(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】光半導体装置用金属材料、及びその製造方法、及びそれを用いた光半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/60 20100101AFI20230913BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20230913BHJP
【FI】
H01L33/60
H01L33/62
(21)【出願番号】P 2022138883
(22)【出願日】2022-09-01
(62)【分割の表示】P 2018182720の分割
【原出願日】2018-09-27
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 保夫
(72)【発明者】
【氏名】松田 和也
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/038451(WO,A1)
【文献】特開2018-056457(JP,A)
【文献】特開2020-053599(JP,A)
【文献】特開2016-139760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と側面を有する凹部を備え、前記凹部を規定する側壁部を含む樹脂成形体と、
前記凹部の底面の一部を構成し、前記樹脂成形体に埋設される埋設部を有する一対のリードフレームと、
前記凹部の底面に配置される発光素子と、を備え、
前記一対のリードフレームは、前記一対のリードフレームの表面上に配置される金めっき又は金合金めっきを含む第1めっき層と、前記第1めっき層上に配置される銀めっき又は銀合金めっきを含む第2めっき層と、を有し、
前記第2めっき層は、前記一対のリードフレームの表面のうち前記樹脂成形体に埋設される前記埋設部に設けられ、前記第2めっき層の厚みが0.01μm以下であ
り、光半導体装置の底面側に露出した実装部に設けられていない、光半導体装置。
【請求項2】
前記埋設部は、前記一対のリードフレームのうち前記樹脂成形体と接する部分である、請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項3】
前記埋設部は、前記一対のリードフレームのうち前記樹脂成形体の前記側壁部の内部に埋設された部分を含む、請求項2に記載の光半導体装置。
【請求項4】
前記第2めっき層の厚みは、0.001μm以上0.01μm以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の光半導体装置。
【請求項5】
前記第1めっき層の厚みは、0.01μm以上1μm以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の光半導体装置。
【請求項6】
前記リードフレームの前記第1めっき層および前記第2めっき層を含む積層されためっき層は、455nmに発光ピーク波長を有する光に対する反射率が25%以上55%以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の光半導体装置。
【請求項7】
前記リードフレームの前記第1めっき層および前記第2めっき層を含む積層されためっき層は、L
*a
*b
*表色系におけるb
*値が35以上55以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載の光半導体装置。
【請求項8】
前記一対のリードフレームは、前記第1めっき層の下方にニッケル又はニッケル合金めっきの層をさらに有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の光半導体装置。
【請求項9】
前記一対のリードフレームは、前記ニッケル又はニッケル合金のめっき層と、第1めっき層との間に、ロジウム、パラジウム、ロジウム合金又はパラジウム合金めっきの層を有する、請求項8に記載の光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置用金属材料、及びその製造方法、及びそれを用いた光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light Emitting Diode、以下「LED」ともいう。)やレーザーダイオード(Laser Diode、以下「LD」ともいう。)のような半導体発光素子(以下、「発光素子」ともいう。)を備える光半導体装置は、例えば車載用、一般照明用、液晶表示装置のバックライト、プロジェクターなどの光源として用いられている。
【0003】
光半導体装置において、発光素子からの光に対して高い反射率を有する銀又は銀合金のめっきを表面に設けたリードフレーム又は基板が採用されている。しかしながら、銀又は銀合金は硫化物によって硫化し易く、硫化によって変色し、反射率が低下する。特許文献1又は2には、反射率は銀よりも低いが、銀よりも耐硫化性に優れた金のめっきを表面に設けた基板を備えた光半導体装置が開示されている。金又は金合金を表面に設けたリードフレーム又は基板を備えた光半導体装置は、例えば高い信頼性が要求される車載用の光半導体装置として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-347596号公報
【文献】特開2006-093365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金は、樹脂材料との密着性が低い。リードフレーム又は基板上の表面に施された金めっきと、封止用の樹脂材料又は光半導体装置のパッケージを構成する成形体用の樹脂材料との密着性が低いと、例えば光半導体装置を回路基板にリフロー実装した場合、金めっきと樹脂材料によって構成された部材との界面からリフローしたはんだが染み込み、短絡などの不具合が生じる場合がある。また、樹脂材料に用いた樹脂の種類によっては、リフロー時の熱によって溶融し、金めっきと樹脂材料によって構成された部材の界面から溶融した樹脂材料が漏れ出すなどの不具合を生じる場合がある。
そこで本発明の一態様は、反射率が高く、樹脂材料との密着性を高めた光半導体装置用金属材料、及びその製造方法、及びそれを用いた光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る光半導体装置用金属材料は、基体上に、ニッケル又はニッケル合金めっきの層と、金又は金合金めっきの層と、少なくとも一部に厚さが0.001μm以上0.01μm以下の銀又は銀合金のめっきの層とを、この順に有する。
【0007】
本発明の実施形態に係る光半導体装置は、前記光半導体装置用金属材料からなるリードフレーム又は基板上に発光素子が搭載された光半導体装置である。
【0008】
