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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20230913BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20230913BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20230913BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
H01L33/50
C09K11/80
C09K11/61
C09K11/64
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019233510
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021103709
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩浅 真規子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕二
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-029084(JP,A)
【文献】特開2017-017059(JP,A)
【文献】特開2016-095998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
430nm以上500nm以下の範囲内に主波長を有する発光素子と、
前記発光素子の光に励起され、507nm以上660nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体と、を含む発光装置であり、
490nm以上500nm以下の範囲内に主波長を有する光を発し、
暗所視における光束に対する明所視における光束の比率であるS/P比が6.5以下であり、
前記蛍光体の発光ピーク波長における発光強度よりも前記発光素子の発光ピーク波長における発光強度が高い、発光装置。
【請求項2】
CIE1931色度図のxy色度座標系において、色度座標(x、y)が、(x=0.0082、y=0.5384)を第一点とし、(x=0.0454、y=0.2950)を第二点とし、(x=0.2000、y=0.3200)を第三点とし、(x=0.2000、y=0.4000)を第四点とし、前記第一点と前記第二点を結ぶ第一直線と、前記第二点と前記第三を結ぶ第二直線と、前記第三点と前記第四点を結ぶ第三直線と、前記第四点と前記第一点を結ぶ第四直線とで画定された領域内の光を発する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記S/P比が6.0以下である、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記S/P比が2.0以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光装置の発光スペクトルにおいて、380nm以上780nm以下の波長範囲内の発光スペクトルの積分値Iaに対する、380nm以上531nm以下の波長範囲内の積分値Ibの積分値の比率Ib/Iaが、0.6以上0.95以下の範囲内である、請求項1から4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光装置の発光スペクトルにおいて、前記蛍光体の発光ピーク波長の発光強度bに対する、前記発光素子の発光ピーク波長の発光強度aの発光強度の比率a/bが3.0以上である、請求項1から5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光素子の放射束Faに対する前記発光装置の放射束Fbの放射束の比率Fb/Faが0.75以上である、請求項1から6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記蛍光体と、透光性材料と、を含む波長変換部材を備え、前記波長変換部材は、透光性材料100質量部に対して、前記蛍光体を0.5質量部以上65質量部以下の範囲内で含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記蛍光体の半値幅が、45nm以上120nm以下である、請求項1から8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記蛍光体が、
Y、La、Lu、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも一種の元素Lnと、Ceと、Alと、必要に応じてGa及びScから選択される少なくとも一種の元素と、を含む組成を有する、希土類アルミン酸塩蛍光体、
Siと、Alと、Oと、Nと、Euと、を含む組成を有する、βサイアロン蛍光体、
Caと、Euと、Mgと、Siと、Oと、F、Cl及びBrからなる群から選択される少なくとも一種のハロゲン元素と、を含む組成を有する、ハロシリケート蛍光体、及び
Caと、Euと、Siと、Alと、Nと、必要に応じてSrと、を含む、組成を有する、窒化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種の蛍光体を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記蛍光体が、下記式(1)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体、下記式(2)で表される組成を有するハロシリケート蛍光体、下記式(3)で表される組成を有するβサイアロン蛍光体、及び、下記式(4)で表される組成を有する窒化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種の蛍光体を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の発光装置。
(Y,Lu,Gd)(Al,Ga)12:Ce (1)
(Ca,Sr,Ba)MgSi16(F,Cl,Br):Eu (2)
Si6-zAl8-z:Eu、0≦z≦4.2 (3)
(Sr,Ca)AlSiN:Eu (4)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
暗所と明所ではヒトの眼の視感度が変わることが知られている。明るい環境下である明所視(Photopic Vision)では、ヒトの眼の光受容細胞(視細胞)である錐体細胞の働きにより色の知覚が可能である。暗い環境下である暗所視(Scotopic Vision)では、錐体細胞が機能しないため多くの色は知覚できないが、桿体細胞の働きによって視感度が向上する。
【0003】
明所で活発に働く錐体細胞による視感度のピーク波長は555nmであり、暗所で活発に働く桿体細胞による視感度のピーク波長は507nmであり、暗所と明所では視感度のピークが異なることが知られている。このような現象は、明所では長波長側の色が鮮やかに見え、暗所では短波長側の色が鮮やかに見えるプルキニェ現象(Purkinje Phenomenon)として知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、プルキニェ現象を利用した照明装置として、暗所と明所の中間の明るさの薄明視環境下において、運転手は歩道側の視認性が高く、歩行者は視認性が高く、車道側と歩道側とで色斑を感じにくい、白色光を発する道路灯が提案されている。特許文献1には、明所視に対する暗所視の比率であるS/P比が高いほど、薄明視環境下における視認性が高い光であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-220312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、S/P比が高すぎると、ヒトの眼では、明所視で暗く感じられ、暗所視で眩しく感じられる場合がある。また、発光素子と蛍光体とを組み合わせて発光装置を構成する場合には、蛍光体の波長変換効率がより高いことも求められる。
本発明の一態様は、暗所視でも明所視でも明るく、ヒトに対する眩しさを低減するとともに、蛍光体の波長変換効率がより高い発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、430nm以上500nm以下の範囲内に主波長を有する発光素子と、前記発光素子の光に励起され、507nm以上660nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体と、を含む発光装置であり、490nm以上500nm以下の範囲内に主波長を有する光を発し、暗所視における光束に対する明所視における光束の比率であるS/P比が6.5以下であり、前記蛍光体の発光ピーク波長における発光強度よりも前記発光素子の発光ピーク波長における発光強度が高い、発光装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、暗所視でも明所視でも明るく、ヒトに対する眩しさを低減した発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、明所視標準分光視感効率V(λ)と暗所視標準分光視感効率V’(λ)を示す図である。
