(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】クロメン化合物、該化合物を含む硬化性組成物、および該硬化性組成物からなる硬化体を含む光学物品
(51)【国際特許分類】
C07D 311/78 20060101AFI20230914BHJP
C08G 65/331 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C07D311/78 CSP
C08G65/331
(21)【出願番号】P 2019529761
(86)(22)【出願日】2018-07-11
(86)【国際出願番号】 JP2018026175
(87)【国際公開番号】W WO2019013249
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2017138466
(32)【優先日】2017-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017213247
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 真行
(72)【発明者】
【氏名】竹中 潤治
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-273848(JP,A)
【文献】特表2002-524559(JP,A)
【文献】国際公開第2012/176918(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/121414(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/034202(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 311/
C08G 65/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インデノナフトピラン部位を有するクロメン化合物であって、
該インデノナフトピラン部位が、
13位に13位の炭素原子と共に形成するスピロ環を有し、かつ
繰り返し単位を3つ以上有する、ポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基およびポリエステルオリゴマー鎖基よりなる群から選ばれるオリゴマー鎖基を有しており、
前記クロメン化合物が、下記式(1)で示され、
【化1】
式中、
R
1、およびR
2は、それぞれ独立に、前記オリゴマー鎖基、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、置換基を有してもよい炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する置換アミノ基、置換基を有してもよい原子数が3~10である複素環基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキルチオ基、置換基を有してもよい炭素数6~10のアリールチオ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~7のアルキルカルボニル基、炭素数2~7のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数7~11のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数7~11のアラルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~12のアリールオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~12のヘテロアリール基、チオール基、炭素数2~9のアルコキシアルキルチオ基、炭素数1~6のハロアルキルチオ基、又は置換基を有してもよい炭素数3~8のシクロアルキルチオ基であり、かつ、置換基は前記オリゴマー鎖基、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する置換アミノ基、原子数3~8の複素環基、シアノ基、ニトロ基、およびハロゲン原子から選ばれ、
aは0~4の整数であり、bは0~4の整数であり、
aが2~4である場合には、複数のR
1は互いに同一でも異なってもよく、
bが2~4である場合には、複数のR
2は互いに同一でも異なってもよく、
また、aが2~4であって、隣接するR
1が存在する場合には、隣接する2つのR
1が一緒になってそれらR
1と結合する炭素原子と共に、酸素原子、炭素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい環を形成してもよく、さらに該環は前記オリゴマー鎖基、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する置換アミノ基、原子数3~8の複素環基、シアノ基、ニトロ基、およびハロゲン原子から選ばれる置換基を有してもよい、
また、bが2~4であって、隣接するR
2が存在する場合には、隣接する2つのR
2が一緒になってそれらR
2と結合する炭素原子と共に、酸素原子、炭素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい環を形成してもよく、さらに該環は前記オリゴマー鎖基、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する置換アミノ基、原子数3~8の複素環基、シアノ基、ニトロ基、およびハロゲン原子から選ばれる置換基を有してもよい、
R
3、およびR
4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素数6~12のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数3~12のヘテロアリール基であり、かつ、置換基は前記オリゴマー鎖基、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数6~10のアリールチオ基、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する置換アミノ基、ニトロ基から選ばれ、
該クロメン化合物の13位に13位の炭素原子と共に結合する下記式(Z)
【化2】
で示されるスピロ環Zは、
該13位の炭素原子と共に該環を構成する炭素数が3~20である、置換基を有してもよい脂肪族環、
該脂肪族環に置換基を有してもよい芳香族環若しくは芳香族複素環が縮環した縮合多環、
該13位の炭素原子と共に該環を構成する原子数が3~20である、置換基を有してよい複素環、又は
該複素環に置換基を有してもよい芳香族環若しくは芳香族複素環が縮環した縮合多環であり、
分子内に少なくとも1つの前記オリゴマー鎖基を有するために、前記置換基を有してもよい基の置換基は、前記オリゴマー鎖基であってもよく、かつ、置換基は前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する置換アミノ基、およびハロゲン原子から選ばれ、
前記オリゴマー鎖基が、下記式(5a)~(5c)
【化3】
式中、
R
8は、炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、同一分子内に複数のR
8を含む場合は、R
8は、互いに同一であっても異なっていてもよく、
nは、前記オリゴマー鎖基の繰り返し単位の数であり、3~200の整数であり、複数ある繰り返し単位の2価の基は、互いに同一であっても異なっていてもよく、
破線部は、前記インデノナフトピラン部位との結合を表し、
tは、該オリゴマー鎖基の数を指すものであり、1~10の整数であり、
tが1の場合には、R
9は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基であり、
tが2の場合には、R
9は、結合手
であり、
tが3
、4または6の場合には、R
9は、
下記式
【化4】
で表される有機残基のいずれかであり、
Lは、2価の結合基であり、下記式(6)
【化5】
式中、R
10は、2価の基であり、炭素数が1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基、環を形成する炭素数が3~12の置換基を有してもよいシクロアルキル基、環を形成する炭素数が6~12の置換基を有してもよいアリール基、又は環を形成する原子の数が3~12である置換基を有してもよい複素環基であり、
R
11およびR
11’は、それぞれ独立に、2価の基であり、炭素数が1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基、環を形成する炭素数が3~12の置換基を有してもよいシクロアルキル基、又は環を形成する炭素数が6~12の置換基を有してもよいアリール基であり、
R
12は、2価の基であり、炭素数が1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基、環を形成する炭素数が3~12の置換基を有してもよいシクロアルキル基、又は環を形成する炭素数が6~12の置換基を有してもよいアリール基であり、
X
1、およびX
2は、2価の基であり、それぞれ独立に、直結、O、S、アミノ基、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する置換アミノ基、(チオ)アミド基、又は(チオ)エステル基であり、
dは0~50の整数であり、eおよびe’は、それぞれ独立に、0~50の整数であり、fは0~50の整数であり、
dが2以上の場合、複数あるR
10は、互いに同一であっても異なっていてもよく、
eおよびe’は、2以上の場合、それぞれ独立に、複数あるeおよびe’について、それぞれのカッコ内の単位の2価の基は、互いに同一であっても異なっていてもよく、
fが2以上の場合、複数あるfの単位の2価の基は、互いに同一であっても異なっていてもよい、
で示される基であり、複数あるLは互いに同一であっても異なっていてもよい、
となる基から選ばれる、あるいはこれら基の組み合わせからなることを特徴とするクロメン化合物。
【請求項2】
前記式(Z)で示されるスピロ環Zが、
シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環、シクロウンデカン環、シクロドデカン環、およびスピロジシクロヘキサン環から選ばれる環であって、
該環は、炭素数1~3のアルキル基もしくは炭素数5~7のシクロアルキル基を1~10個置換基として有してもよい、または、
該環は、炭素数5~7のシクロアルキル基が縮環してもよい環である請求項1
に記載のクロメン化合物。
【請求項3】
前記式(Z)で示されるスピロ環Zが、下記式
【化6】
式中、点線の結合手を有する炭素原子が13位の炭素原子である。
から選ばれる環である請求項1
または2に記載のクロメン化合物。
【請求項4】
下記式(2)で示される請求項1~
3の何れかに記載のクロメン化合物。
【化7】
式中、
R
1、R
2、a、b、およびスピロ環Zは、前記式(1)におけるものと同義であり、
R
100、およびR
101は、それぞれ独立に、前記オリゴマー鎖基、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する置換アミノ基、置換基を有してもよい複素環基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキルチオ基、置換基を有してもよい炭素数6~10のアリールチオ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~7のアルキルカルボニル基、炭素数2~7のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数7~11のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数7~11のアラルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~12のアリールオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~12のヘテロアリール基、チオール基、炭素数2~9のアルコキシアルキルチオ基、炭素数1~6のハロアルキルチオ基、又は炭素数3~8のシクロアルキルチオ基であり、かつ、置換基は前記オリゴマー鎖基、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する置換アミノ基、原子数3~8の複素環基、シアノ基、ニトロ基、およびハロゲン原子から選ばれ、
また、R
100、およびR
101は、一緒になって下記式(3)
【化8】
式中、*は、6位又は7位の炭素原子を指し、X、およびYは、一方または両方が硫黄原子、メチレン基、酸素原子、または下記式(4)
【化9】
式中、R
7は、前記オリゴマー鎖基、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~12のヘテロアリール基であり、かつ、置換基は前記オリゴマー鎖基、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する置換アミノ基、原子数3~8の複素環基、シアノ基、ニトロ基、およびハロゲン原子から選ばれる、
で示される基であり、
R
5およびR
6は、それぞれ独立に、前記オリゴマー鎖基、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する置換アミノ基、置換基を有してもよい複素環基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~7のアルキルカルボニル基、炭素数2~7のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数7~11のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数7~11のアラルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~12のアリール基、チオール基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~9のアルコキシアルキルチオ基、炭素数1~6のハロアルキルチオ基、炭素数3~8のシクロアルキルチオ基、又は置換基を有してもよい炭素数6~10のアリールチオ基であり、かつ、置換基は前記オリゴマー鎖基、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する置換アミノ基、原子数3~8の複素環基、シアノ基、ニトロ基、およびハロゲン原子から選ばれ、また、R
5およびR
6は、それらが結合する炭素原子と共に、置換基を有してもよい脂肪族環を形成してもよく、cは、1~3の整数である、
で示されるような環を形成してもよく、
R
200は、前記オリゴマー鎖基、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する置換アミノ基、置換基を有してもよい複素環基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~7のアルキルカルボニル基、炭素数2~7のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数7~11のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数7~11のアラルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~12のアリール基、チオール基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~9のアルコキシアルキルチオ基、炭素数1~6のハロアルキルチオ基、炭素数3~8のシクロアルキルチオ基、又は置換基を有してもよい炭素数6~10のアリールチオ基であり、かつ、置換基は前記オリゴマー鎖基、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する置換アミノ基、原子数3~8の複素環基、シアノ基、ニトロ基、およびハロゲン原子から選ばれ、
R
300、およびR
400は、それぞれ独立に、前記オリゴマー鎖基、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する置換アミノ基、置換基を有してもよい複素環基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキルチオ基、又は置換基を有してもよい炭素数6~10のアリールチオ基であり、かつ、置換基は前記オリゴマー鎖基、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基から選ばれる少なくとも1つの置換基を有する置換アミノ基、原子数3~8の複素環基、シアノ基、ニトロ基、およびハロゲン原子から選ばれ、
a’は0~5の整数であり、a’が2以上である場合には、R
300は、互いに同一でも異なる基であってもよく
b’は0~5の整数であり、b’が2以上である場合には、R
400は、互いに同一でも異なる基であってもよく、
分子内に少なくとも1つの前記オリゴマー鎖基を有するために、前記置換基を有してもよい基の置換基は、前記オリゴマー鎖基であってもよい。
【請求項5】
前記2価の結合基Lが、下記式
【化10】
式中、破線部は、前記インデノナフトピラン部位と結合することを表す、
から選ばれる基である請求項1~
4の何れかに記載のクロメン化合物。
【請求項6】
請求項1~
5の何れかに記載のクロメン化合物と、重合性化合物を含んでなるフォトクロミック硬化性組成物。
【請求項7】
請求項
6に記載のフォトクロミック硬化性組成物が重合してなるフォトクロミック光学物品。
【請求項8】
請求項1~
5の何れかに記載のクロメン化合物が内部に分散した高分子成型体。
【請求項9】
請求項1~
5の何れかに記載のクロメン化合物が分散した高分子膜で被覆された光学物
品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なクロメン化合物、該クロメン化合物を含む新規なフォトクロミック硬化性組成物、および該フォトクロミック硬化性組成物の硬化体からなる新規な光学物品に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミズムとは、ある化合物に太陽光あるいは水銀灯の光のような紫外線を含む光を照射すると速やかに色が変わり、光の照射をやめて暗所に置くと元の色に戻る可逆反応のことである。このような性質を有する化合物はフォトクロミック化合物と呼ばれ、これまでに色々な化合物が開発されている。これらフォトクロミック化合物の中でもクロメン化合物は耐久性が良く、様々な色調に発色することが知られているため、近年特に活発に研究されている。
【0003】
例えば、メガネレンズにフォトクロミック性を付与したフォトクロミックメガネレンズは、太陽光が照射される屋外では、速やかに着色して、サングラスとして機能し、屋内では退色し、通常のメガネレンズとして機能するものであり、その需要は増加している。
【0004】
光学材料に使用されるフォトクロミック化合物においては、一般的に以下の特性が求められている。
(1)紫外線を照射する前の可視光領域での着色度(初期着色)が小さい。
(2)紫外線を照射した時の着色度(発色濃度)が高い。
(3)紫外線を照射し始めてから発色濃度が飽和に達するまでの速度が大きい(発色感度が高い)。
(4)紫外線の照射を止めてから元の状態に戻るまでの速度(退色速度)が大きい。
(5)この可逆作用の繰り返し耐久性がよい。
(6)使用されるホスト材料への分散性が高くなるように、硬化後にホスト材料となるモノマー組成物に高濃度に溶解する。
【0005】
これまで見出されているクロメン化合物においては、その物自体のフォトクロミック特性は優れており、例えば溶液中では速い発・退色速度および高い発色濃度を示すものも知られている。クロメン化合物の色変化は、構造変化によって起こることが知られている。そのため、クロメン化合物は、溶液中などの構造変化が起こりやすい環境下においては光応答性がよい。しかしながら、高分子固体マトリックス中などの構造変化が起こりにくい環境下においては光応答性が悪く、退色半減期が長くなる傾向、すなわち光応答性が低下する傾向にある。この原因は、溶液中に比べて高分子固体マトリックス中では自由空間が圧倒的に小さいため、クロメン化合物の構造変化が制約を受けるためと考えられる。クロメン化合物を、このように各種プラスチック材料のような高分子マトリックスに分散させた場合には、クロメン化合物が本来有する優れたフォトクロミック特性を十分に発揮することができず、特に退色速度が低下すると言う問題があった。この問題は、特に硬度または耐熱性の高い合成樹脂(高分子)にクロメン化合物を練り込んだ場合、顕著になる傾向にあった。
【0006】
この問題を解決する方法として、様々な構造を有するフォトクロミック化合物が検討されている。例えば、退色速度を大きくするために、ナノカプセル化が可能なフォトクロミック化合物が提案されている。具体的には、ポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基やポリシロキサンオリゴマー鎖基を有する下記式(A)、(B)で示されるフォトクロミック化合物が開示されている(特許文献1、2参照)。
【0007】
【0008】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、前記式(A)や(B)で示されるクロメン化合物は、ナノカプセル化が可能であるが、近年要求される高度なフォトクロミック特性、および繰り返し耐久性に応えるには、さらなる改良が必要であることが分かった。
【0009】
また、この他に、フォトクロミック部位を少なくとも2つ以上の有する、フォトクロミック化合物も提案されている(特許文献3~5参照)。しかしながら、このようにフォトクロミック部位を複数有する、色素濃度を高めた化合物であっても、従来の化合物においては、近年要求される高度なフォトクロミック特性に応えるには、さらなる改良が必要であった。特に、マトリックスへの依存性が少なく、退色速度をより高めることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開WO2004/041961号パンフレット
【文献】国際公開WO2000/015630号パンフレット
【文献】国際公開WO2009/146509号パンフレット
【文献】国際公開WO2012/149599号パンフレット
【文献】国際公開WO2012/162725号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上の通り、合成樹脂をマトリックスとした場合には、特に、退色速度において、従来技術では改善の余地があった。
【0012】
さらに、近年、光学物品用材料には様々な高分子が用いられてきている。そこで、如何なる高分子固体マトリックス中でも、溶液中のように、高い発色濃度かつ速い退色速度を示すようなマトリックス依存性(マトリックス環境依存性)の低いフォトクロミック化合物が製造できれば、その利用価値は高まる。加えて、高価なフォトクロミック硬化性組成物(フォトクロミック化合物と重合性化合物とを含む硬化性組成物)のコストを低減することも可能となる。
【0013】
したがって、本発明の目的は、マトリックス環境依存性が低くかつ、早い退色速度、高い繰り返し耐久性を有するクロメン化合物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。先に記載したとおり、従来、オリゴマー鎖基を導入したフォトクロミック化合物は、マトリックス中で該オリゴマー鎖がフォトクロミック化合物を包み込むような形態(ナノカプセル化)をとるため、高分子固体マトリックス中では退色速度が速くなると考えられている。
【0015】
本発明者等は、この形態を利用すると、マトリックス依存性の低いフォトクロミック化合物ができるのではないかと考えた。しかしながら、オリゴマー鎖基を導入することにより、マトリクス依存性は低減できるものの、フォトクロミック化合物自体の退色速度を大きくできるわけではない。そのため、さらなる改良が必要となり、様々な置換基を有するインデノナフトピラン化合物を検討したところ、以下の構造を有するインデノナフトピラン化合物(以下、クロメン化合物とする場合もある)により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、第一の本発明は、インデノナフトピラン部位を有するクロメン化合物であって、
該インデノナフトピラン部位が、
13位に13位の炭素原子と共に形成するスピロ環を有し、かつ
いずれのオリゴマー鎖も繰り返し単位を3つ以上有する、ポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基およびポリエステルオリゴマー鎖基よりなる群から選ばれるオリゴマー鎖基を有することを特徴とするクロメン化合物である。
【0017】
第二の本発明は、本発明のクロメン化合物と重合性単量体とを含有するフォトクロミック硬化性組成物である。
【0018】
第三の本発明は、その内部に本発明のクロメン化合物が分散した高分子成型体を構成部材として有するフォトクロミック光学物品である。
