IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日亜化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-発光装置 図1A
  • 特許-発光装置 図1B
  • 特許-発光装置 図1C
  • 特許-発光装置 図2
  • 特許-発光装置 図3A
  • 特許-発光装置 図3B
  • 特許-発光装置 図3C
  • 特許-発光装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/02257 20210101AFI20230913BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
H01S5/02257
H01L23/02 B
H01L23/02 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022154726
(22)【出願日】2022-09-28
(62)【分割の表示】P 2019043176の分割
【原出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2022179560
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119301
【弁理士】
【氏名又は名称】蟹田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】石田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山ノ井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博文
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-109657(JP,A)
【文献】特開2018-137428(JP,A)
【文献】特開2012-054527(JP,A)
【文献】特開2016-014757(JP,A)
【文献】特開2015-230983(JP,A)
【文献】特開2018-093136(JP,A)
【文献】特開2017-073489(JP,A)
【文献】特開2011-071407(JP,A)
【文献】特開2011-165445(JP,A)
【文献】特開2018-200946(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0342656(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48-33/64
H01S 5/00- 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と、前記上面の一部に開口を有する凹部と、を備えたパッケージと、
前記凹部内に配置される発光素子と、
下面の一部が前記パッケージの上面に接合され、前記凹部の開口を塞ぐ透光性部材と、
前記透光性部材の下面側に設けられ、前記透光性部材の下面の一部が前記パッケージの上面に接合される領域においては、前記透光性部材の下面と前記パッケージの上面の間に介在する反射防止膜と、
前記反射防止膜の下面側に設けられ、前記透光性部材と前記パッケージの上面とを接合する接着材と、を備える発光装置であって、
前記透光性部材の下面と前記パッケージの上面の間に介在する前記反射防止膜及び前記接着材が露出する領域を含む前記発光装置の外表面の少なくとも一部を被覆する被覆膜を備える発光装置。
【請求項2】
前記反射防止膜は、誘電体多層膜である請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記接着材は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素系エラストマー、ガラス、Au、Ag、Bi、Cu、In、Pb、SnおよびZnから選択された少なくとも一種を含む共晶材、ホットメルト系樹脂、変性シリコーンおよび有機無機ハイブリッド樹脂から選択された少なくとも一種を含む請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子は、250nm以上410nm以下の範囲にピーク波長を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光素子は、少なくともAlを含む窒化物半導体層を含む半導体積層構造を有する請求項1から4のいずれか1項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
