(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】ポリマー、熱硬化性組成物、フィルム、金属箔張積層板、プリプレグおよびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08G 65/40 20060101AFI20230913BHJP
C08L 71/08 20060101ALI20230913BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230913BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20230913BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C08G65/40
C08L71/08
C08J5/18 CEZ
B32B15/08 Q
B32B15/08 J
H05K1/03 610H
(21)【出願番号】P 2019199737
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】平松 聖生
(72)【発明者】
【氏名】早川 祥一
(72)【発明者】
【氏名】芝崎 祐二
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】Ihor M. TKACHENKO et al.,“Synthesis of fluorinated poly(arylene ether)s with dibenzodioxin and spirobisindane units from new bis(pentafluorophenyl)- and bis(nonafluorobiphenyl)-containing monomers”,Journal of Fluorine Chemistry,2017年03月,Vol. 195,p.1-12,DOI: 10.1016/j.jfluchem.2017.01.008
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G,C08L,C08J,B32B,H05K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される繰り返し単位と、式(2)で表される繰り返し単位を含む、ポリマーであって、
前記ポリマー中の、式(1)で表される繰り返し単位と、式(2)で表される繰り返し単位のモル比((1)/(2))が、1/0.5~1/10であるポリマー。
【化1】
(式中、Y
1およびY
2はそれぞれ独立に芳香族炭化水素環含有基を表し、X
1およびX
2は、それぞれ独立に単結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数1~10のアルキレンオキシ基を表し、aおよびbはそれぞれ独立に0または1で
あり、Y
1
が下記式(5)で表され、Y
2
が下記式(6)で表される。)
【化2】
(式中、R
7
、R
8
、R
9
およびR
10
は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または、炭素数1~10のアルコキシ基を表す。)
【化3】
(式中、Y
4
はそれぞれ独立に炭素数6~10のアリーレン基を表し、R
11
は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数1~10のアルキレンオキシ基を表す。)
【請求項2】
Y
2が、下記式(7)で表される、請求項
1に記載のポリマー。
【化4】
(式中、R
11は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数1~10のアルキレンオキシ基を表し、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18およびR
19は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数6~10のアリール基、または炭素数1~10のアルコキシ基を表す。)
【請求項3】
電子材料用途に用いられる、請求項
1または2に記載のポリマー。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか1項に記載のポリマーと、充填剤、他の樹脂成分、硬化促進剤、および溶剤から選ばれた少なくとも1種とを含有する熱硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1
~3のいずれか1項に記載のポリマーまたは請求項
4に記載の熱硬化性組成物から形成されたフィルム。
【請求項6】
基材と、
ポリマー、あるいは、前記ポリマーと、充填剤、他の樹脂成分、硬化促進剤、および溶剤から選ばれた少なくとも1種とを含有する熱硬化性組成物から形成されたプリプレグ
であって、
前記ポリマーが式(1)で表される繰り返し単位と、式(2)で表される繰り返し単位を含む、ポリマーであって、
前記ポリマー中の、式(1)で表される繰り返し単位と、式(2)で表される繰り返し単位のモル比((1)/(2))が、1/0.5~1/10である、プリプレグ。
【化5】
(式中、Y
1
およびY
2
はそれぞれ独立に芳香族炭化水素環含有基を表し、X
1
およびX
2
は、それぞれ独立に単結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数1~10のアルキレンオキシ基を表し、aおよびbはそれぞれ独立に0または1であり、Y
1
が下記式(5)で表される。)
【化6】
(式中、R
7
、R
8
、R
9
およびR
10
は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または、炭素数1~10のアルコキシ基を表す。)
【請求項7】
1枚以上の請求項
6に記載のプリプレグと、前記プリプレグの片面または両面に配置した金属箔とを含む金属箔張積層板。
【請求項8】
絶縁層と、前記絶縁層の表面に配置した導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、請求項
6に記載のプリプレグから形成された層を含む、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリマー、それを用いた熱硬化性組成物、フィルム、プリプレグ、金属箔張積層板、およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラヒドロスピロビ[1H-インデン]を主鎖骨格に持つポリマーがBuddらによって開示されている。このポリマーはねじれ構造を有し、主鎖に高いフリーボリュームを有することから、ガス分離膜としての応用が期待されている(非特許文献1)。さらにTkachenkoらがビスフェノールAFなどと共重合させたポリマーを開示している(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Peter M.Budd et al.,Chem.Commun.,230-231(2004)