図2図2は、CIE1931色度図のxy色度座標系の一部における領域Aを示す図である。
図3図3は、本発明の第一態様の発光装置の概略断面図である。
図4A図4Aは、本発明の第二態様の発光装置の概略平面図である。
図4B図4Bは、本発明の第二態様の発光装置の概略断面図である。
図5図5は、各蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
図6図6は、各蛍光体の発光スペクトルを示す図である。
図7図7は、実施例1から3に係る発光装置の発光スペクトルを示す図である。
図8図8は、実施例4から6に係る発光装置の発光スペクトルを示す図である。
図9図9は、比較例1から5に係る発光装置の発光スペクトルを示す図である。
図10図10は、実施例1から6に係る発光装置の発光色の色度座標(x、y)と、目的とする色調範囲(領域A)をCIE1931色度図に示した図である。
図11図11は、比較例1から5に係る発光装置の発光色の色度座標(x、y)と、目的とする色調範囲(領域A)をCIE1931色度図に示した図である。
図12図12は、実施例7から9に係る発光装置の発光スペクトルを示す図である。
図13図13は、実施例10から13に係る発光装置の発光スペクトルを示す図である。
図14図14は、比較例6から11に係る発光装置の発光スペクトルを示す図である。
図15図15は、実施例7から13に係る発光装置の発光色の色度座標(x、y)と、目的とする色調範囲(領域A)をCIE1931色度図に示した図である。
図16図16は、比較例6から11に係る発光装置の発光色の色度座標(x、y)と、目的とする色調範囲(領域A)をCIE1931色度図に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る発光装置を一実施形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具現化するための例示であって、本発明は、以下の発光装置に限定されない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係は、JIS Z8110に従う。また、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分が該当する物質が複数存在する場合は、特に断りのない限り、組成部中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0011】
発光装置
発光装置は、430nm以上500nm以下の範囲内に主波長を有する発光素子と、前記発光素子の光に励起され、507nm以上660nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する蛍光体と、を含む発光装置であり、490nm以上500nm以下の範囲内に主波長を有する光を発し、暗所視における光束に対する明所視における光束の比率であるS/P比が6.5以下であり、前記蛍光体の発光ピーク波長における発光強度よりも前記発光素子の発光ピーク波長における発光強度が高い。
【0012】
発光素子の主波長とは、CIE(国際照明委員会:Commission international de l’eclairage)1931色度図における白色光の色度座標(x=0.3333、y=0.3333)と、発光素子の発光色の色度座標(x、y)を直線で結び、その延長線とスペクトル軌跡が交わる点の波長をいう。発光装置の主波長とは、CIE1931色度図における白色光の色度座標(x=0.3333、y=0.3333)と、発光装置の発光色の色度座標(x、y)を直線で結び、その延長線とスペクトル軌跡が交わる点の波長をいう。
【0013】
発光装置は、青色から青緑色の波長範囲に主波長を有する発光素子と、緑色、黄緑色、黄色、黄赤色、及び赤色の波長範囲に発光ピーク波長を有する蛍光体とを含み、青緑色から緑色の波長範囲に主波長を有する光を発する。明所視における光束に対する暗所視における光束の比率であるS/P比が高いほど、ヒトの視認性が高くなることが知られている。図1は、明所視標準分光視感効率V(λ)と暗所視標準分光視感効率V’(λ)を示す図である。図1に示すように、明所視標準分光視感効率V(λ)におけるピーク波長は555nmであり、暗所視標準分光視感効率V’(λ)のピーク波長は507nmであり、暗所と明所では視感度のピークが異なる。明所と暗所ではヒトの眼の視感度のピーク波長が異なるため、ヒトの眼には、プルキニェ現象によって、明所では長波長側の色が鮮やかに見え、暗所では短波長側の色が鮮やかに見えることが知られている。青緑色から緑色の波長範囲に主波長を有する光を発する発光装置は、視認性を高めるためにS/P比を高くすると、暗所で視認された場合に、短波長側の色が鮮やかになりすぎて、眩しく感じられる場合がある。本発明の実施形態に係る発光装置は、青緑色を含む青色から緑色の波長範囲に主波長を有する光を発する場合においても、S/P比を6.5以下にして、暗所における光束と明所における光束の差を低減し、暗所視でも明所視でも明るく見え、優れた視認性を維持することができ、ヒトが感じる眩しさを低減することができる。
【0014】
発光装置から発せられる光の暗所視における光束に対する明所視における光束の比率であるS/P比は、6.5以下であり、好ましくは6.0以下であり、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは3.0以上であり、さらに好ましくは4.0以上である。発光装置から発せられる光のS/P比が6.5以下であり、暗所視における光束と明所視における光束の差を低減することによって、青緑色を含む青色から緑色の波長範囲に主波長を有する光を発する発光装置においても、暗所視でも明所視でも明るく見える優れた視認性を維持しながら、暗所視においても明所視においてもヒトが感じる眩しさを低減した光を発することができる。発光装置又は発光素子から発せられる光の主波長、光束、後述するCIE1931色度図のxy色度座標系における色度座標、放射束は、分光測光装置(例えばPMA-11、浜松ホトニクス株式会社製)及び積分球を組み合わせた光計測システム用いて測定することができる。また、暗所における光束と明所における光束の比率であるS/P比は、計算式(i)に基づき算出することができる。
【0015】
S/P比(RSP)は、V(λ)を明所視における分光視感効率(明所視標準分光視感効率)とし、V’(λ)を暗所視における分光視感効率(暗所視標準分光視感効率)とした場合、下記計算式(i)に基づき算出することができる。
【0016】
【数1】
【0017】
計算式(i)中、定数Kは、6831lm/Wであり、定数K’は1700lm/Wであり、Φe(λ)は、実施例及び比較例の各発光装置の放射束(分光全放射束)である。
【0018】
発光装置は、CIE1931色度図のxy色度座標系において、色度座標(x、y)が、(x=0.0082、y=0.5384)を第一点とし、(x=0.0454、y=0.2950)を第二点とし、(x=0.2000、y=0.3200)を第三点とし、(x=0.2000、y=0.4000)を第四点とし、前記第一点と前記第二点を結ぶ第一直線と、前記第二点と前記第三を結ぶ第二直線と、前記第三点と前記第四点を結ぶ第三直線と、前記第四点と前記第一点を結ぶ第四直線とで画定された領域内の光を発することが好ましい。図2は、CIE1931色度図のxy色度座標系の一部を示す。発光装置1は、図2における第一点及び第二点、第二点及び第三点、第三点及び第四点、第四点及び第一点を結ぶ直線で囲われた領域A内の光を発することが好ましい。発光装置は、図2における領域A内の光を発し、領域A内の光は、490nm以上500nm以下の範囲内に主波長を有し、青緑色を含む青色から緑色を呈する。
【0019】
発光装置の発光スペクトルにおいて、380nm以上780nm以下の波長範囲内の積分値Iaに対する380nm以上531nm以下の波長範囲内の積分値Ibの積分値の比率Ib/Iaが、好ましくは0.6以上0.95以下の範囲内であり、より好ましくは0.65以上0.94以下の範囲内であり、さらに好ましくは0.70以上0.93以下の範囲内であり、特に好ましくは0.75以上0.92以下の範囲内である。発光装置の発光スペクトルにおいて、前記積分値の比率Ib/Iaが0.6以上0.95以下の範囲内であると、青緑色を含む青色から緑色の波長範囲に主波長を有する光が発光装置から発せられ、暗所視でも明所視でも明るく見える優れた視認性を維持しながら、暗所視においても明所視においてもヒトが感じる眩しさを低減した光を発することができる。発光装置の発光スペクトル、測定した発光スペクトルにおける380nm以上780nm以下の波長範囲内の積分値Ia、380nm以上531nm以下の波長範囲内の積分値Ib、後述する発光装置の発光スペクトルにおける蛍光体の発光ピーク波長の発光強度b、及び発光装置の発光スペクトルにおける発光素子の発光ピーク波長の発光強度aは、分光測光装置(例えばPMA-11、浜松ホトニクス株式会社製)及び積分球を組み合わせた光計測システムを用いて測定することができる。測定した積分値Ia及び積分値Ibから積分値の比率Ib/Iaを求めることができる。測定した発光装置の発光スペクトルにおける発光素子の発光ピーク波長の発光強度a及び蛍光体の発光ピーク波長の発光強度bから、後述する発光強度の比率a/bを求めることができる。
【0020】