本発明の実施形態に係る光半導体装置用金属材料の製造方法は、基体上に、ニッケル又はニッケル合金めっきの層を形成する工程と、金又は金合金めっきの層を形成する工程と、厚さが0.001μm以上0.01μm以下の銀又は銀合金めっきの層を形成する工程と、をこの順に含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施の形態によれば、反射率が高く、樹脂材料との密着性を高めた光半導体装置用金属材料、及びその製造方法、及びそれを用いた光半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、一実施形態に係る光半導体装置を示す概略平面図である。
【
図2A】
図2Aは、一実施形態に係る光半導体装置用金属材料の一部の概略断面図である。
【
図2B】
図2Bは、他の実施形態に係る光半導体装置用金属材料の一部の概略断面図である。
【
図3A】
図3Aは、他の実施形態に係る光半導体装置を示す概略斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、光半導体装置の製造方法を説明するための概略断面製造工程図である。
【
図4B】
図4Bは、光半導体装置の製造方法を説明するための概略断面製造工程図である。
【
図4C】
図4Cは、光半導体装置の製造方法を説明するための概略断面製造工程図である。
【
図4D】
図4Dは、光半導体装置の製造方法を説明するための概略断面製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態について、適宜図面を参照にして説明する。ただし、以下に説明する光半導体装置用金属材料、及びその製造方法、及びそれを用いた光半導体装置は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、特定の記載がない限り、本発明は、以下のものに限定されない。また、実施の形態において説明するめっき液の組成及びめっき操作条件は、一例である。また、実施の形態において説明する内容は、他の実施の形態にも適用可能である。図面が示す部材の大きさや位置関係は、説明を明確にするために誇張していることがある。また、以下の説明において、同一の名称又は符号は、原則として同一又は同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略する。
【0012】
実施の形態1
光半導体装置
図1A及び
図1Bに、実施形態1の光半導体装置100の構造を示す。本実施形態の光半導体装置100は、平面視において矩形である発光素子2と、一対の板状の光半導体装置用金属材料1からなるリードフレーム10(以下、単に「リードフレーム10」ともいう。)と、リードフレーム10の一部が埋め込まれた樹脂成形体3と、を備える。
【0013】
樹脂成形体3は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物によって構成される。樹脂成形体3は、底面と側面を持つ凹部を形成しており、凹部の底面は一対のリードフレーム10の一部で構成され、側面は、所定の傾斜角度を有する反射面31が形成されている。一対のリードフレーム10の間は、樹脂成形体3を構成する樹脂組成物によって埋められ、樹脂成形体3の底面の一部32を構成する。樹脂成形体3は、平面視において横長である形状である。樹脂成形体3は、リードフレーム10が底面に露出された横長の凹部を有する。樹脂成形体3の外面には、一対の板状のリードフレーム10の一部が外部端子部として露出し、外部端子部は樹脂成形体3の下面に沿って折り曲げられている。発光素子2は、凹部の底面を構成する一対のリードフレーム10の一方に搭載される。発光素子2は封止部材5により被覆されている。封止部材5は、例えば、発光素子2からの光を波長変換する蛍光体と封止材料を含む。封止材料は、透光性樹脂を含むことが好ましい。蛍光体は、発光素子2からの光により励起されて、発光素子2からの光を波長変換し、特定の波長範囲に少なくとも一つの発光ピーク波長を有する光を発する。また、発光素子2は一対の正負の電極を有しており、その一対の正負の電極は一対のリードフレーム10とそれぞれワイヤ6を介して電気的に接続されている。一対のリードフレーム10を介して、外部からの電力の供給を受けて光半導体装置100を発光させることができる。
【0014】
実施の形態2
光半導体装置用金属材料
図2Aは、リードフレーム10又は基板を構成する光半導体装置用金属材料1の一実施形態を示す概略断面図である。
光半導体装置用金属材料1は、基体1aと、基体1a上に、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bと、金又は金合金めっき層1c1と、銀又は銀合金めっき層1dとをこの順に有する。銀又は銀合金めっき層1dの厚さは0.001μm以上0.01μm以下である。金又金合金めっき層1c1は、銀又は銀合金めっき層1dの下地層を構成する。
【0015】
光半導体装置用金属材料1からなるリードフレーム10は、発光素子2を搭載する搭載部材、発光素子2から出射された光を反射する反射部材、発光素子2と電気的に接続される導電部材としての機能を兼ねている。さらに、リードフレーム10は発光素子2から発せられる熱の放熱を行う放熱部材としての機能を兼ねていてもよい。光半導体装置用金属材料1からなるリードフレーム10は、実施形態1のように、発光素子2の下方に設けられていてもよく、発光素子2を取り囲むリフレクタ形状に設けられていてもよい。また、リードフレーム10は、板状のリードフレームであってもよい。光半導体装置用金属材料1は、絶縁性の基体上に形成された配線として用いてもよい。
【0016】
光半導体装置用金属材料1は、表層に銀又は銀合金めっき層1dを有するため、反射率が高く、発光素子2からの光と、封止部材5に含まれる蛍光体によって波長変換された光と効率よく反射し、光半導体装置100からの発光効率を高めることができる。
【0017】
また、光半導体装置用金属材料1は、表層に厚さが0.001μm以上0.01μm以下の非常に薄い銀又は銀合金めっき層1dを有するため、金又は金合金めっきよりも樹脂との密着性が良く、光半導体装置100においては、例えば封止部材5及び樹脂成形体3との密着性を向上することができる。光半導体装置用金属材料1からなるリードフレーム10は、樹脂材料の密着性が高いため、このリードフレーム10を用いた光半導体装置100をプリント基板に半田リフロー実装する工程において、半田が光半導体装置内に浸入することや封止材料(以下、「封止樹脂」と称する場合もある。)が樹脂成形体3の外に漏れるのを防止することができる。
【0018】
さらに、光半導体装置用金属材料1は、表層である銀又は銀合金めっき層1dの下地層として、金又は金合金めっき層1c1を有するため、銀又は銀合金めっきよりも硫化物と反応し難い金又は金合金めっき層1c1によって、硫化による変色を抑制することができる。光半導体装置用金属材料1をリードフレーム10に用いた光半導体装置100は、硫化変色による光束の低下を抑制し、高い光束を維持することができる。
【0019】
光半導体装置用金属材料1は、