【文献】Ihor M.Tkachenko et al.,J.Fluorine Chem.,195、1-12(2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規なポリマーであって、低いガラス転移点(Tg)を示し、可とう性に優れるポリマーの提供を目的とする。また上記新規なポリマーを用いた熱硬化性組成物、フィルム、プリプレグ、金属箔張積層板、およびプリント配線板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、式(1)および(2)で表される繰り返し単位を特定の比率で含むポリマーを用いたフィルムが、低Tgを示し加工性が良く、かつ可とう性に優れることを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
<1> 式(1)で表される繰り返し単位と、式(2)で表される繰り返し単位を含む、ポリマーであって、
前記ポリマー中の、式(1)で表される繰り返し単位と、式(2)で表される繰り返し単位のモル比((1)/(2))が、1/0.5~1/10である、ポリマー。
【化1】
(式中、Y
1およびY
2はそれぞれ独立に芳香族炭化水素環含有基を表し、X
1およびX
2は、それぞれ独立に単結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数1~10のアルキレンオキシ基を表し、aおよびbはそれぞれ独立に0または1である。)
<2>Y
1が下記式(3)で表される、<1>に記載のポリマー。
【化2】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、炭素数1~10の炭化水素基を表す。Y
3は、それぞれ独立に、芳香族炭化水素環含有基を表す。)
<3>Y
1が下記式(4)で表される、<1>または<2>に記載のポリマー。
【化3】
(式中、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、または炭素数1~10のアルコキシ基を表し、R
5およびR
6は、それぞれ独立に、炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
<4>Y
1が下記式(5)で表される、<1>~<3>のいずれか1つに記載のポリマー。
【化4】
(式中、R
7、R
8、R
9およびR
10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または、炭素数1~10のアルコキシ基を表す。)
<5>Y
2が、下記式(6)で表される、<1>~<4>のいずれか1つに記載のポリマー。
【化5】
(式中、Y
4はそれぞれ独立に炭素数6~10のアリーレン基を表し、R
11は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数1~10のアルキレンオキシ基を表す。)
<6>Y
2が、下記式(7)で表される、<1>~<5>のいずれか1つに記載のポリマー。
【化6】
(式中、R
11は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数1~10のアルキレンオキシ基を表し、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18およびR
19は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数6~10のアリール基、または炭素数1~10のアルコキシ基を表す。)
<7>電子材料用途に用いられる、<1>~<6>のいずれか1つに記載のポリマー。
<8><1>~<7>のいずれか1つに記載のポリマーと、充填剤、他の樹脂成分、硬化促進剤、および溶剤から選ばれた少なくとも1種とを含有する熱硬化性組成物。
<9><1>~<7>のいずれか1つに記載のポリマーまたは<8>に記載の熱硬化性組成物から形成されたフィルム。
<10>基材と、<1>~<7>のいずれか1つに記載のポリマーまたは<8>に記載の熱硬化性組成物から形成されたプリプレグ。
<11>1枚以上の<10>に記載のプリプレグと、前記プリプレグの片面または両面に配置した金属箔とを含む金属箔張積層板。
<12>絶縁層と、前記絶縁層の表面に配置した導体層とを含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、<10>に記載のプリプレグから形成された層を含む、プリント配線板。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、新規なポリマーが提供可能となった。本発明の上記ポリマーを用いて形成したフィルムはTgが低く加工性に富み、かつ加とう性に優れる。かかる特性を利用して、前記ポリマーを用いた熱硬化性組成物、フィルム、プリプレグ、金属箔張積層板、およびプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。本発明では、特に述べない限り、置換基を有さない態様が好ましい。
【0009】
本実施形態に係るポリマーは式(1)で表される繰り返し単位と、式(2)で表される繰り返し単位を含む(以下、このポリマーを“ポリマー(A)”と称することがある)。
【化7】
【0010】
式(1)中、Y
1は、芳香族炭化水素環含有基(炭素数6~40が好ましく、6~30がより好ましく、6~26がさらに好ましい)を表し、なかでもベンゼン環含有基が好ましく、ベンゼン環を2つ含む基であることがより好ましい。Y
1は、好ましくは下記式(3)が挙げられる。
【化8】
【0011】
式(3)中、R1とR2とは、それぞれ独立に、炭素数1~10の炭化水素基(炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の環状、炭素数3~10の分岐状のいずれでもよい)である。R1およびR2の炭化水素基は炭素数1~10のアルキレン基(炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の環状、炭素数3~10の分岐状のいずれでもよい。)であることが好ましい。ここでの炭化水素基およびアルキレン基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては塩素原子、フッ素原子が挙げられる。式(3)中のY3は、芳香族炭化水素環含有基(炭素数6~32が好ましく、6~24がより好ましく、6~10がさらに好ましい)を表し、具体的にはベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、ピレン環であることが好ましく、ベンゼン環がより好ましい。波線は式(1)の酸素原子と結合する位置を表している。特にR1、R2は、Y3とともに、四員環、五員環、または六員環を構成することが好ましい。かかる観点からは、R1およびR2はエチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基であることが好ましい。R1およびR2は環の構成元素以外に置換基(好ましくはアルキル基)を有していてもよく、かかる観点からR1およびR2は、炭素数2~6のアルキレン基であることが好ましい。
