(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】予備凍結用ラック及び予備凍結方法
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20230914BHJP
A61J 1/14 20230101ALI20230914BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A61J3/00 301
A61J1/14 524
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2019216824
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青田 周樹
(72)【発明者】
【氏名】吉村 滋弘
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-029388(JP,A)
【文献】特開2019-181141(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152520(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
A61J 1/14
C12M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のバッグに封入された生物学的試料を凍結保存する前に、前記バッグを常温から所定の温度まで冷却して前記生物学的試料を予備凍結させる際に用いられる予備凍結用ラックであって、
前記バッグを保持するホルダを備え、
前記ホルダは、互いに対向する一対の保持板を有して、
前記一対の保持板のうち少なくとも一方の保持板を他方の保持板に対して相対的に離間する方向に撓み変形させながら、前記一対の保持板が互いに平行となる状態において、前記一対の保持板の間で前記バッグを挟み込む構造を有
することを特徴とする予備凍結用ラック。
【請求項2】
前記ホルダは、前記一対の保持板の間で折曲部を介して折り曲げられた板金からなることを特徴とする請求項
1に記載の予備凍結用ラック。
【請求項3】
前記折曲部が設けられた側に窓部が設けられ、
前記折曲部が設けられた側とは反対側から前記一対の保持板の間に前記バッグが挿入され、
前記窓部から前記一対の保持板の間に挟み込まれた前記バッグを押し出す治具が挿入されることを特徴とする請求項
2に記載の予備凍結用ラック。
【請求項4】
前記バッグを保持した前記ホルダに対して、前記折曲部が設けられた側とは反対側から前記バッグを収納する包装箱が被せられることを特徴とする請求項
3に記載の予備凍結用ラック。
【請求項5】
可撓性のバッグに封入された生物学的試料を凍結保存する前に、前記バッグを常温から所定の温度まで冷却して前記生物学的試料を予備凍結させる際に用いられる予備凍結用ラックであって、
前記バッグを保持するホルダを備え、
前記ホルダは、
互いに対向する一対の保持板と、前記一対の保持板のうち少なくとも前記一方の保持板を前記他方の保持板に対して回動自在に支持するヒンジ部と、前記一対の保持板が互いに平行となる状態において、前記一方の保持板を前記他方の保持板に対して固定する固定具とを有して、
前記一方の保持板を
前記他方の保持板に対して相対的に接近する方向に回動させながら、前記一対の保持板が互いに平行となる状態において、前記一対の保持板の間で前記バッグを挟み込む
構造を有し、
前記バッグを保持した前記ホルダに対して、前記ヒンジ部が設けられた側とは反対側から前記バッグを収納する包装箱が被せられることを特徴とする予備凍結用ラック。
【請求項6】
前記ホルダは、前記一対の保持板が対向する方向に複数並んで設けられていることを特徴とする請求項1~
5の何れか一項に記載の予備凍結用ラック。
【請求項7】
可撓性のバッグに封入された生物学的試料を凍結保存する前に、前記バッグを常温から所定の温度まで冷却して前記生物学的試料を予備凍結させる予備凍結方法であって、
請求項1~
6の何れか一項に記載の予備凍結用ラックを用い、