凹部を有するパッケージと、パッケージの凹部に配置される発光素子と、凹部の開口を塞ぐ透光性部材と、を備えた発光装置が提案されている(特許文献1参照)。また、凹部の開口を透光性部材で塞ぐのではなく、凹部の開口の一部を、開口を有する保持部材で防ぎ、保持部材の開口を透光性部材で塞ぐ発光装置も提案されている(特許文献2参照)。特許文献2では、透光性部材の表面に反射防止膜が設けられており、透光性部材と保持部材との間に反射防止膜が介在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-6456号公報
【文献】特開2017-73489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光装置にはさらなる信頼性の向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は次の一実施形態を含む。
【0006】
上面と、前記上面の一部に開口を有する凹部と、を備えたパッケージと、
前記凹部内に配置される発光素子と、
下面の一部が前記パッケージの上面に接合され、前記凹部の開口を塞ぐ透光性部材と、
前記透光性部材の下面側に設けられ、前記透光性部材の下面の一部が前記パッケージの上面に接合される領域においては、前記透光性部材の下面と前記パッケージの上面の間に介在する反射防止膜と、を備える発光装置であって、
前記透光性部材の下面と前記パッケージの上面の間に介在する前記反射防止膜が露出する領域を含む前記発光装置の外表面の少なくとも一部を被覆する被覆膜を備える発光装置。
【0007】
凹部を備えたパッケージと、
前記凹部内に配置される発光素子と、
開口を有し、前記パッケージの上面側に配置され、前記パッケージの凹部の一部を塞ぐ保持部材と、
下面の一部が前記保持部材の上面に接合され、前記保持部材の開口を塞ぐ透光性部材と、
前記透光性部材の下面側に設けられ、前記透光性部材の下面の一部が前記保持部材の上面に接合される領域においては、前記透光性部材の下面と前記保持部材の上面の間に介在する反射防止膜と、を備える発光装置であって、
前記透光性部材の下面と前記保持部材の上面の間に介在する前記反射防止膜が露出する領域を含む前記発光装置の外表面の少なくとも一部を被覆する被覆膜を備える発光装置。
【0008】
上面と、前記上面の一部に開口を有する凹部と、を備えたパッケージと、前記凹部内に配置される発光素子と、下面の一部が前記パッケージの上面に接合され、前記凹部の開口を塞ぐ透光性部材と、前記透光性部材の下面側に設けられ、前記透光性部材の下面の一部が前記パッケージの上面に接合される領域においては、前記透光性部材の下面と前記パッケージの上面の間に介在する反射防止膜と、を備える発光素子パッケージを準備する工程と、
前記透光性部材の下面と前記パッケージの上面の間に介在する前記反射防止膜が露出する領域を含む前記発光素子パッケージの外表面の少なくとも一部を被覆する被覆膜を形成する工程と、を有する発光装置の製造方法。
【0009】
凹部を備えたパッケージと、前記凹部内に配置される発光素子と、開口を有し、前記パッケージの上面側に配置され、前記パッケージの凹部の一部を塞ぐ保持部材と、下面の一部が前記保持部材の上面に接合され、前記保持部材の開口を塞ぐ透光性部材と、前記透光性部材の下面側に設けられ、前記透光性部材の下面の一部が前記保持部材の上面に接合される領域においては、前記透光性部材の下面と前記保持部材の上面の間に介在する反射防止膜と、を備える発光素子パッケージを準備する工程と、
前記透光性部材の下面と前記保持部材の上面の間に介在する前記反射防止膜が露出する領域を含む前記発光素子パッケージの外表面の少なくとも一部を被覆する被覆膜を形成する工程と、を有する発光装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、信頼性の高い発光装置を提供することができる。また、信頼性の高い発光装置を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】実施形態1に係る発光装置を説明する模式的斜視図である。
図1B図1A中の1B-1B断面を示す模式図である。
図1C】被覆膜の他の例を説明する模式的断面図である。
図2】実施形態1に係る発光装置の製造方法を説明する模式的断面図である。
図3A】実施形態2に係る発光装置を説明する模式的斜視図である。
