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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】注射デバイスのための駆動機構
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20230914BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20230914BHJP
   A61M 5/31 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A61M5/315 550R
A61M5/24
A61M5/31 520
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020550840
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019056522
(87)【国際公開番号】W WO2019179885
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】18305303.2
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ゴードン・ウォーレス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・マーク・リンゼイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージナ・ミリントン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・メレディス・ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ジェフリー・アーサー・マーシュ
(72)【発明者】
【氏名】アントニー・ポール・モーリス
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-507035(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0193417(US,A1)
【文献】特表2017-520370(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03181170(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/24
A61M 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
いくつかの事前設定されたまたはユーザ選択可能な用量の薬剤の排出のための注射デバイスであって:
長手方向軸(l)に沿って延在し、カートリッジ(100)を収容するように構成される細長いハウジング(10;310;410)であって、カートリッジ(100)は、薬剤を含有し、カートリッジ(100)の近位端を封止する栓(101)を有する、細長いハウジングと、
トリガ(70)およびピストンロッド(30)を含む排出機構(4)であって、トリガ(70)によって誘発されたとき、ピストンロッド(30)は、ハウジング(10)に対して遠位方向に長手方向軸(l)に沿って栓(101)に対して付勢するように構成される、排出機構と、
回転可能部材(260;360;460;560)および相手方部材(240;340;440;540)を含む用量設定機構(5)であって、相手方部材(240;340;440;540)は、第1の機械的コード(242;342;442;542)を含み、回転可能部材(260;360;460;560)は、第1の機械的コード(242;342;442;542)に対して相補的形状の第2の機械的コード(262;362;462;562)を含み、第1の機械的コード(242;342;442;542)は、凸部(246;346;446;546)および凹部(248;348;448;548)のうちの少なくとも一方を含み、第2の機械的コード(262;362;462;562)は、相補的形状の凸部(268;368;548)または凹部(266;366;466;566)のうちの少なくとも一方を含む、用量設定機構と、を含み、
ここで、用量の設定のために、回転可能部材(260;360;460;560)は、ハウジング(10;310;410)に対して、および相手方部材(240;340;440;540)に対して、多数の回転状態の範囲内で回転可能であり、用量の設定の間、回転可能部材(260;360;460;560)は、ハウジング(10;310;410)に対して、または相手方部材(240;340;440;540)に対して、長手方向軸(l)に沿って拘束され、
用量の排出のために、第1の機械的コード(242;342;442;542)が第2の機械的コード(262;362;462;562)と位置合わせされるときにのみ、回転可能部材(260;360;460;560)および相手方部材(240;340;4
40;540)のうちの一方は、回転可能部材(260;360;460;560)および相手方部材(240;340;440;540)のうちの他方に対して、排出位置(e)へ長手方向軸(l)に沿って変位可能であり、回転可能部材(260;360;460;560)および相手方部材(240;340;440;540)のうちの一方の排出位置(e)への長手方向変位は、第1の機械的コード(242;342;442;542)および第2の機械的コード(262;362;462;562)が位置合わせしていない限り妨げられる、前記注射デバイス。
【請求項2】
回転可能部材(260;360;460;560)および相手方部材(240;340;440;540)のうちの少なくとも一方が用量設定位置にある間、第1の機械的コード(242;342;442;542)は、第2の機械的コード(262;362;462;562)から軸方向にオフセットする、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項3】
長手方向(l)に沿って圧縮可能であり、回転可能部材(260;360;460;560)および相手方部材(240;340;440;540)のうちの一方と係合される投薬ばね(130)をさらに含み、ここで、回転可能部材(260;360;460;560)または相手方部材(240;340;440;540)は、投薬ばね(130)の作用に対して、用量設定位置(s)から用量排出位置(e)へ長手方向(l)に沿って変位可能である、請求項1または2に記載の注射デバイス。
【請求項4】
第1の機械的コード(242;342;442;542)および第2の機械的コード(262;352;462;562)は各々、凸部(246、266;346、366;446、466;546、566)および凹部(248、268;348、368;448;548)のうちの少なくとも一方を含む第1のコード機能(245、265;345、365;445、465;545、565)を少なくとも含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の注射デバイス。
【請求項5】
第1の機械的コード(242;342;442;542)および第2の機械的コード(262;352;462;562)は各々、凸部(246、266;346、366;446、466;546、566)および凹部(248、268;348、368;448;548)のうちの少なくとも一方を含む第2のコード機能(245’、265’;345’、365’)を少なくとも含み、第1および第2のコード機能は、相手方部材(240;340;440;540)および回転可能部材(260;360;460;560)のうちの少なくとも一方の円周に、互いに所定の角距離で配置される、請求項4に記載の注射デバイス。
【請求項6】
第1の機械的コード(242;342;442;542)および第2の機械的コード(262;352;462;562)のうちの少なくとも一方は、相手方部材(240;340;440;540)および回転可能部材(260;360;460;560)のうちの少なくとも一方の円周に等距離または等角度に配置される少なくとも2つまたはそれ以上のコード機能(245、245’、265、265’;345、365;445、465;545、565)を含む、請求項4または5に記載の注射デバイス。
【請求項7】
少なくとも1つの凸部(246、266;446、466;546、566)は、径方向の凸部であり、少なくとも1つの凹部(248、268;448;548)は、径方向の凹部である、請求項4~6のいずれか一項に記載の注射デバイス。
【請求項8】
径方向の凸部(246、266;446、466;546、566)は、長手方向に沿って延在する細長いリブを含み、および/または、径方向の凹部(248、268;448;548)は、長手方向(l)に沿って延在する細長い溝を含む、請求項7に記載の注
射デバイス。
【請求項9】
少なくとも1つの凸部(346、366)は、長手方向に沿って延在する軸方向の凸部であり、少なくとも1つの凹部(348、368)は、長手方向(l)に沿って延在する軸方向の凹部である、請求項4~6のいずれか一項に記載の注射デバイス。
【請求項10】
軸方向の凸部(346、366)および軸方向の凹部(348、368)のうちの少なくとも一方は、長手方向を向くテーパ状または歯付きの構造を含む、請求項9に記載の注射デバイス。
【請求項11】
相手方部材(240;340;440;540)および回転可能部材(260;360;460;560)は、第1の機械的コード(242;342;442;542)および第2の機械的コード(262;362;462;562)を通じて、互いに回転不能に連結可能または回転不能にロック可能である、請求項1~10のいずれか一項に記載の注射デバイス。
【請求項12】
回転可能部材(260;360;460;560)および相手方部材(240;340;440;540)のうちの一方が排出位置(e)に達するとき、相手方部材(240;340;440;540)および回転可能部材(260;360;460;560)は、回転不能にロックされる、請求項11に記載の注射デバイス。