図2Aに示すように、基体1aを中心として、互いに対向する一対の二面において、基体1a上に、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bと、金又は金合金めっき層1c1と、銀又は銀合金めっき層1dとをこの順に有する。光半導体装置用金属材料1は、板状の基体1aを中心として互いに対向する二対の四面において、基体1aを中心にくるむように、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bと、金又は金合金めっき層1c1と、銀又は銀合金めっき層1dとをこの順に有していてもよい。板状の基体1aの一対の対向する二面は上面又は底面という場合があり、板状の基体1aの他の対向する二面は側面という場合がある。
【0020】
光半導体装置用金属材料1は、455nmに発光ピーク波長を有する光に対する反射率が25%以上55%以下であることが好ましい。光半導体装置用金属材料の反射率は、より好ましくは30%以上55%以下であり、さらに好ましくは35%以上55%以下である。
光半導体装置用材料1の表面は、厚さが0.001μm以上0.01μm以下と薄い銀又は銀合金めっき層1dで被覆されており、下地層が金又は金合金めっき層1c1であるため、ほぼ金又は金合金めっき層1c1の反射率に近い反射率を有する。光半導体装置用材料1の反射率は、表層の銀又は銀合金めっき層1dの厚さと共に、下地層である金又は金合金めっき層1c1の厚さによっても変化する。光半導体装置用金属材料1の反射率が25%以上55%以下の範囲であれば、薄い銀又は銀合金めっき層1dと金又は金合金めっき層1c1との両方の反射率を合わせた値となり、表層に設けた銀又は銀合金めっき層1dによって、樹脂材料である封止部材5又は樹脂成形体3との密着性が良好となり、硫化を抑制して、光束を維持することができる。光半導体装置用金属材料1の反射率が25%未満であると、下地層であると金又は金合金めっき層1c1の反射率にほぼ近い値となる。また、光半導体装置用金属材料1の反射率が55%を超えると、銀又は銀合金めっき1dの反射率に近い値となり、銀又は銀合金めっき層1dが比較的厚くなる。
【0021】
光半導体装置用金属材料1は、L*a*b*表色系におけるb*値で表される色度が、35以上55以下であることが好ましい。光半導体装置用金属材料1のb*値で表される色度が、より好ましくは36以上52以下であり、さらに好ましくは37以上50以下である。光半導体装置用金属材料1の表面は、厚さが0.001μm以上0.01μm以下と薄い銀又は銀合金めっき層1dで被覆されており、下地層が金又は金合金めっき層1c1であるため、ほぼ金又は金合金めっき層1c1の色度に近い色度を有する。光半導体装置用材料1の色度は、銀又は銀合金めっき層1dの厚さと共に、下地層である金又は金合金めっき層1c1の厚さによっても変化する。光半導体装置用金属材料1は、b*値が35以上55以下の範囲であれば、薄い銀又は銀合金めっき層1dと金又は金合金めっき層1c1との両方の色度b*値を合わせた値となり、表層に設けた銀又は銀合金めっき層1dによって、樹脂材料である封止部材5又は樹脂成形体3との密着性が良好となり、硫化を抑制して、光束を維持することができる。光半導体装置用金属材料1の色度b*値が35未満であると、下地層であると金又は金合金めっき層1c1の色度b*値にほぼ近い値となる。また、光半導体装置用金属材料1の色度b*値が55を超えると、銀又は銀合金めっき1dの色度b*値に近い値となり、銀又は銀合金めっき層1dが比較的厚くなる。
【0022】
銀又は銀合金めっき層1d
銀または銀合金めっき層1dは、光半導体装置用金属材料1の表面に設けられる。銀又は銀合金めっき層1dの厚みは、0.001μm以上0.01μm以下であり、好ましくは0.002μm以上0.009μm以下、より好ましくは0.003μm以上0.008μm以下である。銀又は銀合金めっき層1dの厚さが0.001μm未満と薄くなると、封止部材5及び樹脂成形材3との密着性が低下する場合がある。また、銀又は銀合金めっき層1dの厚さが0.01μmを超えて厚くなると、硫化により変色しやすくなり、反射率が大幅に低下するおそれがある。
【0023】
銀又は銀合金めっき層1dの材料としては、銀単体、銀と、金、白金、ロジウム、パラジウム、インジウム及びセレンから選ばれる少なくとも一種の金属との合金を用いることができる。銀合金である場合には、銀の割合がおよそ70質量%~99質量%であることが好ましい。
【0024】
銀又は銀合金めっき層1dは、光半導体装置用金属材料1の全ての表面に設けられている必要はない。つまり、光半導体装置用金属材料1の表面の少なくとも一部が銀又は銀合金めっき層1dであればよい。例えば、
図1A及び
図1Bに示した樹脂成形体3の凹部の底面に露出していない、リードフレーム10のうち、樹脂成形体3の側壁部の内部に埋設された埋設部や封止部材5と密着している埋没部は、樹脂との密着向上のため、その表面に銀又は銀合金めっき層1dを必要とするが、樹脂成形体3の外部に露出した外部端子部や光半導体装置の底面側に露出した実装部には、その表面に銀又は銀合金めっき層1dが設けられていなくてもよい。このように光半導体装置用金属材料1の一部に銀又銀合金めっき層1dを設けるためには、銀又は銀合金めっき層1dを形成する際に、銀又は銀合金めっき層1dを必要としない部分を保護テープでマスクし、銀又は銀合金めっき層1dを表面の一部に形成することができる。
【0025】
銀又は銀合金めっき層1dは、樹脂成形体3又は封止部材5と直接密着してない部位であるなら、本実施形態のように板状の光半導体装置用金属材料1の一対の対向する二面、例えば上面及び底面との両方に設けられていてもよく、ある面のみに設けられ他の面には設けられていなくてもよい。また、一つ面の中で一部のみに設けられてもよい。また、銀又は銀合金めっき層1dは、設けられている全領域にわたって同一の厚みであってもよく、厚みが異なっていてもよい。厚みを異ならせることにより、より効果的にコストを低減することができる。例えば、銀又は銀合金めっき層1dが光半導体装置用金属材料1の上面と底面とに設けられ、一方の面での厚みが他方よりも厚くてもよい。樹脂成形体3又は封止部材5と直接密着している部分に比較的厚い銀又は銀合金めっき層1dを設けることで、光半導体装置100をプリント基板に半田リフロー実装する工程において、半田が光半導体装置100内に浸入することをより抑制することができる。
【0026】
基体1a
光半導体装置用金属材料1は、銀又は銀合金めっき1dがその上に積層される基体1aを有する。本実施形態においては、基体1aは、光半導体装置用金属材料1のおおまかな形状を決定する材料として用いられる。
【0027】
基体1aの材料としては、銅、鉄、これらの合金、あるいはクラッド材(例えば銅/鉄ニッケル合金/銅の積層)などを好適に用いることができる。銅やその合金は、放熱性に優れているため、好ましく用いることができる。特に、板状の銅及び銅合金は、機械的特性、電気的特性、加工性などの面においても優れており、好ましい。クラッド材は、線膨張係数を低く抑えることができるため、光半導体装置100の信頼性を高めることができる。
