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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】発光装置及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/38 20100101AFI20230913BHJP
   H01L 33/44 20100101ALI20230913BHJP
   H01L 33/06 20100101ALI20230913BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20230913BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20230913BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
H01L33/38
H01L33/44
H01L33/06
H01L33/48
G09F9/33
G09F9/30 348A
G09F9/30 338
G09F9/30 349C
G09F9/30 349Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019229616
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2020107887
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2018240457
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119301
【弁理士】
【氏名又は名称】蟹田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 幸利
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-249425(JP,A)
【文献】国際公開第2011/016201(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
G09F 9/00
G09F 9/30-9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型半導体層と、活性層と、第2導電型半導体層と、がこの順に積層された半導体積層体と、
前記活性層及び前記第2導電型半導体層を被覆する第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜から露出する前記第1導電型半導体層の側面を連続的に囲んで配置され、前記第1導電型半導体層の側面と接続された第1導電層と、
前記第1導電層と、前記活性層と、前記第2導電型半導体層とを被覆し、前記第2導電型半導体層の上方に設けられ前記第2導電型半導体層を露出させる孔を有する第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜を介して前記第1導電層の前記第2導電型半導体層側に位置する端部を連続的に被覆し、前記孔を通じて前記第2導電型半導体層の上面と接続された第2導電層と、を備える発光装置。
【請求項2】
前記第1導電層は、上面視において前記半導体積層体が配置された領域の外側に位置する第1パッド部を有し、
前記第2導電層は、上面視において前記半導体積層体が配置された領域の外側に位置する第2パッド部を有し、
前記第1パッド部上に設けられた第1金属部と、
前記第2パッド部上に設けられた第2金属部と、を備える請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記半導体積層体と、前記第1金属部と、前記第2金属部と、を覆うように設けられた遮光性を有する樹脂層を備え、
前記第1金属部及び前記第2金属部の一部は、前記半導体積層体の上方において、前記樹脂層から露出している請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記活性層は、前記第1導電型半導体層の上面に設けられた第1の井戸層と、前記第1導電型半導体層の側面に設けられ、前記第1の井戸層の外縁に接続される第2の井戸層と、を含み、
前記第1の井戸層の膜厚は、前記第2の井戸層の膜厚よりも厚い請求項1から3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記半導体積層体が設けられた基板を備え、
前記基板は、上面視において、前記半導体積層体が設けられた領域に対応する位置に開口部を有し、
