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特許7348712繊維製品包装用フィルム、その製造方法、繊維製品包装用袋、及び繊維製品包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】繊維製品包装用フィルム、その製造方法、繊維製品包装用袋、及び繊維製品包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20230913BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20230913BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230913BHJP
   B65D 85/18 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/18 F
B32B27/18 Z
B32B27/30 102
B65D85/18 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017248198
(22)【出願日】2017-12-25
(65)【公開番号】P2019112115
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-05-07
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】榊原 優
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 久徳
(72)【発明者】
【氏名】高藤 勝啓
(72)【発明者】
【氏名】風藤 修
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】八木 誠
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-116756(JP,A)
【文献】特開2017-75109(JP,A)
【文献】特開昭63-135301(JP,A)
【文献】特開平8-113248(JP,A)
【文献】特開2015-137117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D65/40, 85/18
B32B27/18, 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコールを主成分とする基材フィルムと、
上記基材フィルムの少なくとも片面に積層され、揮発性防黴剤を含有する防黴剤層とを有し、
上記揮発性防黴剤の含有量が、上記防黴剤層が積層されている面の単位面積あたり、0.2g/m以上10.0g/m以下であり、
上記防黴剤層がバインダー樹脂を含有し、上記バインダー樹脂が、けん化度が80モル%以上のポリビニルアルコールであり、
上記基材フィルムにおける上記ポリビニルアルコールと、任意成分である可塑剤と、任意成分である界面活性剤との合計含有量が99質量%以上である繊維製品包装用フィルム。
【請求項2】
上記揮発性防黴剤が、シメン系化合物及びカルバミン酸系化合物を混合した防黴剤を含む請求項1に記載の繊維製品包装用フィルム。
【請求項3】
上記防黴剤層を被覆する被覆層をさらに有する請求項1又は請求項2に記載の繊維製品包装用フィルム。
【請求項4】
上記防黴剤層が積層された側の最表層が、スリップ剤を含有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の繊維製品包装用フィルム。
【請求項5】
上記防黴剤層が、上記基材フィルムの片面にのみ積層されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の繊維製品包装用フィルム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の繊維製品包装用フィルムから形成された繊維製品包装用袋であって、
上記防黴剤層が少なくとも内側に存在する繊維製品包装用袋。
【請求項7】
請求項6に記載の繊維製品包装用袋と、
上記繊維製品包装用袋に包装された繊維製品と
を備える繊維製品包装体。
【請求項8】
ポリビニルアルコールを主成分とする基材フィルムの少なくとも片面に、揮発性防黴剤及びバインダー樹脂である、けん化度が80モル%以上のポリビニルアルコールを含有する塗工液を塗工する工程を備え、
上記塗工液中の揮発性防黴剤の塗工量が、0.2g/m以上10.0g/m以下であり、
上記基材フィルムにおける上記ポリビニルアルコールと、任意成分である可塑剤と、任意成分である界面活性剤との合計含有量が99質量%以上である繊維製品包装用フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品包装用フィルム、その製造方法、繊維製品包装用袋、及び繊維製品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコール(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」と略記することがある)フィルムは、透明性及び表面光沢が良好で優れた強靭性を示し、しなやかで手触りが良好であり、また静電気を帯びにくいことからほこりが付着しにくいという特徴を有する。このため、PVAフィルムは、衣服等の繊維製品の包装材料として広く使用されている。
【0003】
近年は、清潔志向の高まりもあり、上記のような従来のPVAフィルムの特徴に加えて、フィルム自体の抗菌性はもちろんのこと、包装内容物に対する抗菌性あるいは防黴性が求められている。
【0004】
抗菌性あるいは防黴性を有する化合物としては、イソチオシアネート類、テルペン類、ヒノキ科植物から得られる精油、イミダゾール類、ピレスロイド類化合物などの有機系の化合物や、抗菌性ゼオライトなどの無機系の化合物が公知であり、これらのPVAフィルムへの適用が検討されてきた。特許文献1には、抗菌性、防黴性あるいは防虫性を有するシクロデキストリンの円筒状の分子構造の内部に包接されたシクロデキストリン包接化合物、可塑剤及びPVAからなる抗菌性PVAフィルムが開示されている。特許文献2には、抗菌性ゼオライト粒子を含む抗菌性PVAフィルムが開示されている。これらのPVAフィルムは、フィルム上における菌や黴の繁殖の抑制には有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-116756号公報
【文献】特開平04-007335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、衣服等の繊維製品の生産は、東南アジアやバングラディッシュなどの高温多湿な地方での生産が主流となっている。また、日本国内で生産される場合に比べて、高温多湿の環境下での保管期間が長くなってきている。このような環境においては、PVAフィルム上ではなく、PVAフィルムで包装した繊維製品そのものに黴が発生しやすくなることが判明してきた。上記の技術では、このような繊維製品に発生する黴を十分に抑制できないことから、この問題を解決可能な技術が求められている。ここで、上記問題に対し、PVAフィルムの防黴性能を高めるために、PVAフィルム中に多量の防黴剤を含有させることが考えられる。しかし、PVAフィルム中の防黴剤の含有割合が高まると、透明性等、PVAフィルムが従来有する特性が損なわれることとなる。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、高温多湿な環境下に保管された際に繊維製品に発生する黴を抑制することができ、かつ良好な透明性を有する繊維製品包装用フィルム及び繊維製品包装用袋、当該繊維製品包装用袋で包装された繊維製品包装体、並びに当該繊維製品包装用フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、以下の通りである。