【0012】
式(1)のY
1としてさらに好ましくは下記式(4)が挙げられる。
【化9】
【0013】
式(4)中、R3とR4は、それぞれ独立に、水素原子または、炭素数1~10のアルキル基(炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状、炭素数3~10の環状のものを含む)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、フッ素原子等)、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルコキシ基(アルキル部位の炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状、炭素数3~10の環状のものを含む。)を表す。炭素数1~10のアルキル基および炭素数1~10のアルコキシ基のアルキル部位は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。このときのハロゲンとしては、塩素原子、フッ素原子等が挙げられる。R3とR4は中でも水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
R5とR6はそれぞれ独立に、炭素数1~10の炭化水素基(炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状、炭素数3~10の環状のものを含む)を表し、炭素数1~10のアルキレン基(炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状、炭素数3~10の環状のものを含む)が好ましい。炭素数1~10の炭化水素基または炭素数1~10のアルキレン基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。この場合のハロゲンとしては、塩素原子、フッ素原子等が挙げられる。波線は式(1)の酸素原子と結合する位置を表している。R5、R6は、式中のベンゼン環とともに、四員環、五員環、または六員環を構成することが好ましい。かかる観点から、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基であることが好ましい。ただし、R5およびR6はさらに置換基を有していてもよく、例えばR5およびR6は炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
【0014】
Y
1は下記式(5)で表されることがさらに好ましい。
【化10】
式中、R
7、R
8、R
9およびR
10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基(炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状、炭素数3~10の環状のものを含む)、炭素数6~10のアリール基、または、炭素数1~10のアルコキシ基(炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状、炭素数3~10の環状のものを含む)を表す。炭素数1~10のアルキル基はハロゲン原子で置換されていてもよい。このときのハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子が挙げられる。なかでも、R
7~R
10はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0015】
Y
1の例として、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化11】
【0016】
式(1)、(2)中、Y
2は、芳香族炭化水素環含有基を表し(炭素数6~40が好ましく、6~30がより好ましく、6~26がさらに好ましい)、なかでも上記炭素数のアリーレン基含有基が好ましい。Y
2として好ましくは式(6)が挙げられる。
【化12】
Y
4は、それぞれ独立に同一または異なっていてもよく、炭素数6~10のアリーレン基を表す。Y
4は具体的には、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ピレンジイル基が挙げられ、なかでもフェニレン基またはナフタレンジイル基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。Y
4は置換基を有していてもよいが、無置換であることが好ましい。
R
11は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基(炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状、炭素数3~10の環状を含む)、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数1~10のアルキレンオキシ基(炭素数1~10の直鎖状または炭素数3~10の分岐状のものを含む)を表す。炭素数1~10のアルキル基は、ハロゲン化アルキル基であってもよく、この場合のハロゲンとしては、塩素原子、フッ素原子等が挙げられる。
【0017】
Y
2は、下記式(7)で表されることが好ましい。
【化13】
式中、R
11は、式(6)で定義したものと同義である。
R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基(炭素数1~10の直鎖状アルキル基、炭素数3~10の分岐状または環状のアルキル基を含む)、ハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子が挙げられる。)、炭素数6~10のアリール基、または炭素数1~10のアルコキシ基(炭素数1~10の直鎖状または炭素数3~10の分岐状のものを含む)を表す。炭素数1~10のアルキル基は、ハロゲン化アルキル基であってもよく、この場合のハロゲンとしては、塩素原子、フッ素原子等が挙げられる。
さらに具体的に、R
12~R
19はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ハロゲン原子(特にフッ素原子)であることが好ましく、なかでも水素原子(無置換)であることが好ましい。
【0018】
Y
2はアリーレン基含有基であるとき、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化14】
【0019】