前記ホルダに前記バッグを保持した状態で、前記予備凍結用ラックを冷却機能を有する冷却装置の内部に収容することによって、前記バッグを冷却しながら前記生物学的試料を予備凍結させることを特徴とする予備凍結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備凍結用ラック、並びにそのような予備凍結用ラックを用いた予備凍結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、新薬の開発や医療の基礎研究では、血液、実験動物の精子、受精卵、細胞などの生物学的試料(以下、単に「試料」という。)が用いられている。試料は、常温では生物学的作用により劣化する。このため、可撓性のバッグに試料を封入した状態で、凍結保存装置などにより凍結保存するのが一般的である。凍結保存装置としては、液体窒素を用いた凍結保存装置が、長期間安定して保存できるため、広く用いられている(例えば、下記特許文献1,2を参照。)。
【0003】
ところで、上述した試料を例えば-150℃以下の低温下で凍結保存する場合、常温の試料を-150℃まで急冷させると、細胞の生存率が低下することが知られている。このため、試料を凍結保存する前に、例えばプログラムフリーザーやドライアイス、機械式冷凍機などの冷却手段を用いて、常温から所定の温度(例えば-80℃)まで冷却速度を制御しながら、バッグに封入された試料を予備凍結させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-128072号公報
【文献】特開2009-136597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した凍結保存装置では、大量の試料を凍結保存することが求められている。このため、複数のバッグを並べて収納する予備凍結用ラックを用いて、この予備凍結用ラックをプログラムフリーザーなどの内部に収容し、それぞれのバッグに封入された試料をまとめて予備凍結することが行われている。
【0006】
しかしながら、上述した試料が封入されたバッグでは、その厚みが不均一となることで、常温から所定の温度まで冷却したときに、温度ムラが生じてしまい、試料の保存性が悪くなる。また、複数のバックをまとめて冷却する場合、バッグ間での温度ムラも生じてしまう。
【0007】
特に、流通形態となる包装箱にバッグを収納したまま冷却する場合は、上述した温度ムラの発生がより顕著となる。一方、予備凍結後にバッグを包装箱に移し替える場合は、バッグの温度が上昇して、試料の品質低下を招いたり、労力の負荷が増したりすることが懸念される。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、バッグに封入された生物学的試料を適切に予備凍結させることを可能とした予備凍結用ラック、並びにそのような予備凍結用ラックを用いた予備凍結方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 可撓性のバッグに封入された生物学的試料を凍結保存する前に、前記バッグを常温から所定の温度まで冷却して前記生物学的試料を予備凍結させる際に用いられる予備凍結用ラックであって、
前記バッグを保持するホルダを備え、
前記ホルダは、互いに対向する一対の保持板を有して、前記一対の保持板のうち少なくとも一方の保持板を他方の保持板に対して相対的に離間する方向に撓み変形させながら、前記一対の保持板が互いに平行となる状態において、前記一対の保持板の間で前記バッグを挟み込む構造を有することを特徴とする予備凍結用ラック。
〔2〕 前記ホルダは、前記一対の保持板の間で折曲部を介して折り曲げられた板金からなることを特徴とする前記〔1〕に記載の予備凍結用ラック。
〔3〕 前記折曲部が設けられた側に窓部が設けられ、
前記折曲部が設けられた側とは反対側から前記一対の保持板の間に前記バッグが挿入され、
前記窓部から前記一対の保持板の間に挟み込まれた前記バッグを押し出す治具が挿入されることを特徴とする前記〔2〕に記載の予備凍結用ラック。
〔4〕 前記バッグを保持した前記ホルダに対して、前記折曲部が設けられた側とは反対側から前記バッグを収納する包装箱が被せられることを特徴とする前記〔3〕に記載の予備凍結用ラック。
〔5〕 可撓性のバッグに封入された生物学的試料を凍結保存する前に、前記バッグを常温から所定の温度まで冷却して前記生物学的試料を予備凍結させる際に用いられる予備凍結用ラックであって、
前記バッグを保持するホルダを備え、
前記ホルダは、互いに対向する一対の保持板と、前記一対の保持板のうち少なくとも前記一方の保持板を前記他方の保持板に対して回動自在に支持するヒンジ部と、前記一対の保持板が互いに平行となる状態において、前記一方の保持板を前記他方の保持板に対して固定する固定具とを有して、
