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特許7348987ピログルタメートアミロイド-βに対する抗体及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】ピログルタメートアミロイド-βに対する抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20230913BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230913BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20230913BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230913BHJP
【FI】
C12N15/09 Z ZNA
G01N33/53 D
G01N33/53 N
C07K16/18
C12N15/13
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022076621
(22)【出願日】2022-05-06
(62)【分割の表示】P 2019522704の分割
【原出願日】2017-11-02
(65)【公開番号】P2022115986
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】62/416,788
(32)【優先日】2016-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397060175
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】マーケン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】バン ブルーク,ビアンカ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンダーメーレン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ハーマンズ,バート
(72)【発明者】
【氏名】ボッテルバーグス,アストリッド
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-536191(JP,A)
【文献】特表2011-528561(JP,A)
【文献】国際公開第2016/097305(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/151076(WO,A2)
【文献】JEFFREY L. FROST et al.,An anti-pyroglutamate-3 Aβ vaccine reduces plaques and improves cognition in APPswe/PS1ΔE9 mice,Neurobiol. Aging,vol.36, no.12,2015年08月31日,pp.3187-3199
【文献】JEFFREY L. FROST et al.,Passive immunization against pyroglutamate-3 amyloid-β reduces plaque burden in Alzheimer-like transgenic mice: a pilot study,Neurodegener Dis.,10(1-4),2012年02月16日,pp.265-270
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
C12N 15/13
C07K 16/18
G01N 33/53
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において第3のアミノ酸残基がピログルタメートを有するアミロイドβ(3pE Aβ)タンパク質を検出する方法であって、前記方法は、
(i)前記対象から得られた生物学的試料を3pE Aβに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させて、抗原-抗体免疫複合体を形成する工程、
(ii)前記抗原-抗体免疫複合体の存在を検出する工程
を含み;
ここで、前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、
a)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、
b)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2、
c)配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3、
d)配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、
e)配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2、および
f)配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3
を含み;
前記生物学的試料は、組織試料である、方法。
【請求項2】
a)前記重鎖可変領域CDR1が、配列番号3のアミノ酸配列であり、
b)前記重鎖可変領域CDR2が、配列番号4のアミノ酸配列であり、
c)前記重鎖可変領域CDR3が、配列番号5のアミノ酸配列であり、
d)前記軽鎖可変領域CDR1が、配列番号14のアミノ酸配列であり、
e)前記軽鎖可変領域CDR2が、配列番号15のアミノ酸配列であり、かつ、
f)前記軽鎖可変領域CDR3が、配列番号16のアミノ酸配列である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
a)配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
b)配列番号13のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
a)配列番号1のアミノ酸配列の重鎖;および
b)配列番号12のアミノ酸配列の軽鎖
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
a)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2および配列番号5のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3であって、ここで、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも98%同一である、重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3;および
b)配列番号14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1、配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2および配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3であって、ここで、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも98%同一である、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
a)配列番号3のアミノ酸配列の重鎖可変領域CDR1、配列番号4のアミノ酸配列の重鎖可変領域CDR2および配列番号5のアミノ酸配列の重鎖可変領域CDR3であって、ここで、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも98%同一である、重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3;および
b)配列番号14のアミノ酸配列の軽鎖可変領域CDR1、配列番号15のアミノ酸配列の軽鎖可変領域CDR2および配列番号16のアミノ酸配列の軽鎖可変領域CDR3であって、ここで、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも98%同一である、軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、ヒト化抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、ヒト化抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、3pE Aβへの結合に関して、配列番号1のアミノ酸配列の重鎖および配列番号12のアミノ酸配列の軽鎖を含む抗体と競合する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、3pE Aβへの結合に関して、配列番号1のアミノ酸配列の重鎖および配列番号12のアミノ酸配列の軽鎖を含む抗体と競合する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が、アルツハイマー病を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記組織試料が、脳組織を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、不溶性担体に固定化される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、放射性、酵素、発光または蛍光標識で標識される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記抗原-抗体免疫複合体が、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット分析、競合イムノアッセイまたはサンドイッチイムノアッセイによって測定される、請求項1に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミロイドβ(Aβ)ペプチドに対する抗体及びその抗体を使用した治療方
法の分野に関する。具体的には、抗体は、アミロイド関連障害を同定及び治療するために
使用され得る。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、徐々に激しい精神機能低下を導き、最終的には死に至ら
しめる、記憶、認知、論理的思考、判断力、及び情緒的安定性の進行性喪失を臨床的特徴
とする、退行性脳障害である。アルツハイマー病は、高齢者における進行性の精神障害(
認知症)の一般的な原因である。アルツハイマー病は世界中で確認されており、主要な公
衆衛生問題を表す。この疾患は、現在、米国だけで500万人を超える個体が罹患してい
ると推定されている。現在のところ、それは不治であり、いかなる治療もADを効果的に
防止しない、又はその症状若しくは経過を逆転させない。
【0003】
ADの個体の脳は、アミロイド斑、アミロイド血管症(血管におけるアミロイド沈着)
及び神経原線維変化と呼ばれる特徴的な病変を呈する。これら病変の大多数、特にアミロ
イド斑及び神経原線維変化は、一般に、記憶及び認知機能に重要な脳のいくつかの領域に
見られる。アミロイド斑及びアミロイド血管症はまた、トリソミー21(ダウン症候群)
