(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】気相成長装置及び気相成長方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20230914BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20230914BHJP
C23C 16/18 20060101ALI20230914BHJP
C23C 16/08 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/455
C23C16/18
C23C16/08
(21)【出願番号】P 2019224763
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃
(72)【発明者】
【氏名】松本 功
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-069267(JP,A)
【文献】特開2016-094337(JP,A)
【文献】特開2017-118129(JP,A)
【文献】特開昭63-260124(JP,A)
【文献】特開平10-017400(JP,A)
【文献】特開2012-246195(JP,A)
【文献】特開2009-234800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/455
C23C 16/18
C23C 16/08
C30B 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝縮温度及び分解温度のうちの少なくとも何れかが異なる2種類以上の原料ガスを反応炉内に導入し、前記反応炉内に設置した基板を前記原料ガスの分解温度以上に加熱することで、前記基板上に半導体膜を成長させる気相成長装置であって、
反応炉内に配置され、前記基板を保持するサセプタと、
前記サセプタを加熱する加熱器と、
前記反応炉内に配置され、前記原料ガスを前記基板上まで導くフローチャンネルと、
前記フローチャンネルに接続されるとともに、2種類以上の前記原料ガスを個別に噴出する複数の噴出口を有し、前記フローチャンネル内に向けて前記原料ガスを噴出する集合配管部と、
前記集合配管部に前記原料ガスを供給するガス供給部と、
を備え、
前記ガス供給部、前記集合配管部及び前記フローチャンネルは、前記2種類以上の原料ガスのうち、分解温度が相対的に低い低温分解原料ガスが流通する原料ガス供給ラインを、他の原料ガス供給ラインとの間で断熱する断熱構造を有し、前記低温分解原料ガスを、凝縮温度以上かつ分解温度以下の温度に独立して保持するか、又は、反応に最適化された分子形態となる温度範囲に独立して保持しつつ、前記基板上に供給することを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記断熱構造が、下記(1)~(8)に示す構造の何れかであることを特徴とする請求項1に記載の気相成長装置。
(1)前記低温分解原料ガスが流通する原料ガス供給ラインと、他の原料ガス供給ラインとの間に石英材を配置した構造。
(2)上記(1)における石英材の表面が不透明化された構造。
(3)上記(1)における石英材が不透明石英材である構造。
(4)前記低温分解原料ガスが流通する原料ガス供給ラインと、他の原料ガス供給ラインとの間に真空層を配置した構造。
(5)前記低温分解原料ガスが流通する原料ガス供給ラインと、他の原料ガス供給ラインとの間にガス流層を配置した構造。
(6)前記低温分解原料ガスが流通する原料ガス供給ラインと、他の原料ガス供給ラインとの間に、少なくとも窒化ボロン(BN)、炭化タンタル(TaC)、モリブデン(Mo)又はタングステン(W)の何れかを含む、耐熱性を有する高反射率材を配置した構造。
(7)前記低温分解原料ガスが流通する原料ガス供給ライン、及び、他の原料ガス供給ラインを含む各流路の間に空間を配置した構造。
(8)上記(1)~(7)に示す断熱構造を少なくとも2以上で組み合わせた構造。
【請求項3】
前記原料ガスが前記基板上を通過する平均通過時間が、前記基板に4inch基板を用い、且つ、前記基板の中心を含む直径方向で前記原料ガスが通過する条件で、0.2秒以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の気相成長装置。
【請求項4】
前記基板の外周上における回転速度を付加した前記原料ガスの相対流速が0.8m/s以上であることを特徴とする請求項1~請求項3の何れか一項に記載の気相成長装置。
【請求項5】
さらに、前記反応炉内を減圧する減圧機構を備えることを特徴とする請求項1~請求項4の何れか一項に記載の気相成長装置。
【請求項6】
前記フローチャンネルは、前記基板の成長面に対して平行に前記原料ガスを供給したときに、該原料ガスの流れを規制する、前記基板の成長面と面一に配置される底面と、該底面と対向して配置される天井面と、前記底面と前記天井面とを繋ぐように配置される側面とを有し、前記底面から前記天井面までの高さが9mm以下であることを特徴とする請求項1~請求項5の何れか一項に記載の気相成長装置。
【請求項7】
前記加熱器が、電気ヒータ、及び、高周波誘導式加熱器のうちの何れか一方又は両方であることを特徴とする請求項1~請求項6の何れか一項に記載の気相成長装置。
【請求項8】
前記サセプタは、前記基板を水平に保持し、
前記集合配管部は、前記フローチャンネルを介して、前記基板に向けて、前記原料ガスを水平方向で噴出することを特徴とする請求項1~請求項7の何れか一項に記載の気相成長装置。
【請求項9】
前記原料ガスが、有機金属化合物であるトリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルインジウム(TMIn)、及びトリエチルガリウム(TEGa)、又は、金属塩化物である一塩化ガリウム(GaCl)、三塩化ガリウム(III)(GaCl
3)、一塩化アルミニウム(AlCl)、三塩化アルミニウム(AlCl
3)、一塩化インジウム(InCl)、及び三塩化インジウム(InCl
3)のうちから選ばれる少なくとも何れかを含むことを特徴とする請求項1~請求項8の何れか一項に記載の気相成長装置。
【請求項10】
前記原料ガスが、少なくともアンモニア(NH
3)を含むことを特徴とする請求項1~請求項9の何れか一項に記載の気相成長装置。
【請求項11】
前記原料ガスが、少なくとも酸素(O
2)を含むことを特徴とする請求項1~請求項10の何れか一項に記載の気相成長装置。
【請求項12】
前記原料ガスは、前記低温分解原料ガスとして、ドーピング原料であるビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(Cp
2Mg)を含むことを特徴とする請求項1~請求項11の何れか一項に記載の気相成長装置。
【請求項13】
前記原料ガスは、前記低温分解原料ガスとして、ドーピング原料であるビス(シクロペンタジエニル)鉄(Cp
2Fe)を含むことを特徴とする請求項1~請求項11の何れか一項に記載の気相成長装置。
【請求項14】
前記原料ガスは、前記低温分解原料ガスとして、ドーピング原料である水素化ゲルマニウム(GeH
4)を含むことを特徴とする請求項1~請求項11の何れか一項に記載の気相成長装置。
【請求項15】
請求項1~請求項14の何れか一項に記載の気相成長装置を用いて、凝縮温度及び分解温度の少なくとも何れかが異なる2種類以上の原料ガスを反応炉内に導入し、前記反応炉内に設置した基板を前記原料ガスの分解温度以上に加熱することで、前記基板上に半導体膜を成膜することを特徴とする気相成長方法。
【請求項16】
前記基板上に成膜する前記半導体膜が、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、及び窒化インジウム(InN)のうちの何れか1種からなる成長膜であることを特徴とする請求項15に記載の気相成長方法。
【請求項17】
前記基板上に成膜する前記半導体膜が、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、及び窒化インジウム(InN)の混合物からなる成長膜であることを特徴とする請求項15に記載の気相成長方法。
【請求項18】
前記基板上に成膜する前記半導体膜が、次式{Ga
2O
5}で表される酸化ガリウム結晶、酸化アルミニウム(AlO)又は次式{AlGaOx(但し、xは任意の整数)}で表される酸化ガリウムアルミニウムからなる成長膜であることを特徴とする請求項15に記載の気相成長方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置及び気相成長方法に関し、特に、凝縮温度や分解温度が大きく異なる少なくとも2種以上の原料ガスを用いて基板上に半導体膜を形成・成長させるための気相成長装置及び気相成長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板上に半導体膜を成長させるための装置として気相成長装置が知られている。この気相成長装置は、反応炉内において、加熱環境下でサセプタ上に載置された基板に対して、原料ガス(例えば、トリメチルガリウムとアンモニア等)を供給した作用させることにより、当該基板上に半導体薄膜を形成・成長させるための装置である。このような気相成長装置を用いて、結晶成長用の基板上に窒化ガリウム(GaN)や酸化ガリウム結晶(Ga2O5)等からなる化合物半導体薄膜を形成する場合、基板の表面に、該基板の横方向から原料ガスを供給して薄膜成長を行う。
【0003】
上記のようなGaNやGa2O5等からなるエピタキシャル結晶を基板上に成長させて化合物半導体を製造する気相成長装置としては、例えば、MBE(Molecular Beam Epitaxy)装置、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)装置等が挙げられ、それぞれの特徴から製造用途が異なる。
