛を光学的に読み取るリニアエンコーダと、を備えて構成されている。圧子軸変位検出部20は、圧子軸6が試料Sにくぼみを形成する際に移動した変位量(すなわち、試料Sに圧子5が押し込まれた侵入量、くぼみの深さ)を検出し、検出した変位量に基づく圧子軸変位信号を制御部100に出力する。
【0027】
撮像部(撮像手段)10は、顕微鏡部11と、顕微鏡部11に取り付けられたCCDカメラ10aと、試料Sの観察位置を照らす照明装置(図示省略)と、を備えて構成され、試料Sの表面に形成されたくぼみの撮像を行う。そして、撮像部10(CCDカメラ10a)は、撮像したくぼみの画像を制御部100に出力する。
【0028】
操作部15は、キーボード、マウス等のポインティングデバイスなどを備え、硬さ試験を行う際の作業者(オペレータ)による入力操作を受け付ける。例えば、操作部15は、試験力や作業者が推定した試料Sの想定硬さの入力操作を受け付ける。そして、操作部15は、作業者による所定の入力操作を受け付けると、その入力操作に応じた所定の操作信号を生成して、制御部100へと出力する。
【0029】
表示部16は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置により構成されている。表示部16は、操作部15において入力された硬さ試験の設定条件、硬さ試験の結果及びCCDカメラ10aが撮像した試料Sの表面や試料Sの表面に形成されるくぼみの画像等を表示する。
【0030】
制御部(画像取得手段、特定手段、試験位置設定手段、指定手段、二値化手段)100は、図3に示すように、CPU、RAM、ROM等を備えて構成され、ROMに記憶された所定のプログラムが実行されることにより、所定の硬さ試験を行うための動作制御等を行う機能を有する。ROMには、所定のプログラムの他に、例えば、後述する多点測定処理を行う際に用いられる試験位置の配列に関する試験パターンが複数種類記憶されている。
【0031】
例えば、制御部100は、アーム変位検出部34から入力されたアーム変位信号と予め設定された設定アーム変位データとの比較を行う。そして、制御部100は、所定の試験力(荷重)で圧子5を試料Sに作用させるように荷重アーム3を回動させるため、アーム作動部4(サーボモータ41)の駆動を制御する駆動制御信号をサーボモータ41に出力する。
【0032】
また、制御部100は、電動ステージ92を制御して試料台9(試料ステージ91)を水平方向に移動させることで、試料Sにくぼみを形成する位置を決定する試験の位置決め機能を実現する。
【0033】
また、制御部100は、ステージ昇降部93を制御して試料台9(試料ステージ91)を上下方向に移動させ、試料ステージ91と対物レンズ7との間の相対距離を変化させることで、試料ステージ91に載置された試料Sの表面に焦点を合わせるオートフォーカス機能を実現する。
【0034】
また、制御部100は、撮像部10から入力されたくぼみの画像に所定の画像処理を施すなどして解析し、くぼみの大きさ(寸法)を自動計測し、所定の特徴点間の距離の検出を行う。
また、制御部100は、検出したくぼみの所定の特徴点間の距離に基づいて、試料Sの硬さを算出する。すなわち、制御部100は、試料Sに圧子5が押し込まれて形成されたくぼみの大きさ(所定の特徴点間の距離)から試料Sの硬さを測定する、例えば、ビッカース硬さ試験に基づいて、試料Sの硬さを算出する。
【0035】
[2.動作の説明]
次に、本実施形態に係る硬さ試験機1により実行される多点測定処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0036】
図4に示すように、まず、制御部100は、CCDカメラ10aにより撮影された試料Sの表面画像を取得する(ステップS1)。
【0037】
次いで、制御部100は、操作部15を介して、ユーザー所望の試験パターンを指定する操作がなされたか否かを判定する(ステップS2)。
【0038】
ステップS2において、ユーザー所望の試験パターンを指定する操作がなされていないと判定された場合(ステップS2;NO)、制御部100は、ユーザー所望の試験パターンを指定する操作がなされるまでの間、ステップS2の判定処理を繰り返し行う。
一方、ステップS2において、ユーザー所望の試験パターンを指定する操作がなされたと判定された場合(ステップS2;YES)、制御部100は、指定された試験パターンに基づいて試験位置を設定する(ステップS3)。
【0039】
例えば、図5(a)に示すように、試料Sの表面画像IM1において、試験パターンとして、試料Sの端面Eから所定の距離だけ離れた点を始点として、そこから端面Eに直交する方向(図中の右方向)に所定のピッチで5点の測定を行う試験パターンが指定された場合、制御部100は、当該試験パターンに基づいて上記5点の各試験位置P1、P2、…、P5を設定する。
【0040】
次いで、制御部100は、ステップS1で取得した試料Sの表面画像から硬さ試験に適さない不適合領域(例えば、黒鉛等の異物を含む領域)NRを特定する(ステップS4)。具体的には、制御部100は、ステップS1で取得した試料Sの表面画像を所定の閾値に基づき二値化する。そして、制御部100は、二値化された画像データに基づいて、上述の所定の閾値以下となる領域を不適合領域NR(図5参照)として特定する。
【0041】
次いで、制御部100は、ステップS3で設定された各試験位置を対象として、ステップS4で特定された不適合領域NRに含まれる試験位置が有るか否かを判定する(ステップS5)。
【0042】