前記一方の保持板を前記他方の保持板に対して相対的に接近する方向に回動させながら、前記一対の保持板が互いに平行となる状態において、前記一対の保持板の間で前記バッグを挟み込む構造を有し、
前記バッグを保持した前記ホルダに対して、前記ヒンジ部が設けられた側とは反対側から前記バッグを収納する包装箱が被せられることを特徴とする予備凍結用ラック。
〔6〕 前記ホルダは、前記一対の保持板が対向する方向に複数並んで設けられていることを特徴とする前記〔1〕~〔5〕の何れか一項に記載の予備凍結用ラック。
〔7〕 可撓性のバッグに封入された生物学的試料を凍結保存する前に、前記バッグを常温から所定の温度まで冷却して前記生物学的試料を予備凍結させる予備凍結方法であって、
前記〔1〕~〔6〕の何れか一項に記載の予備凍結用ラックを用い、
前記ホルダに前記バッグを保持した状態で、前記予備凍結用ラックを冷却機能を有する冷却装置の内部に収容することによって、前記バッグを冷却しながら前記生物学的試料を予備凍結させることを特徴とする予備凍結方法。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、バッグに封入された生物学的試料を適切に予備凍結させることを可能とした予備凍結用ラック、並びにそのような予備凍結用ラックを用いた予備凍結方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る予備凍結用ラックの構成を示し、(a)はその正面側から見た斜視図、(b)はその背面側から見た斜視図である。
【
図2】
図1に示す予備凍結用ラックが備えるホルダの構成を示し、(a)はその背面側から見た斜視図、(b)はその正面側から見た斜視図、(c)はその正面図、(d)はその側面図、(e)はその背面図である。
【
図3】
図1に示す予備凍結用ラックが備えるホルダにバッグが挿入される前の状態を示す断面図である。
【
図4】
図3に示すホルダにバッグが挿入された状態を示す断面図である。
【
図5】
図4に示すホルダに対して包装箱が被せられた状態を示す断面図である。
【
図6】
図5に示す予備凍結用ラックをプログラムフリーザーの内部に収容した状態を示す断面図である。
【
図7】
図6に示すホルダに保持されたバッグを治具により押し出した状態を示す断面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る予備凍結用ラックが備えるホルダの構成を示し、(a)はその背面側から見た斜視図、(b)はその上面図、(c)はその正面図、(d)はその側面図、(e)はその背面図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態に係る予備凍結用ラックが備えるホルダにバッグが保持される前の状態を示す断面図である。
【
図10】
図9に示すホルダにバッグが保持された状態を示す断面図である。
【
図11】本発明の第4の実施形態に係る予備凍結用ラックが備えるホルダにバッグが保持された状態を示す断面図である。
【
図12】本発明の第5の実施形態に係る予備凍結用ラックをプログラムフリーザーの内部に収容した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
(第1の実施形態)
〔予備凍結用ラック〕
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば
図1~
図4に示す予備凍結用ラック(以下、単に「ラック」という。)1Aの構成について説明する。
【0014】
なお、
図1は、ラック1Aの構成を示し、(a)はその正面側から見た斜視図、(b)はその背面側から見た斜視図である。
図2は、ラック1Aが備えるホルダ2の構成を示し、(a)はその背面側から見た斜視図、(b)はその正面側から見た斜視図、(c)はその正面図、(d)はその側面図、(e)はその背面図である。
図3は、ラック1Aが備えるホルダ2にバッグBが挿入される前の状態を示す断面図である。
図4は、
図3に示すホルダ2にバッグBが挿入された状態を示す断面図である。
【0015】
本実施形態のラック1Aは、
図1(a),(b)に示すように、可撓性のバッグBに封入された生物学的試料(以下、単に「試料」という。)を凍結保存する前に、バッグBを常温から所定の温度まで冷却して試料を予備凍結させる際に好適に用いられるものである。
【0016】
具体的に、このラック1Aは、バッグBを保持する複数のホルダ2と、複数のホルダ2を上下方向(高さ方向)に並べて収納するラック本体3とを備えている。