[1]ポリビニルアルコールを主成分とする基材フィルムと、上記基材フィルムの少なくとも片面に積層され、揮発性防黴剤を含有する防黴剤層とを有し、上記揮発性防黴剤の含有量が、上記防黴剤層が積層されている面の単位面積あたり、0.2g/m以上10.0g/m以下である繊維製品包装用フィルム。
[2]上記揮発性防黴剤が、シメン系化合物及びカルバミン酸系化合物を混合した防黴剤を含む[1]の繊維製品包装用フィルム。
[3]上記防黴剤層が、バインダー樹脂を含有する[1]又は[2]の繊維製品包装用フィルム。
[4]上記防黴剤層を被覆する被覆層をさらに有する[1]、[2]又は[3]の繊維製品包装用フィルム。
[5]上記防黴剤層が積層された側の最表層が、スリップ剤を含有する[1]から[4]のいずれかの繊維製品包装用フィルム。
[6]上記防黴剤層が、上記基材フィルムの片面にのみ積層されている[1]から[5]のいずれかの繊維製品包装用フィルム。
[7][1]から[6]のいずれかの繊維製品包装用フィルムから形成された繊維製品包装用袋であって、上記防黴剤層が少なくとも内側に存在する繊維製品包装用袋。
[8][7]の繊維製品包装用袋と、上記繊維製品包装用袋に包装された繊維製品とを備える繊維製品包装体。
[9]ポリビニルアルコールを主成分とする基材フィルムの少なくとも片面に、揮発性防黴剤を含有する塗工液を塗工する工程を備え、上記塗工液中の揮発性防黴剤の塗工量が、0.2g/m以上10.0g/m以下である繊維製品包装用フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温多湿な環境下に保管された際に繊維製品に発生する黴を抑制することができ、かつ良好な透明性を有する繊維製品包装用フィルム及び繊維製品包装用袋、当該繊維製品包装用袋で包装された繊維製品包装体、並びに当該繊維製品包装用フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る繊維製品包装用フィルムの模式的断面図である。
図2図2は、図1の繊維製品包装用フィルムとは異なる実施形態に係る繊維製品包装用フィルムの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照にしつつ、本発明の一実施形態に係る繊維製品包装用フィルム、その製造方法、繊維製品包装用袋、及び繊維製品包装体について詳説する。
【0012】
[繊維製品包装用フィルム10]
図1の繊維製品包装用フィルム10は、基材フィルム11と防黴剤層12とを有する。繊維製品包装用フィルム10は、基材フィルム11と防黴剤層12とが積層された二層構造体である。
【0013】
(基材フィルム11)
基材フィルム11は、PVAを主成分とするフィルムである。ここで、主成分とは、質量基準で最も含有量が多い成分をいう。
【0014】
PVAは、ビニルアルコール単位を主の構造単位として有する重合体である。PVAとしては、ポリビニルエステルをけん化することにより得られるものを使用することができる。ポリビニルエステルは、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステルの1種又は2種以上を重合して得られる。上記ビニルエステルの中でも、PVAの製造の容易性、入手容易性、コスト等の点から、酢酸ビニルが好ましい。
【0015】
ポリビニルエステルは、単量体として1種又は2種以上のビニルエステルのみを用いて得られたものが好ましく、単量体として1種のビニルエステルのみを用いて得られたものがより好ましい。但し、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、1種又は2種以上のビニルエステルと、これと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
【0016】
ビニルエステルと共重合可能な他の単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等の炭素数2~30のα-オレフィン;(メタ)アクリル酸又はその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸又はその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミン又はその塩、N-メチロール(メタ)アクリルアミド又はその誘導体等の(メタ)アクリルアミド誘導体;N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン等のN-ビニルアミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸又はその塩、エステル若しくは酸無水物;イタコン酸又はその塩、エステル若しくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル;不飽和スルホン酸等を挙げることができる。ポリビニルエステルは、これらの他の単量体の1種又は2種以上に由来する構造単位を有することができる。
【0017】
ポリビニルエステルに占める上記他の単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステルを構成する全構造単位のモル数に基づいて、15モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましい。
【0018】
PVAとしては、グラフト共重合がされていないものを好ましく用いることができる。但し、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、PVAは1種又は2種以上のグラフト共重合可能な単量体によって変性されたものであってもよい。グラフト共重合は、ポリビニルエステル及びそれをけん化することにより得られるPVAのうちの少なくとも一方に対して行うことができる。グラフト共重合可能な単量体としては、例えば不飽和カルボン酸又はその誘導体;不飽和スルホン酸又はその誘導体;炭素数2~30のα-オレフィンなどが挙げられる。ポリビニルエステル又はPVAにおけるグラフト共重合可能な単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステル又はPVAを構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましい。
【0019】
PVAとしては架橋されていないものを好ましく用いることができる。但し、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、PVAはその水酸基の一部が架橋されていてもよい。
【0020】
PVAの重合度の下限は、200が好ましく、500がより好ましい。重合度を上記下限以上とすることで、基材フィルム11を安定して製造することが容易となり、また十分なフィルム強度が得られる。一方、この重合度の上限は、6,000が好ましく、4,000がより好ましい。重合度を上記上限以下とすることで、基材フィルム11の製膜時の工程通過性を高めることができる。なお、本明細書でいうPVAの重合度は、JIS K6726-1994の記載に準じて測定した平均重合度を意味する。
【0021】
PVAのけん化度の下限は、80モル%が好ましく、95モル%がより好ましく、98モル%がさらに好ましい。けん化度を上記下限以上とすることにより、基材フィルム11、ひいてはそれを用いた当該繊維製品包装用フィルム10の強度を向上させることができる。一方、このケン化度の上限は、100モル%であってよい。なお、本明細書におけるPVAのけん化度とは、PVAが有する、けん化によってビニルアルコール単位に変換され得る構造単位(典型的にはビニルエステル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対してビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)をいう。けん化度は、JIS K6726-1994の記載に準じて測定することができる。