【請求項13】
相手方部材(340;440;540)は、ハウジング(10;310)内に統合されるか、またはハウジング(10;310)にしっかりと連結され、回転可能部材(360;460;560)は、トリガ(70)によって形成されるか、またはトリガ(70)を遠位方向に押し下げることによってハウジング(10;310)に対して長手方向に変位可能である、請求項1~12のいずれか一項に記載の注射デバイス。
【請求項14】
用量インジケータ(60)および駆動スリーブ(40)をさらに含み、ここで、回転可能部材(260)を形成する用量インジケータ(60)は、ハウジング(10)とねじ係合され、相手方部材(240)を形成する駆動スリーブ(40)は、トリガ(70)を遠位方向に押し下げることによってハウジング(10;310)に対して長手方向に変位可能である、請求項1~12のいずれか一項に記載の注射デバイス。
【請求項15】
薬剤を含有し、ハウジング(10;410)の内側に配置されるカートリッジ(100)をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の注射デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1つの態様において、事前設定されたまたはユーザ選択可能な用量の薬剤の排出のための、ペンタイプ注射器のような、注射デバイスに関する。特に、本開示は、巻上げ式排出機構のような排出機構を含み、かつ用量設定機構を含む注射デバイスであって、用量設定機構は、実際に設定された用量が、所定のまたは処方された用量サイズに一致しないとき、用量排出手順を妨げるように、またはブロックするように構成される、注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
単一用量または複数用量の液体薬剤を設定および投薬するための注射デバイスは、そのようなものとして当該技術分野においてよく知られている。一般的に、そのようなデバイスは、通常の注射器の目的と実質的に同様の目的を有する。
【0003】
注射デバイス、特にペンタイプ注射器は、いくつかのユーザ特有の要件を満たさなければならない。例えば、糖尿病のような慢性疾患の患者の場合、患者は、身体的に虚弱である場合があり、また視覚障害がある場合もある。したがって、家庭用医薬品を特に対象とした好適な注射デバイスは、構造が頑強である必要があり、使い易くなければならない。さらには、デバイスおよびその構成要素の操作および一般的な取り扱いは、明瞭かつ容易に理解可能でなければならない。さらに、用量設定ならびに用量投薬手順は、操作し易くなければならず、明白である必要がある。
【0004】
典型的には、そのようなデバイスは、投薬されるべき薬剤で少なくとも部分的に充填されたカートリッジを受けるように適用される特定のカートリッジホルダを含むハウジングを含む。そのようなデバイスは、カートリッジのピストンと動作可能に係合するように適用される変位可能なピストンロッドを通常有する、駆動機構または排出機構をさらに含む。駆動機構およびそのピストンロッドを用いて、カートリッジのピストンは、遠位方向または投薬方向に変位可能であり、したがって、所定の量の薬剤を、注射デバイスのハウジングの遠位端部と解放可能に連結されることになる穿刺アセンブリを介して排出することができる。
【0005】
注射デバイスによって投薬されるべき薬剤は、複数投与カートリッジ内に提供および含有される。そのようなカートリッジは、典型的には、穿刺可能な封止体を用いて遠位方向に封止され、ピストンによって近位方向にさらに封止されるガラス製バレルを含む。再利用可能な注射デバイスの場合、空のカートリッジは、新しいものと交換可能である。それと反対に、使い捨てタイプの注射デバイスは、カートリッジ内の薬剤が投薬された、または使い果たされたときに廃棄されることになる。
【0006】
いくつかの応用では、デバイスから投与することができる最小薬剤用量ならびに最大用量を制限することが有利な場合がある。これは、例えば、治療学的有効量のみが投与されることを確実にすることができる。そのような機能性は、薬物の組み合わせに特に関連しており、組み合わされた薬物の最小量は、組み合わせのうちの1つの要素の十分な送達が治療学的に有効であることを確実にしながら、組み合わせのうちの他の要素にとって重要な、用量のいくらかの変動を可能にすることが必要とされる。
【0007】
いくつかの応用では、1つのみの固定用量値または複数の用量値の送達を可能にするデバイスを提供することが有利な場合がある。最小固定用量値、および最小固定用量値の整数倍の送達を可能にするデバイスを提供することが望ましい場合がある。
【0008】
さらなる応用は、様々な離散的な不連続の用量の医薬品が必要とされる治療のためのものである。例えば、様々な用量は、異なるユーザグループの治療的ニーズを満足するため、または個々のユーザが、1日の異なる時間、例えば朝もしくは夜に、異なる用量を送達することを可能にするために必要とされる場合がある。
【0009】
したがって、限られた数の一般的に利用可能な用量値に対する送達可能な用量値の制限を提供する注射デバイスを有することが望ましい。注射デバイスは、1つのみまたはいくつかの固定用量値の送達を可能にすべきである。注射デバイスは、予め記述されたまたは所定の用量サイズと一致しない用量を設定または排出することを阻止するように構成されるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様において、注射デバイスは、いくつかの事前設定されたまたはユーザ選択可能な用量の薬剤、典型的には液体薬剤の排出のために提供される。注射デバイスは、長手方向軸に沿って、または主軸に沿って延在する細長いハウジングを含む。ハウジングは、カートリッジを収容するように構成され、カートリッジが、薬剤を含有し、カートリッジの近位端を封止する栓を有する。注射デバイスは、トリガおよびピストンロッドを含む排出機構をさらに含む。トリガによって誘発されたとき、ピストンロッドは、ハウジングに対して遠位方向に長手方向軸に沿って栓に対して付勢するように構成される。駆動機構は、カートリッジの遠位端から薬剤を排出するため、ピストンロッドを栓に対して付勢するようにトリガを遠位方向に押し下げることによって駆動力または駆動推進力をピストンロッドに印加するように構成される。
【0011】
注射デバイスは、用量設定機構をさらに含む。用量設定機構は、回転可能部材および相手方部材を含む。相手方部材は、第1の機械的コードを含む。回転可能部材は、第2の機械的コードを含む。第1および第2の機械的コードは、相補的形状である。第1の機械的コードは、第2の機械的コードのコードに対応し、その逆もまた同様である。
【0012】
用量の設定のために、回転可能要素は、多数の回転状態の範囲内で、ハウジングに対して、および相手方部材に対して回転可能である。用量の設定の間、回転可能部材は、ハウジングに対して、または相手方部材に対して、長手方向軸に沿って拘束される。言い換えると、少なくとも用量の設定の間、回転可能部材は、ハウジングに対する、および/または相手方部材に対する回転運動に専ら供される。少なくとも用量の設定の間、回転可能部材は、ハウジングおよび/または相手方部材に、軸方向に拘束されるか、または軸方向に固定される。
【0013】
用量の排出のために、回転可能部材および相手方部材のうちの一方は、第1の機械的コードが第2の機械的コードと位置合わせされるときのみ、回転可能部材および相手方部材のうちの他方に対して、排出位置へ長手方向軸に沿って変位可能である。第1の機械的コードが第2の機械的コードと位置合わせされていない場合、排出位置に達するための回転可能部材および相手方部材の相互の相対的な長手方向変位は、回転可能部材および相手方部材の機械的コードの不一致によって効果的にブロックされるか、または妨げられる。
【0014】
回転可能部材および相手方部材の、相互に対応しかつ相補的形状の第1および第2の機械的コードにより、相手方部材に対する回転可能部材の長手方向または軸方向変位は、第1の機械的コードが第2の機械的コードに位置合わせされる、回転可能部材のそのような構成に制限される。
【0015】
典型的には、排出機構および用量設定機構は、用量排出モードと用量設定モードとの間で切り替え可能である。用量設定モードでは、ユーザが所望のサイズの用量を設定するための可能性を提供される間、ピストンロッドは静止される。用量設定は、回転可能部材の回転を伴う場合がある。一般的には、回転可能部材は、多数の離散的な回転状態の範囲内で、相手方部材に対して、およびハウジングに対して回転可能である。各々の離散的な回転状態は、薬剤の用量の標準単位に対応することができる。用量設定の間、回転可能部材が1つの離散的な回転状態から連続した離散的な回転状態へと回転されるとき、用量サイズは、薬剤の標準単位だけ、または標準単位の倍数だけ増大することができる。
【0016】
第1および第2の機械的コードは、多数の回転状態の範囲のうち、回転可能部材のいくつかの所定の回転状態のみを用いて、第1の機械的コードが、第2の機械的コードと位置合わせし、したがって相手方部材に対する回転可能部材の相対的な軸方向または長手方向変位を可能にするように、構成および選択される。このやり方では、注射デバイスによって設定および投薬することができる異なるサイズの用量値の数は、所望の最小値まで低減することができる。典型的には、第1および第2の機械的コードは、少なくとも1つの所定のサイズの用量を設定および投薬することを可能にするように構成される。第1および第2の機械的コードは、第2の所定の用量および/または第3の所定の用量を設定および投薬することを可能にするように、およびサポートするようにさらに構成してもよい。第2の所定の用量は、第1の所定の用量の2倍の大きさであってもよい。特に、第1および第2の機械的コードは、1つの所定の用量サイズ、および所定の用量サイズの整数倍であるさらなる用量サイズを設定および投薬することを可能にする、およびサポートするように構成してもよい。
【0017】
