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特許7348294表面及び光学アセンブリをin situで動的に保護する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】表面及び光学アセンブリをin situで動的に保護する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/10 20150101AFI20230912BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230912BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20230912BHJP
   C23C 14/24 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G02B1/10
G03F7/20 502
G03F7/20 521
C23C16/455
C23C14/24 S
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021540240
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 EP2019083764
(87)【国際公開番号】W WO2020143964
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】102019200208.0
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】ビタリー シュクロベール
(72)【発明者】
【氏名】イェーフレイ エアクスメイヤー
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-147204(JP,A)
【文献】特表2007-505220(JP,A)
【文献】特開2005-136393(JP,A)
【文献】特表2009-517852(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017207030(DE,A1)
【文献】米国特許第06466365(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0265572(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0021015(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0281028(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0044802(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0242379(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10
G03F 7/20
C23C 16/455
C23C 14/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FUV/VUV波長域用の光学アセンブリ(1、2、10)の内部(122a、24a、31a)に配置された光学素子(120、140、141、222、4)の表面(6a)を劣化からin situで動的に保護する方法であって、
前記光学素子(120、140、141、222、4)の前記表面(6a)へのフッ素含有保護層の動的堆積のために、少なくとも1つの揮発性のフッ素含有化合物(A、B、M、P)を前記内部(122a、24a、31a)に供給するステップであり、前記フッ素含有保護層(7)を分子層堆積プロセスにより1層ずつ前記表面(6a)に堆積させ、前記揮発性のフッ素含有化合物は、前記内部(122a)にパルス状に供給される分子層堆積プロセス用のフッ素含有反応物(A)を含み、分子層堆積プロセス用のさらに前記フッ素含有反応物(A)と化学構造式が異なる別のフッ素含有反応物(B)を、前記内部(122a)にパルス状に供給し、前記フッ素含有反応物(A)の供給の後に前記フッ素含有反応物(B)を供給することを繰り返すステップ
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記フッ素含有保護層を保護フルオロポリマー層(7)の形態で前記表面(6a)に堆積させる方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記フルオロポリマー層(7)をフッ素化パリレン層の形態で前記表面(6a)に堆積させる方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、フッ素化パリレンモノマー(M)を前記内部(24a)に供給する方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、0.1mbar未満の圧力(p)を前記内部(24a)で発生させる方法。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか1項に記載の方法において、前記保護フルオロポリマー層(7)を前記表面(6a)に直接堆積させる方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法において、前記揮発性のフッ素含有化合物(A、B、M、P)を前記光学アセンブリ(1、2、10)の動作停止中に供給する方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法において、前記揮発性のフッ素含有化合物(A、B、M、P)をFUV/VUV放射線(11、12)での前記光学素子(12、140、141、222、4)の照射中に供給する方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法において、前記フッ素含有保護層(7)の厚さ(D)が1nmを超えるまで前記フッ素含有保護層(7)を堆積させる、又は前記フッ素含有保護層(7)を1nmを超える厚さ(D)に保つ方法。
【請求項10】
FUV/VUV波長域用の光学アセンブリ(例えば、リソグラフィシステム(1)、検査システム(2)、又はビーム源(10))であって、
光学素子(120、140、141、222、4)の表面(6a)が配置される内部(122a、24a、31a)と、該内部(122a、24a、31a)に反応物を供給する少なくとも1つの計量装置(123、26、32)と
を備えた光学アセンブリにおいて、
前記計量装置(123、26、32)は、前記光学素子(120、140、141、222、4)の前記表面(6a)へのフッ素含有保護層の動的堆積のために揮発性のフッ素含有化合物(A、B、M、P)を前記内部(122a、24a、31a)に供給するよう設計され、少なくとも制御可能な弁(124)を含み、前記計量装置(123)は、前記フッ素含有保護層を前記表面(6a)に分子層堆積プロセスにより1層ずつ堆積させるために、前記制御可能な弁(124)を制御することによって、分子層堆積プロセス用の反応物(A)及び前記反応物(A)と化学構造式が異なる反応物(B)の形態の前記揮発性のフッ素含有化合物を前記内部(122a、24a、31a)にパルス状に供給するよう設計され、前記反応物(A)の供給の後に前記反応物(B)を供給することを繰り返すよう設計されることを特徴とする光学アセンブリ。
【請求項11】
請求項10に記載の光学アセンブリにおいて、前記計量装置(123、26、32)は、前記光学素子(120、140、141、222、4)の前記表面(6a)に保護フルオロポリマー層(7)の形態のフッ素含有保護層を動的に堆積させるために揮発性のフッ素含有化合物(A、B、M、P)を前記内部(122a、24a、31a)に供給するよう設計される光学アセンブリ。