前記開口部内に波長変換部材が設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記波長変換部材は、母材と蛍光体を含み、
前記蛍光体は、前記母材中において、前記半導体積層体側に偏在している請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の発光装置が実装基板上に配列されている表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、従来の発光装置に比べて小さな発光装置を多数配列した表示装置が開示されている。このような表示装置は、高輝度、高コントラスト比、長寿命、フレキシブル化等の優れた特性が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-262993
【文献】特開2018-78279
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような表示装置においては、発光装置が配置された発光部同士の間隔が非常に小さく、隣接する発光部間で光のクロストークが生じるおそれがある。特許文献1、2では、隣接する発光部が共通の透明基板または透明な半導体層を有し、その部分を導光する光の存在により、隣接する画素間において光のクロストークが発生する。このような隣接する発光部間で生じる光のクロストークは、コントラスト比の低下や混色などの原因となり、表示装置の性能向上を妨げる。
【0005】
そこで、本発明は、発光装置を複数配置したときに生じる光のクロストークの発生を抑制できる発光装置及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために、本発明の実施形態に係る発光装置は、第1導電型半導体層と、活性層と、第2導電型半導体層と、がこの順に積層された半導体積層体と、前記活性層及び前記第2導電型半導体層を被覆する第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜から露出する前記第1導電型半導体層の側面を連続的に囲んで配置され、前記第1導電型半導体層の側面と接続された第1導電層と、前記第1導電層と、前記活性層と、前記第2導電型半導体層とを被覆し、前記第2導電型半導体層の上方に設けられ前記第2導電型半導体層を露出させる孔を有する第2絶縁膜と、前記第2絶縁膜を介して前記第1導電層の前記第2導電型半導体層側に位置する端部を連続的に被覆し、前記孔を通じて前記第2導電型半導体層の上面と接続された第2導電層と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
発光装置の光出射領域を小さくし、光出射領域とその周囲の非発光領域との界面での急な輝度変化を実現でき、光の取り出し効率を向上できる。さらに、発光装置を複数配列した表示装置において光のクロストークを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】実施形態1に係る発光装置のマスクパターンを形成した基板の第1主面側の概略平面図である。
図1B図1AのIB-IB線における概略断面図である。
図2A】実施形態1に係る発光装置の島状の半導体積層体の概略平面図である。
図2B図2AのIIB-IIB線における概略断面図である。
図3A】実施形態1に係る発光装置の島状の半導体積層体を覆うマスクパターンを除去した後の概略平面図である。
図3B図3AのIIIB-IIIB線における概略断面図である。
図4A】実施形態1に係る発光装置の半導体積層体を覆うマスク層を形成した後の概略断面図である。
図4B図4AのIVB-IVB線における概略断面図である。
図5A】実施形態1に係る発光装置の島状の半導体積層体の第1接続領域を露出した後の概略断面図である。
図5B図5AのVB-VB線における概略断面図である。
図6A】実施形態1に係る発光装置の第1絶縁膜を形成した後、半導体積層体の第1接続領域を再露出したときの概略平面図である。
図6B図6AのVIIB-VIIB線における概略断面図である。
図7A】実施形態1に係る発光装置の第1導電層を形成した後の概略平面図である。
図7B図7AのVIIB-VIIB線における概略断面図である。
図7C】実施形態1に係る発光装置の第1導電層の上面正投影図である。
図8A】実施形態1に係る発光装置の第2導電層を形成後の概略平面図である。
図8B図8AのVIIIB-VIIIB線における概略断面図である。
図8C】実施形態1に係る発光装置の第2導電層の上面正投影図である。
図9A】実施形態1に係る発光装置の第1金属部及び第2金属部を形成した後の概略平面図である。
