(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/52 20100101AFI20230913BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20230913BHJP
G02B 13/00 20060101ALI20230913BHJP
G02B 1/115 20150101ALI20230913BHJP
【FI】
H01L33/52
H01L23/02 F
G02B13/00
G02B1/115
(21)【出願番号】P 2021061728
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】参鍋 晋輔
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0263833(US,A1)
【文献】特開2018-137428(JP,A)
【文献】特開2009-289930(JP,A)
【文献】特開2013-247338(JP,A)
【文献】特開2015-018873(JP,A)
【文献】特表2017-516314(JP,A)
【文献】特開2021-012961(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0084322(US,A1)
【文献】特開2012-038999(JP,A)
【文献】特開2007-234637(JP,A)
【文献】特開2012-174620(JP,A)
【文献】特開2020-092265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1上面を有する側壁部と、周囲を前記側壁部に囲まれた第2上面とを有する基体と、
前記第2上面に配置された発光素子と、
前記第1上面に配置された接合部材と、
前記第1上面の上方に配置される第1領域と、前記第2上面の上方に配置される第2領域とを含む下面を有し、前記接合部材によって前記第1上面の一部と接合される透光性部材と、
を備え、
前記透光性部材の前記下面と、前記側壁部の前記第1上面との間に、前記発光素子が配置される空間から発光装置の外部に貫通する隙間であって、前記透光性部材の前記下面と前記側壁部の前記第1上面と前記接合部材とによって設けられる隙間を有し、
前記接合部材は、前記透光性部材の前記下面の前記第1領域
、及び前記第2領域
における前記第1領域側の一部に接合される発光装置。
【請求項2】
前記接合部材を複数有する請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記接合部材は、平面視において、前記透光性部材の前記下面の中心を挟んで位置する請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記透光性部材の前記下面の前記第2領域と、前記第1領域の一部と、に設けられ、前記接合部材との接合力が前記透光性部材よりも高い第1被覆膜を備え、
前記接合部材は、前記第1被覆膜を介して前記透光性部材と接合される請求項1から3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1被覆膜は、反射防止膜である請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1被覆膜の最表面は、酸化シリコンである請求項4または5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記透光性部材の前記下面の前記第1領域において前記第1被覆膜が設けられていない部分は、前記下面の平面視において、前記下面の中心を挟んで位置する請求項4から6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
平面視において、前記基体は略矩形であり、
前記第1被覆膜が設けられていない部分が、前記略矩形の基体の四隅に位置する請求項4から7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記透光性部材の上面に設けられた第2被覆膜をさらに備える請求項4から8のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記第2被覆膜は、反射防止膜である請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記透光性部材は、ガラスからなる請求項1から10のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
平面視において、前記接合部材は、前記基体の辺の垂直二等分線上に位置しない請求項8から11のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項13】
平面視において、前記発光素子の四隅の角部のそれぞれは、前記基体の前記辺の前記垂直二等分線上に配置されている請求項12に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光装置において、基体に設けられた凹部に発光素子を配置し、凹部の上方を覆うように透光性部材を基体に接合した構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-137428号公報