、びまん性レビー小体病及びオランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(HCHW
A-D)の個体の脳を特徴付ける。
【0004】
アミロイド斑の主要な構成成分は、β-アミロイド前駆体タンパク質(APP)の切断
によって産生される様々なアミロイドβ(Aβ)ペプチドである。脳におけるAβペプチ
ドの付着は、ADをもたらす疾患カスケードにおける早期の及び必要な工程であると仮定
されている。Aβ産生の変化をもたらし、家族性早発型ADを引き起こす、アミロイド前
駆体タンパク質及びプレセニリン遺伝子における変異の同定は、アミロイド代謝の変化が
この疾患の根底にある病原性過程の中心的な事象であるという強力な証拠を提供する。
【0005】
第3残基がピログルタメートを有するアミロイド-βペプチド(3pE Aβ)は、A
D患者の脳に蓄積した主要な種である。3pE Aβは、ADにおけるほぼ全てのびまん
性プラーク及び成熟プラークに存在し、代謝的に安定であり、プラークシーディング(pl
aque seeding)及び安定化の両方において役割を果たし得る(Cynis et al.
,Molecular Neurodegeneration,2016;11:48)
。検出可能な量の3pE Aβは、CSF又は血漿中で報告されていないので、標的ペプ
チドが病理学特異的であることを示唆している(DeMattos et al.,Ne
uron,2012;76:1-13)。3pE Aβに選択的に結合する抗体は、免疫
療法に有用であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
具体化され十分に記載されたとおり、本発明は、第3残基がピログルタメートを有する
アミロイド-β(3pE Aβ)に結合する抗体及びその抗原結合フラグメント、3pE
Aβに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを生成する方法、そのような抗体又
はその抗原結合フラグメントを使用したアッセイ方法、並びにアルツハイマー病及び他の
β-アミロイド関連疾患の少なくとも1つの病状又は症状を治療、その発症を遅延させる
、又はそれを回復させるための薬剤の製造のための、本発明の抗体又はその抗原結合フラ
グメントの使用に関する。本発明の抗体は、3pEを含有しないAβペプチドよりも3p
Eを含有するAβペプチドに優先的に結合する。
【0007】
具体的には、本発明は、配列番号1の重鎖と配列番号12の軽鎖とを含む、3pE A
βに結合する単離された抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。他の実施形態では
、本発明は、配列番号2の重鎖可変領域と配列番号13の軽鎖可変領域とを含む、3pE
Aβに結合する単離された抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。他の実施形態
では、重鎖可変領域は、配列番号3、6及び9のいずれかのCDR1と、配列番号4、7
及び10のいずれかのCDR2と、配列番号5、8及び11のいずれかのCDR3と、を
含み、かつ、軽鎖可変領域は、配列番号14、17及び20のいずれかのCDR1と、配
列番号15及び18のいずれかのCDR2と、配列番号16及び19のいずれかのCDR
3と、を含む。特定の実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号3~5のCDR1、CD
R2及びCDR3をそれぞれ含み、かつ、軽鎖可変領域は、配列番号14~16のCDR
1、CDR2及びCDR3をそれぞれ含む。別の特定の実施形態では、重鎖可変領域は、
配列番号6~8のCDR1、CDR2及びCDR3をそれぞれ含み、かつ、軽鎖可変領域
は、配列番号17~19のCDR1、CDR2及びCDR3をそれぞれ含む。別の特定の
実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号9~11のCDR1、CDR2及びCDR3を
それぞれ含み、かつ、軽鎖可変領域は、配列番号20、18及び16のCDR1、CDR
2及びCDR3をそれぞれ含む。
【0008】
さらなる実施形態では、本発明は、配列番号2と少なくとも85%、90%、95%又
は98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号13と少な
くとも85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖
可変領域と、を含む、3pE Aβに結合する単離された抗体又はその抗原結合フラグメ
ントに関する。
【0009】
本発明の一実施形態は、配列番号2のアミノ酸残基31~35を含むCDR1配列を有
する重鎖可変領域と、配列番号2のアミノ酸残基50~66を含むCDR2配列を有する
重鎖可変領域と、配列番号2のアミノ酸残基99~108を含むCDR3配列を有する重
鎖可変領域と、配列番号13のアミノ酸残基24~39を含むCDR1配列を有する軽鎖
可変領域と、配列番号13のアミノ酸残基55~61を含むCDR2配列を有する軽鎖可
変領域と、配列番号13のアミノ酸残基94~102を含むCDR3配列を有する軽鎖可
変領域と、を含む、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0010】
本発明の好ましい実施形態は、配列番号3を含む重鎖可変領域CDR1配列と、配列番
号4を含む重鎖可変領域CDR2配列と、配列番号5を含む重鎖可変領域CDR3配列と
、配列番号14を含む軽鎖可変領域CDR1配列と、配列番号15を含む軽鎖可変領域C
DR2配列と、配列番号16を含む軽鎖可変領域CDR3配列と、を含む、単離された抗
体又はその抗原結合フラグメントである。
【0011】
好ましい実施形態では、上記の抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの好まし
い実施形態では、抗原結合フラグメントは、Fv、F(ab’)、F(ab’)2及びs
cFvからなるフラグメントの群から選択される。抗体又はその抗原結合フラグメントは
、3pE Aβペプチド(例えば、Aβ3pE-40及びAβ3pE-42)に選択的に
結合し、他のAβペプチド又はβ-アミロイド前駆体タンパク質(APP)に対する交差
反応性がほとんどないか、又は全くない。
【0012】
本発明の実施形態は、3pE Aβに対するモノクローナル抗体を生成する方法を含む
。本発明の特定の実施形態は、3pE Aβに結合するモノクローナル抗体を産生するハ
イブリドーマに関する。別の実施形態では、3pE Aβに結合するモノクローナル抗体
は、組換えにより産生される。実施形態において、モノクローナル抗体は、ハイブリドー
マ細胞によって発現されるか、又は組換えにより発現される。生成されるモノクローナル
抗体は、配列番号2からなる重鎖可変領域と配列番号13からなる軽鎖可変領域とを含む
【0013】
本発明の実施形態は、アルツハイマー病及び他のβ-アミロイド関連疾患を治療する方
法であって、3pE Aβに結合する上記の単離された抗体又はその抗原結合フラグメン
トを、アルツハイマー病又は他のβ-アミロイド関連疾患を有する個体に投与することを
含む、方法に関する。
【0014】
本発明のさらなる実施形態は、アルツハイマー病又は他のβ-アミロイド関連疾患に関
連するプラークを除去する方法であって、3pE Aβに結合する上記の単離された抗体
又はその抗原結合フラグメントを、アルツハイマー病又は他のβ-アミロイド関連疾患を
有する個体に投与することを含む、方法である。
【0015】
他の実施形態は、3pE Aβのプラークシーディング活性(seeding activity)を阻
害する方法であって、3pE Aβに結合する上記の単離された抗体又はその抗原結合フ
ラグメントを、アルツハイマー病又は他のβ-アミロイド関連疾患を有する個体に投与す
ることを含む、方法に関する。
【0016】
実施形態は、上記の単離された抗体又はその抗原結合フラグメントと、医薬的に許容さ
れる担体と、を含む、医薬組成物を含む。そのような医薬組成物は、アルツハイマー病又
は他のβ-アミロイド関連疾患を有する対象に投与され得、又は上記の方法などの、アル
ツハイマー病又は他のβ-アミロイド関連疾患を治療するための方法に使用され得る。
【0017】
一実施形態は、上記の抗体又はその抗原結合フラグメントを含むキット及びデバイスを
含む。本発明のさらなる目的、特徴及び利点が、以下の好ましい実施形態の詳細な考察か
ら、当業者に明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】完全長ヒト(Aβ1-42)(配列番号25)、N-切断(Aβ3-42)(配列番号26)、及びピログルタメート修飾(Aβ 3pE-42)(配列番号30)のAβペプチドのアミノ酸配列を示す。
図2A】サンドイッチELISAにおける合成ヒトAβペプチドの検出によるAβ/pE3/1の選択性を示す。Aβ/pE3/1は、Aβ3pE-40に結合する。
図2B】サンドイッチELISAにおける合成ヒトAβペプチドの検出によるAβ/pE3/1の選択性を示す。Aβ/pE3/1は、Aβ3-40に結合する。
図2C】サンドイッチELISAにおける合成ヒトAβペプチドの検出によるAβ/pE3/1の選択性を示す。Aβ/pE3/1は、Aβ1-40には結合しない。
図2D】サンドイッチELISAにおける合成ヒトAβペプチドの検出によるAβ/pE3/1の選択性を示す。Aβ/pE3/1は、AβpE11-40には結合しない。
図3A】(A)Aβ/pE3/1及び(B)陽性対照ポリクローナル抗体による免疫組織化学法による、ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)AD脳組織におけるプラークに対する反応性を示す。
図3B】(A)Aβ/pE3/1及び(B)陽性対照ポリクローナル抗体による免疫組織化学法による、ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)AD脳組織におけるプラークに対する反応性を示す。
図4A】(A)Aβ/pE3/1及び(B)陽性対照ポリクローナル抗体による免疫組織化学法による、非固定凍結保存AD脳組織におけるプラークに対する反応性を示す。
図4B】(A)Aβ/pE3/1及び(B)陽性対照ポリクローナル抗体による免疫組織化学法による、非固定凍結保存AD脳組織におけるプラークに対する反応性を示す。
図5A】Aβ抗体又は対照で処置したマウスにおける脳の代表的な画像を示す。6ヶ月齢のマウスを、(A)PBS、(B)末端特異的Aβ抗体3D6(60mg/kg)又は(C)3D6(20mg/kg)で処理した。19~20ヶ月齢のマウスを、(D)PBS又は(E)Aβ/pE3/1(60mg/kg)で処理した。矢印は、剖検時の出血の観察結果を示す。
図5B】Aβ抗体又は対照で処置したマウスにおける脳の代表的な画像を示す。6ヶ月齢のマウスを、(A)PBS、(B)末端特異的Aβ抗体3D6(60mg/kg)又は(C)3D6(20mg/kg)で処理した。19~20ヶ月齢のマウスを、(D)PBS又は(E)Aβ/pE3/1(60mg/kg)で処理した。矢印は、剖検時の出血の観察結果を示す。
図5C】Aβ抗体又は対照で処置したマウスにおける脳の代表的な画像を示す。6ヶ月齢のマウスを、(A)PBS、(B)末端特異的Aβ抗体3D6(60mg/kg)又は(C)3D6(20mg/kg)で処理した。19~20ヶ月齢のマウスを、(D)PBS又は(E)Aβ/pE3/1(60mg/kg)で処理した。矢印は、剖検時の出血の観察結果を示す。