【0019】
第四の本発明は、光学基材の少なくとも1つの面の全部または一部が本発明のクロメン化合物が分散した高分子膜で被覆された光学基材を構成部材として有する光学物品である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のクロメン化合物は、
13位に13位の炭素原子と共に形成するスピロ環(以下、単に「13位のスピロ環基」とする場合もある。)を有するインデノナフトピラン部位(インデノナフトピラン構造)を少なくとも1つ以上有し、さらに、該インデノナフトピラン部位が、繰り返し単位を3つ以上有するポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基および繰り返し単位を3つ以上有するポリエステルオリゴマー鎖基よりなる群から選ばれるオリゴマー鎖基(以下、単に「オリゴマー鎖基」とする場合もある。)を有するものである。該クロメン化合物は、このような構造をとることにより、優れた効果を発揮する。すなわち、13位のスピロ環基、および該オリゴマー鎖基の両方を有するクロメン化合物であるという構造上の特徴により、優れた効果を発揮する。具体的には、マトリックス依存性が小さく、退色速度が速く、耐久性の良好なクロメン化合物とすることができる。
【0021】
具体的には、13位のスピロ環基のみを有したり、該オリゴマー鎖基のみを有する場合には、より十分な効果は得られない。例えば、13位のスピロ環基を有さず、13位にアルキル基が置換しているような場合には、該オリゴマー鎖基を有していたとしても、高度なフォトクロミック特性、特に、退色速度の優れた化合物とはならない。また、13位に、直接、該オリゴマー鎖基が置換された化合物であっても、耐久性が低下する傾向にある。
【0022】
以上のことから明らかなように、本発明の構造を有することにより、環境依存性が低減され、固体マトリックスの材質が変化しても、それぞれのマトリックス中で優れた退色速度を有することができる。加えて、従来のオリゴマー鎖基を有する類似のクロメン化合物を用いた光学物品に比べ、高い繰り返し耐久性を付与することができる。
【0023】
本発明のクロメン化合物のような、13位のスピロ環基、および該オリゴマー鎖基の両方を有する化合物は、従来存在していない。
【0024】
したがって、例えば、本発明のクロメン化合物をフォトクロミックメガネレンズに用いた場合には、高硬度のメガネレンズ、および比較的高度の低いメガネレンズを製造しても、それぞれのメガネレンズは、高い発色濃度、早い退色速度を有するものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のクロメン化合物は、分子内に、
13位に13位の炭素原子と共に形成するスピロ環を有するインデノナフトピラン部位を少なくとも1つ以上有する化合物である。
【0026】
該インデノナフトピラン部位の数は、分子内に少なくとも1つあれば特に制限されるものではない。中でも、クロメン化合物自体の生産性、フォトクロミック特性、および高分子固体マトリックスとの相溶性等を考慮すると、該インデノナフトピラン部位の数は、1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~4であることがさらに好ましく、1であることが特に好ましい。
【0027】
なお、複数のインデノナフトピラン部位を有する場合には、インデノナフトピラン部位は、同一の構造であっても、異なる構造であってもよい。また、その内、少なくとも1つのインデノナフトピラン部位が、13位のスピロ環基を有するものであればよい。ただし、優れたフォトクロミック特性を発揮するためには、全てのインデノナフトピラン部位が、13位のスピロ環基を有するものであることが好ましい。
【0028】
また、本発明のクロメン化合物は、該インデノナフトピラン部位が、繰り返し単位を3つ以上有するオリゴマー鎖基を有するものである。そして、該オリゴマー鎖基は、ポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基およびポリエステルオリゴマー鎖基よりなる群から選ばれる基である。本発明において、繰り返し単位を3つ以上有するとは、「同じ組成の結合部位である繰り返し単位が3つ以上存在する」ことを指し、具体的に、例えば繰り返し単位が3つ以上のポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基(式;-(R-O)s-、R:アルキレン基、s:繰り返し単位の数)とは、該式におけるsが3以上のものを指す。
【0029】
該オリゴマー鎖基において、繰り返し単位が3未満となる場合には、優れたフォトクロミック特性、およびマトリックス中への相溶性が低下するため、好ましくない。該繰り返し単位の上限は、特に制限されものではなく、該オリゴマー鎖基の数、該オリゴマー鎖基を形成する構造式、および該インデノナフトピラン部位の数等に応じて適宜決定される。中でも、クロメン化合物自体の生産性、フォトクロミック特性等を考慮すると、200未満であることが好ましい。そして、繰り返し単位は、3~150であることが好ましく、10~100あることがより好ましい。
【0030】
該オリゴマー鎖基の平均分子量は、特に制限されるものではなく、300~20,000であることが好ましく、350~15,000であることより好ましく、350~12,000であることがさらに好ましく、440~7,500であることが特に好ましい。前記オリゴマー鎖基の平均分子量が小さ過ぎる(オリゴマー鎖長が短い)場合、フォトクロミック化合物を包み込んだナノカプセルの形成が、困難であったり、カプセルのサイズが小さくなる傾向にある。そのため、フォトクロミック化合物の周りに自由空間の確保が不十分になり、マトリックス環境依存性を低減する効果が低下する傾向にある。また、平均分子量が大きすぎる場合、単位重量当たりのフォトクロミック化合物の割合が減少してしまう傾向にあり、発色濃度が不十分になり、添加量を多くする必要がある。
【0031】
本発明のクロメン化合物において、該オリゴマー鎖基の数は、特に制限されるものではなく、クロメン化合物1分子内に少なくとも1つ存在すればよい。中でも、クロメン化合物自体の生産性、フォトクロミック特性等を考慮すると、該オリゴマー鎖基の数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。また、インデノナフトピラン部位1つに対して、該オリゴマー鎖基の数は、0.5~6であることが好ましく、0.5~3であることがより好ましく、0.5~2であることがさらに好ましい。中でも、生産性、効率のよいフォトクロミック特性を考慮すると、0.5~1であることが好ましい。インデノナフトピラン部位1つに対して、該オリゴマー鎖基の数が0.5となる場合は、該オリゴマー鎖基の両末端に、インデノナフトピラン部位が存在する場合である。なお、該オリゴマー鎖基が複数存在する場合には、該オリゴマー鎖基は、同一の基であっても、異なる基であってもよい。ただし、クロメン化合物の生産性を考慮すると、同一の基であることが好ましい。そして、フォトクロミック特性を考慮すると、ポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基であることが最も好ましい。
【0032】
また、前記オリゴマー鎖基はインデノナフトピランの3位、6位、7位、11位、又は13位のスピロ環基に置換していることが、本発明の効果、クロメン化合物自体の生産性を向上できるために好ましい。
【0033】
<好適なクロメン化合物>
本発明においては、該インデノナフトピラン部位が、下記式(1)
【0034】
【0035】
で示される構造であることが好ましい。下記で詳細に説明するが、当然、式Zは、13位のスピロ環基である。また、前記オリゴマー鎖基は、前記式(1)で示されるインデノナフトピラン部位に、少なくとも1つ結合している必要がある。つまり、R1、R2、R3、R4の少なくとも1つが前記オリゴマー鎖基となるか、又は、R1、R2、R3、R4、および式Zのスピロ環基が、前記オリゴマー鎖基を置換基として有する基であればよい。
【0036】
本発明のクロメン化合物は、前記式(1)で示されるインデノナフトピラン部位を分子内に少なくとも1つ有することが好ましい。一般的に、インデノナフトピラン骨格を有するクロメン化合物は、優れたフォトクロミック特性を示すことが知られている。以下、特定の置換基について順を追って説明する。なお、この式(1)で示されるインデノナフトピラン部位の好適な数、種類等、および前記オリゴマー鎖基の好適な数、種類等は、前記で説明したものと同じである。
【0037】
<R1、およびR2>は、それぞれ独立に、繰り返し単位を3つ以上有するオリゴマー鎖基(繰り返し単位を3つ以上有するポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基、繰り返し単位を3つ以上有するポリエステルオリゴマー鎖基、および繰り返し単位を3つ以上有するポリエステルポリエーテルオリゴマー鎖基から選ばれるオリゴマー鎖基)、ヒドロキシル基、アルキル基、ハロアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、置換基を有してもよい複素環基、シアノ基、ハロゲン原子、アルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアラルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基、チオール基、アルコキシアルキルチオ基、ハロアルキルチオ基、又は置換基を有してもよいシクロアルキルチオ基であることが好ましい。
【0038】
なお、前記式(1)において、aはR1の個数を示す。bはR2の個数を示す。そして、aは0~4の整数であり、bは0~4の整数であり、
aが2~4である場合には、複数のR1は互いに同一でも異なってもよく、
bが2~4である場合には、複数のR2は互いに同一でも異なってもよい。
【0039】
また、aが2~4であって、隣接するR1が存在する場合には、隣接する2つのR1が一緒になってそれらのR1が結合する2つの炭素原子と共に、酸素原子、炭素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい環を形成してもよく、さらに該環は置換基を有してもよい、
また、bが2~4であって、隣接するR2が存在する場合には、隣接する2つのR2が一緒になってそれらのR2が結合する2つの炭素原子と共に、酸素原子、炭素原子、硫黄原子、又は窒素原子を含んでもよい環を形成してもよく、さらに該環は置換基を有してもよい。
【0040】
<R3、およびR4>は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基であることが好ましい。
【0041】
なお、R1、R2、R3、およびR4において、前記置換基を有してもよい基の置換基は、分子内に少なくとも1つのオリゴマー鎖基であってもよい。
【0042】
以下、R1、R2、R3、およびR4について、詳細に説明する。先ず、R1、およびR2がなり得るオリゴマー鎖基と、オリゴマー鎖基以外のその他の基について説明する。
【0043】
<R1、およびR2;オリゴマー鎖基>
本発明のクロメン化合物は、前記式(1)で示されるインデノナフトピラン部位が少なくとも前記オリゴマー鎖基を有するものであればよく、R1、およびR2の少なくとも1つが該オリゴマー鎖基となることができる。
【0044】
前記オリゴマー鎖基は、繰り返し単位を3つ以上有するものであれば、特に制限されるものではない。中でも、繰り返し単位を3つ以上有するポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖を有する基であることが好ましい。さらに、ただし、前記の通り、3~200であることが好ましく、さらには3~150であることが好ましい。さらに、該オリゴマー鎖基の平均分子量は、300~20,000であることが好ましく、350~15,000であることより好ましく、350~12,000であることがさらに好ましく、440~7,500であることが特に好ましい。
【0045】
以上のようなオリゴマー鎖基の中でも、優れたフォトクロミック特性、マトリックスへの依存性を小さくするためには、下記で詳述する式(5a)~(5c)で示される基とすることが好ましい。分子内に、これら基を必ず1つ有し、かつ13位のスピロ環基を有するクロメン化合物が特に優れた効果を発揮する。
【0046】
<R1、およびR2;好適なオリゴマー鎖基>
本発明において、特に好ましいオリゴマー鎖基としては、下記式(5a)~(5c)
【0047】
【0048】
{式中、
R8は、炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、同一分子内に複数のR8を含む場合は、R8は、互いに同一であっても異なっていてもよく、
nは、前記オリゴマー鎖基の繰り返し単位の数を指すものであり、3~200の整数であり、複数ある繰り返し単位の2価の基は、互いに同一であっても異なっていてもよく、
Lは、2価の結合基であり、下記式(6)
【0049】
【0050】
(式中、
R10は、2価の基であり、炭素数が1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基、環を形成する炭素数が3~12の置換基を有してもよいシクロアルキル基、環を形成する炭素数が6~12の置換基を有してもよいアリール基、又は環を形成する原子の数が3~12である置換基を有してもよい複素環基であり、
R11およびR11’はそれぞれ独立に、2価の基であり、炭素数が1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基、環を形成する炭素数が3~12の置換基を有してもよいシクロアルキル基、又は環を形成する炭素数が6~12の置換基を有してもよいアリール基であり、
R12は、2価の基であり、炭素数が1~20の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基、環を形成する炭素数が3~12の置換基を有してもよいシクロアルキル基、又は環を形成する炭素数が6~12の置換基を有してもよいアリール基であり、
X1、およびX2は、2価の基であり、それぞれ独立に、直結、O、S、アミノ基、置換アミノ基、(チオ)アミド基、又は(チオ)エステル基であり、
dは0~50の整数であり、eおよびe’は、それぞれ独立には0~50の整数であり、fは0~50の整数であり、
dが2以上の場合、複数あるR10は、互いに同一であっても異なっていてもよく、
eおよびe’は、それぞれ独立に、2以上の場合、複数あるeおよびe’について、それぞれのカッコ内の単位の2価の基は、互いに同一であっても異なっていてもよく、
fが2以上の場合、複数あるfの単位の2価の基は、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で示される基であり、複数あるLは互いに同一であっても異なっていてもよく、
破線部は、前記インデノナフトピラン部位との結合を表し、
tは、該オリゴマー鎖基の数を指すものであり、1~10の整数であり、
tが1の場合には、R9は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基であり、
tが2の場合には、R9は、結合手、又は2価の有機残基であり、
tが3~10の場合には、R9は、tの数と同じ有機残基である。}
となる基から選ばれることが好ましい。
【0051】
前記式(5a)で示されるオリゴマー鎖基は、好ましいポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基である。前記式(5b)で示されるオリゴマー鎖基と前記式(5c)で示されるオリゴマー鎖基は、いずれも好ましいポリエステルオリゴマー鎖基である。
【0052】
このうち、特に好ましいものを例示すると、
R8は、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基が好ましく、プロピレン基が特に好ましい。
【0053】
nは、オリゴマー鎖基の繰り返し単位の数を指すものであり、3~200の整数である。クロメン化合物自体の生産性、フォトクロミック特性等を考慮すると、nは3~150が好ましく、特に10~100が好ましい。
【0054】
Lのうち、特に好ましいものを例示すると、下記式
【0055】
【0056】
で示される2価の基が挙げられる。なお、前記Lの好適な2価の基、および前記式(5a)~(5c)において、破線部は、前記インデノナフトピラン部位と結合していることを示している。
【0057】
前記式(5a)~(5c)で示されるオリゴマー鎖基において、tは、オリゴマー鎖基の数と一致する。
【0058】
tが1である場合、すなわち該オリゴマー鎖基が1つである場合、R9の炭素数1~20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、又はヘキシル基が好ましい。
【0059】
tが2である場合、R9は、結合手であってもよい。すなわち、R9が結合手になる場合には、実質オリゴマー鎖が2倍の長さとなり、その両末端にインデノナフトピラン部位を有することとなる。
【0060】
tが3~10である場合、R9は、tの数に応じた有機残基となるが、このとき、tは3~6であることが好ましい。好ましい有機残基(R9)を例示すると、下記式
【0061】
【0062】
で示される何れかの多価の有機残基が挙げられる。該多価の有機残基において、破線部はLとの結合を示すものである。
【0063】
以上がR1、およびR2における好適なオリゴマー鎖基である。
【0064】
<R1、およびR2;その他の基>
本発明のクロメン化合物は、前記式(1)で示されるインデノナフトピラン部位が少なくとも1つの前記オリゴマー鎖基を有すればよく、その他のR1、およびR2は、前記の通り、該オリゴマー鎖基以外の基となることもできる。
【0065】
R1、およびR2がなり得る前記アルキル基としては、特に制限されるものではないが、炭素数1~6のアルキル基であることが好ましい。炭素数1~6の好適なアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を挙げることができる。
【0066】
前記ハロアルキル基としては、特に制限されるものではないが、炭素数1~6のハロアルキル基であることが好ましい。炭素数1~6のハロアルキル基としては、フッ素原子、塩素原子もしくは臭素原子で置換されたアルキル基が好ましい。好適なハロアルキル基の例としては、トリフルオロメチル基、テトラフルオロエチル基、クロロメチル基、2-クロロエチル基、ブロモメチル基等を挙げることができる。
【0067】
前記シクロアルキル基としては、特に制限されるものではないが、炭素数3~8シクロアルキル基(環を形成する炭素原子の数が3~8であるシクロアルキル基)であることが好ましい。炭素数3~8のシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。なお、前記シクロアルキル基は、置換基を有してもよいが、前記炭素数の数(炭素数3~8)には、置換基の炭素数は含まれないものとする。
【0068】
前記アルコキシ基としては、特に制限されるものではないが、炭素数1~6のアルコキシ基であることが好ましい。 前記炭素数1~6の好適なアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等を挙げることができる。
【0069】
前記アミノ基は、一級アミノ基(-NH2)であり、置換アミノ基は、1つまたは2つの水素原子が置換された2級または3級アミノ基である。置換アミノ基が有する置換基としては、特に制限されるものではないが、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数3~7のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基等が挙げられる。好適なアミノ基の例としては、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等を挙げることできる。
【0070】
前記複素環基としては、原子数が3~10である複素環基が好ましい。具体的には、例えば、モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジニル基、ピペラジノ基、N-メチルピペラジノ基のような脂肪族複素環基、又はインドリニル基のような芳香族複素環基等を挙げることができる。さらに、該複素環基は、置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、前記オリゴマー鎖基、又は炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。置換基を有する好適な複素環基としては、例えば2,6-ジメチルモルホリノ基、2,6-ジメチルピペリジノ基および2,2,6,6-テトラメチルピペリジノ基等が挙げられる
前記ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0071】
前記アルキルチオ基としては、特に制限されるものではないが、炭素数1~6のアルキルチオ基が好ましい。炭素数1~6のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基等を挙げることができる。
【0072】
前記アリールチオ基としては、特に制限されるものではないが、炭素数6~10のアリールチオ基が好ましい。炭素数6~10のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、2-ナフチルチオ基等を挙げることができる。
【0073】
前記アルキルカルボニル基としては、特に制限されるものではないが、炭素数2~7のアルキルカルボニル基が好ましい。炭素数2~7のアルキルカルボニル基としては、アセチル基、エチルカルボニル基が挙げられる。
【0074】
前記アルコキシカルボニル基としては、特に制限されるものではないが、炭素数2~7のアルコキシカルボニル基が好ましい。炭素数2~7のアルコキシカルボニル基としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が挙げられる。
【0075】
前記アラルキル基としては、特に制限されるものではないが、炭素数7~11のアラルキル基であることが好ましい。炭素数7~11のアラルキル基としてはベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
【0076】
前記アラルコキシ基としては、特に制限されるものではないが、炭素数7~11のアラルコキシ基が好ましい。前記炭素数7~11のアラルコキシ基としては、ベンジロキシ基、ナフチルメトキシ基等を挙げることができる。
【0077】
前記アリールオキシ基としては、特に制限されるものではないが、炭素数6~12のアリールオキシ基であることが好ましい。炭素数6~12のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等を挙げることができる。
【0078】
前記アリール基としては、特に制限されるものではないが、炭素数6~12のアリール基が好ましい。炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等を挙げることができる。
【0079】
前記ヘテロアリール基としては、特に制限されるものではないが、炭素数3~12のヘテロアリール基が好ましい。炭素数3~12のヘテロアリール基は、チエニル基、フリル基、ピロリニル基、ピリジル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾピロリニル基等を挙げることができる。
【0080】
前記アルコキシアルキルチオ基としては、特に制限されるものではないが、炭素数2~9のアルコキシアルキルチオ基が好ましい。炭素数2~9のアルコキシアルキルチオ基としては、メトキシメチルチオ基、メトキシエチルチオ基、メトキシn-プロピルチオ基、メトキシn-ブチルチオ基、エトキシエチルチオ基、n-プロポキシプロピルチオ基等を挙げることができる。
【0081】
前記ハロアルキルチオ基としては、特に制限されるものではないが、炭素数1~6のハロアルキルチオ基が好ましい。炭素数1~6のハロアルキルチオ基としては、トリフルオロメチルチオ基、テトラフルオロエチルチオ基、クロロメチルチオ基、2-クロロエチルチオ基、ブロモメチルチオ基等を挙げることができる。
【0082】
前記シクロアルキルチオ基としては、特に制限されるものではないが、炭素数3~8のシクロアルキルチオ基が好ましい。炭素数3~8のシクロアルキルチオ基としては、シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等を挙げることができる。なお、なお、前記シクロアルキルチオ基は、置換基を有してもよいが、前記炭素数の数(炭素数3~8)には、置換基の炭素数は含まれないものとする。
【0083】
なお、前記シクロアルキル基、前記アリールチオ基、前記アラルキル基、前記アラルコキシ基、前記アリールオキシ基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および前記シクロアルキルチオ基は、非置換であってもよい。ただし、置換基を有する場合、環を形成する基における1~8個の水素原子、特に好ましくは1~4個の水素原子が、前記オリゴマー鎖基、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、原子数3~8の複素環基、シアノ基、ニトロ基、およびハロゲン原子から選ばれる置換基で置換されることが好ましい。これら置換基の具体例は、前記で説明したのと同じ基が挙げられる。