【請求項12】
請求項11に記載の光学アセンブリにおいて、前記計量装置(26)は、フッ素化パリレンモノマー(M)を前記内部(24a)に供給するよう設計される光学アセンブリ。
【請求項13】
請求項12に記載の光学アセンブリにおいて、前記計量装置(26)は、フッ素化パリレンダイマー(D)の熱分解によりフッ素化パリレンモノマー(M)を生成するための加熱可能なガス供給源(28)を有する光学アセンブリ。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項に記載の光学アセンブリにおいて、0.1mbar未満の圧力(p)を前記内部(24a)で発生させる真空ポンプ(30)をさらに備えた光学アセンブリ。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか1項に記載の光学アセンブリにおいて、前記光学素子(4)の前記表面(6a)は、フッ化物(例えば、金属フッ化物)でできた基板(5)に形成される光学アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]
本願は、2019年1月10日に出願された独国特許出願第10 2019 200 208.0号の優先権を主張し、当該出願の全開示内容を参照により本願に援用する。
【0002】
本発明は、FUV/VUV波長域用の光学アセンブリの内部に配置された光学素子の表面を劣化からin situで動的に保護する方法に関する。本発明は、FUV/VUV波長域用の光学アセンブリ、特にリソグラフィシステム、検査システム、又はビーム源であって、光学素子の表面が配置される内部と、内部に反応物を供給する少なくとも1つの計量装置とを備えた光学アセンブリにも関する。
【背景技術】
【0003】
特にマイクロリソグラフィ用の、約100nm~約280nmの波長のFUV/VUV波長域で高応力を受ける光学素子では、フッ化物、特に蛍石(CaF)及びフッ化マグネシウム(MgF)が概して基板材料として用いられる。高強度の照射下では、約10パルス後でもCaF材料の表面に最初の損傷が現れる。非特許文献1、2参照。FUV/VUV放射線での照射の結果として、大半の光学素子にフッ素の欠乏が起こり、Ca金属コロイドが形成されるようになり(非特許文献3参照)、これらのコロイド自体が大規模な劣化の核となる。フッ素欠乏は、表面ではさらにより速く進み、表面で放出されたフッ素原子は環境中に排出される。
【0004】
例えば、CaFからなるエキシマレーザのレーザチャンバ窓の外部では、白色の粉体コーティングの形態の劣化が20mJ/cmを超えるレーザエネルギー密度で観察された。これに対して、フッ素含有レーザガスと接触していたレーザチャンバ窓内では損傷がなく、これは、フッ素が粉体コーティングつまり劣化の堆積を回避するのに重要な物質であることを示唆する。
【0005】
表面処理又は洗浄と洗浄された表面のその後のシーリング(sealing:密封)とが、光学素子の耐放射線性を高めるために重要な役割を果たすことが分かった。耐放射線性の向上については多くの解決手段が提案されている。
【0006】
超音波洗浄又はエッチングとそれに続くUV及びプラズマ洗浄(特許文献1、特許文献2、又は対応する特許文献3及び特許文献4)、フッ素含有雰囲気中でスパッタ(特許文献5、特許文献6)、反応性蒸着(特許文献7)、又は後処理(特許文献8、特許文献9、特許文献10)された高密度金属フッ化物層によるシーリング、酸化物Al若しくはSiO又はフッ素添加SiOでの(例えば、レーザチャンバ窓の外部の)光学素子のシーリング(特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18)、又はフッ化物系(fluoridic)接着促進層によるシーリング酸化物層の接着の改善(特許文献19)。
【0007】
これらの手法の全てに、腐食性材料、例えばフッ素含有材料が必要であるか、又は他の不要な副作用、例えば吸収の増加がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2009/017634号
【文献】独国特許出願公開第102005040324号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0046099号明細書
【文献】米国特許第7128984号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0023131号明細書
【文献】特開2003-193231号公報
【文献】特開平11-172421号公報
【文献】米国特許出願公開第2004/0006249号明細書
【文献】特開平11-140617号公報
【文献】特開2004-347860号公報
【文献】独国特許第10350114号明細書
【文献】独国特許出願公開第102006004835号明細書
【文献】欧州特許第1614199号明細書
【文献】米国特許出願公開第2003/0021015号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/04020225号明細書
【文献】米国特許第6466365号明細書
【文献】米国特許第6833949号明細書
【文献】米国特許第6872479号明細書
【文献】米国特許第8399110号明細書
【文献】欧州特許第1522895号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/121932号明細書
【文献】米国特許第6824930号明細書
【文献】米国特許第7300743号明細書
【文献】米国特許第7402377号明細書
【文献】米国特許第7438995号明細書
【文献】欧州特許第0934127号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】Ute Natura, Stephan Rix, Martin Letz, Lutz Parthier, "Study of haze in 193nm high dose irradiated CaF2 crystals", Proc. SPIE 7504, Laser-Induced Damage in Optical Materials: 2009, 75041P (2009).
【文献】S. Rix, U. Natura, F. Loske, M. Letz, C. Felser, and M. Reichling, "Formation of metallic colloids in CaF2 by intense ultraviolet light", Applied Physics Letters 99 (26) 261909 (2011).
【文献】S. Rix, U. Natura, M. Letz, C. Felser, L. Parthier, "A microscopic model for long-term laser damage in calcium fluoride", Proc. SPIE 7504, Laser-Induced Damage in Optical Materials, 75040J (2009).
【文献】M. Eda, Y. Kawaguchi, T. Sasaki, Y. Takebe and O. Yokokoji, "Novel Fluoropolymers for Next Generation Lithographic Material", Reports Res. Lab. Asahi Glass Co., Ltd., 54, 41-48 (2004).
【文献】K. Lee et al., "157 nm Pellicles for Photolithography", J. Am. Chem. Soc. 127, 8320-8327 (2005).