図5D】Aβ抗体又は対照で処置したマウスにおける脳の代表的な画像を示す。6ヶ月齢のマウスを、(A)PBS、(B)末端特異的Aβ抗体3D6(60mg/kg)又は(C)3D6(20mg/kg)で処理した。19~20ヶ月齢のマウスを、(D)PBS又は(E)Aβ/pE3/1(60mg/kg)で処理した。矢印は、剖検時の出血の観察結果を示す。
図5E】Aβ抗体又は対照で処置したマウスにおける脳の代表的な画像を示す。6ヶ月齢のマウスを、(A)PBS、(B)末端特異的Aβ抗体3D6(60mg/kg)又は(C)3D6(20mg/kg)で処理した。19~20ヶ月齢のマウスを、(D)PBS又は(E)Aβ/pE3/1(60mg/kg)で処理した。矢印は、剖検時の出血の観察結果を示す。
図6A】(A及びC)PBS又は(B及びD)Aβ/pE3/1による処置後のヒトAβ42及びAβ40を高レベルで発現しているマウスの脳の凍結切片を示す。二次抗マウスIgG2a抗体のみを使用して、(A及びB)を染色した。一次抗体及び二次抗体の両方を提供した後に、(C及びD)を染色した。スケールバーは、2.5mmを表す。
図6B】(A及びC)PBS又は(B及びD)Aβ/pE3/1による処置後のヒトAβ42及びAβ40を高レベルで発現しているマウスの脳の凍結切片を示す。二次抗マウスIgG2a抗体のみを使用して、(A及びB)を染色した。一次抗体及び二次抗体の両方を提供した後に、(C及びD)を染色した。スケールバーは、2.5mmを表す。
図6C】(A及びC)PBS又は(B及びD)Aβ/pE3/1による処置後のヒトAβ42及びAβ40を高レベルで発現しているマウスの脳の凍結切片を示す。二次抗マウスIgG2a抗体のみを使用して、(A及びB)を染色した。一次抗体及び二次抗体の両方を提供した後に、(C及びD)を染色した。スケールバーは、2.5mmを表す。
図6D】(A及びC)PBS又は(B及びD)Aβ/pE3/1による処置後のヒトAβ42及びAβ40を高レベルで発現しているマウスの脳の凍結切片を示す。二次抗マウスIgG2a抗体のみを使用して、(A及びB)を染色した。一次抗体及び二次抗体の両方を提供した後に、(C及びD)を染色した。スケールバーは、2.5mmを表す。
図7A】ヒトAβ42及びAβ40を高レベルで発現している6ヶ月又は19~20ヶ月齢のマウスにおける、(A)3D6抗体、(B)Aβ/pE3/1又は(C)PBSによる処置後のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)による染色を示す。
図7B】ヒトAβ42及びAβ40を高レベルで発現している6ヶ月又は19~20ヶ月齢のマウスにおける、(A)3D6抗体、(B)Aβ/pE3/1又は(C)PBSによる処置後のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)による染色を示す。
図7C】ヒトAβ42及びAβ40を高レベルで発現している6ヶ月又は19~20ヶ月齢のマウスにおける、(A)3D6抗体、(B)Aβ/pE3/1又は(C)PBSによる処置後のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)による染色を示す。
図8】ヒトAβ(3pE-40)ペプチドに対するAβ/pE3/1の親和性結合相互作用の、表面プラズモン共鳴標識を含まない検出によるセンサグラム(シングルサイクルキネティクス)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、又は生物学的システムに限定されるも
のではなく、これらは変更可能であることを理解すべきである。また、本明細書において
使用される用語は、あくまで特定の実施形態を説明することを目的としたものに過ぎず、
限定的なものではない点も理解すべきである。
【0020】
本発明は、3pEを含有しないAβペプチドよりも3pE Aβペプチドに特に優先的
に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを提供する。3pE Aβペプチドに結合
する抗体又はその抗原結合フラグメントを生成する方法、及び3pE Aβペプチドに結
合する抗体又はその抗原結合フラグメントを産生するハイブリドーマを生成する方法をさ
らに提供する。本発明はまた、個体におけるアルツハイマー病及び他のβ-アミロイド関
連疾患を治療する方法、アルツハイマー病又は他のβ-アミロイド関連疾患に関連するプ
ラークを除去する方法、及び3pE Aβのプラークシーディング活性を阻害する方法を
含む。本発明はまた、記載される方法で使用するための抗体又はその抗原結合フラグメン
トを含むキット及びデバイスを提供する。
【0021】
一実施形態において、本発明は、配列番号2と配列同一性を有するアミノ酸配列を含む
重鎖可変領域と、配列番号13と配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と
、を含む、3pE Aβに結合する単離された抗体又はその抗原結合フラグメントに関す
る。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域は、配
列番号2と少なくとも85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有するアミノ酸
配列を含む。他の実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号13と少なくとも85%、9
0%、95%又は98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0022】
本発明の一実施形態は、配列番号2のアミノ酸残基31~35を含むCDR1配列を有
する重鎖可変領域と、配列番号1のアミノ酸残基50~66を含むCDR2配列を有する
重鎖可変領域と、配列番号2のアミノ酸残基99~108を含むCDR3配列を有する重
鎖可変領域と、配列番号13のアミノ酸残基24~39を含むCDR1配列を有する軽鎖
可変領域と、配列番号13のアミノ酸残基55~61を含むCDR2配列を有する軽鎖可
変領域と、配列番号13のアミノ酸残基94~102を含むCDR3配列を有する軽鎖可
変領域と、を含む、単離された抗体又はその抗原結合フラグメントである。
【0023】
好ましい実施形態は、配列番号3を含む重鎖可変領域CDR1配列と、配列番号4を含
む重鎖可変領域CDR2配列と、配列番号5を含む重鎖可変領域CDR3配列と、配列番
号14を含む軽鎖可変領域CDR1配列と、配列番号15を含む軽鎖可変領域CDR2配
列と、配列番号16を含む軽鎖可変領域CDR3配列と、を含む、抗体又はその抗原結合
フラグメントである。
【0024】
抗体
本発明は、3pE Aβに結合する単離された抗体又はその抗原結合フラグメントを提
供する。本明細書において、用語「抗体」は、抗原又はその一部に結合することができる
免疫グロブリンタンパク質、特に3pE Aβに特異的に結合することができる免疫グロ
ブリンタンパク質を指す。抗原への抗体の結合は、当業者に既知の方法によって測定する
ことができ、一例として、BIAcore(商標)器具の使用がある。一般的に言えば、
抗体又は抗原結合抗体フラグメントは、解離定数が1μM以下、好ましくは100nM以
下、最も好ましくは10nM以下であるとき、抗原に特異的に結合すると言われている。
【0025】
抗体の抗原結合フラグメントは、無傷の抗体が結合する抗原に結合することができ、抗
原結合に関して無傷の抗体と競合する、抗体のフラグメントを指す。抗原結合フラグメン
トは、抗原結合を可能にする無傷の抗体の一部分(すなわち、無傷の抗体の可変領域)を
含む。抗原結合フラグメントとしては、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFvフ
ラグメント;単鎖抗体分子(例えば、scFV)、ダイアボディ、ミニボディ、及び線状
抗体;並びに抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0026】
抗体は、2つの重鎖と2つの軽鎖とからなる。各重鎖は、1つの可変ドメイン又は領域
(V)、続いて定常ドメイン又は領域(C1)、ヒンジ領域、並びにさらに2つの定
常ドメイン又は領域(C2及びC3)を有する。各軽鎖は、1つの可変ドメイン又は
領域(V)及び1つの定常ドメイン又は領域(C)を有する。重鎖及び軽鎖の可変ド
メイン又は領域は、特定のエピトープ(鍵に類似の構造)に特異的な抗体(同様に錠に類
似の構造)のパラトープを形成し、パラトープ及びエピトープを精度よく一緒に結合する
ことを可能にする。可変ドメイン内では、軽鎖及び重鎖にそれぞれ3つある可変ループの
β-ストランドが抗原への結合を担っている。これらのループは、相補性決定領域(CD
R、すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)と称される。
【0027】
CDRは、抗体の相補性決定領域として定義される。これらは、抗原への結合に主に関
与する、抗体の重鎖及び軽鎖の超可変領域である。重鎖及び軽鎖の可変領域のそれぞれに
、3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)が存在する。抗体のCDRは、多く
の方法で定義され得る。例えば、可変領域内のCDRは、Kabat、Chothia、
IMGTの定義、及び/又は立体構造定義、又は当該技術分野において周知のCDR決定
の任意の方法に従って特定され得る。抗体CDRは、Kabat(Kabat et a
l.,1992,Sequences of Proteins of Immunol
ogical Interest,5th ed.,Public Health Se
rvice,NIH,Washington D.C.)によって元来定義される超可変
領域、Chothia(Chothia et al.,Nature 342:877
-883(1989))によって元来説明される構造的ループ構造、又は独自の付番方式
のIMGT(Lefranc,The Immunologist 7:132-136
(1999);Lefranc,et al.,Nucleic Acids Res.
27:209-212(1999);Scaviner et al.,Exp.Cli
n.Immunogenet.16:234-240(1999);Lefranc,e
t al.,Nucleic Acids Res.43:D413-422(2015
))として特定され得る。
【0028】
抗体の文脈において使用される場合、「単離された」とは、「人間の手によって」任意
の天然の状態から変化したことを意味し、すなわち、自然に単離が生じた場合は、その元
の環境から変化するか若しくは除去されるか、又はその両方が行われている。本明細書に
おいてこの用語が使用される場合、例えば、自然状態において生存している動物に自然に
存在する自然発生の抗体は「単離され」ていないが、自然状態の共存物質から分離された
同じの抗体は、「単離され」ている。抗体は、イムノアッセイ試薬などの自然発生しない
組成物において生じることができ、本明細書において本用語が用いられる場合、用語の意
味の範囲において、組成物において単離された抗体のままであり続けることができる。
【0029】
抗体を生成する方法は、宿主に所望の免疫原を接種することを含む。好適な宿主として
は、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ロバ、ウマ、サル、
チンパンジー、オランウータン、ゴリラ、ヒト、及び成熟した免疫応答を起こすことがで
きる任意の種が挙げられるが、これらに限定されない。免疫化手順は、当該技術分野にお
いて確立されており、「The Immunoassay Handbook」,2nd