【0084】
なお、前記アラルキル基、前記アラルコキシ基、前記アリールオキシ基、前記アリール基、および前記ヘテロアリール基で記載した炭素数は、置換基の炭素数を含むものではない。
【0085】
<a、bについて>
前記式(1)において、aはR1の個数を示す。bはR2の個数を示す。そして、
aは0~4の整数であり、bは0~4の整数であり、
aが2~4である場合には、複数のR1は互いに同一でも異なってもよく、
bが2~4である場合には、複数のR2は互いに同一でも異なってもよい。
【0086】
<a、bが2以上の場合>
また、aが2~4であって、隣接するR1が存在する場合には、隣接する2つのR1が一緒になってそれらのR1と結合する2つの炭素原子と共に、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、又は窒素原子を含んでもよい環を形成してもよく、さらに該環は置換基を有してもよい。なお、該環は、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、又は窒素原子の2つ以上の原子を同時に有することもできる。
【0087】
隣接するR1の組み合わせとしては、該クロメン化合物の5位と6位、または6位と7位、7位と8位である。
【0088】
また、bが2~4であって、隣接するR2が存在する場合には、隣接する2つのR2が一緒になってそれらのR2と結合する2つの炭素原子と共に、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、又は窒素原子を含んでもよい環を形成してもよく、さらに該環は置換基を有してもよい。なお、該環は、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、又は窒素原子の2つ以上の原子を同時に有することもできる。
【0089】
隣接するR2の組み合わせとしては、該クロメン化合物の9位と10位、または10位と11位、11位と12位である。
【0090】
R1、およびR2は、それぞれ独立に、互いに隣接する2つが一緒になって、酸素原子、硫黄原子、炭素原子、又は窒素原子を含んでもよい環基を形成できる。この環基は、特に制限されるものではないが、 R1、およびR2が結合する炭素原子を含めて、原子数が5~7である環となることが好ましい。そして、該環は、置換基を有することもできるが、該置換基としては、前記オリゴマー鎖基、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、原子数3~8の複素環基、シアノ基、ニトロ基、およびハロゲン原子から選ばれる置換基が挙げられる。これら置換基の具体例は、前記で説明したのと同じ基が挙げられる。その中でも、後述する式(3)で示される環となることが好ましい。
【0091】
<特に好適なR1、およびR2>
以上のような基の中でも、得られたフォトクロミック化合物の発色色調、発色濃度等を考慮すると、R1、およびR2は、前記オリゴマー鎖基、前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記複素環基、前記アリール基、前記アリールチオ基が好ましい。隣接するR1同士、又は隣接するR2同士が結合して環を形成する基となることも好ましい。また、前記置換基を有してもよい基の置換基は、前記オリゴマー鎖基であってもよい。
【0092】
<R3、およびR4>
R3、およびR4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいヘテロアリール基である。
【0093】
該アリール基、又は該ヘテロアリール基としては前記<R1、およびR2>で例示した具体的な基が挙げられ、特にフェニル基が最も好ましい。
【0094】
また、これらアリール基、又はヘテロアリール基は置換基を有していてもよい。該置換基は、それぞれ独立に、オリゴマー鎖基、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、複素環基、シアノ基、ハロゲン原子、又は炭素数1~6のアルキルチオ基、置換基を有してもよい炭素数6~10のアリールチオ基ヒドロキシル基、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、置換基を有していてもよい複素環基、シアノ基、ニトロ基、およびハロゲン原子から選ばれる置換基が挙げられる。これら具体的な置換基は、前記<R1、およびR2>で例示した具体的な基が挙げられる。
【0095】
前記アリール基、前記ヘテロアリール基の置換基としては、中でも、優れたフォトクロミック特性を発揮するという観点から、前記オリゴマー鎖基、前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アミノ基、前記置換アミノ基、前記複素環基、前記ハロゲン原子、前記アリールチオ基から選ばれる基であることが好ましい。
【0096】
<環Z(基)>
該クロメン化合物の13位に、13位の炭素原子と共に結合する下記式(Z)
【0097】
【0098】
で示されるスピロ環Z(13位のスピロ環基)は、
該13位の炭素原子と共に該環を構成する炭素数が3~20である、置換基を有してもよい脂肪族環、
該脂肪族環に置換基を有してもよい芳香族環若しくは芳香族複素環が縮環した縮合多環、
該13位の炭素原子と共に該環を構成する原子数が3~20である、置換基を有してよい複素環、又は
該複素環に置換基を有してもよい芳香族環若しくは芳香族複素環が縮環した縮合多環である。なお、当然のことであるが、前記環基において示した炭素数、又は原子数は、環を構成する炭素、又は原子の数を示すものであり、置換基の炭素数、又は原子数を含むものではない。
【0099】
前記脂肪族環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロヘプタン環、ノルボルナン環、ビシクロノナン環、アダマンタン環、およびスピロジシクロヘキサン環が挙げられる。
【0100】
また、前記脂肪族環に芳香族環もしくは芳香族複素環が縮環した縮合多環としては、例えばフェナントレン環が挙げられる。
【0101】
前記複素環としては、例えばチオフェン環、フラン環、ピリジン環が挙げられる。
【0102】
また、前記複素環に、芳香族環もしくは芳香族複素環が縮環した縮合多環としては、例えば、フェニルフラン環、ビフェニルチオフェン環が挙げられる。
【0103】
前記脂肪族環、前記脂肪族環に芳香族環もしくは芳香族複素環が縮環した縮合多環、前記複素環、又は前記複素環に芳香族環もしくは芳香族複素環が縮環した縮合多環は、置換基を有してもよい。該環(縮合多環)に置換する置換基としては、前記オリゴマー鎖基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、およびハロゲン原子から選ばれる置換基が挙げられる。なお、これら置換基は、<R1、およびR2>で既に説明した基と同様の基が挙げられる。このスピロ環Zが有する置換基の中でも、本発明のクロメン化合物が特に優れた効果を発揮するものとしては、炭素数1~6のアルキル基、シクロアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基が特に好ましい。
【0104】
前記のスピロ環Zの中でも、早い退色速度を得るためには、スピロ環を構成する炭素数が6~16よりなる前記脂肪族炭化水素環基であり、これら脂肪族炭化水素環に炭素数1~6のアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)が置換した環基、又は該脂肪族炭化水素環に炭素数3~8のシクロアルキル基が結合、または縮環した環基であることが好ましい。
【0105】
これらの中でも、優れた退色速度および、高い発色濃度が得られるという観点から以下の環となることが好ましい。すなわち、スピロ環Zは、
シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環、シクロウンデカン環、シクロドデカン環、およびスピロジシクロヘキサン環から選ばれる環であって、
該環は、炭素数1~3のアルキル基もしくは炭素数5~7のシクロアルキル基を1~10個置換基として有してもよい、または、
該環は、炭素数5~7のシクロアルキル基が縮環してもよい環となることが好ましい。
【0106】
特に好適なスピロ環Zを具体的に例示すると、下記式
【0107】
【0108】
で示されるスピロ環Zとなることが好ましい。なお、前記式中、点線の結合手を有する炭素原子が13位の炭素原子である。
【0109】
<好適なオリゴマー鎖基の置換位置>
本発明のクロメン化合物は、分子内に少なくとも1つの前記オリゴマー鎖基を有さなければならない。そのため、R1、R2、R3、およびR4で説明した基において、置換基を有してもよい基が有する置換基は、前記オリゴマー鎖基であってもよい。中でも、前記オリゴマー鎖基は、インデノナフトピランの3位(R3、およびR4)、6位(R1)、7位(R1)、11位(R2)、又は13位のスピロ環基(式Z)に置換していることが、本発明の効果、クロメン化合物自体の生産性を向上できるために好ましい。なお、3位、6位、7位、11位は、直接、前記オリゴマー鎖基が結合していてもよいし、該位置に結合している基が有する置換基として、オリゴマー鎖基が導入されてもよい。
【0110】
<特に好適なクロメン化合物>
本発明において、好適なクロメン化合物としては、下記式(2)で示されるクロメン化合物が挙げられる。ただし、このクロメン化合物も、分子内に少なくとも1つの前記オリゴマー鎖基を有するものでなくてはならない。
【0111】
【0112】
式中、
R1、R2、a、b、および環Zは、前記式(1)におけるものと同義である。a-2とは、整数aから2を引いた数であり、a-2は、0~2の整数となる。また、b-1は、整数bから1を引いた数であり、b-1は、0~3の整数となる。
【0113】
<R100、およびR101>
R100、およびR101は、前記<R1、およびR2>で説明した基の中でも、以下の基であることが好ましい。具体的には、前記オリゴマー鎖基、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、置換基を有してもよい複素環基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキルチオ基、置換基を有してもよい炭素数6~10のアリールチオ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~7のアルキルカルボニル基、炭素数2~7のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数7~11のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数7~11のアラルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~12のアリールオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~12のヘテロアリール基、チオール基、炭素数2~9のアルコキシアルキルチオ基、炭素数1~6のハロアルキルチオ基、又は炭素数3~8のシクロアルキルチオ基である。これら具体的な基は、前記<R1、およびR2>で説明した基と同じ基が挙げられる。
【0114】
また、R100、およびR101は、一緒になって下記式(3)
【0115】
【0116】
式中、2つの*印は、それぞれ、6位と7位の炭素原子に結合していることを表している、
で示されるような環を形成してもよい。
【0117】
<X、およびY>
式中、X、およびYは、一方または両方が硫黄原子、メチレン基、酸素原子、または下記式(4)
【0118】
【0119】
で示される基である。
【0120】
前記式において、R7は、前記オリゴマー鎖基、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6アルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数3~12のヘテロアリール基である。これら具体的な基は、前記<R1、およびR2>で例示した具体的な基が挙げられ、好ましい基も同じである。
【0121】
<R5、およびR6>
R5およびR6は、それぞれ独立に、前記オリゴマー鎖基、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、置換基を有してもよい複素環基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~7のアルキルカルボニル基、炭素数2~7のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数7~11のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数7~11のアラルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~12のアリール基、チオール基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~9のアルコキシアルキルチオ基、炭素数1~6のハロアルキルチオ基、炭素数3~8のシクロアルキルチオ基、又は置換基を有してもよい炭素数6~10のアリールチオ基であることが好ましい。これら具体的な基は、前記<R1、およびR2>で例示した具体的な基が挙げられ、好ましい基も同じである。
【0122】
また、R5およびR6は、それらが結合する炭素原子と共に、置換基を有してもよい脂肪族環を形成してもよい。脂肪族環を具体的に例示すると、シクロペンタン環、シクロヘキサン環などが挙げられる。また、該脂肪族環が有する置換基は、特に制限されるものではないが、環を形成する基における1~8個の水素原子、特に好ましくは1~4個の水素原子が置換される置換基として、前記オリゴマー鎖基、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、原子数3~8の複素環基、シアノ基、ニトロ基、およびハロゲン原子から選ばれる置換基が挙げられる。これら置換基の具体例は、前記<R1、およびR2>で説明したのと同じ基が挙げられる。
【0123】
式中、cは1~3の整数である。
【0124】
<特に好適なR100、およびR101>
以上のような基の中でも、得られたフォトクロミック化合物の発色色調、発色濃度等を考慮すると、R100、およびR101は、前記オリゴマー鎖基、水素原子、前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記複素環基、前記アリール基、前記アリールチオ基が好ましい。また、前記式(3)で示される環となってもよい。なお、前記置換基を有してもよい基の置換基は、オリゴマー鎖基であってもよい。
【0125】
<R200>
R200は、前記<R1、およびR2>で説明した基の中でも、以下の基であることが好ましい。具体的には、前記オリゴマー鎖基、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基、置換基を有してもよい複素環基、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、炭素数2~7のアルキルカルボニル基、炭素数2~7のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数7~11のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数7~11のアラルコキシ基、置換基を有してもよい炭素数6~12のアリール基、チオール基、炭素数1~6のアルキルチオ基、炭素数2~9のアルコキシアルキルチオ基、炭素数1~6のハロアルキルチオ基、炭素数3~8のシクロアルキルチオ基、又は置換基を有してもよい炭素数6~10のアリールチオ基である。これら基の具体例は、前記<R1、およびR2>で説明したのと同じ基が挙げられる。好ましい基も同じである。
【0126】
<特に好適なR200>
以上のような基の中でも、得られたフォトクロミック化合物の発色色調、発色濃度等を考慮すると、R200は、前記オリゴマー鎖基、水素原子、前記アルコキシ基、前記複素環基、前記アリール基が好ましい。前記置換基を有してもよい基の置換基は、前記オリゴマー鎖基であってもよい。
【0127】
<R300および、R400>
R300、およびR400は、それぞれ独立に、前記オリゴマー鎖基、ヒドロキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アミノ基、置換アミノ基複素環基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキルチオ基、又は置換基を有してもよい炭素数6~10のアリールチオ基であることが好ましい。これら具体的な基は、前記<R1、およびR2>で例示した具体的な基が挙げられ、好ましい基も同じである。
【0128】
a’はR300の個数を示し、0~5の整数であり、a’が2以上である場合には、R300は、互いに同一でも異なる基であってもよい。
【0129】
b’はR400の個数を示し、0~5の整数であり、b’が2以上である場合には、R400は、互いに同一でも異なる基であってもよい。
【0130】
<特に好適なR300および、R400>
以上のような基の中でも、得られたフォトクロミック化合物の発色色調、発色濃度等を考慮すると、R300および、R400は、前記オリゴマー鎖基、前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記置換アミノ基、前記複素環基が好ましい。前記置換基を有してもよい基の置換基は、前記オリゴマー鎖基であってもよい。
【0131】
<好適なオリゴマー鎖基の好適な置換位置>
前記オリゴマー鎖基はインデノナフトピランの3位(R300、又はR400)、6位(R100)、7位(R101)、11位(R200)、又は13位(環(Z))にあることが、本発明の効果、クロメン化合物自体の生産性を向上できるため好ましい。また、3位(R300、又はR400)に存在する場合には、R300、又はR400は、パラ位に前記オリゴマー鎖基を有するフェニル基となることが好ましい
<好適なクロメン化合物の具体例>
本発明において、特に好適なクロメン化合物を具体的に例示すれば、下記式で示されるクロメン化合物が挙げられる。
なお、当然のことながら、下記式において、
nは、オリゴマー鎖基の繰り返し単位の数を指すものであり、3~200の整数である。クロメン化合物自体の生産性、フォトクロミック特性等を考慮すると、nは3~150が好ましく、特に10~100が好ましい。
【0132】
【0133】
【0134】
<クロメン化合物の製造方法>
本発明のクロメン化合物は、如何なる合成法によって製造してもよい。クロメン化合物の製造方法の代表的な例について説明するが、この方法に限定されるわけではない。尚、以下の説明において、各式中の符号は、特記しないかぎり、前述した式について説明したとおりの意味を示す。
【0135】
クロメン化合物の製造は下記式(7)
【0136】
【0137】
式中、R1、R2、aおよびbの定義は式(1)におけると同じである、
で示されるナフトール化合物と、
下記式(8)
【0138】
【0139】
式中、R3およびR4、の定義は式(1)におけると同じである、
で示されるプロパルギルアルコール化合物とを、酸触媒存在下で反応させる方法によりクロメン化合物が好適に行うことができる。ナフトール化合物とプロパルギルアルコール化合物との反応比率は、好ましくは1:10~10:1(モル比)の範囲から選択される。また、酸触媒としては例えば硫酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酸性アルミナ等が用いられる。酸触媒はナフトール化合物とプロパルギルアルコール化合物との総和100重量部当り、好ましくは0.1~10重量部の範囲で用いられる。反応温度は、0乃至200℃が好ましい。溶媒としては、好ましくは非プロトン性有機溶媒、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン等が使用される。かかる反応により得られた生成物の精製方法は特に限定されない。例えば、シリカゲルカラム精製を行い、さらに再結晶により、生成物の精製を行なうことができる。
【0140】
具体的に、ポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基(例えば、前記式(5a)で示されるオリゴマー鎖基)を導入したクロメン化合物の製造例を以下に例示する。すなわち、前記式(7)で示されるナフトール化合物にポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基を置換させる方法を以下に例示する。
【0141】
下記式(9)
【0142】
【0143】
式中、R8、R9およびnの定義は式(5a)に同じである、
で表されるポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルを下記式(10)
【0144】
【0145】
式中、Yはトシル基やハロゲン原子などの脱離基であり、R8、R9およびnの定義は式(5a)に同じである、
で表されるトシル基やハロゲン原子など脱離性の高い置換基に変換する。
【0146】
トシル基に変換する方法例としては、トリエチルアミンなどの3級アミンなどの塩基性触媒存在下、p-トルエンスルホニルクロリドと反応させる方法が好適に採りうる。ヨウ素原子や、臭素原子、塩素原子への変換方法としては、アッペル反応により変換できる。具体的にはトリフェニルホスフィン存在下、四ハロゲン化炭素、ヨウ素、ヨウ化メチル、ヘキサアセトンやトリホスゲンなどと反応させることが好適に採りうる。
【0147】
続いて、ヒドロキシル基を有するベンゾフェノン化合物と前記式(10)とを、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒中で、炭酸カリウムなどの塩基存在下反応させることにより、下記式(11)
【0148】
【0149】
式中、Rは式(10)で表わされる基からYを除去した基であり、R1、R2、aおよびbは、式(1)における定義と同じである、
で表されるポリアルキレングリコールオリゴマー鎖が置換したベンゾフェノン化合物を得ることができる。
【0150】
前記式(11)のベンゾフェノン化合物を公知の方法を用いて、Stobbe反応、環化反応、アルカリ又は、酸を用いた加水分解反応、ベンジル保護、アルカリ又は、酸を用いた加水分解反応による脱ベンジル化により、下記式(12)
【0151】
【0152】
式中、Bnはベンジル基であり、Rの定義は式(11)に同じであり、R1、R2、aおよびbの定義は式(1)に同じである、
で示されるベンジル保護されたカルボン酸を得る。該ベンジル保護されたカルボン酸を、Curtius転位、Hofmann転位、Lossen転位等の方法によりアミンに変換し、これからそれ自体公知の方法によりジアゾニウム塩を調製する。このジアゾニウム塩を、Sandmeyer反応等によりブロマイドに変換し、得られたブロマイドをマグネシウムやリチウム等と反応させて有機金属化合物を調製する。この有機金属化合物を、下記式(13)
【0153】
【0154】
式中、環Zの定義は式(1)に同じである、
で示されるケトンと、-80~70℃、10分~4時間、有機溶媒中で反応させ、次いで水素とパラジウム炭素等で、脱ベンジル化反応を行い、中性~酸性条件下で、10~120℃で10分~2時間、Friedel-Crafts反応を行うことにより、下記式(14)
【0155】
【0156】
式中、Rの定義は式(1)に同じであり、R1、R2、環Z、aおよびbの定義は式(1)に同じである、
のナフトール化合物を合成することができる。かかる反応において、前記有機金属化合物と前記式(13)で示されるケトンとの反応比率は、好ましくは、1:10~10:1(モル比)の範囲から選択される。反応温度は、-80~70℃が好ましい。溶媒としては、非プロトン性有機溶媒、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン等が好ましく使用される。また、前記中性~酸性条件下でのFriedel-Crafts反応は、例えば酢酸、塩酸、硫酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酸性アルミナ等の酸触媒を用いて行うことが好ましい。この反応に際しては、例えばテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン等の非プロトン性有機溶媒が使用される。
【0157】
前記式(14)のナフトール化合物と、前記式(8)で表されるプロパルギルアルコールとを反応させることにより、ポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基がインデノ位またはナフト位に(R1またはR2)に置換された本発明のクロメン化合物を得ることができる。
【0158】
