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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】即席フライ麺
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/113 20160101AFI20230912BHJP
【FI】
A23L7/113
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021201435
(22)【出願日】2021-12-13
(62)【分割の表示】P 2020137348の分割
【原出願日】2015-09-11
(65)【公開番号】P2022022442
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北野 翔
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】金井 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】狹間 英信
(72)【発明者】
【氏名】田中 充
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-274874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L7
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質構造を有する即席フライ麺であって、
前記即席フライ麺の麺線の長手方向と直交する方向で切断した麺線断面に存在する単位面積1mmあたりの100μm以上の細孔数は平均で74個以上193個以下であり、
前記麺線断面に対する前記細孔の合計面積の割合であるところの空隙率は平均で9.6%以上17.2%以下であり、
前記麺線断面対する前記細孔の平均面積の割合であるところの平均空隙率は平均で0.04%以上0.11%以下であり、
前記麺線断面の面積に対する麺線断面内の最大細孔の面積の割合であるところの最大空隙率は平均0.6%以上1.8%以下であり、
前記麺線の油脂含量は11.4%以上14.8%以下である、
ことを特徴とする即席フライ麺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席フライ麺に関する。
【背景技術】
【0002】
即席麺は、フライ(油揚げ)麺とノンフライ麺に大別することができる。フライ麺は、生麺をα化処理した後、150℃前後の油でフライ処理し、乾燥させることで作製される。一方、ノンフライ麺は、生麺をα化した後、油で揚げるフライ処理以外の方法により乾燥させることで作製される。ノンフライ麺の製造方法には幾つかの方法があり、70~100℃程度で風速4m/s以下程度の熱風を生麺に当て、30分から90分程度乾燥させる熱風乾燥方法が一般的である(例えば、特許文献1)。
【0003】
フライ麺は、フライ処理の過程で麺内部の水分が蒸発し、多孔質構造となるため、復元性がよく、フライ麺独特の油によるスナック的な風味が特徴であり、現在、袋麺やカップ麺として多くのフライ麺が販売されている。しかしながら、フライ麺は、油を多く含み、ノンフライ麺に比べ、高カロリーである。そこで油脂含量が低減されたフライ麺の開発が試みられている。
【0004】
特許文献2では、油脂含量が低減され、かん水焼けのないフライ麺の製造方法として、炭酸ナトリウム及び/または炭酸カリウムを麺原料粉に対して0.3~0.6重量%と酸性物質とを混練し、pHが7.5~8.5のドウを調整した後、ドウを押し出すか、ドウを圧延した後に切出して生麺線を得た後、蒸煮し、着味後、フライ乾燥する技術が記載されている。この方法は、フライ麺の油脂含量を低減する優れた方法であるが、かん水及びpH調整のための酸性物質を大量に入れる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3950603号公報