回転可能部材および/または相手方部材が注射デバイスの既存の構成要素内に統合されることは、特に有用である。相手方部材内への第1の機械的コードの実装、および回転可能部材内への第2の機械的コードの統合は、いずれにせよ注射デバイス内に存在する相手方部材および回転可能部材のうちの少なくとも一方の再設計または再構築のみを必要とする。この限りでは、本明細書に説明されるような注射デバイスの機能性は、一般的には、用量設定機構または排出機構への追加の機械的構成要素の実装なしに得ることができる。
【0018】
排出機構は、巻上げ式排出機構を含むことができる。そのような巻上げ式排出機構は、とりわけ機械的エネルギー貯蔵器を含む。機械的エネルギー貯蔵器は、注射デバイスが製造される際に、予め組み込まれるか、または予め付勢される。場合により、機械的エネルギー貯蔵器は、用量が実際に、用量設定機構を通じてダイヤル設定されるまたは設定される際に、さらに付勢または緊張させることができる。このやり方では、機械的エネルギー貯蔵器に収納される機械的エネルギーは、用量設定の間に増大させることができる。
【0019】
典型的に、および用量設定の間、機械的エネルギー貯蔵器は、ピストンロッドを遠位方向へ駆動および変位させるため、駆動力または駆動トルクをピストンロッドに伝達するためにピストンロッドに連結される。機械的エネルギー貯蔵器からピストンロッドへのエネルギーの解放は、トリガによって制御および/またはトリガすることができる。1つまたはいくつかのクラッチにより、エネルギー貯蔵器の機械的エネルギーは、ピストンロッドをハウジングに対して遠位方向に駆動するため、ピストンロッドに作用する駆動推進力または駆動力へと伝達可能である。トリガは、空乏化する機械的エネルギー貯蔵器の影響下で、ピストンロッドの遠位に向かう運動を解放するために、巻上げ式排出機構および/または用量設定機構の、1つまたはいくつかのクラッチに動作可能に連結することができる。
【0020】
第1の機械的コードは、第2の機械的コードに対して相補的形状であり、その逆もまた同様である。用量の設定の間、ならびに回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方が用量設定位置にある間、第1の機械的コードは、第2の機械的コードから軸方向にオフセットすることができる。第1の機械的コードは、用量設定機構および/または排出機構が用量設定モードにある限り、第2の機械的コードから軸方向または長手方向に離れたところに位置することができる。
【0021】
注射デバイスは、回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方を排出位置へ変位させることによって、用量排出モードに切り替え可能である。回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方が、排出位置にあるか、または排出位置に到達するとき、注射デバイスは、用量排出モードに切り替えられる。用量排出モードにあるとき、ピストンロッドは、遠位に向かう前進運動に供され、こうして栓に対して付勢する。用量設定モードから用量排出モードへの切り替えは、典型的には、トリガを、ハウジングに対して、典型的には遠位方向に押し下げることによって誘発される。トリガの遠位に向かう変位は、直接的に、または少なくとも1つの追加部材を介して、例えば、回転可能部材および相手方部材のうちの一方に対するクラッチによってのいずれかで伝達され、こうして回転可能部材に対する相手方部材のそれぞれの長手方向変位を誘発する。
【0022】
注射デバイスを用量排出モードに切り替えるため、回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方は、典型的には、注射デバイスのハウジングに対する長手方向または軸方向の摺動変位に供される。例えば、回転可能部材および相手方部材のうちの一方は、ハウジングに対する遠位に向かう摺動変位に供されるが、回転可能部材および相手方部材のうちの他方は、ハウジングに対して軸方向に固定される。注射デバイスを用量設定モードから用量排出モードに切り替えるため、回転可能部材および相手方部材のうちの一方は、回転可能部材および相手方部材のうちの他方に対して、軸方向に変位可能、例えば、摺動自在に軸方向に変位可能である。
【0023】
第1の機械的コードおよび第2の機械的コードが位置合わせしていない場合、相手方部材に対する回転可能部材の軸方向または長手方向変位は、第1および第2の機械的コードによってブロックされ、こうして注射デバイスを用量排出モードに切り替えることを妨げ、阻止する。
【0024】
位置合わせしていない第1および第2の機械的コードによって誘発される機械的ブロッキングは、第1および第2の機械的コードが位置合わせしていない限りは遠位方向に完全に押し下げることができないトリガへと戻って伝達されることさえも考えられる。このやり方では、即時のフィードバックがユーザに与えられる。第1および第2の機械的コードが位置合わせしていない限り、故に実際に設定される用量が所定の用量サイズに一致しない限り、注射デバイスの用量排出動作を開始またはトリガすることはできない。最終的に、排出機構のトリガを遠位方向に完全に押し下げることはできない。
【0025】
用量設定モードから用量排出モードへの注射デバイスの切り替えのために、回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方は、回転可能部材および相手方部材のうちの他方に対して変位可能である。例えば、1つの例では、回転可能部材は、注射デバイスが用量設定モードにあるときにのみ、ハウジングに対して長手方向軸に沿って軸方向に拘束される。注射デバイスを用量投薬モードに切り替えるため、回転可能部材は、ハウジングに対して、および相手方部材に対して軸方向に変位可能である。ここで、相手方部材は、ハウジングにしっかりと装着される。別の例では、用量設定モードから用量排出モードへのデバイスの切り替えの間、長手方向変位に専ら供されるのは相手方部材である。ここで、回転可能部材は、用量設定の間、ならびに用量排出の間、ハウジングに軸方向に固定される。さらなる例では、用量設定モードから用量排出モードへの注射デバイスの切り替えのために、回転可能部材および相手方部材の両方が、ハウジングに対する、および互いに対する長手方向変位に供されることさえも考えられる。
【0026】
さらなる例によれば、回転可能部材および相手方部材のうちの一方の排出位置への長手方向変位は、第1の機械的コードおよび第2の機械的コードが位置合わせしていない限りは妨げられる。第1および第2の機械的コードが相互に位置合わせされるときにのみ、それらは、それらの長手方向の相対的な変位を可能および有効にする。適切に位置合わせされるとき、第1の機械的コードは、第2の機械的コードの少なくとも一部分を受けることができ、その逆もまた同様である。第1および第2の機械的コードは、適切に位置合わせされるとき、少なくとも部分的にインターリーブしたまたは重なり合う構成で配置可能である。
【0027】
1つの例では、第2の機械的コードは、第1の機械的コードを通過することができる、またはその逆である。したがって、排出位置に到達するとき、第1の機械的コードおよび第2の機械的コードは、相互に機械的に係合される、例えば、回転不能にロックされるか、または、第1および第2の機械的コードのうちの一方が、第1および第2の機械的コードのうちの他方を通過しているかのいずれかである。後者の場合、第1および第2の機械的コードは、排出位置に到達するとき、機械的に係合解除される。用量設定位置の1つの例では、第2の機械的コードは、第1の機械的コードから遠位に位置する。正しく位置合わせされるとき、第2の機械的コードは、第1の機械的コードを通過することができ、こうして、回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方の排出位置に達したときに、第1の機械的コードの遠位側に到達する。
【0028】
適切に位置合わせされるとき、第1および第2の機械的コードは、モード切り替え距離を越えて排出位置の方へおよびそこへの回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方の長手方向変位を有効にする。モード切り替え距離は、第1および第2の機械的コードが位置合わせしていないとき、回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方を、回転可能部材および相手方部材のうちの他方に対して長手方向に対して動かすことができる距離よりも大きい。第1の機械的コードが、第2の機械的コードに適切に位置合わせされるとき、回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方を、排出位置の方へ長手方向に変位することができる距離は、最大である。この最大距離は、注射デバイスを用量設定モードから用量排出モードに切り替えるために必要とされるモード切り替え距離よりも大きいか、またはそれに等しい。
【0029】
別の例では、注射デバイスは、長手方向に沿って圧縮可能である投薬ばねをさらに含む。投薬ばねは、回転可能部材および相手方部材のうちの一方とさらに係合される。投薬ばねは、回転可能部材および相手方部材のうちの一方と直接的または間接的に係合される。回転可能部材または相手方部材は、投薬ばねの作用に対して用量設定位置から用量排出位置へ長手方向に沿って変位可能である。したがって、投薬ばねは、回転可能部材または相手方部材を用量排出位置から用量設定位置の方へおよびそこへと戻すように構成される。
【0030】
言い換えると、初期構成において、およびユーザが用量の設定のために注射デバイスをつかむとき、回転可能部材または相手方部材は、用量設定位置に位置する。それは、投薬ばねによって、用量設定位置に恒久的に維持されるか、または付勢される。次いでそれは、第1および第2の機械的コードが正確に位置合わせされると仮定して、投薬ばねの作用に対して用量排出位置へと変位可能である。典型的には、投薬ばねの作用下で長手方向に変位可能である回転可能部材および相手方部材のうちの一方はまた、トリガと機械的に係合可能である。
【0031】