また、前記式(8)で表されるプロパルギルアルコールにポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基を導入する方法としては、前記式(11)で表されるようなポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基を有するベンゾフェノン化合物から下記式(15)
【0159】
【0160】
式中、Rの定義は式(11)に同じであり、R4の定義は式(1)に同じである、
で示されるプロパルギルアルコールを合成した後、国際公開第WO2001/60881パンフレット、国際公開第WO2005/028465号パンフレット等の論文に記載の反応方法に基づいて合成した前記式(7)のナフトール化合物と、反応させることにより、ポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基がR3およびR4に置換された本発明のクロメン化合物を得ることができる。
【0161】
また、あらかじめポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基を導入した方法以外にも、クロメン化合物合成後に、導入することも可能である。具体的には、ポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基を導入したい位置にヒドロキシル基や、1級または2級アミノ基、チオール基などの反応性置換基を置換しておく。次いで、ポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基を有する本発明のクロメン化合物の前駆体を上記方法により製造する。そして、得られた前駆体の反応性置換基と、反応可能な置換基(この基は、前記2価の結合基Lを形成する基であることが好ましい。)を有するポリアルキレンオキシドオリゴマーとを、反応させることにより、本発明のクロメン化合物を製造する。
【0162】
例えば、カルボキシル基を有するポリアルキレンオキシドオリゴマーとの、エステル化反応を行うことにより前記Lを形成することができる。具体的には、硫酸、塩酸等の鉱酸、芳香族スルホン酸等の有機酸、あるいはフッ化ホウ素エーテル等のルイス酸存在下にトルエン等の溶媒中、必要に応じて加熱しながら撹拌し、生成する水を共沸により除去して反応させることができる。なお、前記エステル化反応において、水を除去する方法としては、無水硫酸マグネシウム、若しくはモレキュラーシーブス等の乾燥剤により水を除去する方法、又は、ジシクロヘキシルカルボジイミド等に代表される脱水剤の存在下で水を除去する方法が挙げられる。
【0163】
また、カルボン酸ハライドを有するポリアルキレンオキシドオリゴマーとエステル化反応を行うことにより前記Lを形成することもできる。具体的には、ピリジン、ジメチルアニリン等の塩基の存在下、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒中、必要に応じて加熱しながら撹拌し、生成するハロゲン化水素を除去する方法等を採用することができる。
【0164】
カルボキシル基やカルボン酸ハライドを有するポリアルキレンオキシドオリゴマーは公知の方法により合成しうる。具体的には、前記式(9)のポリアルキレンオキシドオリゴマーモノアルキルエーテルとコハク酸無水物などの環状酸無水物とを塩基または酸触媒存在下、反応させることにより、カルボキシル基を有するポリアルキレンオキシドオリゴマーモノアルキルエーテルを得ることができる。また、前記式(10)のハロゲン原子を有するポリアルキレンオキシドオリゴマーモノアルキルエーテルをマグネシウムやリチウム等と反応させて有機金属化合物を調製した後、二酸化炭素と反応させることによっても、カルボキシル基を有するポリアルキレンオキシドオリゴマーモノエーテルを得ることができる。得られたカルボキシル基を有するポリアルキレンオキシドオリゴマーモノエーテルを塩化チオニルや、塩化オキサリルと反応させることにより、カルボン酸ハライドを有するポリアルキレンオキシドオリゴマーモノエーテルを得ることができる。
【0165】
以上、ポリアルキレングリコール鎖基をインデノナフトピラン部位に導入して、本発明のクロメン化合物を製造する方法を説明したが、他のオリゴマー鎖基を導入する場合にも、同様の方法が採用できる。具体的には、ポリアルキレンオリゴマー鎖(基)を有する化合物の代わりに、ポリエステルオリゴマー鎖(基)、又はポリエステルポリエーテルオリゴマー鎖(基)を有する化合物を使用して、同様の操作を行えばよい。
【0166】
<クロメン化合物の同定>
本発明のクロメン化合物は、一般に常温常圧での固体又は粘稠な液体として存在し、次の手段で確認できる。具体的には、薄層クロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどの分離操作により、該クロメン化合物以外に、原料化合物および着色分などの副生成物が無いこと確認する。
【0167】
得られたクロメン化合物を、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)で測定することにより、δ:5.0~9.0ppm付近にアロマティックなプロトンおよびアルケンのプロトンに基づくピーク、δ:1.0~4.0ppm付近にアルキル基およびアルキレン基のプロトンに基づくピークが現れる。また、それぞれのスペクトル強度を相対的に比較することにより、それぞれの結合基のプロトンの個数を知ることができる。
【0168】
なお、フォトクロミック硬化性組成物、および該硬化性組成物からなる硬化体から、該クロメン化合物を抽出して前記と同様の方法で確認することもできる。
【0169】
<他のフォトクロミック化合物との組み合わせ(フォトクロミック組成物)>
本発明のクロメン化合物は、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等の一般の有機溶媒によく溶ける。このような溶媒に前記式(1)で示されるクロメン化合物を溶かしたとき、一般に溶液はほぼ無色透明であり、太陽光あるいは紫外線を照射すると速やかに発色し、光を遮断すると可逆的に速やかに元の無色にもどる良好なフォトクロミック作用を呈する。
【0170】
そして、本発明のクロメン化合物は、目的とする用途に応じて、その他のフォトクロミック化合物と組み合わせて使用することができる。例えば、フォトクロミックレンズとして要求される様々な色調を得るために他のフォトクロミック化合物と組み合わせて用いることもできる。組み合わせるフォトクロミック化合物は、公知の化合物を何ら制限なく用いることができる。例えば、フルギド、フルギミド、スピロオキサジン、クロメン等が挙げられる。中でも、発退色時の色調を均一に保つことができ、フォトクロミック性の劣化に伴う発色時の色ずれを抑制でき、さらに、初期着色を小さくできるという点からクロメン化合物が特に好ましい。ただし、環境依存性の違いによる発退色時の色調の色ずれを抑制するという観点から、他のフォトクロミック化合物も、オリゴマー鎖を有するクロメン化合物であることが好ましい。または、本発明のクロメン化合物を複数種使用し、色調を調整することが好ましい。
【0171】
本発明のクロメン化合物と他のクロメン化合物とを含むフォトクロミック組成物とする場合、各クロメン化合物の配合割合は、所望とする色調に応じて適宜決定される。
<フォトクロミック硬化性組成物>
本発明のクロメン化合物、および前記フォトクロミック組成物は、重合性化合物と組み合わせて、フォトクロミック硬化性組成物として使用することが好ましい。
【0172】
本発明において、フォトクロミック硬化性組成物は、クロメン化合物の発色強度、選択されたレンズ材料、およびレンズの厚さに依存するため、一概には言えないが、以下の配合割合とすることが好ましい。具体的には、重合性化合物100質量部に対し、本発明のクロメン化合物、又はフォトクロミック組成物を0.001~10質量部とするのが好ましい。
【0173】
この配合量は、使用する用途に応じて、最適配合量を調整することが好ましい。例えば、該フォトクロミック硬化性組成物を薄膜の光学物品として使用する場合と、厚膜の光学物品として使用する場合には、以下の通りである。
【0174】
具体的に、該フォトクロミック硬化性組成物をコーティングのような薄膜、例えば100μm程度の薄膜(該フォトクロミック硬化性組成物が重合してなる高分子膜)にする場合は、他の重合性単量体100質量部に対して、本発明のクロメン化合物、又はフォトクロミック組成物を0.001~10質量部で色調を調整するのがよい。
【0175】
厚い硬化体(該フォトクロミック硬化性組成物が重合してなる高分子成型体)、例えば厚み1ミリ以上の硬化体の場合は、厚い硬化体あるいは厚い硬化体を与える他の重合性単量体100質量部に対して、本発明のクロメン化合物、又はフォトクロミック組成物0.001~1質量部で色調を調整するのがよい。
【0176】
<重合性化合物>
本発明において使用する重合性化合物((B)成分とする場合もある)としては、ラジカル重合性化合物(B1)、エポキシ系重合性化合物(B2)、ウレタン結合やウレア結合等を形成しうるウレタン若しくはウレア系重合性化合物(B3)、および(B1~B3)以外のその他の重合性化合物(B4)を挙げることができる。
【0177】
<ラジカル重合性化合物>
ラジカル重合性化合物(B1)は、大きく分けて、(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリル系重合性化合物(B1-1)、ビニル基を有するビニル系重合性化合物(B1-2)、アリル基を有するアリル系重合性化合物(B1-3)、シルセスキオキサン系重合性化合物(B1-4)に分類される。
以下に、その具体例を示す。
【0178】
(B1-1)(メタ)アクリル系重合性化合物の例
(B1-1-1)2官能(メタ)アクリル系重合性化合物
本発明のフォトクロミック硬化性組成物は、(B1-1-1)2官能(メタ)アクリル系重合性化合物を含むことが好ましい。以下に、その具体例を示す。具体的には、下記式(16)、(17)および(18)に示す化合物である。下記式(16)で示される化合物を、以下、単に(B1-1-1-1)成分とする場合もあり、下記式(17)で示される化合物を、以下、単に(B1-1-1-2)成分とする場合もあり、下記式(18)で示される化合物を、以下、単に(B1-1-1-3)成分とする場合もある。その他、ウレタン結合を有する2官能(メタ)アクリル系重合性化合物(以下、単に(B1-1-1-4)成分とする場合もある)、前記(B1-1-1-1)成分、前記(B1-1-1-2)成分、前記(B1-1-1-3)成分、および前記(B1-1-1-4)成分に該当しない2官能(メタ)アクリル系重合性化合物(以下、単に(B1-1-1-5)成分とする場合もある)について説明する。
【0179】
(B1-1-1-1)下記式(16)で示される化合物
【0180】
【0181】
式中、R13およびR14は、それぞれ、水素原子、又はメチル基であり、gおよびhはそれぞれ独立に0以上の整数であり、かつ、g+hは平均値で2以上50以下である。
【0182】
なお、上記式(16)で示される重合性化合物は、通常、分子量の異なる分子の混合物の形で得られる。そのため、gおよびhは平均値で示した。
【0183】
上記式(16)で示される化合物を具体的に例示すると、以下のとおりである。
ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエチレングリコールジメタクリレート、ペンタプロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ペンタプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールとポリエチレングリコールの混合物よりなるジメタアクリレート(ポリエチレンが2個、ポリプロピレンが2個の繰り返し単位を有する)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(特に平均分子量330)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(特に平均分子量536)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(特に平均分子量736)、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(特に平均分子量536)、ポリエチレングリコールジアクリレート(特に平均分子量258)、ポリエチレングリコールジアクリレート(特に平均分子量308)、ポリエチレングリコールジアクリレート(特に平均分子量508)、ポリエチレングリコールジアクリレート、(特に平均分子量708)、ポリエチレングリコールメタクリレートアクリレート(特に平均分子量536)。
【0184】
(B1-1-1-2)下記式(17)で示される化合物
【0185】
【0186】
式中、R15およびR16は、それぞれ、水素原子又はメチル基であり、
R17およびR18は、それぞれ、水素原子又はメチル基であり、
R19は、水素原子又はハロゲン原子であり、
Bは、-O-,-S-,-(SO2)-,-CO-,-CH2-,
-CH=CH-,-C(CH3)2-,-C(CH3)(C6H5)-
の何れかであり、
iおよびjはそれぞれ1以上の整数であり、i+jは平均値で2以上30以下である。
【0187】
なお、上記式(17)で示される重合性化合物は、通常、分子量の異なる分子の混合物の形で得られる。そのため、iおよびjは平均値で示した。
【0188】
上記式(17)で示される化合物の具体例としては、例えば、以下のビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0189】
2,2-ビス[4-メタクリロイルオキシ・エトキシ)フェニル]プロパン(i+j=2)、2,2-ビス[4-メタクリロイルオキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン(i+j=4)、2,2-ビス[4-メタクリロイルオキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(i+j=7)、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン(i+j=2)、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン(i+j=4)、2,2-ビス[4-アクリロイルオキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン(i+j=4)、2,2-ビス[4-アクリロイルオキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(i+j=3)、2,2-ビス[4-アクリロイルオキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(i+j=7)、2,2-ビス[4-メタクリロイルオキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(i+j=10)、2,2-ビス[4-メタクリロイルオキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(i+j=17)、2,2-ビス[4-メタクリロイルオキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(i+j=30)、2,2-ビス[4-アクリロイルオキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(i+j=10)、2,2-ビス[4-アクリロイルオキシ(ポリエトキシ)フェニル]プロパン(i+j=20)。
【0190】
(B1-1-1-3)下記式(18)で示される化合物
【0191】
【0192】
式中、R20およびR21は、それぞれ、水素原子又はメチル基であり、
kは平均値で1~20の数であり、
AおよびA’は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2~15の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、Aが複数存在する場合には、複数のAは同一の基であっても、異なる基であってもよい。
【0193】
上記式(18)で示される化合物は、ポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸とを反応させることにより製造することができる。
【0194】
ここで、使用されるポリカーボネートジオールとしては、以下のものを例示することができる。具体的には、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール等のポリアルキレングリコールのホスゲン化で得られるポリカーボネートジオール(500~2,000の数平均分子量を有するもの);
2種以上のポリアルキレングリコールの混合物、例えば、トリメチレングリコールとテトラメチレングリコールの混合物、テトラメチレングリコールとヘキサメチレンジグリコールの混合物、ペンタメチレングリコールとヘキサメチレングリコールの混合物、テトラメチレングリコールとオクタメチレングリコールの混合物、ヘキサメチレングリコールとオクタメチレングリコールの混合物等)のホスゲン化で得られるポリカーボネートジオール(数平均分子量500~2,000);
1-メチルトリメチレングリコールのホスゲン化で得られるポリカーボネートジオール(数平均分子量500~2,000);。
【0195】
(B1-1-1-4)ウレタン結合を有する2官能(メタ)アクリル重合性化合物
(B1-1-1-4)成分は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応物が代表的である。ここで、ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンイソシアネート、2,2,4-ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソプロピリデンビス-4-シクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート又はメチルシクロヘキサンジイソシアネートを挙げることができる。
【0196】
一方、ポリオールとしては、炭素数2~4のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ヘキサメチレンオキシドの繰り返し単位を有するポリアルキレングルコール、或いはポリカプロラクトンジオール等のポリエステルジオールを挙げることができる。また、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンジオール、又はエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,8-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、等を例示することができる。
【0197】
また、これらポリイソシアネートおよびポリオールの反応によりウレタンプレポリマーとしたものを、2-ヒドロキシ(メタ)アクリレートで更に反応させた反応混合物や、前記ジイソシアネートを2-ヒドロキシ(メタ)アクリレートと直接反応させた反応混合物であるウレタン(メタ)アクリレート等も使用することができる。
【0198】
ウレタン結合を有する2官能(メタ)アクリル重合性化合物としては、新中村化学工業(株)製のU-2PPA(分子量482)、UA-122P(分子量1,100)、U-122P(分子量1,100)、U-108A、U-200PA、UA-511、U-412A、UA-4100、UA-4200、UA-4400、UA-2235PE、UA-160TM、UA-6100、UA-6200、U-108、UA-4000、UA-512、およびダイセルユーシービー社製のEB4858(分子量454)、および日本化薬(株)製UX-2201、UX3204、UX4101、6101、7101、8101等を挙げることができる。
【0199】
(B1-1-1-5)その他の2官能(メタ)アクリル系重合性化合物
(B1-1-1-5)成分としては、置換基を有していてもよいアルキレン基の両末端に(メタ)アクリル基を有するような化合物が挙げられる。(B1-1-1-5)成分としては、炭素数6~20のアルキレン基を有するものが好ましい。具体的には、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート等が挙げられる。
【0200】
その他、(B1-1-1-5)成分としては、硫黄原子を含むような2官能(メタ)アクリレートモノマーを挙げることができる。硫黄原子はスルフィド基として分子鎖の一部を成しているものが好ましい。具体的には、ビス(2-メタクリロイルオキシエチルチオエチル)スルフィド、ビス(メタクリロイルオキシエチル)スルフィド、ビス(アクリロイルオキシエチル)スルフィド、1,2-ビス(メタクリロイルオキシエチルチオ)エタン、1,2-ビス(アクリロイルオキシエチル)エタン、ビス(2-メタクリロイルオキシエチルチオエチル)スルフィド、ビス(2-アクリロイルオキシエチルチオエチル)スルフィド、1,2-ビス(メタクリロイルオキシエチルチオエチルチオ)エタン、1,2-ビス(アクリロイルオキシエチルチオエチルチオ)エタン、1,2-ビス(メタクリロイルオキシイソプロピルチオイソプロピル)スルフィド、1,2-ビス(アクリロイルオキシイソプロピルチオイソプロピル)スルフィドが挙げられる。
【0201】
以上の(B1-1-1-1)成分、(B1-1-1-2)成分、(B1-1-1-3)成分、(B1-1-1-4)成分、および(B1-1-1-5)成分においては、各成分における単独成分を使用することもできるし、前記で説明した複数種類のものを使用することもできる。複数種類のものを使用する場合には、(B1-1-1)成分の基準となる質量は、複数種類のものの合計量である。
【0202】
次に、(B1-1-2)多官能(メタ)アクリル系重合性化合物について説明する。
【0203】
(B1-1-2)多官能(メタ)アクリル系重合性化合物
(B1-1-2)成分としては、下記式(19)で示される化合物(以下、単に(B1-1-2-1)成分とする場合もある)、ウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリル系重合性化合物(以下、単に(B1-1-2-2)成分とする場合もある)、並びに、前記(B1-1-2-1)成分、および前記(B1-1-2-2)成分に該当しない多官能(メタ)アクリル系重合性化合物(以下、単に(B1-1-2-3)成分とする場合もある)が挙げられる。
【0204】
(B1-1-2-1) 下記式(19)で示される化合物
多官能(メタ)アクリル系重合性化合物としては、下記式(19)で示される化合物が挙げられる。
【0205】
【0206】
式中、R22は、水素原子又はメチル基であり、
R23は、水素原子又は炭素数1~2のアルキル基であり、
R24は、炭素数1~10である3~6価の有機基であり、
lは、平均値で0~3の数であり、mは3~6の数である。
【0207】
R23で示される炭素数1~2のアルキル基としてはメチル基が好ましい。R24で示される有機基としては、ポリオールから誘導される基、3~6価の炭化水素基、3~6価のウレタン結合を含む有機基が挙げられる。
【0208】
上記式(19)で示される化合物を具体的に示すと以下の通りである。トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート。
【0209】
(B1-1-2-2)ウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリル系重合性化合物
(B1-1-2-2)成分は、(B1-1-1-4)成分で説明したポリイソシアネート化合物と、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のポリオール化合物を反応させて得られるものであり、分子中に3つ以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物である。市販品として、新中村化学工業(株)製のU-4HA(分子量596、官能基数4)、U-6HA(分子量1,019、官能基数6)、U-6LPA(分子量818、官能基数6)、U-15HA(分子量2,300、官能基数15)を挙げることができる。
【0210】
(B1-1-2-3)その他の多官能(メタ)アクリル系重合性化合物
(B1-1-2-3)成分としては、ポリエステル化合物の末端を(メタ)アクリル基で修飾した化合物である。原料となるポリエステル化合物の分子量や(メタ)アクリル基の修飾量により種々のポリエステル(メタ)アクリレート化合物が市販されているものを使用することができる。具体的には、4官能ポリエステルオリゴマー(分子量2,500~3,500、ダイセルユーシービー社、EB80等)、6官能ポリエステルオリゴマー(分子量6,000~8,000、ダイセルユーシービー社、EB450等)、6官能ポリエステルオリゴマー(分子量45,000~55,000、ダイセルユーシービー社、EB1830等)、4官能ポリエステルオリゴマー(特に分子量10,000の第一工業製薬社、GX8488B等)等を挙げることができる。
【0211】