【0004】
上記の気相成長装置のうち、MBE装置は、分子線結晶成長法により、超高真空下で分子線セル内の原料を加熱して蒸発させ、蒸発分子の飛散方向を揃えたジェット流(分子線)を、加熱した基板上に供給する方法で半導体結晶を成長させるものである。MBE装置によれば、高純度の結晶を成膜でき、また、ヘテロ界面を比較的容易に製作できるものの、成長速度が比較的遅く、また、設備費も高いことから、量産には向かない。
【0005】
また、MOCVD装置は、有機金属気相成長法(MOCVD法)により、有機金属化合物の蒸気から、加熱した基板上に半導体結晶を成長させるものであり、現在、化合物半導体デバイスを製造する方法・装置の主流となっている。MOCVD装置を用いることで、結晶の成長速度がサブミクロン単位~10μm/hr程度まで制御できるとともに、P型及びN型ドーピングも1016~1020cm-3程度まで制御でき、さらに、界面の急峻性も原子層レベルで制御可能となるメリットがある。
【0006】
しかしながら、MOCVD装置を用いた場合、原料にトリメチルガリウム(TMG)等の有機金属化合物を用いるため、原料が高価となり、また、設備費も比較的高価になるというデメリットがある。
また、近年、GaNを用いたパワーデバイスにおいても、縦方向に電気を流す縦型ダイオードやトランジスタ等の開発が注目されている。一方、このようなパワーデバイスには数十ミクロン程度の膜厚が必要になることから、成長速度が最大で10μm/hr程度のMOCVD装置では生産性の向上が見込めず、また、生産コストを抑制することも難しいというデメリットもある。
【0007】
また、HVPE装置は、ハイドライド気相成長法(HVPE法)により、高温下において金属材料の塩化物ガスと非金属材料の水素化物ガスとを反応させる方法で、基板上に半導体結晶を成膜するものである(例えば、特許文献1を参照)。HVPE装置は、結晶の成長速度が100μm/hrと非常に速く、短時間で厚膜を成膜でき、また、原料由来のカーボン不純物が少ないというメリットがある。一方、HVPE装置は、反応炉内で結晶原料を発生させる構造のため、炉内容積が大きくなり、ガス種の切替えに時間がかかることから、急峻な界面が得られないというデメリットもある。これは、HVPE装置の特徴として、金属塩化物を反応炉内で製造することに起因するデメリットである。
【0008】
HVPE法においては、反応炉の上流部に金属原料のボートを設置し、そのボートに塩化水素又は塩素を導入して塩化物へと反応させ、金属塩化物を生成させる。ここで、金属原料がガリウムである場合、塩化水素との低温反応において三塩化ガリウム(GaCl3)が生成されるが、三塩化ガリウムを用いて成長した結晶には酸素等の不純物が多く取り込まれることが知られており、通常の結晶成長には適さない。また、結晶成長に適した生成量で金属塩化物を生成させるには、800℃程度に加熱することが必要となり、この場合には一塩化ガリウム(GaCl)が生成される。
【0009】
HVPE法における金属塩化物の生成は、通常、反応炉の内部又は周囲に電気炉を設置し、この電気炉によって行われる。このように、反応炉内において金属塩化物を生成させる理由としては、一塩化ガリウムは350℃付近の温度で分解して三塩化ガリウムと金属ガリウムを生成するため、基板上に供給するまで一定温度に維持する必要があることが挙げられる。また、金属塩化物は吸水性が高めであることから、反応炉の外部から炉内に供給した場合には大気成分の混入等によって原料の純度が低下したり、また、金属塩化物が微量の水分と反応することで塩酸となり、気相成長装置の構成部品を腐食させたりするおそれがあることも挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一方、HVPE法における大きな課題として、以下に詳述するような理由により、半導体結晶にP型のドーピングを付与する場合に、P型ドーパント原料として適当なものが無く、PN接合ができないという点が挙げられる。このため、HVPE装置(HVPE法)によるプロセスは、もっぱら、GaNの単層膜を長時間成長させることでGaN基板を製造すること等に用いられていた。即ち、HVPE法では、高純度のGaN層に続けてP型層を連続して成長させることができなかった。
【0012】
即ち、上述したような縦型ダイオード等の縦型電子デバイス等を低コストで製造するためには、半導体膜の高成長速度を維持しつつ、上記のようなP型ドーピング層の形成が困難であるという問題を克服する必要がある。このようなP型ドーパント層は、例えば、MOCVD法を用いた場合には、シクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を原料とし、水素や窒素をキャリアガスとして、常温下でバブリングすることにより、飽和蒸気圧分をキャリアガスに同伴させて反応炉内に供給する。この際、上記のCp2Mgのような有機金属化合物は、熱分解しやすい特性を有することから、100~200℃以下の比較的低温のままで基板上に到達させる必要がある。
【0013】
しかしながら、HVPE法においては、上述したように、GaClを800℃程度の温度で生成して基板上に送り込む必要があるため、GaClとCp2Mgとを基板よりも上流側で合流させた場合や、これら両材料を近接させながら炉内に導入した場合、Cp2Mgが熱分解してしまう。このため、P型ドーパント原料であるCp2Mgが、基板上の多くの場所に届かないばかりか、熱分解された化合物が反応炉内の上流部に付着し、炉内が汚染されてしまうという問題がある。また、従来から用いられているHVPE装置は、常圧下での結晶成長におけるガス流速が数cm/secと比較的低速な設計とされていることから、この点も、Cp2Mgが容易に加熱されてしまう要因となっていた。
【0014】
上記のように、従来の技術では、HVPE装置でP型ドーピング層を成長させることができなかった。このため、例えば、HVPE装置を用いて高純度で厚膜のGaN層を基板上に成長させた後、反応炉内から取り出し、MOCVD装置の反応炉内に搬入してP型ドーピング層を成長させる必要があった。しかしながら、このような複数の装置(反応炉)を用いる複雑なプロセスを採用した場合には、エピサブ界面にシリコン等の不純物が混入するのを避けられず、PN接合特性が劣化する問題があるとともに、生産性や生産コストの面でもデメリットとなっていた。
【0015】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、HVPE装置を用いて高純度のGaN層を高い成長速度で成膜した後、同一の反応炉を用いて、引き続いてP型ドーピング層を成長させることができ、PN接合特性に優れるとともに、生産性に優れ、且つ、生産コストを低減することが可能な気相成長装置及び気相成長方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は、上記問題を解決するため、鋭意検討を重ねた。この結果、2種類以上の原料ガスのうち、分解温度が相対的に低い低温分解原料ガスが流通する原料ガス供給ラインを、他の原料ガス供給ラインとの間で断熱する断熱構造を採用することで、低温分解原料ガスを、凝縮温度以上かつ分解温度以下の温度に独立して保持するか、又は、反応に最適化された分子形態と取り得る温度範囲に独立して保持しつつ、基板上に供給できることを知見した。これにより、HVPE装置を用いて半導体膜を成膜する場合においても、高純度のGaN層を高い成長速度で成膜できるとともに、別の反応炉に基板を入れ替えることなく、同一の反応炉内で、引き続いてP型ドーピング層を成長させることができることを見いだし、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の態様を包含する。
【0017】
請求項1に係る発明は、凝縮温度及び分解温度のうちの少なくとも何れかが異なる2種類以上の原料ガスを反応炉内に導入し、前記反応炉内に設置した基板を前記原料ガスの分解温度以上に加熱することで、前記基板上に半導体膜を成長させる気相成長装置であって、反応炉内に配置され、前記基板を保持するサセプタと、前記サセプタを加熱する加熱器と、前記反応炉内に配置され、前記原料ガスを前記基板上まで導くフローチャンネルと、前記フローチャンネルに接続されるとともに、2種類以上の前記原料ガスを個別に噴出する複数の噴出口を有し、前記フローチャンネル内に向けて前記原料ガスを噴出する集合配管部と、前記集合配管部に前記原料ガスを供給するガス供給部と、を備え、前記ガス供給部、前記集合配管部及び前記フローチャンネルは、前記2種類以上の原料ガスのうち、分解温度が相対的に低い低温分解原料ガスが流通する原料ガス供給ラインを、他の原料ガス供給ラインとの間で断熱する断熱構造を有し、前記低温分解原料ガスを、凝縮温度以上かつ分解温度以下の温度に独立して保持するか、又は、反応に最適化された分子形態となる温度範囲に独立して保持しつつ、前記基板上に供給することを特徴とする気相成長装置である。
【0018】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の気相成長装置であって、前記断熱構造が、下記(1)~(8)に示す構造の何れかであることを特徴とする気相成長装置である。
(1)前記低温分解原料ガスが流通する原料ガス供給ラインと、他の原料ガス供給ラインとの間に石英材を配置した構造。
(2)上記(1)における石英材の表面が不透明化された構造。
(3)上記(1)における石英材が不透明石英材である構造。
(4)前記低温分解原料ガスが流通する原料ガス供給ラインと、他の原料ガス供給ラインとの間に真空層を配置した構造。
(5)前記低温分解原料ガスが流通する原料ガス供給ラインと、他の原料ガス供給ラインとの間にガス流層を配置した構造。
(6)前記低温分解原料ガスが流通する原料ガス供給ラインと、他の原料ガス供給ラインとの間に、少なくとも窒化ボロン(BN)、炭化タンタル(TaC)、モリブデン(Mo)又はタングステン(W)の何れかを含む、耐熱性を有する高反射率材を配置した構造。