ステップS5において、不適合領域NRに含まれる試験位置が有ると判定された場合(ステップS5;YES)、制御部100は、不適合領域NRに含まれる試験位置を修正する(ステップS6)。例えば、図5(a)に示すように、試験位置P4が不適合領域NRに含まれる場合、制御部100は、試料Sの端面Eから試験位置P4までの距離と同一の距離となる位置あって、不適合領域NRに含まれない位置(例えば、試験位置P6(図5(b)参照))に修正する。そして、制御部100は、処理をステップS7へ進める。
【0043】
また、ステップS5において、不適合領域NRに含まれる試験位置が無いと判定された場合(ステップS5;NO)、制御部100は、ステップS6をスキップして、処理をステップS7へ進める。
【0044】
次いで、制御部100は、荷重アーム3や電動ステージ92等を制御することによって、ステップS3で設定された各試験位置(但し、不適合領域NRに含まれると判定された試験位置については修正後の試験位置)にくぼみを順次形成する(ステップS7)。例えば、図5(b)に示すように、各試験位置P1、P2、P3、P6、P5の設定がなされている場合、例えば、試験位置P1から試験位置P2、試験位置P3、試験位置P6、試験位置P5へと順番にくぼみが形成される。
【0045】
次いで、制御部100は、CCDカメラ10aにより撮影されたくぼみ形成後の試料Sの表面画像を取得する(ステップS8)。
【0046】
次いで、制御部100は、ステップS8で取得されたくぼみ形成後の試料Sの表面画像に基づいて、試料Sの硬さ値を算出する(ステップS9)。具体的には、制御部100は、試料Sの表面画像を解析し、試料Sの表面に形成されたくぼみの対角線長さを計測し、当該計測された対角線長さに基づいて試料Sの硬さ値を算出する。そして、制御部100は、多点測定処理を終了する。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る硬さ試験機1は、撮像手段(撮像部10)により撮像された試料Sの表面の画像(表面画像)を取得する画像取得手段(制御部100)と、試料Sの表面の画像に基づいて、所定の条件により当該画像内において硬さ試験に適さない不適合領域NRを特定する特定手段(制御部100)と、前記特定手段により特定された不適合領域NR以外の領域において試験位置を設定する試験位置設定手段(制御部100)と、を備える。
したがって、本実施形態に係る硬さ試験機1によれば、試験位置を設定する際に、異物の存する位置と試験位置とが重なっているか否かをユーザーが目視で確認する手間を省くことができるので、試験位置の設定を簡便にすることができる。
【0048】
また、本実施形態に係る硬さ試験機1は、前記画像取得手段により取得された試料Sの表面の画像に基づいて、当該試料Sにおける一又は複数の試験位置を指定する指定手段(制御部100)を備え、前記試験位置設定手段は、前記指定手段により指定された試験位置を設定し、当該試験位置が前記不適合領域に含まれる場合、当該試験位置を不適合領域NRに含まれない位置に修正する。
したがって、本実施形態に係る硬さ試験機1によれば、一度設定された試験位置が不適合領域NRに含まれる場合に、ユーザーが当該試験位置を不適合領域NRに含まれない位置に設定し直す手間を省くことができるので、試験位置の設定を簡便にすることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る硬さ試験機1によれば、ユーザー操作に基づいて試験位置の配列に関する試験パターンの指定がなされた場合、当該試験パターンに基づいて複数の試験位置を指定し、指定された各試験位置のうちの不適合領域NRに含まれる試験位置を対象として、当該試験位置を不適合領域NRに含まれない位置に修正するので、例えば、ユーザー所望の試験パターンでの多点測定を行う際に不適合領域NRに含まれる試験位置がある場合には、当該試験位置を適宜修正することができるので、当該多点測定を円滑に行うことができる。
【0050】
また、本実施形態に係る硬さ試験機1によれば、不適合領域NRに含まれる試験位置を当該不適合領域NRに含まれない位置に修正する場合、試料Sの端面Eを基準として当該基準から当該試験位置までの距離と同一の距離となる位置に修正するので、次善の位置での測定を行うことができる。
【0051】
また、本実施形態に係る硬さ試験機1によれば、前記画像取得手段により取得された試料Sの表面の画像を所定の閾値に基づき二値化する二値化手段(制御部100)を備え、前記特定手段は、前記二値化手段により二値化された画像データに基づいて、前記所定の閾値以下となる領域を不適合領域NRとして特定するので、不適合領域NRの特定を容易に行うことができる。
【0052】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態では、図5(a)及び図5(b)に示すように、制御部100によって設定された各試験位置P1~P5のうちの不適合領域NRに含まれる試験位置P4を対象として、当該試験位置P4を不適合領域NRに含まれない位置P6に修正するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、上記のように各試験位置P1~P5のうちの試験位置P4が不適合領域NRに含まれる場合、各試験位置P1~P5を不適合領域NRに含まれない位置であり、且つ、当初指定がなされた試験パターンを維持可能な位置に修正するようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、試料Sの端面Eから所定の距離だけ離れた点を始点として、そこから端面Eに直交する方向に所定のピッチで5点の測定を試験パターンに基づいて試験位置を設定するようにしたため、不適合領域NRに含まれる試験位置を当該不適合領域NRに含まれない位置に修正するときは、当該試料Sの端面Eを基準として当該基準から当該試験位置までの距離と同一の距離となる位置に修正するようにしたが、例えば、歯車の軸部について、軸心を基準として複数の試験位置を設定する場合において、不適合領域NRに含まれる試験位置を当該不適合領域NRに含まれない位置に修正するときは、当該歯車の軸心を基準として当該基準から当該試験位置までの距離と同一の距離となる位置に修正する。