以上に例示した(B1-1-2)成分((B1-1-2-1)成分、(B1-1-2-2)成分、(B1-1-2-3)成分)を使用することにより、重合により架橋密度が向上し、得られる硬化体の表面硬度を高めることができる。したがって、特に、コーティング法で得られるフォトクロミック硬化体(積層体)とする場合においては、(B1-1-2)成分を含むことが好ましい。特に(B1-1-2)成分の中でも(B1-1-2-1)成分を使用することが好ましい。
【0212】
以上の(B1-1-2-1)成分、(B1-1-2-2)成分、および(B1-1-2-3)成分は、各成分における単独成分を使用することもできるし、前記で説明した複数種類のものを使用することもできる。複数種類のものを使用する場合には、(B1-1-2)成分の基準となる質量は、複数種類のものの合計量である。
【0213】
次に、(B1-1-3)単官能(メタ)アクリル系重合性化合物について説明する。
【0214】
(B1-1-3)単官能(メタ)アクリル系重合性化合物
(B1-1-3)成分としては、下記式(20)で示される化合物が挙げられる。
【0215】
【0216】
式中、R25は、水素原子又はメチル基であり、
R26は、水素原子、メチルジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、またはグリシジル基であり、
oは、0~10の整数であり、
pは、0~20の整数である。
【0217】
上記式(20)で示される化合物を具体的に示すと以下の通りである。
【0218】
メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(特に平均分子量293)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(特に平均分子量468)、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(特に平均分子量218)、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、(特に平均分子量454)、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシジルメタクリレート。
【0219】
(B1-2)ビニル系重合性化合物
ビニル基を有するビニル系重合性化合物としては、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、エチルビニルエーテル、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ブタジエン、1,4-ペンタジエン、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン、1,2-ジビニルベンゼン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルプロパンジシロキサン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジビニルスルホキシド、ジビニルペルスルフィド、ジメチルジビニルシラン、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、メチルトリビニルシラン、α-メチルスチレンおよびα-メチルスチレンダイマー等を挙げることができる。
【0220】
上記で例示したビニル系重合性化合物の中で、α-メチルスチレンおよびα-メチルスチレンダイマーは、重合調整剤として機能し、フォトクロミック組成物の成型性を向上させる。
【0221】
(B1-3)アリル系重合性化合物
アリル基を有するアリル系重合性化合物としては、以下のものを例示することができる。ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量550)、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量350)、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量1500)、ポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量450)、メトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量750)、ブトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量1600)、メタクリロイルオキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量560)、フェノキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量600)、メタクリロイルオキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量430)、アクリロイルオキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量420)、ビニロキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量560)、スチリロキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量650)、メトキシポリエチレンチオグリコールアリルチオエーテル(特に平均分子量730)。
【0222】
なお、アリル系重合性化合物は、連鎖移動剤として作用することで、硬化性組成物のフォトクロミック性(発色濃度、退色速度)を向上させることが可能である。
【0223】
(B1-4)シルセスキオキサン重合性化合物
シルセスキオキサン重合性化合物は、ケージ状、ハシゴ状、ランダムといった種々の分子構造を取るものであり、(メタ)アクリル基等のラジカル重合性基を有している。
【0224】
このようなシルセスキオキサン重合性化合物の例としては、下記式(21)で示されるものが挙げられる。
【0225】
【0226】
式中、qは、重合度であり、3~100の整数であり、
複数個あるR27は、互いに同一若しくは異なっていてもよく、ラジカル重合性基、ラジカル重合性基を含む有機基、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はフェニル基であり、少なくとも1つのR27は、ラジカル重合性基、又はラジカル重合性基を含む有機基である。
【0227】
ここで、R27で示されるラジカル重合性基、又はラジカル重合性基を含む有機基としては、(メタ)アクリル基;(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、(3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ基等の(メタ)アクリル基を有する有機基;アリル基;アリルプロピル基、アリルプロピルジメチルシロキシ基等のアリル基を有する有機基;ビニル基;ビニルプロピル基、ビニルジメチルシロキシ基等のビニル基を有する有機基等が挙げられる。
【0228】
<エポキシ系重合性化合物>
エポキシ系重合性化合物(B2)は、大きく分けて、脂肪族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物および芳香族エポキシ化合物に分類され、その具体例としては、以下のものを例示することができる。
脂肪族エポキシ化合物として、エチレンオキシド、2-エチルオキシラン、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2,2’-メチレンビスオキシラン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジグリシジルエーテル、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0229】
脂環族エポキシ化合物として、イソホロンジオールジグリシジルエーテル、ビス-2,2-ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0230】
芳香族エポキシ化合物として、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0231】
また、上記以外にも、エポキシ基と共に、分子内に硫黄原子を有するエポキシ系重合性化合物も使用することができる。このような含硫黄原子エポキシ系重合性化合物は、特に屈折率向上に寄与するものであり、鎖状脂肪族系および環状脂肪族系のものがあり、その具体例は、次のとおりである。
【0232】
鎖状脂肪族系含硫黄原子エポキシ系重合性化合物としては、ビス(2,3-エポキシプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エポキシプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)エタン、1,2-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)プロパン、1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)プロパン、1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-2-メチルプロパン、1,4-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)ブタン、1,4-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-2-メチルブタン、1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)ブタン、1,5-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)ペンタン、1,5-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-2-メチルペンタン、1,5-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-3-チアペンタン、1,6-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)ヘキサン、1,6-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-2-メチルヘキサン、3,8-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-3,6-ジチアオクタン、1,2,3-トリス(2,3-エポキシプロピルチオ)プロパン、2,2-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)プロパン、2,2-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)-1-(2,3-エポキシプロピルチオ)ブタンが挙げられる。
【0233】
環状脂肪族系含硫黄原子エポキシ系重合性化合物としては、1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス[<2-(2,3-エポキシプロピルチオ)エチル>チオメチル]-1,4-ジチアン、2,5-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)-2,5-ジメチル-1,4-ジチアンが挙げられる。
【0234】
<ウレタン系重合性化合物(ウレア系重合性化合物を含む)>
ウレタン系重合性化合物(B3)は、重合の繰り返し単位がウレタン結合やウレア結合により連鎖するものであり、 例えば、ウレタン結合は、ポリオールとポリイソシアネートの反応で形成されるものであり、このウレタン結合の中には、ポリオールとポリイソチアシアネートとの反応、或いはポリチオールとポリイソチアイソシアネートとの反応で形成されるチオウレタン結合も含まれる。
【0235】
また、ウレア結合は、ポリアミンとポリイソシアネートとの反応で形成されるものであり、このウレア結合の中には、ポリアミンとポリイソチアシアネートとの反応で形成されるチオウレア結合も含まれる。
【0236】
上記の説明から理解されるように、本発明において、ウレタン若しくはウレア系重合性化合物としては、ポリオール(B3-1)、ポリチオール(B3-2)、ポリアミン(B3-3)、ポリイソシアネート(B3-4)、ポリイソチアシアネート(B3-5)の中から、上記のウレタン結合(チオウレタン結合)或いはウレア結合(チオウレア結合)が形成されるように、複数種の化合物が選択して使用される。
【0237】
このようなウレタン系重合性化合物の1種として使用される化合物としては、具体的には、以下のものが使用される。
【0238】
(B3-1)ポリオール
ポリオールは、一分子中にOH基を2つ以上有している化合物であり、例えば、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-ヒドロキシ化合物、1分子中に2個以上のOH基を含有するポリエステル(ポリエステルポリオール)、1分子中に2個以上のOH基を含有するポリエーテル(以下ポリエーテルポリオールという)、1分子中に2個以上のOH基を含有するポリカーボネート(ポリカーボネートポリオール)、1分子中に2個以上のOH基を含有するポリカプロラクトン(ポリカプロラクトンポリオール)、1分子中に2個以上のOH基を含有するアクリル系重合体(ポリアクリルポリオール)が代表的である。
【0239】
これらの化合物を具体的に例示すると次のとおりである。
【0240】
脂肪族アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、1,2-メチルグルコサイド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、マンニトール、ドルシトール、イディトール、グリコール、イノシトール、ヘキサントリオール、トリグリセロール、ジグリペロール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ〔5,2,1,0,2,6〕デカン-ジメタノール、ビシクロ〔4,3,0〕-ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカンジオール、ビシクロ〔4,3,0〕ノナンジメタノール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカン-ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカノール、スピロ〔3,4〕オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’-ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、マルチトール、ラクチトールが挙げられる。
【0241】
芳香族アルコールとしては、ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ベンゼントリオール、ビフェニルテトラオール、ピロガロール、(ヒドロキシナフチル)ピロガロール、トリヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、テトラブロムビスフェノールAが挙げられる。
【0242】
含硫黄ポリオールとしては、ビス-〔4-(ヒドロキシエトキシ)フェニル〕スルフィド、ビス-〔4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕スルフィド、ビス-〔4-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)フェニル〕スルフィド、ビス-〔4-(4-ヒドロキシシクロヘキシロキシ)フェニル〕スルフィド、ビス-〔2-メチル-4-(ヒドロキシエトキシ)-6-ブチルフェニル〕スルフィドが挙げられる。
【0243】
上記の含硫黄ポリオールに、水酸基1個当たり平均3分子以下のエチレンオキシドおよび/又はプロピレンオキシドが付加された化合物として、ジ-(2-ヒドロキシエチル)スルフィド、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジスルフィド、1,4-ジチアン-2,5-ジオール、ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)スルフィド、テトラキス(4-ヒドロキシ-2-チアブチル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、テトラブロモビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、1,3-ビス(2-ヒドロキシエチルチオエチル)-シクロヘキサンが挙げられる。
【0244】
ポリエステルポリオールとしては、ポリオールと多塩基酸との縮合反応により得られる化合物が挙げられる。
【0245】
ポリエーテルポリオールとしては、分子中に活性水素含有基を2個以上有する化合物とアルキレンオキサイドとの反応により得られる化合物およびその変性体が挙げられる。
【0246】
ポリカプロラクトンポリオールとしては、ε-カプロラクトンの開環重合により得られる化合物が挙げられる。
【0247】
ポリカーボネートポリオールとしては、低分子ポリオール類の1種類以上のホスゲン化より得られる化合物、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等を用いてのエステル交換法により得られる化合物が挙げられる。
【0248】
ポリアクリルポリオールとしては、水酸基を含有するアクリル酸エステル若しくはメタクリル酸エステルとこれらエステルと共重合可能なモノマーとの共重合体により得られる化合物が挙げられる。
【0249】
(B3-2)ポリチオール
ポリチオールは、一分子中にSH基を2つ以上有している化合物であり、具体的には、以下の化合物を例示することができる。
【0250】
脂肪族ポリチオールとしては、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,1-プロパンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2,2-プロパンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,1-シクロヘキサンジチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジチオール、3,4-ジメトキシブタン-1,2-ジチオール、2-メチルシクロヘキサン-2,3-ジチオール、ビシクロ〔2,2,1〕へプタ-exo-cis-2,3-ジチオール、1,1-ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、2,3-ジメルカプトコハク酸(2-メルカプトエチルエステル)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール(2-メルカプトアセテート)、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール(3-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオール-ビス(チオグリコレート)、1,6-ヘキサンジオール-ビス(チオグリコレート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-3-メルカプトプロパン、2-メルカプトメチル-1,3-プロパンジチオール、2-メルカプトメチル-1,4-ブタンジチオール、2,4,5-トリス(メルカプトメチル)-1,3-ジチオラン、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ブタンジチオール、4,4-ビス(メルカプトメチル)-3,5-ジチアヘプタン-1,7-ジチオール、2,3-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ブタンジチオール、2,6-ビス(メルカプトメチル)-3,5-ジチアヘプタン-1,7-ジチオール、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、2,5-ビスメルカプトメチル-1,4-ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンが挙げられる。
【0251】
芳香族ポリチオールとしては、1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3-トリメルカプトベンゼン、1,2,4-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3,4-テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,5-テトラメルカプトベンゼン、1,2,4,5-テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,4-テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,5-テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,4-テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,5-テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,4-テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,5-テトラキス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(メルカプトメトキシ)ベンゼン、1,2,3,4-テトラキス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,3,5-テトラキス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(メルカプトエトキシ)ベンゼン、2,2’-ジメルカプトビフェニル、4,4’-ジメルカプトビフェニル、4,4’-ジメルカプトビベンジル、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,4-ナフタレンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール、2,7-ナフタレンジチオール、2,4-ジメチルベンゼン-1,3-ジチオール、4,5-ジメチルベンゼン-1,3-ジチオール、9,10-アントラセンジメタンチオール、1,3-ジ(p-メトキシフェニル)プロパン-2,2-ジチオール、1,3-ジフェニルプロパン-2,2-ジチオール、フェニルメタン-1,1-ジチオール、2,4-ジ(p-メルカプトフェニル)ペンタン、1,4-ビス(メルカプトプロピルチオメチル)ベンゼンが挙げられる。
【0252】
ハロゲン置換芳香族ポリチオールとしては、2,5-ジクロロベンゼン-1,3-ジチオール、1,3-ジ(p-クロロフェニル)プロパン-2,2-ジチオール、3,4,5-トリブロム-1,2-ジメルカプトベンゼン、2,3,4,6-テトラクロル-1,5-ビス(メルカプトメチル)ベンゼンが挙げられる。
【0253】
含複素環ポリチオールとしては、2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、2-エチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、2-アミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、2-モルホリノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、2-シクロヘキシルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、2-メトキシ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、2-フェノキシ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、2-チオベンゼンオキシ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、2-チオブチルオキシ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、
メルカプト基以外にも硫黄原子を含有している芳香族ポリチオールとしては、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,4-テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3,5-テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3,4-テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,5-テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、および上記ポリチオールの核アルキル化物が挙げられる。