Edition,edited by David Wild(Nature Pub
lishing Group,2000)を含む、多くの論文及び出版物に記載されてい
る。
【0030】
好ましくは、本発明の特徴を具現化する免疫原は、宿主対象、例えば、動物又はヒトに
、アジュバントと組み合わせて投与される。好適なアジュバントとしては、フロイント(
Freund's)アジュバント、粉末水酸化アルミニウム(ミョウバン)、百日咳菌と合わせた
水酸化アルミニウム、及びモノホスホリルリピドA-合成トレハロースジコリノミコレー
トが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
典型的には、免疫原又は免疫原とアジュバントとの組み合わせは、1つ又は複数の皮下
若しくは腹腔内注入によって哺乳動物の宿主に注入される。好ましくは、免疫化プログラ
ムは、少なくとも1週間にわたって、より好ましくは、2週間以上にわたって実行される
。この様式で産生されるポリクローナル抗体は、当該技術分野において周知の方法を利用
して単離及び精製され得る。
【0032】
モノクローナル抗体は、Kohler及びMilsteinの、例えば、Nature
256:495~497(1975)の、確立されたハイブリドーマ方法によって産生
可能である。ハイブリドーマ方法は、典型的には、宿主又は宿主由来のリンパ球を免疫化
することと、リンパ球を分泌するか、それを分泌する可能性のあるモノクローナル抗体を
採取することと、リンパ球を不死化細胞に融合することと、及び所望のモノクローナル抗
体を分泌する細胞を選択することと、を伴う。
【0033】
宿主は、免疫化されて、免疫原に対して特異的な抗体を産生するか、又は産生すること
のできるリンパ球を誘発することができる。あるいは、リンパ球はインビトロで免疫化す
ることもできる。ヒト細胞が所望される場合、末梢血リンパ球を使用することができるが
、他の哺乳動物の供給源由来の脾臓細胞又はリンパ球が好ましい。
【0034】
リンパ球を不死化細胞株と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成することができるが
、これは融剤、例えば、ポリエチレングリコールの使用によって促進され得るプロセスで
ある。例として、形質転換によって不死化された変異体げっ歯類、ウシ、又はヒト骨髄腫
細胞を用いることができる。非融合不死化細胞とは対照的に、ハイブリドーマ細胞の実質
的に純粋な集団が好ましい。したがって、融合後、例えば、ヒポキサンチングアニンホス
ホリボシル転移酵素(HGPRT)を欠く変異骨髄腫細胞を用いることによって、非融合
不死化細胞の増殖又は生存を阻害する好適な培地内で細胞を増殖させることができる。そ
のような事例において、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを培地(HAT
培地)に添加して、HGPRT欠乏性細胞の増殖を阻止すると同時に、ハイブリドーマの
増殖を可能にすることができる。
【0035】
好ましくは、不死化細胞は、効率的に融合し、HATなどの培地の選択によって混合集
団から単離され得、融合後の抗体の安定した高レベルの発現を支持する。好ましい不死化
細胞株は、American Type Culture Collection,Ma
nassas,VAから入手可能な骨髄腫細胞株を含む。
【0036】
本発明の一態様は、アミロイドβペプチドに結合するモノクローナル抗体を産生できる
ハイブリドーマ細胞株を生成する方法である。そのような方法は、当業者に一般的に知ら
れており、一般に、(i)抗体産生のための宿主を選択することと、(ii)宿主に所望
の免疫原を接種することと、(iii)免疫原に結合するモノクローナル抗体を産生する
ことができる融合細胞を作製するために、接種された宿主由来の細胞株を連続的に分裂す
る細胞と融合させることと、(iv)融合細胞をクローニングしてハイブリドーマ細胞株
を得ることと、を含む。
【0037】
本発明の一方法は、3pE Aβペプチドに結合するモノクローナル抗体を産生できる
ハイブリドーマ細胞株を生成することを含む。ハイブリドーマは、フロイントアジュバン
ト中のピログルタメートを有するAβペプチドなどの所望の免疫原の最初の腹腔内注射、
続いて、例えば1~2週間ごとの追加免疫注射で、Balb/cマウスなどのハイブリド
ーマを生成することができる動物を免疫化することによって生成され得る。その後の単離
された脾臓の融合は、当業者に一般に知られている任意の技術を使用して、好ましくは、
Kohler及びMilsteinの改変手順(Eur.J.Immunol.,197
6;6:292-295)によって、SP2/0細胞を使用して実施することができる。
3pE Aβペプチドに対して特異的な抗体を産生するハイブリドーマを決定するための
ハイブリドーマのスクリーニングは、ELISA又はRIAアッセイなどの標準的なアッ
セイで行うことができる。本発明の一態様は、モノクローナル抗体Aβ/pE3/1を産
生するハイブリドーマ細胞株を生成する方法である。
【0038】
モノクローナル抗体は、例えば、米国特許第4,166,452号に記載されているよ
うな当該技術分野において既知の遺伝子組換え方法によっても産生され得る。DNAコー
ド化モノクローナル抗体は、従来の手順を使用して、例えば、マウスの重及び軽抗体鎖遺
伝子に特異的に結合し、好ましくは、ピログルタメートを有するAβに対して特異的な抗
体を分泌するモノクローナル抗体ハイブリドーマ細胞株から単離されたDNAを探索する
、オリゴヌクレオチド探索子を使用して単離及び配列決定され得る。
【0039】
アミロイドβペプチドに対して特異的な結合部位を含有する抗体フラグメントも生成さ
れ得る。このようなフラグメントとして、抗体分子のペプシン消化により生成することが
できるF(ab’)フラグメント、及びF(ab’)フラグメントのジスルフィド架
橋を減少させることにより発生し得るFabフラグメントが挙げられるが、これらに限定
されない。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントを迅速か
つ容易に同定することができるように、Fab発現ライブラリを構築してもよい(Hus
e et al.,Science 256:1270-1281(1989))。Fa
b、Fv、及びScFv抗体フラグメントは全て、大腸菌において発現し、大腸菌から分
泌され得、これらのフラグメントの大量生産を可能にする。あるいは、Fab’-SHフ
ラグメントは、大腸菌から直接回収され、化学的に連結されて、F(ab’)フラグメ
ントを形成することができる(Carter et.al.,BioTechnolog
y 10:163-167(1992))。抗体フラグメントの生成のための他の技術は
、当業者に既知である。単鎖Fvフラグメント(scFv)もまた想定される(米国特許
第5,761,894号及び同第5,587,458号参照)。Fv及びsFvフラグメ
ントは、定常領域を有さない完全な組み合わせ部位を有する唯一の種であり、これにより
、非特異的な結合の低減が示される可能性が高い。例えば、抗体フラグメントは、例えば
、米国特許第5,642,870号に記載されるような「線状抗体」であってもよい。
【0040】
したがって、本発明の目的は、上記のハイブリドーマ細胞によって発現される単離され
たモノクローナル抗体を提供することであり、この抗体は3pE Aβを特異的に認識す
ることができる。単離されたモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞によって発現さ
せるか、又は組換えにより発現させることができる。
【0041】
好ましくは、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、3pE Aβに選択的に
結合し、3pEを有していない他のAβ又はβ-アミロイド前駆体タンパク質(APP)
に対する交差反応性がほとんどないか、又は全くない。具体的には、本発明の抗体又はそ
の抗原結合フラグメントは、Aβ 3pE-40(配列番号22)及びAβ 3pE-4
2(配列番号30)のペプチドに選択的に結合し、他の3pEを含有していないAβペプ
チド又はAPPに対する交差反応性がほとんどないか、又は全くない。
【0042】
表1は、本発明の抗体のアミノ酸配列を提供する。Kabat、Chothia、及び
IMGTによって定義される重鎖及び軽鎖の可変領域のCDRは、別個の配列として説明
される。
【0043】
【表1】
IMGTによって定義されるLCDR2は、Chothiaによって定義されるLC
DR2と同一である。
IMGTによって定義されるLCDR3は、Kabatによって定義されるLCDR
3と同一である。
【0044】
本発明の抗体はまた、Aβ/pE3/1に由来する単離された抗体又はその抗原結合フ
ラグメントを包含し、配列番号2と少なくとも85%、90%、95%又は98%の同一
性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号13と少なくとも85%、90
%、95%又は98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含む。好
ましい実施形態において、誘導される抗体又はその抗原結合フラグメントのCDRは、A
β/pE3/1と同じである。
【0045】
「配列同一性」という用語は、2つのアミノ酸配列が最適に整列されている場合、BL
AST、ToPLign、Supermatcher及びMatcherなどの配列同一
性決定の周知のアルゴリズムによって測定されるとき、それらがどれだけ類似しているか
に関して比較ウィンドウにわたって比較を行うことができる(すなわち、アミノ酸残基ご
とに)ことを意味する。
【0046】
インビトロ法
抗体又はその抗原結合フラグメントが固相に結合しているアッセイ、及び抗体が液体媒
体の中にあるアッセイを含む、抗体又はその抗原結合フラグメントを用いるイムノアッセ
イの全ての様式が、現在の好ましい実施形態に係る使用に関して想到されることが理解さ
れるべきである。本発明の特徴を具体化する抗体を使用して、検体を検出するために使用
され得るイムノアッセイの方法としては、標識された検体(検体類似体)と試料中の検体
とが抗体に対して競い合う競合的(試薬限定)アッセイ、及び抗体が標識された単一部位
免疫測定アッセイなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本発明による抗体又はその抗原結合フラグメントは、β-アミロイド関連疾患をモニタ
リングするための生物学的試料、及びAPPの細胞内プロセッシングをモニタリングする
ための細胞培養からのコンディショニングした培地を含め、存在する場合はどこでもAβ
3pEを検出するために通例の免疫学的技術で使用され得る。適切な免疫学的技術は当業
者には周知であり、例えば、ELISA、ウエスタンブロット分析、競合又はサンドイッ
チイムノアッセイ等を含み、これらは全て抗原-抗体免疫複合体の形成に依存することは
周知であるが、ここでアッセイの目的のために、抗体又はその抗原結合フラグメントは、
例えば放射性、酵素、発光又は蛍光標識で検出可能に標識することができ、あるいは抗体
又はその抗原結合フラグメントは不溶性担体に固定化することができる。したがって、本
発明の目的は、試料中のAβ3pE又はその断片の測定又は検出のためのイムノアッセイ
を提供することであり、この方法は、本発明に従って抗体又はその抗原結合フラグメント
を有する試料をAβ3pE又はその断片と接触させ、抗体又はその抗原結合フラグメント
とAβ3pE又はその断片との間に免疫複合体が形成されるかどうかを判断することを含