図9B図9AのIXB-IXB線における概略断面図である。
図10】実施形態1に係る発光装置の金属部形成の変形例を示す概略断面図である。
図11A】実施形態1に係る樹脂層を形成後の概略平面図である。
図11B図11AのXIB-XIB線における概略断面図である。
図12A】実施形態1に係る発光装置の基板の第2主面を研削研磨し基板に開口部を形成した後の概略平面図である。
図12B図12AのXIIB-XIIB線における概略断面図である。
図13A】実施形態1に係る発光装置の蛍光体含有透光性樹脂を充填した後の概略平面図である。
図13B図13AのXIIIB-XIIIB線における概略断面図である。
図14A】実施形態1に係る発光装置の個片化後の概略平面図である。
図14B図14AのXIVB-XIVB線における概略断面図である。
図15A】実施形態4に係る表示装置の概略回路図である。
図15B】実施形態4に係る表示装置の部分拡大概略平面図である。
図15C図15BのXVC-XVC線における概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明を以下に限定するものではない。本発明は、以下に示す実施形態の組合せを含みうる。また、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張や簡略化していることがある。さらに、同一の名称、符号については、原則として同一もしくは同質の部材を示しており、重複した説明は適宜省略する。
【0010】
<実施形態1>
基板10として、半導体層を成長することができるものを用いる。例えば、Si単結晶からなる基板10を成長基板として用いる。Siからなる基板10は、第1主面11である(111)面と、第1主面11に対向する第2主面12である(-1-1-1)面を有する。第1主面11上に、CVD、フォトリソグラフィー、RIE等の半導体ウェハープロセス技術を用いて、半導体層を選択エピタキシャル成長させるためのマスクパターン21を形成する。マスクパターン21の開口部に第1主面11が露出する。図1A、1Bに示すように、マスクパターン21の直径が、例えば、上面視において、約1~50μm、好ましくは約1~10μm、さらに好ましくは約1~3μmの円形である複数の開口部を有する。複数の開口部は周期が、例えば、約5~100μm、好ましくは約5~50μm、さらに好ましく約5~10μmで正方格子状に配列されている。
【0011】
マスクパターン21の開口部から露出する第1主面11に、AlNバッファ層31をMOCVD法により形成する。その後、AlNバッファ層31上に、n型のGaN層等を含む第1導電型半導体層40、多重量子井戸層を含む活性層50、p型のGaN層等を含む第2導電型半導体層60を順次結晶成長する。このような結晶成長により、第1導電型半導体層40と、活性層50と、第2導電型半導体層とを有する島状の半導体積層体70が複数形成される。第1導電型半導体層40、活性層50、及び第2導電型半導体層60は、例えば、AlInGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)の組成を有している。1つの半導体積層体70の上面視における形状は、例えば、矩形状、六角形状とすることができる。また、1つの半導体積層体70の上面視における大きさは、例えば、矩形状や六角形状である場合、1辺を100μm以下、好ましくは50μm以下とすることができる。半導体積層体70は、マスクパターン21の複数の開口部それぞれに対応する位置に形成される。各半導体積層体70は、六方晶系のミラー指数を用いて表すと、頂面が(0001)面、側面が{1-101}面から成る六角錐台形状である(図2A図2B)。また、六角錐形状、六角柱と六角錐台の組合せ形状、又は、六角柱と六角錐の組合せ形状でもよい。半導体積層体70が正方晶系の場合は、(0001)面および{1-101}面の代わりに、それぞれ(111)A面および{1-10}面となる。なお以下は、複数の半導体積層体70のうち1つの半導体積層体70およびその周辺領域の構造について説明する。
【0012】
活性層50は、第1導電型半導体層40の(0001)面にエピタキシャル成長された多重量子井戸層である第1の井戸層51と、第1導電型半導体層40の{1-101}面にエピタキシャル成長された多重量子井戸層である第2の井戸層52とを含む。図2Bに示すように、第1の井戸層51は第1導電型半導体層40の上面に設けられ、第2の井戸層52は第1導電型半導体層40の側面に設けられている。第1の井戸層51と第2の井戸層52は、第1導電型半導体層40の上面及び側面に連続して形成され、第2の井戸層52は第1の井戸層51の外縁にて接続されている。第1の井戸層51の井戸層の膜厚は、第2の井戸層52の膜厚よりも厚い。厚い量子井戸層の方が薄い量子井戸層よりサブバンド間のエネルギー差が小さいので、第1の井戸層51での電子と正孔の対消滅により光が放出される。第1の井戸層51の外縁はエピタキシャル成長した結晶で覆われているので、第1の井戸層51の外縁に表面準位は存在せず、表面準位に係る非発光遷移が第1の井戸層51の外縁で発生しない。従って、第1の井戸層51の外縁に第2の井戸層52が接続されていることが好ましい。