(7)前記低温分解原料ガスが流通する原料ガス供給ライン、及び、他の原料ガス供給ラインを含む各流路の間に空間を配置した構造。
(8)上記(1)~(7)に示す断熱構造を少なくとも2以上で組み合わせた構造。
【0019】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の気相成長装置であって、前記原料ガスが前記基板上を通過する平均通過時間が、前記基板に4inch基板を用い、且つ、前記基板の中心を含む直径方向で前記原料ガスが通過する条件で、0.2秒以下であることを特徴とする気相成長装置である。
【0020】
また、請求項4に係る発明は、請求項1~請求項3の何れか一項に記載の気相成長装置であって、前記基板の外周上における回転速度を付加した前記原料ガスの相対流速が0.8m/s以上であることを特徴とする気相成長装置である。
【0021】
また、請求項5に係る発明は、請求項1~請求項4の何れか一項に記載の気相成長装置であって、さらに、前記反応炉内を減圧する減圧機構を備えることを特徴とする気相成長装置である。
【0022】
また、請求項6に係る発明は、請求項1~請求項5の何れか一項に記載の気相成長装置であって、前記フローチャンネルは、前記基板の成長面に対して平行に前記原料ガスを供給したときに、該原料ガスの流れを規制する、前記基板の成長面と面一に配置される底面と、該底面と対向して配置される天井面と、前記底面と前記天井面とを繋ぐように配置される側面とを有し、前記底面から前記天井面までの高さが9mm以下であることを特徴とする気相成長装置である。
【0023】
また、請求項7に係る発明は、請求項1~請求項6の何れか一項に記載の気相成長装置であって、前記加熱器が、電気ヒータ、及び、高周波誘導式加熱器のうちの何れか一方又は両方であることを特徴とする気相成長装置である。
【0024】
また、請求項8に係る発明は、請求項1~請求項7の何れか一項に記載の気相成長装置であって、前記サセプタは、前記基板を水平に保持し、前記集合配管部は、前記フローチャンネルを介して、前記基板に向けて、前記原料ガスを水平方向で噴出することを特徴とする気相成長装置である。
【0025】
また、請求項9に係る発明は、請求項1~請求項8の何れか一項に記載の気相成長装置であって、前記原料ガスが、有機金属化合物であるトリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルインジウム(TMIn)、及びトリエチルガリウム(TEGa)、又は、金属塩化物である一塩化ガリウム(GaCl)、三塩化ガリウム(III)(GaCl3)、一塩化アルミニウム(AlCl)、三塩化アルミニウム(AlCl3)、一塩化インジウム(InCl)、及び三塩化インジウム(InCl3)のうちから選ばれる少なくとも何れかを含むことを特徴とする気相成長装置である。
【0026】
また、請求項10に係る発明は、請求項1~請求項9の何れか一項に記載の気相成長装置であって、前記原料ガスが、少なくともアンモニア(NH3)を含むことを特徴とする気相成長装置である。
【0027】
また、請求項11に係る発明は、請求項1~請求項10の何れか一項に記載の気相成長装置であって、前記原料ガスが、少なくとも酸素(O2)を含むことを特徴とする気相成長装置である。
【0028】
また、請求項12に係る発明は、請求項1~請求項11の何れか一項に記載の気相成長装置であって、前記原料ガスが、前記低温分解原料ガスとして、ドーピング原料であるビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(Cp2Mg)を含むことを特徴とする気相成長装置である。
【0029】
また、請求項13に係る発明は、請求項1~請求項11の何れか一項に記載の気相成長装置であって、前記原料ガスが、前記低温分解原料ガスとして、ドーピング原料であるビス(シクロペンタジエニル)鉄(Cp2Fe)を含むことを特徴とする気相成長装置である。
【0030】
また、請求項14に係る発明は、請求項1~請求項11の何れか一項に記載の気相成長装置であって、前記原料ガスが、前記低温分解原料ガスとして、ドーピング原料である水素化ゲルマニウム(GeH4)を含むことを特徴とする気相成長装置である。
【0031】
請求項15に係る発明は、請求項1~請求項14の何れか一項に記載の気相成長装置を用いて、凝縮温度及び分解温度の少なくとも何れかが異なる2種類以上の原料ガスを反応炉内に導入し、前記反応炉内に設置した基板を前記原料ガスの分解温度以上に加熱することで、前記基板上に半導体膜を成膜することを特徴とする気相成長方法である。
【0032】
また、請求項16に係る発明は、請求項15に記載の気相成長方法であって、前記基板上に成膜する前記半導体膜が、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、及び窒化インジウム(InN)のうちの何れか1種からなる成長膜であることを特徴とする気相成長方法である。
【0033】
また、請求項17に係る発明は、請求項15に記載の気相成長方法であって、前記基板上に成膜する前記半導体膜が、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、及び窒化インジウム(InN)の混合物からなる成長膜であることを特徴とする気相成長方法である。
【0034】
また、請求項18に係る発明は、請求項15に記載の気相成長方法であって、前記基板上に成膜する前記半導体膜が、次式{Ga2O5}で表される酸化ガリウム結晶、酸化アルミニウム(AlO)又は次式{AlGaOx(但し、xは任意の整数)}で表される酸化ガリウムアルミニウムからなる成長膜であることを特徴とする気相成長方法である。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る気相成長装置によれば、上記構成により、低温分解原料ガスを、凝縮温度以上かつ分解温度以下の温度に独立して保持するか、又は、反応に最適化された分子形態と取り得る温度範囲に独立して保持しつつ、基板上に供給できる。これにより、HVPE法によって半導体膜を成膜する場合においても、高純度のGaN層を高い成長速度で成膜できるとともに、別の反応炉に基板を入れ替えることなく、引き続いてP型ドーピング層を成長させることができる。従って、GaN層を成膜した後、同一の反応炉内でP型ドーピング層を形成できるので、PN接合特性に優れる半導体膜を、優れた生産性及び低コストで成膜することが可能になる。
【0036】
また、本発明に係る気相成長方法によれば、上記構成を備える本発明に係る気相成長装置を用いて基板上に半導体膜を成膜する方法なので、上記同様、HVPE法による半導体膜の成膜プロセスにおいて、高純度のGaN層を高い成長速度で成膜できるとともに、同一の反応炉内でP型ドーピング層を成長させることができる。従って、PN接合特性に優れる半導体膜を、優れた生産性及び低コストで成膜することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の第1の実施形態である気相成長装置及び気相成長方法について模式的に説明する図であり、気相成長装置の概略構成を側面側から示す断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態である気相成長装置及び気相成長方法について模式的に説明する図であり、
図1中に示したフローチャンネルの平面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態である気相成長装置及び気相成長方法について模式的に説明する図であり、気相成長装置の概略構成を側面側から示す断面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態である気相成長装置及び気相成長方法について模式的に説明する図であり、気相成長装置の概略構成を側面側から示す断面図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態である気相成長装置及び気相成長方法について模式的に説明する図であり、
図4中に示した気相成長装置を上面側から示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を適用した第1~3の実施形態である気相成長装置について、
図1~
図5を適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、その特徴をわかり易くするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0039】
図1及び
図2は、本発明の第1の実施形態である気相成長装置を模式的に説明する図で、
図1は気相成長装置の概略構成を側面側から示す断面図であり、
図2は
図1中に示したフローチャンネルの平面図である。
図3は、本発明の第2の実施形態である気相成長装置を模式的に説明する図であり、気相成長装置の概略構成を側面側から示す断面図である。
また、
図4及び
図5は、本発明の第3の実施形態である気相成長装置を模式的に説明する図で、
図4は気相成長装置の概略構成を側面側から示す断面図であり、
図5は気相成長装置を上面側から示す断面図である。
【0040】
なお、
図1~
図5に示す各気相成長装置においては、集合配管部、フローチャンネル、サセプタ、又は反応炉等、本発明の特徴を有する構成を示す一方、一般的な気相成長装置に備えられる他の構成、例えば、サセプタの駆動機構等については、その図示を省略していることがある。
また、
図1~
図5に示す例の各気相成長装置は、サセプタが基板を水平に保持し、集合配管部が、フローチャンネルを介して、基板に向けて原料ガスを水平方向で噴出する、所謂横型の気相成長装置とされている。
【0041】
<第1の実施形態>