発光装置は、発光装置の発光スペクトルにおいて、蛍光体の発光ピーク波長の発光強度bよりも、発光素子の発光ピーク波長の発光強度aが高い。発光装置は、発光素子の発光ピーク波長の発光強度aの方が、蛍光体の発光ピーク波長の波長強度bよりも高いため、青緑色を含む青色から緑色の波長範囲に主波長を有する光を発する場合においても、S/P比を6.5以下にして、暗所における光束と明所における光束の差を低減し、暗所視でも明所視でも明るく見え、優れた視認性を維持することができ、ヒトが感じる眩しさを低減することができる。
【0021】
発光装置の発光スペクトルにおいて、蛍光体の発光ピーク波長の発光強度bに対する、発光素子の発光ピーク波長の発光強度aの発光強度の比率a/bが3.0以上であることが好ましい。発光装置の発光スペクトルにおいて、蛍光体の発光ピーク波長の発光強度bに対する、発光素子の発光ピーク波長の発光強度aの発光強度の比率a/bが3.0以上であると、発光装置から490nm以上500nm以下の範囲内に主波長を有する光を発し、S/P比が6.5以下であり、暗所視でも明所視でも明るく見える優れた視認性を維持しながら、暗所視においても明所視においてもヒトが感じる眩しさを低減した光を発することができる。発光装置の発光スペクトルにおいて、発光強度の比率a/bが3.0未満であると、発光装置から発せられる光は、蛍光体の発光ピーク波長の発光強度に対して発光素子の発光ピーク波長の発光強度が低くなり、暗所視でも明所視でも明るく見える視認性を維持できない場合がある。発光装置の発光スペクトルにおいて、発光強度の比率a/bは、より好ましくは3.5以上であり、4.0以上であってもよい。発光装置の発光スペクトルにおいて、蛍光体の発光ピーク波長の発光強度bに対する、発光素子の発光ピーク波長の発光強度aの発光強度の比率a/bは、50以下であってもよく、45以下であってもよい。
【0022】
発光装置は、発光素子の放射束Faに対する発光装置の放射束Fbの放射束の比率Fb/Faが0.75以上である光を発することが好ましい。発光装置から発せられる光の放射束Fbと、発光装置に用いる発光素子の放射束Faとの放射束の比率Fb/Faが、0.75以上であると、発光素子の発光の放射エネルギーが維持された状態で、青緑色を含む青色から緑色の発光色を呈し、ヒトが感じる眩しさを低減しながら、暗所視でも明所視でも明るく見え、優れた視認性を維持した光が発光装置から出射される。発光装置は、放射束の比率Fb/Faが0.76以上である光を発することがより好ましく、放射束の比率Fb/Faが0.78以上である光を発することがさらに好ましく、放射束の比率Fb/Faが0.80以上の光を発することが特に好ましい。発光素子の放射束Faに対する発光装置の放射束Fb放射束の比率Fb/Faは、通常1以下であり、0.99以下であってもよく、0.98以下であってもよい。
【0023】
発光素子
発光素子は、例えば、組成式がInAlYGa1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)表される窒化物系半導体を用いた半導体発光素子である、発光ダイオード(LED)チップ又はレーザダイオード(LD)チップを用いることができ、LEDチップを用いることが好ましい。
【0024】
発光素子は、430nm以上500nm以下の範囲内に主波長を有する。発光素子から発せられる光の主波長は、440nm以上500nm以下の範囲内であることが好ましく、450nm以上500nm以下の範囲内であることがより好ましい。
【0025】
発光素子は、好ましくは380nm以上500nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、より好ましくは390nm以上495nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、さらに好ましくは400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、特に好ましくは420nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。
【0026】
発光素子は、p電極及びn電極が設けられている。発光素子のp電極及びn電極は、発光素子の同じ側の面に形成されていてもよく、異なる側の面に設けられていてもよい。発光素子は、フリップチップ実装されていてもよい。
【0027】
蛍光体
蛍光体は、発光素子の光に励起され、507nm以上660nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。蛍光体の発光ピーク波長は、510nm以上655nm以下の範囲内にあることが好ましく、520nm以上650nm以下の範囲内にあることがより好ましい。
【0028】
蛍光体の半値幅は、45nm以上120nm以下の範囲内であることが好ましい。蛍光体の半値幅(半値全幅)は、蛍光体の発光スペクトルにおいて最大発光強度の50%の発光強度を示す発光スペクトルの波長幅を意味する。蛍光体の半値幅は、より好ましくは48nm以上110nm以下の範囲内であり、さらに好ましくは50nm以上105nm以下の範囲内である。
【0029】
蛍光体は、(I)Y、La、Lu、Gd及びTbからなる群から選択される少なくとも一種の元素Lnと、Ceと、Alと、必要に応じてGa及びScから選択される少なくとも一種の元素と、を含む組成を有する、希土類アルミン酸塩蛍光体、(II)Siと、Alと、Oと、Nと、Euと、を含む組成を有する、βサイアロン蛍光体、(III)Caと、Euと、Mgと、Siと、Oと、F、Cl及びBrからなる群から選択される少なくとも一種のハロゲン元素と、を含む組成を有する、ハロシリケート蛍光体、及び(IV)Caと、Euと、Siと、Alと、Nと、必要に応じてSrと、を含む、組成を有する、窒化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種の蛍光体を含むことが好ましい。発光装置は、430nm以上500nm以下の範囲内に主波長を有する発光素子と共に、希土類アルミン酸塩蛍光体、βサイアロン蛍光体、ハロシリケート蛍光体及び窒化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種の蛍光体を含むことにより、490nm以上500nm以下の範囲内に主波長を有する光が発せられる。
【0030】
蛍光体は、下記式(1)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体、下記式(2)で表される組成を有するハロシリケート蛍光体、下記式(3)で表される組成を有するβサイアロン蛍光体、及び、下記式(4)で表される組成を有する窒化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも一種の蛍光体を含むことが好ましい。蛍光体は、下記式(1)から(4)で表される組成を有する蛍光体の二種以上を含んでいてもよい。
(Y,Lu,Gd)(Al,Ga)12:Ce (1)
(Ca,Sr,Ba)MgSi16(F,Cl,Br):Eu (2)
Si6-zAl8-z:Eu、0≦z≦4.2 (3)
(Sr,Ca)AlSiN:Eu (4)
【0031】
本明細書において、蛍光体の組成を示す組成式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これら複数の元素のうち少なくとも一種の元素を組成中に含むことを意味し、複数の元素から二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。また、蛍光体の組成を示す式中、コロン(:)の前は母体結晶を構成する元素及びそのモル比を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。「モル比」は、蛍光体の組成の1モル中の元素のモル量を表す。
【0032】
希土類アルミン酸塩蛍光体は、下記式(1a)で表される組成を有していてもよい。
(Y1-a-b-cLuGd(Al1-cGa12:Ce (1a)
式(1a)中、a、b、c及びdは、それぞれ0≦a≦1.0、0≦b≦1.0、0≦a+b≦1.0、0≦c≦1.0、0<d≦0.022を満たす数である。式(1a)中、dは、0.001≦d≦0.021であってもよい。
を表す。
【0033】
ハロシリケート蛍光体は、下記式(2a)で表される組成を有していてもよい。
(Ca1-e-fSrBaMgSi16(F1-g-hClBr:Eu (2a)
式(2a)中、e、f、g、h及びiは、それぞれ0≦e≦1.0、0≦f≦1.0、0≦e+f≦1.0、0≦g≦1.0、0≦h≦1.0、0≦g+h≦1.0、0<i≦1.0を満たす数である。式(2a)中、iは、0.01≦i≦0.9を満たす数であってもよい。式(2a)中、gは、0<g≦1.0を満たす数であってもよい。
【0034】
βサイアロン蛍光体は、下記式(3a)で表される組成を有していてもよい。
Si6-zAl8-z:Eu (3a)
式(3a)中、j及びzは、0<j≦1.0、0<z≦4.2を満たす数である。式(3a)中、jは、0.01≦j≦0.9を満たす数であってもよい。
【0035】
窒化物蛍光体は、下記式(4a)で表される組成を有していてもよい。
(Sr1-kCa)AlSiN:Eu (4a)
式(4a)中、k及びmは、0≦k≦1.0、0<m≦1.0を満たす数である。式(4a)中、mは、0.0001≦m≦0.9を満たす数であってもよい。
【0036】