【0017】
ホルダ2は、
図2(a)~(e)に示すように、互いに対向する一対の保持板4a,4bと、一対の保持板4a,4bの間で折り曲げられた折曲部5とを有している。なお、本実施形態では、ホルダ2の折曲部5が設けられた側をホルダ2の背面側とし、それとは反対側をホルダ2の正面側として説明する。
【0018】
ホルダ2は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性に優れた板金からなり、一対の保持板4a,4bの間で折曲部2cを介して折り曲げられることによって、全体として偏平な略直方体形状を有している。
【0019】
ホルダ2は、互いに対向する一対の保持板4a,4bの間でバッグBを挟み込むクリップ構造を有している。
【0020】
具体的に、一対の保持板4a,4bは、互いに一致した形状を有して、矩形平板状に形成されている。折曲部5は、ホルダ2の背面を形成する背板部5aと、背板部5aの上側及び下側の端縁部に沿って折り曲げられた一対の屈曲部5b,5cとを有している。
【0021】
一対の屈曲部5b,5cは、背板部5aに対して互いの先端側が近接する方向に向かって屈曲して設けられている。一対の保持板4a,4bは、互いに対向した状態となるように、一対の屈曲部5a,5bの先端側の端縁部に沿って折り曲げられている。
【0022】
これにより、ホルダ2では、一対の保持板4a,4bのうち少なくとも一方の保持板を他方の保持板に対して相対的に離間する方向に撓み変形させることが可能となっている。本実施形態では、一対の保持板4a,4bを互いに離間する方向に撓み変形させることが可能となっている。
【0023】
また、ホルダ2の背面側には、窓部6が設けられている。窓部6は、背板部5aの幅方向に亘って略矩形状に開口して設けられている。
【0024】
ラック本体3は、
図1(a),(b)に示すように、その背面を構成する背板7aと、その両側面を構成する一対の側板7b,7cと、その上面を構成する天板7dとを有して、その正面及び下面側が開口したフレーム構造を有している。
【0025】
ラック本体3は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性に優れた板金からなり、背板7aと一対の側板7b,7cとの間で折り曲げられると共に、天板7dが溶接等により取り付けられることによって、全体として上下方向に延びる略直方体形状を有している。
【0026】
ラック本体3の内側には、複数のホルダ2が上下方向に等間隔に並んだ状態で収納されている。各ホルダ2は、背板部5aをラック本体3の背板7aに溶接等により取り付けることによって、ラック本体3に固定されている。これにより、ホルダ2は、その背面側が片持ち支持された状態で、一対の保持板4a,4bが対向する方向(本実施形態ではラック本体3の上下方向)に複数並んで設けられている。
【0027】
ラック本体3の背面には、複数の窓部8が上下方向に並んで設けられている。窓部8は、上述した各ホルダ2の窓部6と一致するように、背板7aの幅方向に亘って略矩形状に開口して設けられている。
【0028】
ラック本体3の両側面には、開口部9が設けられている。開口部9は、一対の側板7b,7cの上下方向に亘って略矩形状に開口して設けられている。
【0029】
ラック本体3の上面には、取手部10が設けられている。取手部10は、天板7dに溶接等により取り付けられている。これにより、ラック1Aでは、取手部10を把持しながら、ラック本体3を持ち運ぶことが可能となっている。
【0030】
以上のような構成を有する本実施形態のラック1Aでは、
図3及び
図4に示すように、各ホルダ2の正面側から一対の保持板4a,4bの間にバッグBを挿入しながら、これら一対の保持板4a,4bの間でバッグBを挟み込む。
【0031】
このとき、各ホルダ2では、一対の保持板4a,4bを互いに離間する方向に撓み変形させながら、一対の保持板4a,4bが互いに平行となる状態において、これら一対の保持板4a,4bの間でバッグBが挟み込まれた状態となる。
【0032】
これにより、本実施形態のラック1Aでは、バックBの厚みを均一に保ちながら、各ホルダ2によりバッグBを保持することが可能である。したがって、本実施形態のラック1Aでは、バッグBを常温から所定の温度まで冷却したときの温度ムラの発生を抑制することが可能である。
【0033】
〔予備凍結方法〕
次に、上記ラック1Aを用いた予備凍結方法について、
図3~
図7を参照しながら説明する。
【0034】
なお、
図5は、