【文献】R. French et al., "Novel hydrofluorocarbon polymers for use as pellicles in 157 nm semiconductor photolithography", Journal of Fluorine Chemistry 122 63-80 (2003).
【文献】P. Sundberg and M. Karppinen "Organic and inorganic-organic thin film structures by molecular Iayer deposition", Beilstein J. Nanotechnol. 5, 1104-1136 (2014).
【文献】S.M. George, B. Yoon, and A. Dameron, "Surface Chemistry for Molecular Layer Deposition of Organic and Hybrid Organic-Inorganic Polymers", Accounts of Chemical Research 42 (4), 498-508 (2009).
【文献】Chow, S. W., Loeb, W. E. and White, C. E., "Poly (α, α, α', α'-tetrafluoro-p-xylylene)", Journal of Applied Polymer Science 13 (9) 2325-2332 (1969).
【文献】Gorham, W. F., "A New, General Synthetic Method for the Preparation of Linear Poly-p-xylylenes", Journal of Polymer Science Part A-1: Polymer Chemistry, 4 (12) 3027-3039 (1966).
【文献】https://www.plasma/com/cs/plasmatechnik/parylene-beta-version/technologie/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、表面をin situで動的に保護する方法と、このような動的保護を可能にする光学アセンブリとを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、最初に明記したタイプの方法であって、光学素子の表面上へのフッ素含有保護層、特にフルオロポリマー層の動的堆積のために、少なくとも1つのガス状又は揮発性のフッ素化合物又はフッ素含有化合物を内部に供給するステップを含む方法により達成される。
【0012】
本発明者らの所見では、フッ素含有保護層又はフッ素含有コーティング、特に保護フルオロポリマー層が、光学素子の表面に関して保護作用を有するが、光学素子にFUV/VUV放射線が照射されるとフッ素含有保護層の材料が徐々に蒸発するか又は分離するので、この保護作用は持続しない。
【0013】
したがって、本発明により提案されるのは、in situで、すなわちFUV/VUV波長域用の光学アセンブリに設置した状態で、フッ素含有保護層を光学素子に(動的に)堆積させることである。このように、保護層は再生され続け、光学アセンブリの動作中の保護層の事実上完全な蒸発及びその保護作用の消失が防止される。保護層は、光学素子に対する保護層の熱的影響の可能性をなくすために、FUV/VUV放射線に対して最小限の吸収度を有するべきである。保護層の厚さが多きすぎる場合も、概して好ましくない。
【0014】
保護層の特定の厚さ又は特定の厚さ間隔で、保護層の堆積とFUV/VUV放射線での保護層の照射による保護層の蒸発との間に安定平衡が成り立つので、表面の動的保護が達成されるのが有利である。フッ素含有保護層の厚さは、ミラーをイオンでのエッチングから保護するためにミラーに動的保護層を設ける方法及び装置を開示している特許文献20に記載のものと同様に任意に調整することができる。
【0015】
一変形形態において、フッ素含有保護層は、分子層堆積プロセスにより表面層に1層ずつ堆積される。動的保護には、フッ素含有保護層の層厚は数原子又は分子層という小ささで済み、光学アセンブリの動作中に再生され続ける。分子層堆積は、例えば非特許文献7、8又は特許文献21に記載のように表面上の超薄(フルオロ)ポリマー層の作製を可能にし、上記文献それぞれの全体を参照により本願に援用する。
【0016】
分子層堆積の方法は、原子層堆積と同様であり、周期的に行われる2つ以上の自己制御的(self-limiting)表面反応により堆積が行われる。表面反応が、自己制御的反応で反応物の個々の原子ではなく分子フラグメントを堆積させる場合、これを分子層堆積と称する。非特許文献8参照。
【0017】