む。これらの方法は組織試料又は体液試料のいずれかで行うことができ、一般に個体の身
体から試料を得ること、当該試料を、造影に有効量の検出可能に標識された、本発明によ
る抗体又はその抗原結合フラグメントと接触させること、及び標識を検出して試料中のA
β3pE又はその断片の存在を確立することを含む。本発明の抗体又はその抗原結合フラ
グメントを使用する測定方法は、特に限定されない。抗原の量、特に測定される溶液中の
Aβ3pE又はその断片の量に対応する抗体、抗原又は抗原-抗体複合体の量が化学的又
は物理的手段により検出され、既知の量の抗原を含有する標準溶液の使用により調製され
た標準曲線から算出される限り、任意の測定法を使用してもよい。例えば、比濁法、競合
法、免疫測定法、及びサンドイッチ法が好適に使用される。感度及び特異性に関しては、
サンドイッチ法を使用することが特に好ましい。
【0048】
サンドイッチ法では、試験溶液を不溶化された抗Aβ3pE抗体などの不溶化抗体と反
応させ(第1の反応)、さらに、標識された二次抗体を反応させる(第2の反応)。次い
で、不溶化担体上の標識剤の活性をアッセイすることにより、試験溶液中のAβ3pE又
はそのフラグメントの量を決定することができる。第1の反応及び第2の反応は、同時に
行ってもよいし、連続して行ってもよい。
【0049】
測定方法では、標識物質、放射性同位体、酵素、蛍光物質、発光物質などを標識剤とし
て使用する。放射性同位体の例としては、1251、131I、H及び14Cが挙げら
れる。酵素は通常、次いで検出可能な反応を触媒する適切な基質との結合により検出可能
とされる。それらの例としては、例えば、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、
アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ及びマレイン酸デヒドロゲナーゼ、好ましく
は西洋ワサビペルオキシダーゼが挙げられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、
ルミノール誘導体、ルシフェリン、エクオリン及びルシフェラーゼが挙げられる。さらに
、アビジン-ビオチン系も、本発明の抗体及び免疫原を標識するために使用することがで
きる。免疫原又は抗体が不溶化されている場合、通常、タンパク質又は酵素の不溶化又は
固定化に使用する物理的吸着又は化学的結合のいずれかを使用することができる。担体の
例としては、アガロース、デキストラン及びセルロースのような不溶性多糖類、ポリスチ
レン、ポリアクリルアミド及びシリコンポリマーのような合成樹脂、並びにガラスが挙げ
られる。
【0050】
β-アミロイド関連疾患を検出又は診断するためのさらなる実施形態では、組織、体液
、例えば、CSF、血液、血漿、血清、尿等を含む生物学的試料が含まれ、適当量の一次
抗体と接触させて免疫複合体を形成する。接触は、典型的には、一次抗体でコーティング
された固体マトリックスに試料を添加することを伴う。試料と一次抗体との接触から生成
された複合体は、溶出により試料から分離される。しかしながら、他の回収法を使用して
もよい。回収した複合体は、抗原上の抗原決定基に向けられ複合体中の抗原に結合するこ
とができる、少なくとも1つの二次抗体と接触させる。二次抗体が向けられる抗原決定基
は、抗原実体のマルチエピトープ性により一次抗体が向けられる抗原決定基と同じであっ
てもよい。一次抗体又は二次抗体のいずれかを、上記の標識のいずれかを使用して検出可
能にしてもよい。好ましい実施形態では、二次抗体を検出可能とする。一次抗体及び二次
抗体に結合した抗原からなる複合体に結合した検出可能な抗体の存在は、当該技術分野に
おいて知られている技法を使用して容易に検出され得る。生物学的試料で得られた結果を
、対照試料で得られた結果と比較することにより、変化したAβ3pEの存在又はそのフ
ラグメントレベルが測定され得る。
【0051】
インビボ法
本発明の態様は、アミロイドβ関連状態におけるアミロイドβの沈着を予防、改善、治
療、及び/又は減少させるための方法であって、それを必要とする対象に、本明細書に開
示される抗体又はその抗原結合フラグメントを治療有効量で投与することを含む、方法に
関する。本発明のさらなる態様は、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合フラグメ
ントを含む、アミロイドβ関連状態におけるアミロイドの沈着を予防、改善、治療、及び
/又は減少させるための医薬組成物を含む。本発明の方法は、有効量の、本明細書に記載
される1つ以上の抗体又はその抗原結合フラグメントを、それを必要とする対象に投与す
ることを含む。
【0052】
一態様において、本発明は、ヒトにおけるβ-アミロイドタンパク質を含有するプラー
クの形成によって特徴付けられる状態におけるアミロイドβの沈着を予防、改善、治療、
及び/又は減少させる方法に関し、この方法は、治療的又は予防的に有効な量の、ヒトA
β3pEに特異的に結合する抗体である、本発明による抗体又はその免疫学的に反応性の
フラグメントを、そのような治療を必要とするヒトに、好ましくは末梢的に投与すること
を含む。別の態様では、本発明は、アミロイド斑の形成を阻害する方法、及び/又はヒト
におけるアミロイド斑を除去する方法に関し、この方法は、脳内のAβ3pEペプチドを
捕捉し、脳内における変化したAβ3pEクリアランスを誘導する、本発明による有効量
の抗体を、そのような阻害又は除去を必要とするヒト対象に投与することを含む。さらな
る態様では、本発明は、免疫学的に有効な部分を含む、そのようなヒト化抗体、及びそれ
らの調製のための方法に関する。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、Aβ/pE3/1
のCDR(すなわち、配列番号3~11及び14~20のいずれか)を有する。
【0053】
それを必要とする対象は、βアミロイドタンパク質を含有するプラークの形成によって
特徴付けられる状態に罹患しているか、又は罹患する素因のあるヒトである。一実施形態
において、その状態はアルツハイマー病である。他の実施形態では、その状態は、トリソ
ミー21(ダウン症候群)、びまん性レビー小体病、封入体筋炎、脳アミロイド血管症、
又はオランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(HCHWA-D)に関連する認知
症である。
【0054】
ヒト化抗体は、ヒトにおいて自然に産生される抗体変異体との類似性を増加させるため
にタンパク質配列が修飾された非ヒト種由来の抗体である。概して、ヒト化抗体のタンパ
ク質配列は、抗体がその標的抗原に結合する能力に関与する、非ヒト起源のその相補性決
定領域(CDR)セグメントの一部又は全てを除いて、ヒト変異体のタンパク質配列と本
質的に同一である。可変領域のフレームワーク領域は、対応するヒトフレームワーク領域
によって置換され、非ヒトCDRは実質的に無傷のままである。いくつかの場合において
、ヒト化抗体は、非ヒト抗体の結合親和性及び/又は解離定数を保持するために、非ヒト
CDR領域のうちの1つ以上において少数の置換を有する。
【0055】
またヒト化抗体は、ヒトフレームワークと、非ヒト抗体からの少なくとも1つのCDR
と、を含む抗体を指し、これは存在する任意の定常領域がヒト免疫グロブリン定常領域と
実質的に同一である、すなわち、少なくとも約85%、90%、好ましくは、少なくとも
95%が同一又は98%が同一である。したがって、ヒト化抗体の全ての部分(1つ以上
のCDRを除く)は、ヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。例
えば、ヒト化免疫グロブリンは、典型的にはキメラマウス可変領域/ヒト定常領域抗体を
包含しない。
【0056】
ヒト化抗体は、ヒトの治療に使用するために非ヒト及びキメラ抗体よりも少なくとも3
つの潜在的な利点を有する:1)エフェクター部分がヒトであるので、ヒト免疫系の他の
部分とより良く相互反応することができる(例えば、ミクログリアを活性化して、プラー
クを除去する)、2)ヒトの免疫系はヒト化抗体のフレームワーク又はC領域を外来とは
認識しないはずなので、そのような投与された抗体に対する抗体応答は、全部が外来の非
ヒト抗体又は部分的に外来のキメラ抗体に対するよりも低いはずである、3)投与された
非ヒト抗体は、ヒトの循環においてヒト抗体の半減期よりも短い半減期を有すると報告さ
れている。
【0057】
β-アミロイドタンパク質を含むプラークの形成を特徴とする状態を処置又は防止する
ための方法において、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメント(免疫学的に反応性の
断片を含む)は、臨床的又は症状発現前のアルツハイマー病、ダウン症候群に関連する認
知症、又は臨床的又は症状発現前のアミロイド血管症のようなアミロイドβ関連症状又は
病状の危険性があるか、それらを現す個体に、標準的な投与技術を使用して投与される。
好ましくは、末梢に(すなわち中枢神経系に投与するものではない)、静脈内、腹腔内、
皮下、肺、経皮、筋肉内、鼻内、頬内、舌下、又は坐薬投与により投与される。抗体又は
その結合フラグメントは、脳室系、脊髄液又は脳実質に直接投与してもよく、これらの位
置へ向けた技術は当該技術分野では周知であるが、これらのより複雑な手法を利用する必
要はない。本発明の抗体又はその結合フラグメントは、末梢循環系に依る、より単純な技
術により投与するときに効果的である。本発明の利点は、たとえ中枢神経系自体に直接提
供されなくても、抗体又はその抗原結合フラグメントがその有利な効果を発揮する能力を
含む。
【0058】
投与のための医薬組成物は、選択された投与様式に適するように設計され、分散剤、緩
衝剤、界面活性剤、防腐剤、可溶化剤、等張剤、安定剤などの医薬的に許容される賦形剤
が適切な場合に使用される。参照により本明細書に組み込まれる、Remington’
s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishin
g Co.,Easton Pa.,latest editionは、一般に熟練者に
知られているような処方技術の概論を提供する。
【0059】
例えば、リポソーム中にそれらを封入することによって、又は極性基を遮断することに
よって、それらをより親油性にして、本発明の抗体の溶解度特性を変更することは、特に
有用であり得る。
【0060】
静脈内又は腹腔内又は皮下注射による末梢全身送達が好ましい。そのような注射のため
の好適なビヒクルは簡単である。しかしながら、さらに、投与はまた、鼻エアロゾル又は
坐薬によって粘膜を通して行ってもよい。そのような投与形態に好適な製剤は周知であり
、典型的には、膜間移動を促進する界面活性剤を含む。そのような界面活性剤は、多くの
場合、ステロイド類に由来するか、又はN-[1-(2,3-ジオレオイル)プロピル-
N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)などのカチオン性脂質、又
はコレステロールヘミサクシネート、ホスファチジルグリセロールなどの様々な化合物で
ある。
【0061】
製剤中のヒト化抗体の濃度は、わずか約0.1%~約15又は20重量%まで、主に流
体体積、粘度等に基づき、選択した特定の投与様式に従って選択される。したがって、注
射用の典型的な医薬組成物は、リン酸緩衝生理食塩水の1mLの滅菌緩衝水、及び1~1
00mgの本発明のヒト化抗体を含有するように作製され得る。製剤は、製剤を作製した
後に滅菌ろ過されてもよく、又は別の方法で微生物学的に許容可能にされてもよい。静脈