図4に示すホルダ2に対して包装箱Cが被せられた状態を示す断面図である。
図6は、
図5に示すラック1AをプログラムフリーザーPFの内部に収容した状態を示す断面図である。
図7は、
図6に示すホルダ2に保持されたバッグBを治具Tにより押し出した状態を示す断面図である。
【0035】
本実施形態のラック1Aを用いた予備凍結方法では、先ず、上述した
図3及び
図4に示すように、各ホルダ2の正面側から一対の保持板4a,4bの間にバッグBを挿入しながら、これら一対の保持板4a,4bの間でバッグBを挟み込むことによって、各ホルダ2にバッグBを保持させる。
【0036】
次に、
図5に示すように、バッグBを保持したホルダ2に対して正面側からバッグBを収納する包装箱Cを被せた状態とする。包装箱Cは、予備凍結後にバッグBを収納する紙製や樹脂製などのカートンからなる。
【0037】
次に、
図6に示すように、冷却機能を有する冷却装置であるプログラムフリーザーPFの内部にラック1Aを収容する。これにより、冷却速度を制御しながら、バッグBを常温から所定の温度(例えば-80℃)まで冷却する。これにより、バッグBに封入された試料を予備凍結させることが可能である。
【0038】
次に、
図7に示すように、プログラムフリーザーPFの内部に収容されたラック1Aを外部へと取り出した後、ラック本体3の各窓部8及び各ホルダ2の窓部6から治具Tを挿入する。これにより、各ホルダ2に保持されたバッグBを治具Tによりホルダ2の正面側から押し出しながら、バッグBを包装箱Cに収納することが可能である。
【0039】
以上のように、本実施形態のラック1Aを用いた予備凍結方法では、上述したバックBの厚みを均一に保ちながら、各ホルダ2によりバッグBを保持することが可能なことから、バッグBを常温から所定の温度まで冷却したときの温度ムラの発生を抑制しながら、バックBに封入された試料を適切に予備凍結させることが可能である。
【0040】
また、本実施形態のラック1Aを用いた予備凍結方法では、予備凍結後に、ホルダ2に保持されたバッグBを包装箱Cへと速やか且つ容易に移し替えることが可能なことから、バッグBの温度が上昇して、試料の品質が低下したりすることを防ぐことが可能である。
【0041】
さらに、紙製や樹脂製のカートンのような熱伝導性の低い包装箱CにバッグBが収納された状態であっても、バッグBに封入された試料を迅速に冷却し、予備凍結することが可能である。
【0042】
(第2の実施形態)
〔予備凍結用ラック〕
次に、本発明の第2の実施形態として、例えば
図8に示す予備凍結用ラック(以下、単に「ラック」という。)1Bについて説明する。
【0043】
なお、
図8は、ラック1Bが備えるホルダ2の構成を示し、(a)はその背面側から見た斜視図、(b)はその上面図、(c)はその正面図、(d)はその側面図、(e)はその背面図である。また、以下の説明では、上記ラック1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0044】
本実施形態のラック1Bは、
図8(a)~(e)に示すように、上記ホルダ2の形状が異なる以外は、上記ラック1Aと基本的に同じ構成を有している。すなわち、このラック1Bが備えるホルダ2は、上記折曲部5を構成する一方(本実施形態では上側)の屈曲部5bのみを有した構成となっている。
【0045】
また、他方(本実施形態では下側)の屈曲部5cが省略されることによって、一方(本実施形態では上側)の保持板4aが一方の屈曲部5aの先端側の端縁部に沿って折り曲げられ、他方(本実施形態では下側)の保持板4bが背板部5aの下側の端縁部に沿って折り曲げられている。
【0046】
これにより、ホルダ2では、一方の保持板4aを他方の保持板4bに対して離間する方向に撓み変形させることが可能となっている。
【0047】
以上のような構成を有する本実施形態のラック1Bでは、上記
図3及び
図4に示すラック1Aと同様に、各ホルダ2の正面側から一対の保持板4a,4bの間にバッグBを挿入しながら、これら一対の保持板4a,4bの間でバッグBを挟み込む。
【0048】
このとき、各ホルダ2では、一方の保持板4aを撓み変形させながら、一対の保持板4a,4bが互いに平行となる状態において、これら一対の保持板4a,4bの間でバッグBが挟み込まれた状態となる。
【0049】
これにより、本実施形態のラック1Bでは、バックBの厚みを均一に保ちながら、各ホルダ2によりバッグBを保持することが可能である。したがって、本実施形態のラック1Bでは、バッグBを常温から所定の温度まで冷却したときの温度ムラの発生を抑制することが可能である。