蛍光体の平均粒径は、好ましくは2μm以上40μm以下の範囲内であり、より好ましくは3μm以上30μm以下の範囲内であり、さらに好ましくは5μm以上25μm以下の範囲内である。蛍光体粒子の粒径は大きいほうが、発光素子から発せられた光を効率よく波長変換することができ、光取り出し効率を向上させることができる。一方、蛍光体粒子が大きすぎると、発光装置の製造工程における作業性が低下する。蛍光体粒子の平均粒径は、フィッシャーサブシーブサイザー法(Fisher Sub-Sieve Sizer)法(以下、「FSSS法」とも称する。)で測定することができる。FSSS法は、空気透過法の一種であり、空気の流通抵抗を利用して比表面積を測定し、主に一次粒子の粒径を求める方法である。FSSS法で測定された平均粒径は、フィッシャーサブシーブサイザーズナンバー(Fisher Sub-Sieve Sizer’s Number)である。
【0037】
波長変換部材
発光装置は、蛍光体と、透光性材料とを含む波長変換部材を備えることが好ましい。波長変換部材は、透光性材料100質量部に対して、蛍光体を0.5質量部以上65質量部以下の範囲内で含むことが好ましい。発光装置は、発光素子の発光によって励起される蛍光体を含む波長変換部材を備え、発光素子の光の出射側に波長変換部材を配置することによって、発光素子からの光を波長変換部材に含まれる蛍光体で効率よく波長変換することができる。波長変換部材は、透光性材料100質量部に対して、蛍光体を1質量部以上含んでいてもよく、60質量部以下含んでいてもよい。
【0038】
透光性材料
透光性材料は、樹脂、ガラス及び無機物からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、及びポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。無機物は、酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。波長変換部材には、蛍光体と透光性材料の他に、必要に応じてフィラー、着色剤、光拡散材を含んでいてもよい。フィラーとしては、例えば酸化ケイ素、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられる。波長変換部材に含まれる蛍光体及び透光性材料以外のその他の成分の含有量は、その他の成分の合計の含有量で、透光性材料100質量部に対して、0.01質量部以上50質量部以下の範囲内とすることができ、0.1質量部以上45質量部以下の範囲内でもよく、0.5質量部以上40質量部以下の範囲内でもよい。
【0039】
第一態様の発光装置
発光装置の例を図面に基づき説明する。図3は、第一態様の発光装置100の概略断面図である。発光装置100は、430nm以上500nm以下の範囲内に主波長を有する発光素子11と、発光素子11からの光により励起されて発光する少なくとも一種の蛍光体21を含む波長変換部材31と、成形体41とを備える。成形体41は、第1リード51と、第2リード52と、樹脂を含む樹脂部42が一体的に成形されてなるものである。成形体41は、底面と側面とを有する凹部を形成しており、凹部の底面に発光素子11が載置されている。発光素子11は、一対の正負の電極を有しており、その一対の正負電極はそれぞれ第1リード51と第2リード52に導電部材61であるワイヤを介して電気的に接続されている。発光素子11は、波長変換部材31により被覆されていている。波長変換部材31は、蛍光体21と透光性材料を含む。蛍光体21は、発光素子11からの光により励起されて特定の波長範囲に少なくとも1つの発光ピーク波長を有する。波長変換部材31には、発光ピーク波長が異なる二種以上の蛍光体21が含まれていてもよい。発光素子11の正負一対の電極に接続された第1リード51及び第2リード52は、成形体41の外方に向けて一部が露出されている。第1リード51及び第2リード52を介して、発光装置100の外部から電力の供給を受けて、発光装置100を発光させることができる。
【0040】
第一態様の発光装置100における波長変換部材31は、蛍光体21と透光性材料とを含み、透光性材料が樹脂であることが好ましい。第一態様の発光装置100に用いる波長変換部材31に用いる透光性材料である樹脂は、前述の透光性材料に用いる樹脂が挙げられる。
【0041】
第一態様の発光装置の製造方法
第一態様の発光装置の製造方法の一例を説明する。なお、詳細は、例えば特開2010-062272号公報の開示を参照することもできる。発光装置の製造方法は、成形体の準備工程と、発光素子の配置工程と、波長変換部材用組成物の配置工程と、樹脂パッケージ形成工程とを含むことが好ましい。成形体として、複数の凹部を有する集合成形体を用いる場合には、樹脂パッケージ形成工程後に、各単位領域の樹脂パッケージごとに分離する個片化工程を含んでいてもよい。
【0042】
成形体の準備工程において、複数のリードを熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を用いて一体成形し、側面と底面とを有する凹部を有する成形体を準備する。成形体は、複数の凹部を含む集合基体からなる成形体であってもよい。
発光素子の配置工程において、成形体の凹部の底面に発光素子が配置され、発光素子の正負の電極が第1リード及び第2リードにワイヤにより接続される。
波長変換部材用組成物の配置工程において、成形体の凹部に波長変換部材用組成物が配置される。
樹脂パッケージ成形工程において、成形体の凹部に配置された波長変換部材用組成物を硬化させて、樹脂パッケージが形成され、発光装置が製造される。複数の凹部を含む集合体基体からなる成形体を用いた場合は、樹脂パッケージの形成工程後に、個片化工程において、複数の凹部を有する集合基体の各単位領域の樹脂パッケージごとに分離され、個々の発光装置が製造される。以上のようにして、図3に示す第一態様の発光装置を製造することができる。
【0043】
第二態様の発光装置
図4Aは、第二態様の発光装置200の概略平面図であり、図4Bは、図4Aに示す発光装置200のIIA-IIA’線の概略断面図である。発光装置200は、430nm以上500nm以下の範囲内に主波長を有する発光素子12と、発光素子12からの光により励起されて発光する少なくとも一種の蛍光体を含む波長変換部材32と波長変換部材32と一体的に成形された透光体33とを含む波長変換体34とを備える。発光素子12は、基板72上に導電部材62であるバンプを介してフリップチップ実装されている。波長変換体34の波長変換部材32は、接着層82を介して発光素子12の発光面上に設けられている。発光素子12及び波長変換体34は、その側面が光を反射する被覆部材92によって覆われている。波長変換部材32は、発光素子12からの光により励起されて特定の波長範囲に少なくとも1つの発光ピーク波長を有する蛍光体を含む。波長変換部材32には、発光ピーク波長の波長範囲の異なる二種以上の蛍光体が含まれていてもよい。発光素子12は、基板72上に形成された配線及び導電部材62を介して、発光装置200の外部からの電力の供給を受けて、発光装置200を発光させることができる。発光装置200は、発光素子12を過大な電圧の印加による破壊から防ぐための保護素子等の半導体素子13を含んでいてもよい。被覆部材92は、例えば半導体素子13を覆うように設けられる。以下、第二態様の発光装置に用いる各部材について説明する。なお、詳細は、例えば特開2014-112635号公報の開示を参照することもできる。
【0044】
第二態様の発光装置の基板
基板は、絶縁性材料であって、発光素子からの光や外光を透過し難い材料からなることが好ましい。基板の材料としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等のセラミックス、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)、ポリフタルアミド(PPA)樹脂等の樹脂を上げることができる。セラミックスは耐熱性が高いため、基板の材料として好ましい。
【0045】
第二態様の発光装置の波長変換体
波長変換部材
波長変換体は、蛍光体と透光性材料を含む波長変換部材を含むことが好ましく、さらにその波長変換部材が配置される透光体とを備えることがより好ましい。
波長変換部材は、蛍光体と、樹脂、ガラス及び無機物(例えば、酸化アルミニウム)からなる群から選択される少なくとも一種の前述の透光性材料とを含み、シート状又は板状に形成することが好ましい。波長変換部材は一層であってもよく、二層以上であってもよい。波長変換部材には、蛍光体と透光性材料の他に、必要に応じてフィラー、着色剤、光拡散材を含んでいてもよい。
【0046】
波長変換部材は、蛍光体と透光性材料である前述のガラスや無機物を焼結させたセラミックス複合体を用い、シート状又は板状にして、波長変換部材として用いてもよい。
【0047】
透光体
透光体は、ガラスや樹脂のような透光性材料からなる板状体を用いることができる。ガラスは、例えばホウ珪酸ガラスや石英ガラスが挙げられる。樹脂は、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂が挙げられる。透光体の厚さは、製造工程における機械的強度が低下せず、蛍光体層を十分に支持することができる厚さであればよい。透光体には拡散剤が含有されていてもよい。透光体に拡散剤が含有されていると、発光装置から発せられる光の色むら、輝度むらを抑制することができる。拡散剤は、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、及び酸化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一種を用いることができる。
【0048】
接着層