【文献】特許第5039716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、細孔数が少なく、空隙率が小さいために、油脂含量が低いという特徴を有する即席フライ麺を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、即席フライ麺の麺線の多孔質構造と油脂含量の関係を鋭意研究した結果、ロール圧延によって麺帯内部に層状のグルテン網目構造が形成されること、層状のグルテン網目構造の形成を抑制すると、麺線の多孔質構造の細孔数が減少し、油脂含量が低下するとの知見を見出し、油脂含量の低い即席フライ麺を発明するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は多孔質構造を有する即席フライ麺であり、麺線の長手方向と直交する方向で切断した麺線断面に存在する単位面積1mmあたりの100μm以上の細孔数は250個以下であり、より好ましくは150個以下である。
【0009】
上記麺線断面に存在する100μm以上の細孔の合計面積は、麺線断面の面積の25%以下であり、より好ましくは19%以下である(空隙率)。
【0010】
上記麺線断面に存在する100μm以上の細孔の平均面積は、麺線断面の面積の0.14%以下である (平均空隙率)。
【0011】
上記麺線の油脂含量は15%以下であり、より好ましくは13%以下である。
【0012】
本発明に係るフライ麺は、上記のような多孔質構造を備えているため、麺線の表面に火脹れを生じさせることなく油脂含量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例1-1(常圧ミキサー、通常複合、圧延回数1回)で作製した即席フライ麺の麺線断面の電子顕微鏡写真である。
図2図2は、実施例1-2(常圧ミキサー、通常複合、圧延回数2回)で作製した即席フライ麺の麺線断面の電子顕微鏡写真である。
図3図3は、実施例1-3(真空ミキサー、通常複合、圧延回数1回)で作製した即席フライ麺の麺線断面の電子顕微鏡写真である。
図4図4は、実施例1-4(真空ミキサー、通常複合、圧延回数2回)で作製した即席フライ麺の麺線断面の電子顕微鏡写真である。
図5図5は、実施例2-1(常圧ミキサー、押し出し麺帯、圧延回数1回)で作製した即席フライ麺の麺線断面の電子顕微鏡写真である。
図6図6は、実施例2-2(常圧ミキサー、押し出し麺帯、圧延回数2回)で作製した即席フライ麺の麺線断面の電子顕微鏡写真である。
図7図7は、実施例2-3(真空ミキサー、押し出し麺帯、圧延回数1回)で作製した即席フライ麺の麺線断面の電子顕微鏡写真である。
図8図8は、実施例2-4(真空ミキサー、押し出し麺帯、圧延回数2回)で作製した即席フライ麺の麺線断面の電子顕微鏡写真である。
図9図9は、実施例3-1(常圧ミキサー、押し出し小塊、圧延回数1回)で作製した即席フライ麺の麺線断面の電子顕微鏡写真である。
図10図10は、実施例3-2(常圧ミキサー、押し出し小塊、圧延回数2回)で作製した即席フライ麺の麺線断面の電子顕微鏡写真である。
図11図11は、実施例3-3(真空ミキサー、押し出し小塊、圧延回数1回)で作製した即席フライ麺の麺線断面の電子顕微鏡写真である。
図12図12は、実施例3-4(真空ミキサー、押し出し小塊、圧延回数2回)で作製した即席フライ麺の麺線断面の電子顕微鏡写真である。
図13図13は、比較例1(常圧ミキサー、通常複合、圧延回数6回)で作製した即席フライ麺の麺線断面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明における即席フライ麺の種類は、特に限定されず、通常、当技術分野で知られるいかなるものであってもよい。例えば、うどん、そば、中華麺、パスタ等が挙げられる。
【0015】