発展形態において、フッ素含有ガスは、内部にパルス状に供給される分子層堆積プロセス用のフッ素含有反応物を含む。分子層堆積プロセスの第1表面反応ステップにおいて、フッ素含有反応物は、表面又は第2反応物(下記参照)に堆積し、それと自己制御的に反応することができる。後続のパージ又は排気ステップにおいて未反応の反応ガス及び反応生成物が内部から除去された後に、第1反応ステップのために表面を再活性化するためにさらに別のプロセスステップが続き得る。第2プロセスステップは、さらに別の反応物の自己制御的化学反応であり得るが、第1反応物の自己制御的反応のために表面を再活性化するために、別のプロセスステップ、例えばプラズマ処理を行うことも可能である。第2プロセスステップの後に、内部をパージするためにさらに別のパージ又は排気ステップが続く。これら4つの、又は場合によってはより多くのプロセスステップは、所望の層厚の保護層を堆積させるために(反応)サイクルを繰り返して、概して周期的に連続して実行される。既に上述したように、適切に選択された反応条件下での層成長は自己制御的であり、すなわち、各反応サイクルで堆積する層材料の量は一定である。
【0018】
さらに別の発展形態において、内部には、分子層堆積プロセス用のさらに別の反応生成物がパルス状に供給される。このさらに別の(ガス状)反応物も同様にフッ素を含有するが、これは必ずしも必要ではない。分子層堆積プロセスでフルオロポリマーを堆積させる場合、反応物及び上記さらに別の反応物は、例えば、FUV/VUV波長域に対して吸収度が低い耐放射線性のフッ素化(fluorinated)又は過フッ素化(perfluorinated)ポリマーの分子成分であり得る。第1及び第2反応物は、例えば、表面に堆積されるコポリマーのモノマー又はオリゴマーを形成し得る。
【0019】
フッ素含有保護層に適した材料は、特に、157nm又は193nmの範囲の波長のリソグラフィ用途でリソグラフィマスクを保護するペリクルとして用いられるフッ素化又は過フッ素化ポリマーである。非特許文献4~6、特許文献22、特許文献23、特許文献24、又は特許文献25を参照されたく、全ての上記文献の全体を参照により本願に援用する。
【0020】
代替的な変形形態において、フルオロポリマー層は、フッ素化パリレン層の形態で表面に堆積する。(フッ素化)パリレンは、(フッ素化)ポリ(p-キシリレン)の形態の有機ポリマーである。パリレン層又はパリレンは、パラシクロファン又はジ-p-キシリレンの形態のパリレンダイマーを蒸発又は昇華させ、それを熱分解によりモノマー(キノジメタン又はp-キシリレン)に分割し、これをパリレンポリマーの形態で比較的低温の表面に堆積させることにより通常は生成される。非特許文献9、10及び非特許文献11参照。フッ素化パリレンは、例えば、パリレンF-VT4及び/又はパリレンF-AT4とすることができ、その化学構造式は、例えば上記リンクを用いて呼び出すことができる。
【0021】
発展形態において、内部に(ガス状)フッ素化パリレンモノマーが供給される。この場合、600℃を超える温度で通常は実行されるダイマーの熱分解を内部外で、例えばこの目的で加熱可能なガス供給又は熱分解室で行うことができるので、内部へのパリレンモノマーの供給は好ましいことが分かった。設けられる加熱デバイスは、例えば、ガス供給源の抵抗ヒータであり得る。光学素子の表面は通常は比較的低温、例えば室温を有するので、内部に供給されたパリレンモノマーはここに堆積する。内部の他のコンポーネント、例えばチャンバ壁、センサ、ホルダ等へのパリレン層の堆積を防止するために、これらのコンポーネントが任意に加熱され得る。
【0022】
パリレンモノマーの重合反応を助けるために、特許文献26に記載のようにパルスプラズマを用いることが可能であり、上記文献の全体を参照により本願に援用する。保護パリレン層の堆積及びプラズマ処理は、同時に又は連続的に行うことができる。プラズマ処理のために、プラズマ源を内部に取り付けることができる。(パルス状の)FUV/VUV放射線を用いて、重合反応を助けることも可能である。
【0023】
特に保護パリレン層を施すために、内部の圧力が比較的低く、約0.1mbar未満であれば好ましい。このように、汚染物質が表面に堆積するリスクを減らすことが可能である。
【0024】
さらに別の代替的な変形形態において、保護フルオロポリマー層は、表面に直接堆積する。DuPont製のテフロンAF等の非晶質フルオロポリマーの保護層は、表面に関して良好な保護作用を有するが、特に例えば約157nmの波長を有する放射線の場合に比較的速やかに蒸発又は除去されることが分かった。フルオロポリマーを気相から直接堆積させる場合、フルオロポリマーの化学反応は起こらず、その代わりに気相から表面に直接堆積する。ポリテトラフルオロエチレンを含有する他のフルオロポリマーも、通常は表面に関して良好な保護作用を有する。
【0025】
一変形形態において、ガス状又は揮発性のフッ素含有化合物は、光学アセンブリの動作停止中に供給される。特に、堆積プロセス全体を光学アセンブリの動作停止中に行うことができる。このように、光学アセンブリの動作中に存在するFUV/VUV放射線とフッ素含有堆積物又は分子層堆積プロセス用の反応物(単数又は複数)とのいかなる破壊的な相互作用も回避することが可能である。動作停止中に、光学アセンブリを用いて検査中の物体(例えば、マスク又はウェーハ)又は光学アセンブリを用いて露光中の物体(例えば、ウェーハ)の輸送又は交換を行うことが例えば可能である。
【0026】
代替的な変形形態において、揮発性のフッ素含有化合物の供給は、少なくともFUV/VUV放射線での光学素子の照射中に実行される。この場合、保護層の堆積は、光学アセンブリの動作中に(場合によってはさらに動作停止中に)行われる。この場合、光学アセンブリ内にいずれにせよ存在するFUV/VUV放射線を、保護層の堆積中に起こる反応の活性化に用いることができる。