典型的には、トリガはまた、投薬ばねの作用に対して用量設定位置から用量排出位置へ長手方向に沿って変位可能である。トリガならびに回転可能部材または相手方部材の両方は、投薬ばねの作用下で、用量排出位置から初期用量設定位置へと変位可能である。投薬ばねは、回転可能部材、相手方部材、およびトリガのうちの少なくとも1つの、初期用量設定位置の方への長手方向変位を誘発するように構成される長手方向に延在する圧縮ばねを含むことができる。典型的には、用量設定位置は、近位位置であり、用量排出位置は、遠位位置である。回転可能部材、相手方部材、またはトリガが、用量設定位置から用量排出位置へと変位される場合、それは遠位に向かう変位に供される。例えば、トリガが解放されると、回転可能部材、相手方部材、およびトリガのうちの少なくとも1つは、用量設定位置へと反対方向、すなわち近位方向に変位される。
【0032】
さらなる例では、回転可能部材およびトリガのうちの少なくとも一方は、投薬ばねの作用下で近位の用量設定位置に維持される。このやり方では、ハウジングに対する、および相手方部材に対する回転可能部材のそれぞれの回転を伴う、用量のダイヤル設定または設定は、ユーザによって直ちに、すなわち、回転可能部材、相手方部材、またはトリガのうちの少なくとも1つの任意のさらなる操作なしに、誘発することができる。
【0033】
さらなる例によれば、第1の機械的コードおよび第2の機械的コードは各々、少なくとも第1のコード機能を含む。第1のコード機能は、凸部および凹部のうちの少なくとも一方を含む。典型的には、第1の機械的コードは、そのようなコード機能のうちの1つまたはそれ以上を含み、第2の機械的コードは、そのようなコード機能のうちの1つまたはそれ以上を含む。第1の機械的コードのコード機能は、第2の機械的コードのコード機能に対して相補的形状である。例えば、第1の機械的コードが、凸部を有する第1のコード機能を含むとき、第2の機械的コードは、第1の機械的コードの凸部と一致する凹部を有する第1のコード機能を含む。コード機能はさらに、単一の凸部および単一の凹部を含むことができるだけではなく、少なくとも1つの凸部および少なくとも1つの凹部のシーケンスまたはパターンを含むこともできる。第1の機械的コードと一致する第2の機械的コードは、凸部および凹部の対応するシーケンスまたはパターンを含む。
【0034】
用量設定位置にあるとき、第1の機械的コードの少なくとも1つの凸部または凹部は、第2の機械的コードの対応した形状の凹部または凸部に位置合わせされるが、これに係合していない。
【0035】
回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方が、排出位置の方へ長手方向変位に供されると、第1の機械的コードの少なくとも1つの凸部または凹部は、第2の機械的コードの少なくとも1つの凹部または凸部と係合する、その中へ摺動する、またはそこを通って摺動する。
【0036】
典型的には、第1の機械的コードおよび第2の機械的コードのうちの一方の第1のコード機能の少なくとも1つの凸部は、当接面を含み、この当接面により、凸部が、第1の機械的コードおよび第2の機械的コードのうちの他方の当接面と軸方向または長手方向に当接することができる。このやり方では、および、例えば、第1の機械的コードの凸部が第2の機械的コードの凹部と位置合わせしていない場合、凸部は、回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方が排出位置の方へ動かされると第2の機械的コードと当接する。第1の機械的コードおよび第2の機械的コードのうちの一方の凸部の当接面が第1の機械的コードおよび第2の機械的コードのうちの他方と当接するとすぐに、相手方部材に対する回転可能部材のさらなる軸方向または長手方向変位は、ブロックされ、妨げられる。
【0037】
さらなる例によれば、第1の機械的コードおよび第2の機械的コードは各々、凸部および凹部のうちの少なくとも一方を含む第2のコード機能を少なくとも含む。言い換えると、第1の機械的コードおよび第2の機械的コードの各々は、第1のコード機能、および少なくとも第2のコード機能、および場合により、第3のコード機能、第4のコード機能、またはさらなるコード機能さえも含む。第1の機械的コードおよび第2の機械的コードのコード機能の各々は、凸部および凹部のうちの少なくとも一方を含む。コード機能は、1つの凸部のみ、または1つの凹部のみを含むことができる。第1および第2のコード機能のうちの一方はまた、凸部および凹部の両方、または凸部および凹部のシーケンスさえも含むことができる。典型的には、および別の例によれば、第1および第2のコード機能は、相手方部材および回転可能部材のうちの少なくとも一方の円周に互いに所定の角距離に配置される。
【0038】
多数のコード機能を有することにより、第1および第2の機械的コードを、相手方部材および回転可能部材のうちの少なくとも一方の円周に沿って、分散し広げることができる。このやり方では、回転可能部材と相手方部材との間の増大された当接を達成することができ、位置合わせ不一致の場合に第1および第2の機械的コードの間で伝達されることになるブロッキング力を低減することができる。
【0039】
位置合わせしていない構成の場合に第1および第2の機械的コードによって提供されることになる最大ブロッキング力は、第1の機械的コードおよび第2の機械的コードの複数のコード機能にわたって効果的に分散させることができる。単に1つよりも多いコード機能では、回転可能部材および相手方部材が、排出位置に到着するときに回転不能にロック可能または回転不能に係合可能であるときにさらに有用である。このとき、回転可能部材から相手方部材へ伝達されるトルクまたは力を、第1および第2の機械的コードの多数のコード機能間で分けることができる。
【0040】
第1および第2のコード機能は、相手方部材および回転可能部材のうちの少なくとも一方の内周または外周で互いに所定の角距離に配置することができる。例えば、相手方部材が、中空形状の回転可能部材内に挿入可能であるとき、相手方部材のコード機能は、典型的には、相手方部材の外周に提供され、回転可能部材のコード機能は、回転可能部材の内側円周または内周に提供される。相手方部材のコード機能は、スリーブ形状の相手方部材の外壁に位置することができる。回転可能部材のコード機能は、回転可能部材のレセプタクルまたは中空部分の内側壁に提供することができる。他の例では、それは、相手方部材の中空部または中空レセプタクルの内側に受け取られる回転可能部材であってもよい。このとき、相手方部材のコード機能は、相手方部材の内周に、故に相手方部材の内向きの側壁部に提供され、回転可能部材のコード機能は、外表面、故に回転可能部材の外周に提供される。
【0041】
第1の機械的コードは、回転可能部材の方を向く相手方部材の長手方向端に提供することができる。したがって、第2の機械的コードは、相手方部材の方を向く回転可能部材の長手方向端に提供することができる。
【0042】
回転可能部材が、例えば、トリガとして実装されるとき、第1の機械的コードは、その遠位端に提供することができる。ここで、相手方部材は、ハウジングの近位部分に、例えば、ハウジングの近位端に、提供または統合することができる。
【0043】
別の例によれば、第1の機械的コードおよび第2の機械的コードのうちの少なくとも一方は、相手方部材および回転可能部材のうちの少なくとも一方の円周に等距離または等角度に配置される少なくとも2つまたはそれ以上のコード機能を含む。相手方部材および回転可能部材のうちの少なくとも一方の円周、例えば、内周または外周における、2つまたはそれ以上のコード機能の等距離または等角度の配置は、相手方部材および回転可能部材が、適切に位置合わせされるときに第1の機械的コードおよび第2の機械的コードを介して係合することができるという利点を有する。
【0044】
相手方部材および回転可能部材の相互に係合するコード機能の数を増大させることにより、第1および第2の機械的コードによって提供される機械的係合の合計の力および安定性を改善することができる。したがって、第1および第2の機械的コードの間の幾分堅牢でかつ安定した機械的係合を提供することができる。これは、例えば、回転可能部材および相手方部材が排出位置に回転不能にロックされるときに有利であり、ここで、第1の機械的コードと第2の機械的コードとの間の回転連動(rotational interlock)は、排出位置にあるときに、回転可能部材および相手方部材のインターフェースにわたって角運動量を伝達するように構成される。
【0045】
等距離かつ等しい形状のコード機能では、相手方部材に対する回転可能部材の1回転あたりの第1および第2の機械的コードの許容位置合わせ構成の数は、それに応じて増加する。2つのコード機能では、第1および第2の機械的コードが長手方向位置合わせしている、回転可能部材の回転状態のうちの2つが存在する。3つの同一形状かつ等距離または等角度に位置合わせされたコード機能では、第1および第2の機械的コードが適切に位置合わせされる、回転可能部材の3つの回転状態が存在する、というように続く。
【0046】
第1および第2の機械的コードのうちの一方の2つまたはそれ以上のコード機能は、等しい形状であるか、または異なった形状である。第1の機械的コードおよび第2の機械的コードにおける2つの同一形状かつ等距離または等角度に位置合わせされたコード機能では、第1および第2の機械的コードが位置合わせされる、1回転あたり回転可能部材の2つの回転状態が存在する。第1の機械的コードおよび第2の機械的コードにおける3つの同一形状かつ等距離または等角度に位置合わせされたコード機能では、回転可能部材の1回転あたり第1および第2の機械的コードの3つの位置合わせ構成が得られ、そこから始まり、注射デバイスを用量排出モードに切り替えることができる。異なった形状の第1および第2のコード機能では、またはコード機能の非等距離または非等角度分離では、回転可能部材の1回転あたり第1および第2の機械的コードの1つのみの許容位置合わせ構成が存在する。
【0047】