内注入用の典型的な組成物は、250mLの流体、例えば、滅菌リンガー溶液の体積、及
び1mLあたり1~100mg/mL以上の抗体濃度を有し得る。
【0062】
抗体の投与について、投与量は、宿主の体重に対して、約0.0001~100mg/
kg、好ましくは0.01~75mg/kgの範囲である。例えば、投与量は、宿主の体
重に対して、0.02mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75m
g/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、
10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、20mg/kg、
35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、55mg/kg、
60mg/kg、65mg/kg、70mg/kg、又は75mg/kgであり得る。実
施形態において、投与量は、0.01~10mg/kgの範囲内、又は0.1~15mg
/kgの範囲内、又は0.1~20mg/kgの範囲内、又は0.1~30mg/kgの
範囲内、又は0.1~40mg/kgの範囲内であり、又は0.1~50mg/kgの範
囲内、又は0.1~60mg/kgの範囲内、好ましくは、少なくとも1mg/kg、少
なくとも5mg/kg、少なくとも10mg/kg、少なくとも20mg/kg、少なく
とも30mg/kg、少なくとも40mg/kg、少なくとも50mg/kg、又は少な
くとも60mg/kgである。好ましい例では、投与量は、約10kg/mg、約20k
g/mg、約30kg/mg、約40mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg
、又は約70mg/kgであり得る。特に好ましい例では、抗体は、約0.3mg/kg
~約60mg/kgの用量範囲で腹腔内投与される。例示的な治療レジメンにおいて、抗
体は、約10kg/mg、約20kg/mg、約30kg/mg、約40mg/kg、約
50mg/kg、又は約60mg/kgの投与量で腹腔内投与される。
【0063】
本明細書で使用する場合、量などの測定可能な値に関して使用する「約」という用語は
、±20%~±0.1%、好ましくは±15%又は±10%、より好ましくは±5%、さ
らにより好ましくは±1%、いっそうより好ましくは±0.5%、±0.1%の変動を包
含することを意味する。このような、特定の値から±0.05%又は±0.01%の変動
は、適切なものである。
【0064】
例示的な治療レジメンは、2週間に1回又は1ヶ月に1回又は3~6ヶ月に1回の投与
を伴う。いくつかの方法において、結合特異性の異なる2つ以上のモノクローナル抗体が
同時に投与され、このとき、投与される各抗体の投与量は、指示された範囲内にある。抗
体は通常、複数回にわたって投与される。投与と投与との間の間隔は、毎週、毎月、又は
毎年であり得る。間隔は、不規則にすることもでき、これは対象におけるAβに対する抗
体の血中レベルを測定することによって示される。あるいは、抗体は、徐放性製剤として
投与することができ、この場合、必要な投与の頻度が少なくなる。投与量及び頻度は、患
者における抗体の半減期に応じて変わる。一般に、ヒト抗体は最長の半減期を示し、続い
てヒト化抗体、キメラ抗体、及び非ヒト抗体の順である。
【0065】
投与量及び投与頻度は、治療が予防的であるか治癒的であるかどうかによって異なり得
る。予防的用途においては、比較的低用量の投与が、比較的低頻度の間隔で、長期間にわ
たって投与される。一部の対象は、生涯にわたって治療を受け続ける。治癒的用途では、
疾患の進行が減少又は停止するまで、好ましくは対象が疾患の症状の部分的又は完全な寛
解を示すまで、比較的短い間隔で比較的高用量の投与が必要となり得る。その後、予防レ
ジメンが投与され得る。
【0066】
いくつかの方法では、投与量は、血漿抗体濃度が約1~1000μg/mLになるよう
に、またいくつかの方法では、約25~300μg/mLになるように、投与される。あ
るいは、抗体は、徐放性製剤として投与することができ、この場合、必要な投与の頻度が
少なくなる。投与量及び頻度は、対象における抗体の半減期に応じて変わる。
【0067】
本発明の抗体による治療は、単独治療であってもよい。あるいは、本発明の抗体による
治療は、個体を治療する1つ以上の追加の治療薬も使用する、併用療法レジメンの1つの
構成要素又は段階であってもよい。
【0068】
インビボ療法に使用される場合、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、治療
有効量、例えば、β-アミロイドプラークを減少、除去、若しくは予防するか、又はAD
若しくは他のβ-アミロイド関連疾患を有する対象における認知機能を改善する量で個体
に投与される。抗体又はその抗原結合フラグメントは、静脈内投与、例えば、ボーラスと
して又はある期間にわたる連続注入によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内
、滑液内、髄腔内、経口、局所又は吸入経路によってなどの既知の方法に従って個体に投
与される。本発明の薬剤は、所望により、アミロイドジェニック疾患の治療に少なくとも
部分的に有効な他の薬剤と組み合わせて投与され得る。アルツハイマー病、及び脳内にア
ミロイド沈着物が生じる関連状態の場合、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは
、血液脳関門を横切る本発明の薬剤の通過を増加させる他の薬剤と併用して投与され得る
【0069】
本発明の一実施形態では、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、プラーク沈
着物中の3pE Aβに結合する。プラーク沈着物中の3pE Aβに結合することによ
り、抗体又はその抗原結合フラグメントは、プラークの除去を誘発することができる。プ
ラークの除去の誘発は、プラーク周囲の微小膠の活性化、及び安定したAβ形態を除去す
ることによるプラークの不安定化によるものであってよい。さらに、本発明の抗体又はそ
の抗原結合フラグメントは、3pE Aβのプラークシーディング活性を防止し得る。血
管アミロイドと比較してプラーク中の3pE Aβの可能な濃縮は、免疫療法のための治
療上の安全性の範囲を増大させ得る。
【0070】
キット及びデバイス
本発明は、上述の方法で使用することができるキット及びデバイスを提供する。好まし
くは、キット及びデバイスは、3pE Aβに結合する抗体又はその抗原結合フラグメン
トを含む。さらに、キットは、試薬及び指示書を含んでもよい。使用説明書は、例えば、
紙に印刷されてもよく、かつ/又は電子可読媒体において提供されてもよい。あるいは、
使用説明書は、例えば、キットの製造業者又は流通業者によって指定されたインターネッ
トウェブサイトにユーザを誘導することによって提供されてもよい。
【0071】
本発明のキットに含まれる試薬は、成分自体が容器の材料によって実質的に吸着又は変
更されない一方で、様々な成分の活性が実質的に失われないように、あらゆる種類の容器
で供給され得る。
【0072】
一実施形態において、キット又はデバイスは、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメ
ント、好ましくは精製された抗体、より好ましくはモノクローナル抗体、さらにより好ま
しくは3pE Aβペプチドに結合する単離されたモノクローナル抗体を含む。実施形態
において、抗体は、ハイブリドーマ細胞によって発現される。
【実施例
【0073】
本発明は、以下の非限定的な実施例を考察することによってさらに理解され得る。
【0074】
(実施例1)
モノクローナル抗体の生成
3匹のBalb/cマウス(Janvier Labs)を、完全フロイントアジュバ
ント(Sigma)中のH2N-pEFRHDSGC-COOH(配列番号21)(Eu
rogentec)で初回免疫した。ペプチドは、製造業者の指示に従って、Imjec
t Maleimide Activated BSA kit(Pierce,Roc
kford,IL)などの市販のキットを使用して、ペプチドをCOOH-末端システイ
ン残基を介してMaleimide Activated Bovine Serum
Albumin(Life Technologies)にカップリングすることによっ
て調製した。マウスを、最初は完全な、続いて不完全なフロイントアジュバント(Sig
ma)中の100μg又は200μgのBSAにカップリングしたペプチドで2週間ごと
に追加免疫した。
【0075】
ハイブリドーマ及び抗体の産生:最も高い血清力価を示すマウスを、融合のために選択
し、一方、他のマウスの脾臓を単離し、液体窒素中で凍結させた。4日目、融合又は脾臓
摘出の前に、全てのマウスを、塩水中のBSA(Merck)にカップリングされた10
0μgのpEFRHDSGC(配列番号21)で腹腔内に追加免疫した。マウスの脾臓細
胞を、Kohler及びMilsteinの改良手順(Euro.J.Immunol.
,1976;292-295)により、SP2/0細胞(ATCC,Manassas,
VA)と融合させた。ハイブリドーマを30x96ウェルプレートにシーディングし、1
0日後に、0.5μg/ウェルのカップリングしていないAβ3pE-40ペプチド(配
列番号22)(AnaSpec,Fremont,USA)で直接的ELISAでスクリ
ーニングした。陽性細胞を、0.5μg/mlのコーティングされたAβ1-40ペプチ
ド(配列番号23)(AnaSpec,Fremont,USA)で交差反応性(の欠如
)について試験し、直ちにサブクローニングした。
【0076】
第1の融合後、17のクローンがヒトAβ3pE-40(配列番号22)合成ペプチド
を用いて直接コーティングされたELISAスクリーニングにおいて陽性として反応し、
液体窒素中で凍結させた。17のクローンをAβ/pE3/1~Aβ/pE3/7と命名
した。第2の融合を実施し、この第2の融合から2つの他のクローンもまた、さらなる特
徴化に含まれた(Aβ/pE3/18及びAβ/pE3/19)。
【0077】
10%ウシ胎仔血清(Hyclone,Europe)、Hybridoma Fus
ion Cloning Supplement(2%)(Roche,Brussel
s,Belgium)、2%のHT(Sigma,USA)、1mMのピルビン酸ナトリ
ウム、2mMのL-グルタミン及びペニシリン(100U/mL)、並びにストレプトマ
イシン(50mg/mL)を添加したダルベッコ変法イーグル培地で全てのハイブリドー
マを増殖させた。全ての製品は市販されており、Life Technologies(
Paisley,UK)から購入した。細胞は、加湿した8%COエアーインキュベー
ター内でインキュベートした。
【0078】
抗体の選択のための直接ELISA:上記Aβ 3pE-40抗体の検出に使用したス
クリーニングELISAは、0.5μg/mlの遊離ヒトAβ 3pE-40ペプチド(
配列番号22)を4℃にて一晩、50μl/ウェルのコーティング緩衝液(10mM T
ris、10mM NaCl及び10mM NaN3、pH8.5)中でNUNC Ma
xisorp(Life Technologies)平底高結合96ウェルマイクロタ
イタープレートにコーティングした直接ELISAであった。
【0079】
翌日、室温で60分間、75μL/ウェルのPBS中0.1%カゼイン(Merck)
でプレートをブロッキングして、非特異的結合を減少させた。次に、50μLのハイブリ