【0027】
さらに別の変形形態において、フッ素含有保護層は1nmを超える厚さに達するまで堆積されるか、又はフッ素含有保護層は1nmを超える厚さに保たれる。既に上述したように、フッ素含有保護層は、光学アセンブリの動作停止中にのみ堆積させることができる。予め実行された測定を用いて、例えば分子層堆積プロセスで堆積速度を選択又は調整して、各動作停止後にフッ素含有保護層の厚さが約1nmを超えるようにすることが可能である。
【0028】
分子層堆積プロセスが光学アセンブリの動作中に少なくとも部分的に行われる場合、保護層の厚さが上記値を永久に下回らない動的平衡を成り立たせるように、堆積速度(application rate)は同様に調整するか又は蒸発による保護層の除去速度に適合させることができる。フッ素含有保護層の蒸発速度は、FUV/VUV放射線の強度に応じて変わり、フッ素含有保護層の堆積速度と蒸発速度との間の動的平衡を適切に調整するために同様に予め測定することがでる。
【0029】
本発明のさらに別の態様は、最初に明記したタイプのFUV/VUV波長域用の光学アセンブリであって、揮発性のフッ素含有化合物を内部に供給する計量装置が、光学素子の表面にフッ素含有保護層を動的に堆積させるよう設計される光学アセンブリに関する。内部へのガス状のフッ素含有化合物(「前駆物質」とも称する)の供給のために、光学アセンブリは、ガス入口を有する計量装置を通常は有する。計量装置は、コーティングプロセスにとって十分に高い蒸気圧となる温度に化合物を加熱するために、制御デバイス、特に加熱デバイスも含み得る。
【0030】
一実施形態において、計量装置は、フッ素含有保護層を表面層に保護フルオロポリマー層の形態で1層ずつ堆積させるために、分子層堆積プロセス用の反応物を内部にパルス状に供給するよう設計される。この場合の計量装置は、分子層堆積プロセス用の反応物と分子層堆積プロセスで必要なパージガスとをパルス状に供給するための弁を通常は有する制御可能な入口である。
【0031】
さらに別の実施形態において、計量デバイスは、フッ素化パリレンモノマーを内部に供給するよう設計される。既に上述したように、パリレンモノマーは、光学素子の表面に堆積して重合し、フッ素化パリレンポリマー層を形成する。
【0032】
一発展形態において、計量デバイスは、フッ素化パリレンダイマーの熱分解によるフッ素化パリレンモノマーの生成のために加熱可能なガス供給源又は温度制御デバイスを有する。加熱可能なガス供給源は、例えば、パリレンダイマーの熱分解を可能にするために通常は約600℃を超える温度を発生させるために抵抗ヒータを有し得る。光学アセンブリ又は計量装置は、例えば粉末形態のフッ素化パリレンダイマーを昇華又は蒸発させるために蒸発器を付加的に有することができ、これには熱分解の場合よりも低い、例えば約100℃~150℃のオーダの温度を用いることが可能である。
【0033】
さらに別の実施形態において、計量装置は、光学素子の表面への直接堆積のためにフルオロポリマーを供給するよう設計される。この計量装置は、例えば蒸発器を有することができ、蒸発器内にはフルオロポリマーが存在し、気相に変換される。この場合、内部に供給されたフルオロポリマーは、光学素子の表面に気相から直接堆積され、すなわち内部でフルオロポリマーの化学反応がない。これは例えば、保護層の形成用のDuPont製のテフロンAFの堆積の場合に可能だが、他のフルオロポリマーの場合にも可能である。
【0034】
さらに別の実施形態において、光学アセンブリは、0.1mbar未満の圧力を内部で発生させる真空ポンプを備える。既に上述したように、フッ素含有保護層、特にパレリン層を(中)真空で堆積させれば好ましい。
【0035】
さらに別の実施形態において、光学素子の表面は、フッ化物から、特に金属フッ化物から形成される。フッ化物は、例えばCaF又はMgFであり得る。これら及び他のフッ化物材料の場合、FUV/VUV波長域の波長の放射線の照射は、特に表面の領域のフッ素欠乏につながり、これが表面の劣化をもたらし得る。表面を保護すべき光学素子は、概して透過光学素子、例えばレンズ素子、平板等である。動的なフッ素含有保護層により反射光学素子を劣化から保護することも任意に可能である。
【0036】
本発明のさらなる特徴及び利点は、本発明に必須の詳細を示す図面の図を参照した以下の本発明の実施例の説明から及び特許請求の範囲から明らかである。個々の特徴のそれぞれを、単独で又は本発明の一変形形態において複数の任意の組み合わせで実施することができる。
【0037】
実施例を概略図に示し、以下の説明において解説する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】FUV/VUVリソグラフィシステムの形態の光学アセンブリの概略図である。
図2a】ウェーハ検査システムの形態の光学アセンブリの概略図である。
図3a】分子層堆積プロセスの2つの反応ステップのうち一方の概略図である。
図3b】分子層堆積プロセスの2つの反応ステップのうち一方の概略図である。
図4】フッ素含有保護層が片側に施された平板の形態の光学素子の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図面の以下の説明において、同一又は機能的に同一の構成部品には同一の参照符号を用いる。
【0040】