【0028】
基体1aの厚さや形状などについては、光半導体装置100の形状などに応じて種々選択することができる。例えば、板状、塊状、膜状などの形状とすることができる。更には、セラミックなどに印刷などで設けられる配線パターンであってもよく、形成された配線パターンに銅やその合金をめっきしたものであってもよい。
【0029】
光半導体装置用金属材料1の光の反射率を高めるため、基体1aの平坦度は、なるべく高いことが好ましい。例えば、基体1aの表面粗さRaが0.5μm以下であることが好ましい。これにより、基体1aの上に設けるニッケル又はニッケル合金めっき層1b、金又は金合金めっき層1c1、必要に応じて設けられる後述するロジウム、パラジウム、ロジウム合金又はパラジウム合金めっき層1c2、及び銀又は銀合金めっき層1dの平坦度を高めることができる。また、基体1aの平坦度が高いと、表層に設けられる銀又は銀合金めっき層1dの厚みが0.001μm以上0.01μm以下と非常に薄くしても、光半導体装置用金属材料1の反射率を良好に高めることができる。基体1aの平坦度は、圧延処理、物理研磨、化学研磨などの処理を行うことで高めることができる。基体1aの平坦度は、基体1aを構成する材料と同種類の材料のめっきを行うことによって高めることもできる。例えば、銅合金からなる基体1aの場合は、銅合金めっきを行うことによって、基体1aの平坦度を高めることができる。
【0030】
ニッケル又はニッケル合金層1b
本実施形態の光半導体装置用金属材料1は、基体1a上にニッケル又はニッケル合金めっき層1bを有する。
【0031】
ニッケル又はニッケル合金めっき層1bの厚さは、好ましくは0.5μm以上10μm以下であり、より好ましくは1μm以上10μm以下である。ニッケル又はニッケル合金めっき層1bの厚さが0.5μm以上であると、基体1aから基体1aに含まれる金属が下地層である金又は金合金めっき層1c1や、表層である銀又は銀合金めっき層1dへ拡散することを効果的に低減させることができる。ニッケル又はニッケル合金めっき層1bの厚さが10μm以下であると、原材料や製造コストが低減することができる。ニッケル又はニッケル合金めっき層1bの材料としては、例えば、ニッケルのほか、ニッケルリン、ニッケルスズ、ニッケルコバルトなどの合金を用いることができる。
【0032】
金又は金合金めっき層1c1
本実施形態の光半導体装置用金属材料1は、表層である銀又は銀合金めっき層1dの下地層として、金又は金合金めっき層1c1を備える。表層の下地層1cとして、種々の目的で、別の材料からなる複数の層を備えていてもよい。
【0033】
銀又は銀合金めっき層1dに接触する下地層は、銀と密着性が高く、銀に比べて硫黄成分と反応しにくい金属である金又は金合金めっき層1c1であることが好ましい。特に金が好ましい。金又は金合金めっき層1c1の厚さは、好ましくは0.01μm以上1μm以下であり、より好ましくは0.02μm以上0.9μm以下、さらに好ましくは0.03μm以上0.8μm以下である。金又は金合金めっき層の厚さが0.01μm以上であると、ワイヤ6によるワイヤボンディング性や発光素子とのダイボンディング性が良好となる。また、金又は金合金めっき層の厚さが1μm以下であると、材料コストを低減することができる。金合金として、金コバルト、金ニッケル、金インジウム、金パラジウムなどが好ましい。
【0034】
実施の形態3
光半導体装置用金属材料
図2Bは、リードフレーム10を構成する光半導体装置用金属材料1の他の実施形態を示す概略断面図である。光半導体装置用金属材料1は、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bと、金又は金合金めっき層1c1との間に、下地層1cとして、ロジウム、パラジウム、ロジウム合金又はパラジウム合金めっき層1c2を有することが好ましい。
【0035】
ロジウム、パラジウム、ロジウム合金又はパラジウム合金めっき層1c2
本実施形態の光半導体装置用金属材料1は、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bに接触する下地層として、ロジウム、パラジウム、ロジウム合金又はパラジウム合金めっき層1c2を有することが好ましい。銅を含む材料からなる基体1aを用いた場合、基体1aの上にニッケル又はニッケル合金めっき層1bを設け、その上に第2の下地層としてパラジウム、ロジウム、パラジウム合金、ロジウム合金めっき層1c2を設け、その第2の下地層の上に、金又は金合金めっき層1c1を第1の下地層として設け、表層に銀又は銀合金めっき層1dをこの順に積層させることが好ましい。このような構成とすることで、基体1aに含まれるイオン化傾向の低い金属、例えば銅が、よりイオン化傾向が低い金属を含む第1の下地層である金又は金合金めっき層1c1と、表層である銀又は銀合金めっき層1dに拡散するのを抑制することができ、金又は金合金めっき層1c1と銀又は銀合金めっき層1dとの密着性を高めることができる。また、基体1aに含まれる銅の拡散が抑制されることで、光半導体装置用金属材料1をリードフレーム10として用いた場合に、ワイヤボンディング性を高めることができる。
【0036】
ロジウム、パラジウム、ロジウム合金又はパラジウム合金めっき層1c2の厚さは、好ましくは0.01μm以上0.3μm以下であり、より好ましくは0.02μm以上0.2μm以下、さらに好ましくは0.03μm以上0.1μm以下である。ロジウム、パラジウム、ロジウム合金又はパラジウム合金めっき層1c2の厚さが0.01μm以上0.3μm以下であると、基体1aに含まれる金属の他の下地層及び表層への拡散を抑制し、各層の密着性を高めることができる。
【0037】
銀又は銀合金めっき1dの第1の下地層1c1及び第2の下地層1c2を含む下地層1cは、硫化防止と基体1aに含まれる金属の他の層への拡散防止の役割の両方を兼ねる層としてもよい。これにより、コストを低減することができる。例えば、金は硫黄成分と反応しにくく、拡散防止の効果も高いため、好ましく用いることができる。
【0038】
光半導体装置用金属材料1は、例えば、後述する
図3A及び3Bに示すように、略平板状であることが好ましい。これにより、光半導体装置用金属材料1の信頼性を高めることができる。ニッケル又はニッケル合金めっき層1bは、銅又は銅合金の金属層より多少脆いので、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bを備える光半導体装置用金属材料1は、屈曲させずに平板状のまま用いることが好ましい。
【0039】
実施の形態4
光半導体装置
図3A及び
図3Bは、実施形態4の光半導体装置200の構造を示す。本実施形態の光半導体装置200は、屈曲部を有さないリードフレーム10を有する。実施形態1の光半導体装置100と、共通する部材には、同一の符号を付した。