発光素子と波長変換部材の間には、接着層が介在し、発光素子と波長変換部材とを固着する。接着層を構成する接着剤は、発光素子と波長変換部材を光学的に連結できる材料からなることが好ましい。接着層を構成する材料としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、及びポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂であることが好ましい。
【0049】
半導体素子
発光装置に必要に応じて設けられる半導体素子は、例えば発光素子を制御するためのトランジスタや、過大な電圧印加による発光素子の破壊や性能劣化を抑制するための保護素子が挙げられる。保護素子としてはツェナーダイオード(Zener Diode)が挙げられる。
【0050】
被覆部材
被覆部材の材料としては、絶縁材料を用いることが好ましい。より具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)、ポリフタルアミド(PPA)樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。被覆部材には、必要に応じて着色剤、フィラーを添加してもよい。フィラーとしては、イットリウム、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、マグネシウム及びケイ素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む酸化物であることが好ましい。被覆部材に含まれるフィラーの量は、樹脂100質量部に対して、反射性及び作業性を考慮して、10質量部以上100質量部以下の範囲内であることが好ましい。
【0051】
導電部材
導電部材としては、バンプを用いることができ、バンプの材料としては、Auあるいはその合金、他の導電部材として、共晶ハンダ(Au-Sn)、Pb-Sn、鉛フリーハンダ等を用いることができる。発光装置は、基板上に配置された発光素子、半導体素子、導電部材を、塵芥、水分、外力から保護するためにアンダーフィルを備えていてもよい。アンダーフィルの材料としては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂が挙げられる。アンダーフィルは、これらの樹脂に、必要に応じて着色剤、光拡散剤、フィラーを含有させることができる。
【0052】
第二態様の発光装置の製造方法
第二態様の発光装置の製造方法の一例を説明する。なお、詳細は、例えば特開2014-112635号公報、又は、特開2017-117912号公報の開示を参照することもできる。発光装置の製造方法は、発光素子の配置工程、必要に応じて半導体素子の配置工程、波長変換部材を含む波長変換体の形成工程、発光素子と波長変換部材の接着工程、被覆部材の形成工程を含むことが好ましい。複数の発光素子、波長変換部材及び半導体素子を1つの基板上に配置させた集合基板を形成した場合には、各単位領域の樹脂パッケージごとに分離する個片化工程を含んでいてもよい。
【0053】
発光素子の配置工程
発光素子の配置工程において、基板上に発光素子を配置し、実装する。集合基板を用いる場合には、集合基板上に複数の発光素子を配置する。また、配置された発光素子の行又は列方向のいずれか一方向で、発光素子とその隣の発光素子の間に、必要に応じて半導体素子を配置してもよい。発光素子と半導体素子とは、例えば、基板上にフリップチップ実装される。
【0054】
波長変換部材を含む波長変換体の形成工程
波長変換部材を含む波長変換体の形成工程において、波長変換部材は、透光体の一面に印刷法、接着法、圧縮成形法、電着法により板状、シート状又は層状の波長変換部材を形成することによって得てもよい。例えば、印刷法は、蛍光体と、バインダー又は溶剤となる樹脂とを含む波長変換部材用組成物を透光体の一面に印刷し、波長変換部材を含む波長変換体を形成することができる。
【0055】
発光素子と波長変換部材の接着工程
発光素子と波長変換部材の接着工程において、波長変換部材を発光素子の発光面に対向させて、発光素子上に波長変換部材と透光体とを含む波長変換体を接着層により接合する。好ましい形態では、波長変換体の発光素子との接合面、すなわち、波長変換部材の発光素子との接合面は、発光素子の接合面より大きい方が好ましい。
【0056】
被覆部材の形成工程
被覆部材の形成工程において、発光面を除く、発光素子、及び波長変換部材と透光体を含む波長変換体の側面が、被覆部材用組成物で覆われ、発光面を除く発光素子及び波長変換体の側面に被覆部材が形成される。集合基板上に複数の発光素子及び半導体素子が配置され、各発光素子上に波長変換体が接合される場合は、発光素子及び波長変換体と、半導体素子の間に被覆部材用組成物が充填される。この被覆部材は、発光素子から出射された光を反射させるためのものであり、波長変換体の発光面を覆うことなく側面を覆い、かつ半導体素子を埋設するように形成される。
【0057】
集合基板上に複数の発光素子及び波長変換体と、半導体素子が配置されている場合には、単位領域ごとに、発光素子及び波長変換体と半導体素子を1つずつ含むように被覆部材及び集合基板を切断して、単位領域ごとに分離され、個々の発光装置が製造される。各単位領域の樹脂パッケージごとに分離され、個々の発光装置が製造される。以上のようにして、図4A及び図4Bに示す第二態様の発光装置を製造することができる。
【実施例
【0058】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
蛍光体
実施例及び比較例の各発光装置に用いる蛍光体1から蛍光体8を表1に示す。蛍光体1(BSiON)は、BaSi:Euで表される組成を有する窒化物蛍光体である。蛍光体2(SAE)はSrAl25:Euで表される組成を有するアルミン酸塩蛍光体である。蛍光体3(LAG)は、前記式(1)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体である。蛍光体4(βサイアロン)は、前記式(3)で表される組成を有するβサイアロン蛍光体である。蛍光体5(クロロシリケート)は、前記式(2)で表される組成を有し、Clを含む組成を有するハロシリケート蛍光体の一種である。蛍光体6(SCASN-1)、蛍光体6と組成のモル比が異なる蛍光体7(SCASN-2)及び蛍光体8(CASN-1)は、前記式(4)で表される組成を有する窒化物蛍光体である。各蛍光体の評価の方法を以下に記載し、評価の結果を表1に示す。
【0060】
蛍光体の評価
発光特性
各蛍光体について、発光特性を測定した。蛍光体の発光特性は、量子効率測定装置(QE-2000、大塚電子株式会社製)を用いて、励起光の波長を450nmの光を各蛍光体に照射し、室温(25℃±5℃)における発光スペクトルを測定した。各蛍光体の発光スペクトルから、各蛍光体について、CIE色度図における色度座標系における色度座標(x、y)を求めた。図5及び図6に各蛍光体の発光スペクトルを示す。得られた各蛍光体の発光スペクトルから、発光ピーク波長(nm)及び半値幅を求めた。
【0061】
平均粒径
各蛍光体について、Fisher Sub-Sieve Sizer Model 95(Fisher Scientific社製)を用いて、FSSS法により平均粒径を測定した。
【0062】
組成分析
蛍光体6から8の式(4)で表される組成を有する窒化物蛍光体について、ICP-AES装置(Perkin Elmer製)及びイオンクロマトグラフィーシステム(DIONEX日本製)を用いて組成中のSr、Eu及びCaを分析した。SrとEuとCaの合計を1モルとした場合のSr、Eu及びCaの各元素のモル比率を算出した。
【0063】
【表1】
【0064】
図5及び図6に示すように、式(1)で表される組成を有する蛍光体3(LAG)、式(3)で表される組成を有する蛍光体4(βサイアロン)、式(2)で表される組成を有する蛍光体5(クロロシリケート)、式(4)で表される組成を有する蛍光体6、7、8(SCASN-1、SCASN-2、CASN-1)は、暗所視における分光標準視感効率のピーク波長である507nm以上の波長範囲に発光ピーク波長を有していた。
図5に示すように、窒化物蛍光体である蛍光体1(BSiON)及びアルミン酸塩蛍光体である蛍光体2(SAE)は、暗所視における分光標準視感効率のピーク波長である507nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有していた。
【0065】
実施例1
第一態様の発光装置を製造した。第1リードと第2リードと、側面と側面とを有する凹部を有する成形体を準備した。主波長が483nmである窒化物系半導体を用いた発光素子を準備し、凹部の底面に発光素子を配置し、第1リード及び第2リードにワイヤにより接続した。透光性材料としてシリコーン樹脂100質量部に対して式(1)で表される組成を有する蛍光体3(LAG)を30質量部含む波長変換部材用組成物を準備し、成形体の凹部内に波長変換部材用組成物を充填した。150℃で3時間加熱して波長変換部材用組成物を硬化させ、波長変換部材を形成して樹脂パッケージを形成し、第一態様の発光装置を製造した。
【0066】
実施例2
透光性材料としてシリコーン樹脂100質量部に対して式(3)で表される組成を有する蛍光体4(βサイアロン)を20質量部含む波長変換部材用組成物を準備し、この波長変換部材用組成物を用いて波長変換部材を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、第一態様の発光装置を製造した。