本発明の即席フライ麺は、例えば、常圧ミキサーまたは真空ミキサーによってドウを生成した後、(1)通常整形ロールによりドウを粗麺帯とし、複合ロールを通して麺帯を作製するか(通常複合)、(2)エクストルーダー等の押出し機を用いて、常圧下で押し出すことにより麺帯を作製するか(押し出し麺帯)、(3)エクストルーダー等の押出し機を用いて、常圧下で小塊を押し出した後、整形ロールにより麺帯を作製し(押し出し小塊)、次いで、上記(1)~(3)の各手法によって作製した麺帯を、圧延ロールを用いて所定の麺厚まで圧延し、圧延した麺帯を切刃ロールにより切断して生麺線とし、生麺線についてα化処理等を施した後、フライ乾燥することによって作製される。層状のグルテン網目構造の形成を抑制するには、例えば、圧延ロールによる圧延回数を通常の3回~8回よりも少ない1回または2回とすることが好ましい。なお、本発明のフライ麺の製造方法は上記方法に限定されるものではなく、麺線内の細孔の発生を抑制する製造方法であれば、いかなる方法であっても構わない。
【0016】
次に、本発明の即席フライ麺の麺線断面構造について説明する。
【0017】
図1図12は、本発明の即席フライ麺の麺線の長手方向と直交する方向で切断した麺線断面の電子顕微鏡写真であり、図13は、通常複合によって麺帯を作製した後、ロール圧延を6回行う従来の製法により作製したフライ麺の麺線断面の電子顕微鏡写真である。断面構造の観察は、麺線をエーテル脱脂処理した上で、日本電子株式会社製の電子顕微鏡(JSM-6380LA、60倍率)により行った。
【0018】
従来の製法により作製された即席フライ麺では、麺帯の状態でロール圧延が多数(例えば6回)行われるため、麺線内部のグルテン網目構造が引き伸ばされて層状となる。そのため、フライ時における麺線内部の水分の発泡が層状のグルテン網目構造によって物理的に抑圧され、図13に示すように麺線内部に多数の微細な細孔が形成されることになる。このようなスポンジ状の多孔質構造は、フライ時に油分を多く吸収するため、即席フライ麺全体の油脂含量は高くなる。
【0019】
一方、本発明の即席フライ麺は、図1図12に示すように、従来の製法により作製された即席フライ麺(図13)と比べて、麺線長手方向と直交する方向で切断した麺線断面に存在する細孔数は少なく、空隙率(麺線断面の面積に対する細孔の合計面積の割合)も小さいという特徴を有している。これは、本発明の即席フライ麺では層状のグルテン網目構造が形成されにくく、フライ時に水分が自由に発泡することができるためと考えられる。
【0020】
本発明の即席フライ麺の麺線断面に存在する単位面積1mmあたりの100μm以上の細孔数は250個以下であり、より好ましくは150個以下である。空隙率は25%以下であり、より好ましくは19%以下である。平均空隙率(麺線断面の面積に対する100μm以上の細孔の平均面積の割合)は0.14%以下である。
【0021】
本発明の即席フライ麺は、上記のような多孔質構造を備えているため、フライ時に細孔内部に留まる油分が少なくなる。麺線断面に存在する単位面積1mmあたりの100μm以上の細孔数を250個以下とした場合、油脂含量を15%以下とすることが可能であり、単位面積1mmあたりの100μm以上の細孔数を150個以下とした場合、油脂含量を13%以下とすることが可能である。
【0022】
以下に、本発明の即席フライ麺を製造する方法の一例を示す。ただし、本発明の即席フライ麺の製造方法は、以下の記載の方法に限定されるものではない。
1.原料配合
本発明に係る即席フライ麺には、通常の即席麺の原料が使用できる。すなわち、原料粉としては、小麦粉、そば粉、及び米粉等の穀粉、並びに馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ等の各種澱粉及びこれらの加工澱粉を単独で使用しても、または混合して使用してもよい。
【0023】
2.ドウ作製
本発明に係るドウの作製方法は、常法に従って行えばよい。すなわち、常圧ミキサー(バッチミキサー、フロージェットミキサー)、真空ミキサー等で、麺原料粉と練り水とが均一に混ざるように混捏すればよく、そぼろ状のドウを作製すればよい。
【0024】
3.麺帯作製