図3B図3A中の3B-3B断面を示す模式図である。
図3C】被覆膜の他の例を説明する模式的断面図である。
図4】実施形態2に係る発光装置の製造方法を説明する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を詳細に説明する。ただし、以下の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限られない。以下の説明では、特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」およびそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。それらの用語は、参照した図面における相対的な方向や位置を、分かり易さのために用いているに過ぎない。また、図面が示す構成要素の大きさや位置関係等は、分かり易さのため誇張されている場合があり、実際の大きさ、あるいは実際の構成要素間の大小関係を反映していない場合がある。また、理解を容易にするため、各部材の図示を適宜省略することがある。
【0013】
[実施形態1に係る発光装置1]
図1Aは実施形態1に係る発光装置を説明する模式的斜視図であり、図1B図1A中の1B-1B断面を示す模式図である。図1Aにおいては、理解を容易にするため、被覆膜の図示を省略している。図1A図1Bに示すように、上面と、上面の一部に開口を有する凹部Xと、を備えたパッケージ10と、凹部X内に配置される発光素子20と、下面の一部がパッケージ10の上面に接合され、凹部Xの開口を塞ぐ透光性部材30と、透光性部材30の下面側に設けられ、透光性部材30の下面の一部がパッケージ10の上面に接合される領域においては、透光性部材30の下面とパッケージ10の上面の間に介在する反射防止膜40と、を備え、透光性部材30の下面とパッケージ10の上面の間に介在する反射防止膜40が露出する領域を含む発光装置1の外表面の少なくとも一部を被覆する被覆膜50を備える発光装置である。以下、順に説明する。
【0014】
(パッケージ10)
パッケージ10は、発光素子20を収容するためのものであり、上面と、上面の一部に開口を有する凹部Xと、を備えている。凹部Xは例えば上面視円形の形状を有する。パッケージ10は平板状の基部12と壁部14を有していてもよい。基部12の上面は凹部Xの底面となり、壁部14の上面はパッケージ10の上面となる。基部12と壁部14は射出成形などで一体的に形成されていてもよいし、接着材などを用いて接合されていてもよい。
【0015】
パッケージ10(例:基部12、壁部14)の材料としては、ガラスエポキシ、樹脂、セラミックスなどの絶縁性部材を例示することができる。セラミックスとしては、耐熱性および耐候性の高いものを用いることが好ましく、このようなセラミックスとしては、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライトなどを例示することができる。パッケージ10は、セラミックスと、セラミックス以外の絶縁性材料からなる絶縁層と、を有していてもよい。このような絶縁性材料としては、例えば、BTレンジ、ガラスエポキシ、エポキシ系樹脂等を例示することができる。
【0016】
パッケージ10は、インサート成形などにより、導電部材と樹脂材料が一体化して形成されているものであってもよい。導電部材は、例えばリード電極であり、その一部を配線電極60や外部電極70として用いることができる。樹脂材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等、具体的には、ポリフタルアミド(PPA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等の樹脂を例示することができる。
【0017】
(発光素子20)
発光素子20は、凹部X内に配置される。発光素子20としては発光ダイオードや半導体レーザ素子などを用いることができ、特に、半導体レーザ素子を好ましく用いることができる。
【0018】