【0067】
実施例3
透光性材料としてシリコーン樹脂100質量部に対して式(2)で表される組成を有する蛍光体5(クロロシリケート)を10質量部含む波長変換部材用組成物を準備し、この波長変換部材用組成物を用いて波長変換部材を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、第一態様の発光装置を製造した。
【0068】
実施例4
主波長が494nmである窒化物系半導体を用いた発光素子を用いたことと、透光性材料としてシリコーン樹脂100質量部に対して式(4)で表される組成を有する蛍光体6(SCASN-1)を1質量部含む波長変換部材用組成物を準備し、この波長変換部材用組成物を用いて波長変換部材を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、第一態様の発光装置を製造した。
【0069】
実施例5
透光性材料としてシリコーン樹脂100質量部に対して式(4)で表される組成を有する蛍光体7(SCASN-2)を2量部含む波長変換部材用組成物を準備し、この波長変換部材用組成物を用いて波長変換部材を形成したこと以外は、実施例4と同様にして、第一態様の発光装置を製造した。
【0070】
実施例6
透光性材料としてシリコーン樹脂100質量部に対して式(4)で表される組成を有する蛍光体8(CASN-1)を2量部含む波長変換部材用組成物を準備し、この波長変換部材用組成物を用いて波長変換部材を形成したこと以外は、実施例4と同様にして、第一態様の発光装置を製造した。
【0071】
比較例1
主波長が449nmである窒化物系半導体を用いた発光素子を準備し、この発光素子を用いたことと、透光性材料としてシリコーン樹脂を用い、蛍光体を含まない封止部材を波長変換部材の代わりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして、第一態様の発光装置を製造した。
【0072】
比較例2
透光性材料としてシリコーン樹脂を用い、蛍光体を含まない封止部材を波長変換部材の代わりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして、第一態様の発光装置を製造した。
【0073】
比較例3
主波長が494nmである窒化物系半導体を用いた発光素子を準備し、この発光素子を用いたことと、透光性材料としてシリコーン樹脂を用い、蛍光体を含まない封止部材を波長変換部材の代わりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして、第一態様の発光装置を製造した。
【0074】
比較例4
主波長が449nmである窒化物系半導体を用いた発光素子を準備し、この発光素子を用いたことと、透光性材料としてシリコーン樹脂100質量部に対して、窒化物蛍光体である蛍光体1(BSiON)を45質量部含む波長変換部材用組成物を準備し、この波長変換部材用組成物を用いて波長変換部材を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、第一態様の発光装置を製造した。
【0075】
比較例5
主波長が449nmである窒化物系半導体を用いた発光素子を準備し、この発光素子を用いたことと、透光性材料としてシリコーン樹脂100質量部に対して、アルミン酸塩蛍光体である蛍光体2(SAE)を80質量部含む波長変換部材用組成物を準備し、この波長変換部材用組成物を用いて波長変換部材を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、第一態様の発光装置を製造した。
【0076】
発光素子の評価
発光素子の色度座標(x、y)、放射束
実施例及び比較例に用いた各発光素子について、分光測光装置(PMA-11、浜松ホトニクス株式会社)と積分球を組み合わせた光計測システムを用いて、CIE1931色度図の色度座標系における色度座標(x、y)、放射束Faを求めた。
【0077】
発光素子の主波長
実施例及び比較例に用いた各発光素子の主波長は、CIE1931色度図における白色光の色度座標(x=0.3333、y=0.3333)と、各発光素子の発光色の色度座標(x、y)を直線で結び、その延長線とスペクトル軌跡が交わる点の波長を主波長として求めた。結果を表2に示す。
【0078】
発光装置の評価
発光装置の色度座標(x、y)、光束、放射束Fb
実施例及び比較例に用いた各発光装置について、分光測光装置(PMA-11、浜松ホトニクス株式会社)と積分球を組み合わせた光計測システムを用いて、CIE1931色度図の色度座標系における色度座標(x、y)、光束、放射束(分光全放射束)を求めた。各発光装置の色度座標(x、y)を表2に示す。各発光装置の放射束Fbを表3に示す。
【0079】
発光装置の主波長
実施例及び比較例に用いた各発光装置の主波長は、CIE1931色度図における白色光の色度座標(x=0.3333、y=0.3333)と、各発光装置の発光色の色度座標(x、y)を直線で結び、その延長線とスペクトル軌跡が交わる点の波長を主波長として求めた。結果を表2に示す。
【0080】
発光装置の相対光束
比較例1の光束を100%として、実施例1から6及び比較例2から5の各発光装置の光束の相対値を相対光束として求めた。結果を表2に示す。
【0081】
S/P比
実施例及び比較例の各発光装置について、暗所視における光束に対する明所視における光束の比であるS/P比を前記計算式(i)に基づいて算出した。S/P比を表2に示す。
【0082】
発光装置の発光スペクトルの測定
実施例及び比較例の各発光装置について、分光測光装置(PMA-11、浜松ホトニクス株式会社)と積分球を組み合わせた光計測システムを用いて、室温(25℃±5℃)における発光スペクトルを測定した。各発光装置について、各発光装置の発光スペクトルにおいて最大の発光強度を1として相対発光スペクトルを求めた。図7に実施例1から3の発光装置の相対発光スペクトルを示す。図8に実施例4から6の発光装置の相対発光スペクトルを示す。図9に比較例1から5の発光装置の相対発光スペクトルを示す。
【0083】
発光強度の積分値の比率Ib/Ia
実施例及び比較例の各発光装置の相対発光スペクトルにおいて、380nm以上780nm以下の波長範囲内の積分値Iaに対する380nm以上531nm以下の波長範囲内の積分値Ibの積分値の比率Ib/Iaを求めた。結果を表3に示す。
【0084】
発光装置の発光スペクトルにおける発光素子の発光ピーク波長及び発光強度a
実施例及び比較例の各発光装置の発光スペクトルにおいて、蛍光体のピーク波長よりも短波長側のピーク波長を発光装置の発光スペクトルにおける発光素子の発光ピーク波長として求め、この発光ピーク波長における発光強度を、発光装置の発光スペクトルにおける発光素子の発光ピーク波長の発光強度aとした。結果を表3に示す。
【0085】
発光装置の発光スペクトルにおける蛍光体の発光ピーク波長の発光強度b
実施例及び比較例の各発光装置の発光スペクトルにおいて、発光装置に用いた各蛍光体の発光ピーク波長における発光強度を、発光装置における蛍光体の発光ピーク波長の発光強度bとして求めた。結果を表3に示す。
【0086】
発光強度の比率a/b
発光装置の発光スペクトルにおける蛍光体の発光ピーク波長の発光強度bに対する発光装置の発光スペクトルにおける発光素子の発光ピーク波長の発光強度aの発光強度の比率a/bを求めた。結果を表3に示す。
【0087】
放射束の比率Fb/Fa
発光素子の放射束Faに対する発光装置の放射束Fbの放射束の比率Fb/Faを求めた。結果を表3に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
実施例1から6に係る発光装置は、相対光束が450%以上と高く、S/P比が6.5以下であった。また、実施例1から6に係る発光装置は、発光装置の発光スペクトルにおける380nm以上780nm以下の波長範囲内の積分値Iaに対する380nm以上531nm以下の波長範囲内の積分値Ibの積分値の比率Ib/Iaが0.6以上0.95以下の範囲内であった。これは、暗所視における分光標準視感効率のピーク波長である507nm以上に発光ピーク波長を有する蛍光体と、430nm以上500nm以下の範囲内に主波長を有する発光素子とを組み合わせることで、明所視標準分光視感効率V(λ)の積分値範囲と重複する発光装置の発光スペクトルの積分値範囲が増加したことによるものであると考えられた。
実施例1から6に係る発光装置は、発光素子の放射束Faに対する発光装置の放射束Fbの放射束の比率Fb/Faが0.75以上と大きく、発光素子から出射された光が波長変換部材に含まれる蛍光体で効率よく波長変換されていた。
さらに実施例1から6に係る発光装置の発光スペクトルにおいて、蛍光体の発光ピーク波長の発光強度bに対する発光素子の発光ピーク波長の発光強度aの発光強度の比率a/bが3.0以上と大きく、発光素子から出射された光の方が蛍光体によって波長変換された光よりも強く、青緑色を含む青色から緑色の波長範囲に主波長を有する所望の光が発光装置から出射されていた。
実施例1から6に係る発光装置は、発光装置の発光スペクトルにおける発光強度の比率a/bの結果から青緑色を含む青色から緑色の波長範囲に主波長を有する所望の光が発光装置から出射し、相対光束、放射束の比率Fb/Faの結果から暗所視でも明所視でも明るく見える優れた視認性を維持していた。
また、実施例1から6に係る発光装置は、S/P比及び積分値の比率Ib/Iaの結果から、暗所視においても明所視においてもヒトが感じる眩しさを低減した光を発することが確認できた。
【0091】