さらなる例によれば、少なくとも1つの凸部は、径方向の凸部であり、少なくとも1つの凹部は、径方向の凹部である。径方向内向きに延在する凸部では、凹部もまた、径方向内向きに延在する。径方向に外向きに延在する凸部では、相補的形状の径方向の凹部もまた、径方向外向きに延在する。径方向の凸部は、径方向の凹部の断面と一致する断面を含む。第1の機械的コードが、第2の機械的コードに正しく位置合わせされる場合、径方向の凸部は、回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方が排出位置の方へ長手方向変位に供されると、相補的形状の径方向の凹部内へ摺動することができる。
【0048】
排出位置にあるとき、径方向の凸部は、依然として径方向の凹部の内側に位置することができるか、または径方向の凹部を長手方向に通過している。排出位置に到達したとき径方向の凸部が径方向の凹部と係合したままであるとき、回転可能部材および相手方部材は、回転不能に係合されるか、または回転不能にロックされる。故に、回転可能部材または相手方部材のいかなるさらなる回転も、回転可能部材および相手方部材のうちの他方に、等しく、故に変更なしに、伝達される。
【0049】
別の例では、径方向の凸部は、径方向の凹部の第1の側面に径方向の凹部から長手方向に離れて位置することができる。回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方が排出位置へ動かされると、径方向の凸部は、径方向の凹部を通過して、次いで、反対側、故に、径方向の凹部の第2の側面に位置することができる。この例では、回転可能部材および相手方部材は、排出位置に到達するときにさえ、および注射デバイスが用量排出モードに切り替えられているとき、互いに対して自由に回転することができる。
【0050】
さらなる例によれば、径方向の凸部は、長手方向に沿って延在する細長いリブを含み、および/または径方向の凹部は、長手方向に沿って延びる細長い溝を含む。言い換えると、径方向の凸部および細長いリブは、回転可能部材および相手方部材のスプライン連結係合を形成するように構成される。このためには、凸部および凹部のうちの一方が、長手方向に沿って細長い形状のものであればよい。細長いリブおよび細長い溝のうちの少なくとも一方があれば、リブまたは凸部が凹部または細長い溝に入るとすぐに、第1および第2の機械的コード間ならびに回転可能部材および相手方部材間のトルク耐性係合を確立および獲得することができる。細長いリブおよび細長い溝のうちの少なくとも一方があれば、相手方部材の回転可能部材は、それらの間の回転連結が維持されると同時に、長手方向の相対的な変位に供される。
【0051】
別の例によれば、少なくとも1つの凸部は、長手方向に沿って延在する軸方向の凸部である。少なくとも1つの凹部は、対応した形状であり、長手方向に沿って延在する軸方向の凹部を含む。第1の機械的コードおよび第2の機械的コードに多数の軸方向の凸部および軸方向の凹部を提供してもよい。ここでは、第1の機械的コードおよび第2の機械的コードを、回転可能部材および/または相手方部材の、端面に、または遠位もしくは近位に向くフランジ部にそれぞれ提供することができる。
【0052】
例えば、第1および第2の機械的コードのうちの少なくとも一方のコード機能の軸方向の凸部および/または軸方向の凹部を、回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方の端面に提供することができ、端面は、長手方向、例えば、近位方向または遠位方向を向く。そのような軸方向に延在し、かつ相互に係合するコード機能は、比較的薄い側壁を有する回転可能部材または相手方部材を用いた実装に特に有用である。径方向の凹部の場合、側壁の厚さは、径方向の凹部の径方向の深さよりも少なくともいくらか大きくなければならない。
【0053】
別の例では、軸方向の凸部および軸方向の凹部のうちの少なくとも一方は、長手方向を向くテーパ状または歯付きの構造を含む。典型的には、第1の機械的コードは、少なくとも1つの軸方向の凸部および少なくとも1つの軸方向の凹部の両方を含む。第2の機械的コードもまた、第1の機械的コードの軸方向の凸部および軸方向の凹部に対して相補的形状をした軸方向の凸部および軸方向の凹部の両方、少なくとも1つを含む。軸方向の凸部および軸方向の凹部のうちの少なくとも1つのテーパ状または歯付きの構造は、第1の機械的コードが第2の機械的コードに長手方向に接近する際、制限された円周誘導機能性をさらに提供する。第1の機械的コードが、第2の機械的コードに対して絶対的に正確に角度的に位置合わせされるべきではない場合、相互に対応する軸方向の凸部および軸方向の凹部のテーパ状または歯付きの構造は、回転可能部材および相手方部材のうちの一方が排出位置の方へ長手方向に変位されると、回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方のさらなる幾分小さい回転を提供および誘発することができる。
【0054】
第1および第2の機械的コードの長手方向を向くテーパ状または歯付きの構造はまた、回転可能部材と相手方部材とのトルク耐性係合を提供する。軸方向の凸部が、軸方向の凹部を完全に充填するようにサイズ決定される場合、回転可能部材は、排出位置に達したときに、相手方部材に効果的にロック可能である。またここでは、第1および第2の機械的コードの少なくとも1つの軸方向の凸部および少なくとも1つの軸方向の凹部により、それぞれの機械的コード、故に回転可能部材および相手方部材を、回転不能にロックすることができる。これは、用量排出手順の間、回転可能部材の回転を防げるのに特に有用である。
【0055】
例えば、軸方向の凸部および軸方向の凹部のうちの少なくとも一方を、回転可能部材として構成されるトリガに提供することができ、軸方向の凸部および軸方向の凹部のうちの他方を、注射デバイスのハウジングに提供することができる。回転可能部材、故にトリガが、遠位方向に押し下げられ、したがって排出位置に到達すると、相互に対応し、かつ相互係合する凸部および凹部を通じて、トリガをハウジングに対する回転に対してロックすることができる。
【0056】
さらなる例によれば、第1の機械的コードおよび第2の機械的コードのうちの少なくとも一方は、クラウンホイール(crown wheel)またはクラウンギア(crown gear)を含むことができる。クラウンホイールまたはクラウンギアは、第1または第2の機械的コードのうちの一方を示すように分断することができる。例えば、回転可能部材および相手方部材のうちの一方のクラウンギアは、分断され、やや平坦形状の当接面を含むことができ、こうして軸方向の凹部の空所であるクラウンギアのセクションを表す。不適切に位置合わせされる場合、または第1および第2の機械的コードが位置合わせしていない場合、回転可能部材および相手方部材のうちの一方の軸方向に突出する歯は、回転可能部材および相手方部材のうちの他方の当接部または当接面を向き、こうして回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方の回転可能部材および相手方部材のうちの他方に対する長手方向変位を妨げる。歯は、係合することができず、排出位置の方への回転可能部材または相手方部材のさらなる長手方向変位を阻止することができない。
【0057】
別の例によれば、相手方部材および回転可能部材は、第1の機械的コードおよび第2の機械的コードを通じて互いに回転不能に連結可能または回転不能にロック可能である。これは、回転可能部材および相手方部材に提供される径方向の凸部および径方向の凹部によって達成することができるか、代替的に、回転可能部材上および相手方部材上の少なくとも1つの軸方向の凸部および少なくとも1つの軸方向の凹部によって達成することができるか、のいずれかである。いずれにせよ、回転可能部材および相手方部材は、第1および第2の機械的コードが相互に位置合わせされると、ならびに回転可能部材および相手方部材が、排出位置に達するために互いに対する長手方向変位に供されるとき、回転不能に係合することができる。
【0058】
したがって、第1および第2の機械的コードは、2つの機能を有する。回転可能部材が、排出されることになる用量の所定のサイズと符合する所定の回転状態と一致しない離散的な回転状態にある限り、第1および第2の機械的コードは、排出位置の方へのおよびそこへの回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方の長手方向変位を阻止し、防げる。実質的に、注射デバイスを、用量設定モードから用量排出モードに切り替えることはできない。さらには、回転可能部材が、第1の機械的コードが第2の機械的コードと長手方向に位置合わせされる多数の回転状態の範囲の所定の回転状態にあるとき、機械的コードは、モード切り替え距離により回転可能部材および相手方部材のうちの少なくとも一方の変位を有効にし、こうして回転可能部材および相手方部材が第1および第2の機械的コードを通じて互いに回転不能にロックされる排出位置に到達する。
【0059】
別の例では、相手方部材および回転可能部材は、回転可能部材および相手方部材のうちの一方が排出位置に達するときに回転不能にロックされる。排出位置に達するとき、回転可能部材および相手方部材はまた、第1の機械的コードおよび第2の機械的コードによって軸方向の当接状態にあることができる。ここでは、第1の機械的コードおよび第2の機械的コードはまた、回転可能部材と相手方部材との長手方向の当接を提供することができる。排出位置に回転不能にロックされるとき、回転可能部材および相手方部材のうちの一方に印加されるトルクは、回転可能部材および相手方部材のうちの他方に伝達される。例えば、相手方部材が、ハウジングにしっかりと連結される場合、回転可能部材は、排出位置に達するときにハウジングに回転不能に固定される。
【0060】