次に、実施形態1の光半導体装置100及び実施形態4の光半導体装置用200を構成する各部材について説明する。
【0040】
発光素子2
発光素子2は、任意の波長の半導体発光素子を選択することができる。例えば、青色、緑色発光の発光素子2としては、InGaN、GaN、AlGaNなどの窒化物系半導体やGaPを用いたものを用いることができる。また、赤色の発光素子としては、GaAlAs、AlInGaPなどを用いることができる。さらに、これ以外の材料からなる発光素子2を用いることもできる。用いる発光素子2の組成や発光色、大きさや、個数などは目的に応じて適宜選択することができる。
【0041】
光半導体装置が波長変換可能な部材を備える場合には、その波長変換可能な部材を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体が好適に挙げられる。半導体層の材料やその混晶比によって発光波長を種々選択することができる。また、可視光領域の光だけでなく、紫外線や赤外線を出力する発光素子2とすることができる。
【0042】
発光素子2は、光半導体装置用金属材料1からなるリードフレーム10又は基板上に実装することが好ましい。これにより、光半導体装置の光取出し効率を向上させることができる。
【0043】
発光素子2は、導電部材と電気的に接続される正負の電極を有している。これらの正負の電極は一面側に設けられていてもよく、発光素子2の上下両面に設けられていてもよい。導電部材との接続は、後述の接合部材4とワイヤ6によってなされてもよく、フリップチップ実装によってなされてもよい。
【0044】
樹脂成形体3
樹脂成形体3は、一対のリードフレーム10を一体的に保持する樹脂組成物からなる部材である。樹脂成形体3の平面視形状は、
図1Aに示すような一対の対向する辺が他の対向する辺よりも長い、平面が略長方形状であってもよく、
図3Aに示すような四角形であってもよい。その他、樹脂成形体3は、多角形、更にそれらを組み合わせたような形状とすることができる。樹脂成形体3が凹部を有する場合、凹部の側壁部31は、その内側面は
図3Bに示すような底面に対して傾斜した角度で設けた傾斜面を有してもよく、略垂直な角度であってもよく、段差面を有していてもよい。また、その高さや開口部の形状などについても、目的や用途に応じて適宜選択することができる。凹部の内部にはリードフレーム10が設けられることが好ましい。一対のリードフレーム10の間は、樹脂成形体3を構成する樹脂組成物によって埋められ、樹脂成形体3の底面の一部32を構成する。
【0045】
樹脂成形体3は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を用いて形成することができる。特に、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物を用いるのが好ましい。熱硬化性樹脂を含む組成物としては、封止部材5に用いられる樹脂に比してガス透過性の低い樹脂が好ましく、具体的にはエポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、シリコーン変性エポキシ樹脂などの変性エポキシ樹脂組成物、エポキシ変性シリコーン樹脂などの変性シリコーン樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物、変性ポリイミド樹脂組成物、ウレタン樹脂、変性ウレタン樹脂組成物などを挙げることができる。樹脂成形体3を構成する樹脂組成物には、充填材(フィラー)としてTiO2、SiO2、Al2O3、MgO、MgCO3、CaCO3、Mg(OH)2、及びCa(OH)2から選ばれる少なくとも1種の無機粒子を含有してもよい。樹脂成形体3を構成する樹脂組成物に、フィラーとして無機粒子を含まれることによって、樹脂成形体3の光の透過率を調整することができる。
【0046】
なお、樹脂成形体3の他に、リードフレーム10を保持する部材としては、セラミックやガラスや金属などの無機物で形成されてもよい。これにより、劣化などが少なく、信頼性の高い光半導体装置100又は200とすることができる。
【0047】
接合部材4
接合部材4は、発光素子2をリードフレーム10に固定し実装する部材である。導電性の接合部材4の材料として、銀、金、パラジウムを含む導電性ペースト、金-スズ、スズ-銀-銅などの共晶はんだ材料、低融点金属などのろう材、銅、銀、金粒子、銀又は銀合金めっき層1dと同様の材料を用いることができる。絶縁性の接合部材4としては、エポキシ樹脂組成物、シリコーン樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物やその変性樹脂、ハイブリッド樹脂などを用いることができる。これらの樹脂を用いる場合は、発光素子2からの光や熱による劣化を考慮して、発光素子2の実装面にアルミニウム膜や銀膜などの反射率の高い金属層や誘電体反射膜を設けることができる。
【0048】
封止部材5
封止部材5は、発光素子2、リードフレーム10、ワイヤ6、後述する保護膜の各部材を被覆するよう設けられる。光半導体装置は、封止部材5を備えることで、被覆した部材を塵芥や水分、更には外力などから保護することができ、光半導体装置の信頼性を高めることができる。特に、保護膜を形成した後に封止部材5を保護膜上に設けることで、保護膜を保護することができるため、光半導体装置の信頼性が高まる。
【0049】
封止部材5は、発光素子2からの光を透過可能な透光性を有し、且つ、それらによって劣化しにくい耐光性を有するものが好ましい。封止部材5に用いる具体的な材料としては、シリコーン樹脂組成物、変性シリコーン樹脂組成物、変性エポキシ樹脂組成物、フッ素樹脂組成物など、発光素子からの光を透過可能な透光性を有する絶縁樹脂組成物を挙げることができる。特にジメチルシリコーン、フェニル含有量の少ないフェニルシリコーン、フッ素系シリコーン樹脂などシロキサン骨格をベースに持つ樹脂を少なくとも1種以上含むハイブリッド樹脂なども用いることができる。
【0050】
封止部材5の形成方法は、封止部材5を構成する材料に樹脂が含まれる場合、ポッティング(滴下)法、圧縮成型法、印刷法、トランスファモールド法、ジェットディスペンス法、スプレー塗布などを用いることができる。光半導体装置が凹部を有する樹脂成形体3を備える場合は、ポッティング法が好ましく、光半導体装置が平板状の基体を用いる場合は、圧縮成型法やトランスファモールド法が好ましい。
【0051】
封止部材5は、
図1B又は
図3Bに示すように、樹脂成形体3の凹部内を充填するよう設けることが好ましい。
【0052】
封止部材5の外表面の形状については、光半導体装置に求められる配光特性などに応じて種々選択することができる。例えば、上面を凸状レンズ形状、凹状レンズ形状、フレネルレンズ形状、粗面などとすることで、光半導体装置の指向特性や光取出し効率を調整することができる。
【0053】
封止部材5には、着色剤、光拡散剤、光反射材、各種フィラー、波長変換部材などを含有させることもできる。
【0054】