式(1)および(2)中、X1とX2は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~10のアルキレン基(炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐状、炭素数3~10の環状のものを含む)、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数1~10のアルキレンオキシ基(炭素数1~10の直鎖状アルキレンオキシ基、炭素数3~10の分岐状のアルキレンオキシ基を含む)を表す。なかでも、X1およびX2は単結合であることが好ましい。炭素数1~10のアルキレン基は、ハロゲン化アルキレン基であってもよく、この場合のハロゲンとしては、塩素原子、フッ素原子等が挙げられる。
【0020】
式(1)および(2)のaおよびbはそれぞれ独立に、0または1である。aおよびbは1が好ましい。
【0021】
本発明において、式(1)で表される繰り返し単位と(2)で表される繰り返し単位の組成比(1)/(2)(モル比基準)は、1/0.5~1/10である。1/0.5以下、さらには1/0.8以下、特には、1/1以下とすることにより、良好な可撓性が得られる。また、1/10以上、さらには、1/9以上とすることにより、テトラヒドロスピロビ[1H-インデン]骨格に由来されるガス透過性がより効果的に発揮される傾向にある。
【0022】
式(1)および(2)を繰り返し単位に含むポリマー(A)の製法について説明する。式(8)で表される四水酸化アリールと、式(9)で表されるフッ化アリールと、塩基性の塩、アルカリなどの存在下で、反応して得られる式(10)の化合物を得たのち、式(11)で表される二水酸化アリール、式(12)で表されるフッ化アリールとを塩基性の塩、アルカリなどの存在下で反応して得られる。
【化15】
(Y
1の定義は、式(1)においてしたY
1の定義と同義であり、好ましいものも同じである。)
【化16】
(X
1、aの定義は式(1)で示した定義とそれぞれ同じであり、好ましい範囲も同じである。)
【化17】
(Y
1、X
1、aの定義は式(1)で示したそれぞれの定義と同じであり、好ましい範囲も同義である。)
【化18】
(Y
2の定義は式(1)でした定義と同じであり、好ましい範囲も同義である。)
【化19】
(X
1、bの定義はそれぞれ式(1)でした定義と同じであり、好ましい範囲も同義である。)
【0023】
本発明に係るポリマー(A)をフィルムに成形する方法としては、溶融押出成形法、キャスト法、カレンダー法が挙げられるが、いずれも好適に適用できる。
なお、繰り返し単位(1)と繰り返し単位(2)との比率を所望の範囲とするには、仕込み量を調節することが好ましい。例えば、上記反応スキームでいうと、Y1を含む式(10)の化合物の仕込み量を1molとし、Y2を含む式(11)の仕込み量を3molとすることで、(1)/(2)=1/2のポリマー(A)を得ることができる。
【0024】
<ポリマーの物性>
本実施形態に係るポリマー(A)の分子量は特に限定されないが、数平均分子量において、上限が100,000以下であることが好ましく、60,000以下であることがより好ましく、40,000以下であることがさらに好ましい。下限値としては、5,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましい。なお、本発明において樹脂の分子量は実施例で採用した方法により測定した値を採用する。
【0025】
本実施形態に係るポリマーについては、特に限定されるものではないが、ガラス転移点を300℃以下とすることが好ましく、270℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移点が上記のように低く設定されるため、樹脂フィルムの加工性が良化する。下限値は特にないが、100℃以上であることが実際的である。ガラス転移点は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0026】
本実施形態に係るポリマーは、上述のとおり式(1)のブロックと式(2)のブロックを有するブロック共重合体(A)であるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の繰り返し単位を有していてもよい。本発明においては、他の構成単位を実質的に含まないことが好ましく、ポリマー中の式(1)のブロックと式(2)のブロックで構成される部分(ポリマー(A)構造部)が占める割合が、質量基準で、98質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがより好ましい。上限値は特にないが、100質量%であってもよい。
【0027】
本実施形態に係るポリマー(A)は適宜任意の添加剤や溶剤とともに組成物を構成することができる。具体的には、上記ポリマー(A)と、充填剤、他の樹脂成分、硬化促進剤、および溶剤から選ばれた少なくとも1種とを含有する熱硬化性組成物とする態様が挙げられる。
【0028】
[充填剤]
本実施形態に係る熱硬化性組成物は、低誘電率性、低誘電正接性、耐燃性および低熱膨張性の向上のため、充填剤を含むことが望ましい。本実施形態で使用される充填剤としては、公知のものを適宜使用することができ、その種類は特に限定されず、当業界において一般に使用されているものを好適に用いることができる。具体的には、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、中空シリカ等のシリカ類、ホワイトカーボン、チタンホワイト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品(水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、ベーマイト、水酸化マグネシウム等の金属水和物、酸化モリブデンやモリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、アルミナ、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、E-ガラス、A-ガラス、NE-ガラス、C-ガラス、L-ガラス、D-ガラス、S-ガラス、M-ガラスG20、ガラス短繊維(Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等のガラス微粉末類を含む。)、中空ガラス、球状ガラスなど無機系の充填剤の他、スチレン型、ブタジエン型、アクリル型などのゴムパウダー、コアシェル型のゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー、シリコーンゴムパウダー、シリコーン複合パウダーなど有機系の充填剤などが挙げられる。これらの充填剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される1種または2種以上が好適である。これらの充填剤を使用することで、熱硬化性組成物の熱膨張特性、寸法安定性、難燃性などの特性が向上する。