以下に、第1の実施形態の気相成長装置1、及び、それを用いた気相成長方法について、
図1及び
図2を参照しながら詳しく説明する。
【0042】
[気相成長装置の構成]
図1に示した第1の実施形態の気相成長装置1は、基板80上に図視略の半導体薄膜を成長させるためのものである。本実施形態の気相成長装置1は、凝縮温度及び分解温度のうちの少なくとも何れかが異なる2種類以上の原料ガス(
図1中の符号G1,G2,G3を参照)を反応炉10内に導入し、反応炉10内に設置した基板80を原料ガスの分解温度以上に加熱することで、基板80上に半導体膜を成長させるものであり、集合配管部2、フローチャンネル3、サセプタ4、反応炉10を備えて概略構成される。また、
図1中では図示を省略しているが、本実施形態の気相成長装置1には、集合配管部2に向けて複数の原料ガスを供給するためのガス供給部が備えられ、これら複数の原料ガスが、それぞれ、ガス供給部(
図1中の符号51,52,53を参照)によって集合配管部2に導入される。
【0043】
より詳しくは、本実施形態の気相成長装置1は、反応炉10内に、基板80を保持するサセプタ4と、反応炉10内に配置されて原料ガスG1,G2,G3を基板80上まで導くフローチャンネル3と、フローチャンネル3内に向けて原料ガスを噴出する集合配管部2と、集合配管部2に向けて原料ガスG1,G2,G3を導入するガス供給部51,52,53とが配置される。また、反応炉10の外側には、サセプタ4を加熱する加熱器45が設けられているとともに、ガス供給部52及び原料発生室55を加熱するための加熱器56が設けられている。また、複数のガス供給部51,52,53は、それぞれ集合配管部2に接続されている。
【0044】
そして、気相成長装置1は、複数のガス供給部51,52,53、集合配管部2及びフローチャンネル3が、複数の原料ガスG1,G2,G3のうち、分解温度が相対的に低い低温分解原料ガス(原料ガス)G3が流通する原料ガス供給ラインL3を、他の原料ガス供給ラインL1,L2との間で断熱する断熱構造を有する。図示例においては、低温分解原料ガスG3が流通する原料ガス供給ラインL3と、他の隣接する原料ガス供給ラインL2との間に石英材が配置されている。
気相成長装置1は、上記の断熱構造を有することにより、低温分解原料ガスG3を、凝縮温度以上かつ分解温度以下の温度に独立して保持するか、あるいは、反応に最適化された分子形態となる温度範囲に独立して保持しつつ、基板80上に供給する。
以下、気相成長装置1の各構成要素について詳述する。
【0045】
反応炉10は、側壁11と、上流側フランジ12と、下流側フランジ13とにより、略円筒形の密閉容器を形成している。即ち、反応炉10は、気相成長装置1の筐体としても機能するものであり、例えば、石英材からなる円筒管等から構成される。また、図示例では、反応炉10の下流側と、下流側フランジ13と間に接続管15が介在されている。また、反応炉10の内部には、例えば、パージガスとして窒素(N2)ガスが封入される。
【0046】
また、反応炉10の下流側に配置された接続管15における下流側フランジ13の近傍には、例えば、余剰の原料ガス等を外部に向けて排気できる排気ポート14が設けられており、
図1中に示す例では、図中の下方に向かって開口するように設けられている。本実施形態の気相成長装置1に備えられる排気ポート14は、基板80の成長面80aよりも下方に配置され、原料ガス等を下方に向けて排気できるように構成されている。
【0047】
なお、以下の説明においては、反応炉10内における、その長手方向の位置を説明するにあたり、便宜上、原料ガスの流れ方向の上流を、単に「反応炉10の上流(又は前方)」、原料ガスの流れ方向の下流を、単に「反応炉10の下流(又は後方)」と称する場合がある。
また、反応炉10内において、複数のガス供給部51,52,53は上流側(
図1中における左側)に配置され、サセプタ4は下流側(
図1中における右側)に配置される。
【0048】
なお、反応炉10は、円筒形のものには限定されず、原料ガスの流れが層流をなして基板80の成長面80a上に到達し、且つ、反応炉10の外側に配置された加熱器45,56による加熱効率が確保できる形状であればよく、例えば、四角形の筒形状等であってもよい。
【0049】
また、反応炉10の材料としては、特に限定されないが、例えば、耐熱性及び耐腐食性を有する材料、具体的には石英材料等から構成することが好ましい。反応炉10を耐熱性及び耐腐食性を有する材料から構成することで、反応炉10が破損するのを極力抑制することが可能になるとともに、内部で成膜する半導体膜の膜質を向上させることも可能になる。
【0050】
サセプタ4は、基板80が載置され、該基板80を回転させるものであり、反応炉10内における下流側に、回転軸41によって支持されている。
サセプタ4は、通常、熱の良導体(例えば、カーボン等)で形成され、さらに好適には、原料ガスによる腐食を防止する観点から、SiC等のコーティングが施される。また、サセプタ4は、気相成長する薄膜の膜厚の平均化を図るため、図視略のモータによる駆動に伴って回転可能に構成されている。
【0051】
また、反応炉10の外側には、上述した加熱器45が、サセプタ4を加熱できる位置で、反応炉10を取り巻くように設けられている。
また、サセプタ4の回転軸41の一端には、図視略のかさ歯車が取り付けられており、その他端には、図示略のモータが取り付けられ、このモータの駆動によって回転軸41が回転するように構成されている。従って、回転軸41の回転に伴い、かさ歯車も回転することになる。一方、回転軸41、図視略のかさ歯車及びモータは一体とされ、回転軸41の軸方向に一定距離で摺動して移動することが可能に構成されており、
図1中に示したサセプタ4の位置において、かさ歯車が、サセプタ4の下面に設けられた図視略の複数の歯と嵌合するように構成されている。従って、当該位置においてモータが駆動されると、回転軸41及びかさ歯車を介してサセプタ4が回転することになる。
【0052】
また、サセプタ4は、上面4a上に載置して保持される基板80の上流側端部が、詳細を後述するフローチャンネル3の出口側から若干離間するように配置されている。
【0053】
サセプタ4の平面視サイズは、薄膜を成長させる基板80のサイズによって決定することができるが、例えば、大径のサセプタ4を用いたうえで、この上に複数の小径基板を載置して、複数の小径基板の各々に薄膜を成長させることも可能である。
【0054】
フローチャンネル3は、反応炉10内において、詳細を後述する集合配管部2から噴出された原料ガスG1,G2,G3を、基板80の成長面80aに平行な方向で供給するものである。フローチャンネル3は、反応炉10内において、図視略の架台に支持固定されている。また、フローチャンネル3の上流開口端3aは、後述する集合配管部2の噴出口21,22,23と接続されている。
【0055】
本実施形態の気相成長装置1に備えられるフローチャンネル3は、
図2の平面図に示すように、上流開口端3a側から、即ち、原料ガスの流れ方向における上流側から、下流側に向かうに従って、基板80の平面方向で漸次拡開するように構成されている。
また、フローチャンネル3の材質としては、特に限定されないが、例えば、耐熱性及び耐腐食性を有する石英等が好適に用いられる。
【0056】
また、本実施形態のフローチャンネル3は、詳細を後述する集合配管部2から噴出する原料ガスG1,G2,G3を、サセプタ4に保持された基板80の成長面80a上に向けて、それぞれ個別に供給する複数の原料ガス供給ラインL1,L2,L3を有している。これら原料ガス供給ラインL1,L2,L3は、概略で断面矩形状とされ、基板80の平面方向に対して直交する方向で積層されており、図示例では、図中における下側から、第1原料ガス供給ラインL1、第2原料ガス供給ラインL2、第3原料ガス供給ラインL3の順で積層された3層構造とされている。また、これら原料ガス供給ラインL1,L2,L3は、それぞれ、後述の集合配管部2内やガス供給部51,52,53内の原料ガス供給ラインL1,L2,L3と連通している。そして、フローチャンネル3は、原料ガス供給ラインL1,L2,L3に開口した噴出口31,32,33から、それぞれ、原料ガスG1,G2,G3を個別に噴出する。本実施形態においては、詳細を後述するガス供給部51,52,53から供給されるそれぞれのガス種により、原料ガス供給ラインL1に開口した噴出口31から原料ガスG1が噴出され、原料ガス供給ラインL2に開口した噴出口32から原料ガスG2が噴出され、また、原料ガス供給ラインL3に開口した噴出口33から原料ガスG3が噴出される。
【0057】
なお、フローチャンネル3と後述の集合配管部2との接続方法としては、フローチャンネル3に備えられるフランジ36と、集合配管部2に備えられるフランジ26とを互いに対向させ、図視略のボルトでねじ留めするか、あるいは、溶接する方法を採用できる。
【0058】
フローチャンネル3を、上記のような複層構造(図示例では3層の積層構造)とすることで、フローチャンネル3内において、ガス種の異なる原料ガス同士が混じり合うのを防止できる。即ち、例えば、アンモニア(NH3)等のV族原料ガスを含む原料ガスと、Ga等の有機金属材料を含む原料ガスとが、フローチャンネル3から噴出される前に、フローチャンネル3内で混じり合ってしまうのを防止できるので、薄膜の成長効率が低下するのを抑制できる。
【0059】
フローチャンネル3は、例えば、石英材からなる板材を用い、上板と底板との間に仕切り板を計2枚配置し、この仕切り板を側壁に溶接することで作製することができる。
【0060】
集合配管部2は、反応炉50内において、複数の噴出口21,22,23から原料ガスG1,G2,G3を噴出することで、フローチャンネル3の上流開口端3aから、フローチャンネル3の内部に向けて原料ガスG1,G2,G3を導入する。また、