【0050】
〔予備凍結方法〕
本実施形態のラック1Bを用いた予備凍結方法では、上記ラック1Aを用いた場合と同様に、上述したバックBの厚みを均一に保ちながら、各ホルダ2によりバッグBを保持することが可能なことから、バッグBを常温から所定の温度まで冷却したときの温度ムラの発生を抑制しながら、バックBに封入された試料を適切に予備凍結させることが可能である。
【0051】
また、本実施形態のラック1Bを用いた予備凍結方法では、予備凍結後に、ホルダ2に保持されたバッグBを包装箱Cへと速やか且つ容易に移し替えることが可能なことから、バッグBの温度が上昇して、試料の品質が低下したりすることを防ぐことが可能である。
【0052】
(第3の実施形態)
〔予備凍結用ラック〕
次に、本発明の第3の実施形態として、例えば
図9及び
図10に示す予備凍結用ラック(以下、単に「ラック」という。)1Cについて説明する。
【0053】
なお、
図9は、ラック1Cの構成を示し、ホルダ2にバッグBが保持される前の状態を示す断面図である。
図10は、ホルダ2にバッグBが保持された状態を示す断面図である。また、以下の説明では、上記ラック1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0054】
本実施形態のラック1Cは、
図9及び
図10に示すように、上記ラック1A,1Bが備えるホルダ2がクリップ構造を有するのに対して、ヒンジ構造を有するホルダ2を備えている。それ以外は、上記ラック1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0055】
すなわち、このラック1Cが備えるホルダ2は、ホルダ2の背面側に位置するヒンジ部11と、ホルダ2の正面側に位置する固定具12とを有している。
【0056】
ヒンジ部11は、一方(本実施形態では上側)の保持板4aを他方(本実施形態では下側)の保持板4bに対して回動自在に支持するものであり、一対の保持板4a,4bの背面側の端縁部に沿って設けられている。ホルダ2は、他方の保持板4bをラック本体3に溶接等により取り付けることによって、ラック本体3に固定されている。
【0057】
固定具12は、一対の保持板4a,4bが互いに平行となる状態において、一方の保持板4aを他方の保持板4bに対して固定するものであり、一対の保持板4a,4bの正面側の端縁部を挟み込むクリップにより構成されている。なお、固定具12については、このようなクリップに限らず、一方の保持板4aを他方の保持板4bに対して固定可能なものであればよい。
【0058】
以上のような構成を有する本実施形態のラック1Cでは、上記
図3及び
図4に示すラック1Aと同様に、各ホルダ2の正面側から一対の保持板4a,4bの間にバッグBを挿入しながら、これら一対の保持板4a,4bの間でバッグBを挟み込む。
【0059】
このとき、各ホルダ2では、一方の保持板4aを他方の保持板4bに対して接近する方向に回動させながら、一対の保持板4a,4bが互いに平行となる状態において、これら一対の保持板4a,4bの間でバッグBが挟み込まれた状態となる。また、この状態において、固定具12により一方の保持板4aを他方の保持板4bに対して固定する。
【0060】
これにより、本実施形態のラック1Cでは、バックBの厚みを均一に保ちながら、各ホルダ2によりバッグBを保持することが可能である。したがって、本実施形態のラック1Cでは、バッグBを常温から所定の温度まで冷却したときの温度ムラの発生を抑制することが可能である。
【0061】
〔予備凍結方法〕
本実施形態のラック1Cを用いた予備凍結方法では、上記ラック1Aを用いた場合と同様に、上述したバックBの厚みを均一に保ちながら、各ホルダ2によりバッグBを保持することが可能なことから、バッグBを常温から所定の温度まで冷却したときの温度ムラの発生を抑制しながら、バックBに封入された試料を適切に予備凍結させることが可能である。
【0062】
また、本実施形態のラック1Cを用いた予備凍結方法では、予備凍結後に、ホルダ2に保持されたバッグBを包装箱Cへと速やか且つ容易に移し替えることが可能なことから、バッグBの温度が上昇して、試料の品質が低下したりすることを防ぐことが可能である。
【0063】
(第4の実施形態)
〔予備凍結用ラック〕
次に、本発明の第4の実施形態として、例えば
図11に示す予備凍結用ラック(以下、単に「ラック」という。)1Dについて説明する。
【0064】