【0013】
図3に示すように、マスクパターン21のうち、上面視において半導体積層体70と重なる位置に設けられていないマスクパターン21をウェットエッチングで除去する。このとき、結晶成長のときにマスクパターン21上に形成された不要な結晶がある場合には、マスクパターン21と同時に除去される。そして、図4A、4Bに示すように、半導体積層体70と第1主面11を連続して覆うRIEマスク層81形成する。
【0014】
半導体積層体70の側面下部領域に設けられたマスク層81をRIEで除去しつつ、第2導電型半導体層60の一部および第2の井戸層52の一部を除去する。これにより、図5A、5Bに示すように、第1導電型半導体層40の側面の一部を第2導電型半導体層60及び第2の井戸層52から露出させる。第2導電型半導体層60及び第2の井戸層52から露出した第1導電型半導体層40は、後述する第1導電層110と接続される半導体積層体70の第1接続領域71である。その後、マスク層81を全て除去する。
【0015】
半導体積層体70および第1主面11を連続して覆う第1絶縁膜91を形成する。第1絶縁膜91には、例えば、窒化シリコン、酸化シリコン等を用いることができる。その後、半導体積層体70の第1接続領域71上に位置する第1絶縁膜91をRIEで選択的に除去し、図6A、6Bに示すように、第1接続領域71を第2導電型半導体層60及び第2の井戸層52から再度露出させる。第1接続領域71は、島状の半導体積層体70の側面下部領域を連続的に囲む(図6A)。第1絶縁膜91は、第2導電型半導体層60と第2の井戸層52との短絡を防ぐために設けられ、第2導電型半導体層60及び第2の井戸層52の表面を少なくとも覆って設けられる。
【0016】
第1導電層110は、半導体積層体70の側面下部領域に設けられる。半導体積層体70の第1接続領域71上と第1絶縁膜91の一部の領域上に、第1導電層110を形成する。第1導電層110の形成には、周知の半導体ウェハープロセス技術を用いることができる。第1導電層110は、図7A~7Cに示すように、半導体積層体70の上面視において、半導体積層体70の外側に位置する第1絶縁膜91の上まで延伸して形成され、半導体積層体70の側面下部領域を連続的に囲んで設けられる。第1導電層110は、第1接続領域71で第1導電型半導体層40と電気的に接続される。第1導電層110は、第1半導体接続部111と、第1延伸部112と、第1パッド部113とを有する。第1半導体接続部111は、第1接続領域71で第1導電型半導体層40と接続される部分である。第1パッド部113は、後述する第1金属部131が設けられる部分であり、上面視において半導体積層体70が配置された領域の外側に位置する。第1延伸部112は、第1半導体接続部111と第1パッド部113とを繋ぐ部分である。
【0017】
第1導電層110は、半導体積層体70との導通を確保しつつ、半導体積層体70から発せられる光を反射する機能を有する。このような効果を得るために、第1導電層110には、高い光反射性と導電性を有する金属材料を用いることが好ましい。第1導電層110には、例えば、銀、アルミニウム、及びロジウムまたはこれらの金属材料を含む合金層を含む多層膜を用いることが好ましい。第1導電層110の膜厚は、半導体積層体70から発せられる光が透過しない程度以上が好ましい。例えば、第1導電層110を、100nm以上とすることができ、好ましくは、100~500nmとすることができる。なお、複数の半導体積層体70を設ける場合、第1導電層110を、隣接する他の半導体積層体70にまで延在して設けてもよい。例えば、第1導電層110により、2つの半導体積層体70を直列接続してもよい。後述の第2導電層120についても、第1導電層110と同様である。
【0018】
第1導電層110と、活性層50及び第2導電型半導体層60を被覆する第1絶縁膜91とを被覆する第2絶縁膜92を形成する。その後、第2導電型半導体層60の上方に位置する第1絶縁膜91及び第2絶縁膜92の一部を除去し、第1絶縁膜91及び第2絶縁膜92を貫通する孔を形成する。第2導電型半導体層60の一部は、その孔から露出している。第2絶縁膜92は、第1導電層110と第2導電層120との短絡を防ぐために設けられる。第2絶縁膜92は、上述した第1絶縁膜91と同様の材料を用いることができる。第2絶縁膜92は、異なる屈折率を有する2種類の誘電体層を複数積層した誘電体多層膜としてもよい。例えば、酸化シリコン層と酸化チタン層とを交互に積層し、半導体積層体70からの光が反射されるように設計した誘電体多層膜を用いることができる。