さらなる例によれば、相手方部材は、ハウジング内に統合されるか、または相手方部材は、ハウジングにしっかりと連結される。ここでは、回転可能部材は、トリガによって形成されるか、またはそれは、トリガを遠位方向に押し下げることによってハウジングに対して長手方向に変位可能である。この例では、第1のコードをハウジングの近位端に提供することができる。第2のコードをトリガの遠位端に提供することができる。トリガは、側壁部またはスカートを含むことができ、第2の機械的コードを、トリガの側壁またはスカートに提供することができる。さらに、第1の機械的コードは、ハウジングの近位の前面の円周に沿って一連の軸方向の凹部および凸部を含むことができる。それに応じて、トリガもまた、側壁またはスカートの円周に沿って一連の軸方向に延在する凸部および凹部を含むことができる。言い換えると、トリガは、遠位に向くクラウンホイール部またはクラウンホイール部分を含むことができ、ハウジングは、対応した形状の近位に向くクラウンホイール部またはクラウンホイール部分を含むことができる。このやり方では、トリガは、排出位置の方へおよびそこへと遠位方向に押し下げられるときに、ハウジングに回転不能にロックすることができる。
【0061】
さらなる例では、注射デバイスは、用量インジケータおよび駆動スリーブを含む。用量インジケータは、回転可能部材を形成することができ、ハウジングとねじ係合される。ここでは、駆動スリーブは、相手方部材を形成することができ、トリガを遠位方向に押し下げることによってハウジングに対して長手方向に変位可能である。この例では、回転可能部材は、回転可能であるが、軸方向に拘束され、および/または、ハウジングに軸方向に固定される。駆動スリーブによって形成される相手方部材は、ハウジングに回転不能にロックされ、デバイスが用量設定モードにある限り、ハウジングに対して回転することができない。ここでは、駆動スリーブおよび用量インジケータは、第1および第2の機械的コードによって提供されるスプライン連結係合を構成することができる。駆動スリーブおよび用量インジケータは、それらの内周および外周に沿って少なくとも一対の相互に対応する径方向の凸部および凹部を含むことができる。
【0062】
典型的には、駆動スリーブは、用量インジケータの内側に径方向に位置する。用量インジケータは、少なくとも部分的に、駆動スリーブの少なくとも一部分を受けるために中空構造を含む。駆動スリーブの外表面上には、少なくとも1つの径方向の凹部または凸部が提供されて、用量インジケータの内表面上の対応した形状の径方向の凹部と係合する。用量インジケータは、用量の設定の間、回転に供される一方、駆動スリーブは、用量設定の間、ハウジングに回転不能にロックされる。適切なまたは所定のサイズの用量が設定またはダイヤル設定されている場合、用量インジケータの第2の機械的コードは、相手方部材、例えば、駆動スリーブの第1の機械的コードと長手方向に位置合わせし、こうして用量インジケータに対する駆動スリーブの長手方向変位を有効にする。
【0063】
典型的には排出位置の方への遠位方向における、駆動スリーブの長手方向変位は、トリガによって誘発可能である。駆動スリーブを排出位置の方へおよびそこへ遠位に変位させるとき、駆動スリーブと用量インジケータとの間のトルク耐性係合は、第1の機械的コードおよび第2の機械的コードによって確立することができる。排出機構が、巻上げ式排出機構として実装されるとき、駆動スリーブおよび用量インジケータのうちの一方は、らせん巻きのねじりばねのような機械的エネルギー貯蔵器と係合される。そのような機械的エネルギー貯蔵器は、一端をハウジングと連結され、反対の端を用量インジケータおよび駆動スリーブのうちの一方とさらに連結される。駆動スリーブと用量インジケータとの間のトルク耐性係合が確立され、それによりクラッチを係合するとすぐに、機械的エネルギー貯蔵器からの機械的エネルギーは、別のクラッチまたはクラッチ機構の解放によって解放される。空乏化する機械的エネルギー貯蔵器の作用下で、用量インジケータは、次いで、ハウジングに対する用量減少回転に供され、この回転は、駆動スリーブに等しく伝達され、こうしてカートリッジの栓に対して付勢するため駆動力をピストンロッドに伝達する。
【0064】
別の例によれば、注射デバイスは、薬剤を含有するカートリッジを含む。カートリッジは、ハウジングの内側に配置される。注射デバイスは、薬剤がカートリッジの遠位出口を通じて、例えば、カートリッジの遠位端における封止体を貫通するニードルアセンブリを通じて排出されるとその全体が廃棄されることが意図される使い捨て注射デバイスとして構成または実装することができる。
【0065】
本文脈において、遠位端または遠位方向は、液体薬剤が排出される注射デバイスの端部を指す。近位端または近位方向は、薬剤で治療されることになる患者の生物組織から最も離れている注射デバイスの端部を指す。注射デバイスは、典型的には、インシュリンまたはヘパリンのような液体薬剤の投与のために構成される。注射デバイスは、典型的には、セルフメディケーションのために構成される。それは、ユーザの片手のみによる動作のために構成される。注射デバイスの近位端に典型的には提供されるトリガは、ユーザの親指によって押し下げられ、その一方で同じ手の残りの指が注射デバイスのハウジングを握ることができるように構成される。
【0066】
注射デバイスは、液体薬物または薬剤を含有するカートリッジを含むことができる。例として、注射ボタンを押すことにより、その一部分が、ダイヤル設定または事前設定された量に従ってカートリッジから排出される。用語「薬物」および「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性の化合物を含有する医薬製剤を指すことができる。特定の医薬製剤に関するさらなる詳細は、同時係属中の出願PCT/EP2018/082640、代理人整理番号DE2017/081の開示から得ることができ、そうするため、これは参照により本明細書に含まれるものとする。
【0067】
様々な修正および変形が、特許請求の範囲により規定されるような本開示の範囲から逸脱することなく本発明に対して行うことができるということは、当業者にはさらに明らかである。さらに、添付の特許請求の範囲において使用されるいかなる参照番号も、本発明の範囲を限定すると解釈されるものではないということに留意されたい。
【0068】
以下において、注射デバイスと関連したデータ収集デバイスの様々な実施形態は、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】最小用量位置にある本発明の薬物送達デバイスの上面図である。
図2図1のデバイスの構成要素の分解図である。
図3図1のデバイスの断面図である。
図4a】用量設定モードにある図1のデバイスの詳細の拡大断面図である。
図4b】用量投薬モードにある図1のデバイスの詳細の拡大断面図である。
図5図1のデバイスの数字スリーブとボタンとの間のインターフェースを示す図である。
図6図1のデバイスのハウジングとボタンとの間のインターフェースを示す図である。
図7a】用量設定モードにある図1のデバイスの数字スリーブと駆動スリーブとの間のインターフェースを示す図である。
図7b】用量投薬モードにある図1のデバイスの数字スリーブと駆動スリーブとの間のインターフェースを示す図である。
図8図1のデバイスのピストンロッドと支承部との間のインターフェースを示す図である。
図9図1のデバイスのクラッチプレートとボタンとの間のインターフェースを示す図である。
図10図1のデバイスの用量クリッカの端の構成要素を断面図で示す図である。
図11a図1のデバイスの用量投薬の終わりにクリックを生成する順序を拡大図で示す図である。
図11b図1のデバイスの用量投薬の終わりにクリックを生成する順序を拡大図で示す図である。
図11c図1のデバイスの用量投薬の終わりにクリックを生成する順序を拡大図で示す図である。
図12a図1のデバイスの用量投薬の終わりにクリックを生成する順序を拡大断面図で示す図である。
図12b図1のデバイスの用量投薬の終わりにクリックを生成する順序を拡大断面図で示す図である。
図12c図1のデバイスの用量投薬の終わりにクリックを生成する順序を拡大断面図で示す図である。
図13図1のデバイスのゲージ要素を示す図である。
図14図1のデバイスの数字スリーブの一部分を示す図である。
図15図1のデバイスの数字スリーブのさらなる一部分を示す図である。
図16図1のデバイスの駆動ばねの一部分を示す図である。
図17a】0ユニットがダイヤル設定された状態の図1のデバイスの上面図である。
図17b】96ユニットがダイヤル設定された状態の図1のデバイスの上面図である。
図18図1のデバイスのハウジングと駆動スリーブとの間のインターフェースを示す図である。
図19図1のデバイスのクラッチプレートと駆動スリーブとの間のインターフェースを示す図である。
図20図1のデバイスの最終用量機構を示す図である。
図21図1のデバイスのねじりばねを示す図である。
図22a図1のデバイスのピストンロッドとハウジングとの間のねじ山の異なる実施形態を示す図である。
図22b図1のデバイスのピストンロッドとハウジングとの間のねじ山の異なる実施形態を示す図である。
図22c図1のデバイスのピストンロッドとハウジングとの間のねじ山の異なる実施形態を示す図である。
図23】ハウジング、ドライバ、および用量インジケータのみを例示する、注射デバイスの断面を示す図である。
図24】ドライバが相手方部材を形成し、用量インジケータが回転可能部材を形成する、注射デバイスの断面を示す図である。
図25】第1および第2の機械的コードが位置合わせされるとき、ならびに注射デバイスが用量設定モードにあるときの、図24の回転可能部材および相手方部材を例示する図である。
図26】デバイスが排出モードにあるときの、図25に従う構成を示す図である。
図27】第1および第2のコードが位置合わせしていない、図25に類似する構成を示す図である。
図28】第1および第2の機械的コードが注射デバイスの用量排出モードへの切り替えを阻止する、図27の構成を示す図である。
図29】第1および第2の機械的コードが位置合わせしている状態の回転可能部材および相手方部材の別の例の透視図である。
図30】注射デバイスが用量排出モードに切り替えられている、図29の構成をさらに表す図である。
図31】第1および第2の機械的コードが位置合わせしていない状態の回転可能部材および相手方部材を示す図である。
図32】注射デバイスの排出モードへの切り替えが第1および第2の機械的コードによって妨げられる、またはブロックされる、図31の構成を示す図である。
図33】注射デバイスのさらなる例の長手方向の断面を示す図である。
図34図33に従う注射デバイスの近位部分の断面透視図である。