【文献】特開2020-92265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、透光性部材への応力を緩和しつつ、接合部材を介した透光性部材と基体との接合力を強くすることができる発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、発光装置は、第1上面を有する側壁部と、周囲を前記側壁部に囲まれた第2上面とを有する基体と、前記第2上面に配置された発光素子と、前記第1上面に配置された接合部材と、前記第1上面の上方に配置される第1領域と、前記第2上面の上方に配置される第2領域とを含む下面を有し、前記接合部材によって前記第1上面の一部と接合される透光性部材と、を備える。前記透光性部材の前記下面と、前記側壁部の前記第1上面との間に、前記発光素子が配置される空間から発光装置の外部に貫通する隙間であって、前記透光性部材の前記下面と前記側壁部の前記第1上面と前記接合部材によって設けられる前記隙間を有する。前記接合部材は、前記透光性部材の前記下面の前記第1領域及び前記第2領域に接合される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の発光装置によれば、透光性部材への応力を緩和しつつ、接合部材を介した透光性部材と基体との接合力を強くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】本発明の一実施形態の発光装置の模式上面図である。
【
図1B】本発明の一実施形態の発光装置の模式下面図である。
【
図2A】
図1のIIA-IIA線における模式断面図である。
【
図2B】本発明の一実施形態の発光装置における接合部材及びその周辺部分を拡大して示す模式断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態の基体及び発光素子の模式上面図である。
【
図4】本発明の一実施形態の発光装置における接合部材の配置例を示す模式上面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の透光性部材の模式下面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の透光性部材を部分的に拡大して示す模式断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態の透光性部材に第1被覆膜を形成するための治具を模式的に示す分解斜視図である。
【
図8A】
図7に示す治具及びその治具に収められた透光性部材の模式下面図である。
【
図8B】
図8AのVIIIB-VIIIB線における模式断面図である。
【
図9】
図7に示す治具及びその治具に収められた透光性部材の上面側の模式斜視図である。
【
図10A】本発明の一実施形態の発光装置における接合部材の配置例を示す模式上面図である。
【
図11】本発明の一実施形態の発光装置における接合部材の配置例を示す模式上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。なお、各図面は、実施形態を模式的に示したものであるため、各部材のスケール、間隔若しくは位置関係などが誇張、部材の一部の図示が省略、又は、断面図としてその切断面のみを示す端面図を用いている場合がある。
【0009】
[第1実施形態]
図1Aは、本発明の第1実施形態の発光装置1の模式上面図である。
図1Bは、発光装置1の模式下面図である。
図2Aは、
図1のIIA-IIA線における模式断面図である。
図2Bは、接合部材及びその周辺部分を拡大して示す模式断面図である。
【0010】
本発明の第1実施形態の発光装置1は、基体10と、発光素子20と、透光性部材40と、接合部材30とを備える。
【0011】
図2Aに示すように、基体10は、発光素子20を支持する。基体10は、絶縁性の基材と、第1下面配線71と、第2下面配線72と、第1上面配線81と、第2上面配線82とを含む。絶縁性の基材は、例えばセラミックからなる。セラミックとして、例えば窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、ムライトが挙げられる。基体10は、第1上面11を有する側壁部15と、周囲を側壁部15に囲まれた第2上面12とを有する。側壁部15の内壁面16と第2上面12によって凹部を規定している。第2上面12は凹部の底である。
【0012】
図1Aに示すように、上面視において、基体10は略矩形である。略矩形とは、4つの辺と4つの角部を含む形状である。角部は、直角、丸みを帯びた形状、または
図1Aのように一部が取り除かれた形状等とすることができる。
【0013】
図1Bに示すように、基体10の下面13は、第1下面配線71と第2下面配線72を有している。第1下面配線71及び第2下面配線72の一方にアノード電位が与えられ、他方にカソード電位が与えられる。
【0014】