また、歯車の歯部について、軸心を基準として複数の試験位置を設定する場合において、不適合領域NRに含まれる試験位置を当該不適合領域NRに含まれない位置に修正するときは、当該歯部において、歯車の軸心を基準として当該基準から当該試験位置までの距離と同一の距離となる位置に修正する。また、例えば、二つの母材を溶接した際の溶接部(境界線)を基準として複数の試験位置を設定する場合において、不適合領域NRに含まれる試験位置を当該不適合領域NRに含まれない位置に修正するときは、当該溶接部(境界線)を基準として当該基準から当該試験位置までの距離と同一の距離となる位置に修正する。
【0055】
また、上記実施形態では、ユーザーの操作により指定された試験パターンに基づいて試験位置P1~P5を一旦設定し、不適合領域NRに含まれる試験位置P4を試験位置P6に自動修正するようにしたが、例えば、ユーザーの操作を介することなく試験位置を自動的に設定する場合には、当初より不適合領域NRに含まれない領域において試験位置を設定するようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、試料Sの表面の画像を所定の閾値に基づき二値化することによって不適合領域NRを特定するようにしたが、黒鉛等の異物が含まれている不適合領域NRを特定可能であれば、上述の特定方法に限定されるものではない。例えば、異物が含まれている領域を撮影したテンプレート画像を予め蓄積しておき、測定対象となる試料Sの表面画像と当該テンプレート画像とのマッチング処理を行うことによって不適合領域NRを特定するようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、多点測定処理(図4参照)において不適合領域NRに含まれる試験位置があると判定された場合、制御部100が当該試験位置を自動的に修正するようにしたが、かかる場合にユーザーが手動で当該試験位置を修正することができるようにしてもよい。具体的には、不適合領域NRに含まれる試験位置があると判定された場合、制御部100は、例えば、表示部16を介して、不適合領域NRに含まれる試験位置がある旨の報知を行う。その後、操作部15を介して、手動で試験位置を修正することができる手動修正モードへの移行指示の入力がなされた場合、制御部100は、図6に示すように、試料Sの表面画像IM2に格子(グリッド)Lを重ね合わせて表示部16に表示させる。そして、操作部15を介して、上記の格子Lの交点を指定する入力を行うことにより、当該指定がなされた交点へ試験位置Pを修正できるようにする。なお、制御部100が試験位置を自動的に修正した後、上述の手動修正モードでの試験位置の修正を行うことができるようにしてもよい。また、例えば、試料Sが円筒状のワークである場合、格子Lの代わりに同心円を重ね合わせて表示部16に表示させる。そして、操作部15を介して、上記の同心円とユーザー所望の角度の法線との交点を指定する入力を行うことにより、当該指定がなされた交点へ試験位置を修正できるようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、硬さ試験機1として、圧子5の平面形状が矩形状に形成されたビッカース硬さ試験機を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。すなわち、試料Sの表面に圧子5により所定の試験力を負荷してくぼみを形成させ、当該くぼみの寸法を計測することにより試料Sの硬さを測定するものであれば、いかなる硬さ試験機であってもよい。例えば、ダイヤモンド四角錘による圧子を備え、ビッカース硬さ試験機同様に圧子の平面形状が矩形状に形成されるヌープ硬さ試験機であってもよいし、圧子の形状が球形状に形成されたブリネル硬さ試験機であってもよい。
【0059】
また、本出願に示す各態様は、方法、プログラムなどとしても把握することができる。方法やプログラムのカテゴリについては、装置のカテゴリで示した「手段」を、例えば、「工程」や「ステップ」のように適宜読み替えるものとする。また、処理やステップの順序は、本出願に直接明記のものに限定されず、順序を変更したり、一部の処理をまとめて若しくは随時一部分ずつ実行するよう変更したりすることができる。
【0060】
その他、硬さ試験機を構成する各装置の細部構成及び各装置の細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 硬さ試験機
2 試験機本体
3 荷重アーム
4 アーム作動部
5 圧子
6 圧子軸
7 対物レンズ
8 ターレット
9 試料台
10 撮像部(撮像手段)
15 操作部
16 表示部
20 圧子軸変位検出部
100 制御部(画像取得手段、特定手段、試験位置設定手段、指定手段、二値化手段)
S 試料
図1
図2
図3
図4
図5
図6