発光素子20は、InAlGa1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)で代表される窒化物半導体を用いたものであることが好ましい。また、深紫外から紫外の波長域で発光する発光素子であってもよく、その場合は、少なくともAlを含む窒化物半導体層を含む半導体積層構造を有するものであることが好ましい。発光素子20は、半導体積層構造を有していればよく、半導体積層構造のほか、半導体積層構造が配置される基板(例:半導体層を形成するために用いられる成長用基板)を有していてもよいし、有していなくてもよい。このような基板としては、サファイアやスピネル(MgAl)のような絶縁性基板、または窒化珪素(6H、4H、3C)、シリコン、ZnS、ZnO、GaAs、ダイヤモンド;ニオブ酸リチウム、ガリウム酸ネオジウム等の酸化物基板、窒化物半導体基板(GaN、AlN等)等を例示することができる。半導体積層構造としては、MIS接合、PIN接合、PN接合などのホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルヘテロ構造のものを例示することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造、多重量子井戸構造としてもよい。活性層には、Si、Ge等のドナー不純物及び/又はZn、Mg等のアクセプター不純物がドープされる場合もある。
【0019】
発光素子20のピーク波長は、InAlGa1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)で代表される窒化物半導体を用いた発光素子として知られているピーク波長を種々選択することができる。ピーク波長は、250nm以上410nm以下の範囲にあることが好ましい。
【0020】
発光素子20は、例えば、ワイヤー80を介して配線電極60に電気的に接続されている。本実施形態では、発光素子20が有する一対の電極がともにワイヤー80を介して配線電極60に電気的に接続されているものとするが、発光素子の一方の電極がワイヤーを介して配線電極に電気的に接続され、発光素子の他方の電極がダイボンディングにより配線電極に電気的に接続されてもよい。また、発光素子はフリップチップ方式で配線電極に接続されてもよい。
【0021】
(透光性部材30)
透光性部材30は、凹部X内を気密に封止する役割を有する。透光性部材30は、下面の一部がパッケージ10の上面に接合されており、凹部Xの開口を塞いでいる。透光性部材30とパッケージ10の接合には、例えば接着材100やAuSnなどによる接合が含まれる。接着材100としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素系エラストマー、ガラス、Au、Ag、Bi、Cu、In、Pb、SnおよびZnから選択された少なくとも一種を含む共晶材(例えば、Au-Sn)、ホットメルト系樹脂、変性シリコーンおよび有機無機ハイブリッド樹脂から選択された少なくとも一種を含む材料を例示することができる。
【0022】
透光性部材30は、パッケージ10の凹部X内に配置された発光素子20からの光を透過させて、発光装置1の外部に光を放出させる機能を有する。このような機能を有する材料としては、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、サファイアガラス、フッ化カルシウムガラス、アルミノホウ珪酸ガラス、オキシナイトライドガラス、カルコゲナイドガラスからなる群から選択された少なくとも1種からなる無機材料を例示することができる。好ましくは、透光性部材30はホウ珪酸ガラスである。ホウ珪酸ガラスは、耐光性が高いため、好適に用いられる。
【0023】
透光性部材30の形状は平板状や、パッケージの凹部に向かって凹となる形状などが挙げられる。また、透光性部材30の形状は、パッケージの凹部に向かう面と反対側の面が球面や非球面などのレンズ状であってもよい。透光性部材30の厚みは1mm以上7mm以下が挙げられる。
【0024】
(反射防止膜40)
反射防止膜40は、発光素子20からの光、および発光素子20から出た光がさらに凹部Xの内部で反射された光を効率よく外部に放出させる機能を有する。反射防止膜40は、ARコート層やAR膜などと呼ばれることもある。ARは、Anti Reflectionの略である。
【0025】
反射防止膜40としては、誘電体多層膜や金属膜を用いることができる。誘電体多層膜は、Al、SiO、Ta、MgF、HfO、ZrO、TiO、Nbから選択される少なくとも2つの膜が繰り返し積層されてなる膜を用いることができる。反射防止膜40は、微小な欠陥を有するものであってもよい。このような場合であっても、本実施形態によれば、被覆膜50により、大気中の不純物が反射防止膜40中の微小な欠陥を通ってパッケージ10の凹部X内に侵入することを抑制できる。
【0026】