【0029】
本実施形態に係る熱硬化性組成物における充填剤の含有量は、所望する特性に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、熱硬化性組成物中の樹脂固形分を100質量部とした場合、50質量部以上であることが好ましい。上限としては、1600質量部以下が好ましく、500質量部以下がより好ましく、300質量部以下が特に好ましい。あるいは、充填剤が、75~250質量部であってもよく、100~200質量部であってもよい。充填剤の含有量をこの範囲とすることで、熱硬化性組成物の成形性が良好となる。
硬化性組成物は、充填剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0030】
ここで充填剤を使用するにあたり、シランカップリング剤および湿潤分散剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているものを好適に用いることができ、その種類は特に限定されない。具体的には、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系、γ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルートリ(β-メトキシエトキシ)シランなどのビニルシラン系、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系、フェニルシラン系などが挙げられる。シランカップリング剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、湿潤分散剤としては、一般に塗料用に使用されているものを好適に用いることができ、その種類は特に限定されない。好ましくは、共重合体ベースの湿潤分散剤が使用され、その具体例としては、ビックケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk-110、111、161、180、2009、2152、BYK-W996、BYK-W9010、BYK-W903、BYK-W940などが挙げられる。湿潤分散剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
シランカップリング剤の含有量は、特に限定されず、熱硬化性組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、1質量部~5質量部程度であってもよい。分散剤(特に湿潤分散剤)の含有量は、特に限定されず、熱硬化性組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、例えば、0.5~5質量部程度であってもよい。
【0032】
[他の樹脂成分]
本実施形態に係る熱硬化性組成物は、上記ポリマー(A)以外の他の樹脂成分を含んでいてもよい。以下、他の樹脂成分について説明する。
【0033】
・エポキシ樹脂
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物または樹脂であれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエン等の二重結合をエポキシ化した化合物、ヒドロキシ基含有シリコーン樹脂類とエピクロロヒドリンとの反応により得られる化合物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、難燃性および耐熱性をより一層向上する観点から、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0034】
・フェノール樹脂
フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のフェノール性ヒドロキシ基を有する化合物または樹脂であれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールE型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂、ビスフェノールS型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂、グリシジルエステル型フェノール樹脂、アラルキルノボラックフェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、多官能フェノール樹脂、ナフトール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、多官能ナフトール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、ヒドロキシ基含有シリコーン樹脂類等が挙げられる。これらのフェノール樹脂は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐燃性をより一層向上する観点から、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、およびヒドロキシ基含有シリコーン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0035】
・オキセタン樹脂
オキセタン樹脂としては、特に限定されず、例えば、オキセタン、アルキルオキセタン(例えば、2-メチルオキセタン、2,2-ジメチルオキセタン、3-メチルオキセタン、3,3-ジメチルオキサタン等)、3-メチル-3-メトキシメチルオキセタン、3,3-ジ(トリフルオロメチル)パーフルオキセタン、2-クロロメチルオキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、ビフェニル型オキセタン、OXT-101(東亞合成(株)製品)、OXT-121(東亞合成(株)製品)等が挙げられる。これらのオキセタン樹脂は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0036】
・ベンゾオキサジン化合物
ベンゾオキサジン化合物としては、1分子中に2個以上のジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型ベンゾオキサジンBA-BXZ(小西化学(株)製品)、ビスフェノールF型ベンゾオキサジンBF-BXZ(小西化学(株)製品)、ビスフェノールS型ベンゾオキサジンBS-BXZ(小西化学(株)製品)等が挙げられる。これらのベンゾオキサジン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0037】
・その他熱可塑性エラストマー