【0019】
図8A~8Cに示すように、第2絶縁膜92に設けられた孔から露出した第2導電型半導体層60と、上面視において半導体積層体70の外側に位置する第2絶縁膜92の一部の領域上に連続する第2導電層120を形成する。第2導電型半導体層60と第2導電層120が電気的に接続された領域が半導体積層体70の第2接続領域72である。第2導電層120は、第2絶縁膜92を介して第1導電層110の第2導電型半導体層60側に位置する端部を連続的に被覆して形成される。さらに、上面視において半導体積層体70の外側に延在し、第1主面11上に設けられた第1絶縁膜91上及び第2絶縁膜92を被覆して形成される。第2導電層120は、第2半導体接続部121、第2延伸部122と第2パッド部123を有する。第2半導体接続部121は、第2接続領域72で第2導電型半導体層60と接続される部分である。第2パッド部123は、後述する第2金属部132が設けられる部分であり、上面視において半導体積層体70が配置された領域の外側に位置する。第2延伸部122は、第2半導体接続部121と第2パッド部123とを繋ぐ部分である。
【0020】
第1導電層110を覆う第2絶縁膜92の上に第2導電層120を形成することにより、第1導電層110及び第2導電層120のパターンの位置合わせを、1つの絶縁膜上に第1導電層110及び第2導電層120のパターンを形成する場合に比べ、容易に行うことができる。半導体積層体70の上面及び側面が光反射性の第1導電層110及び第2導電層120で被覆されることにより、半導体積層体70から発せられる光が半導体積層体70の上面及び側面で反射される。その結果、主な光取り出し面である半導体積層体70の下面へ光を向かわせ、光取り出し効率を向上させることができる。また、半導体積層体70の側面からの漏れ光を抑制することができる。半導体積層体70の上面及び側面が隙間なく光反射性の第1導電層110及び第2導電層120で覆われることが好ましい。半導体積層体70の側面が第1主面11に対して傾斜していることが好ましい。これにより、活性層50から発せられた光は、半導体積層体70の傾斜した側面に入射し、第1導電層110や第2導電層120により反射されるため、第1導電型半導体層40の下面方向へ向かわせることができる。そのため、発光装置の光取り出し効率を向上させることができる。第2導電層120を、隣接する他の半導体積層体70にまで延在して設けてもよい。例えば、第2導電層120により、2つの半導体積層体70を直列接続してもよい。
【0021】
第1パッド部113上に位置する第2絶縁膜92に開口部を形成し、第1パッド部113を露出させる。図9A、9Bに示すように、露出した第1パッド部113上にそれぞれ第1金属部131を形成し、第2パッド部123上に第2金属部132を形成する。第1金属部131および第2金属部132は、例えば、実装基板上に設けられた配線に発光装置を実装したときに、半導体積層体70へ配線を介して電力を供給する通電経路となる。実装基板上には複数の発光装置をn行m列の配列(n、mは1以上の整数)で配列してもよい。第1金属部131および第2金属部132は、電気伝導率の高い金属を用いることが好ましく、例えば、銅を用いることができる。第1金属部131及び第2金属部132は、例えば、マスキング方式の部分めっきにより形成することができる。
【0022】
上面視において、半導体積層体70の外側に、通電経路となる第1金属部131及び第2金属部132を形成することで、半導体積層体70の上面視における面積に依存することなく第1金属部131及び第2金属部132と配線との接続面積を決めることができるため、配線との接続面積を容易に確保することができる。また、第1金属部131及び第2金属部132を配線に接続する際に生じる熱や機械的応力が、半導体積層体70に直接加わらないので、半導体積層体70への負荷を軽減できる。第1金属部131および第2金属部132の形状を異なる形状とし、カソードとアノードとの識別を容易とすることができる。
【0023】
なお、別の形態として、図10に示すように、通電経路となる第1金属部131及び第2金属部132のめっき形成と同時に、半導体積層体70の上方に第3金属部133が形成されてもよい。半導体積層体70の上方の第3金属部133は、ヒートシンクと熱的に接続することで、半導体積層体70で発生する熱を逃がす放熱経路として機能させることができる。
【0024】