作製したドウを用いて麺帯を作製する。本発明に係る麺帯は、(1)通常整形ロールにより、ドウを粗麺帯とした後、複合ロールを通して作製するか(通常複合)、(2)エクストルーダー等の押出し機を用いて、常圧下で押し出すことにより作製するか(押し出し麺帯)、(3)エクストルーダー等の押出し機を用いて、常圧下で小塊を押し出した後、整形ロールにより作製する(押し出し小塊)。
【0025】
4.圧延、切出し
次いで作製した麺帯を、圧延ロールを用いて所定の麺厚まで圧延する。圧延回数は、麺内に層状のグルテンネットワークが形成されるのを抑制するため、通常の3回~8回よりも少ない1回、または2回とすることが好ましい。
【0026】
圧延回数を2回とする場合、圧延度合については、特に限定されるものではないが、1回目の圧延で麺帯を一度に9割以上圧延した後、二回目以降の圧延で所望の麺厚まで微調整してもよく、圧延回数に応じて圧延度合を均等に分けて、徐々に所望の麺厚としてもよい。所望の麺厚にした麺帯を切刃ロールにより切断し、生麺線とする。
【0027】
5.α化工程
次いで得られた生麺線を、常法により蒸煮及び/又はボイルによってα化させる。蒸煮の方法としては、飽和水蒸気による加熱だけでなく、過熱水蒸気により加熱することもできる。
【0028】
4.着味工程
本発明においては、このようにしてα化した麺線にスプレーや浸漬等により調味液(着液)を付着させ味付けを行うこともできる。着味工程は必ずしも行う必要はなく、省略しても構わない。
【0029】
5.カット及び投入
次いで、麺線を1食分20~50cmにカットする。カットした麺線は、フライリテーナと呼ばれる蓋と容器からなる金属製のフライ乾燥用器具に投入する。
【0030】
6.フライ乾燥工程
麺を封入したフライリテーナをフライヤーと呼ばれる130~160℃前後に加温した食用油を入れた金属製の槽内を移動させ麺を油中に浸漬させることにより、麺中の水分を蒸発させ麺を乾燥する。使用する食用油としてはパーム油やラードなどがあげられる。フライ乾燥工程後の水分としては1~8重量%となるように乾燥する。
【0031】
7.冷却工程
フライ乾燥後、蓋を外し、容器から麺塊を取り出す。取り出した麺塊は所定時間冷却し、即席フライ麺を得る。
【0032】
8.その他工程
冷却した即席フライ麺は、包装工程に移りスープや具材とともにカップまたは袋に包装され即席フライ麺製品として販売される。
【0033】
以上のように、細孔数および空隙率を一定の範囲内に抑制することで、油脂含量の低い即席フライ麺を提供することが可能となる。
【実施例
【0034】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
(実験1)
<通常の複合麺帯による検討>
(実施例1-1)
小麦粉900g、澱粉100gを粉体混合し、これに食塩15g、かん水2.3g、重合リン酸塩0.4gを溶解した練り水340mlを加え、常圧の2軸ミキサーで3分混捏し、そぼろ状のドウを作製した。この時のドウの水分は35.0%であった。
【0035】
作製したドウを通常の整形ロールを用いて常圧下で、粗麺帯を作製し、粗麺帯2枚を再び整形ロールを用いて複合し、麺帯を作製した。このときの麺帯厚は、8mmであった。
【0036】
作製した麺帯を6寸ロールにて一回で8mmから1mm厚まで圧延した(圧延回数1回)。また、圧延速度は0.85m/分とし、圧延した麺帯を20番角の切刃ロールを用いて麺線とした。
【0037】
切り出された麺線は直ちにわたって飽和水蒸気を240kg/hとなるように供給した蒸気庫内で2分間蒸煮した。
【0038】
蒸煮した麺線を1L当り食塩90g、グルタミン酸13.5g、醤油10ml、畜肉エキス30gを溶解した着味液に5秒浸漬した後、引き延ばして30cmとなるように麺線をカットした。
【0039】
カットした麺線を天面径が87mm、容器底面の口径が72.5mm、高さが60mmのカップ状で容器底面に穴径2.9mmの小孔が多数空いた金属製の容器に着味した麺線を重量が100gとなるように投入し、同じく穴径2.9mmの小孔が多数空いた金属製の蓋をして、150℃に加温したフライヤーに浸漬してフライ乾燥した。