【0022】
基材フィルム11に占めるPVAの含有量の下限としては、60質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、85質量%がさらに好ましい。PVAの含有量を上記下限以上とすることで、透明性等のPVAが有する諸性能を十分に発揮させることができる。一方、この含有量の上限としては、99質量%が好ましく、95質量%がより好ましい。
【0023】
基材フィルム11には、必要に応じて可塑剤が含有されていてもよい。可塑剤としては、多価アルコールが好ましく用いられる。具体例としては、例えばグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。これらの可塑剤は、1種又は2種以上を用いることができる。これらのうちでも、可塑化効果、PVAとの相溶性、沸点の高さなどの点から、グリセリンが好ましい。
【0024】
基材フィルム11における可塑剤の含有量に特に制限はないが、上限としては、基材フィルム11中のPVA100質量部に対して、50質量部が好ましく、20質量部がより好ましい。可塑剤の含有量を上記上限以下とすることで、基材フィルム11が柔軟になりすぎることを抑制し、製膜性を高めることができる。一方、上記可塑剤の含有量の下限としては、十分な可塑化効果を得るために、0.1質量部が好ましく、1質量部がより好ましく、5質量部がさらに好ましい。
【0025】
基材フィルム11を後述する原液を用いて製造する場合には、当該原液中に界面活性剤を配合することが好ましい。これにより製膜性が向上して基材フィルム11の厚み斑の発生が抑制されると共に、製膜に金属ロールやベルトを使用した際、これらの金属ロールやベルトからの基材フィルム11の剥離が容易になる。界面活性剤が配合された原液から基材フィルム11を製造した場合には、基材フィルム11中には界面活性剤が含有され得る。原液に配合される界面活性剤、ひいては基材フィルム11中に含有される界面活性剤の種類は特に限定されないが、金属ロールやベルトなどからの剥離性の観点から、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤が好ましく、ノニオン性界面活性剤がより好ましい。
【0026】
アニオン性界面活性剤としては、例えばラウリン酸カリウム等のカルボン酸型;オクチルサルフェート等の硫酸エステル型;ドデシルベンゼンスルホネート等のスルホン酸型などが好適である。
【0027】
ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル型;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル型;ポリオキシエチレンラウレート等のアルキルエステル型;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル等のアルキルアミン型;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド等のアルキルアミド型;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル等のポリプロピレングリコールエーテル型;オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型;ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル等のアリルフェニルエーテル型などが好適である。
【0028】
これらの界面活性剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
原液中に界面活性剤を配合する場合、原液中における界面活性剤の含有量の下限、ひいては基材フィルム11中における界面活性剤の含有量の下限は、原液又は基材フィルム11中に含まれるPVA100質量部に対して、0.01質量部が好ましく、0.02質量部がより好ましく、0.03質量部がさらに好ましい。界面活性剤の含有量を上記下限以上とすることで、製膜性及び剥離性を向上させることができる。一方、この含有量の上限としては、0.5質量部が好ましく、0.3質量部がより好ましく、0.1質量部がさらに好ましい。界面活性剤の含有量を上記上限以下とすることで、基材フィルム11の表面に界面活性剤がブリードアウトしてブロッキングが生じて取り扱い性が低下するのを抑制することができる。
【0030】
基材フィルム11は、PVAのみ、あるいはPVAと上記可塑剤及び/又は界面活性剤とのみからなっていてもよいが、必要に応じて、他の成分をさらに含有していてもよい。上記他の成分としては、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色防止剤、油剤等が挙げられる。
【0031】
基材フィルム11におけるPVA、可塑剤及び界面活性剤の合計の含有量の下限としては、60質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましく、99質量%がよりさらに好ましい。一方、この合計の含有量の上限は、100質量%であってよい。
【0032】
基材フィルム11、あるいは基材フィルム11を製膜するための原液には、実質的に揮発性防黴剤が含有されていないことが好ましい。基材フィルム11、あるいは基材フィルム11を製膜するための原液の固形分中の揮発性防黴剤の含有量の上限としては、1質量%が好ましく、0.1質量%がより好ましく、0.01質量%がさらに好ましい。このように、基材フィルム11中には実質的に揮発性防黴剤を含有させず、基材フィルム11上に別途防黴剤層12を設けることで、繊維製品への黴の発生を抑制しつつ、透明性等のPVA製の基材フィルム11の特性を十分に発揮させることができる。
【0033】
基材フィルム11の平均厚みは特に制限されないが、5μm以上100μm以下の範囲内のものが好適に用いられる。なお、平均厚みは、任意の5箇所の厚みを測定し、それらの平均値として求めることができる。以下、平均厚みについて同様である。
【0034】
基材フィルム11の形状に特に制限はなく、平面視において、四角形(例えば、長方形、正方形等)、円形、三角形などの形状を有する単層フィルムの他、多層のフィルムであってもよい。また、基材フィルム11は、塗工、保管、輸送等が容易になることから、長尺の帯状形状であることが好ましい。上記長尺の基材フィルム11の幅の下限は、10cmが好ましく、50cmがより好ましい。この幅の上限は、200cmが好ましく、150cmがより好ましい。また、上記長尺の基材フィルム11の長さは5m以上8000m以下の範囲内であることが好ましい。
【0035】
(防黴剤層12)
図1の繊維製品包装用フィルム10において、防黴剤層12は、基材フィルム11の片面(図1における上側の面)に積層されている。なお、防黴剤層12は、基材フィルム11の表面に直接積層されていてもよいし、他の層を介して積層されていてもよい。但し、防黴剤層12中の防黴剤の付着性、製造効率などの観点からは、防黴剤層12は、基材フィルム11の表面に直接積層されていることが好ましい。
【0036】
防黴剤層12は、揮発性防黴剤を含有する層である。揮発性の防黴剤を用いることで、当該繊維製品包装用フィルム10と接触していない繊維製品に対して、効率的に防黴剤が作用し、繊維製品における黴の発生を抑制することができる。また、当該繊維製品包装用フィルム10においては、基材フィルム11とは別に防黴剤層12を設けることで、用いられる防黴剤が比較的少量であっても、繊維製品への黴の発生を効果的に抑制することができる。
【0037】