図7及び8に示すように、実施例1から6に係る発光装置の発光スペクトルは、明所視標準分光視感効率V(λ)の積分値範囲と重複する範囲で、発光スペクトルの積分値範囲が増加している。
【0092】
比較例1から3に係る発光装置は、S/P比が6.5を超えて大きくなった。
また、比較例1から3に係る発光装置は、蛍光体を含んでいないため、発光装置の発光スペクトルにおける380nm以上780nm以下の波長範囲内の積分値Iaに対する380nm以上531nm以下の波長範囲内の積分値Ibの積分値の比率Ib/Iaが0.95を超えて大きくなった。これは、蛍光体を含んでいないため、明所視標準分光視感効率V(λ)の積分値範囲と重複する発光装置の発光スペクトルの積分値範囲が少ないためと考えられた。比較例1から3に係る発光装置は、S/P比が6.5を超えて大きくなるため、明所と暗所でヒトの眼に感じる明るさに差があり、暗所では、青緑色を含む青色から緑色の波長範囲に主波長を有する発光装置から出射される光を眩しく感じてしまうおそれがあった。
【0093】
比較例4に係る発光装置は、S/P比が6.5であるが、発光装置の発光スペクトルにおける380nm以上780nm以下の波長範囲内の積分値Iaに対する380nm以上531nm以下の波長範囲内の積分値Ibの積分値の比率Ib/Iaが0.95を超えて大きくなった。これは、発光装置に含まれる蛍光体が、暗所視における分光標準視感効率のピーク波長である507nmよりも小さい発光ピーク波長を有するため、明所視標準分光視感効率V(λ)の積分値範囲と重複する発光装置の発光スペクトルの積分値範囲が少ないためと考えられた。比較例4に係る発光装置は、暗所では、青緑色を含む青色から緑色の波長範囲に主波長を有する発光装置から出射される光を眩しく感じてしまうおそれがあった。また、比較例4に係る発光装置は、発光素子の放射束Faに対する発光装置の放射束Fbの放射束の比率Fb/Faが0.75以下であり、発光素子から出射された光によって励起された蛍光体の波長変換効率が低く、優れた視認性を維持できていなかった。
【0094】
比較例5に係る発光装置は、S/P比が6.5以下であり、発光装置の発光スペクトルにおける380nm以上780nm以下の波長範囲内の積分値Iaに対する380nm以上531nm以下の波長範囲内の積分値Ibの積分値の比率Ib/Iaが0.95以下であるが、発光素子の放射束Faに対する発光装置の放射束Fbの放射束の比率Fb/Faが0.74と低く、蛍光体の波長変換効率がよくなかった。また、比較例5に係る発光装置は、発光装置の発光スペクトルにおける発光強度の比率a/bが0.29と小さく、発光素子から出射された光の方が蛍光体によって波長変換された光よりも弱く、優れた視認性が維持できていなかった。
【0095】
図9に示すように、比較例1から3に係る発光装置の発光スペクトルにおいて、発光素子から発せられる光の発光スペクトルが確認できたが、明所視標準分光視感効率V(λ)の積分値範囲と重複する範囲が少なく、明所と暗所でヒトの眼に感じる明るさに差があり、暗所では、青緑色を含む青色から緑色の波長範囲に主波長を有する発光装置から出射される光を眩しく感じてしまうおそれがあった。また、図9に示すように、比較例4及び5に係る発光装置の発光スペクトルにおいて、蛍光体の発光ピーク波長の発光強度bに対する発光素子の発光ピーク波長の発光強度aの発光強度の比率a/bが小さく、暗所視でも明所視でも明るく見える優れた視認性を維持していなかった。
【0096】
図10に示すように、CIE1931色度図上で、実施例1から6に係る発光装置の発光色の色度座標(x、y)は、全て目的とする色調範囲(領域A)に入っており、目的とする色調の発光色が得られていた。
【0097】
図11に示すように、CIE1931色度図上で、比較例3から5に係る発光装置の発光色の色度座標(x、y)は、目的とする色調範囲(領域A)に入っており、目的とする色調の発光色が得られていたが、比較例1及び2に係る発光装置の発光色の色度座標(x、y)は、目的とする色調範囲(領域A)から外れており、目的とする色調の発光色が得られていなかった。
【0098】
実施例7
第二態様の発光装置を製造した。
発光素子の配置工程において、基板は、窒化アルミニウムを材料とするセラミックス基板を用いた。発光素子は、主波長が488nmである窒化物系半導体層が積層された発光素子を用いた。発光素子の大きさは、平面形状が約1.0mm四方の略正方形であり、厚さが約0.11mmである。発光素子は、光出射面が基板側になるように配置し、Auからなる導電部材を用いたバンプによってフリップチップ実装した。また、発光素子と間隔を空けて半導体素子をAuからなる導電部材を用いたバンプによってフリップチップ実装した。
【0099】
波長変換部材を含む波長変換体の形成工程において、透光性材料としてシリコーン樹脂100質量部に対して、式(1)で表される組成を有する蛍光体3(LAG)を46質量部含み、フィラーとして酸化アルミニウムを5質量部、形状を安定させるために平均粒径11μm(カタログ値)の球状シリカを30質量部含む波長変換部材用組成物を準備した。透光体として、ホウ珪酸ガラスからなり、発光素子の平面形状よりも縦横に約0.15mm大きい、平面形状が約1.15mm四方の略正方形であり、厚さが約0.10mmである透光体を準備した。透光体の略正方形状の一面に波長変換部材用組成物を印刷法により印刷し、150℃で3時間加熱して、波長変換部材用組成物を硬化させて、厚さ約80μmの層状の波長変換部材を形成し、層状の波長変換部材と透光体が一体となった波長変換体を形成した。
【0100】
発光素子と波長変換部材の接着工程において、波長変換部材の平面形状が約1.15mm四方の略正方形の一面と、発光素子の平面形状が約1.0mm四方の略正方形の一面とを、シリコーン樹脂を含む接着剤を用いて接着し、発光素子と波長変換部材の間に接着層を形成した。波長変換部材の発光素子との接合面は、波長変換部材の接合面の方が発光素子の接合面より縦横に約0.15mm大きいので、発光素子の接合面からはみ出した接着剤が、発光素子の側面に付着して、縦断面形状が略三角形の接着層のはみ出し部分が形成される。発光素子の側面に付着した接着層のはみ出し部分は、層の厚さが発光素子の下方に向かって小さくなる三角形状を有し、上方の波長変換部材側に向かって広がる傾斜を有していた。
【0101】
被覆部材の形成工程において、ジメチルシリコーン樹脂と平均粒径(カタログ値)が0.28μmの酸化チタン粒子とを含み、ジメチルシリコーン樹脂100質量部に対して酸化チタン粒子を30質量部含む被覆部材用組成物を準備した。基板上に配置された発光素子及び波長変換部材及び透光体を含む波長変換体の側面を被覆部材用組成物で覆い、半導体素子は完全に被覆部材用組成物に埋設するように、被覆部材用組成物を充填し、被覆部材用組成物を硬化させ、被覆部材を形成して、樹脂パッケージを形成し、第二態様の発光装置を製造した。
【0102】
実施例8
透光性材料としてシリコーン樹脂100質量部に対して、式(3)で表される組成を有する蛍光体4(βサイアロン)を60質量部含み、フィラーとして酸化アルミニウムを5質量部含む波長変換部材用組成物を準備して、この波長変換部材用組成物を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、第二態様の発光装置を製造した。
【0103】
実施例9
透光性材料としてシリコーン樹脂100質量部に対して、式(2)で表される組成を有する蛍光体5(クロロシリケート)を23質量部含み、フィラーとして酸化アルミニウムを5質量部、形状を安定させるために平均粒径11μm(カタログ値)の球状シリカを30質量部含む波長変換部材用組成物を準備して、この波長変換部材用組成物を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、第二態様の発光装置を製造した。
【0104】
実施例10
発光素子として、主波長が495nmである窒化物系半導体層が積層された発光素子を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、第二態様の発光装置を製造した。
【0105】
実施例11
発光素子として、主波長が495nmである窒化物系半導体層が積層された発光素子を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、第二態様の発光装置を製造した。
【0106】
実施例12
発光素子として、主波長が495nmである窒化物系半導体層が積層された発光素子を用いたこと以外は、実施例9と同様にして、第二態様の発光装置を製造した。
【0107】
実施例13
発光素子として、主波長が495nmである窒化物系半導体層が積層された発光素子を用い、透光性材料としてシリコーン樹脂100質量部に対して、式(4)で表される組成を有する蛍光体6(SCASN-1)を4質量部含み、フィラーとして酸化アルミニウムを5質量部、平均粒径11μm(カタログ値)の球状シリカを30質量部含む波長変換部材用組成物用いたこと以外は、実施例7と同様にして、第二態様の発光装置を製造した。
【0108】
比較例6
主波長が449nmである窒化物系半導体を用いた発光素子を用い、波長変換部材用組成物の代わりに、透光性材料としてシリコーン樹脂100質量部に対して、フィラーとして酸化アルミニウムを10質量部含む光拡散部材用組成物を準備し、この光拡散部材用組成物を厚さが約0.15μmである透光体に塗布して、厚さが約35μmの層状の光拡散部材を形成し、光拡散部材と発光素子を接着したこと以外は、実施例7と同様にして、波長変換部材の代わりに光拡散部材を含む第二態様の発光装置を製造した。