波長変換部材は、発光素子2の光を波長変換させる材料である。発光素子からの発光が青色光の場合、波長変換部材としては、アルミニウム酸化物系蛍光体の一種であるイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(以下、「YAG:Ce」と呼ぶ。)が好適に用いられる。YAG:Ce蛍光体は、発光素子からの青色系の光を一部吸収して補色となる黄色系の光を発するため、白色系の混色光を発する高出力な光半導体装置を、比較的簡単に形成することができる。
【0055】
ワイヤ6
ワイヤ6は発光素子2とリードフレーム10などの導電部材とを接続する。ワイヤ6の材料は、金、アルミニウム、銅など及びこれらの合金が好適に用いられる。また、ワイヤ6は、コアの表面にコアと別の材料で被覆層を設けたもの、例えば、銅のコアの表面にパラジウムやパラジウム金合金などを被覆層として設けたものを用いることができる。なかでも、ワイヤ6の材料は、信頼性の高い金、銀、銀合金のいずれか1種から選ばれることが好ましい。また、特に、光反射率の高い銀または銀合金であることが好ましい。この場合は特に、ワイヤ6は保護膜によって被覆されることが好ましい。これにより、銀を含むワイヤの硫化や断線を防止し、光半導体装置の信頼性を高めることができる。また、リードフレーム10を構成する光半導体装置用金属材料1の基体1aが銅からなり、ワイヤ6が銀又は銀合金からなる場合、光半導体装置用金属材料1が、ニッケル又はニッケル合金めっき層1bを備えることによって、銅と銀での間の局部電池の形成を抑制することができる。これにより、リードフレーム10及びワイヤ6の劣化が抑制され、信頼性の高い光半導体装置とすることができる。
【0056】
保護膜
光半導体装置100又は200はさらに、保護膜を備えてもよい。保護膜は、リードフレーム10を構成する光半導体装置用金属材料1の表面に設けられた銀又は銀合金めっき層1dを少なくとも被覆する。保護膜は、主としてリードフレーム10を構成する光半導体装置用金属材料1の表面の銀又は銀合金めっき層1dの変色または腐食を抑制する部材である。さらに、任意に、発光素子2、接合部材4、ワイヤ6、基体(樹脂成形体3)などのリードフレーム10以外の部材の表面や、銀又は銀合金めっき層1dが設けられていない光半導体装置用金属材料1の表面を被覆してもよい。ワイヤ6が銀又は銀合金である場合、保護膜はワイヤ6を被覆するよう設けられることが好ましい。これにより、銀を含むワイヤの硫化や断線を防止し、光半導体装置の信頼性を高めることができる。
保護膜は、原子層堆積法(以下、ALD(Atomic Layer Deposition)ともいう。)によって形成されることが好ましい。ALD法によれば、非常に均一な保護膜を製膜することができるとともに、形成された保護膜が他の成膜方法で得られる保護膜に比較して緻密であるため、例えばリードフレーム10を構成する光半導体装置用金属材料1の銀又は銀合金めっき層1dの硫化を非常に有効に防止することができる。
【0057】
保護膜の材料としては、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、ZnO、Nb2O5、MgO、In2O3、Ta2O5、HfO2、SeO、Y2O3、SnO2などの酸化物や、AlN、TiN、ZrNなどの窒化物、ZnF2、SrF2などのフッ化物が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。或いは、積層させるようにしてもよい。
【0058】
なお、接合部材4とリードフレーム10との熱膨張率差により、発光素子2の周囲において保護膜にクラックが形成され、発光素子2の近傍のリードフレーム10を構成する光半導体装置用金属材料1の銀又は銀合金めっき層1dが硫化するおそれがある。リードフレーム10を構成する光半導体装置用金属材料1の銀又は銀合金めっき層1dの厚みを0.001μm以上0.01μm以下と非常に薄くすることで硫化の進行が低減され、リードフレーム10の反射率の低下を抑えることができる。
【0059】
光半導体装置は、上記の他、種々の部材を備えることができる。例えば、保護素子としてツェナーダイオードを搭載することができる。
【0060】
光半導体装置の製造方法
次に、光半導体装置の製造方法の一例として、実施形態4の光半導体装置200の製造方法を
図4A乃至
図4Dに基づき説明する。
図4Aに示すように、本発明の実施形態2又は3の光半導体装置用金属材料1からなるリードフレーム10を準備する。具体的には、光半導体装置用金属材料1の基体1aを構成する例えば銅の金属板をパンチングし、後述する光半導体装置用金属材料1の製造方法で説明するように、ニッケル又はニッケル合金めっき層1b、必要に応じてロジウム、パラジウム、ロジウム合金又はパラジウム合金めっき層1c2、金又は金合金めっき層1c1、銀又は銀合金めっき層1dを形成し、リードフレームであるリードフレーム10を形成する。
【0061】
図4Bに示すように、リードフレーム10に、トランスファモールド法で樹脂成形体3を形成する。樹脂成形体3は、リードとなる一対のリードフレーム10が、それぞれに樹脂成形体3の凹部の底面に露出するように形成される。つまり、リードフレーム10はそれぞれの樹脂成形体3の凹部の底面に露出されている。
【0062】
次に、
図4Cに示すように、樹脂成形体3が形成されたリードフレーム10の発光素子2を搭載する領域に、図示を省略した接合部材を介して発光素子2を搭載する。そして、発光素子2とリードフレーム10とを図示を省略したワイヤによって接続する。その後、樹脂成形体3のそれぞれの凹部内に封止部材5を設ける。
【0063】
そして、
図4Dに示すようなリードフレーム10と樹脂成形体3を、ダイシングソーなどを用いて切断し、
図3A及び
図3Bに示すような個々の光半導体装置に個片化する。この切断により、光半導体装置200の外側面にリードフレーム10の断面が露出する。この断面においては、リードフレーム10を構成する光半導体装置用金属材料1の銅の基体1aと、ニッケル又はニッケル合金めっき層1b、必要に応じてロジウム、パラジウム、ロジウム合金又はパラジウム合めっき層1c2、金又は合金めっき層1c1、さらに銀又は銀合金めっき層1dが露出している。
【0064】
実施の形態5
光半導体装置用金属材料の製造方法
次に、光半導体装置用金属材料の製造方法について説明する。
実施形態5の光半導体装置用金属材料の製造方法は、基体上に、ニッケル又はニッケル合金めっきの層を形成する工程と、必要に応じて、ロジウム、パラジウム、ロジウム合金又はパラジウム合金のめっきの層を形成する工程と、金又は金合金めっきの層を形成する工程と、厚さが0.001μm以上0.01μm以下の銀又は銀合金めっきの層を形成する工程の各工程をこの順に含む。
【0065】
基体は、ウェットエッチングにより、所定の位置に段差を形成し、段差を形成した後に、前記各工程を行ってもよい。
【0066】