当該繊維製品包装用フィルム10においては、防黴剤層12が、基材フィルム11の片面にのみ積層されている。すなわち、当該繊維製品包装用フィルム10においては、基材フィルム11の片面(図1における下側の面)は、露出している。このような当該繊維製品包装用フィルム10から繊維製品包装用袋を作製した場合、基材フィルム11が露出した面を外側の面とすることができる。このような繊維製品包装用袋においては、外面が、良好な光沢性、しなやかで良好な手触り、埃の付着し難さ等を兼ね備えるといった、PVAフィルムが有する利点を十分に発揮することができる。また、繊維製品包装用袋同士が密着しやすくなることを抑制することもできる。
【0038】
揮発性防黴剤の25℃における蒸気圧の下限としては、3Paが好ましく、5Paがより好ましく、10Paがさらに好ましく、15Paがよりさらに好ましく、20Paがよりさらに好ましく、30Paが特に好ましい。用いられる揮発性防黴剤の蒸気圧が上記下限以上であることで、特に良好な揮発性が発揮され、接触していない繊維製品に対する防黴性能が高まる。一方、この蒸気圧の上限としては、500Paが好ましく、400Paがより好ましく、350Paがさらに好ましく、300Paがよりさらに好ましく、250Paが特に好ましい。用いられる揮発性防黴剤の蒸気圧が上記上限以下であることで、防黴性能の持続期間が長くなり、また、防黴剤の臭気の繊維製品への移行が抑制される。
【0039】
揮発性防黴剤としては、イソチオシアネート類、テルペン類、ヒノキ科植物から得られる精油(ヒノキチオール等)、イミダゾール類、ピレスロイド類化合物、シメン系化合物、カルバミン酸系化合物、イソプロピルメチルフェノールなどが挙げられる。揮発性防黴剤は、これらの一種又は二種以上が組み合わせて使用される。これらの中でも、シメン系化合物、カルバミン酸系化合物及びヒノキチオールが好ましく、シメン系化合物及びカルバミン酸系化合物がより好ましく、シメン系化合物及びカルバミン酸系化合物を混合した防黴剤がさらに好ましい。これらの防黴剤は、特に良好な防黴性能を発揮することができる。また、これらの防黴剤は、PVAとの親和性が高いため、防黴剤層12の剥離等も生じ難い。
【0040】
当該繊維製品包装用フィルム10における防黴剤層12の含有量の下限は、0.2g/mであり、0.5g/mが好ましく、0.8g/mがより好ましく、1.0g/mがさらに好ましい。揮発性防黴剤の含有量を上記下限以上とすることで、繊維製品への黴の発生を十分に抑制することができる。また、この揮発性防黴剤の含有量の上限は、10.0g/mであり、5.0g/mが好ましく、4.0g/mがより好ましく、3.0g/mがさらに好ましい。揮発性防黴剤の含有量を上記上限以下とすることで、透明性、外観等を良好にすることができ、また、揮発性防黴剤のブリードアウトを抑制することができる。また、揮発性防黴剤の含有量を上記上限以下とすることで、防黴剤層12表面のスリップ性を高めることができる。表面のスリップ性が低い、すなわち他のフィルムとの密着性が高い場合、当該繊維製品包装用フィルム10から袋等を作成したときに、この口を容易に開くことができなくなったり、その他、当該繊維製品包装用フィルム同士が密着しやすくなったりするなど、取扱性が低下する場合がある。
【0041】
ここで、本明細書における「揮発性防黴剤の含有量(g/m)」とは、防黴剤層が積層されている面の単位面積あたりの揮発性防黴剤の含有量をいう。すなわち、「揮発性防黴剤の含有量(g/m)」は、「繊維製品包装用フィルム中の揮発性防黴剤の含有量(g)」を「基材フィルムにおいて防黴剤層が積層されている面の面積(m)」で除した値をいう。「基材フィルムにおいて防黴剤層が積層されている面の面積」は、積層されている全ての防黴剤層の片面の面積に等しい。また、図1のように基材フィルムの片面にのみ防黴剤層が積層されている場合、「基材フィルムにおいて防黴剤層が積層されている面の面積」は、基材フィルムの片面の面積である。基材フィルムの両面に防黴剤層が積層されている場合、「基材フィルムにおいて防黴剤層が積層されている面の面積」は、基材フィルムの片面にのみ防黴剤層が積層されている場合の2倍である。本明細書における「揮発性防黴剤の含有量」は、例えば防黴剤層を塗工により形成した場合、塗工面積あたりの防黴剤の含有量、すなわち塗工量と換言できる。
【0042】
防黴剤層12は、揮発性防黴剤のみから構成されていてもよいが、バインダー樹脂を含有することが好ましい。防黴剤層12がバインダー樹脂を含有することで、防黴剤層12の基材フィルム11への密着性を向上させることができ、繊維製品等との接触による防黴剤層12の脱落を抑制できる。
【0043】
上記バインダー樹脂としては、特に限定されないが、PVAを主成分とする基材フィルム11との良好な密着性、揮発性防黴剤との親和性、透明性等を有し、また、揮発性防黴剤の揮発性に影響を与え難い樹脂が好ましい。このような樹脂としては、PVA、ポリアミド、ポリウレタン等、極性基を含む構造単位を有する重合体が好ましく、PVAがより好ましい。バインダー樹脂としてのPVAの詳細については、基材フィルム11の主成分として上記したPVAと同様である。
【0044】
防黴剤層12におけるバインダー樹脂の含有量の下限としては、揮発性防黴剤100質量部に対して1質量部が好ましく、5質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましい。バインダー樹脂の含有量を上記下限以上とすることで、防黴剤層12の脱落防止性能をより高めることができる。一方、この含有量の上限としては、100質量部が好ましく、50質量部がより好ましく、30質量部がさらに好ましい。バインダー樹脂の含有量を上記上限以下とすることで、揮発性防黴剤を十分に放散させることができ、繊維製品等への黴発生抑制効果をより十分に発揮させることができる。
【0045】
最表層である防黴剤層12は、さらにスリップ剤を含有することが好ましい。この図1の繊維製品包装用フィルム10の防黴剤層12は、基材フィルム11を基準として、防黴剤層12が積層された側の最表層である。この最表層である防黴剤層12が、繊維製品等に接触する層となる。防黴剤層12(繊維製品等に接触する層)がスリップ剤を含有する場合、当該繊維製品包装用フィルム10から繊維製品包装用袋等を作成した際に、その口を容易に開くことができ、繊維製品の包装を迅速に実施することができる。
【0046】
スリップ剤としては、例えばシリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク等の無機物の粒子、スチレン系ポリマー等の合成樹脂、加工澱粉等の有機物の粒子などを挙げることができる。スリップ剤は、これらを単独、あるいは複数種を併用して使用できる。
【0047】
スリップ剤の粒子の平均粒径の下限としては、5nmが好ましく、10nmがより好ましい。一方、この平均粒径の上限としては、300nmが好ましく、150nmがより好ましい。上記サイズのスリップ剤を用いることで、スリップ剤の使用効果を高めることができる。なお、上記平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した回析/散乱光の光強度分布データから計算した粒径分布(粒径及び相対粒子量)を用い、粒径及び相対粒子量を掛けた値の積算値を相対粒子量の合計で割った値をいう。
【0048】
最表層(繊維製品包装用フィルム10においては防黴剤層12)におけるスリップ剤の含有量としては、例えば0.5質量%以上50質量%以下とすることができる。最表層としての防黴剤層12におけるスリップ剤の含有量は、30質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。
【0049】
防黴剤層12の平均厚みは特に制限されないが、下限としては、0.01μmが好ましく、0.03μmがより好ましい。防黴剤層12の平均厚みを上記下限以上とすることで、防黴性能をより高めることができる。一方、この上限としては、3μmが好ましく、1μmがより好ましい。防黴剤層12の平均厚みを上記上限以下とすることで、透明性をより高めることなどができる。