【0109】
比較例7
主波長が488nmである窒化物系半導体を用いた発光素子を用いたこと以外は比較例6と同様にして、波長変換部材の代わりに光拡散部材を含む第二態様の発光装置を製造した。
【0110】
比較例8
主波長が492nmである窒化物系半導体を用いた発光素子を用いたこと以外は比較例6と同様にして、波長変換部材の代わりに光拡散部材を含む第二態様の発光装置を製造した。
【0111】
比較例9
主波長が495nmである窒化物系半導体を用いた発光素子を用いたこと以外は比較例6と同様にして、波長変換部材の代わりに光拡散部材を含む第二態様の発光装置を製造した。
【0112】
比較例10
主波長が449nmである窒化物系半導体を用いた発光素子を用い、透光性材料としてシリコーン樹脂100質量部に対して、窒化物蛍光体である蛍光体1(BSiON)を150質量部含み、フィラーとして酸化アルミニウムを20質量部含む波長変換部材用組成物用いたこと以外は、実施例7と同様にして、第二態様の発光装置を製造した。
【0113】
比較例11
主波長が449nmである窒化物系半導体を用いた発光素子を用い、透光性材料としてシリコーン樹脂100質量部に対して、アルミン酸塩蛍光体である蛍光体2(SAE)を150質量部含み、フィラーとして酸化アルミニウムを20質量部含む波長変換部材用組成物用いたこと以外は、実施例7と同様にして、第二態様の発光装置を製造した。
【0114】
発光素子の評価
実施例7から13及び比較例6から11に用いた発光素子の色度座標(x、y)、放射束、発光素子の主波長は、実施例1に用いた発光素子と同様にして求めた。
【0115】
発光装置の評価
実施例7から13及び比較例6から11に係る発光装置は、実施例1と同様にして、色度座標(x、y)、光束、放射束Fb、主波長、相対光束、S/P比、発光スペクトル、積分値の比率Ib/Ia、発光装置の発光スペクトルにおける発光素子の発光ピーク波長及び発光強度a、発光装置の発光スペクトルにおける蛍光体の発光ピーク波長の発光強度b、発光強度の比率a/b、放射束の比率Fb/Faを求めた。相対光束は、比較例6の光束を100%として、実施例7から13及び比較例7から11の各発光装置の光束の相対値を求めた。結果を表4及び5に示す。図12に実施例7から9の発光装置の相対発光スペクトルを示す。図13に実施例10から13の発光装置の相対発光スペクトルを示す。図14に比較例6から11の発光装置の相対発光スペクトルを示す。
【0116】
【表4】
【0117】
【表5】
【0118】
実施例7から13に係る発光装置は、相対光束が500%以上と高く、S/P比が6.5以下であった。また、実施例7から13に係る発光装置は、発光装置の発光スペクトルにおける380nm以上780nm以下の波長範囲内の積分値Iaに対する380nm以上531nm以下の波長範囲内の積分値Ibの積分値の比率Ib/Iaが0.6以上0.95以下の範囲内であった。これは、暗所視における分光標準視感効率のピーク波長である507nm以上に発光ピーク波長を有する蛍光体と、430nm以上500nm以下の範囲内に主波長を有する発光素子とを組み合わせることで、明所視標準分光視感効率V(λ)の積分値範囲と重複する発光装置の発光スペクトルの積分値範囲が増加したことによるものであると考えられた。
実施例7から13に係る発光装置は、発光素子の放射束Faに対する発光装置の放射束Fbの放射束の比率Fb/Faが0.75以上と大きく、発光素子から出射された光が波長変換部材に含まれる蛍光体による波長変換効率がより高くなった。
さらに実施例7から13に係る発光装置の発光スペクトルにおいて、蛍光体の発光ピーク波長の発光強度bに対する発光素子の発光ピーク波長の発光強度aの発光強度の比率a/bが3.0以上と大きく、発光素子から出射された光の方が蛍光体によって波長変換された光よりも強く、青緑色を含む青色から緑色の波長範囲に主波長を有する所望の光が発光装置から出射されている。
実施例7から13に係る発光装置は、発光強度の比率a/bの結果から青緑色を含む青色から緑色の波長範囲に主波長を有する所望の光が発光装置から出射し、相対光束及び放射束の比率Fb/Faの結果から暗所視でも明所視でも明るく見える優れた視認性を維持していた。
また、実施例7から13に係る発光装置は、S/P比及び積分値の比率Ib/Iaの結果から、暗所視においても明所視においてもヒトが感じる眩しさを低減した光を発することが確認できた。
【0119】
図12及び13に示すように、実施例7から13に係る発光装置の発光スペクトルは、明所視標準分光視感効率V(λ)の積分値範囲と重複する範囲で、発光スペクトルの積分値範囲が増加している。
【0120】
比較例6から9に係る発光装置は、S/P比が6.5を超えて大きくなった。
また、比較例6から9に係る発光装置は、蛍光体を含む波長変換部材の代わりに蛍光体を含まない光拡散部材を用いているため、発光装置の発光スペクトルにおける380nm以上780nm以下の波長範囲内の積分値Iaに対する380nm以上531nm以下の波長範囲内の積分値Ibの積分値の比率Ib/Iaが0.95を超えて大きくなった。これは、蛍光体を含んでいないため、明所視標準分光視感効率V(λ)の積分値範囲と重複する発光装置の発光スペクトルの積分値範囲が少ないためと考えられた。比較例6から9に係る発光装置は、S/P比が6.5を超えて大きくなるため、明所と暗所でヒトの眼に感じる明るさに差があり、暗所では、青緑色を含む青色から緑色の波長範囲に主波長を有する発光装置から出射される光を眩しく感じてしまうおそれがあった。
【0121】
比較例10に係る発光装置は、S/P比が6.5以下であるが、発光装置の発光スペクトルにおける380nm以上780nm以下の波長範囲内の積分値Iaに対する380nm以上531nm以下の波長範囲内の積分値Ibの積分値の比率Ib/Iaが0.95を超えて大きくなった。これは、発光装置に含まれる蛍光体が、暗所視における分光標準視感効率のピーク波長である507nmよりも小さい発光ピーク波長を有するため、明所視標準分光視感効率V(λ)の積分値範囲と重複する発光装置の発光スペクトルの積分値範囲が少ないためと考えられた。比較例10に係る発光装置は、暗所では、青緑色を含む青色から緑色の波長範囲に主波長を有する発光装置から出射される光を眩しく感じてしまうおそれがあった。また、比較例10に係る発光装置は、発光素子の放射束Faに対する発光装置の放射束Fbの放射束の比率Fb/Faが0.31と小さく、また、発光装置の発光スペクトルにおける発光強度の比率a/bが0.1と1.0よりも小さく、発光素子から出射された光により励起された蛍光体の波長変換効率が低かった。比較例10に係る発光装置は、S/P比を低くして、優れた視認性を確保するために、実施例よりも多量の蛍光体を必要とした。
【0122】
比較例11に係る発光装置は、S/P比が6.5以下であり、発光装置の発光スペクトルにおける380nm以上780nm以下の波長範囲内の積分値Iaに対する380nm以上531nm以下の波長範囲内の積分値Ibの積分値の比率Ib/Iaが0.95以下であるが、発光素子の放射束Faに対する発光装置の放射束Fbの放射束の比率Fb/Faが0.69と低く、蛍光体の波長変換効率がよくなかった。また、比較例11に係る発光装置は、発光スペクトルにおける発光強度の比率a/bが0.5と1.0よりも小さく、発光素子から出射された光により励起された蛍光体の波長変換効率が低かった。比較例11に係る発光装置は、S/P比を低くして、優れた視認性を確保するために、実施例よりも多量の蛍光体を必要とした。
【0123】
図14に示すように、比較例6から9に係る発光装置の発光スペクトルにおいて、発光素子から発せられる光の発光スペクトルが確認できたが、明所視標準分光視感効率V(λ)の積分値範囲と重複する範囲が少なく、明所と暗所でヒトの眼に感じる明るさに差があり、暗所では、青緑色を含む青色から緑色の波長範囲に主波長を有する発光装置から出射される光を眩しく感じてしまうおそれがあった。また、図14に示すように、比較例10及び11に係る発光装置の発光スペクトルにおいて、蛍光体の発光ピーク波長の発光強度bに対する発光素子の発光ピーク波長の発光強度aの発光強度の比率a/bが小さかった。
【0124】
図15に示すように、CIE1931色度図上で、実施例7から13に係る発光装置の発光色の色度座標(x、y)は、全て目的とする色調範囲(領域A)に入っており、目的とする色調の発光色が得られていた。
【0125】
図16に示すように、CIE1931色度図上で、比較例8から11に係る発光装置の発光色の色度座標(x、y)は、目的とする色調範囲(領域A)に入っており、目的とする色調の発光色が得られていたが、比較例6及び7に係る発光装置の発光色の色度座標(x、y)は、目的とする色調範囲(領域A)から外れており、目的とする色調の発光色が得られていなかった。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の一態様に係る発光装置は、一般照明用の発光装置、車両用の発光装置、表示装置、照明器具、ディスプレイ等として利用することができる。
【符号の説明】
【0127】
11、12:発光素子、13:半導体素子、21:蛍光体、31、32:波長変換部材、33:透光体、34:波長変換体、41:成形体、42:樹脂部、51:第1リード、52:第2リード、61、62:導電部材、72:基板、82:接着層、92:被覆部材、100、200:発光装置。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16