図35】位置合わせしているときの相手方部材および回転可能部を有する注射デバイスのさらなる例である。
図36】第1および第2の機械的コードが位置合わせしていないときの図35の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1は、注射ペンの形態にある薬物送達デバイスを示す。本デバイスは、遠位端(図1では左端)および近位端(図1では右端)を有する。薬物送達デバイスの構成要素部分は、図2に示される。薬物送達デバイスは、本体またはハウジング10、カートリッジホルダ20、親ねじ(lead screw)(ピストンロッド)30、駆動スリーブ40、ナット50、用量インジケータ(数字スリーブ)60、ボタン70、ダイヤルグリップまたは用量セレクタ80、ねじりばね90、カートリッジ100、ゲージ要素110、クラッチプレート120、クラッチばね130、および支承部140を含む。ニードルハブおよびニードルカバーを有するニードル装置(図示されない)が、追加の構成要素として提供される場合があり、これは、上に説明されるように交換することができる。すべての構成要素は、図3に示される機構の共通の主軸Iの周りに同心に位置する。
【0071】
ハウジング10または本体は、拡径を有する近位端を有する全体的に管状の要素である。ハウジング10は、液体医薬品カートリッジ100およびカートリッジホルダ20のための場所、数字スリーブ60およびゲージ要素110上の用量数値を見るための窓11a、11b、ならびに、用量セレクタ80を軸方向に保持するための、その外面上の機能、例えば周方向溝を提供する。フランジ様または円筒状の内壁12は、ピストンロッド30に係合する内側ねじ山を含む。ハウジング10は、ゲージ要素110を軸方向に誘導するための少なくとも1つの内部の軸方向に配向されたスロットまたは同様のものをさらに有する。図に示される実施形態において、遠位端は、カートリッジホルダ20に部分的に重なる軸方向に延在するストリップ13を備える。図は、ハウジング10を単一のハウジング構成要素として描写する。しかしながら、ハウジング10は、デバイスの組み立て中に互いに恒久的に装着される2つまたはそれ以上のハウジング構成要素を含むことができる。
【0072】
カートリッジホルダ20は、ハウジング10の遠位側に位置し、そこに恒久的に装着される。カートリッジホルダは、カートリッジ100を受けるために管状である透明または半透明の構成要素である。カートリッジホルダ20の遠位端は、ニードル装置を装着するための手段を備えることができる。取り外し可能なキャップ(図示されない)を、カートリッジホルダ20の上に取り付けるために提供してもよく、ハウジング10上のクリップ機能により保持してもよい。
【0073】
ピストンロッド30は、スプライン連結したインターフェースにより駆動スリーブ40に対して回転不能に拘束される。回転されるとき、ピストンロッド30は、ハウジング10の内壁12とのそのねじ止めされたインターフェースを通じて駆動スリーブ40に対して軸方向に動くことを強いられる。親ねじ30は、ハウジング10の内壁12の対応するねじ山に係合する外側のねじ山31(図3)を有する細長部材である。ねじ山31は、最初の回転時に対応するハウジングねじ山外形に係合するために、その遠位端において、大きい引き込み部、例えば、楔型外形を有することができる。インターフェースは、少なくとも1つの長手方向の溝またはトラック、およびドライバ40の対応する凸部またはスプライン45を含む。その遠位端において、親ねじ30は、支承部140のクリップ装着のためのインターフェースを備える。本実施形態において、このインターフェースは、遠位方向に延在する2つのクリップアーム32を含み、この2つのクリップアームが、支承部140インターフェースの挿入のためのそれらの間の挿入空間を画定する。代替として、インターフェースは、長手方向軸の周りに180°を超えて延在する1つのみの単一クリップアームを含むことができるか、または、1つまたはいくつかのクリップアーム32を含むことができる。クリップアーム32は、図8に示されるように凹んだクリップ部分を有する屈曲外形を有することができる。好ましくは、クリップアームは、外側ねじ山31の溝の底(フルート状の底)に親ねじ30の外径に等しいか、またはそれより小さい直径を有する円筒状の外面を形成する。凹状の接触面33が、支承部140の対応する部分の当接のために、クリップアーム32の間に提供される。
【0074】
駆動スリーブ40は、親ねじ30を囲む中空部材であり、数字スリーブ60内に配置される。それは、クラッチプレート120とのインターフェースからクラッチばね130との接点まで延在する。駆動スリーブ40は、クラッチばね130の付勢に対抗して遠位方向に、およびクラッチばね130の付勢下で反対の近位方向に、ハウジング10、ピストンロッド30、および数字スリーブ60に対して軸方向に可動である。
【0075】
ハウジング10とのスプライン連結歯インターフェースは、用量設定の間、駆動スリーブ40の回転を阻止する。図18に詳細に示されるこのインターフェースは、駆動スリーブ40の遠位端において径方向に延在する外歯41のリング、およびハウジング構成要素10の対応する径方向に延在する内歯14を含む。ボタン70が押されるとき、これらの駆動スリーブ40対ハウジング10のスプライン歯14、41は、係合解除され、駆動スリーブ40がハウジング10に対して回転することを可能にする。
【0076】
数字スリーブ60とのさらなるスプライン連結歯インターフェースは、ダイヤル設定の間、係合されないが、ボタン70が押されるときに係合され、投薬中、駆動スリーブ40と数字スリーブ60との間の相対回転を阻止する。図7aおよび図7bに示される好ましい実施形態において、このインターフェースは、数字スリーブ60の内面のフランジ62上の内側を向いたスプライン61、および駆動スリーブ40の径方向に延在する外側スプライン42のリングを含む。対応するスプライン61、42は、それぞれ数字スリーブ60および駆動スリーブ40上に位置し、その結果として、(軸方向に固定された)数字スリーブ60に対する駆動スリーブ40の軸方向運動は、スプラインと係合または係合解除して、駆動スリーブ40および数字スリーブ60を回転不能に連結または連結解除(decouple)する。
【0077】
好ましくは、スプライン61、42は、それらが、駆動スリーブ40の歯41およびハウジング構成要素10の内歯14がかみ合うときに連結解除され、歯41および内歯14が係合解除するときに係合するように配置される。好ましい実施形態において、スプライン61、42は、歯41、14と比較して軸方向においてより長い。これが、歯41、14の係合解除の少し前にスプライン61、42の係合を可能にする。言い換えると、スプライン61、42および歯41、14は、ボタン70の作動が、駆動スリーブ40がハウジング10に対して回転される前に数字スリーブ60に対して駆動スリーブ40を回転不能に拘束するように設計および配置される。同様に、ボタン70が用量投薬後に解放されると、駆動スリーブ40の軸方向運動は、まず、ハウジングに対して駆動スリーブ40を回転不能に拘束し、その後、スプライン61、42を連結解除する。対応するスプライン61、42の代替として、歯を提供することができる。さらなる代替として、またはスプライン61、42に加えて、駆動スリーブ40および数字スリーブ60は、クラッチプレート120により、用量投薬中、互いに回転不能に連結することができる。
【0078】
図19に示される駆動スリーブ40のインターフェースは、駆動スリーブ40の近位端面に位置するラチェット歯43のリング、およびクラッチプレート120の対応するラチェット歯121のリングを含む。
【0079】
ドライバ40は、ナット50のためのらせん状トラックを提供するねじ部44を有する(図20)。加えて、最終用量当接部または止め具46が提供され、これは、ねじ山44トラックの端であるか、または好ましくは、ナット50の対応する最終用量止め具51との相互作用のための回転式の硬質止め具であり、こうしてねじ山44上でのナット50の動きを制限する。少なくとも1つの長手方向スプライン45は、親ねじ30の対応するトラックに係合する。さらに、駆動スリーブは、駆動スリーブ40が用量投薬中その遠位位置にあるとき、すなわち、ボタン70が押し下げられるときクリッカアーム67と相互作用するランプ(ramp)47を備える。
【0080】
最終用量ナット50は、数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間に位置する。それは、スプライン連結したインターフェース(ナット50上のスプライン52)により数字スリーブ60に対して回転不能に拘束される。それは、ダイヤル設定の間のみである数字スリーブ60と動スリーブ40との間に相対回転が発生するとき、ねじ付きインターフェース(ねじ山44)により駆動スリーブ40に対してらせん状経路に沿って動く。これは、図20に示される。代替として、ナット50を、ドライバ40にスプライン連結し、数字スリーブ60にねじ止めすることができる。図に示される実施形態において、ナット50は、フルナットであるが、代替の実施形態において、それは、ハーフナット、すなわち、デバイスの中心軸の周りにおよそ180°延在する構成要素であってもよい。用量がカートリッジ100内の薬剤の残りの投薬可能量に対応して設定されるとき駆動スリーブ40の止め具46に係合する最終用量止め具51が提供される。
【0081】
用量インジケータまたは数字スリーブ60は、図2および図3に示されるように管状要素である。数字スリーブ60は、用量設定(用量セレクタ80による)および用量修正の間、ならびにねじりばね90による用量投薬の間、回転される。ゲージ要素110と一緒に、数字スリーブ60は、ゼロ位置(「非稼動」)および最大用量位置を画定する。したがって、数字スリーブ60は、用量設定部材と見なされる場合がある。
【0082】