図1に示す例の集合配管部2も、上述したフローチャンネル3と同様、内部に第1原料ガス供給ラインL1、第2原料ガス供給ラインL2、及び第3原料ガス供給ラインL3を有し、これらが、基板80の平面方向に対して直交する方向で順次積層された3層構造とされている。また、これら原料ガス供給ラインL1,L2,L3は、それぞれ、フローチャンネル3や後述のガス供給部51,52,53内の原料ガス供給ラインL1,L2,L3と連通している。そして、集合配管部2は、原料ガス供給ラインL1,L2,L3に開口した複数の噴出口21,22,23から、フローチャンネル3に向けて、それぞれ、原料ガスG1,G2,G3を個別に噴出する。本実施形態においては、上記同様、第1原料ガス供給ラインL1に開口した第1噴出口21から原料ガスG1を噴出し、第2原料ガス供給ラインL2に開口した第2噴出口22から原料ガスG2を噴出し、また、第3原料ガス供給ラインL3に開口した第3噴出口23から原料ガスG3を噴出する。
【0061】
集合配管部2を、上記のような複層構造(図示例では3層の積層構造)とすることで、上述したフローチャンネル3の場合と同様、集合配管部2内において、ガス種の異なる原料ガス同士が混じり合うのを防止できる。即ち、例えば、アンモニア(NH3)等のV族原料ガスを含む原料ガスと、Ga等の有機金属材料を含む原料ガスとが、集合配管部2から噴出される前に、集合配管部2内で混じり合ってしまうのを防止できるので、薄膜の成長効率が低下するのを抑制できる。
【0062】
集合配管部2の材料としては、特に限定されないが、例えば、耐熱性を有するブロック状の金属材等から構成することができる。
【0063】
ガス供給部51,52,53は、上述したように、凝縮温度及び分解温度のうちの少なくとも何れかが異なる2種類以上の原料ガスを集合配管部2に向けて供給するものである。本実施形態で説明する例では、第1ガス供給部51が原料ガスG1を供給し、第2ガス供給部52が原料ガスG2を生成させる塩化水素(HCl)を供給し、また、第3ガス供給部53が原料ガスG3を供給する。即ち、第1ガス供給部51が、原料ガスG1が流通する第1原料ガス供給ラインL1であり、第2ガス供給部52が、原料ガスG2を生成及び流通させる第2原料ガス供給ラインL2であり、また、第3ガス供給部53が、原料ガスG3が流通する第3原料ガス供給ラインL3である。
また、複数のガス供給部51,52,53は、各々、上流側フランジ12を貫通するように設けられる。
【0064】
第1ガス供給部51は、半導体膜原料として、例えば、V属原料ガスであるアンモニア(NH3)を含む原料ガスG1を供給するものであり、キャリアガスとして、一般に、水素(H2)及び窒素(N2)を用いた混合ガスが用いられる。これらのNH3ガス、H2ガス及びN2ガスは、反応炉10の外部に配置された図視略のタンクから、第1ガス供給部51の入口51aに導入され、出口側から集合配管部2に向けて供給する。上記のようなアンモニア(NH3)を含むガスを用いることで、GaNからなる半導体膜の成膜が可能になる。
一方、酸化アルミニウム(AlO)からなる半導体膜を成膜する場合には、原料ガスG1に、NH3ガスに代えて、酸素(O2)を含むものを用いる。
上記のような第1ガス供給部51には、一般的な配管部材を用いることが可能である。
【0065】
第2ガス供給部52は、半導体膜原料として、例えば、有機金属化合物であるトリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルインジウム(TMIn)、及びトリエチルガリウム(TEGa)、又は、金属塩化物である一塩化ガリウム(GaCl)、三塩化ガリウム(III)(GaCl3)、一塩化アルミニウム(AlCl)、三塩化アルミニウム(AlCl3)、一塩化インジウム(InCl)、及び三塩化インジウム(InCl3)のうちから選ばれる少なくとも何れかを含む原料ガスG2を生成・供給するために備えられる。
【0066】
第2ガス供給部52は、
図1中に示すように、第2原料ガス供給ラインL2中に含まれる原料発生室55に対して、例えば、一塩化ガリウムの原料となる塩化水素ガスを供給する。原料発生室55内には、基板80の成長面80aにGaNからなる半導体膜を成長させる場合、液体ガリウム(Ga)を収容した容器55aが設置される。
そして、第2ガス供給部52は、入口52aより塩化水素(HCl)ガスを導入し、出口52bから原料発生室55内に吐出することで、この原料発生室55内において液体ガリウムとHClとを反応させる。このとき、原料発生室55内は、反応炉10の外側に配置された加熱器56によって加熱される。これにより、原料発生室55内で、半導体膜原料である一塩化ガリウム(GaCl)を生成させ、出口側から集合配管部2に向けて供給する。
【0067】
ここで、例えば、基板80の成長面80aに窒化アルミニウム(AlN)からなる半導体膜を成膜する場合、原料発生室55には、固体アルミニウム(Al)を収容する容器55aが設置される。
【0068】
第3ガス供給部53は、複数の原料ガスのうち、分解温度が相対的に低い低温分解原料ガス(原料ガス)G3を供給するものである。このような、低温分解原料ガスG3としては、例えば、成膜する半導体膜にドーピングを行うドーピング原料が挙げられ、具体的には、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(Cp2Mg)、ビス(シクロペンタジエニル)鉄(Cp2Fe)、又は水素化ゲルマニウム(GeH4)等の有機金属化合物を含むガスが挙げられる。また、低温分解原料ガスG3は、上記のような有機金属化合物に加え、キャリアガスとして水素(H2)や窒素(N2)が加えられた混合ガスとされる。
【0069】
第3ガス供給部53は、上記のような混合ガスが、反応炉10の外部に配置された図視略のタンクから、第3ガス供給部53の入口53aに導入され、出口側から集合配管部2に向けて供給する。
上記のような第3ガス供給部53にも、一般的な配管部材を用いることが可能である。
【0070】
なお、サセプタ4及び基板80を加熱するための加熱器45としては、特に限定されず、従来からこの分野で用いられている電気ヒータ、又は、高周波誘導式加熱器のうちの何れか一方を採用することができ、また、両方を併用してもよい。
また、ガス供給部52及び原料発生室55を加熱するための加熱器56としても、加熱器45と同様の加熱手段を何ら制限無く採用することができる。
【0071】
そして、本実施形態の気相成長装置1においては、分解温度が相対的に低い低温分解原料ガス(原料ガス)G3が流通する第2原料ガス供給ラインL3と、原料ガスG1,G2が流通する他の原料ガス供給ラインL1,L2との間が断熱構造とされており、具体的には、これらの間に石英材6が配置されている。これにより、気相成長装置1は、低温分解原料ガスG3を、凝縮温度以上かつ分解温度以下の温度に独立して保持しながら、基板80の成長面80a上に供給する。また、低温分解原料ガスG3が上記の温度範囲に保持された場合には、低温分解原料ガスG3が、反応に最適化された分子形態となる温度範囲に独立して保持される。
【0072】
図1に示す気相成長装置1においては、第1原料ガス供給ラインL3と他の原料ガス供給ラインL1,L2との間の断熱構造を、下記(1)に示すような石英材6からなる断熱部材を配置して構成しているが、本実施形態の断熱構造は、この構成に限定されるものではない。本実施形態においては、詳細な図示は省略するが、例えば、下記(2)~(8)に示す構造の何れかを採用することも可能である。
(1)低温分解原料ガスG3が流通する第3原料ガス供給ラインL3と、他の原料ガス供給ラインL1,L2との間に石英材を配置した構造。
(2)上記(1)における石英材6の表面が不透明化された構造。
(3)上記(1)における石英材6が不透明石英材である構造。
(4)低温分解原料ガスG3が流通する第3原料ガス供給ラインL3と、他の原料ガス供給ラインL1,L2との間に真空層を配置した構造(
図4に示した第3の実施形態に係る気相成長装置1Bに備えられる真空層24を参照)。
(5)低温分解原料ガスG3が流通する第3原料ガス供給ラインL3と、他の原料ガス供給ラインL1,L2との間にガス流層(図視略)を配置した構造。
(6)低温分解原料ガスG3が流通する第3原料ガス供給ラインL3と、他の原料ガス供給ラインL1,L2との間に、少なくとも窒化ボロン(BN)、炭化タンタル(TaC)、モリブデン(Mo)又はタングステン(W)の何れかを含む、耐熱性を有する高反射率材を配置した構造(
図4に示した第3の実施形態に係る気相成長装置1Bに備えられる高反射率材25を参照)。
(7)低温分解原料ガスG3が流通する第3原料ガス供給ラインL3、及び、他の原料ガス供給ラインL2,L3を含む各流路の間に空間(図視略)を配置した構造。
(8)上記(1)~(7)に示す断熱構造を少なくとも2以上で組み合わせた構造。
【0073】
本実施形態の気相成長装置1のようなHVPE装置を用いて基板80上に半導体膜を成膜する際に、供給温度が大きく異なる複数の原料ガスを反応炉10内に導入するための断熱構造としては、材料として、耐熱性、塩化物と反応し難い安定性、断熱性及び反射性を有し、さらに、良好な密閉性が得られる複雑な形状を形成できるものを選択する必要がある。これらの各条件を満たす材料として石英が挙げられる。
【0074】
例えば、石英材料を用いて、基板80に対して水平な方向から複数の原料ガスを分離供給する形状でフローチャンネル3を作製した場合、一塩化ガリウム(GaCl)の供給温度(800℃)と、Cp2Mgの供給可能温度(100℃以下)とを、定常状態で両立させるためには、各々の原料ガス供給ラインの間の仕切り部材となる石英材6の厚みを大きくすることが考えられる。しかしながら、このような場合には、石英材6の厚みを相当に大きくする必要があることから、基板80に対して複数の原料ガスを同時に供給できる形状・構造を形成することが難しくなる。また、上記の温度帯域における熱伝達形態は、熱伝導が主となるが、輻射熱の影響も無視できない。
【0075】