【0254】
メルカプト基以外にも硫黄原子を含有している脂肪族ポリチオールとしては、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピル)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-(3-メルカプトプロピル)エタン、1,3-ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、2-メルカプトエチルチオ-1,3-プロパンジチオール、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)ジスルフィドが挙げられる。
【0255】
上記化合物のチオグリコール酸或いはメルカプトプロピオン酸のエステルとしては、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(2-メルカプトアセテート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ジチアン-2,5-ジオールビス(2-メルカプトアセテート)、1,4-ジチアン-2,5-ジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(2-メルカプトエチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(3-メルカプトプロピル)-1,4-ジチアン、2-(2-メルカプトエチル)-5-メルカプトメチル-1,4-ジチアン、2-(2-メルカプトエチル)-5-(3-メルカプトプロピル)-1,4-ジチアン、2-メルカプトメチル-5-(3-メルカプトプロピル)-1,4-ジチアン、チオグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、4,4’-チオジブチル酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、4,4’-ジチオジブチル酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジグリコール酸ビス(2,3-ジメルカプトプロピルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2,3-ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2,3-ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオジプロピオン酸(2,3-ジメルカプトプロピルエステル)が挙げられる。
【0256】
メルカプト基以外に硫黄原子を含有する含複素環ポリチオールとしては、3,4-チオフェンジチオール、テトラヒドロチオフェン-2,5-ジメルカプトメチル、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールが挙げられる。
【0257】
イソシアヌレート基含有ポリチオールとしては、1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-3-メルカプトプロパン、トリス-{(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル}-イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H、3H、5H)-トリオン、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレートが挙げられる。
【0258】
(B3-3)ポリアミン
ポリアミンは、一分子中にNH2基を2つ以上有している化合物であり、その具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。具体的には、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカンメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、プトレシン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、ジエチレントリアミン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、メラミン、1,3,5-ベンゼントリアミンが挙げられる。
【0259】
(B3-4)ポリイソシアネート
ポリイソシアネートは、一分子中にNCO基を2つ以上有している化合物であり、その具体例としては、以下の化合物を例示することができる。
【0260】
脂肪族イソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2’-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカトリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート4-イソシアネートメチルオクタン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアネートメチルオクタン、ビス(イソシアネートエチル)カーボネート、ビス(イソシアネートエチル)エーテル、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-ω,ω’-ジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、リジントリイソシアネート、2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、2-イソシアネートプロピル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエートが挙げられる。
【0261】
脂環族イソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(4-イソシアネートn-ブチリデン)ペンタエリスリトール、ダイマー酸ジイソシアネート、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、1,3,5-トリス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0262】
芳香族イソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートエチル)ベンゼン、ビス(イソシアネートプロピル)ベンゼン、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートブチル)ベンゼン、ビス(イソシアネートメチル)ナフタリン、ビス(イソシアネートメチル)ジフェニルエーテル、ビス(イソシアネートエチル)フタレート、メシチリレントリイソシアネート、2,6-ジ(イソシアネートメチル)フラン、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、エチルフェニレンジイソシアネート、イソプロピルフェニレンジイソシアネート、ジメチルフェニレンジイソシアネート、ジエチルフェニレンジイソシアネート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアネート、トリメチルベンゼントリイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、メチルナフタレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ビベンジル-4,4’-ジイソシアネート、ビス(イソシアネートフェニル)エチレン、3,3’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメリックMDI、ナフタリントリイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4,4’-トリイソシアネート、3-メチルジフェニルメタン-4,6,4’-トリイソシアネート、4-メチル-ジフェニルメタン-3,5,2’,4’,6’-ペンタイソシアネート、フェニルイソシアネートメチルイソシアネート、フェニルイソシアネートエチルイソシアネート、テトラヒドロナフチレンジイソシアネート、ヘキサヒドロベンゼンジイソシアネート、ヘキサヒドロジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、エチレングリコールジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3-プロピレングリコールジフェニルエーテルジイソシアネート、ベンゾフェノンジイソシアネート、ジエチレングリコールジフェニルエーテルジイソシアネート、ジベンゾフランジイソシアネート、カルバゾールジイソシアネート、エチルカルバゾールジイソシアネート、ジクロロカルバゾールジイソシアネートが挙げられる。
【0263】
含イオウ脂肪族イソシアネートとしては、チオジエチルジイソシアネート、チオジプロピルジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート、ジメチルスルフォンジイソシアネート、ジチオジメチルジイソシアネート、ジチオジエチルジイソシアネート、ジチオジプロピルジイソシアネート、ジシクロヘキシルスルフィド-4,4’-ジイソシアネート、1-イソシアネートメチルチア-2,3-ビス(2-イソアナートエチルチア)プロパン、1,2-ビス(2-イソシアナートエチルチオ)エタン、1,1,2,2-テトラキス(イソシアナートメチルチオ)エタン、2,2,5,5-テトラキス(イソシアナートメチルチオ)-1,4-ジチアン、2,4-ジチアペンタン-1,3-ジイソシアナート、2,4,6-トリチアヘプタン-3,5-ジイソシアナート、2,4,7,9-テトラチアペンタン-5,6-ジイソシアナート、ビス(イソシアナートメチルチオ)フェニルメタンが挙げられる。
【0264】
脂肪族スルフィド系イソシアネートとしては、ビス[2-(イソシアナートメチルチオ)エチル]スルフィドが挙げられる。
【0265】
芳香族スルフィド系イソシアネートとしては、ジフェニルスルフィド-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルスルフィド-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジイソシアネートジベンジルチオエーテル、ビス(4-イソシアネートメチルベンゼン)スルフィド、4,4’-メトキシベンゼンチオエチレングリコール-3,3’-ジイソシアネートが挙げられる。
【0266】
芳香族ジスルフィド系イソシアネートとしては、ジフェニルジスルフィド-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジメチルジフェニルジスルフィド-5,5’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルジスルフィド-5,5’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルジスルフィド-6,6’-ジイソシアネート、4,4’-ジメチルジフェニルジスルフィド-5,5’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニルジスルフィド-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジメトキシジフェニルジスルフィド-3,3’-ジイソシアネートが挙げられる。
【0267】
芳香族スルホン系イソシアネートとしては、ジフェニルスルホン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルスルホン-3,3’-ジイソシアネート、ベンジリデンスルホン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタンスルホン-4,4’-ジイソシアネート、4-メチルジフェニルメタンスルホン-2,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジメトキシジフェニルスルホン-3,3’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジイソシアネートジベンジルスルホン、4,4’-ジメチルジフェニルスルホン-3,3’-ジイソシアネート、4,4’-ジ-tert-ブチルジフェニルスルホン-3,3’-ジイソシアネート、4,4’-ジメトキシベンゼンエチレンジスルホン-3,3’-ジイソシアネート、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン-3,3’-ジイソシアネートが挙げられる。
【0268】
スルホン酸エステル系イソシアネートとしては、4-メチル-3-イソシアネートベンゼンスルホニル-4’-イソシアネートフェノールエステル、4-メトキシ-3-イソシアネートベンゼンスルホニル-4’-イソシアネートフェノールエステルが挙げられる。
【0269】
芳香族スルホン酸アミド系イソシアネートとしては、4-メチル-3-イソシアネートベンゼンスルホニルアニリド-3’-メチル-4’-イソシアネート、ジベンゼンスルホニル-エチレンジアミン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジメトキシベンゼンスルホニル-エチレンジアミン-3,3’-ジイソシアネート、4-メチル-3-イソシアネートベンゼンスルホニルアニリド-4-メチル-3’-イソシアネートが挙げられる。
【0270】
含イオウ複素環イソシアネートとしては、チオフェン-2,5-ジイソシアネート、チオフェン-2,5-ジイソシアネートメチル、1,4-ジチアン-2,5-ジイソシアネート、1,4-ジチアン-2,5-ジイソシアネートメチル、1,3-ジチオラン-4,5-ジイソシアネート、1,3-ジチオラン-4,5-ジイソシアネートメチル、1,3-ジチオラン-2-メチル-4,5-ジイソシアネートメチル、1,3-ジチオラン-2,2-ジイソシアネートエチル、テトラヒドロチオフェン-2,5-ジイソシアネートテトラヒドロチオフェン-2,5-ジイソシアネートメチル、テトラヒドロチオフェン-2,5-ジイソシアネートエチル、テトラヒドロチオフェン-3,4-ジイソシアネートメチルが挙げられる。
【0271】
さらに、上記ポリイソアネートのハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や、多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等も使用できる。
【0272】
(B3-5)ポリイソチオシアネート;
ポリイソチオシアネートは、一分子中にNCS基を2つ以上有している化合物であり、その具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。
【0273】
脂肪族イソチオシアネートとしては、1,2-ジイソチオシアネートエタン、1,3-ジイソチオシアネートプロパン、1,4-ジイソチオシアネートブタン、1,6-ジイソチオシアネートヘキサン、p-フェニレンジイソプロピリデンジイソチオシアネートが挙げられる。
【0274】
脂環族イソチオシアネートとしては、シクロヘキシルイソチオシアネート、シクロヘキサンジイソチオシアネートが挙げられる。
【0275】
芳香族イソチオシアネートとしては、フェニルイソチオシアネート、1,2-ジイソチオシアネートベンゼン、1,3-ジイソチオシアネートベンゼン、1,4-ジイソチオシアネートベンゼン、2,4-ジイソチオシアネートトルエン、2,5-ジイソチオシアネートm-キシレンジイソシアネート、4,4’-ジイソチオシアネート1,1’-ビフェニル、1,1’-メチレンビス(4-イソチオシアネートベンゼン)、1,1’-メチレンビス(4-イソチオシアネート2-メチルベンゼン)、1,1’-メチレンビス(4-イソチオシアネート3-メチルベンゼン)、1,1’-(1,2-エタンジイル)ビス(4-イソチオシアネートベンゼン)、4,4’-ジイソチオシアネートベンゾフェノン、4,4’-ジイソチオシアネート3,3’-ジメチルベンゾフェノン、ベンズアニリド-3,4’-ジイソチオシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソチオシアネート、ジフェニルアミン-4,4’-ジイソチオシアネートが挙げられる。
【0276】
含複素環イソチオシアネートとしては、2,4,6-トリイソチオシアネート1,3,5-トリアジンが挙げられる。
【0277】
カルボニルイソチオシアネートとしては、ヘキサンジオイルジイソチオシアネート、ノナンジオイルジイソチオシアネート、カルボニックジイソチオシアネート、1,3-ベンゼンジカルボニルジイソチオシアネート、1,4-ベンゼンジカルボニルジイソチオシアネート、(2,2’-ビピリジン)-4,4’-ジカルボニルジイソチオシアネートが挙げられる。
【0278】
さらに、イソチオシアネート基のイオウ原子の他に少なくとも1つのイオウ原子を有する多官能のイソチオシアネートも使用することができる。このような多官能イソチオシアネートとしては、以下の化合物を例示することができる。
【0279】
含硫脂肪族イソチオシアネートとしては、チオビス(3-イソチオシアネートプロパン)、チオビス(2-イソチオシアネートエタン)、ジチオビス(2-イソチオシアネートエタン)が挙げられる。
【0280】
含硫芳香族イソチオシアネートとしては、1-イソチオシアネート4-{(2-イソチオシアネート)スルホニル}ベンゼン、チオビス(4-イソチオシアネートベンゼン)、スルホニルビス(4-イソチオシアネートベンゼン)、スルフィニルビス(4-イソチオシアネートベンゼン)、ジチオビス(4-イソチオシアネートベンゼン)、4-イソチオシアネート1-{(4-イソチオシアネートフェニル)スルホニル}-2-メトキシ-ベンゼン、4-メチル-3-イソチオシアネートベンゼンスルホニル-4’-イソチオシアネートフェニルエステル、4-メチル-3-イソチオシアネートベンゼンスルホニルアニリド-3’-メチル-4’-イソチオシアネートが挙げられる。
【0281】
含硫複素環イソチオシアネートとしては、チオフェン-2,5-ジイソチオシアネート、1,4-ジチアン-2,5-ジイソチオシアネートが挙げられる。
【0282】
上述したウレタン系重合性化合物(B3)は、それぞれ、重合によりウレタン結合やウレア結合を形成するように組み合わせて使用される。
【0283】
<その他の重合性化合物>
本発明においては、上述した重合性化合物(B1)~(B3)以外に、屈折率の向上を目的として、その他の重合性化合物(B4)として、エピスルフィド系重合性化合物(B4-1)やチエタニル系重合性化合物(B4-2)を使用することができ、またフォトクロミック性の向上を目的として、単官能重合性化合物(B4-3)を使用することもできる(ただし、前記に例示した、重合性基を1つ有する重合性化合物は除く。)。さらに、分子中に異なるタイプの複数種の重合性基を有する複合型重合性化合物(B4-4)も使用することができる。
【0284】
(B4-1)エピスルフィド系重合性化合物;
この重合性モノマーは、分子内に2個以上のエピスルフィド基を有している化合物であり、具体的には、以下の化合物を例示することができる。ビス(1,2-エピチオエチル)スルフィド、ビス(1,2-エピチオエチル)ジスルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタン、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピルジチオ)メタン、ビス(2,3-エピチオプロピルジチオ)エタン、ビス(6,7-エピチオ-3,4-ジチアヘプチル)スルフィド、ビス(6,7-エピチオ-3,4-ジチアヘプチル)ジスルフィド、1,4-ジチアン-2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオメチル)、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオメチル)ベンゼン、1,6-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオメチル)-2-(2,3-エピチオプロピルジチオエチルチオ)-4-チアヘキサン、1,2,3-トリス(2,3-エピチオプロピルジチオ)プロパン、1,1,1,1-テトラキス(2,3-エピチオプロピルジチオメチル)メタン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオ)-2-チアプロパン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオ)-2,3-ジチアブタン、1,1,1-トリス(2,3-エピチオプロピルジチオ)メタン、1,1,1-トリス(2,3-エピチオプロピルジチオメチルチオ)メタン、1,1,2,2-テトラキス(2,3-エピチオプロピルジチオ)エタン、1,1,2,2-テトラキス(2,3-エピチオプロピルジチオメチルチオ)エタン、1,1,3,3-テトラキス(2,3-エピチオプロピルジチオ)プロパン、1,1,3,3-テトラキス(2,3-エピチオプロピルジチオメチルチオ)プロパン、2-[1,1-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオ)メチル]-1,3-ジチエタン、2-[1,1-ビス(2,3-エピチオプロピルジチオメチルチオ)メチル]-1,3-ジチエタンが挙げられる。
【0285】
(B4-2)チエタニル系重合性化合物
この重合性化合物は、分子内に2個以上のチエタニル基を有するチエタン化合物である。このようなチエタニル系重合性化合物の一部は、複数のチエタニル基と共にエピスルフィド基を有するものであり、これは、上記のエピスルフィド系重合性化合物の項に挙げられている。その他のチエタニル系重合性化合物には、分子内に金属原子を有している含金属チエタン化合物と、金属を含んでいない非金属系チエタン化合物とがある。
【0286】
非金属系チエタン化合物としては、ビス(3-チエタニル)ジスルフィド、ビス(3-チエタニル)スルフィド、ビス(3-チエタニル)トリスルフィド、ビス(3-チエタニル)テトラスルフィド、1,4-ビス(3-チエタニル)-1,3,4-トリチアブタン、1,5-ビス(3-チエタニル)-1,2,4,5-テトラチアペンタン、1,6-ビス(3-チエタニル)-1,3,4,6,-テトラチアヘキサン、1,6-ビス(3-チエタニル)-1,3,5,6,-テトラチアヘキサン、1,7-ビス(3-チエタニル)-1,2,4,5,7-ペンタチアヘプタン、1,7-ビス(3-チエタニルチオ)-1,2,4,6,7-ペンタチアヘプタン、1,1-ビス(3-チエタニルチオ)メタン、1,2-ビス(3-チエタニルチオ)エタン、1,2,3-トリス(3-チエタニルチオ)プロパン、1,8-ビス(3-チエタニルチオ)-4-(3-チエタニルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,11-ビス(3-チエタニルチオ)-4,8-ビス(3-チエタニルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(3-チエタニルチオ)-4,7-ビス(3-チエタニルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(3-チエタニルチオ)-5,7-ビス(3-チエタニルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、2,5-ビス(3-チエタニルチオメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス[[2-(3-チエタニルチオ)エチル]チオメチル]-1,4-ジチアン、2,5-ビス(3-チエタニルチオメチル)-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、ビスチエタニルスルフィド、ビス(チエタニルチオ)メタン3-[<(チエタニルチオ)メチルチオ>メチルチオ]チエタン、ビスチエタニルジスルフィド、ビスチエタニルトリスルフィド、ビスチエタニルテトラスルフィド、ビスチエタニルペンタスルフィド、1,4-ビス(3-チエタニルジチオ)-2,3-ジチアブタン、1,1,1-トリス(3-チエタニルジチオ)メタン、1,1,1-トリス(3-チエタニルジチオメチルチオ)メタン、1,1,2,2-テトラキス(3-チエタニルジチオ)エタン、1,1,2,2-テトラキス(3-チエタニルジチオメチルチオ)エタンが挙げられる。
【0287】
含金属チエタン化合物としては、このチエタン化合物は、分子内に、金属原子として、Sn原子、Si原子、Ge原子、Pb原子等の14族の元素;Zr原子、Ti原子等の4族の元素;Al原子等の13族の元素;又はZn原子等の12族の元素;等を含んでいるものであり、例えば、特に好適に使用されるのは、以下の化合物である。
【0288】
アルキルチオ(チエタニルチオ)スズとしては、メチルチオトリス(チエタニルチオ)スズ、エチルチオトリス(チエタニルチオ)スズ、プロピルチオトリス(チエタニルチオ)スズ、イソプロピルチオトリス(チエタニルチオ)スズが挙げられる。