反射防止膜40は、少なくとも透光性部材30の下面側、具体的には、凹部Xからの光を効率よく外部に放出することができるよう、パッケージ10の凹部Xの上方から、凹部Xの上方より外側まで延在して設けられる。反射防止膜40は、さらに効率を高めるべく、透光性部材30の下面側に加えて、透光性部材30の上面側に設けられていてもよい。反射防止膜40は、透光性部材30の下面、または下面及び上面に、他の部材を介して形成されていてもよいし、直接形成されていてもよい。
【0027】
反射防止膜40は、透光性部材30の下面の一部がパッケージ10の上面に接合される領域においては、透光性部材30の下面とパッケージ10の上面の間に介在する。反射防止膜40がこの領域において介在することにより、反射防止膜40が微小な欠陥を有すると、大気中の不純物が当該欠陥を通ってパッケージ10の凹部X内に侵入する虞がある。しかし、本実施形態によれば、被覆膜50により反射防止膜40の露出面が被覆されるため、このような虞が抑制される。
【0028】
反射防止膜40の厚みは例えば0.5μm~2μmである。
【0029】
(被覆膜50)
被覆膜50は、大気中の不純物が反射防止膜40中の微小な欠陥からパッケージ10の凹部X内に侵入することを抑制する機能を有する。被覆膜50が、発光装置1の外表面の少なくとも一部を被覆することにより、パッケージ10の凹部X内における気密が保たれ、透光性部材30がパッケージ10から剥離してしまうことを抑制することができる。被覆膜50に被覆される発光装置1の外表面の少なくとも一部には、透光性部材30の下面とパッケージ10の上面の間に介在する反射防止膜40が露出する領域が含まれる。反射防止膜40が露出する領域とは、反射防止膜40における一部領域であって、被覆膜50が存在しなければ大気に曝されてしまう領域をいう。換言すると、被覆膜50は、反射防止膜40が大気に曝されないようにする部材である。
【0030】
被覆膜50は、図1Bに示すように、発光装置1の外表面の一部を被覆するよう設けられていてもよいが、図1Cに示すように、発光装置1の下面を除く外表面の実質的に全部を被覆していることが好ましい。このようにすれば、被覆膜50が発光装置1の外表面から剥離する虞を抑制することができる。
【0031】
被覆膜50は、主成分として酸化アルミニウムまたは二酸化ケイ素を備える膜であることが好ましい。具体的には酸化アルミニウムと二酸化ケイ素とをそれぞれ主成分とする膜が積層された膜や、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素とをそれぞれ主成分とする膜が繰り返し積層された膜などを用いることが好ましい。また被覆膜50の厚みは例えば3nm以上250nm以下である。被覆膜50は、その外表面が大気に曝されるよう設けることができる。他方、被覆膜50は、その内表面が発光装置1の外表面に接するよう設けることができる。
【0032】
(配線電極60、外部電極70)
配線電極60と外部電極70は、例えば同じ導電部材(例:リード電極)の一部であり、互いに電気的に接続されている。つまり、例えば、導電部材のある領域が配線電極60であり、当該導電部材の他の領域が外部電極70である。発光素子20は、例えば、配線電極60を介して外部電極70に電気的に接続される。
【0033】
従来の発光装置では、反射防止膜に微小な欠陥がある場合、大気中の不純物(例:水分)がその欠陥からパッケージの凹部内に徐々に侵入する虞があり、その侵入が進むと、パッケージの凹部内における気密が保てなくなり、透光性部材がパッケージ(あるいは保持部材)から剥離してしまうという虞があった。
これに対し、実施形態1に係る発光装置1によれば、発光装置1の外表面の少なくとも一部(透光性部材30の下面とパッケージ10の上面の間に介在する反射防止膜40が露出する領域を含む。)が被覆膜50により被覆されるため、大気中の不純物が反射防止膜40中の微小な欠陥からパッケージ10の凹部X内に侵入することを抑制できる。したがって、透光性部材30の剥離が抑制された、信頼性の高い発光装置1を提供することができる。なお、発光装置1の外表面の少なくとも一部に、透光性部材30の下面とパッケージ10の上面の間に介在する反射防止膜40が露出する領域だけでなく、他の領域(例:接着材100が大気に露出する領域)も含まれる場合には、当該他の領域から不純物がパッケージ10の凹部X内に侵入することを抑制することもできる。
【0034】
[実施形態1に係る発光装置1の製造方法]
図2は実施形態1に係る発光装置の製造方法を説明する模式的断面図である。以下、図2を参照しつつ、実施形態1に係る発光装置1の製造方法の一例を説明する。
【0035】
(発光素子パッケージ200を準備する工程)