このため、供給温度が大きく異なる原料ガスの各供給ライン間で生じる熱伝導を低減させ、フローチャンネル3における各供給ライン間の仕切りとなる石英材6の厚みが増大するのを抑制するためには、石英材料の中でも特に熱伝導率が低い発泡石英を採用することが好ましい。これにより、一般的な石英材料に対して熱伝導率が半減するので、石英材6の厚みも半分程度に抑制することが可能になる。
【0076】
さらに、石英材6を2枚重ねて配置し、それらの間に窒素(N2)や水素(H2)等のパージガスを流通させる構成を採用してもよいし、さらに、パージガスを流通させる位置で、フローチャンネルが各原料ガス供給ライン単位で分割された構造を採用することも、断熱の観点からより効果的である。この場合、パージガスに用いるN2や水素H2の熱伝導率は、石英の熱伝導率の1/10~1/20程度であるため、仕切り部分の厚みも、パージガスを用いない場合に比べて1/10~1/20程度に薄く構成することができる。
さらに、上記同様に石英材6を2枚重ねて配置し、それらの間を真空密封した場合には、熱伝導率はほぼ0(ゼロ)となる。
【0077】
また、輻射熱による熱伝達を抑制するためには、透明な石英材6の表面を砂目加工して不透明としたものを用いることも効果的である。
さらに、上記同様に石英材6を2枚重ねて配置し、それらの間に、例えば、窒化ボロン(BN)、炭化タンタル(TaC)、モリブデン(Mo)又はタングステン(W)の何れかを含む、耐熱性を有する高反射率材を配置した構造を採用することで、輻射熱の影響をより効果的に抑制できる(後述の第3の実施形態における気相成長装置1Bの説明も参照)。
【0078】
一方、同じ形状の原料ガス供給ライン同士で比較した場合、例えば、各原料ガスが熱平衡にならない程度にガス流速を上げることで、低温分解原料ガスG3を、他の原料ガスG1,G2からの熱影響を受けにくい状態で、基板80の近傍に供給できる。
そこで、本発明者等が、装置形状や原料ガスの流通条件について鋭意検討した結果、以下のような形態が最も好ましいことを見いだした。
【0079】
まず、装置形状としては、上述した複層構造とされたフローチャンネル3における各層、即ち、各々の噴出口31,32,33の高さ寸法を、石英材料の加工可能な範囲で最小とすることが好ましい。
ここで、
図1中では詳細な符号の付与を省略しているが、フローチャンネル3内における各々の原料ガス供給ラインL1,L2,L3は、それぞれ、底面と対向して配置される天井面と、底面と天井面とを繋ぐように配置される、それぞれ対向した側面とを有し、さらに、上記の各噴出口31,32,33が開口している。そして、上記のように構成されたフローチャンネル3において、基板80の成長面80aに対して平行に原料ガスG1,G2,G3を供給したときに、これら原料ガスG1,G2,G3の流れを規制する、基板80の成長面80aと面一に配置される底面から天井面までの高さが9mm以下であることが好ましい。
【0080】
また、原料ガスの流通条件としては、各々の原料ガスG1,G2,G3が基板80上を通過する平均通過時間が、基板80に4inch基板を用い、且つ、基板80の中心を含む直径方向で原料ガスG1,G2,G3が通過する条件で、0.2秒以下となるように調整することが好ましい。
また、基板80の外周上における回転速度を付加した原料ガスの相対流速が0.8m/s以上となるように調整することが好ましい。
また、上記の条件を効率よく達成するため、フローチャンネルの外枠の一部を、基板80上から下流側まで延設した構成を採用することも可能である(例えば、
図4中に示すフローチャンネル3Bの第2フローチャンネル35を参照)。
【0081】
上記のように、原料ガスの相対流速を0.8m/s以上に調整し、且つ、4inch基板に対して平行(水平方向)に原料ガスG1,G2,G3を供給する場合、上流側端部から下流側端部に到達する平均通過時間は0.2秒以下になる。原料ガスの流通条件を上記のように調整することで、半導体膜に対するP型ドーピングを効果的に行うことができるとともに、複数の異種原料ガスの切り替えによる、膜界面の切り替えもすばやく行うことができるという効果が得られる。
【0082】
本実施形態の気相成長装置1においては、特に、原料ガスの相対流速や平均通過時間を上記の範囲に制御する場合に、さらに、反応炉10内を減圧する図視略の減圧機構を備えることがより好ましい。このような減圧機構を備えることで、原料ガスの相対流速を容易に増加させることが可能になる。さらに、減圧機構を用いて反応炉10内を減圧することで、装置内の全体的な熱伝導率も低下するので、断熱効果がより顕著に得られる。
【0083】
なお、
図1中に示すような集合配管部2及びフローチャンネル3は、構造が複雑になるため、集合配管部2とフローチャンネル3とを別々に作製したうえで、上述のように、フランジ36とフランジ26とをボルト締めすること等で一体化したものであってもよい。
【0084】
<気相成長方法(気相成長装置を用いた半導体の製膜プロセス)>
本実施形態の気相成長方法、即ち、上記構成の気相成長装置1を用いた、半導体膜の製膜プロセスの一例について、以下に説明する。
本実施形態の気相成長方法は、気相成長装置1を用いて、凝縮温度及び分解温度の少なくとも何れかが異なる2種類以上の原料ガスを反応炉10内に導入し、反応炉10内に設置した基板80を原料ガスの分解温度以上に加熱することで、基板80上に半導体膜を成膜する方法である。
なお、以下においては、基板80の成長面80a上にGaNからなる半導体膜を成膜する例を挙げて説明する。
【0085】
まず、反応炉10内に設置されたサセプタ4を加熱器45によって加熱することにより、サセプタ4に保持された基板80を所定の温度に加熱維持した状態とする。このとき、反応炉10の炉内雰囲気も、加熱器45により、例えば、1100℃の温度に加熱した状態とする。
【0086】
次いで、第1ガス供給部51に、反応炉10の外部に配置された図視略のタンクから、アンモニア(NH3)、水素(H2)及び窒素(N2)の混合ガスを導入し、この混合ガスを原料ガスG1として、第1ガス供給部51の出口側から集合配管部2に向けて供給する。この原料ガスG1の温度は、例えば60℃とする。
また、第2ガス供給部52に、反応炉10の外部に配置された図視略のタンクから、塩化水素(HCl)ガスを導入し、原料発生室55内において、容器55aに収容された液体ガリウムとHClとを、加熱器56によって加熱しながら反応させ、一塩化ガリウム(GaCl)を生成させる。そして、この塩化ガリウムを原料ガスG2として、出口側から集合配管部2に向けて供給する。この原料ガスG2の温度は、例えば800℃とする。
また、第3ガス供給部53に、反応炉10の外部に配置された図視略のタンクから、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(Cp2Mg)に水素(H2)又は窒素(N2)が加えられた混合ガスを導入し、この混合ガスを、低温分解原料ガス(原料ガス)G3として、第3ガス供給部53の出口側から集合配管部2に向けて供給する。この低温分解原料ガスG3の温度は、例えば、20℃とする。
なお、各々の原料ガスG1,G2,G3の供給タイミングは、以下に説明するように、適宜、調整する。
【0087】
まず、集合配管部2からフローチャンネル3に向けて原料ガスG1,G2を導入することで、フローチャンネル3内の第1,第2原料ガス供給ラインL1,L2を通過した原料ガスG1,G2を、それぞれ第1,第2噴出口31,32から噴出させ、基板80の成長面80a上に向けて供給する。この際、基板80の成長面80a上に到達した原料ガスG1,G2が、加熱器45の加熱作用によって高温に加熱されたサセプタ4上で熱分解し、この分解したガス分子を、サセプタ4の回転に伴って回転する基板80の成長面80a上に堆積させることで、GaNからなる半導体膜を成膜する。
【0088】
引き続き、集合配管部2からフローチャンネル3に向けて低温分解原料ガスG3を導入することで、フローチャンネル3内の第3原料ガス供給ラインL3を通過した低温分解原料ガスG3を第3噴出口33から噴出させ、基板80の成長面80a上に向けて供給する。基板80の成長面80a上に到達した原料ガスG3も、上記同様、加熱器45の加熱作用によって高温に加熱されたサセプタ4上で熱分解し、この分解したガス分子が、基板80の成長面80a上に成膜したGaNからなる半導体膜上に堆積することで、P型ドーピング層を形成できる。
【0089】
基板80の成長面80a上を通過した余剰の原料ガスG1,G2,G3等は、反応炉10の排気ポート14から、図視略の排気手段により、外部に排出される。
【0090】
本実施形態の気相成長方法によれば、上述した気相成長装置1を用いて基板80上に半導体膜を成膜する方法なので、低温分解原料ガスG3が流通する第3原料ガス供給ラインL3と、他の原料ガス供給ラインL1,L2とが断熱されている。これにより、低温分解原料ガスG3が基板80上に到達する前に分解するのを防止できるので、HVPE装置を用いて高純度のGaN層を高い成長速度で成膜できるとともに、同一の反応炉内で、引き続いてP型ドーピング層を成長させることが可能になる。
【0091】
なお、上記説明においては、基板80上にGaNからなる半導体膜を成膜する方法を例に挙げているが、本実施形態の気相成長方法で成膜する半導体膜は、GaNには限定されない。
例えば、窒化アルミニウム(AlN)、又は窒化インジウム(InN)からなる半導体膜を基板80上に成膜することもできる。このような場合には、例えば、原料発生室55内にアルミニウム又はインジウムからなる固体材料を収容することで、原料ガスG2の組成を変更し、所望の組成を有する半導体膜を成膜することができる。
あるいは、ガス供給部をさらに増設することで原料ガスを多種に拡充し、例えば、GaN、AlN及びInNの混合物からなる成長膜として、基板80上に半導体膜を成膜してもよい。
【0092】
また、基板80上に成膜する半導体膜は、次式{Ga2O5}で表される酸化ガリウム結晶からなる成長膜であってもよいし、酸化アルミニウム(AlO)からなる成長膜であってもよく、あるいは、次式{AlGaOx(但し、xは任意の整数)}で表される酸化ガリウムアルミニウムからなる成長膜であってもよい。