【0289】
ビス(アルキルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズとしては、ビス(メチルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、ビス(エチルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、ビス(プロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、ビス(イソプロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズが挙げられる。
【0290】
アルキルチオ(アルキルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズとしては、エチルチオ(メチルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、メチルチオ(プロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、イソプロピルチオ(メチルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、エチルチオ(プロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、エチルチオ(イソプロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズ、イソプロピルチオ(プロピルチオ)ビス(チエタニルチオ)スズが挙げられる。
【0291】
ビス(チエタニルチオ)環状ジチオスズ化合物としては、ビス(チエタニルチオ)ジチアスタンネタン、ビス(チエタニルチオ)ジチアスタンノラン、ビス(チエタニルチオ)ジチアスタンニナン、ビス(チエタニルチオ)トリチアスタンノカンが挙げられる。
【0292】
アルキル(チエタニルチオ)スズ化合物としては、メチルトリス(チエタニルチオ)スズ、ジメチルビス(チエタニルチオ)スズ、ブチルトリス(チエタニルチオ)スズ、テトラキス(チエタニルチオ)スズが挙げられる。
【0293】
スズ以外の金属を含むものとしては、テトラキス(チエタニルチオ)ゲルマニウム、トリス(チエタニルチオ)ビスマスが挙げられる。
【0294】
(B4-3)単官能重合性化合物
この重合性化合物は、分子中に一つのOH基、又はSH基を有する化合物であり、前述したポリオールと併用され、分子量や架橋度を調整することにより、フォトクロミック性を高めるために使用される。このような単官能重合性化合物の例として、以下の化合物を挙げることができる。ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテルが挙げられる。
【0295】
(B4-4)複合型重合性化合物
この重合性化合物は、分子中に異なるタイプの複数種の重合性基を有するものであり、このような重合性化合物の使用により、各種の物性調整を図ることができる。
【0296】
このような複合型重合性化合物の例として、以下の化合物を挙げることができる。
【0297】
ラジカル重合/OH型重合性化合物としては、2-ヒドロキシメタクリレート、2-ヒドロキシアクリレート、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
【0298】
ラジカル重合/イソシアネート型重合性化合物としては、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレートが挙げられる。
【0299】
OH/SH型重合性化合物としては、2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、グルセリンジ(メルカプトアセテート)、1-ヒドロキシ-4-メルカプトシクロヘキサン、2,4-ジメルカプトフェノール、2-メルカプトハイドロキノン、4-メルカプトフェノール、1,3-ジメルカプト-2-プロパノール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、1,2-ジメルカプト-1,3-ブタンジオール、ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールモノ(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールペンタキス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチル-トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1-ヒドロキシエチルチオ-3-メルカプトエチルチオベンゼン、4-ヒドロキシ-4’-メルカプトジフェニルスルホン、2-(2-メルカプトエチルチオ)エタノール、ジヒドロキシエチルスルフィドモノ(3-メルカプトプロピオネート)、ジメルカプトエタンモノ(サルチレート)、ヒドロキシエチルチオメチルートリス(メルカプトエチルチオ)メタンが挙げられる。
【0300】
上述した重合性化合物(B1)~(B4)において、好適に使用される重合性化合物は、練り込み法ではラジカル重合性化合物(B1)、およびウレタン系重合性化合物(B3)であり、積層法ではラジカル重合性化合物(B1)であり、バインダー法ではウレタン系重合性化合物(B3)である。
【0301】
<重合硬化促進剤>
本発明のフォトクロミック組成物においては、上述した重合性化合物(B)の重合性官能基の種類に応じて、その重合硬化を速やかに促進させるために各種の重合硬化促進剤((C)成分とする場合もある)を使用することができる。
【0302】
例えば、ラジカル重合性化合物(B1)を使用した場合には、重合開始剤(C1)が重合硬化促進剤として使用される。
【0303】
また、エポキシ系重合性化合物(B2)、およびエピスルフィド系重合性化合物(B4-1)、チエタニル系重合性化合物(B4-2)を含む硬化性組成物を使用した場合には、エポキシ硬化剤(C2-1)、およびエポキシ基を開環重合させるためのカチオン重合触媒(C2-2)が重合硬化促進剤として使用される。
【0304】
さらに、ウレタン系重合性化合物(B3)やその他の重合性化合物(B4)が使用されている場合には、ウレタン用反応触媒(C3-1)、縮合剤(C3-2)が重合硬化促進剤として使用される。
【0305】
(C1)重合開始剤
重合開始剤には、熱重合開始剤と光重合開始剤とがあり、その具体例は以下のとおりである。
【0306】
熱重合開始剤としては、ジアシルパーオキサイドとして、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイドが挙げられる。
【0307】
パーオキシエステルとしては、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ブチルパーオキシネオデカネート、クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシベンゾエートが挙げられる。
【0308】
パーカーボネートとしては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネートが挙げられる。
【0309】
アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)が挙げられる。
【0310】
光重合開始剤としては、アセトフェノン系化合物として、1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オンが挙げられる。
【0311】
α-ジカルボニル系化合物としては、1,2-ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリコキシレートが挙げられる。
【0312】
アシルフォスフィンオキシド系化合物としては、2,6-ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,6-ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシドが挙げられる。
【0313】
尚、光重合開始剤を用いる場合には、3級アミン等の公知の重合硬化促進助剤を併用することもできる。
【0314】
(C2-1)エポキシ硬化剤
アミン化合物およびその塩として、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)-7-ウンデセン、トリメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2-(ジメチルアミノメチル)フェノールが挙げられる。
【0315】
4級アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミドが挙げられる。
【0316】
有機ホスフィン化合物としては、テトラ-n-ブチルホスホニウムベンゾトリアゾレート、テトラ-n-ブチルホスホニウム-0,0-ジエチルホスホロジチオエートが挙げられる。
【0317】
金属カルボン酸塩としては、クロム(III)トリカルボキシレート、オクチル酸スズが挙げられる。
【0318】
アセチルアセトンキレート化合物としては、クロムアセチルアセトナートが挙げられる。
【0319】
(C2-2)カチオン重合触媒
ルイス酸系触媒としては、BF3・アミン錯体、PF5、BF3、AsF5、SbF5等が挙げられる。
【0320】
熱硬化性カチオン重合触媒として、ホスホニウム塩や4級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルピリジニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミドが挙げられる。
【0321】
紫外硬化性カチオン重合触媒として、ジアリールヨードニウムヘキサフロオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモン酸ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムが挙げられる。
【0322】
(C3-1)ウレタン用反応触媒
この反応触媒は、ポリイソ(チア)シアネートと、ポリオール又はポリチオールとの反応によるポリ(チオ)ウレタン結合生成において用いられる。
【0323】
この例としては、以下のものを例示することができる。トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン、4,4’-トリメチレンビス(1-メチルピペリジン)、1,8-ジアザビシクロ-(5,4,0)-7-ウンデセン、ジメチルスズジクロライド、ジメチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズマレエートポリマー、ジブチルスズジリシノレート、ジブチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジブチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジオクチルスズジクロライド、ジオクチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエートポリマー、ジオクチルスズビス(ブチルマレエート)、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジリシノレート、ジオクチルスズジオレエート、ジオクチルスズジ(6-ヒドロキシ)カプロエート、ジオクチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジドデシルスズジリシノレートが挙げられる。その他、各種金属塩、例えば、オレイン酸銅、アセチルアセトン酸銅、アセチルアセトン酸鉄、ナフテン酸鉄、乳酸鉄、クエン酸鉄、グルコン酸鉄、オクタン酸カリウム、チタン酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0324】
(C3-2)縮合剤
無機酸としては、塩化水素、臭化水素、硫酸やリン酸等が挙げられる。
【0325】
有機酸としては、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸等が挙げられる。
【0326】
酸性イオン交換樹脂としては、スチレン-ジビニルベンゼンの共重合体に、スルホン酸基を導入したもの等が挙げられる。
【0327】
カルボジイミドとしては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノピロリル)-カルボジイミドが挙げられる。
【0328】
<重合硬化促進剤(C)の配合割合>
上述した各種の重合硬化促進剤(C)は、それぞれ、1種単独でも、2種以上を併用することもできるが、その使用量は、所謂触媒量でよく、例えば、重合性化合物(B)100質量部当り、0.001~10質量部、特に0.01~5質量部の範囲の少量でよい。
【0329】
<その他の配合成分>
本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲でそれ自体公知の各種配合剤、例えば、離型剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料等の各種安定剤、添加剤、溶剤、レベリング剤、さらには、tードデシルメルカプタン等のチオール類を重合調整剤として、必要に応じて配合することができる。
【0330】
中でも、紫外線安定剤を使用するとフォトクロミック部位の耐久性を向上させることができるために好適である。このような紫外線安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が知られている。特に好適な紫外線安定剤は、以下の通りである。ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、旭電化工業(株)製アデカスタブLA-52、LA-57、LA-62、LA-63、LA-67、LA-77、LA-82、LA-87、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチル-フェノール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製のIRGANOX 1010、1035、1075、1098、1135、1141、1222、1330、1425、1520、259、3114、 3790、5057、565が挙げられる。
【0331】
該紫外線安定剤は、本発明のクロメン化合物を含む重合単量体(本発明のクロメン化合物と他の重合性単量体の合計)100質量部に対し、0.001~10質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0332】
<フォトクロミック硬化性組成物の使用方法;光学物品>
本発明において、フォトクロミック硬化性組成物に使用する重合性化合物は、前記の例示の通りであるが、それら他の重合性化合物の配合割合は、用途に応じて適宜決定すればよい。ただし、好ましいクロメン化合物、又はフォトクロミック組成物の配合量は前記の通りである。
【0333】
本発明において、フォトクロミック硬化性組成物は、使用するクロメン化合物(フォトクロミック組成物)、重合性化合物、必要に応じて配合される添加剤等を混合することにより、準備することができる。フォトクロミック硬化体を作製するための重合硬化は、紫外線、α線、β線、γ線等の活性エネルギー線の照射、熱、あるいは両者の併用等により、ラジカル重合、開環重合、アニオン重合或いは縮重合を行うことにより、行われる。即ち、重合性化合物(B)や重合硬化促進剤(C)の種類および形成されるフォトクロミック硬化体の形態に応じて、適宜の重合手段を採用すればよい。
【0334】
重合性化合物(B)等が配合されている本発明の硬化性組成物を熱重合させるに際しては、特に温度が得られるフォトクロミック硬化体の性状に影響を与える。この温度条件は、熱重合開始剤の種類と量や重合性化合物の種類によって影響を受けるので一概に限定はできないが、一般的に比較的低温で重合を開始し、ゆっくりと温度を上げていく方法が好適である。重合時間も温度と同様に各種の要因によって異なるので、予めこれらの条件に応じた最適の時間を決定するのが好適であるが、一般には、2~48時間で重合が完結するように条件を選ぶのが好ましい。フォトクロミック積層シートを得る場合には、重合性官能基同士の反応が進行する温度で重合し、その際、目的とする分子量になるように最適な温度と時間を決定することが好ましい。
【0335】
また、本発明の硬化性組成物を光重合させる際には、重合条件のうち、特にUV強度は得られるフォトクロミック硬化体の性状に影響を与える。この照度条件は、光重合開始剤の種類と量や重合性モノマーの種類によって影響を受けるので一概に限定はできないが、一般的に365nmの波長で50~500mW/cm2のUV光を0.5~5分の時間で光照射するように条件を選ぶのが好ましい。
【0336】
本発明のクロメン化合物は、フォトクロミック材として広範囲に利用でき、例えば、銀塩感光材に代る各種の記憶材料、複写材料、印刷用感光体、陰極線管用記憶材料、レーザー用感光材料、ホログラフィー用感光材料などの種々の記憶材料として利用できる。その他、本発明のクロメン化合物を用いたフォトクロミック材は、フォトクロミックレンズ材料、光学フィルター材料、ディスプレイ材料、光量計、装飾などの材料としても利用できる。
【0337】
例えば、上述した重合硬化を利用しての本発明のクロメン化合物を使用したフォトクロミックレンズの製造方法は、均一な調光性能が得られる方法であれば、公知の方法が採用できる。
【0338】
練り込み法によりフォトクロミック性を発現させる場合には、エストラマーガスケット又はスペーサーで保持されているガラスモールド間に、上記の硬化性組成物を注入し、重合性化合物(B)や重合硬化促進剤の種類に応じて、空気炉中での加熱や紫外線等の活性エネルギー線照射によっての注型重合によって、レンズ等の光学材料の形態に成形されたフォトクロミック硬化体を得ることができる。
【0339】
積層法によりフォトクロミック性を発現させる場合には、硬化性組成物を適宜有機溶剤に溶解させて塗布液を調製し、スピンコートやディッピング等により、レンズ基材等の光学基材の表面に塗布液を塗布し、乾燥して有機溶剤を除去し、次いで、窒素等の不活性ガス中でのUV照射や加熱等により重合硬化を行うことにより、光学基材の表面にフォトクロミック硬化体からなるフォトクロミック層が形成される(コーティング法)。
【0340】
また、レンズ基材等の光学基板を所定の空隙が形成されるようにガラスモールドに対面して配置し、この空隙に硬化性組成物を注入し、この状態で、UV照射や加熱等により重合硬化を行うインナーモールドによる注型重合によっても、光学基材の表面にフォトクロミック硬化体からなるフォトクロミック層を形成することができる(注型重合法)。
【0341】
上記のような積層法(コーティング法および注型重合法)によりフォトクロミック層を光学基材の表面に形成する場合には、予め光学基材の表面に、アルカリ溶液、酸溶液等による化学的処理、コロナ放電、プラズマ放電、研磨等による物理的処理を行っておくことにより、フォトクロミック層と光学基材との密着性を高めることもできる。勿論、光学基材の表面に透明な接着樹脂層を設けておくことも可能である。
【0342】
さらに、バインダー法によりフォトクロミック性を発現する場合には、硬化性組成物を用いてのシート成形によりフォトクロミックシートを作製し、これを2枚の透明なシート(光学シート)で挟んで、前述した重合硬化を行うことにより、フォトクロミック層を接着層とするフォトクロミック積層体が得られる。
【0343】
この場合、フォトクロミックシートの作成には、硬化性組成物を有機溶剤に溶解させた塗布液を用いてのコーティングという手段も採用することができる。
【0344】
このようにして作製されたフォトクロミック積層体は、例えば、これを金型内に装着され、この後、レンズ等の光学基材用熱可塑性樹脂(例えばポリカーボネートを射出成形することにより、フォトクロミック性が付与された所定形状のレンズ等の光学基材が得られる。また、このフォトクロミック積層体は、接着剤等により、光学基材の表面に接着することもでき、これにより、フォトクロミックレンズを得ることもできる。
【0345】
尚、上記のようにしてフォトクロミック積層体を作製する場合、特に光学基材と密着性が高いという点で、重合性化合物(B)として、ウレタン若しくはウレア系重合性化合物(B3)、特にウレタン系重合性化合物を使用し、ポリウレタンが形成されるように調整されていることが好ましい。
【0346】
上述した本発明の硬化性組成物は、発色濃度や退色速度等に優れたフォトクロミック性を発現させることができ、しかも、機械的強度等の特性を低減させることもなく、フォトクロミック性が付与された光学基材、例えばフォトクロミックレンズの作製に有効に利用される。
【0347】
また、本発明の硬化性組成物により形成されるフォトクロミック層やフォトクロミック硬化体は、その用途に応じて、分散染料等の染料を用いる染色、シランカップリング剤やケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム、スズ、タングステン等のゾルを主成分とするハードコート剤を用いてのハードコート膜の作成、SiO2、TiO2、ZrO2等の金属酸化物の蒸着による薄膜形成、有機高分子を塗布しての薄膜による反射防止処理、帯電防止処理等の後加工を施すことも可能である。
【0348】
<高分子成型体(硬化体)の硬度について>
本発明のクロメン化合物が内部に分散した高分子成型体(硬化体)の硬度については特に限定されるものではない。中でも、本発明のクロメン化合物は、環境依存性が低いため、より高硬度な高分子成型体(硬化体)中でより優れた効果を発揮する。
【0349】
一般的に、高硬度の高分子成型体は、結晶性が高いか、または高度に架橋しているものであり、その高分子成型体中では、クロメン化合物は分子運動し難い。本発明のクロメン化合物は、このようなマトリックスの高分子成型体中であっても、優れた分子運動性を示す。そのため、従来では、フォトクロミック特性が発揮し難かった高分子成型体中でも、本発明のクロメン化合物は、優れたフォトクロミック特性を発揮する。
【0350】
本発明のクロメン化合物がより効果を発揮する高分子成型体(硬化体)の硬度は、具体的にはLスケ-ルロックウエル硬度が50以上であり、70以上がより好ましく、90以上がさらに好ましい。
【実施例】
【0351】
次に、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。先ず、本発明で使用した測定装置、および各成分の製造方法等について説明する。
実施例1~3(本発明のクロメン化合物の合成)
実施例1
第1工程
数平均分子量750のポリエチレングリコールモノエチルエーテル 75g(0.100モル)、およびトルエンスルホニルクロリド 19.1g(0.100モル)、トリエチルアミン 11g(0.110モル)をクロロホルム 150mlに溶解させ、還流温度で加熱した。反応終了後、反応液を氷水に加え、分液を行い、溶媒留去を行うことで、オイル状の下記式(22)
【0352】
【0353】
で示される化合物を得た。
【0354】
第2工程
第1工程で得られた前記式(22)の生成物 18.1g(0.020モル)、4-ヒドロキシ-4’-メトキシベンゾフェノン 3.8g(0.016モル)、炭酸カリウム 5.5g(0.040モル)をジメチルホルムアミド 40ml中に加え、80℃で加熱した。反応終了後、反応液を氷水に加え、トルエン、ジメトキシエタン混合溶媒で分液を行い、溶媒留去することで、下記式(23)
【0355】
【0356】
で示される生成物を得た。
【0357】
第3工程
第2工程で得られた前記式(23)の生成物 9.6g(0.010モル)を、ジメチルホルムアミド 40mlに溶解させ、氷冷した。リチウムアセチリド エチレンジアミン錯体 1.38g(0.020モル)を加え、ゆっくり室温まで加熱した。反応終了後、氷水に加え、トルエン、ジメトキシエタン混合溶媒を加え、分液を行い、溶媒留去することで、下記式(24)
【0358】
【0359】
で示される生成物を得た。
【0360】
第4工程
下記式(25)
【0361】
【0362】
で示されるナフトール化合物 2.1g(0.005モル)、第3工程で得られた前記式(24)の生成物 5.9g(0.006モル)とを、メチルイソブチルケトン、トルエン混合溶媒 15mLに溶解させ、さらにp-トルエンスルホン酸を触媒量加えて加熱還流した。反応終了後、溶媒を除去し、シリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製することにより、下記式(26)
【0363】
【0364】
で示されるクロメン化合物を得た。収率は70%であった。
【0365】
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、1.0~3.0ppm付近にシクロヘキサン環のメチレンプロトンおよびエチル基、イソプロピル基に基づく32Hのピーク、δ3.0~5.5ppm付近にメトキシ基、エトキシ基に基づく約70Hのピーク、δ5.6~9.0ppm付近にアロマティックなプロトンおよびアルケンのプロトンに基づく16Hのピークを示し、前記式(26)と一致する構造であると確認した。
【0366】
実施例2
第1工程