なお、ラック1Dが備えるホルダ2にバッグBが保持された状態を示す断面図である。また、以下の説明では、上記ラック1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0065】
本実施形態のラック1Dは、
図11に示すように、上記ラック1A,1Bが備えるホルダ2がクリップ構造を有するのに対して、クリップ構造を省略したホルダ2を備えている。それ以外は、上記ラック1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0066】
すなわち、このラック1Cが備えるホルダ2は、互いに平行に配置された一対の保持板4a,4bのみを有して、これら一対の保持板4a,4bの間でバッグBを挟み込む構造を有している。ホルダ2は、一対の保持板4a,4bをラック本体3に溶接等により取り付けることによって、バッグBを挟み込む隙間(クリアランス)を保ちつつ、ラック本体3に固定されている。
【0067】
以上のような構成を有する本実施形態のラック1Dでは、上記
図3及び
図4に示すラック1Aと同様に、各ホルダ2の正面側から一対の保持板4a,4bの間にバッグBを挿入しながら、これら一対の保持板4a,4bの間でバッグBを挟み込む。
【0068】
このとき、各ホルダ2では、一対の保持板4a,4bが互いに平行となる状態において、これら一対の保持板4a,4bの間でバッグBが挟み込まれた状態となる。
【0069】
これにより、本実施形態のラック1Dでは、バックBの厚みを均一に保ちながら、各ホルダ2によりバッグBを保持することが可能である。したがって、本実施形態のラック1Dでは、バッグBを常温から所定の温度まで冷却したときの温度ムラの発生を抑制することが可能である。
【0070】
〔予備凍結方法〕
本実施形態のラック1Dを用いた予備凍結方法では、上記ラック1Aを用いた場合と同様に、上述したバックBの厚みを均一に保ちながら、各ホルダ2によりバッグBを保持することが可能なことから、バッグBを常温から所定の温度まで冷却したときの温度ムラの発生を抑制しながら、バックBに封入された試料を適切に予備凍結させることが可能である。
【0071】
また、本実施形態のラック1Dを用いた予備凍結方法では、予備凍結後に、ホルダ2に保持されたバッグBを包装箱Cへと速やか且つ容易に移し替えることが可能なことから、バッグBの温度が上昇して、試料の品質が低下したりすることを防ぐことが可能である。
【0072】
(第5の実施形態)
〔予備凍結用ラック〕
次に、本発明の第5の実施形態として、例えば
図12に示す予備凍結用ラック(以下、単に「ラック」という。)1Eについて説明する。
【0073】
なお、ラック1EをプログラムフリーザーPFの内部に収容した状態を示す断面図である。また、以下の説明では、上記ラック1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0074】
本実施形態のラック1Eは、
図12に示すように、上記ラック1Aにおいて、ラック本体3の内側に複数のホルダ2が上下方向に並んだ設けられた構成であるのに対して、ラック本体3の内側に複数のホルダ2が幅方向に並んで設けられた構成となっている。それ以外は、上記ラック1Aと基本的に同じ構成を有している。すなわち、このラック1Cが備えるホルダ2は、一対の保持板3a,3bが対向する方向(本実施形態ではラック本体3の幅方向)に複数並んで設けられている。
【0075】
なお、本実施形態では、上述したヒンジ構造を有するホルダ2を備えた構成となっているが、上述したクリップ構造を有するホルダ2や、一対の保持板4a,4bのみを有するホルダ2を備えた構成であってもよい。
【0076】
以上のような構成を有する本実施形態のラック1Eは、プログラムフリーザーPFの内部に積み重ねた状態で収容することが可能である。
【0077】
なお、本発明で言うところの「バッグを挟み込んだときに一対の保持板が互いに平行な状態となる」とは、一対の保持板4a,4bが完全に平行な状態を保つ場合に限定されるものではなく、バックBの厚みを均一に保つという目的を達成し得る範囲で、一対の保持板4a,4bが僅かに非平行な状態となる場合も許容するものとする。
【符号の説明】
【0078】
1A~1E…予備凍結用ラック 2…ホルダ 3…ラック本体 4a,4b…一対の保持板 5…折曲部 6…窓部 7a…背板 7b,7c…一対の側板 7d…天板 8…窓部 9…開口部 10…取手部 11…ヒンジ部 12…固定具 B…バッグ C…包装箱 T…治具