ニッケル又はニッケル合金めっきの層を形成する工程と、必要に応じて、ロジウム、パラジウム、ロジウム合金又はパラジウム合金のめっきの層を形成する工程と、金又は金合金めっきの層を形成する工程は、各めっき層の形成が容易であるため、電解めっき法又は無電解めっき法により行うことが好ましい。なかでも電解めっき法は、層の形成の速度が速く、量産性を高めることができるため、好ましい。
【0067】
めっきをする前に、基体の前処理を行ってもよい。前処理としては、希硫酸、希硝酸、希塩酸などの酸処理や、水酸化ナトリウムなどのアルカリ処理が挙げられ、これらを1回又は数回、同じ処理又は異なる処理を組み合わせて行ってもよい。前処理を数回行う場合は、各処理後に純水を用いて流水洗浄するのが好ましい。基体が銅や銅を含む合金からなる金属板の場合、前処理に希硫酸を用いることが好ましい。基体が鉄や鉄を含む合金からなる金属板の場合、前処理に希塩酸を用いることが好ましい。
【0068】
光半導体装置用金属材料は、各層を形成した後、200℃以上450℃以下の温度、5分以上2時間以内の処理時間で、熱処理する工程をさらに含むことが好ましい。熱処理は、大気中でも良いし窒素ガスなどの不活性雰囲気や水素ガスなどの還元雰囲気でもよいが、銀又は銀合金めっき中の銀の酸化を防止するため、窒素ガス雰囲気中で熱処理することが好ましい。また、熱処理方法としては、熱風恒温器中のようなバッチ処理でもよいし、連続めっき装置の最終工程に熱風炉や赤外炉を設けて連続的に熱処理してもよい。これらの熱処理によって、非常に薄い銀又は銀合金めっき層と直下の金又は金合金めっき層が適宜相互拡散して、さらに成形樹脂又は封止樹脂との密着を向上することができるため好ましい。なお、熱処理の温度と処理時間は、各めっき層の厚さの組み合わせを勘案して決めることができる。
【0069】
ニッケル又はニッケル合金のめっき層を形成する工程において、めっき層を構成する材料が、純ニッケルの場合は、例えばスルファミン酸ニッケルを含むめっき液を使用して電解めっきして形成することができる。また、ニッケルリン合金である場合は、次亜リン酸ニッケルめっき液を使用して無電解めっきして形成することができる。
【0070】
パラジウム、ロジウム、パラジウム合金又はロジウム合金めっきの層を形成する工程において、めっき層を構成する材料が、パラジウム合金の場合は、例えばテトラアンミンパラジウム塩化物を含むめっき液を使用して電解めっきして形成することができる。めっき層を構成する材料がロジウム合金の場合は、例えば硫酸ロジウムを含むめっき液を使用して電解めっきして形成することができる。
【0071】
金又は金合金めっき層を形成する工程において、めっき層を構成する材料が金合金場合には、例えばシアン化金カリウムを含むめっき液を使用して電解めっきして形成することができる。
【0072】
銀又は銀合金めっきの層を形成する工程において、めっき層を構成する材料が銀合金の場合は、シアン化銀カリウム又はシアン化銀を銀濃度で0.1g/L以上10g/L以下と、シアン化カリウム又はシアン化ナトリウムを0.5g/L以上150g/L以下とを含む、めっき液を使用することが好ましい。また、めっき液は、炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩、クエン酸塩及び硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の電気伝導塩を5g/L以上150g/L以下含むことが好ましい。めっき液に電気伝導塩を含むことによって、工業的に安定してめっき液を使用することができ、経済的に銀又は銀合金めっき液を製造することができる。
【0073】
銀又は銀合金めっきの層を形成する工程において、めっき液を用いて、めっき液の液温が20℃以上70℃以下、陽極に銀又は銀合金からなる可溶性電極、陰極にステンレス、白金又は白金被覆チタン電極を用いて、陰極電流密度が0.1A/dm2以上15A/dm2以下、めっき時間が1秒間以上1分間以内の条件で、電解めっきを行うことが好ましい。この条件で銀又は銀合金めっきの層を形成することにより、工業的に安定して、経済的に、厚さが0.001μm以上0.01μm以下の薄い銀又は銀合金めっきの層を形成することができる。銀又は銀合金めっき層1dを電解めっきで形成する際には、Se系光沢剤、Sb系光沢剤、S系光沢剤、有機系光沢剤などの光沢剤を併用してもよいし、光沢剤を併用しなくてもよい。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0075】
実施例1乃至11
図2A又は
図2Bに示すように、銅合金の基体1aの表面に、ニッケル又はニッケル合金めっき層1b、必要に応じて下地層であるパラジウム、ロジウム、パラジウム合金又はロジウム合金めっき層1c2、下地層である金又は金合金めっき層1c1、その上に表層である銀又は銀合金めっき層1dを、この順で、以下に示す浴組成を有する各めっき液を用いて、各条件で電解めっきにて形成した光半導体装置用金属材料1を用いて、一対のリードフレームであるリードフレーム10を用意した。各実施例及び比較例における各層の厚さは表1に記載した。実施例9及び10は、表1に示す温度及び時間、光半導体装置用金属材料1に熱処理を行った。めっき時間は1秒間以上1分間以内に調整した。
【0076】
基体1a
銅の基体:三菱伸銅株式会社製のTAMAC194材をプレス金型でリードフレーム形状にしたものを使用した。
42アロイ合金の基体:DOWAメタニクス株式会社製42%Ni-Feをプレス金型でリードフレーム形状にしたものを使用した。
鉄材:新日鐵住金株式会社製のSPCE-SBをプレス金型でリードフレーム形状にしたものを使用した。
【0077】
ニッケル又はニッケル合金めっき層1b
ニッケルめっき層1bは、標準的なスルファミン酸電解めっき浴として、以下の浴組成のめっき液を用いた。
スルファミン酸ニッケル:450g/L
塩化ニッケル:10g/L
ほう酸:30g/L
pH4.0
前記めっき液を用いて、めっき時間を調整し液温55℃、陰極電流密度5A/dm2で電解めっきしてニッケルめっき層を作製した。陽極は硫黄添加のニッケル板を使用した。
実施例5は、前記めっき液の浴組成にさらに、硫酸スズを適量添加して、ニッケルスズ合金めっき層1bを作製した。
実施例7は、前記めっき液の浴組成にさらに、スルファミン酸コバルトなどを適量添加してニッケルコバルト合金めっき層1bを作製した。
実施例9は、前記めっき液の浴組成にさらに、亜リン酸を適量添加して、ニッケルリンめっき層1bを作製した。
【0078】
金又は金合金めっき層1c1
実施例1、4、5、7乃至11、及び後述する比較例1は、金めっき層1c1の厚さが0.1μm以上であるので、弱酸性電解金めっき浴として、以下の浴組成のめっき液を用いた。
シアン化金カリウム:金として5g/L
クエン酸カリウム:120g/L
クエン酸:10g/L
リン酸カリウム:40g/L
硫酸タリウム:タリウムとして10mg/L
pH6.3
前記めっき液を用いて、めっき時間を調整し液温68℃、陰極電流密度0.8A/dm2で電解めっきして作製した。陽極は白金被覆チタン電極を用いた。