「その他熱可塑性エラストマー」は、例えばスチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエンランダム共重合体、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、それらの水添化合物、それらのアルキル化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、ポリフェニレンエーテル化合物との相溶性により優れる観点から、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエンランダム共重合体、ブチルゴム、およびエチレンプロピレンゴムからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0038】
[硬化促進剤]
本実施形態に係る熱硬化性組成物は、硬化速度を適宜調節するための硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤としては、マレイミド化合物、シアン酸エステル化合物、エポキシ樹脂などの硬化促進剤として通常用いられているものが挙げられ、有機金属塩類(例えば、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、アセチルアセトン鉄、オクチル酸ニッケル、オクチル酸マンガン等)、フェノール化合物(例えば、フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等)、アルコール類(例えば、1-ブタノール、2-エチルヘキサノール等)、イミダゾール類(例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等)、およびこれらのイミダゾール類のカルボン酸若しくはその酸無水類の付加体等の誘導体、アミン類(例えば、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等)、リン化合物(例えば、ホスフィン系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、ホスホニウム塩系化合物、ダイホスフィン系化合物等)、エポキシ-イミダゾールアダクト系化合物、過酸化物(例えば、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシカーボネート等)、アゾ化合物(例えば、アゾビスイソブチロニトリル等)が挙げられる。硬化促進剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0039】
硬化促進剤の含有量は、通常、熱硬化性組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、0.005~10質量部程度であってもよい。
【0040】
本実施形態に係る熱硬化性組成物は、上記の成分以外の他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、およびそのオリゴマー等の種々の高分子化合物、各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、流動調整剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、重合禁止剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
[溶剤]
本実施形態に係る熱硬化性組成物は、有機溶剤を含有してもよい。この場合、本実施形態に係る熱硬化性組成物は、上述した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部が有機溶剤に溶解または相溶した形態(溶液またはワニス)である。有機溶剤としては、上述した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部を溶解または相溶可能な極性有機溶剤または無極性有機溶剤であれば特に限定されず、極性有機溶剤としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、セロソルブ類(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、エステル類(例えば、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等)、アミド類(例えば、ジメトキシアセトアミド、ジメチルホルムアミド類等)が挙げられ、無極性有機溶剤としては、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン等)が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0042】
[熱硬化性組成物]
本実施形態に係る熱硬化性組成物は、(1)で表される繰り返し単位と、式(2)で表される繰り返し単位を含む、ポリマー(A)と、充填剤、難燃剤、他の樹脂成分、硬化促進剤、および溶剤等とを混合し、常法にしたがって調製することができる。
【0043】
[用途]
本実施形態に係る熱硬化性組成物は、プリント配線板の絶縁層、半導体パッケージ用材料として好適に用いることができる。本実施形態に係るポリマー(A)を含有する熱硬化性組成物は、フィルム、プリプレグ、プリプレグを用いた金属箔張積層板、樹脂シート、およびプリント配線板を構成する材料として好適に用いることができる。また、本実施形態に係るポリマーを広く電子材料用途に用いることもできる。
【0044】
[プリプレグ]
本実施形態に係るプリプレグは、基材と、本発明の好ましい実施形態に係る熱硬化性組成物から形成される。本実施形態に係るプリプレグは、例えば、本実施形態に係る熱硬化性組成物を基材に含浸または塗布させた後、120~220℃で2~15分程度乾燥させる方法等によって半硬化させることにより得られる。この場合、基材に対する熱硬化性組成物(熱硬化性組成物の硬化物も含む)の付着量、すなわち半硬化後のプリプレグの総量に対する熱硬化性組成物量(充填剤を含む。)は、20~99質量%の範囲であることが好ましい。
【0045】
基材としては、各種プリント配線板材料に用いられている基材であれば特に限定されない。基材の材質としては、例えば、ガラス繊維(例えば、E-ガラス、D-ガラス、L-ガラス、S-ガラス、T-ガラス、Q-ガラス、UN-ガラス、NE-ガラス、球状ガラス等)、ガラス以外の無機繊維(例えば、クォーツ等)、有機繊維(例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、液晶ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン等)が挙げられる。基材の形態としては、特に限定されず、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等が挙げられる。これらの基材は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの基材の中でも、寸法安定性の観点から、超開繊処理、目詰め処理を施した織布が好ましく、吸湿耐熱性の観点から、エポキシシラン処理、アミノシラン処理などのシランカップリング剤等により表面処理したガラス織布が好ましい。電気特性の観点から、L-ガラスやNE-ガラス、Q-ガラス等の低誘電率性、低誘電正接性を示すガラス繊維からなる、低誘電ガラスクロスがより好ましい。