【0040】
(実施例1-2)
圧延回数を2回とし、一回目の圧延で8mmの麺帯を1.5mmとした後、二回目の圧延で1mmとする以外は、実施例1-1の方法と同様にフライ麺サンプルを作製した。
(実施例1-3)
常圧の2軸ミキサーに替えて、真空ミキサーで15分混捏する以外は、実施例1-1の方法と同様にフライ麺サンプルを作製した。
(実施例1-4)
常圧の2軸ミキサーに替えて、真空ミキサーで15分混捏し、圧延回数を2回とし、一回目の圧延で8mmの麺帯を1.5mmとした後、二回目の圧延で1mmとする以外は、実施例1-1の方法と同様にフライ麺サンプルを作製した。
【0041】
(比較例1)
圧延回数を6回とし、一回目の圧延で8mmの麺帯を4mmとし、二回目の圧延で3mmとし、三回目の圧延で2.5mmとし、四回目の圧延で2mmとし、五回目の圧延で1.5mmとし、六回目の圧延で1mmとし、圧延ロールによる圧延速度を18.5m/分とする以外は、実施例1-1の方法と同様にフライ麺サンプルを作製した。
【0042】
(実験2)
<押し出し機による麺帯作製>
(実施例2-1)
小麦粉900g、澱粉100gを粉体混合し、これに食塩15g、かん水2.3g、重合リン酸塩0.4gを溶解した練り水340mlを加え、常圧の2軸ミキサーで3分混捏し、そぼろ状のドウを作製した。
【0043】
作製したドウを、押し出し機を用いて常圧下で押し出し、厚さ8mmの麺帯を作製した。
【0044】
作製した麺帯を6寸ロールにて一回で8mmから1mm厚まで圧延した(圧延回数1回)。圧延速度は0.85m/分とし、圧延した麺帯を20番角の切刃ロールを用いて麺線とした。
【0045】
以降の製造方法は、実施例1-1と同様に行った。
【0046】
(実施例2-2)
圧延回数を2回とし、一回目の圧延で8mmの麺帯を1.5mmとした後、二回目の圧延で1mmとする以外は、実施例2-1の方法と同様にフライ麺サンプルを作製した。
(実施例2-3)
常圧の2軸ミキサーに替えて、真空ミキサーで15分混捏する以外は、実施例2-1の方法と同様にフライ麺サンプルを作製した。
(実施例2-4)
常圧の2軸ミキサーに替えて、真空ミキサーで15分混捏し、圧延回数を2回とし、一回目の圧延で8mmの麺帯を1.5mmとした後、二回目の圧延で1mmとする以外は、実施例2-1の方法と同様にフライ麺サンプルを作製した。
【0047】
(実験3)
<押し出し機により小塊を作製した後、整形ロールにて麺帯作製>
(実施例3-1)
小麦粉900g、澱粉100gを粉体混合し、これに食塩15g、かん水2.3g、重合リン酸塩0.4gを溶解した練り水340mlを加え、常圧の2軸ミキサーで3分混捏し、そぼろ状のドウを作製した。
【0048】
作製したドウを、押し出し機を用いて常圧下で押し出し、直径20mm長さ20mmの小塊を作製した後、整形ロールにて粗麺帯を作製し、粗麺帯2枚を再び整形ロールを用いて複合し、麺帯を作製した。このときの麺帯厚は、8mmであった。
【0049】
作製した麺帯を6寸ロールにて一回で8mmから1mm厚まで圧延した(圧延回数1回)。圧延速度は0.85m/分とし、圧延した麺帯を20番角の切刃ロールを用いて麺線とした。
【0050】
以降の製造方法は、実施例1-1と同様に行った。
【0051】
(実施例3-2)
圧延回数を2回とし、一回目の圧延で8mmの麺帯を1.5mmとした後、二回目の圧延で1mmとする以外は、実施例3-1の方法と同様にフライ麺サンプルを作製した。
(実施例3-3)
常圧の2軸ミキサーに替えて、真空ミキサーで15分混捏する以外は、実施例3-1の方法と同様にフライ麺サンプルを作製した。
(実施例3-4)
常圧の2軸ミキサーに替えて、真空ミキサーで15分混捏し、圧延回数を2回とし、一回目の圧延で8mmの麺帯を1.5mmとした後、二回目の圧延で1mmとする以外は、実施例3-1の方法と同様にフライ麺サンプルを作製した。
【0052】
油脂含量、および多孔質構造の特性評価