実施例10は、前記金めっき液の浴組成に、さらに適量の硫酸コバルトを添加して、金コバルト合金めっき層1c1を作製した。
【0079】
また、実施例2、3、6、及び後述する比較例2、3の金めっき層1c1は、金めっき厚が0.1μm以下と薄いので、以下の浴組成のめっき液を用いた。
シアン化金カリウム:金として1g/L
クエン酸カリウム:80g/L
クエン酸:10g/L
リン酸カリウム:50g/L
pH4.0
前記めっき液を用いて、めっき時間を調整して液温40℃、陰極電流密度2A/dm2で電解めっきして作製した。陽極は白金被覆チタン電極を使用した。
【0080】
銀又は銀合金めっき層1d
銀めっき層1dは、電解シアン化銀めっき浴として、以下の浴組成のめっき液を用いた。
シアン化銀カリウム:銀として2g/L
シアン化カリウム:100g/L
炭酸カリウム:10g/L
前記めっき液を用いて、めっき時間を調整し液温30℃、陰極電流密度2A/dm2で電解めっきして作製した。陽極は白金被覆チタン電極を用いた。
実施例4は、前記めっき浴組成に、適量のシアン化セレンを添加して、銀セレン合金めっき層1dを作製した。
【0081】
パラジウム、ロジウム、パラジウム合金又はロジウム合金めっき層1c2
実施例2、9、10、及び後述する比較例2、3のパラジウムめっき層1c2として、以下の浴組成のめっき液を用いた。
テトラアンミンパラジウム塩化物:パラジウムとして5g/L
硝酸アンモニウム:150g/L
3-ピリジンスルホン酸ナトリウム:5g/L
pH8.5
前記めっき液を用いて、めっき時間を調整して液温50℃、陰極電流密度1A/dm2で電解めっきして作製した。陽極は白金被覆チタン電極を用いた。
実施例6は、前記浴組成のめっき液に適量の硫酸ニッケルを添加してパラジウムニッケル合金めっき層1c2を作製した。
【0082】
実施例3のロジウム又はロジウム合金めっき層1c2として、以下の浴組成のめっき液を用いた。
硫酸ロジウム:ロジウムとして2g/L
硫酸:50g/L
硫酸鉛:鉛として10mg/L
この浴組成を用いて、めっき時間を調整して液温45℃、陰極電流密度1A/dm2で電解めっきして作製した。陽極は白金被覆チタン電極を用いた。
実施例8は、前記浴組成のめっき液に、硫酸コバルトを添加してロジウムコバルト合金めっき層1c2を製作した。
【0083】
比較例1乃至3
比較例1として、実施例と同様の構造で、銀又は銀合金めっき層を形成しない金属材料を用意した。比較例2、3として、銀又は銀合金めっき層1dの厚さを変えた金属材料を用意した。この金属材料を用いて一対のリードフレームであるリードフレーム10を用意し、このリードフレーム10を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、
図1A及び
図1Bに示す光半導体装置と実質的に同様の構造の各光半導体装置を製造した。
【0084】
反射率及びL*a*b*表色系におけるb*値
実施例及び比較例の光半導体装置用金属材料について、大塚電子株式会社製の微小部反射率測定装置MCPDを使用して、455nmに発光ピーク波長を有する光を照射し、反射率を測定した。さらに、日本電色工業株式会社製の色差計VSS-400を使用して、L*a*b*色系におけるb*値を測定した。その結果を表1に示した。
【0085】
光半導体装置
次に、実施例及び比較例の光半導体装置用金属材料をリードフレームとして用いて、
図1A及び1Bに示す光半導体装置と実質的に同様の構造の各光半導体装置を製造した。半導体装置100が個片化されるまでは、一対のリードフレーム10が複数連結された状態のリードフレーム10に、複数の樹脂成形体3が成形された集合体の状態で各工程を経るが、便宜上、
図1A及び1Bに示す1つの光半導体装置100(単数)で説明する。このリードフレーム10を用いて、
図1A及び
図1Bに示す光半導体装置と実質的に同様の構造の各実施例及び比較例の光半導体装置を製造した。
【0086】
樹脂成形体3は、凹部を有しており、凹部の底面に光半導体装置用金属材料1を用いたリードフレーム10が露出されている。そのリードフレーム10の上に、絶縁性の樹脂を接合部材4として、上面に正負の電極を備える平面視において矩形の発光素子2を載置し、接合した。その後、凹部内にYAG蛍光体と、透光性樹脂を含有する封止材料をポッティング法により滴下し、封止部材5を形成した。
【0087】
樹脂成形体の半田浸入及び封止樹脂漏れの有無
各実施例及び比較例の光半導体装置を鉛フリー半田(Sn-0.3Ag-0.7Cu)ペーストを塗布したプリント基板に設置し、リフロー温度260℃で10秒間実装した後、リフロー後の光半導体装置を剥し、実体顕微鏡を用いて40倍で樹脂成形体3内に半田浸入があるか評価するとともに、封止樹材料(封止樹脂)漏れの有無についても評価した。その評価結果を表1に示した。
【0088】
耐硫化試験後の全光束維持率
耐硫化信頼性を評価するため、各実施例及び比較例の光半導体装置を温度40℃湿度75%RHの環境下でH2Sを2ppm及びNO2を4ppm含む混合ガスにて500時間暴露処理前後の光半導体装置から発せられる光の全光束を測定し、暴露処理後の全光束を暴露処理前の全光束で除した割合を全光束の維持率として測定した。その結果を表1に示した。
【0089】
【0090】
実施例1乃至11の光半導体装置は、樹脂成形体3内への半田の浸入は見られず、また、樹脂成形体3から外部への封止樹脂漏れは見られず、樹脂とリードフレーム10の密着性が良好であった。また、実施例1乃至11の光半導体装置は、硫化試験後に硫化試験前とほぼ同様の全光束を維持しており、リードフレーム10の硫化による変色が防止されていた。また、実施例1乃至11の光半導体装置用金属材料は、455nmに発光ピーク波長を有する光に対する反射率が25%以上55%以下であり、L*a*b*表色系におけるb*値で表される色度が、35以上55以下であり、所望の反射率及び色度を有し、部材を構成する樹脂材料との密着性が良好であった。
【0091】
比較例1及び2の光半導体装置は、樹脂成形体3内に半田の浸入があり、樹脂成形体3外部への封止樹脂の漏れがあったため、部材を構成する樹脂材料とリードフレーム10の密着性が改善されていなかった。比較例3の光半導体装置は、硫化試験後の全光束維持率が90%と低く、反射率が55%を超えており、色度b*値も55を超えていた。この結果から、比較例3の光半導体装置は、リードフレーム10に用いた金属材料の表層の銀めっき層1dが0.015μmと0.01μmを超えているので、硫化によりリードフレーム10の表面が変色して、光束維持率が低下したと推測される。
【符号の説明】
【0092】
100、200 光半導体装置
1 光半導体装置用金属材料
1a 基体
1b ニッケル又はニッケル合金めっき層
1c 下地層
1c1 第1下地層、金又は金合金めっき層
1c2 第2下地層、ロジウム、パラジウム、ロジウム合金又はパラジウム合金めっき層
1d 表層、銀又は銀合金めっき層
2 発光素子
3 樹脂成形体
31 側壁部
32 底面の一部
4 接合部材
5 封止部材
6 ワイヤ
10 リードフレーム