図1は、特に約110nm~約280nmのFUV/VUV波長域の波長用のFUV/VUVリソグラフィシステムの形態の光学アセンブリ1の概略図を示す。FUV/VUVリソグラフィシステム1は、必須コンポーネントとして、露光系12及び投影系14の形態の2つの光学系を備える。露光プロセスを実行するために、FUV/VUVリソグラフィシステム1は、放射源10を有し、これは、例えば193nm、157nm、又は126nmのVUV波長域の波長のVUV放射線11を発するエキシマレーザとすることができ、FUV/VUVリソグラフィシステム1の一体部品であり得る。
【0041】
放射源10が発したFUV/VUV放射線11は、露光系12を用いて、レチクルとも称するマスク13の照明に用いることができるように処理される。図1に示す例では、露光系12は、透過光学素子及び反射光学素子の両方を有する。代表的に、図1は、FUV/VUV放射線11を集束させる透過光学素子120と、例えばFUV/VUV放射線11を偏向させる反射光学素子121とを示す。既知のように、露光系12において、さまざまな異なる透過光学素子、反射光学素子、又は他の光学素子を比較的複雑な方法を含む任意の方法で相互に組み合わせることが可能である。透過光学素子120及び反射光学素子121は、露光系12のハウジング122の内部122aに配置される。
【0042】
マスク13は、半導体コンポーネントの製造の状況では、投影系14を用いて、露光される光学素子15、例えばウェーハに転写される構造を表面に有する。図示の例では、マスク13は、透過光学素子として設計される。代替的な実施形態において、マスク13は反射光学素子としても設計され得る。投影系14は、図示の例では少なくとも1つの透過光学素子を有する。図示の例は、2つの透過光学素子140、141を代表的に示し、これらは、例えばマスク13上の構造をウェーハ15の露光に望まれるサイズに縮小する働きをする。投影系14の場合にも、特に反射光学素子を設けることができ、任意の光学素子を所望に応じて既知の方法で相互に組み合わせることが可能である。透過光学素子のない光学アセンブリをFUV/VUVリソグラフィに用いることもできることも指摘しておく。
【0043】
図2は、ウェーハ検査システム2の形態の光学アセンブリの例示的な実施形態の概略図を示す。以下で行う説明は、マスク検査用の検査システムにも同様に当てはまる。
【0044】
ウェーハ検査システム2は、放射源20を含み、そのFUV/VUV放射線21は光学系22によりウェーハ25へ向けられる。この目的で、放射線21は、凹面ミラー220によりウェーハ25へ反射される。マスク検査システム2の場合、ウェーハ25の代わりに検査対象のマスクを配置することが可能となる。
【0045】
ウェーハ25で反射、回折、及び/又は屈折した放射線は、光学系22の一部を同様に形成するさらに別の凹面ミラー221により、透過光学素子222を介してさらなる評価用の検出器23へ案内される。透過光学素子222は、図2では平板として概略的に示されているが、異なる幾何学的形状も有し得る。例えば、透過光学素子222は、少なくとも1つの曲面を有するレンズ素子であり得る。透過光学素子222は、図2に示す位置以外の位置でウェーハ検査システム2に配置することもできる。ウェーハ検査システム2の光学系22は、ハウジング24を備え、その内部24aに2つの光学素子又はミラー220、221と透過光学素子222とが配置される。
【0046】
放射源20は、例えば、本質的に連続した放射スペクトルを提供するために1つの放射源のみ又は複数の個別の放射源の組み合わせであり得る。変更形態において、1つ又は複数の狭帯域放射源20を用いることも可能である。放射源20が発生する放射線21の波長又は波長帯は、好ましくは100nm~280nmのFUV/VUV波長域、特に好ましくは110nm~190nmの波長域にある。
【0047】
図3a、bは、FUV/VUV波長域の放射線11、21を透過するよう設計され、且つ図1又は図2の透過光学素子120、140、141、222のうちの1つを例えば形成し得る、光学素子4を示す。図3a、bに示す光学素子4は、平板として非常に概略的な形態で示されているが、これはレンズ素子又は別の種類の透過光学素子でもあり得る。光学素子4は、図示の例ではCaFである基板5を有する。基板5は、代替的に異なる材料、例えばフッ化物、特に金属フッ化物であり得る。基板5は、表側及び裏側にそれぞれ平面6a、6bを有し、これは、内部122a、24a、122aの環境に曝されて光学素子4を通過する各放射源10、20からのFUV/VUV放射線11、21を照射される。
【0048】
表面6a、6bに強力なFUV/VUV放射線11、21を照射すると、これは基板5の材料と相互作用し、基板5の特に各表面6a、6bの領域のフッ化物材料の激しい劣化につながり得る(局所的な)フッ素欠乏を発生させる。原理上、劣化を低減するか又は大いに防止するために、フッ素含有保護層を表面6a、6bに施すことが可能である。フッ素含有保護層は、例えば、フッ素化又は過フッ素化ポリマーの保護層であり得る。しかしながら、FUV/VUV放射線11、21での照射の場合にはフッ素含有保護層が徐々に蒸発して、光学アセンブリ1、2の一定の動作時間後には事実上存在しなくなり、表面6a、6bが環境に曝されてFUV/VUV放射線11、21での照射の結果として上記劣化が起こることが分かった。
【0049】