実施例1の第1工程における4-ヒドロキシ-4’-メトキシベンゾフェノンの代わりに、4-フルオロ4’-ヒドロキシベンゾフェノンを用いること以外は、同様の操作を行い、下記式(27)
【0367】
【0368】
で示される生成物を得た。
【0369】
第2工程
第1工程で得られた前記式(27)の生成物 9.5g(0.010モル)を、ジメチルスルホキシド 20mlに溶解させ、モルホリン 5.0gを加え、100℃に加熱した。反応終了後、氷水に入れ、トルエン、ジメトキシエタン混合溶媒を加え、分液を行い、溶媒留去することで、下記式(28)
【0370】
【0371】
で示される生成物を得た。
【0372】
第3工程
実施例1の第3工程で前記式(23)の代わりに、前記式(28)を用いる以外は同様の操作を行い、下記式(29)
【0373】
【0374】
で示される生成物を得た。
【0375】
第4工程
下記式(30)
【0376】
【0377】
で示されるナフトール化合物 、第3工程で得られた前記式(29)の生成物を用いて、実施例1の第4工程と同様の操作を行い、下記式(31)
【0378】
【0379】
で示されるクロメン化合物を得た。収率は72%であった。
【0380】
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、1.0~3.0ppm付近にシクロヘキサン環のメチレンプロトンおよびメチル基、メチル基のプロトンに基づく24Hのピーク、δ3.0~5.5ppm付近にメトキシ基、エチレンオキシ基、モルホリノ基に基づく約78Hのピーク、δ5.6~9.0ppm付近にアロマティックなプロトンおよびアルケンのプロトンに基づく19Hのピークを示し、前記式(31)と一致する構造であると確認した。
【0381】
実施例3
第1工程~第3工程
実施例1の第1工程で数平均分子量750のポリエチレングリコールモノエチルエーテルの代わりに、数平均分子量1000のポリプロピレングリコールモノブチルエーテルを用いたこと以外はすべて同じ操作行い、下記式(32)
【0382】
【0383】
で示される生成物を得た。
【0384】
第4工程
下記式(33)
【0385】
【0386】
で示されるナフトール化合物と前記式(32)で示される生成物を用いたこと以外は実施例1の第4工程と同様の操作を行い、下記式(34)
【0387】
【0388】
で示されるクロメン化合物を得た。収率は75%であった。
【0389】
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、1.0~3.0ppm付近にシクロヘキサン環のメチレンプロトンおよび、メチル基、ブチル基のプロトンに基づく約73Hのピーク、δ3.0~5.5ppm付近にメトキシ基、プロピレンオキシ基に基づく約62Hのピーク、δ5.6~9.0ppm付近にアロマティックなプロトンおよびアルケンのプロトンに基づく19Hのピークを示し、前記式(34)と一致する構造であると確認した。
【0390】
実施例4~9(フォトクロミック硬化体(成型体)の作製、評価)
実施例4~9において、上記の各クロメン化合物のフォトクロミック特性の評価方法等は、以下のとおりに行った。下記処方により、各成分を混合してフォトクロミック硬化性組成物を調製した。各配合量を以下に示す。表1に使用した配合組成、およびフォトクロミック特性の結果を示した。
【0391】
配合組成A:
(B)重合性化合物
(B3-2)成分
ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)26質量部。
(B3-4)成分
m-キシレンジイソシアネート 30質量部。
(B4-3)成分
ステアリル-3-メルカプトプロピオネート 44質量部。
(C)重合硬化促進剤
ジブチルスズジラウレート(触媒) 0.1質量部。
(その他の配合剤)
ジ-n-ブチルスズ(離型剤) 0.3質量部。
【0392】
配合組成B:
(B)重合性化合物
(B3-1)成分
旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノ-ル(ポリカ-ボネートジオール、数平均分子量500) 23質量部。
トリメチロ-ルプロパン 17質量部。
(B3-4)成分
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,5(2,6)-ジイル)ビスメチレンジイソシアネート 54質量部。
(B4-3)成分
ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(n≒2、Mw=352)6質量部。
(その他の配合剤)
ジ-n-ブチルスズ(離型剤)0.3質量部。
【0393】
フォトクロミック硬化性組成物は、上記配合組成において、配合組成A、およびBにおける(B)重合性化合物100g当たり、クロメン化合物のインデノナフトピラン部位が60μmolとなるように添加した。このようにして得られたフォトクロミック硬化性組成物を用い、練り込み法にてフォトクロミック硬化体(高分子成型体)を得た。重合方法は以下の通りである。
【0394】
(重合方法)
前記フォトクロミック硬化性組成物を十分に脱泡した後、離型処理を施したガラスモールドとエチレン-酢酸ビニル共重合体からなるガスケットで構成された、厚さ2mmの鋳型よりなるモールド型に注型した。次いで、30℃から95℃まで徐々に昇温しながら、15時間かけて硬化させた。重合終了後、フォトクロミック硬化体を鋳型のガラスから取り外した。
【0395】
(硬化体;光学物品の評価方法)
得られたフォトクロミック硬化体を試料とし、これに(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL-2480(300W)SHL-100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して20±1℃、フォトクロミック硬化体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm2、245nm=24μW/cm2で120秒間照射して発色させ、フォトクロミック硬化体のフォトクロミック特性を測定した。各フォトクロミック特性、およびLスケールロックウエル硬度、硬化体の白濁等を以下の方法で評価した。
【0396】
(1)フォトクロミック特性
・最大吸収波長(λmax):
(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は発色時の色調に関係する。
・発色濃度{ε(120)-ε(0)}:
前記最大吸収波長における、120秒間光照射した後の吸光度{ε(120)}と光照射前の吸光度ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
・退色速度〔t1/2(sec.)〕:
120秒間光照射後、光の照射を止めたときに、試料の前記最大吸収波長における吸光度が{ε(120)-ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
・残存率(A200/A0×100): 得られたフォトクロミック硬化体をスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により200時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)および試験後の発色濃度(A200)を測定し、その比(A200/A0)を残存率とし、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高いといえる。
【0397】
(2)Lスケ-ルロックウエル硬度(HL)
上記硬化体(2mm厚)を25℃の室内で1日保持した後、明石ロックウエル硬度計(形式:AR-10)を用いて、フォトクロミック硬化体(2mm厚)のLスケ-ルロックウエル硬度を測定した。
【0398】
(3)白濁
成型したフォトクロミック硬化体を、直行ニコル下で、白濁の評価を目視にて行った。
1:製品として問題ないレベルで、白濁がない、あるいはほとんど見えない。
2:製品として問題ないレベルであるが若干白濁のあるもの。
3:製品として問題ないレベルであるが2よりは白濁が強いもの。
4:白濁があり、製品として使用できないもの。
結果を表1にまとめた。
【0399】
【0400】
比較例1~8
比較のために、下記式(A)~(D)で示される化合物を用い、実施例4~9と同様にしてフォトクロミック硬化体を得、その特性を評価した。その結果を表2に示す。
【0401】
【0402】
【0403】
表1、表2から明らかな通り、本発明のフォトクロミック硬化性組成物を硬化したフォトクロミック硬化体は、フォトクロミック特性に優れており、高い耐久性も有している。また、ポリアルキレンオキシドオリゴマー鎖基を持たない類似のクロメン化合物に比べ、高硬度のマトリックス中であっても、優れた退色速度を示し、マトリックス依存性が改善されている。
【0404】
実施例10
第1工程
数平均分子量1000のポリプロピレングリモノブチルエーテル 100g(0.100モル)、コハク酸無水物 20g(0.200モル)、p-トルエンスルホン酸1水和物 2.6g(0.010モル)を加え、130℃で30分加熱した後、80℃でさらに2.5時間加熱した。反応終了後、ジクロロメタンに溶解させ、10%塩酸水溶液で分液したのち、20%塩水で分液した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾別し溶媒留去を行うことで、オイル状の下記式(35)
【0405】
【0406】
で示される化合物を得た。
【0407】
第2工程
第1工程で得られた前記式(35)の生成物 21g(0.020モル)、N,N-ジメチルホルムアミド数滴をジクロロメタン 20mLに溶解させたのち、塩化オキサリル 10.2g(0.080モル)を加え、室温で1時間反応させた。反応終了後、溶媒留去を行うことで、オイル状の下記式(36)
【0408】
【0409】
で示される化合物を得た。
【0410】
第3工程
下記式(37)
【0411】
【0412】
で示されるナフトール化合物 1.0g(0.003モル)と、下記式(38)
【0413】
【0414】
で示される反応性置換基(水酸基)を有するプロパルギルアルコール化合物の10質量%メチルエチルケトン溶液12.0g(0.003モル)とを、トルエン50mlに溶解させ、さらにp-トルエンスルホン酸を0.02g加えて加熱還流下、1時間撹拌した。反応後、溶媒を除去し、シリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製することにより、下記式(39)
【0415】
【0416】
で示される生成物(前駆体)を得た。
【0417】
第4工程
第3工程で得られた前記式(39)の生成物1.44g(0.002モル)、トリエチルアミン0.71g(0.007モル) をジクロロメタン20mLに溶解させたのち氷冷した。第2工程で得られた前記式(36)の生成物2.26g(0.002モル) のジクロロメタン溶液を加えたのち、室温まで昇温後1時間撹拌した。反応終了後、溶媒を除去し、シリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製することにより、下記式(40)
【0418】
【0419】
で示されるクロメン化合物を得た。収率は70%であった。
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、1.0~3.0ppm付近にシクロヘキサン環のメチレンプロトンおよびメチル基、ブチル基、コハク酸部位、プロピレンオキシのプロトンに基づく約77Hのピーク、δ3.0~5.5ppm付近にメトキシ基、エチレンジオキシ基、モルホリノ基、ブチル基、プロピレンオキシに基づく約65Hのピーク、δ5.6~9.0ppm付近にアロマティックなプロトン及びアルケンのプロトンに基づく17Hのピークを示し、前記式(40)と一致する構造であると確認した。
【0420】
実施例11
実施例10の第1工程で数平均分子量1000のポリプロピレングリコールモノブチルエーテルの代わりに、数平均分子量2000のポリプロピレングリコールを用いたこと以外はすべて同様の操作行い、下記式(41)
【0421】
【0422】
で示されるクロメン化合物を得た。収率は72%であった。
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、1.0~3.0ppm付近にシクロヘキサン環のメチレンプロトンおよびメチル基、ブチル基、コハク酸部位、プロピレンオキシのプロトンに基づく約146Hのピーク、δ3.0~5.5ppm付近にメトキシ基、エチレンジオキシ基、モルホリノ基、プロピレンオキシに基づく約132Hのピーク、δ5.6~9.0ppm付近にアロマティックなプロトン及びアルケンのプロトンに基づく34Hのピークを示し、前記式(41)と一致する構造であると確認した。
【0423】
実施例12
第1工程
実施例10の第1工程で数平均分子量1000のポリプロピレングリコールモノブチルエーテルの代わりに、数平均分子量2000のポリエチレングリコールアジペートを用いたこと以外はすべて同様の操作行い、下記式(42)
【0424】
【0425】
で示される化合物を得た。
【0426】
第2工程
実施例10の第3工程で前記式(37)のナフトール化合物の代わりに、下記式(43)
【0427】
【0428】
で示されるナフトール化合物を用いたこと以外はすべて同様の操作を行い、下記式(44)
【0429】
【0430】
で示される前駆体クロメン化合物を得た。
【0431】
第3工程
実施例10の第4工程で前記式(36)及び前記式(39)の代わりに、前記式(42)及び、前記式(44)を用いたこと以外は同様の操作を行い、下記式(45)
【0432】
【0433】
で示されるクロメン化合物を得た。収率は67%であった。
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、1.0~3.0ppm付近にシクロヘキサン環のメチレンプロトンおよびメチル基、コハク酸部位、アジピン酸部位のプロトンに基づく約132Hのピーク、δ3.0~5.5ppm付近にメトキシ基、エチレンジオキシ基、モルホリノ基、エチレンオキシに基づく約84Hのピーク、δ5.6~9.0ppm付近にアロマティックなプロトン及びアルケンのプロトンに基づく32Hのピークを示し、前記式(45)と一致する構造であると確認した。
【0434】
実施例13
第1工程
1,2,3-プロパントリオール 9.2g(0.100モル)、イミダゾール 40.8g(0.600モル)をDMF 400mLに溶解させた後、氷冷した。DMF200mLに溶解させたターシャリーブチルジメチルクロロシラン 36.2g(0.240モル)を滴下した。室温で、2時間撹拌した後、1,2-ジメトキシエタンとトルエンの混合溶媒、ブラインを加え、分液を行った。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾別し溶媒留去を行うことで、1,3-ビス(ターシャリーブチルジメチルシロキシ)-2-プロパノールを得た。
【0435】
第2工程
第1工程の生成物 14.63g(0.050モル)、コハク酸無水物10.00g(0.100モル)をジクロロメタン500mLに溶解させた。溶解確認後、トリエチルアミン12.65g(0.130モル)を滴下し、室温で12時間反応させた。反応させた後、氷冷し、1M塩酸溶液、1,2-ジメトキシエタンとトルエンの混合溶媒、ブラインを加え、分液を行った。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾別し溶媒留去ことで、下記式(46)
【0436】
【0437】
で示されるカルボン酸を得た。
【0438】
第3工程
第2工程の生成物 7.85g(0.020モル)、DMF5滴をジクロロメタン100mLに溶解させ、氷冷した。塩化オキサリル 10.2g(0.080モル)を加え、室温で4時間反応させた。反応液を濃縮することで、下記式(47)
【0439】
【0440】
で示される酸クロリドを得た。
【0441】
第4工程
実施例10で前記式(37)のナフトール化合物の代わりに、下記式(48)
【0442】
【0443】
で示されるナフトール化合物を、前記式(38)のプロパルギルアルコールの代わりに下記式(49)
【0444】
【0445】
で示されるプロパルギルアルコールを用いたこと以外は同様の操作を行い、下記式(50)
【0446】
【0447】
で示される前駆体クロメン化合物を得た。
【0448】
第5工程
実施例10第4工程の前記式(39)の代わりに、前記式(50)の前駆体クロメン化合物を、前記式(36)の代わりに、前記式(47)の酸クロリドを用いたこと以外は同様に反応し、下記式(51)
【0449】
【0450】
で示されるクロメン化合物を得た。
【0451】
第6工程
前記式(51)のクロメン化合物5.75g(0.005モル)をTHF50mLに溶解させ、氷冷を行った。そこに、1MテトラブチルアンモニウムフルオリドのTHF溶液15mLを30分かけて滴下した。滴下後、ゆっくり室温まで昇温し、室温で2時間反応させた。反応後、有機層を濃縮し、トルエン、ブラインを加え、分液を行った。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾別し溶媒留去ことで、下記式(52)
【0452】
【0453】
で示されるクロメン化合物を得た。
【0454】
第7工程
前記式(52)で示されるクロメン化合物 4.14g(0.004モル)、トリエチルアミン 1.82g(0.018モル)をジクロロメタン 100mLに溶解させ、氷冷した。前記式(36)で示される酸クロリドを10.22g(0.009モル)のジクロロメタン溶液を滴下した。滴下後、室温まで昇温し、室温で12時間反応させた。反応終了後、溶媒を除去し、シリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製することにより、下記式(53)
【0455】
【0456】
で示されるクロメン化合物を得た。収率は63%であった。
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、1.0~3.0ppm付近にシクロヘキサン環およびメチル基、ブトキシ基、コハク酸部位、プロピレンオキシのプロトンに基づく約146Hのピーク、δ3.0~5.5ppm付近にメトキシ基、プロピレンオキシ基、ブトキシ基、エチレンジオキシに基づく約111Hのピーク、δ5.6~9.0ppm付近にアロマティックなプロトン及びアルケンのプロトンに基づく19Hのピークを示し、前記式(53)と一致する構造であると確認した。
【0457】
実施例14
第1工程
実施例10において前記式(39)で示されるクロメン化合物の代わりに、前記式(50)で示されるクロメン化合物を用いた以外は同様の操作を行い、下記式(54)
【0458】
【0459】
で示されるクロメン化合物を得た。収率は75%であった。
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、1.0~3.0ppm付近にシクロヘキサン環およびメチル基、ブトキシ基、コハク酸部位、プロピレンオキシのプロトンに基づく約83Hのピーク、δ3.0~5.5ppm付近にメトキシ基、プロピレンオキシ基、ブトキシ基、エチレンジオキシに基づく約60Hのピーク、δ5.6~9.0ppm付近にアロマティックなプロトン及びアルケンのプロトンに基づく19Hのピークを示し、前記式(54)と一致する構造であると確認した。
【0460】
実施例15
第1工程
実施例10第1工程において数平均分子量1000のポリプロピレングリモノブチルエーテルの代わりに、数平均分子量4100のポリプロピレングリモノブチルエーテルを用いたこと以外は同様の操作を行い、下記式(55)
【0461】
【0462】
で示されるクロメン化合物を得た。収率は60%であった。
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、1.0~3.0ppm付近にシクロヘキサン環およびメチル基、ブトキシ基、コハク酸部位、プロピレンオキシのプロトンに基づく約245Hのピーク、δ3.0~5.5ppm付近にメトキシ基、プロピレンオキシ基、ブトキシ基、エチレンジオキシに基づく約222Hのピーク、δ5.6~9.0ppm付近にアロマティックなプロトン及びアルケンのプロトンに基づく19Hのピークを示し、前記式(55)と一致する構造であると確認した。
【0463】
実施例16
第1工程
実施例10第1工程において数平均分子量1000のポリプロピレングリモノブチルエーテルの代わりに、数平均分子量340のポリプロピレングリモノブチルエーテルを用いたこと以外は同様の操作を行い、下記式(56)
【0464】
【0465】
で示されるクロメン化合物を得た。収率は79%であった。
また、プロトン核磁気共鳴スペクトルを測定したところ、1.0~3.0ppm付近にシクロヘキサン環およびメチル基、ブトキシ基、コハク酸部位、プロピレンオキシのプロトンに基づく40Hのピーク、δ3.0~5.5ppm付近にメトキシ基、プロピレンオキシ基、ブトキシ基、エチレンジオキシに基づく27Hのピーク、δ5.6~9.0ppm付近にアロマティックなプロトン及びアルケンのプロトンに基づく19Hのピークを示し、前記式(56)と一致する構造であると確認した。
【0466】
実施例17~30、比較例9~12
実施例4と同様の方法で、フォトクロミック硬化体(成型体)の作製、評価を行った。
但し、クロメン化合物はインデノナフトピラン部位のモルが60μmolになるようにクロメン化合物を添加した。すなわち、化合物内に2つのインデノナフトピラン部位を有するクロメン化合物においては30μmolになるように添加した。
【0467】
比較例9~12には下記式(E)~(F)
【0468】
【0469】
で示される化合物を用いた。
各成分の配合割合とその結果を表3に示した。
【0470】
【0471】
実施例31~32、比較例13
(コーティング法により作製したフォトクロミックプラスチックレンズの物性評価)
下記処方により、各成分を混合してフォトクロミック硬化性組成物を調製した。各配合量を以下に示す。
【0472】
配合組成C:
(B)重合性化合物
(B1-1-1-1)成分
ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量532)10質量部。
(B1-1-1-2)成分
2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン 50質量部。
(B1-1-2-1)成分
トリメチロールプロパントリメタクリレート 10質量部。
(B1-1-2-3)成分
ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート(ダイセルユーシービー(株)製、EB-1830)10質量部。
(B1-1-3)成分
グリシジルメタクリレート 10質量部。
(C)重合硬化促進剤
(C1)成分
フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド(商品名:Irgacure819、BASF社製) 0.3質量部。
その他の配合成分
ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート 5質量部
エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート] 3質量部。
γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン 7質量部。
N-メチルジエタノールアミン 3質量部。
【0473】
フォトクロミック硬化性組成物は、上記配合組成において、配合組成Cにおける(B)重合性化合物100g当たり、クロメン化合物のインデノナフトピラン部位が1.2mmolとなるように添加した。このようにして得られたフォトクロミック硬化性組成物を用い、コーティング法にてフォトクロミック積層体を得た。重合方法は以下の通りである。
まず、光学基材として中心厚が2mmで屈折率が1.60のチオウレタン系プラスチックレンズを用意した。なお、このチオウレタン系プラスチックレンズは、事前に10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、50℃で5分間のアルカリエッチングを行い、その後十分に蒸留水で洗浄を実施した。
【0474】
スピンコーター(1H-DX2、MIKASA製)を用いて、上記のプラスチックレンズの表面に、湿気硬化型プライマー(製品名;TR-SC-P、(株)トクヤマ製)を回転数70rpmで15秒、続いて1000rpmで10秒コートした。その後、上記で得られたフォトクロミック組成物 約2gを、回転数60rpmで40秒、続いて600rpmで10~20秒かけて、フォトクロミックコーティング層の膜厚が40μmになるようにスピンコートした。
【0475】
このようにコーティング剤が表面に塗布されているレンズを、窒素ガス雰囲気中で出力200mW/cm2のメタルハライドランプを用いて、90秒間光を照射し、塗膜を硬化させた。その後さらに110℃で1時間加熱して、フォトクロミック層を有するフォトクロミック積層体を作製した。
得られたフォトクロミック積層体を試料とし、実施例4と同様の方法で、フォトクロミック特性を評価した。但し、残存率に関しては、スガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により50時間促進劣化させた。
結果を表4に示す。
【0476】