図2Aに示すように、基体10の第2上面12に発光素子20が配置されている。発光素子20は、基体10の側壁部15の内壁面16と、第2上面12と、透光性部材40とによって画定される空間61内に位置する。
【0015】
発光素子20は、例えば紫外光を発光する。本実施形態の発光装置1は、例えば、発光素子20が発光する紫外光によって樹脂材料やガラス材料を硬化させる用途に用いることができる。なお、発光素子20は可視光を発光してもよい。
【0016】
【0017】
基体10の第2上面12に、第1上面配線81、第2上面配線82、及び第3上面配線83を有している。発光素子20は、第1上面配線81上に配置されている。発光素子20の下面には下面電極が配置されている。その下面電極は、例えば、はんだ又は導電性ペーストを介して、第1上面配線81に接合され、第1上面配線81と電気的に接続されている。
【0018】
また、発光素子20の上面には上面電極が配置されている。その上面電極は、金属ワイヤ(例えばAuワイヤ)を介して、第2上面配線82と電気的に接続されている。第1上面配線81及び第2上面配線82の一方は、基体10の下面13に配置された第1下面配線71及び第2下面配線72の一方と電気的に接続され、第1上面配線81及び第2上面配線82の他方は、第1下面配線71及び第2下面配線72の他方と電気的に接続されている。
【0019】
第3上面配線83上には、ESD(Electro Static Discharge)保護ダイオード21が配置されている。ESD保護ダイオード21は、例えばツェナーダイオードである。ESD保護ダイオード21の下面には下面電極が形成されている。その下面電極は、例えば、はんだ又は導電性ペーストを介して、第3上面配線83に接合され、第3上面配線83と電気的に接続されている。ESD保護ダイオード21の上面には上面電極が形成されている。その上面電極は、金属ワイヤ(例えばAuワイヤ)を介して、第2上面配線82と電気的に接続されている。第3上面配線83は、第1下面配線71及び第2下面配線72のうちの第1上面配線81と接続された下面配線と電気的に接続されている。
【0020】
図2Aに示すように、透光性部材40は、発光素子20が配置された空間61の上方を覆うように基体10上に配置される。透光性部材40は、発光素子20を外部から保護するものである。透光性部材40は、発光素子20が発する光に対して透光性を有する。透光性部材40は、ガラス(例えば硼珪酸ガラス)、サファイア等からなる。
【0021】
透光性部材40は、発光素子20が発する光を集光または拡散させるレンズとして機能するものを用いることができる。このような透光性部材40としては、例えば
図2Aに示すように凸部44を有する形状が挙げられる。また、
図1Aに示す透光性部材40は、つば部45を有する。つば部45は、上面視において凸部44の外周と、略矩形の基体10の角部との間に位置する。基体10の4つの角部に対応して、4つのつば部45が設けられている。透光性部材40は、
図2Aに示す例では上面が凸面である1つの凸部44を有する形状である。透光性部材40は、上面が凹面である1つの凹部を有する形状または平坦であってもよい。凸部及び凹部は複数配置されていてもよい。
【0022】
図2Aに示すように、透光性部材40の下面43は、基体10の第1上面11の上方に配置される第1領域41と、第2上面12の上方に配置される第2領域42とを含む。第2領域42は、空間61を隔てて発光素子20の上面に対向している。
【0023】
後述するように、透光性部材40の下面43は、接合部材30によって、基体10の第1上面11の一部と接合される。すなわち、透光性部材40の下面43と、基体10の第1上面11との間には、接合部材30が配置された部分と、接合部材30が配置されていない部分とがある。
図2Aは、接合部材30が配置されていない部分を含む、発光装置1の全体の断面図である。
図2Bは、接合部材30が配置された部分の拡大断面図である。
【0024】
図4は、本実施形態の発光装置1における接合部材30の配置例を示す上面図である。
図4において、基体10の側壁部15の内壁面16を破線で表す。すなわち、この破線は、上面視において透光性部材40の第1領域41と第2領域42との境界でもある。
【0025】
接合部材30は、例えば、熱硬化性の樹脂部材である。接合部材30は、未硬化の状態で基体10の第1上面11に配置される。複数の接合部材30が、平面視において基体10の辺に沿ってそれぞれ離隔して第1上面11に配置される。第1上面11における接合部材30が占める面積は、透光性部材40と基体10との接合強度が確保できる範囲であれば特に限定されない。第1上面11における接合部材30が占める面積の割合は、例えば、20%以上80%以下とすることが好ましい。
【0026】
以下、接合部材30によって透光性部材40と基体10を接合する方法について説明する。接合部材30を第1上面11に配置した後、透光性部材40の下面43が第1上面11及び空間61の上方に対向するように、透光性部材40が基体10上に配置される。未硬化の接合部材30が、透光性部材40の下面43と、基体10の第1上面11との間に配置される。このとき、透光性部材40の下面43と、基体10の第1上面11との間で押し潰された未硬化の接合部材30の一部が、透光性部材40の第2領域42に広がる。この後、接合部材30は、例えば加熱により硬化される。