ドーマ上清を添加し、37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、結合したモノクロー
ナル抗体を、37℃で1時間、50μL/ウェルの西洋ワサビペルオキシダーゼ(Ame
rsham-Pharmacia Biotech)と複合体化したヒツジ抗マウスIg
Gで検出した。両試薬を0.1%カゼイン/PBSで希釈した。プレートを洗浄し、50
μlの、0.42mMの3,5,3’,5’-テトラメチル-ベンジジン(Biorad
)、0.003%(容量/容量)のH(Biorad)(100mMのクエン酸(
Biorad)中)、100mMのリン酸水素二ナトリウム(pH4.3)(Biora
d)の溶液を基質として添加した。室温でプレートシェーカー上で最大15分間反応を進
行させ、その後、50μL/ウェルの2N HSO(Merck)で顕色を停止させ
、マイクロタイタープレートリーダーで450nmにてプレートを読み取った(Ther
momax,Molecular Devices)。選択したモノクローナル抗体と完
全サイズのヒト遊離Aβ 1-40(配列番号23)との交差反応性は、スクリーニング
アッセイと同一の直接ELISAで試験した。
【0080】
Aβ/pE3/1は、マウスIgG1アイソタイプ重鎖及びマウスκ軽鎖を有すると判
定された。マウスIgG1 Fcは、マウスIgG2a Fcに対して70%の配列同一
性及び76%の配列類似性のみを有するが、これらのアイソタイプは、異なる活性及びタ
ンパク質プロファイルを有する。マウスIgG2aと比較して、マウスIgG1は、マウ
スFcγRI、FcγRIII、及びFcγRIV受容体並びにマウスC1qへのより弱
い結合により、マウスFcエフェクター及び補体機能が弱い。ヒトIgG1活性に最も近
いアイソタイプであると考えられるため、マウスIgG2aは、マウスFcγRI、Fc
γRIII、及びFcγRIV受容体並びにマウスC1qに結合し、それによって、Aβ
プラークのクリアランスに寄与し得る、補体、ADCC、及びADCP活性を有する。
【0081】
Aβ/pE3/1重鎖の配列を、マウスIgG1(配列番号31)からマウスIgG2
a(配列番号1)に変更した。以下に記載の実験データは、IgG2a重鎖を有するAβ
/pE3/1を使用した。重鎖可変領域(CDRを含む)は、変更しなかった。
【0082】
(実施例2)
感度試験のためのサンドイッチELISA
選択されたAβ3pEモノクローナル抗体について、Aβ3-40(配列番号24)(
AnaSpec,Fremont,USA)及びAβ3pE-40(配列番号22)(A
naSpec,Fremont,USA)の検出に対する感度を、合成ペプチドを標準物
質として使用してサンドイッチアッセイで評価した。コーティングのためのAβ/pE3
/1~19抗体及び検出のためのJRF/cAβ40/28-HRPOの組み合わせを使
用して、検出の感度を調査した。
【0083】
材料及び方法:Aβ3-40(配列番号24)及びAβ3pE-40(配列番号22)
のペプチドの標準物質を、0.1mg/mLでジメチルスルホキシド(DMSO)(Si
gma)に溶解し、-80℃で保存した。ELISAでの使用のために、ペプチドをPB
S中の0.1%カゼインで1pg/mLまでさらに希釈した。96ウェルプレート(ハー
フエリア黒色プレート;Costar)を、コーティング緩衝液中1.5μg/mLの濃
度でモノクローナル抗体Aβ/pE3/1~Aβ/pE3/19を用いて4℃で一晩コー
ティングした。翌日、プレートを洗浄し、PBS中0.1%カゼインを用いて室温で1~
4時間ブロッキングした。標準物質をHRPO-標識二次抗体と一緒に4℃で一晩インキ
ュベートした。一晩インキュベートした後、プレートを洗浄し、製造業者の推奨に従って
、Quantablu基質(Pierce,Rockford,IL)を用いてアッセイ
を行った。
【0084】
結果:Aβ3pE-40(配列番号22)ペプチドに対する高い感度及び選択性に基づ
くさらなる特徴付けのために、抗体Aβ/pE3/1を選択した(表2)。さらに、この
抗体は、トランスジェニックマウス及びヒトAD脳でプラーク標識を実証した(表2並び
に実施例5及び6)。
【0085】
【表2】
【0086】
(実施例3)
交差反応性試験のためのサンドイッチELISA
選択されたAβ3pEモノクローナル抗体Aβ/pE3/1について、げっ歯類Aβ3
pE-40並びにヒトAβ1-40(配列番号23)、Aβ3-40(配列番号24)、
Aβ1-42(配列番号25)、Aβ3-42(配列番号26)、Aβ11pE-40(
配列番号28)及びAβ11pE-42(配列番号29)との交差反応性を、合成ペプチ
ドを使用して評価した。Aβ/pE3/1+JRF/cAβ40/28-HRPOの組み
合わせを使用して、Aβ1-40(配列番号23)、Aβ3-40(配列番号24)、A
β11pE-40及びげっ歯類Aβ3pE-40との交差反応性を調査した。Aβ/pE
3/1+JRF/cAβ42/26-HRPOの組み合わせを使用して、Aβ1-42(
配列番号25)、Aβ11pE-42及びAβ3-42(配列番号26)との交差反応性
を調査した。最大10,000pg/mLの濃度を試験した。
【0087】
材料及び方法:標準物質を0.1mg/mLでジメチルスルホキシド(DMSO)(S
igma)に溶解し、-80℃で保存した。ELISAでの使用のために、ペプチドをP
BS中の0.1%カゼインで1pg/mLまでさらに希釈した。96ウェルプレート(M
axisorb ELISAプレート;NUNC)を、コーティング緩衝液中、1.5μ
g/mLの濃度でモノクローナル抗体Aβ/pE3/1を用いて4℃で一晩コーティング
した。翌日、プレートを洗浄し、PBS中0.1%カゼインを用いて室温で1~4時間ブ
ロッキングした。標準物質をHRPO-標識二次抗体(JRF/cAβ40/28-HR
PO又はJRF/cAβ42/26-HRPO)と一緒に4℃で一晩インキュベートした
。一晩インキュベートした後、プレートを洗浄し、製造業者の推奨に従って、TMB過酸
化物EIA基質キット(Biorad)を用いてアッセイを行った。
【0088】
結果:Aβ/pE3/1 Aβ/pE3/1は、Aβ3pE-40(配列番号22)(
図2A)及びAβ3pE-42(配列番号30)への選択的結合を有することが示された
(データは示さない)。ヒトAβ1-40(配列番号23)(図2C)及びAβpE11
-40(図2D)への結合は検出されなかった。ヒトAβ1-42(配列番号25)、ヒ
トAβpE11-42及びげっ歯類Aβ3pE-40への最大10ng/mLの濃度での
結合もまた、検出されなかった(データは示さない)。Aβ3-40(配列番号24)(
図2B)及びAβ3-42(配列番号26)(データは示さない)のペプチドに対して限
定的な交差反応性が検出された(表2及び図2)。
【0089】
(実施例4)
ヒトAD脳組織におけるプラークへの抗体反応性を試験するための免疫組織化学
ヒトAD脳組織におけるプラークへのAβ/pE3/1の反応性を、ホルマリン固定、
パラフィン包埋(FFPE)脳組織、並びに非固定凍結保存脳組織の両方において調査し
た。
【0090】
材料及び方法
ホルマリン固定パラフィン包埋AD脳:厚さ6μmの切片を、ミクロトーム(Leic
a,Wetzlar,Germany)を使用して、ホルマリン固定パラフィン包埋脳か
ら調製した。Labvision Autostainer(Thermo Fishe
r Scientific,Fremont,CA)で染色を行った。簡潔に述べると、
脱パラフィン化後及び70%ギ酸(Merck)エピトープの回収後、内因性ペルオキシ
ダーゼについて切片をブロッキングし、Aβ/pE3/1一次抗体と共にインキュベート
した。HRPOにコンジュゲートした二次抗マウス又は抗ウサギ抗体を適用し(Envi
sion)、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB;Dako)を色原体として利用し
た。最後に、全ての切片をヘマトキシリン(Dako)で対比染色した。
【0091】
非固定凍結保存AD脳:市販の供給源(T1236051A1z-切片、Gentau
r)から切片を入手し、室温で2時間風乾した。PBS中ですすいだ後、切片をAβ/p
E3/1一次抗体と共に37℃でインキュベートした。次に、切片をNBF4%(ホルマ
リン、VWR(登録商標))/エタノールに固定し、PBSですすいだ。二次Cy3標識
抗体(Jackson-ImmunoResearch)を室温で2時間インキュベート
し、続いてPBSですすいだ。最後に、全ての切片をHoechst(Invitrog
en)で対比染色し、カバーガラスを加えた。
【0092】
FFPE及び凍結保存されたAD脳組織におけるプラークへの反応性についてのAβ/
pE3/1の免疫組織化学試験のために、ポリクローナル抗体を対照として使用した。
【0093】
結果:Aβ/pE3/1の反応性は、FFPE(図3A)及び非固定凍結保存(図4A
)ヒトAD脳の両方で実証され、参照抗体(抗ヒトアミロイドβ(N3pE)ウサギIg
G、IBL、Japan)と類似の染色パターンを示した(図3B及び4B)。これはA
β/pE3/1がヒト脳組織におけるプラークを検出したことを実証した。
【0094】
(実施例5)
脳組織における抗体のターゲットエンゲージメント及び毒性
Aβ/pE3/1(クローン1からの抗体)による処置後のターゲットエンゲージメン
ト及び毒性を調査した。
【0095】
材料及び方法:ヒトAβ42及びAβ40のペプチドを高レベルで発現している老化し
たトランスジェニックマウス(19~20ヶ月齢)は、1、4及び8日目にAβ/pE3
/1(クローン1)抗体(IgG2a)を60mg/kgの用量で3回の腹腔内投与で処
置された(n=10)。PBS注射を受ける対照群を実験に含めた(n=6)。第1の注
射後12日目に動物を安楽死させた。各群における治療されたマウスの半分は、PBSで
灌流を受けたが、他方の半分は非灌流されて、剖検における潜在的異常の評価を可能にし
た。左半球を凍結保存したが、右半球をDMFAに固定し、続いてパラフィン包埋した。
【0096】
ヒトAβ42及びAβ40のペプチドを高レベルで発現している6ヶ月齢のトランスジ
ェニックマウスは、1日目にAβ抗体3D6(IgG2a;AβのN末端に結合する)を
20mg/kg又は60mg/kgの用量で1回の腹腔内投与で処置された(1群当たり
n=4)。この年齢では、動物は、脳内にかなりのAβ沈着を有することが知られている
。PBS注射を受ける対照群を実験に含めた(n=3)。動物を4日目に安楽死させた。
マウスは、剖検における潜在的異常の評価を可能にするために灌流を受けなかった。
【0097】
抗体の全身投与後の脳におけるターゲットエンゲージメントを評価するために、二次抗
マウスアイソタイプ特異的抗体(ビオチン化抗mIgG2a二次抗体;Life Tec
hnologies)を用いた免疫組織化学を灌流マウスからの凍結切片に行い、標識面
積の%(皮質及び海馬)を、一次抗体及び二次抗体とインキュベートした隣接切片につい
て同じ測定値に正規化して、各マウスについて%プラーク標識を得た。
【0098】
潜在的な毒性を評価するために、非灌流動物群において、剖検での出血を評価した。さ
らに、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色を、全ての処置マウスの脳で行った。
【0099】
結果:Aβ/pE3/1からの抗体を60mg/kgの用量で3回処置した後のターゲ
ットエンゲージメント(プラーク結合)及び非毒性が、ヒトAβ42及びAβ40を高レ
ベルで発現している19~20ヶ月齢のマウスおいて観察された。非灌流動物では、剖検