実験1~3により作製された即席フライ麺の麺線サンプルについて、油脂含量、および火脹れの有無について評価を行うとともに、エーテル脱脂処理を行った上で麺線の断面構造を電子顕微鏡により観察した。その結果を下記の表1、2に示す。油脂含量は、フライ乾燥したフライ麺を破砕し均一化した後、ソックスレー抽出方法によって分析した。断面構造の観察は、日本電子株式会社製の電子顕微鏡(JSM-6380LA、60倍率)により行い、撮影したデジタル画像をMedia Cybernetics 社製のImage-Pro Premier 9.1により画像解析した。サンプル数はN=5とした。
【0053】
画像解析では、デジタル画像から目視によっても認識可能な面積が100μm以上の細孔について、麺線の断面に存在する細孔の数、単位面積1mmあたりの細孔の数、空隙率(麺線断面の面積に対する細孔の合計面積の割合)(%)、平均空隙率(麺線断面の面積に対する細孔の平均面積の割合)(%)、最大空隙率(麺線断面の面積に対する麺線断面内の最大細孔の面積の割合)(%)を求めた。
【0054】
表1、2に示すように、比較例1の即席フライ麺の麺線断面に存在する細孔の数は574個~646個、単位面積1mmあたりの細孔数は282個~332個、空隙率は25.9%~28.8%、平均空隙率は0.04%~0.05%であるのに対して、実施例1-1~3-4の即席フライ麺の麺線断面に存在する細孔の数は101個~403個、単位面積1mmあたりの細孔数は71個~234個、空隙率は7.3%~24.6%、平均空隙率は0.03%~0.14%であった。
【0055】
また、油脂含量が13%以下である、実施例1-1、1-3、2-1、2-3、3-1、3-3、3-4の即席フライ麺の麺線断面に存在する細孔の数は101個~239個、単位面積1mmあたりの細孔数は71個~147個、空隙率は8.6%~18.2%、平均空隙率は0.06%~0.14%であった。
【0056】
比較例1の即席フライ麺では、層状のグルテン網目構造が麺線内部に強固に形成されるため、フライ時における麺線内部の水分の発泡が層状のグルテン網目構造によって抑圧され、麺線内部に多数の微細な細孔が形成されている。一方、実施例1-1~3-4の即席フライ麺では、層状のグルテン網目構造の形成が抑制されるため、麺線断面に存在する細孔数、単位面積1mmあたりの細孔数、および空隙率はいずれも比較例1と比べて小さくなっている。
【0057】
また、実施例1-1、1-3、2-1、2-3、3-1、3-3、3-4の即席フライ麺は、比較例1の即席フライ麺と比べて平均空隙率が大きいことがわかる。これは、実施例1-1、1-3、2-1、2-3、3-1、3-3、3-4の即席フライ麺は、実施例1-2、1-4、2-2、2-4、3-2の即席フライ麺と比べて層状のグルテン網目構造がさらに形成されにくいため、麺線内部の水分がより自由に発泡し、個々の細孔の平均サイズが大きくなるためと考えられる。一方で、麺線断面に存在する細孔の数、単位面積1mmあたりの細孔数、および空隙率は小さいため、比較例1と比べて油脂含量を4%以上低減することが可能となる。
【0058】
さらに、実施例1-1~3-4の即席フライ麺では、麺線断面に存在する最大細孔の面積は、麺線断面の面積の5%以下であり、麺線の表面に火膨れが生じることはなかった。
【0059】
油脂含量については、比較例1の即席フライ麺は17.2%であるのに対して、実施例1-1~3-4の即席フライ麺は11.4%~14.8%であり、特に、実施例1-1、1-3、2-1、2-3、3-1、3-3、3-4の即席フライ麺は11.4%~13%であった。このように、麺線内部に形成される単位面積あたりの細孔の数、空隙率を小さくすることで、油脂含量の低い即席フライ麺を提供することが可能となる。
【0060】
このように本発明によれば、麺線内部の多孔質構造の単位面積あたりの細孔数、および空隙率を小さくすることで、食感や外観を損なうことなく油脂含量が低減した即席フライ麺が提供することができる。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13