それでもなお表面6a、6bの劣化を防止するために、図3a、bに示す例では、フッ素含有保護層7を基板5の表側の表面6aに動的に堆積させる。動的保護層7は、基板5の裏側の第2表面6bにも対応して堆積させるが、これは簡単のために図示しない。
【0050】
図3a、bに示す例では、保護層7をin situで、すなわち光学アセンブリ1、2、の各光学素子120、140、141、222の設置状態で、分子層堆積プロセスにより特に1層ずつ堆積させる。分子層堆積プロセスは、原子層堆積プロセスと同様に、周期的な自己制御的なプロセスである。分子層堆積プロセスでは、図3aに示す第1反応ステップにおいて、ガス入口を有する計量装置123を介して、FUV/VUVリソグラフィシステム1の内部122aに第1分子フラグメントの形態の第1反応物Aをパルス状に供給する。図1に非常に概略的な形態で示す計量装置123は、内部122aへのガスの制御可能なパルス供給を可能にし、その目的で制御可能な弁124を有する。第1反応物A、より詳細には第1反応物の官能基が、表面6aに吸着した第2反応物Bの成分B(官能基)と反応し、すなわち吸着成分Bとの化合物になり、表面6aに堆積する。第1反応物Aは、自身と反応しないので、第1反応ステップは、第1反応物Aの層が表面6aに堆積したらすぐに完了し、すなわち第1反応ステップは自己制御的である。第1反応ステップに続いて、パージステップにおいて、表面6aに堆積しなかった第1反応物Aの余剰分を、例えば窒素の形態の不活性パージガスを用いて内部122aから除去する。パージガスの抽出のために、ハウジング122はポンプ(図示せず)又はガス出口に接続される。
【0051】
図3bに非常に概略的な形態で示す分子層堆積プロセスの第2反応ステップにおいて、第2反応物Bを、計量装置123を介して内部122aに供給する。第2反応物Bの官能基は、ここでは第1反応物Aの官能基との化合物になり、第2反応物Bが表面6aに堆積するようになる。第2反応物Bの化学反応も同じく自己制御的であり、これは第2反応物Bの層が堆積されたらすぐに第2反応ステップが完了することを示す。第2反応ステップに続いて、同じくパージステップにおいて、表面6aに堆積なかったか又は第1反応物Aと関連する第2反応物Bの余剰分を、例えば窒素の形態の不活性パージガスを用いて内部122aから除去する。図3a、bに示す堆積プロセス後には、反応部A、Bの化合物からなる保護層7の分子層が、光学素子4の表面6aに堆積している。
【0052】
上述の分子層堆積プロセスの方法ステップは、所望の厚さを有する保護層7が基板5の光学素子4の表面6aに堆積するまで概して繰り返される。保護層7の材料は、熱的影響を回避するために、第1にFUV/VUV放射線11、21での照射に対する耐性が高く、第2にFUV/VUV放射線11、21に対する吸収度が最小であるフッ素含有材料、通常はフルオロポリマーである。
【0053】
2つの反応物A、B、又は保護フルオロポリマー層7の材料は、概してFUV/VUV放射線11、21に対して耐放射線性が高く吸収度が比較的低いので、例えば、FUV/VUV波長域のリソグラフィ用途でペリクルの作製に用いられるポリマー材料であり得る。フルオロポリマーは、特に、非特許文献4に記載のような「FPR」又は「ASF」の形態のフルオロポリマー、非特許文献5、6又は特許文献23に記載のようなハイドロフルオロカーボンポリマー、例えば水素化ハイドロフルオロカーボンポリマー、又は特許文献22に記載のような部分フッ素化又は全フッ素化ポリマー、例えば含フッ素コポリマーであり得る。
【0054】
2つのモノマーから形成されたコポリマーからなる保護層7の場合、第1反応物Aがコポリマーの第1モノマーに相当し、第2反応物Bがコポリマーの第2モノマーに相当するので、分子層堆積を特に単純に行うことができる。第1モノマーは、例えばヘキサフルオロイソブチレン(反応物A)とすることができ、第2モノマーは、トリフルオロエチレン又はフルオロエチレン(反応物B)とすることができる。第1反応物A及び第2反応物Bの両方がフッ素を含有する必要は必ずしもない。保護層は、特許文献25に記載のような形態をとるホモポリマー又はコポリマーの形態、すなわち上記文献に記載の群Aのホモポリマー又は上記文献に記載の群B、C、及びDのコポリマーの形態の、フルオロポリマーからも形成され得る。保護層7は、特許文献24に記載のようにパーフルオロ-n-アルカンからも形成され得る。
【0055】
図2に示す例では、フッ素化パリレン層の形態の保護フルオロポリマー層7が、光学素子222に、より詳細には光学素子22の表面(図2には図示せず)に堆積する。堆積のために、図2の光学系22は、フッ素化パリレンモノマーMを内部24aに供給する働きをする計量装置26を有する。フッ素化パリレンモノマーMは、蒸発器27でフッ素化パリレンダイマー粉末から気相に変換されたフッ素化パリレンダイマーDから生成される。この目的で、フッ素化パリレンダイマーは、蒸発器27で約130℃の温度に加熱され、供給管の形態のガス供給源28へ送られる。
【0056】
計量装置26は、ガス供給源28を通って流れるフッ素化パリレンダイマーDを約600℃を超える温度に加熱するために、抵抗ヒータの形態の加熱デバイス29を有する。これにより、パリレンダイマーDは熱分解されて、内部24aに入るフッ素化パリレンモノマーMを形成する。パリレンモノマーMは、室温付近の温度(約25℃)である光学素子222の比較的低温の表面に堆積する。堆積中に、パリレンモノマーMは重合してフッ素化保護パリレン層7を形成する。保護パリレン層7のフッ素化パリレンは、例えばパリレンF-VT4又はパリレンF-AT4であり得る。