【0027】
未硬化状態の接合部材30は、第1上面11から透光性部材40の側面に濡れ上がる場合もある。この場合、硬化後の接合部材30は、
図2Bに示すように、いわゆるフィレットを形成する。これにより、透光性部材40と基体10の第1上面11との接合力をより強くすることができる。
【0028】
図4には、基体10の一辺あたり2つの接合部材30が配置された例を示すが、基体10の一辺あたり1つ又は3つ以上の接合部材30が配置されてもよい。また、基体10の辺に沿う方向で隣り合う2つの接合部材30同士は、互いの一部がつながっていてもよい。
図4に示す例においては、略矩形の基体10の四隅及び基体10の辺の垂直二等分線上に接合部材30を配置していない。また、
図11に示すように、略矩形の基体10の四隅及び基体10の辺の中央に配置してもよい。
【0029】
接合部材30は、基体10の第1上面11と、第1上面11に対向する透光性部材40の下面43の第1領域41とに接合される。さらに、接合部材30は、第2領域42の一部にも接合される。第2領域42の一部に接合された接合部材30は、空間61内の上側に位置する。接合部材30は、第2領域42において、発光素子20の上方に位置する領域には配置されないことが好ましい。例えば、
図3に示す例においては、上面視で矩形の発光素子20が、矩形の基体10に対して45度回転して配置されている。発光素子20の四隅の角部のそれぞれは、基体10の辺の垂直二等分線上に配置されている。これに対し、基体10の辺の垂直二等分線上に接合部材30を配置していない。これにより、発光素子20からの光が接合部材30に入射することを低減することができる。
【0030】
接合部材30が第1上面11の全面にではなく部分的に配置される。このような接合部材30の部分的配置により、接合部材30が配置されていない部分においては、
図2Aに示すように、透光性部材40の下面43と、基体10の第1上面11との間に透光性部材40の下面43と側壁部15の第1上面11と接合部材30とによって設けられる隙間62を有している。隙間62は、発光素子20が配置される空間61から発光装置1の外部に貫通する。すなわち、発光素子20が配置される空間61は、発光装置1の外部に対して非気密な空間となる。
図4に示す例では、基体10の一辺あたり3つの隙間62が設けられる。また、隙間62は、基体10の一辺あたり1つであってもよいし、2つ又は4つ以上設けられてもよい。隙間62の高さ(側壁部15の第1上面11と透光性部材40との間における接合部材30の厚み)は、例えば1μm以上100μm以下とすることができる。隙間62の高さは、10μm以上50μm以下とすることが好ましい。なお、後述する第1被覆膜51を有する場合は、隙間62の高さは、側壁部15の第1上面11と第1被覆膜51の下面との間における接合部材30の厚みを指す。
【0031】
本実施形態によれば、接合部材30を第1上面11に部分的に配置することで、接合部材30を第1上面11の全面に配置した場合に比べて、透光性部材40に加わる応力を緩和できる。
【0032】
また、接合部材30は、基体10の第1上面11の上方に位置する透光性部材40の下面43の第1領域41だけでなく、空間61を隔てて第2上面12の上方に位置する第2領域42にも配置される。これにより、接合部材30と透光性部材40の下面43との接触面積を広くすることができ、接合部材30と透光性部材40との接合力を強くすることができる。すなわち、接合部材30を介した透光性部材40と基体10との接合力を強くすることができる。
【0033】
また、
図4に示すように、複数の接合部材30は、平面視において、透光性部材40の下面43の中心を挟んで位置する接合部材30を含む。すなわち、接合部材30が、基体10の外周に沿って特定の領域に偏っていないことが好ましい。また、接合部材30が配置されていない部分が、基体10の外周に沿って特定の領域に偏っていないことが好ましい。これにより、特に透光性部材40と基体10との接合部において過剰な応力がかかることを抑制しやすく、安定した接合状態を維持しやすい。
【0034】
透光性部材40の下面43には、以下に説明するように、第1被覆膜が配置されている。
【0035】
図5は、透光性部材40の下面図である。
図5において、第1被覆膜51を塗りつぶした部分として示す。また、
図5において、第1領域41と第2領域42との境界(基体10の側壁部15の内壁面16が位置する部分)を2点鎖線で表す。
図6は、透光性部材40を部分的に拡大して示す模式断面図である。
【0036】
第1被覆膜51と接合部材30との接合力は、透光性部材40と接合部材30との接合力よりも高い。すなわち、第1被覆膜51の最表面の材料と接合部材30の材料との親和性は、透光性部材40の材料と接合部材30の材料との親和性よりも高い。これにより、接合部材30を第1被覆膜51介さずに透光性部材40に接合する場合に比べて、接合部材30を介した透光性部材40と基体10との接合力を向上させることができる。第1被覆膜51は、少なくとも第1領域41に配置されることで、上述した接合力の向上の効果を得ることができる。第1被覆膜51としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Gr)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)等の単一材料およびこれらの複合材料からなる金属層、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タンタル(TaO2)、酸化ケイ素(SiO2)からなる群より選択される少なくとも一種の酸化物等が挙げられる。