図11A、11Bに示すように、第1金属部131、第2金属部132、第2導電層120、と第2絶縁膜92、を覆う遮光性を有する第1の樹脂層141を形成する。その後、第1の樹脂層141を研削研磨により平坦化して、第1金属部131および第2金属部132を第1の樹脂層141から露出させる。第1金属部131および第2金属部132の側面は第1の樹脂層141で覆われている。第1の樹脂層141は、第2導電層120と第1導電層110との隙間から漏れる光および第2導電層120および第1導電層110を透過する光を反射または遮光し、半導体積層体70からの漏れ光を抑制するために設けられる。第1の樹脂層141から露出した第1金属部131および第2金属部132の上面が、配線との接続面(以下、「通電面」と呼ぶことがある。)となる。また、配線との接続面となる第1金属部131および第2金属部132の上面に、配線との接続方法に応じて、例えば半田層やIn/Auマイクロバンプのような接続バンプなどの接続部材を適宜設けてもよい。
【0025】
第1の樹脂層141には、絶縁性を有する樹脂に光反射性物質が含有された樹脂層を用いることができる。樹脂には、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。光反射性物質には、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等を用いることができる。第1の樹脂層141は、例えば、コンプレッションモールディング技術やトランスファーモールド技術を用いて形成することができる。
【0026】
図12A、12Bに示すように、第1の支持体151に、基板10上に半導体積層体70が設けられたウェハーの第1の樹脂層141が設けられた側を貼り付ける。半導体積層体70の成長に選択エピタキシャル成長を用いた結果、基板10全体に半導体層をエピタキシャル成長させた場合に比べて、ウェハーの反りが抑制されている。このため、第1の支持体151とウェハーとの貼り合せが容易である。
【0027】
ウェハーの底面である基板10の第2主面12側から研削研磨し、例えば基板10の厚みを約10μm~50μmになるまで基板10を薄くする。研削研磨した後、第2主面12に、例えば、メタルクロムと酸化クロムからなる低反射率を有する金属膜を形成してもよい。このような金属膜を形成することにより、基板10の第2主面12における反射率を低下させ黒色とし、発光素子の点灯時と発光素子の消灯時とのコントラスト差が大きくさせることができるので、表示装置に好適である。
【0028】
図12A、12Bに示すように、基板10のうち半導体積層体70が設けられた領域に位置する基板10を除去し、基板10に開口部160を形成する。基板10の開口部160は、半導体積層体70が設けられた領域に対応する位置に設けられる。開口部160には、第1導電型半導体層40が露出している。基板10の除去には、半導体ウェハープロセス技術、例えば、フォトリソグラフィーとICP-RIEを用いる。さらに、第1導電型半導体層40を露出させるために、マスクパターン21とAlNバッファ層31を除去する。基板の開口部160の平面視形状は、例えば六角形である。基板10の開口部160が、半導体積層体70からの光が主に取り出される光出射面となる。基板の開口部160の平面視は、六角形に替えて、円形など他の形状とすることもできる。
【0029】
図13A、13Bに示すように、基板10の開口部160に波長変換部材170を充填する。基板10の開口部160に充填され、硬化された波長変換部材170は、蛍光体を含有する透光性樹脂である。波長変換部材170は、母材と蛍光体を含んでいる。波長変換部材170の母材は、例えばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂のような光を透過する樹脂やシリカのような光を透過する無機材料である。波長変換部材170に含有される蛍光体は、例えば、量子ドット蛍光体、ガーネット系蛍光体(例えばYAG:Ce、LAG:Ce)、酸化物蛍光体(例えばYPVO4:Eu、ZnSiO:Mn、BaMgAl1424:Eu)、酸窒化物蛍光体(例えばSi6-zAl8-z:Eu(0<Z<4.2))、窒化物系蛍光体(例えばCASN、SCASN)、フッ化物蛍光体(例えばKSiF:Mn)、硫化物系蛍光体等が挙げられる。
【0030】
基板10の開口部160内部に充填された波長変換部材170の母材中において、蛍光体を半導体積層体70側に、例えば遠心沈降等の手法を用いて、偏在させることができる。基板10の開口部160に波長変換部材170を配置した後、その波長変換部材170上に透明樹脂を配置することもできる。さらに基板10の開口部160の側面に光反射性の部材を設けてもよい。このような部材を設けることにより、波長変換部材170のうち蛍光体密度の低い領域、あるいは基板10の開口部160内で透明樹脂を配置した領域は、いわゆるライトパイプの機能を有する。基板10の開口部160を均一な光源とする場合には、基板10の開口部160の平面視形状を六角形、四角形、または三角形とすると好適である。