【0057】
保護パリレン層7の堆積時に不純物を回避するために、内部24aに例えば約0.1mbar未満の比較的低圧pがあれば好ましいことが分かった。この圧力pを発生させるために、検査システム2は真空ポンプ30を有する。図1に関連して上述したフッ素含有保護層7の分子層堆積の場合も、内部122aでは低圧pとするのが賢明であり得ることが明らかであろう。したがって、図1のFUV/VUVリソグラフィシステム1も、内部122aの圧力を低下させるために真空ポンプ30を有し得る。
【0058】
図4は、CaFからなる基板5を有する平行平面板の形態の光学素子4の例を示す。光学素子4は、図1のエキシマレーザの形態の放射源10の放電チャンバ窓を形成し、放射源10の共振器区域には混合ガス、例えばフッ素含有混合ガスが導入される。図4において分かるように、フッ素含有保護層7は、エキシマレーザ10の放電チャンバのハウジング外にある光学素子4の表面6aに形成される。波長157nmのエキシマレーザ10からのレーザ放射線11は、光学素子4を通過する。放電チャンバ、したがって光学素子4の表面6aは、内部31aを有するエキシマレーザ10のハウジング31(点線で示す)内にある。計量装置32がハウジング31内に形成され、これを介して図示の例では内部31aにDuPont製のテフロンAFであるガス状フルオロポリマーPが供給され、これが光学素子4の表面6aに堆積する。光学素子4の内側はフッ素含有雰囲気下にあり、したがって放射線に対する耐性が格段に高いので、そこにある表面6bでは(フッ素含有)保護層が必要ない。ガス状フルオロポリマーPの堆積の場合、図4に示す例は気相からの直接堆積であり、すなわち、計量装置32を介して内部31aに供給されたフルオロポリマーは、光学素子4の表面6aに直接、すなわち化学反応を起こさずに堆積する。
【0059】
既に上述した全ての例において、所望の保護効果を達成するために、保護層7が比較的小さな厚さDを有すれば、すなわちわずか数分子層を含めば通常は十分である。保護層7の厚さDは、吸収を最小化するために、特に大きすぎない、例えば100nmを超えないようにすべきである。
【0060】
保護層7の厚さDを調整するために、図1に示すFUV/VUVリソグラフィシステム1、図2に示すウェーハ検査システム2、及び図4に示すエキシマレーザ10は、それぞれが各計量装置123、26、32に作用する制御デバイス9を有する。制御デバイス9は、動的平衡を成り立たせて保護層7の厚さDが本質的に一定を保つように、FUV/VUV放射線11、12での保護層7の照射中に保護層7の堆積速度を蒸発速度に適合させることを可能にする。堆積速度の制御のために、制御可能な弁124を用いて図1に示すFUV/VUVリソグラフィシステム1における分子層堆積のサイクルを調整することが可能である。これに対応して、図2に示す計量装置26でも、蒸発器27に対する制御デバイス9の作用により堆積速度を調節することが可能である。図4に示す計量装置32の制御デバイス9も、弁(図示せず)を用いて内部31aへのガス状フルオロポリマーPの供給速度を調整することにより、保護層7の堆積速度の調整を可能にする。
【0061】
保護層7の堆積に対するFUV/VUV放射線11、12の影響を回避するために、保護層7を原理上は各光学アセンブリ1、2、10の動作停止中に堆積させることができる。例えば、保護層7は、例えば規定の閾値1nmを超える厚さDを有するまで各動作停止中に堆積させることができる。
【0062】
代替的に、保護層7の堆積、したがって各フッ素含有化合物A、B、M、Pの供給は、光学素子120、140、141、222、4にFUV/VUV放射線11、12が照射される各光学アセンブリ1、2、10の動作中に(も)行うことができる。場合によっては、(パルス状の)FUV/VUV放射線11、12が各反応を促進又は活性化することがここでは有益であり得る。この場合、保護層7の厚さDを、既定の厚さ間隔内に又は例えば約1nmという厚さDの閾値を超えるように任意に永久に保つことができる。
【0063】
各化学反応、特にフッ素含有保護層7の表面6aへのフッ素化パリレンモノマーMの堆積時の重合反応の促進のために、各層7の堆積をプラズマによる方法で行うことができる。例えば、この目的で、各表面6aの近傍で好ましくはパルス状のプラズマを発生させるプラズマ源が各内部122a、24a、31aに配置され得る。
【0064】
図1のFUV/VUVリソグラフィシステム1に関連して上述した分子層堆積プロセスを、図2の検査システム2の場合又は図4のエキシマレーザ10の場合にも行うことができることが明らかであろう。これに対応して、図1のFUV/VUVリソグラフィシステム1及び図4のエキシマレーザ10の場合、フッ素化パリレンの形態の保護層7を堆積させることが可能である。当然ながら、図1及び図2に示す光学素子1、2の場合にも、例えばテフロンAF又は別の適当なフルオロポリマーの形態のフルオロポリマーの直接堆積を行うことが可能である。
【0065】
要約すると、上述のように、フッ素含有保護層7の動的堆積により各光学素子120、140、141、222、4の劣化を回避することが可能である。
図1
図2
図3a
図3b
図4