【0050】
(形状等)
当該繊維製品包装用フィルム10の形状に特に制限は無く、実質的に基材フィルム11の形状と同じである。当該繊維製品包装用フィルム10は、複数のフィルム又は一枚のフィルムを折り曲げて積層し、その一部を接着して袋状又は筒状にしたものなどであってもよい。また、当該繊維製品包装用フィルム10は、保管、輸送等が容易になることから、長尺の帯状形状がロール状に巻かれた形状であることが好ましい。長尺の帯状形状である場合の当該繊維製品包装用フィルム10のサイズとしては、上述した基材フィルム11のサイズと同様とすることができる。
【0051】
[繊維製品包装用フィルム10の製造方法]
繊維製品包装用フィルム10は、例えば、
基材フィルム11を作製する工程(工程A)、
基材フィルム11の片面に、揮発性防黴剤を含有する塗工液を塗工する工程(工程B)、及び
上記塗工液の塗膜を乾燥させる工程(工程C)
を経ることにより得ることができる。
【0052】
なお、工程B及び工程Cに代えて、基材フィルム11に揮発性防黴剤を含有する薄膜フィルムを積層する工程、金属ベルトやプラスチックフィルムなどの基材の上に形成させた防黴剤層を基材フィルム11に転写する工程などによっても、当該繊維製品包装用フィルム10を得ることができる。但し、作製の容易さなどから、上記工程B及び工程Cを経る方法が好ましい。すなわち、防黴剤層12は、塗工により形成された塗工層であることが好ましい。
【0053】
(工程A)
工程Aは、PVAを主成分とする基材フィルム11を作製する工程である。基材フィルム11の作製方法は特に限定されない。例えば、上記したPVA、及び必要に応じてさらに可塑剤、界面活性剤等の成分が溶媒中に溶解した原液や、PVA、溶媒及び必要に応じて可塑剤、界面活性剤等の成分を含みPVAが溶融した原液を用いて製造することができる。
【0054】
原液の調製に使用される上記溶媒としては、例えば水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどを挙げることができ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。そのうちでも、環境に与える負荷や回収性の点から水が好ましい。
【0055】
製膜に用いられる原液の揮発分率は、製膜方法、製膜条件などによって異なるが、その下限としては、50質量%が好ましく、55質量%がより好ましい。揮発分率が上記下限以上であることで、製膜原液の粘度が高くなり過ぎず、原液調製時の濾過や脱泡が円滑に行われ、異物や欠点の少ない基材フィルム11の製造が容易になる。一方、この揮発分率の上限としては、95質量%が好ましく、90質量%がより好ましい。揮発分率が上記上限以下であることにより、製膜原液の濃度が低くなり過ぎず、工業的なの製造が容易になる。なお、揮発分率とは、製膜時に揮発や蒸発によって除去される溶媒などの揮発性成分の、原液中における含有割合をいう。
【0056】
上記した原液を用いて基材フィルム11を製膜する際の製膜方法としては、例えば湿式製膜法、ゲル製膜法、流延製膜法、押出製膜法などが挙げられる。これらの製膜方法は、1種のみを採用しても2種以上を組み合わせて採用してもよい。これらの製膜法の中でも流延製膜法及び押出製膜法が、膜の厚み及び幅が均一で物性の良好な基材フィルム11が得られることから好ましい。基材フィルム11には、必要に応じて乾燥処理や熱処理を行うことができる。
【0057】
基材フィルム11を製膜する具体的な方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。まず、T型スリットダイ、ホッパープレート、I-ダイ、リップコーターダイ等を用いて、製膜用の原液を最上流側に位置する回転する加熱した第1ロール(又はベルト)の周面上に均一に吐出又は流延する。この第1ロール(又はベルト)の周面上に吐出又は流延された原液から形成される膜の表面から揮発性成分が蒸発する。続いて、膜の表面を、回転する加熱した第2ロール(又は乾燥ロール)の周面上に接触させて、膜を乾燥させる。続いて、下流側に配置した1個又は複数個の回転する加熱したロールの周面上で膜をさらに乾燥させるか、または熱風乾燥装置の中を通過させて膜を乾燥させる。その後、乾燥した膜(基材フィルム11)を巻き取り装置によって巻き取る。加熱したロールによる乾燥と熱風乾燥装置による乾燥とは、適宜組み合わせて実施してもよい。
【0058】
基材フィルム11を適切な状態に調整するためには、基材フィルム11の製造設備には、熱処理装置、調湿装置、各ロールを駆動するためのモータ、変速機等の速度調整機構などが付設されることが好ましい。
【0059】
基材フィルム11の製造工程での乾燥処理における乾燥温度の下限は、50℃が好ましく、60℃がより好ましい。一方、この乾燥温度の上限は、150℃が好ましく、140℃がより好ましい。
【0060】
(工程B)
工程Bは、基材フィルム11の片面に、揮発性防黴剤を含有する塗工液(防黴剤層用の塗工液)を塗工する工程である。上記塗工液としては、揮発性防黴剤を水や有機溶媒などの溶媒に均一に溶解させた溶液や、水や有機溶媒などの分散媒に乳化分散させたエマルジョンなどを使用することができる。使用する溶媒や分散媒に必ずしも制限はないが、塗工液を塗布した後の乾燥における揮発性防黴剤の揮発損失を少なくするために、低温での蒸発速度が速い有機溶媒を用いることが好ましい。このような有機溶媒としては、例えば沸点が100℃以下の有機溶媒が例示され、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等を挙げることができる。なお、防黴剤層12にPVA等のバインダー樹脂を含有させる場合、PVA等の溶解性を高めるために、水を含む溶媒を用いることが好ましい。
【0061】
防黴剤層用の塗工液中の揮発性防黴剤の含有量は特に制限されないが、その下限は、0.5質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましい。揮発性防黴剤の含有量を上記下限以上とすることで、多量の塗工液の塗布を避けることができ、塗布量の均一性や外観を高めることができる。一方、この含有量の上限としては、40質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましく、15質量%がよりさらに好ましい。揮発性防止剤の含有量を上記上限以下とすることでも、塗布量の均一性や外観を高めることができる。
【0062】
防黴剤層用の塗工液は、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤が含まれることにより、各成分の分散性が向上して塗工ムラが低減されることなどにより、得られる繊維製品包装用フィルムの諸性能(透明性、開口性等)を高めることができる。なお、後述の図2の繊維製品包装用フィルム20のように被覆層13を設ける場合であっても、防黴剤層12の塗工ムラが小さいと、被覆層13を均一性高く形成することができるため、得られる繊維製品包装用フィルムの開口性等が良好となると推測される。防黴剤層用の塗工液中に界面活性剤が含まれる場合、形成される防黴剤層12は、界面活性剤を含有する。
【0063】
防黴剤層用の塗工液中の揮発性防黴剤の塗工量の下限は、0.2g/mであり、0.5g/mが好ましく、0.8g/mがより好ましく、1.0g/mがさらに好ましい。また、この揮発性防黴剤の塗工量の上限は、10.0g/mであり、5.0g/mが好ましく、4.0g/mがより好ましく、3.0g/mがさらに好ましい。なお、この塗工量(g/m)とは、塗工した面積(m)あたりの、塗工した揮発性防黴剤の質量(g)をいう。
【0064】
上記塗工液の塗布方法は、特に限定されず、グラビアコーター、ディップコーター、リバースロールコーター、押し出しコーター、スプレーコーター等を用いた公知の方法で塗布できる。また、上記塗布液の塗工は、基材フィルム11上に1回のみ行ってもよく、必要に応じて2回以上の複数回行ってもよい。