【0093】
ここで、Ga2O5成長膜からなる半導体膜を成膜する場合には、原料ガスG1として酸素(O2)を含むガスを用いればよい。
また、AlO成長膜からなる半導体膜を形成する場合には、原料ガスG1として酸素(O2)を含むガスを用いるとともに、原料発生室55内に固体アルミニウムを収容し、外部から供給されるHClと反応させてAlCl3を生成させ、これを原料ガスG2として用いればよい。
また、AlGaOx成長膜からなる半導体膜を成膜する場合には、原料ガスG1としてO2を含むガスを用いるとともに、ガス供給部52を2台設置し、それぞれの原料発生室55内に固体アルミニウム又は液体ガリウムを収容して、それぞれ、GaCl又はAlCl3を生成させ、これを原料ガスG2として用いればよい。
【0094】
[作用効果]
以上説明したような、本実施形態の気相成長装置1によれば、上記の各構成により、低温分解原料ガスG3を、凝縮温度以上かつ分解温度以下の温度に独立して保持するか、又は、反応に最適化された分子形態となる温度範囲に独立して保持しつつ、基板80上に供給できる。これにより、HVPE法によって半導体膜を成膜する場合においても、高純度のGaN層を高い成長速度で成膜できるとともに、別の反応炉に基板80を入れ替えることなく、引き続いてP型ドーピング層を成長させることができる。従って、GaN層を成膜した後、同一の反応炉10内でP型ドーピング層を形成できるので、PN接合特性に優れる半導体膜を、優れた生産性及び低コストで成膜することが可能になる。
【0095】
また、本実施形態の気相成長方法によれば、上記の各構成を備える本実施形態の気相成長装置1を用いて基板80上に半導体膜を成膜する方法なので、上記同様、HVPE法を用いた半導体膜の成膜プロセスにおいて、高純度のGaN層を高い成長速度で成膜できるとともに、同一の反応炉10内でP型ドーピング層を成長させることができる。従って、PN接合特性に優れる半導体膜を、優れた生産性及び低コストで成膜することが可能になる。
【0096】
<第2の実施形態>
以下に、第2の実施形態の気相成長装置1Aについて、
図3を参照しながら詳しく説明する。
なお、以下の説明においては、上述した第1の実施形態の気相成長装置1と同様の構成については、同じ符号を付与するとともに、その詳しい説明を省略することがある。
【0097】
図3に示すように、第2の実施形態の気相成長装置1Aは、複数のガス供給部のうち、低温分解原料ガスG3を供給する第3ガス供給部53Aが、反応炉10の長さ方向の概略中央における側壁11側に備えられ、石英材6がフローチャンネル3の位置にのみ設けられている点で、第1の実施形態の気相成長装置1とは異なる。
【0098】
第3ガス供給部53Aは、第1の実施形態で説明したような成分とされた、分解温度が相対的に低い低温分解原料ガス(原料ガス)G3が、反応炉10の外部に設けられた図視略のタンクから入口53aに導入され、出口側から集合配管部2に向けて低温分解原料ガスG3を供給する。
このような第3ガス供給部53Aにも、一般的な配管部材を用いることが可能である。
【0099】
第2の実施形態の気相成長装置1Aによれば、上記のように、複数のガス供給部のうち、第3ガス供給部53Aが、他のガス供給部51,52と離間した位置に配置されている。即ち、ガス流れの上流側において、低温分解原料ガスG3が流通する第3原料ガス供給ラインL3Aが、他の原料ガスG1,G2が流通する第1,第2原料ガス供給ラインL1,L2と熱的に分離された構成とされている。これにより、低温分解原料ガスG3を、より効果的に、凝縮温度以上かつ分解温度以下の温度に独立して保持するか、又は、反応に最適化された分子形態と取り得る温度範囲に独立して保持しつつ、基板80上に供給できる。従って、上記同様、GaN層を成膜した後、同一の反応炉10内で良好なP型ドーピング層を形成できるので、PN接合特性に優れる半導体膜を、生産性よく、且つ、低コストで成膜することが可能になる。
【0100】
なお、
図3中に示す集合配管部2及びフローチャンネル3も、上述した第1の実施形態の場合と同様、構造が複雑になるため、集合配管部2とフローチャンネル3とを別々に作製したうえで、フランジ36とフランジ26とをボルト締めすること等で一体化したものであってもよい。
【0101】
<第3の実施形態>
以下に、第3の実施形態の気相成長装置1Bについて、
図4及び
図5を参照しながら詳しく説明する。
なお、以下の説明においては、上述した第1,2の実施形態の気相成長装置1,1Aと同様の構成については、同じ符号を付与するとともに、その詳しい説明を省略することがある。
【0102】
図4に示すように、第3の実施形態の気相成長装置1Bは、まず、ガス供給部が、第1及び第2の実施形態のような、反応路内でHClと液体ガリウムとを反応させて一塩化ガリウム(GaCl)を生成する原料発生室を有していない点で、これら各実施形態の気相成長装置1,1Aとは異なる。
【0103】
また、本実施形態の気相成長装置1Bは、ノズル2B及びフローチャンネル3Bの全体が石英材から断熱構造とされている。これとともに、気相成長装置1Bは、複数のガス供給部51B,52B,53Bの各々の出口51b,52b,53bが、ノズル2B内に設けられる複数の原料ガス供給ラインL1B,L2B,L3B内に開口するように構成されている。また、本実施形態の気相成長装置1Bにおいては、ノズル2Bが、第1,2の実施形態で説明した集合配管部の機能を有している。
【0104】
また、ノズル2B及びフローチャンネル3Bにおいては、複数の原料ガス供給ラインL1B,L2B,L3Bのうち、低温分解原料ガスG3が流通する第3原料ガス供給ラインL3Bと、他の原料ガスG2が流通する第2原料ガス供給ラインL2Bとの間に、石英材で囲まれた空間からなる真空層24が配置され、この真空層24の内部に耐熱性を有する高反射率材25が設けられている。
【0105】
また、本実施形態の気相成長装置1Bは、反応炉10B内におけるサセプタ4に対応する位置で、サセプタ4を取り囲むように加熱器57が設けられている。さらに、気相成長装置1Bは、上流側フランジ12に、反応炉10Bの内部をパージガス(N2)で満たすための導入口12aが設けられている。
【0106】
また、気相成長装置1Bは、
図4及び
図5に示すように、フローチャンネル3Bが、第1フローチャンネル34と、第2フローチャンネル35とから構成される。より詳細には、気相成長装置1Bは、フローチャンネル3Bが、上流側から下流側に向かうに従って、基板80の平面方向で漸次拡開する形状を有する第1フローチャンネル34と、その下流に延設され、且つサセプタ4上に位置する第2フローチャンネル35とを有している点でも、第1及び第2の実施形態の気相成長装置1,1Aとは異なる。
【0107】
なお、第3の実施形態の気相成長装置1Bにおいても、反応炉10Bにおける下流側に配置された接続管15における下流側フランジ13の近傍に、余剰の原料ガス等を排気できる排気ポート14が設けられている。気相成長装置1Bにおいては、第1,2の気相成長装置1,1Aとは異なり、排気ポート14が基板80の成長面80aよりも上方に配置され、上方に向けて原料ガス等を排気できるように構成されている。
【0108】
図4に示すように、本実施形態の気相成長装置1Bに備えられるフローチャンネル3Bの上流側には、複数のガス供給部51B,52B,53Bが連通され、複数の原料ガス供給ラインL1B,L2B,L3Bの一部を構成している。
【0109】
第1フローチャンネル34は、上述したように、原料ガスの流れ方向における上流側から下流側に向かうに従って、基板80の平面方向で漸次拡開している。一方、図示例の第1フローチャンネル34は、原料ガスの流れ方向における上流側から下流側に向かうに従って、基板80の成長面80aに対して直交する方向で、流路高さが漸次縮小するように構成されている。
なお、第1フローチャンネル34は、下流側においては、第2フローチャンネル35と連接するよう、第2フローチャンネル35と同サイズの開口端を有し、且つ、基板80の平面方向において、底面と天井面とが平行とされた区間を有していてもよい。
さらに、第1フローチャンネル34は、対向する側壁同士が平行とされた区間を有していてもよい。
【0110】
第2フローチャンネル35は、上述したように、第1フローチャンネル34の下流側から延設され、内部に基板80の成長面80a全体を収容するように配置される。また、第2フローチャンネル35は、その下流側が上方(略90度)に向きを変える形状とされることで、概略L字型に構成されており、その先端が、反応炉10Bの下流側に配置された排気ポート14に連通する排気口37とされている。
【0111】
第1フローチャンネル34においては、上述したように、原料ガス供給ラインL3Bと原料ガス供給ラインL2Bとの間に、石英材で囲まれた真空層24が配置されている。また、
図5中に示すように、ノズル2Bの側壁側には、真空層24を真空にするための減圧封止管24aが備えられている。本実施形態においては、この減圧封止管24aから真空吸引することで真空層24が減圧状態とされ、減圧封止管24aを溶接することで封止されている。
【0112】
高反射率材25は、真空層24内において、原料ガス供給ラインL2B側の底面に配置されている。高反射率材25としては、上述したように、例えば、少なくとも窒化ボロン(BN)、炭化タンタル(TaC)、モリブデン(Mo)又はタングステン(W)の何れかを含む、耐熱性を有する高反射率材からなるものが好ましい。また、高反射率材25としては、タングステンに鏡面仕上げを施した薄板等を採用することがより好ましい。
【0113】