まず、図2(A)に示すように、上面と、上面の一部に開口を有する凹部Xと、を備えたパッケージ10と、凹部X内に配置される発光素子20と、下面の一部がパッケージ10の上面に接合され、凹部Xの開口を塞ぐ透光性部材30と、透光性部材30の下面側に設けられ、透光性部材30の下面の一部がパッケージ10の上面に接合される領域においては、透光性部材30の下面とパッケージ10の上面の間に介在する反射防止膜40と、を備える発光素子パッケージ200を準備する。本工程は、発光素子パッケージ200をチャンバ内等に設置することにより準備を行ってもよいし、チャンバ内において発光素子パッケージ200を製造することにより準備を行ってもよい。
【0036】
(被覆膜50を準備する工程)
次に、図2(B)に示すように、透光性部材30の下面とパッケージ10の上面の間に介在する反射防止膜40が露出する領域を含む発光素子パッケージ200の外表面の少なくとも一部を被覆する被覆膜50を形成する。被覆膜50は、図2(B)に示すように、発光素子パッケージ200の外表面の一部を被覆するよう形成されてもよいが、図2(C)に示すように、発光装置1の下面を除く外表面の実質的に全部を被覆するよう形成することが好ましい。発光素子パッケージ200の外表面の一部に被覆膜50を形成するためには、発光素子パッケージ200の外表面の残りの部分をマスクなどする必要があるが、発光素子パッケージ200の下面を除く外表面の実質的に全部を被覆するように被覆膜50を形成すれば、そのようなマスクなどを設ける工程を削減することができるため、より容易に実施形態1に係る発光装置1を製造することができる。なお、発光装置1の下面に被覆膜50が形成されないのは、発光装置1の下面がチャンバ内などの基台の上に載置されているからである。
【0037】
被覆膜50は、薄膜形成法によって形成することができる。薄膜形成法としては、CVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタリング法を例示することができる。特に、被覆膜50の緻密性を向上させたい場合には、CVD法のうちALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法が特に好適である。ALD法によれば、被覆膜50を緻密に形成することができるため、大気中の不純物が被覆膜50を透過しにくくなる。
【0038】
具体例として、被覆膜50として、ALD法を用いて酸化アルミニウム膜を形成する手法を説明する。まず、HOガスをチャンバー内に導入して、発光装置1の下面を除く外表面の全体(実質的な全体であってもよい。)にOH基を形成させる。次に余剰ガスを排気した後に、TMA(トリメチルアルミニウム)ガスをチャンバー内に導入して、OH基とTMAを反応(第1反応)させる。次に、HOガスをチャンバー内に導入して、OH基と結合したTMAとHOを反応(第2反応)させる。次に、余剰ガスを排気した後に、第1反応と第2反応を繰り返して所望の厚みの緻密な酸化アルミニウム膜を形成する。
【0039】
以上の方法によれば、実施形態1に係る発光装置1を容易に製造することができる。ただし、実施形態1に係る発光装置1は、他の方法により製造されてもよい。
【0040】
[実施形態2に係る発光装置2]
図3Aは実施形態2に係る発光装置を説明する模式的斜視図であり、図3B図3A中の2B-2B断面を示す模式図である。図3A図3Bに示すように、実施形態2に係る発光装置2は、凹部Xを備えたパッケージ10と、凹部X内に配置される発光素子20と、開口を有し、パッケージ10の上面側に配置され、パッケージ10の凹部Xの一部を塞ぐ保持部材90と、下面の一部が保持部材90の上面に接合され、保持部材90の開口を塞ぐ透光性部材30と、透光性部材30の下面側に設けられ、透光性部材30の下面の一部が保持部材90の上面に接合される領域においては、透光性部材30の下面と保持部材90の上面の間に介在する反射防止膜40と、を備え、透光性部材30の下面と保持部材90の上面の間に介在する反射防止膜40が露出する領域を含む発光装置2の外表面の少なくとも一部を被覆する被覆膜50を備える発光装置である。以下、詳細に説明する。
【0041】
(保持部材90)
保持部材90は、透光性部材30を保持する機能を有する。保持部材90は、パッケージ10の上面側に配置され、パッケージ10の凹部Xの一部を塞ぐ。保持部材90は、開口を有している。保持部材90は、例えば凹部Xを有しており、この凹部Xの底面に保持部材90の開口を有している。保持部材90の開口は、透光性部材30により塞がれる。保持部材90は、例えば溶接によりパッケージ10の上面に接合される。透光性部材30は、例えば融着により保持部材90に接合される。