【0031】
基板10および第1の樹脂層141を切断し、第1の支持体151を剥がし、図14A、14Bに示す個片化した発光装置とする。
【0032】
本実施形態によれば、光を発する活性層50を含む島状の半導体積層体70の上面及び側面が、第1導電型半導体層40に接続された第1導電層110、第2導電型半導体層60に接続された第2導電層120、及び第1の樹脂層141により覆われた発光装置を製造することができる。さらに、第1導電層110は、第1導電型半導体層40の側面を連続的に囲んで配置され、その第1導電層110の第2導電型半導体層60側に位置する端部が第2導電層120により連続的に被覆されている。このような発光装置は、半導体積層体70からの光のうち半導体積層体70の上面及び側面に向かう光を反射できるため、半導体積層体70の上面及び側面からの漏れ光を抑制しつつ、光取り出し効率を向上させることができる。したがって、本実施形態に係る発光装置を基板10上に複数配列した表示装置においては、発光装置が配置された発光部間で生じるクロストークの発生を抑制することができる。
発光装置の光出射側に配置された波長変換部材170の周囲が、遮光性を有するSiからなる基板10で囲まれることにより、出射する光の広がりが抑制できるので、エタンデュの小さい光源とできる。
【0033】
<実施形態2>
実施形態2では、実施形態1において発光装置の光出射側に配置された波長変換部材170の周囲を囲むSiからなる基板10の代わりに、遮光性を有する第2の樹脂層142を用いる。
【0034】
具体的には、基板10の第2主面12側を研削研磨した後、島状の半導体積層体70が設けられた領域に対応した位置に基板10を柱状に残されるように、他の領域に位置する基板10を除去する。島状の半導体積層体70と柱状に残された基板10の間の第1絶縁膜91を残して、他の領域の第1絶縁膜91を除去する。
【0035】
柱状に残された基板10、第1導電層110、第2導電層120、および第1の樹脂層141を全面覆う第2の樹脂層142を形成する。第2の樹脂層142に用いる樹脂として、例えばカーボンブラックなどの黒色顔料を添加して着色したエポキシ樹脂を用いることができる。
【0036】
その後、第2の樹脂層142を研削研磨することにより、柱状の基板10の一部を第2の樹脂層142から露出させる。
【0037】
第2の樹脂層を研削研磨することにより露出した基板10をエッチング除去し、第2の樹脂層142に開口部を形成する。この第2の樹脂層142の開口部は、上面視において、半導体積層体70が設けられた領域に対応している。そして、第2の樹脂層142の開口部内に波長変換部材170を設ける。上面視において、第1パッド部113と第1金属部131とが導通する導通面および第2パッド部123と第2金属部132とが導通する導通面が位置する領域に遮光性を有する第2の樹脂層142が設けられる。第2の樹脂層142の表面における反射率は低く黒色となるため、発光素子点灯時と発光素子消灯時とのコントラスト差を大きくでき表示装置に好適である。
【0038】
第2の樹脂層142および第1の樹脂層141を切断し、第1の支持体151を剥がし、個片化する。
【0039】
<実施形態3>
実施形態3では、実施形態1の成長基板としてSiからなる基板10の代わりに、サファイアとAlInGa1-u-vN層(0≦u≦1、0≦v≦1、u+v≦1)からなる基板10をウェハーとして用いる。例えば、サファイアからなる基板10のc面上にGaN低温バッファ層、AlInGa1-u-vN層を順次積層する。
【0040】
AlInGa1-u-vN層がサファイア基板のc面上に積層されたウェハーは、サファイア基板のc面上の全面にAlInGa1-u-vN層を形成したウェハーでもよいし、サファイア基板のc面上の全面にAlInGa1-u-vN層を形成した後、フォトリソグラフィー法とRIEなどのエッチング技術を用い、サファイア基板のc面上に複数の島状のAlInGa1-u-vN層を配列させたウェハーでもよいし、サファイア基板のc面上に選択エピタキシャルにより複数の島状のAlInGa1-u-vN層を配列形成したウェハーでもよい。
【0041】
基板10上に半導体積層体70を選択的にエピタキシャル成長させた後、第1の支持体151へ貼り合せるまでの工程は、実施形態1と基本的に同様であるため適宜説明を省略する。その後、例えばレーザーリフトオフを用いて、基板10を除去し、バッファ層等をRIEにより除去する。基板10を除去した面に、遮光性を有する第2の樹脂層142を形成し、半導体積層体70が設けられた領域に対応する位置に第1導電型半導体層40が露出する開口部を形成する。