本実施形態の気相成長装置1Bにおいては、第1,2の実施形態におけるガス供給部52と異なり、第2ガス供給部52Bが原料発生室を有していない構成なので、他のガス供給部51B,53Bと同様、反応炉10Bの外部に配置された図視略のタンクから原料ガスが導入される。即ち、例えば、基板80上にGaNからなる半導体膜を成膜する場合は、ガス供給部51Bには、原料ガスG1としてNH3ガス、H2ガス及びN2ガスの混合ガスを導入し、ガス供給部52Bには、原料ガスG2として一塩化ガリウム(GaCl)を導入し、ガス供給部53Bには、低温分解原料ガスG3として、Cp2MgにH2又はN2が加えられた混合ガスを導入する。この場合、ガス供給部52Bに原料ガスG2として供給する一塩化ガリウム(GaCl)は、例えば、反応炉10Bの外部に図視略の原料発生室を設置し、この原料発生室に収容した液体ガリウムを加熱しながら塩化水素や塩素を反応させる方法で得る方法を採用できる。また、この場合には、Cp2Mgを含む低温分解原料ガスG3を、図視略の塩化ガリウムの原料発生室よりも下流側から導入することが、Cp2Mgの熱分解を避ける観点から好ましい。
なお、上述した複数のガス供給部51B,52B,53Bにも、一般的な配管部材を用いることが可能である。
【0114】
第3の実施形態の気相成長装置1Bによれば、上記のように、ノズル2B及び第1フローチャンネル34において、第3原料ガス供給ラインL3Bと第2原料ガス供給ラインL2Bとの間に真空層24が配置され、さらに、真空層24内に耐熱性を有する高反射率材25が配置されている。即ち、低温分解原料ガスG3が流通する第3原料ガス供給ラインL3Bと、原料ガスG2が流通する第2原料ガス供給ラインL2Bとの間が熱的に分離された構成とされている。これにより、上記同様、低温分解原料ガスG3を、より効果的に、凝縮温度以上かつ分解温度以下の温度に独立して保持するか、又は、反応に最適化された分子形態となる温度範囲に独立して保持しつつ、基板80上に供給できる。従って、GaN層を成膜した後、同一の反応炉10B内で良好なP型ドーピング層を形成でき、PN接合特性に優れる半導体膜を、生産性よく、且つ、低コストで成膜することが可能になる。
【0115】
また、本実施形態の気相成長装置1Bによれば、フローチャンネル3Bに備えられる第2フローチャンネル35が、内部に基板80の成長面80a全体を収容するように配置された構成なので、複数の原料ガスG1,G2,G3が熱分解したガス分子を、基板80の成長面80a上に効率よく堆積させることができる。これにより、PN接合特性にさらに優れる半導体膜を、優れた生産性及び低コストで成膜することが可能になる。
【0116】
さらに、本実施形態では、第2フローチャンネル35における下流側が概略L字型に構成され、その先端に設けられる排気口37が反応炉10Bの排気ポート14に連通していることで、余剰の原料ガス等の排気効率を高めることができる。
【0117】
<その他の形態>
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0118】
例えば、複数のガス供給部の取り回しや設置数等は、使用するガス種に応じて適宜、追加変更すればよい。
また、上記の各実施形態においては、サセプタ4上に基板80を設置したフェイスアップ方式を採用しているが、基板80が下方を向くフェイスダウン方式を採用してもよい。
また、上記の各実施形態においては、原料ガスG1,G2,G3を、基板80側から、NH3を含む原料ガスG1、塩化ガリウムを含む原料ガスG2、Cp2Mgを含む低温分解原料ガスG3の順で重なるように、基板80の成長面80a上に供給しているが、これには限定されず、適宜変更することも可能である。
【実施例】
【0119】
以下、実施例により、本発明に係る気相成長装置及び気相成長方法についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0120】
<試験条件>
本実施例においては、実験用の気相成長装置として、
図1に示すような、HVPE方式の気相成長装置1を使用して、GaN基板(バルク)上に、窒化ガリウム(GaN)からなる半導体膜を10μmで成膜した後、引き続いて、さらに、P型ドーピング層を成膜する実験を行った。
【0121】
即ち、本実施例では、水平に設置された横型の石英ガラス管からなる反応炉10を備え、この反応炉10内に、4inchのGaN(バルク)からなる基板80を載置したフェイスアップ型のサセプタ4が配置され、このサセプタ4及び基板80を加熱するためのRFコイルからなる加熱器45を有する気相成長装置1を用いた。また、気相成長装置1として、反応炉10におけるガス流れの上流側が、上流側フランジ12によって封止されているものを用いた。
【0122】
そして、以下に、示す条件で成膜処理を実施した後、半導体膜が成膜された基板80に対し、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)による分析測定を実施するとともに、ホール効果測定を実施した。
【0123】
[GaNからなる半導体膜の成膜条件]
・原料ガスG1
NH3(アンモニア):1slm
・原料ガスG2
GaCl(一塩化ガリウム):20sccm(但し、塩化水素としての流量)
・原料ガス(低温分解原料ガス)G3
Cp2Mg(ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム):30℃の恒温槽に窒素(N2)を500sccmで導入し、飽和蒸気圧分を原料ガスG3として反応炉10内に供給。
設定温度:1100℃
設定圧力:常圧
成膜時間:1時間
【0124】
[評価条件]
(SIMS測定)
測定装置として、市販の二次イオン質量分析装置(機種名:PHI ADEPT-1010TM(登録商標;アルバック・ファイ株式会社製))を用いて、GaNからなる半導体膜の表面から5μmほど膜を破壊しつつ、半導体膜中の不純物の量を測定した。
【0125】
(ホール効果測定)
半導体膜が成膜された基板80のサンプルにおいて、概略で4隅の位置に電極を接続し、測定装置として、市販のホール効果測定装置(機種名:Resitest8320(登録商標;株式会社東陽テクニカ製))を用いて測定した。
【0126】
[評価結果]
SIMS測定の結果、上記条件で基板80上に成膜した半導体膜は、Mgの濃度が概ね1×1018/cm3程度であった。
また、ホール効果測定の結果、上記条件で成膜した半導体膜は、ホール移動度が3×1017/cm3であった。
上記の結果より、本実施例で成膜した半導体膜は、良好なP型特性を有するP型ドーピング層を有していることが確認できた。
【0127】
ここで、本実施例においては、原料ガスとしてGaCl及びCp2Mgを用いて実験を行ったが、例えば、THVPE法においては、原料としてGaCl3(三塩化ガリウム)を用いる。このGaCl3は800℃以下で安定となるが、下記表1中に示すように、GaCl3の凝縮温度は201℃であるため、これよりも高温で輸送する必要があることから、GaClの場合と同様の条件を採用することが好ましい。即ち、GaClは800℃以上の温度で供給し、且つ、その他のガスは200℃以下で供給することが好ましい。
【0128】
また、P型ドーピング層を成膜するためのドーパント化合物原料としては、Cp2Mgの他、下記表1中に示すようなCp2FeやGeH4等を用いることが考えられるが、これらの化合物は、Cp2Mgの場合と同様、比較的低温で分解するため、Cp2Mgを用いた場合と同様の条件を採用することが好ましい。
参考として、下記表1に、半導体膜の成膜に用いられる各種原料の物性を示す。
【0129】
【0130】
以上説明したような実施例の結果より、本発明の気相成長装置を用いて、HVPE法による半導体膜の気相成長プロセスを実施することで、高純度のGaN層を成膜した後、同一の反応炉内で、引き続いてP型ドーピング層を成長させることができ、且つ、PN接合特性に優れる半導体膜が得られることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の気相成長装置及び気相成長方法は、HVPE装置を用いて半導体膜を成膜する場合においても、高純度のGaN層を高い成長速度で成膜できるとともに、別の反応炉に基板を入れ替えることなく、引き続いてP型ドーピング層を成長させることができるので、PN接合特性に優れる半導体膜が得られる、生産性に優れ、且つ、生産コストを低減することが可能になる。従って、特に、縦方向に電気を流す縦型ダイオードやトランジスタ等のようなパワーデバイスを製造するための気相成長装置として好適である。
【符号の説明】
【0132】
1,1A,1B…気相成長装置
10,10B…反応炉
11…側壁
12…上流側フランジ
12a…導入口
13…下流側フランジ
14…排気ポート
15…接続管
L1,L1B…第1原料ガス供給ライン(原料ガス供給ライン:原料ガスG1)
L2,L2B…第2原料ガス供給ライン(原料ガス供給ライン:原料ガスG2)
L3,L3A,L3B…第3原料ガス供給ライン(原料ガス供給ライン:原料ガス(低温分解原料ガス)G3)
2…集合配管部
21…第1噴出口(噴出口:原料ガス供給ラインL1,L1B)
22…第2噴出口(噴出口:原料ガス供給ラインL2,L2B)
23…第3噴出口(噴出口:原料ガス供給ラインL3,L3A,L3B)
24…真空層
25…高反射率材
26…フランジ
2B…ノズル
3,3B…フローチャンネル
3a…上流開口端
31…第1噴出口(噴出口:原料ガス供給ラインL1,L1B)
32…第2噴出口(噴出口:原料ガス供給ラインL2,L2B)
33…第3噴出口(噴出口:原料ガス供給ラインL3,L3A,L3B)
34…第1フローチャンネル
35…第2フローチャンネル
36…フランジ
37…排気口
4…サセプタ
4a…上面
41…回転軸
45…加熱器
51,51B…第1ガス供給部(ガス供給部:原料ガスG1)
51a…入口
51b…出口
52,52B…第2ガス供給部(ガス供給部:原料ガスG2を生成する塩化水素)
52a…入口
52b…出口
55…原料発生室
55a…容器
53,53A,53B…第3ガス供給部(ガス供給部:原料ガスG3)
53a…入口
53b…出口
56,57…加熱器
80…基板
80a…成長面
G1…原料ガス
G2…原料ガス
G3…原料ガス(低温分解原料ガス)