【0046】
[金属箔張積層板]
本実施形態に係る金属箔張積層板は、1枚以上重ねた本発明の好ましい実施形態に係るプリプレグと、プリプレグの片面または両面に配置した金属箔とを有する。本実施形態に係る金属箔張積層板は、例えば、本実施形態に係るプリプレグを1枚以上重ね、その片面または両面に金属箔を配置して積層成形する方法が挙げられ、より詳細にはその片面または両面に銅、アルミニウム等の金属箔を配置して積層成形することにより作製できる。金属箔としては、プリント配線板用材料に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、圧延銅箔、電解銅箔等の銅箔が挙げられる。金属箔(銅箔)の厚さは、特に限定されず、1.5~70μm程度であってもよい。成形方法としては、プリント配線板用積層板および多層板を成形する際に通常用いられる方法が挙げられ、より詳細には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機等を使用して、温度180~350℃程度、加熱時間100~300分程度、面圧20~100kg/cm2程度で積層成形する方法が挙げられる。また、本実施形態に係るプリプレグと、別途作製した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることもできる。多層板の製造方法としては、例えば、本実施形態に係るプリプレグ1枚の両面に35μm程度の金属箔(銅箔)を配置し、上記の成形方法にて積層形成した後、内層回路を形成し、この回路に黒化処理を実施して内層回路板を形成し、この後、この内層回路板と本実施形態に係るプリプレグとを交互に1枚ずつ配置し、さらに最外層に金属箔(銅箔)を配置して、上記条件にて好ましくは真空下で積層成形することにより、多層板を作製することができる。本実施形態に係る金属箔張積層板は、プリント配線板として好適に使用することができる。
【0047】
[プリント配線板]
本実施形態に係るプリント配線板は、絶縁層と、絶縁層の表面に配置した導体層と、を含み、絶縁層が、本発明の好ましい実施形態に係る熱硬化性組成物から形成されたフィルム(層)を含む。このようなプリント配線板は、常法に従って製造でき、その製造方法は特に限定されない。以下、プリント配線板の製造方法の一例を示す。まず上述した銅張積層板等の金属箔張積層板を用意する。次に、金属箔張積層板の表面にエッチング処理を施して内層回路の形成を行い、内層基板を作製する。この内層基板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を行い、次いでその内層回路表面に上述したプリプレグを所要枚数重ね、さらにその外側に外層回路用の金属箔を積層し、加熱加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の金属箔との間に、基材および熱硬化性組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の積層板が製造される。次いで、この多層の積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工を施した後、この穴の壁面に内層回路と外層回路用の金属箔とを導通させるめっき金属皮膜を形成し、さらに外層回路用の金属箔にエッチング処理を施して外層回路を形成することで、プリント配線板が製造される。
【0048】
上記の製造例で得られるプリント配線板は、絶縁層と、この絶縁層の表面に形成された導体層とを有し、絶縁層が上述した本実施形態に係る熱硬化性組成物およびその硬化物の少なくともいずれかを含む構成となる。すなわち、上述した本実施形態に係るプリプレグ(基材およびこれに含浸または塗布された本実施形態に係る熱硬化性組成物およびその硬化物の少なくともいずれかを含む)、上述した本実施形態に係る金属箔張積層板の熱硬化性組成物の層(本発明の熱硬化性組成物およびその硬化物の少なくともいずれかを含む層)が、本実施形態に係る熱硬化性組成物およびその硬化物の少なくともいずれかを含む絶縁層から構成されることになる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら制限を受けるものではない。
【0050】
<実施例1>
【化20】
三方コック、セプタムキャップ、ジムロート、撹拌子を備えた100mLの二口ナスフラスコに5,5’,6,6’-テトラヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン(TTSBI、0.068g、0.200mmol)、炭酸カリウム(0.055g、0.400mmol)を加え窒素置換を行った。その後ジメチルホルムアミド(DMF)2.0mLを加え100℃まで昇温したのちデカフルオロビフェニル(0.134g、0.400mmol)を2.0mLのジメチルホルムアミドに溶解させた溶液をシリンジポンプで1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後24時間窒素気流下で反応させ、反応後に室温まで冷却した。その後ビスフェノールA(BisA、0.411g、1.80mmol)、炭酸カリウム(0.221g、1.60mmol)、デカフルオロビフェニル(0.535g、1.60mmol)を加え100℃で24時間反応させた。反応後、反応溶液を5質量%の塩酸/メタノール500mLの入ったフラスコに添加して、沈殿させ、一晩撹拌した。その後沈殿物を吸引濾過しメタノールで洗浄を行い、140℃で10時間減圧乾燥し、白色フレーク状固体0.946gを得た。
式(1)/式(2)に該当する比率(式中のm/n)は、モル比基準で、本実施例で1/8であった。
【0051】
<実施例2>
三方コック、セプタムキャップ、ジムロート、撹拌子を備えた100mLの二口ナスフラスコに5,5’,6,6’-テトラヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン(0.680g、2.00mmol)、炭酸カリウム(0.552g、4.00mmol)、を加え窒素置換を行った。その後ジメチルホルムアミド 20mLを加え100℃まで昇温したのちデカフルオロビフェニル(1.336g、4.00mmol)を20mLのジメチルホルムアミドに溶解させた溶液をシリンジポンプで1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後24時間窒素気流下で反応させ、反応後に室温まで冷却した。その後ビスフェノールA(1.826g、8.00mmol)、炭酸カリウム(0.828g、6.00mmol)、デカフルオロビフェニル(2.00g、6.00mmol)を加え100℃で24時間反応させた。反応後、反応溶液を5質量%の塩酸/メタノール500mLの入ったフラスコに添加して、沈殿させ、一晩撹拌した。その後沈殿物を吸引濾過しメタノールで洗浄を行い、140℃で10時間減圧乾燥し、白色フレーク状固体5.225gを得た。