【0065】
(工程C)
工程Cは、塗工液の塗膜を乾燥させる工程である。塗膜の乾燥により、防黴剤層12が形成される。この乾燥方法は特に限定されず、自然乾燥、熱風乾燥等の公知の方法により行うことができる。熱風乾燥を行う際の熱風の温度としては、例えば50℃以上90℃以下とすることができる。上記温度範囲の乾燥により、揮発性防黴剤の揮発を抑制しつつ、効率的な乾燥を行うことができる。
【0066】
[繊維製品包装用フィルム20]
図2の繊維製品包装用フィルム20は、基材フィルム11と防黴剤層12と被覆層13とを有する。繊維製品包装用フィルム20は、基材フィルム11と防黴剤層12と被覆層13とがこの順に積層された三層構造体である。
【0067】
基材フィルム11と防黴剤層12とは、図1の繊維製品包装用フィルム10と同じであるため、同一番号を付して詳細な説明を省略する。
【0068】
但し、繊維製品包装用フィルム20の防黴剤層12は、最表層では無い。そのため、繊維製品包装用フィルム20の防黴剤層12においては、スリップ剤は含有されていなくてよい。また、繊維製品包装用フィルム20の防黴剤層12においては、バインダー樹脂は含有されていなくてよい。例えば、繊維製品包装用フィルム20の防黴剤層12におけるバインダー樹脂の含有量の上限としては、揮発性防黴剤100質量部に対して、10質量部であってよく、1質量部であってもよい。
【0069】
(被覆層13)
被覆層13は、防黴剤層12を被覆する層である。被覆層13は、防黴剤層12の基材フィルム11とは反対側の面上に積層されている。当該繊維製品包装用フィルム20においては、このような被覆層13により、防黴剤層12の繊維製品等との接触による脱落を抑制できると共に、表面への揮発性防黴剤のブリードアウトなどを抑制できる。
【0070】
被覆層13は、樹脂を主成分とすることが好ましい。被覆層13の主成分となる樹脂としては、防黴剤層12に含有されていてもよいバインダー樹脂と同様の理由で、PVA、ポリアミド、ポリウレタン等、極性基を含む構造単位を有する重合体が好ましく、PVAがより好ましい。被覆層13に含有される樹脂としてのPVAの詳細については、基材フィルム11の主成分として上記したPVAと同様である。
【0071】
被覆層13に占める樹脂の含有量の下限としては、60質量%が好ましく、70質量%がより好ましい。一方、この含有量の上限としては、95質量%が好ましく、90質量%がより好ましい。
【0072】
また、防黴剤層12中の揮発性防黴剤100質量部に対する、被覆層13中の樹脂の含有量の下限としては、1質量部が好ましく、5質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましい。被覆層13中の樹脂の含有量を上記下限以上とすることで、防黴剤層12の脱落や揮発性防黴剤のブリードアウトを抑制する効果をより高めることができる。一方、上記樹脂の含有量の上限としては、100質量部が好ましく、50質量部がより好ましく、30質量部がさらに好ましい。被覆層13中の樹脂の含有量を上記上限以下とすることで、防黴剤層12から十分に揮発性防黴剤を放散させることができ、繊維製品等への黴発生の抑制効果を十分に発揮することができる。
【0073】
被覆層13は、図1の繊維製品包装用フィルム10の防黴剤層12と同様の理由で、スリップ剤を含有することが好ましい。被覆層13は、基材フィルム11を基準として、防黴剤層12が積層された側の最表層、すなわち、繊維製品等に接触する層である。スリップ剤の好ましい形態は、上記した通りである。
【0074】
最外層である被覆層13におけるスリップ剤の含有量の下限は、5質量%が好ましく、15質量%がより好ましい。一方、この含有量の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。なお、図1の繊維製品包装用フィルム10の最外層である防黴剤層12と異なり、図2の繊維製品包装用フィルム20の最外層である被覆層13は、揮発性防黴剤を積極的に含有させなくてよい。このため、図2の繊維製品包装用フィルム20の被覆層13には、比較的高い含有割合でスリップ剤を含有させることができ、良好なスリップ性を発現させることができる。
【0075】
被覆層13の平均厚みは特に制限されないが、下限としては、0.01μmが好ましく、0.03μmがより好ましく、0.05μmがさらに好ましい。被覆層13の平均厚みを上記下限以上とすることで、防黴剤層の脱落防止効果や、揮発性防黴剤のブリードアウト抑制効果をより高めることができる。一方、この上限としては、1μmが好ましく、0.5μmがより好ましく、0.2μmがさらに好ましい。被覆層13の平均厚みを上記上限以下とすることで、防黴剤層12から十分に揮発性防黴剤を放散させることができ、繊維製品等への黴発生の抑制効果を十分に発揮することができる。
【0076】
[繊維製品包装用フィルム20の製造方法]
繊維製品包装用フィルム20は、例えば、
基材フィルム11を作製する工程(工程A)、
基材フィルム11の片面に、揮発性防黴剤を含有する塗工液を塗工する工程(工程B)、
上記塗工液の塗膜を乾燥させる工程(工程C)
上記工程Cを経て形成された防黴剤層12の表面に、被覆層用の塗工液を塗工する工程(工程D)、及び
上記被覆層用の塗工液の塗膜を乾燥させる工程(工程E)
を経ることにより得ることができる。
【0077】
上記工程A~Cは、繊維製品包装用フィルム10の製造方法と同じであるので、詳細な説明を省略する。また、工程D及び工程Eに代えて、防黴剤層12表面に被覆層を構成する成分からなる薄膜フィルムを積層する工程、金属ベルトやプラスチックフィルムなどの基材の上に形成させた被覆層を防黴剤層12表面に転写する工程などによっても、当該繊維製品包装用フィルム20を得ることができる。但し、作製の容易さなどから、上記工程D及び工程Eを経る方法が好ましい。すなわち、被覆層13は、防黴剤層12と同様、塗工により形成された塗工層であることが好ましい。
【0078】
(工程D)
工程Dは、防黴剤層12の表面に、被覆層用の塗工液を塗工する工程である。上記被覆層用の塗工液としては、樹脂を水や有機溶媒などの溶媒に均一に溶解させた溶液や、水や有機溶媒などの分散媒に乳化分散させたエマルジョンなどを使用することができる。使用する溶媒や分散媒に必ずしも制限はないが、防黴剤層用の塗工液と同様に、低温での蒸発速度が速い有機溶媒を用いることが好ましい。このような有機溶媒としては、例えば沸点が100℃以下の有機溶媒が例示され、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等を挙げることができる。また、PVA等の樹脂の溶解性を高めるためには、水を含む溶媒を用いることが好ましい。
【0079】
上記被覆層用の塗工液の塗布方法は、特に限定されず、グラビアコーター、ディップコーター、リバースロールコーター、押し出しコーター、スプレーコーター等を用いた公知の方法で塗布できる。また、上記被覆層用の塗布液の塗工は、防黴剤層12表面に1回のみ行ってもよく、必要に応じて2回以上の複数回行ってもよい。
【0080】
(工程E)
工程Eは、被覆層用の塗工液の塗膜を乾燥させる工程である。この塗膜の乾燥により、被覆層13が形成される。この乾燥方法は特に限定されず、自然乾燥、熱風乾燥等の公知の方法により行うことができる。熱風乾燥を行う際の熱風の温度としては、例えば50℃以上90℃以下とすることができる。上記温度範囲の乾燥により、揮発性防黴剤の揮発を抑制しつつ、効率的な乾燥を行うことができる。
【0081】
[繊維製品包装用袋]