【0042】
保持部材90の材料としては、コバール(鉄-ニッケル-コバルト合金)、ニッケル・鉄、ニッケル・鉄、およびインバーなどのニッケル鉄合金を例示することができる。好適には、透光性部材30の熱膨張係数と同じ熱膨張係数を有するコバールである。このようなコバールによれば、透光性部材30を保持部材90に融着させて接合する場合に、透光性部材30および保持部材90に歪みが発生することを抑制することができる。
【0043】
保持部材90の形状は、例えば平板形状や断面視が凹形状などがあげられる。保持部材90の厚みは、例えば1mm以上5mm以下があげられる。
【0044】
(その他の部材)
その他の部材は、実施形態1と同じであるので、説明を省略する。ただし、透光性部材30は、下面の一部が保持部材90の上面に接合され、保持部材90の開口を塞ぐ。また、反射防止膜40は、透光性部材30の下面の一部が保持部材90の上面に接合される領域において、透光性部材30の下面と保持部材90の上面の間に介在する。また、被覆膜50は、発光装置1の外表面の少なくとも一部を被覆する。被覆膜50により被覆される発光装置1の外表面の少なくとも一部には、透光性部材30の下面と保持部材90の上面の間に介在する反射防止膜40が露出する領域が含まれる。被覆膜50は、図3Bに示すように、発光装置1の外表面の一部を被覆するよう設けられていてもよいが、図3Cに示すように、発光装置1の下面を除く外表面の実質的に全部を被覆していることが好ましい。このようにすれば、被覆膜50が発光装置1の外表面から剥離する虞を抑制することができる。
【0045】
以上説明した実施形態2によっても、実施形態1と同様に、発光装置の外表面の少なくとも一部が被覆膜により被覆されるため、大気中の不純物が反射防止膜中の微小な欠陥からパッケージの凹部内に侵入することを抑制できる。したがって、透光性部材の剥離が抑制された信頼性の高い発光装置2を提供することができる。
【0046】
[実施形態2に係る発光装置2の製造方法]
図4は実施形態2に係る発光装置の製造方法を説明する模式的断面図である。
【0047】
(発光素子パッケージ300準備する工程)
まず、図4(A)に示すように、凹部Xを備えたパッケージ10と、凹部X内に配置される発光素子20と、開口を有し、パッケージ10の上面側に配置され、パッケージ10の凹部Xの一部を塞ぐ保持部材90と、下面の一部が保持部材90の上面に接合され、保持部材90の開口を塞ぐ透光性部材30と、透光性部材30の下面側に設けられ、透光性部材30の下面の一部が保持部材90の上面に接合される領域においては、透光性部材30の下面と保持部材90の上面の間に介在する反射防止膜40と、を備える発光素子パッケージ300を準備する。実施形態1の場合と同様に、本工程は、発光素子パッケージ300をチャンバ内等に設置することにより準備を行ってもよいし、チャンバ内において発光素子パッケージ300を製造することにより準備を行ってもよい。
【0048】
(被覆膜50を準備する工程)
次に、図4(B)に示すように、透光性部材30の下面と保持部材90の上面の間に介在する反射防止膜40が露出する領域を含む発光素子パッケージ300の外表面の少なくとも一部を被覆する被覆膜50を形成する。被覆膜50は、図4(B)に示すように、発光素子パッケージ300の外表面の一部を被覆するよう形成されてもよいが、図4(C)に示すように、発光装置1の下面を除く外表面の実質的に全部を被覆するよう形成することが好ましい。発光素子パッケージ300の下面に被覆膜50が形成されないのは、実施形態1の場合と同様に、発光素子パッケージ300の下面がチャンバ内などの基台の上に載置されているからである。被覆膜50の形成方法は、実施形態1の場合と同様であるので説明を省略する。
【0049】
以上の方法によれば、実施形態2に係る発光装置2を容易に製造することができる。ただし、実施形態2に係る発光装置2は、他の方法により製造されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1、2、3、4 発光装置
10 パッケージ
12 基部
14 壁部
20 発光素子
30 透光性部材
40 反射防止膜
50 被覆膜
60 配線電極
70 外部電極
80 ワイヤ
90 保持部材
100 接着材
200、300 発光素子パッケージ
X 凹部
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図4