【0037】
図5に示す例においては、第1被覆膜51は、透光性部材40の下面43の第2領域42の全面と、第1領域41の大部分とに設けられている。第1領域41における第1被覆膜51が占める面積の割合は、例えば、70%以上95%以下とすることが好ましい。
第1被覆膜51は、発光素子20からの光が透光性部材40の下面43で反射するのを抑制し、発光素子20からの光を透光性部材40へ効率よく入射させる反射防止膜とすることができる。
【0038】
第1被覆膜51が反射防止膜の場合は、例えば、交互に積層され、互いに屈折率の異なる第1膜51a及び第2膜51bを含む多層膜とすることができる。この場合、透光性部材40の下面43側から順に第1膜51aと第2膜51bとが交互に積層され、第1被覆膜51の最表面は、第2膜51bである。例えば、第1膜51aは酸化タンタル(Ta2O5)であり、第2膜51bは酸化ケイ素(SiO2)である。したがって、第1被覆膜51の最表面は酸化ケイ素である。
【0039】
接合部材30は、第1被覆膜51の最表面(第2膜51b)を介して、透光性部材40と接合される。第1被覆膜51の最表面である第2膜51bと、接合部材30の樹脂との親和性は、透光性部材40の材料と接合部材30の樹脂との親和性よりも高い。これにより、透光性部材40と基体10との接合力を向上させることができる。
【0040】
図5に示すように、透光性部材40の下面43の第1領域41において第1被覆膜51が設けられていない部分41aがある。第1被覆膜51が設けられていない複数の部分41aが、平面視において、下面43の中心を挟んで位置する。例えば、
図4に示すように、第1被覆膜51が設けられていない部分41aは、透光性部材40のつば部45の下面に位置する。すなわち、第1被覆膜51が設けられていない部分41aは、略矩形の基体10の四隅に位置する。
【0041】
透光性部材40のつば部45、及び基体10の四隅のそれぞれは、接合部材30が配置されない部分を有する。透光性部材40の下面43において第1被覆膜51が設けられていない部分41aには透光性部材40を構成するガラスが露出している。接合部材30との親和性が、第1被覆膜51よりも低いガラスの露出部に接合部材30を配置していない。
【0042】
発光素子20からの光は、発光素子20が配置された空間61に対向する透光性部材40の下面43の第2領域42から透光性部材40に入射する。したがって、第1被覆膜51を反射防止膜として機能させる場合は、少なくとも第2領域42に配置することが好ましい。本実施形態では、第2領域42の全面に第1被覆膜51を形成することで、第2領域42の全面にわたって発光素子20からの光の透光性部材40へ効率よく入射させることができる。これにより、発光装置1の光取り出し効率を例えば2~4%向上させることができる。
【0043】
基体10の第1上面11に対向する透光性部材40の第1領域41は、接合部材30を介して基体10への接合を担う領域であり、発光素子20からの光は第1領域41を介して透光性部材40にほとんど入射しない。したがって、反射防止膜としての機能の観点においては第1領域41には第1被覆膜51が不要である。
【0044】
しかしながら、本実施形態によれば、前述したように接合部材30との親和性を高めるために第1領域41にも第1被覆膜51を形成している。すなわち、第1領域41に形成された第1被覆膜51は、接合部材30との密着性を高める密着膜として機能する。反射防止機能と高い密着性とを有する膜を、後述するように一度の成膜工程で透光性部材40の下面43に形成することができる。
【0045】
ただし、第1領域41の全面に第1被覆膜51を配置するのではなく、第1領域41において第1被覆膜51が設けられていない部分41aがある。これにより、第1領域41の全面に第1被覆膜51を配置した場合に比べて、透光性部材40への応力を緩和することができ、透光性部材40の下面43からの第1被覆膜51の剥離を抑制することができる。
【0046】
また、第1被覆膜51が設けられていない部分41aを、平面視において、下面43の中心を挟んで位置させることで、透光性部材40への応力の偏りを抑制して、応力を効果的に緩和することができる。例えば、
図4及び
図5に示す例においては、第1被覆膜51が設けられていない部分41aは、第1領域41のうち、凸部44の下方に位置する領域には配置されていない。第1被覆膜51が設けられていない部分41aは、略矩形の基体10の四隅であって、4つのつば部45の部分に配置されている。このような位置に第1被覆膜51が設けられていない部分41aを配置させることで、透光性部材40への応力の偏りを抑制して、応力を効果的に緩和することができる。第1領域41における第1被覆膜51が設けられていない部分41aが占める面積の割合は、透光性部材40と基体10との接合強度が確保できる範囲であれば特に限定されない。