で出血は観察されなかった(図5E)。抗体3D6を20mg/kg又は60mg/kg
の用量で1回処置した後、ヒトAβ42及びAβ40を高レベルで発現している処置マウ
ス(6ヶ月齢)の75%において、剖検で出血が容易に観察された(図5B及び5C、矢
印で示される)。PBS処置群の動物はいずれも、剖検で出血を示さなかった(図5A
び5D)。
【0100】
Aβ/pE3/1処置マウスからの凍結切片の調査により、60%の皮質及び84%の
海馬の平均プラーク標識(%)によって実証されるとおり、高レベルのターゲットエンゲ
ージメントが明らかになった(図6B)。PBS注射動物ではプラーク標識は観察されな
かった(図6A)。対照として、一次抗体(Aβ/pE3/1)を脳のパラレルセクショ
ンに添加し、二次抗体で染色して、両方の脳におけるプラークの存在を示した(PBS及
びAβ/pE3/1処置)(図6C~6D)。
【0101】
H&E染色による脳組織の評価の際、Aβ/pE3/1で処置したマウスは、PBS注
射された対照(図7C)と比較して異常がない(図7B)ことを実証した。一方、3D6
抗体による処置は、以下の異常:皮質の変性/壊死(20mg/kg及び60mg/kg
群の3D6処置マウスにおいて、それぞれ20%及び40%)、鬱血及び微小血管症を伴
う髄膜炎症性浸潤(20mg/kg及び60mg/kg群の3D6処置マウスにおいて、
それぞれ100%及び80%)、及び皮質微小出血(20mg/kg及び60mg/kg
群の3D6処置マウスにおいて、それぞれ60%)が観察される結果となった(図7A
。PBS処置群の動物はいずれも、H&E染色脳スライド上で異常を示さなかった(図7
C)。Aβ/pE3/1及びPBS処置マウスは19~20ヶ月齢であったが、3D6処
置マウスは6ヶ月齢であった。
【0102】
結論として、Aβ/pE3/1をプラーク沈着マウスモデルに腹腔内注射した後に、出
血を引き起こすことなくターゲットエンゲージメントを実証し、Aβ/pE3/1抗体に
よる処置後のターゲットエンゲージメント対毒性の好ましい比を示した。
【0103】
(実施例6)
Aβ/pE3/1の生体分子親和性結合
表面プラズモン共鳴(SPR)は、生体分子相互作用を調査するために使用される無標
識の検出方法である。センサ表面上の質量の小さい変化を監視して、この直接リアルタイ
ム結合アッセイは、生体分子間の相互作用に関する定性的及び定量的データを提供する;
すなわち、平衡結合定数(親和性、K)及び速度定数(k/k;複合体の会合速度
、及び複合体の解離速度k)を決定する。この方法は、タンパク質-タンパク質及
びタンパク質-核酸の相互作用、並びにタンパク質と小分子との相互作用の研究において
有用である。ここで、Aβ/pE3/1とAβ-3pE-40ペプチドとの相互作用を調
査した。
【0104】
材料及び方法:GE Healthcareによるマウス抗体捕捉キットを、Aβ-3
pE-40ペプチド(配列番号22)に対するAβ/pE3/1の親和性試験に使用した
。抗マウス抗体の固定化は、製造業者のプロトコルに従って、CM5センサチップ上のア
ミンカップリングを介して実施した。続いて、Aβ/pE3/1(1μg/ml)を抗マ
ウス抗体によって300RUの濃度まで捕捉した後、続いて、ランニング緩衝液(2.7
mM KCl、137mM NaCl及び0.05%界面活性剤P20(Tween(商
標)20))を含む20mMリン酸緩衝液)で希釈した様々な濃度(3.125nM、6
.25nM、12.5nM、25nM及び50nM)のヒトAβ-3pE-40ペプチド
(配列番号22)を注入した。表面を、pH1.7の10mMグリシンHClで少なくと
も180秒間、さらに60秒間再生した。ヒトAβ(1-40)ペプチドを陰性対照とし
て使用した。
【0105】
光学バイオセンサT200(Biacore(登録商標))を使用して,親和性測定を
行った。Biacore T200 Evaluation Software(バージ
ョン2.0)を用いて、1:1結合フィッティングモデルに従って動態分析を行った。
【0106】
結果:モノクローナル抗体Aβ/pE3/1の動態分析により、Aβ-3pE-40ペ
プチドに対する親和性結合が確認された。平衡結合定数(親和性、K)及び速度定数(
/k)を表3に示す。ヒトAβ-3pE-40ペプチドに対するAβ/pE3/1
の結合相互作用を示すセンサグラム(シングルサイクルキネティクス)を図8に示す。
【0107】
【表3】
【0108】
本発明及び本発明の様々な実施形態を説明する際に、明瞭化のために特定の用語が用いられる。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定されるように意図されていない。関連分野の当業者であれば、他の同等の構成要素を使用することができ、また、本発明の広い概念から逸脱することなく他の方法を開発することができることを認識するであろう。本明細書の至る所で引用される全ての参照文献は、それぞれが個々に組み込まれているかのように参照により組み込まれる。

本発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
a)配列番号2の重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)1、CDR2及びCDR3を有する重鎖可変領域と、
b)配列番号13の軽鎖可変領域のCDR1、CDR2及びCDR3を有する軽鎖可変領域と、を含む、3pE Aβに結合する単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
[2]
a)前記重鎖可変領域のCDR1が、配列番号3を含み、
b)前記重鎖可変領域のCDR2が、配列番号4を含み、
c)前記重鎖可変領域のCDR3が、配列番号5を含み、
d)前記軽鎖可変領域のCDR1が、配列番号14を含み、
e)前記軽鎖可変領域のCDR2が、配列番号15を含み、かつ、
f)前記軽鎖可変領域のCDR3が、配列番号16を含む、上記[1]のいずれかに記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
[3]
a)前記重鎖可変領域のCDR1が、配列番号3であり、
b)前記重鎖可変領域のCDR2が、配列番号4であり、
c)前記重鎖可変領域のCDR3が、配列番号5であり、
d)前記軽鎖可変領域のCDR1が、配列番号14であり、
e)前記軽鎖可変領域のCDR2が、配列番号15であり、かつ、
f)前記軽鎖可変領域のCDR3が、配列番号16である、上記[1]~[2]のいずれかに記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
[4]
a)前記重鎖可変領域のCDR1が、配列番号6を含み、
b)前記重鎖可変領域のCDR2が、配列番号7を含み、
c)前記重鎖可変領域のCDR3が、配列番号8を含み、
d)前記軽鎖可変領域のCDR1が、配列番号17を含み、
e)前記軽鎖可変領域のCDR2が、配列番号18を含み、かつ、
f)前記軽鎖可変領域のCDR3が、配列番号19を含む、上記[1]に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
[5]
a)前記重鎖可変領域のCDR1が、配列番号6であり、
b)前記重鎖可変領域のCDR2が、配列番号7であり、
c)前記重鎖可変領域のCDR3が、配列番号8であり、
d)前記軽鎖可変領域のCDR1が、配列番号17であり、
e)前記軽鎖可変領域のCDR2が、配列番号18であり、かつ、
f)前記軽鎖可変領域のCDR3が、配列番号19である、上記[1]又は[4]のいずれかに記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
[6]
a)前記重鎖可変領域のCDR1が、配列番号9を含み、
b)前記重鎖可変領域のCDR2が、配列番号10を含み、
c)前記重鎖可変領域のCDR3が、配列番号11を含み、
d)前記軽鎖可変領域のCDR1が、配列番号20を含み、
e)前記軽鎖可変領域のCDR2が、配列番号18を含み、かつ、
f)前記軽鎖可変領域のCDR3が、配列番号16を含む、上記[1]に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
[7]
a)前記重鎖可変領域のCDR1が、配列番号9であり、
b)前記重鎖可変領域のCDR2が、配列番号10であり、
c)前記重鎖可変領域のCDR3が、配列番号11であり、
d)前記軽鎖可変領域のCDR1が、配列番号20であり、
e)前記軽鎖可変領域のCDR2が、配列番号18であり、かつ、
f)前記軽鎖可変領域のCDR3が、配列番号16である、上記[1]又は[6]のいずれかに記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
[8]
a)前記重鎖可変領域が、配列番号2のアミノ酸配列を含み、かつ、
b)前記軽鎖可変領域が、配列番号13のアミノ酸配列を含む、上記[1]~[7]のいずれかに記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
[9]
前記抗体が、モノクローナル抗体である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
[10]
前記抗体が、ヒト化抗体である、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の単離された抗体又はその抗原結合フラグメント。
[11]
a)配列番号1の重鎖と、
b)配列番号12の軽鎖と、を含む、3pE Aβに結合する単離された抗体。
[12]
上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の抗体を生成するハイブリドーマ。
[13]
上記[12]に記載のハイブリドーマを使用することを含む、モノクローナル抗体を生成する方法。
[14]
上記[1]~[11]のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメントと、医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
[15]
β-アミロイドタンパク質を含有するプラークの形成に関連する状態を治療する方法であって、それを必要とする対象に上記[1]~[11]のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む、方法。
[16]
前記状態が、アルツハイマー病である、上記[15]に記載の方法。
[17]
前記状態が、トリソミー21(ダウン症候群)、びまん性レビー小体病、封入体筋炎、脳アミロイド血管症、及びオランダ型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(HCHWA-D)に関連する認知症からなる群から選択される、上記[15]に記載の方法。
[18]
アルツハイマー病に関連するプラークを減少させる方法であって、それを必要とする対象に上記[1]~[11]のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む、方法。
[19]
3pE Aβのシーディング活性を阻害する方法であって、それを必要とする対象に上記[1]~[11]のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを投与することを含む、方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8
【配列表】
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