式(1)/式(2)に該当する比率は、本実施例2のもので1/3であった。
【0052】
<実施例3>
三方コック、セプタムキャップ、ジムロート、撹拌子を備えた100mLの二口ナスフラスコに5,5’,6,6’-テトラヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン(0.680g、2.00mmol)、炭酸カリウム(0.552g、4.00mmol)を加え窒素置換を行った。その後ジメチルホルムアミド20mLを加え100℃まで昇温したのちデカフルオロビフェニル(1.336g、4.00mmol)を20mLの1,4-ジオキサンに溶解させた溶液をシリンジポンプで1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後24時間窒素気流下で反応させ、反応後に室温まで冷却した。その後ビスフェノールA(0.913g、4.00mmol)、炭酸カリウム(0.553g、4.00mmol)、デカフルオロビフェニル(0.668g、2.00mmol)を加え100℃で48時間反応させた。反応後、反応溶液を5質量%の塩酸/メタノール500mLの入ったフラスコに添加して、沈殿させ、一晩撹拌した。その後沈殿物を吸引濾過しメタノールで洗浄を行い、140℃で10時間減圧乾燥し、白色フレーク状固体3.302gを得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, ppm) : 1.32-1.37 (d, 12H, CH3(TTSBI)),1.65-1.70 (s, 12H, CH3 (Bis-A)) 2.18-2.34(dd, 4H, CH2(TTSBI)), 6.47 (d, 2H, Ar-H(TTSBI)), 6.81 (d, 2H, Ar-H(TTSBI)), 6.95(d, 8H, Ar-H(Bis-A)), 7.21(d, 8H, Ar-H(Bis-A))
式(1)/式(2)に該当する比率は、本実施例3のもので1/1であった。
【0053】
<実施例4>
【化21】
三方コック、セプタムキャップ、ジムロート、撹拌子を備えた100mLの二口ナスフラスコに5,5’,6,6’-テトラヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン(0.340g、1.00mmol)、炭酸カリウム(0.276g、2.00mmol)を加え窒素置換を行った。その後ジメチルホルムアミド(DMF)10mLを加え100℃まで昇温したのちデカフルオロビフェニル(0.668g、2.00mmol)を10mLの1,4-ジオキサンに溶解させた溶液をシリンジポンプで1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後24時間窒素気流下で反応させ、反応後に室温まで冷却した。その後ビスフェノールAF(0.672g、2.00mmol)、炭酸カリウム(0.276g、2.00mmol)、デカフルオロビフェニル(0.334g、1.00mmol)を加え100℃で48時間反応させた。反応後、反応溶液を5質量%の塩酸/メタノール500mLの入ったフラスコに添加して、沈殿させ、一晩撹拌した。その後沈殿物を吸引濾過しメタノールで洗浄を行い、140℃で10時間減圧乾燥し、白色フレーク状固体1.822gを得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, ppm) : 1.33-1.38 (d, 12H, CH
3 (TTSBI)), 2.19-2.35(dd, 4H, CH
2(TTSBI)), 6.49 (d, 2H, Ar-H(TTSBI)), 6.82(d, 2H, Ar-H(TTSBI)), 7.08(d, 8H, Ar-H(Bis-AF)), 7.42(d, 8H, Ar-H(Bis-AF))
式(1)/式(2)に該当する比率(m/n)は、本実施例で1/1であった。
【0054】
<比較例1>
【化22】
三方コック、セプタムキャップ、ジムロート、撹拌子を備えた100mLの二口ナスフラスコに5,5’,6,6’-テトラヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン(0.680g、2.00mmol)、炭酸カリウム(0.552g、4.00mmol)、を加え窒素置換を行った。その後ジメチルホルムアミド 20mLを加え100℃まで昇温したのちデカフルオロビフェニル(1.336g、4.00mmol)を20mLの1,4-ジオキサンに溶解させた溶液をシリンジポンプで1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後24時間窒素気流下で反応させ、反応後に室温まで冷却した。その後ビスフェノールA(0.456g、2.00mmol)、炭酸カリウム(0.276g、2.00mmol)を加え100℃で24時間反応させた。反応後、反応溶液を5質量%の塩酸/メタノール500mLの入ったフラスコに添加して、沈殿させ、一晩撹拌した。その後沈殿物を吸引濾過しメタノールで洗浄を行い、140℃で10時間減圧乾燥し、白色粉末状固体2.111gを得た。
【0055】
<比較例2>
ビスフェノールA添加後の反応時間を72時間に変えた以外は、比較例1と同様に行った。収量は2.059gであった。
【0056】
<ガラス転移点(Tg)の測定方法>
示差走査熱量計を用いて、ガラス転移点(単位:℃)を測定した。
具体的には、日立ハイテクサイエンス製、機械分析装置TMA/SS7100を用い、昇温速度10℃/分、窒素気流下で測定した。
【0057】
<可とう性>
実施例、比較例で得られたポリマーを15質量%の濃度でテトラヒドロフランに溶解させ、ガラス板にキャストしたのち、デシケータに置き、ダイヤプラム式真空ポンプで6時間、油回転真空ポンプで6時間乾燥した。その後、乾燥機で40℃1時間、60℃1時間加熱乾燥し、フィルム(厚さ120μm)を作製した。
フィルムの可とう性の評価はパネル試験により行った。実施例および比較例のフィルムを準備し、この種の製品技術および評価に精通する技術者5名のパネリストにより、手でたわませたときの挙動を観察した。結果を以下のように区分して評価した。評価については、5名の中で最も多かったものを採用した。
フレキシブル:容易にたわんで元の形態に戻る
半ガラス状:幾分たわむが、さらに曲げると不可逆的に折れ曲がる
ガラス状:ほとんどたわまず、さらに曲げると不可逆的に折れ曲がる
【0058】
【0059】
上記の結果から分かるとおり、本発明の規定を満たす実施例のフィルムはTgが低く、扱いやすいものであることが分かる。しかも、フィルムの柔軟性に富んでおり、各種の用途に適合するものであることが分かる。