本発明の一実施形態に係る繊維製品包装用袋は、本発明の一実施形態に係る繊維製品包装用フィルムから形成された繊維製品包装用袋である。当該繊維製品包装用袋においては、基材フィルムを基準に、防黴剤層が少なくとも内側に存在する。すなわち、当該繊維製品包装においては、少なくとも1つの防黴剤層が、基材フィルムよりも内側に位置する。この場合、この内側に位置する防黴剤層のさらに内側に被覆層等が存在していてもよい。例えば、図1の繊維製品包装用フィルム10を用いた場合は、防黴剤層12が最内層となる。また、図2の繊維製品包装用フィルム20を用いた場合は、防黴剤層12を被覆する被覆層13が最内層となる。このように、当該繊維製品包装用袋は、防黴剤層側が内側に位置するため、高温多湿な環境下に保管された際に繊維製品に発生する黴を抑制することができる。
【0082】
当該繊維製品包装用袋の形状としては特に限定されず、PVAフィルム等が用いられた従来公知の繊維製品包装用袋と同様とすることができる。また、当該繊維製品包装用袋の製造方法も特に限定されず、当該繊維製品包装用フィルムを用いること以外は、従来公知の製造方法により製造することができる。
【0083】
[繊維製品包装体]
本発明の一実施形態に係る繊維製品包装体は、当該繊維製品包装用袋と、当該繊維製品包装用袋に包装された繊維製品とを備える。すなわち、当該繊維製品包装体は、繊維製品が、当該繊維製品包装用フィルムで包装されたものである。当該繊維製品包装体においては、防黴剤層側が内側、すなわち繊維製品と接触するように繊維製品が包装されていることとなる。このため、当該繊維製品包装体は、高温多湿な環境下に保管されていても、繊維製品に発生する黴を抑制することができる。
【0084】
上記繊維製品としては、特に限定されず、衣服の他、布、タオル、ハンカチ、毛糸、毛布、カーテン等であってもよい。また、当該繊維製品包装体の製造方法も特に限定されず、例えば当該繊維製品包装用袋に、手作業又は機械により繊維製品を入れ、封をすること等により製造することができる。また、一対の繊維製品包装用フィルムの間に繊維製品を配置し、繊維製品包装用フィルムの周囲をヒートシールすることにより製造することもできる。
【0085】
[その他の実施形態]
本発明の繊維製品包装用フィルム、その製造方法、繊維製品包装用袋、及び繊維製品包装体は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、繊維製品包装用フィルムにおいて、防黴剤層は、基材フィルムの両面に積層されていてもよい。このような繊維製品包装用フィルムは、両面が繊維製品に接触するような包装材などとして好適に用いることができる。なお、基材フィルムの両面に積層された防黴剤層を有する繊維製品包装用フィルムは、基材フィルムの両面に、揮発性防黴剤を含有する塗工液を塗工することなどにより製造することができる。
【0086】
また、当該繊維製品包装用フィルムは、基材フィルム、防黴剤層及び被覆層以外の層などを有していてもよい。このような層としては、層間を接着するために接着層や、防黴剤層が積層されていない側の基材フィルムの面を被覆する層などが挙げられる。但し、他の層は、透明性等に影響を与え得ることなどから、当該繊維製品包装用フィルムは、基材フィルム及び防黴剤層のみ、あるいは、基材フィルム、防黴剤層、及びこの防黴剤層を被覆する被覆層のみから構成されることが好ましい。
【実施例
【0087】
以下に本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、得られた繊維製品包装用フィルムの評価項目及びその方法は、下記の通りである。
【0088】
(1)防黴性
ワイシャツに使用されるポリエステル100%の布を概略15cm×15cmに切り出し、120℃の熱風乾燥機中で24時間滅菌処理した。滅菌処理した布にカワキコウジカビの胞子を2.5g/L、グルコースを約53g/L含有する溶液を約2mL塗布した。次いで、評価する繊維製品包装用フィルム(以下、単にフィルムともいう)を22cm×25cmに2枚切り出し、その2枚を重ねて3方を端から1cmの部分をヒートシールし、袋を作成した。その際、防黴剤層等の塗工層を有するフィルムの場合は、この塗工層が内側になるようにした(以下、防黴剤層及び被覆層を区別することなく塗工層と称する。)。この袋の中に、上記の溶液を塗布した布を折り曲げないで入れ、残る一方をヒートシールして、袋面積が概略20cm×を20cmのパウチを作成した。4方のヒートシール部の幅は全て約5mmであった。作成したパウチを30℃-90%RHの暗室に60日間放置した後、布を袋から取り出して、以下の基準により目視観察を行った。
A:布を横から注視しても、黴の菌糸は全く認められない。
B:布を横から注視すると、数本の黴の菌糸が認められる。
C:布を横から注視すると、10本以上の黴の菌糸が認められる。
D:布を上から観察するだけで、点状の黴のコロニーが認められる。
E:布を上から観察するだけで、面状の黴のコロニーが認められる。
【0089】
(2)透明性
フィルムの透明性は日本電色工業株式会社製の「PG-1M」を用いて、5枚重ねたフィルムを透過する光の照度を測定した。照度が115lx(ルクス)以下だと、透明性が不良と判断される。
【0090】
(3)外観
フィルムを概略A4サイズに切り出して机の上に置き、蛍光灯で光を当てて、その反射光を目視で観察し、以下の基準で官能評価した。
A:蛍光灯の像が明瞭に観察され、面荒れなどの外観異常は観察されない。
B:蛍光灯の像に、面荒れによるわずかなにじみが観察される。
C:面荒れにより、蛍光灯の像が不明瞭である。
【0091】
(4)塗工層の脱落
フィルムを用いて、塗工層を内側にした袋を作成した。その袋にポリエステル100%の黒色のシャツを入れ、それを段ボール箱に入れた。シャツを入れた袋の入った段ボール箱を、トラックにて長距離輸送した。輸送距離はおよそ2000kmであった。長距離輸送後に、シャツを袋から取り出して目視にて観察し、以下の基準で評価した。
A:シャツに脱落した塗工層は全く認められない。
B:シャツの上に、白い粉状の脱落した塗工層が認められる。
【0092】
(5)防黴剤のブリードアウト
フィルムを切り出して23℃-50%RHの条件で3カ月間放置した。その後、フィルムの塗工層を有する面を素手で触れた時の感触で、防黴剤のブリードアウトを以下の基準により官能評価した。
A:フィルムの表面に粘着感はない。
B:フィルムの表面に若干の粘着感が感じられる。
C:フィルムの表面に明らかな粘着感が感じられる。
【0093】
(6)開口性
フィルムを22cm×25cmに2枚切り出し、その2枚を重ねて3方を端から1cmの部分をヒートシールし、袋を作成した。その袋を100枚重ねた後、上から均一に50kgの重量がかかるように重りを乗せ、50℃-65%RHの環境下で168時間放置した。その後、袋を手で開けた時の開けやすさを、以下の基準により官能評価した。
A:フィルム同士が密着することなく、容易に開口できる。
B:フィルム同士に若干の密着感はあるが、片手で開口可能である。
C:フィルム同士に密着感があり、開口のためには両手を使う必要がある。
【0094】
[作成例1]
重合度2400、けん化度99.9モル%のPVA(酢酸ビニルの単独重合体のけん化物)100質量部と可塑剤としてのグリセリン12質量部とを含む、PVA濃度10質量%の水溶液(製膜原液)を調製した。この水溶液を表面温度60℃の金属ロール上に流涎し、その後乾燥して、平均厚み50μmのPVAフィルムを得た。このPVAフィルムを金属ロールから剥離した後、100℃で2分間熱処理したフィルムをPVAフィルムPF1とした。
【0095】
[作成例2]
金属ロール上に流涎するPVA水溶液中に、大阪化成株式会社のマルカサイドH-4(シメン系化合物及びカルバミン酸系化合物を混合した防黴剤と界面活性剤とを含む乳剤:X1)を添加した以外は、作成例1と同様にして、平均厚み50μmのPVAフィルムPF2を得た。得られたPVAフィルムPF2中の防黴剤の含有量は、1.4g/mであった。
【0096】
[作成例3]
金属ロール上に流涎するPVA水溶液中に添加するマルカサイドH-4の量を増やした以外は、作成例2と同様にして、平均厚み50μmのPVAフィルムPF3を得た。得られたPVAフィルムPF3中の防黴剤の含有量は、8.0g/mであった。