【0047】
図6に示すように、透光性部材40の上面44a(凸部44の上面)に、反射防止膜として機能する第2被覆膜52を設けることができる。第2被覆膜52は、透光性部材40の上面44aと、透光性部材40の外部(空気)との界面における反射を抑制し、透光性部材40の上面44aから外部への光の取り出し効率を高める。
【0048】
第2被覆膜52は、交互に積層され、互いに屈折率の異なる第3膜52a及び第4膜52bを含む。透光性部材40の上面44a側から順に第3膜52aと第4膜52bとが交互に積層され、第2被覆膜52の最表面は第4膜52bである。例えば、第3膜52aは酸化タンタル(Ta2O5)であり、第4膜52bは酸化ケイ素(SiO2)である。したがって、第2被覆膜52の最表面は酸化ケイ素である。
【0049】
透光性部材40の下面43の第1領域41のみに第1被覆膜51を形成する場合は、例えば、マスクを使用し、スパッタ、蒸着等の方法で形成することができる。
次に、
図7~
図9を参照して、透光性部材40に第1被覆膜51及び第2被覆膜52を形成する方法について説明する。
【0050】
図7は、透光性部材40に第1被覆膜51及び第2被覆膜52を形成するための治具100を模式的に示す分解斜視図である。
図8Aは、治具100及びその治具100に収められた透光性部材40の模式下面図である。
図8Bは、
図8AのVIIIB-VIIIB線における模式断面図である。
図9は、治具100及びその治具100に収められた透光性部材40の上面44a側の模式斜視図である。治具100の材質は、透光性部材40を保持することができるものであれば特に限定されない。治具100は、例えば、真鍮、ステンレス等を用いることができる。
【0051】
治具100は、共に板状の第1部材110と第2部材120とを有する。第1部材110の中央には第1貫通孔112が形成されている。第1部材110には、第1貫通孔112の内周部から第1貫通孔112の平面視における中心に向けて延びる4つの爪部111が設けられている。
【0052】
第2部材120の中央には第2貫通孔122が形成されている。第2貫通孔122の周囲には、第2部材120の表面123との間に段差を形成してくぼんだ4つの支持部121が設けられている。
【0053】
図8Bに示すように、透光性部材40は第1部材110と第2部材120との間に配置される。透光性部材40のつば部45の凸部44側の面が、第2部材120の支持部121の上に配置される。凸部44が第2貫通孔122から露出する。
【0054】
第1部材110は第2部材120の表面123上に重ねられる。
図8Aに示すように、透光性部材40の下面43を見た平面視において、第1部材110の爪部111が透光性部材40の下面43の一部を覆い隠す。透光性部材40の下面43において爪部111で覆い隠された一部以外の大部分は第1貫通孔112から露出する。この状態で、透光性部材40の下面43に対して第1被覆膜51を成膜する。
【0055】
これにより、
図5に示すように、透光性部材40の下面43における一部41aには第1被覆膜51が形成されず、一部41a以外の部分には第1被覆膜51が形成される。透光性部材40の下面43における第1被覆膜51が形成されない一部41aは、
図8Aにおいて第1部材110の爪部111によって覆い隠されていた部分である。
【0056】
凸部44の上面44aは、
図9に示すように、第2部材120から露出している。この状態で、凸部44の上面44aに第2被覆膜52が成膜される。このとき、第1部材110の爪部111は、透光性部材40の第1部材110側からの抜け落ちを阻止する。
【0057】
[第2実施形態]
図10Aは、第2実施形態の発光装置における接合部材30の配置例を示す上面図である。
図10Bは、
図10AのXB-XB線における模式断面図である。
【0058】
図10Bに示す例において、透光性部材140の上面は平坦面である。
図10Aに示すように、接合部材30は略矩形の基体10の四隅に位置する。また、接合部材30は、基体10の第1上面11の上方に位置する透光性部材140の下面143の第1領域141だけでなく、空間61を隔てて基体10の第2上面12の上方に位置する第2領域142にも配置される。本実施形態の発光装置においても、透光性部材140への応力を緩和し、安定した接合状態を維持できる。
【0059】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。本発明の上述した実施形態を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての形態も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0060】
1…発光装置、10…基体、11…第1上面、12…第2上面、15…側壁部、20…発光素子、30…接合部材、40…透光性部材、41…第1領域、42…第2領域、43…下面、44…凸部、44a…上面、51…第1被覆膜、51a…第1膜、51b…第2膜、52…第2被覆膜、52a…第3膜、52b…第4膜、61…空間、62…隙間