【0042】
第2の樹脂層142の開口部に波長変換部材170を充填し、第2の樹脂層142および第1の樹脂層141を個片化予定線に沿って切断し、第1の支持体151を剥がすことで個片化する。
【0043】
<実施形態4>
実施形態1と同様の工程により、図13Bに示すように、第1の支持体151に複数の発光装置が貼り付けられた構造体を準備する。その後、波長変換部材170側に支持部材を貼り付け、第1の支持体151を剥がす。
【0044】
例えば、ガラス基板上に、マトリックス状に第1金属部131及び第2金属部132のそれぞれに対応する複数のTFT素子252と通電PADを配置したTFT付配線基板250を準備する。
【0045】
図15Bに示すように、複数の発光装置をマトリックス状に配置する。図15Cに示すように、TFT付配線基板250の通電PADと、第1金属部131及び第2金属部132とを接合する。接合には、表面活性化接合、熱圧着、半田接合、接着剤による接合等の方法を用いることができる。上面視において、第1金属部131及び第2金属部132の導通面の面積を半導体積層体70の面積よりも大きくすることで、位置合わせおよび接合が容易となる。
【0046】
さらに、図15Aに示すように、映像信号処理回路210に接続された列方向駆動回路220および行方向駆動回路230の電源線(図示せず)、アドレス線、信号線、グランド線(図示せず)とTFT付配線基板250の発光装置のアノード、TFT素子252のゲート、TFT素子252のソース、TFT素子252のドレイン等とをそれぞれ接続し、複数の発光装置を個別点灯制御可能な表示装置200とする。
【0047】
本実施形態における発光装置は、活性層50を含む島状の半導体積層体70が、第2導電層120および第1導電層110と、第1の樹脂層141で覆われ、かつ発光装置の光出射側に配置された波長変換部材170の周囲が遮光性部材であるSiからなる基板10で囲まれている。発光部となる隣接する島状の半導体積層体70間におけるクロストークが防止され、表示装置のコントラスト比を高くできる。
【0048】
上面視において、接合される部分となる金属部の通電面が配置される領域に半導体積層体70が設けられていないため、金属部の通電面に接合の際に生じる熱や機械的応力が半導体積層体70へ伝わりにくくできる。したがって、半導体積層体70の劣化を抑制できる。図15Bに示すように、第1金属部131及び第2金属部132の直下を除く領域にTFT素子252を設ける。これにより、金属部の通電面に接合の際に生じる熱や機械的応力がTFT素子252へ伝わりにくくできるので、TFT素子252の劣化を抑制できる。なお実施形態4においては、複数の発光装置を同時にTFT付配線基板250に接合する例を説明したが、複数の発光装置をTFT付配線基板250に時期をずらして接合する場合にも、前述した効果を得ることができる。
【0049】
<実施形態5>
実施形態4と同様の工程により、発光装置の基板10の開口部160から、赤色光が出射される表示装置、緑色光が出射される表示装置、青色光が出射される表示装置を準備する。そして、これら三種類の表示装置と、コリメートレンズ、ダイクロイックプリズム、投射レンズ等と組合せて、プロジェクターを構成する。
【0050】
このように構成されたプロジェクターによれば、出射される光の広がりが抑制され、エタンデュの小さい表示装置を用いていることで、光の利用効率の高いプロジェクターとすることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 基板
11 第1主面
12 第2主面
21 マスクパターン
31 AlNバッファ層
40 第1導電型半導体層
50 活性層
51 第1の井戸層
52 第2の井戸層
60 第2導電型半導体層
70 半導体積層体
71 第1接続領域
81 マスク層
91 第1絶縁膜
92 第2絶縁膜
110 第1導電層
111 第1半導体接続部
112 第1延伸部
113 第1パッド部
120 第2導電層
121 第2半導体接続部
122 第2延伸部
123 第2パッド部
131 第1金属部
132 第2金属部
141 第1の樹脂層
142 第2の樹脂層
151 第1の支持体
160 基板の開口部
170 波長変換部材
200 表示装置
210 映像信号処理回路
220 列方向駆動回路
230 行方向駆動回路
250 TFT付配線基板
252 TFT素子
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C