【0097】
[実施例1]
イソプロピルアルコールを94.0質量%、マルカサイドH-4(X1)を6.0質量%含む防黴剤層用の塗工液を調製した。この塗工液をPVAフィルムPF1の片面にグラビアコーターにて塗工した。その後、70℃の熱風にて乾燥し、防黴剤層を形成させた。
次いで、イソプロピルアルコールを50.0質量%、水を48.7質量%、PVA(重合度2400、けん化度99.9モル%、酢酸ビニルの単独重合体のけん化物)を1.0質量%、及びスリップ剤としての平均粒径50nmのスチレン系ポリマーの微粒子を0.3質量%含む被覆層用の塗工液を調製した。この塗工液を防黴剤層の表面にグラビアコーターにて塗工した。その後、70℃の熱風にて乾燥し、被覆層を形成させ、実施例1の繊維製品包装用フィルムを得た。塗工後の塗工層(防黴剤層及び被覆層)の平均厚みは約0.1μmであった。防黴剤層の平均厚みは約0.02μm、被覆層の平均厚みは約0.08μmであった。また、得られた繊維製品包装用フィルム中の防黴剤の含有量は、1.4g/mであった。
得られた繊維製品包装用フィルムを用いて、防黴性、透明性、外観、塗工層の脱落、防黴剤のブリードアウト、及び開口性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
[実施例2~4]
実施例1において、マルカサイドH-4(X1)を大阪化成株式会社製のマルカサイドBX-0(シメン系化合物及びカルバミン酸系化合物を混合した防黴剤を含む油剤:X2)、高砂香料工業株式会社製のヒノキチオール(X3)、又は大阪化成株式会社製のイソプロピルメチルフェノール(X4)に変更した以外は実施例1と同様にして、繊維製品包装用フィルムを得た。なお、いずれの防黴剤X1~X4も、揮発性防黴剤である。得られた繊維製品包装用フィルムを用いて、防黴性、透明性、外観、塗工層の脱落、防黴剤のブリードアウト、及び開口性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
[実施例5]
イソプロピルアルコールを44.0質量%、マルカサイドH-4(X1)を6.0質量%、水を48.7質量%、PVA(重合度2400、けん化度99.9モル%、酢酸ビニルの単独重合体のけん化物)を1.0質量%、及びスリップ剤としての平均粒径50nmのスチレン系ポリマーの微粒子を0.3質量%含む防黴剤層用の塗工液を調製した。この塗工液PVAフィルムPF1の片面にグラビアコーターにて塗工した。その後、70℃の熱風にて乾燥し、繊維製品包装用フィルムを得た。得られた塗工層(防黴剤層)の平均厚みは約0.1μmであった。また、得られた繊維製品包装用フィルム中の防黴剤の含有量は、1.4g/mであった。
得られた繊維製品包装用フィルムを用いて、防黴性、透明性、外観、塗工層の脱落、防黴剤のブリードアウト、及び開口性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
[実施例6]
実施例5における防黴剤層用の塗工液について、イソプロピルアルコールの含有量を44.0質量%から20.0質量%に、マルカサイドH-4(X1)の含有量を6.0質量%から30.0質量%に変更した以外は、実施例5と同様にして、繊維製品包装用フィルムを得た。得られた繊維製品包装用フィルム中の防黴剤の含有量は、8.0g/mであった。
得られた繊維製品包装用フィルムを用いて、防黴性、透明性、外観、塗工層の脱落、防黴剤のブリードアウト、及び開口性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
[実施例7]
実施例5における防黴剤層用の塗工液について、水の含有量を48.7質量%から49.7質量%、PVAの含有量を1.0質量%から0質量%(添加せず)に変更した以外は、実施例5と同様にして、繊維製品包装用フィルムを得た。
得られた繊維製品包装用フィルムを用いて、防黴性、透明性、外観、塗工層の脱落、防黴剤のブリードアウト、及び開口性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
[実施例8]
実施例1における被覆層用の塗工液について、水の含有量を48.7質量%から49.0質量%、スリップ剤の含有量を0.3質量%から0質量%(添加せず)に変更した以外は、実施例1と同様にして、繊維製品包装用フィルムを得た。
得られた繊維製品包装用フィルムを用いて、防黴性、透明性、外観、塗工層の脱落、防黴剤のブリードアウト、及び開口性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
[比較例1]
PVAフィルムPF1に何も塗工することなく、防黴性、透明性、外観、防黴剤のブリードアウト、及び開口性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
[比較例2]
PVAフィルムPF2に何も塗工することなく、防黴性、透明性、外観、防黴剤のブリードアウト、及び開口性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
[比較例3]
PVAフィルムPF3に何も塗工することなく、防黴性、透明性、外観、防黴剤のブリードアウト、及び開口性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
[比較例4]
実施例1における防黴剤層用の塗工液について、マルカサイドH-4(X1)を株式会社シナネンゼオミック製ゼオミックAV10D(銀ゼオライト、不揮発性防黴剤X5)に変更した以外は実施例1と同様にして、繊維製品包装用フィルムを得た。
得られた繊維製品包装用フィルムを用いて、防黴性、透明性、外観、塗工層の脱落、防黴剤のブリードアウト、及び開口性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1に示されるように、比較例1の防黴剤を含有していないPVAフィルムPF1については、防黴性が非常に低かった。また、比較例2のフィルム全体に防黴剤を含有させたPVAフィルムPF2についても、防黴性は不十分であった。比較例3のフィルム全体に防黴剤を高含有量で含有させたPVAフィルムPF3については、防黴性は良好であったが、透明性や外観などに劣る結果となった。また、不揮発性の防黴剤を塗工した比較例4については、繊維製品に対する防黴性は不十分であった。
【0109】
一方、揮発性防黴剤を塗工した実施例1~8については、良好な防黴性と透明性とを両立させることができた。また、実施例1~8の中でも、以下のことがわかる。実施例1~4の対比からわかるように、揮発性防黴剤としては、シメン系化合物及びカルバミン酸系化合物を混合した防黴剤が特に優れた防黴性を発揮することが示された。中でも、シメン系化合物及びカルバミン酸系化合物を混合した防黴剤及び界面活性剤を含む乳剤であるマルカサイドH-4(X1)を用いた実施例1が、防黴性以外の評価も特に高い効果を発揮した。被覆層を設けなかった実施例5は、防黴剤のブリードアウト及び開口性の評価がやや劣る結果となった。被覆層を設けず、さらに防黴剤の含有量が高い実施例6は、防黴剤のブリードアウト及び開口性の評価が劣ることに加え、防黴剤の含有量が高いことから、透明性及び外観の評価がやや劣る結果となった。被覆層を設けず、さらに防黴剤層にバインダー樹脂を含有させなかった実施例7は、防黴剤ブリードアウトの評価がやや劣る結果となったのに加え、塗工層の脱落が生じる結果となった。最外層である被覆層にスリップ剤を含有させなかった実施例8は、開口性の評価が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の繊維製品包装用フィルムは、衣服等の繊維製品を包装する包装材用のフィルムとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0111】
10、20:繊維製品包装用フィルム
11:基材フィルム
12:防黴剤層
13:被覆層
図1
図2