製造の理由のために、図に示される実施形態の数字スリーブ60は、数字スリーブ下部60aを含み、これは、数字スリーブ60を形成するために組み立て中に数字スリーブ上部60bに固く固定される。数字スリーブ下部60aおよび数字スリーブ上部60bは、数字スリーブ60型工具および組み立てを単純化するためだけの別個の構成要素である。代替として、数字スリーブ60は、一体の構成要素であってもよい。数字スリーブ60は、回転を可能にするが並進運動は可能にしないように、遠位端へ向かう機能によってハウジング10に対して拘束される。数字スリーブ下部60aには、一連の数値が印され、これらは、薬剤のダイヤル設定された用量を示すためにゲージ要素110およびハウジング10内の開口部11a、11bを通じて見ることができる。
【0083】
さらに、数字スリーブ下部60aは、ゲージ要素110に係合する外側ねじ山63を伴う部分を有する。端止め具64、65は、ゲージ要素110に対する相対的な動きを制限するためにねじ山63の両端に提供される。
【0084】
図5の実施形態におけるスプライン66のリングの形態を有するクラッチ機能は、用量設定および用量修正の間のボタン70のスプライン73との係合のために、数字スリーブ上部60b上に内側を向いて提供される。クリッカアーム67は、フィードバック信号を生成するために駆動スリーブ40およびゲージ部材110と相互作用する数字スリーブ60の外面に提供される。加えて、数字スリーブ下部60aは、少なくとも1つの長手方向スプラインを含むスプライン連結したインターフェースによりナット50およびクラッチプレート120に対して回転不能に拘束される。
【0085】
数字スリーブ下部60aへのねじりばね90の装着のためのインターフェースは、大きい引き込み部、およびばねの第1のコイルまたはフック部分を受けるためのポケット69またはアンカーポイントを有する溝機能68を含む。溝68は、ばねのフック部分91と干渉状態にあるランプの形態にある端機能を有する。溝68の設計は、ばね90を、ゲージ要素110と干渉せずにポケット69内に受けることができるようなものである。
【0086】
デバイスの近位端を形成するボタン70は、用量セレクタ80に恒久的にスプライン連結される。中心柄部71は、ボタン70の近位作動面から遠位に延在する。柄部71は、数字スリーブ上部60bのスプライン66との係合のためのスプライン73を担持するフランジ72を備える(図5)。したがって、それはまた、ボタン70が押されていないときはスプライン66、73(図5)により数字スリーブ上部60bにスプライン連結されるが、このスプラインインターフェースは、ボタン70が押されるときに分離される。ボタン70は、スプライン74を伴う非連続的な環状スカートを有する。ボタン70が押されるとき、ボタン70上のスプライン74は、ハウジング10上のスプラインと係合し(図6)、投薬中ボタン70(および故に用量セレクタ80)の回転を阻止する。これらのスプライン74、15は、ボタン70が解放されるときに係合解除し、用量がダイヤル設定されることを可能にする。さらに、ラチェット歯75のリングは、クラッチプレート120との相互作用のために、フランジ72の内側に提供される(図9)。
【0087】
用量セレクタ80は、ハウジング10に対して軸方向に拘束される。それは、スプライン連結したインターフェースにより、ボタン70に対して回転不能に拘束される。ボタン70の環状スカートによって形成されるスプライン機能と相互作用する溝を含むこのスプライン連結したインターフェースは、用量ボタン70軸方向位置に関係なく係合したままである。用量セレクタ80または用量ダイヤルグリップは、鋸歯状の外側スカートを有するスリーブ様の構成要素である。
【0088】
ねじりばね90は、その遠位端においてハウジング10に、および反対端において数字スリーブ60に装着される。ねじりばね90は、数字スリーブ60の内側に位置し、駆動スリーブ40の遠位部分を囲む。図16に示されるように、ばねは、数字スリーブ60への装着のために、一端にフック91を有する。同様のフック端92が、ハウジング10への装着のために、反対端に提供される。ねじりばね90は、それが、機構がゼロユニットダイヤル設定にされているときに数字スリーブ60にトルクを印加するように、組み立てのときに事前に巻かれる。用量を設定するために用量セレクタ80を回転させる作用は、数字スリーブ60をハウジング10に対して回転させ、ねじりばね90をさらにチャージする。
【0089】
ねじりばね90は、少なくとも2つの異なるピッチを有するらせん状ワイヤから形成される。図21では、両端は、「閉じた」コイル93から形成され、すなわち、ピッチがワイヤ直径に等しく、各コイルが隣接するコイルに接触する。中央部分は、「開いた」コイル94を有し、すなわち、コイルが互いに接触しない。
【0090】
カートリッジ100は、カートリッジホルダ20内に受け取られる(図3)。カートリッジ100は、その近位端に可動のゴム栓101を有するガラスアンプルであってもよい。カートリッジ100の遠位端は、圧着された環状の金属バンドによって適所に保持される穿刺可能なゴム封止体を備える。図に描写される実施形態において、カートリッジ100は、標準の1.5mlカートリッジである。本デバイスは、カートリッジ100をユーザまたは医療従事者が交換することができないという点で、使い捨てであるように設計される。しかしながら、デバイスの再使用可能な変異形は、カートリッジホルダ20を取り外し可能にすること、ならびに親ねじ30の巻き戻しおよびナット50の再設定を可能にすることによって、提供することができる。
【0091】
ゲージ要素110は、スプライン連結したインターフェースによりハウジング10に対して、回転を阻止するが並進運動を可能にするように拘束される。ゲージ要素110は、数字スリーブ60の回転がゲージ要素110の軸方向の並進運動を引き起こすように数字スリーブ60内のらせん状のねじ山カットと係合するらせん状機能111をその内表面に有する。ゲージ要素110上のこのらせん状機能はまた、数字スリーブ60内のらせん状カットの端に対する止め具当接部112、113を作成して、設定することができる最小および最大用量を制限する。
【0092】
ゲージ要素110は、中央アパーチャ114または窓およびアパーチャの両側に延在する2つのフランジ115、116を有する全体的にプレートまたはバンド様の構成要素を有する。フランジ115、116は、好ましくは、透明ではなく、したがって数字スリーブ60を遮蔽または被覆する一方で、アパーチャ114または窓は、数字スリーブ下部60aの一部分を見ることを可能にする。さらに、ゲージ要素110は、用量投薬の終わりに数字スリーブ60のクリッカアーム67と相互作用するカム117および凹部118を有する(図11a~図12c)。
【0093】
図9および図19に見られるように、クラッチプレート120は、リング様の構成要素である。クラッチプレート120は、スプライン122により数字スリーブ60にスプライン連結される。それはまた、ラチェットインターフェース(ラチェット歯43、121)により駆動スリーブ40に連結される。ラチェットは、各用量ユニットに対応する数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間の戻り止め位置を提供し、時計回りおよび反時計回りの相対回転の間、異なる傾斜した歯角度に係合する。クリッカアーム123は、ボタンのラチェット機能75との相互作用のために、クラッチプレート120上に提供される。
【0094】
クラッチばね130は、圧縮ばねである。駆動スリーブ40、クラッチプレート120、およびボタン70の軸方向位置は、近位方向に駆動スリーブ40に力を印加するクラッチばね130の作用によって画定される。このばね力は、駆動スリーブ40、クラッチプレート120、およびボタン70により反応が示され、「非稼動」のとき、それは、用量セレクタ80を通じてハウジング10へと反応が示される。ばね力は、ラチェットインターフェース(ラチェット歯43、121)が常に係合されることを確実にする。「非稼動」位置において、ばね力はまた、ボタンスプライン73が数字スリーブスプライン66と係合されること、および駆動スリーブ歯41がハウジング10の歯14と係合されることを確実にする。
【0095】
支承部140は、ピストンロッド30に対して軸方向に拘束され、液体薬剤カートリッジ内の栓101に作用する。それは、親ねじ30に軸方向に留められるが、自由に回転する。支承部140は、近位方向に延在する柄部142を有する円板141を含む。柄部142は、その近位端に凸状の接触面143を有する。加えて、凹んだ部分144が、柄部142上に提供される。凸状の接触面143および凹状の接触面33の湾曲は、支承部140と親ねじ30との間の接触径がこのインターフェースにおける摩擦損失を最小限にするために小さくなるように選択される。支承部140と親ねじ30との間のクリップインターフェースの設計は、親ねじ30が、近位端から、およびハウジング10へのねじ山係合を通じて、軸方向に組み立てられることを許し、これにより組み立てを単純化する。加えて、この設計は、両方の構成要素のための単純な「開閉する」型器具を可能にする。
【0096】
図4aおよび図17aに示されるような「非稼動」状態にあるデバイスでは、数字スリーブ60は、ゲージ要素110およびボタン70が押し下げられていない状態で、そのゼロ用量当接部64、113に対して位置する。数字スリーブ60上の用量マーキング「0」は、ハウジング10の窓11bおよび114ならびにゲージ要素110それぞれを通じて見ることができる。
【0097】
デバイスの組み立て中いくつかの事前に巻かれた巻きが適用されているねじりばね90は、数字スリーブ60にトルクを印加し、ゼロ用量当接部64、113によって回転することを阻止される。ゼロ用量止め具64、113間のオフセットおよび駆動スリーブ40スプライン歯の角度オフセットに起因して、本機構をわずかに「巻き戻す」ことも可能である。これは、用量がダイヤル設定され、ゼロ用量当接部が係合解除されるときの潜在的なにじみ(weepage)を阻止する効果を有する。
【0098】
数字スリーブ60内へのねじりばね90の自動組み立ては、大きい引き込み部および溝機能を数字スリーブ60に組み込むことによって達成することができる。ねじりばね90が組み立て中に回転されると、フック端形91は、数字スリーブ60内のアンカーポイントに係合する前に溝機能内で回転する。後続の組み立てステップ中にねじりばね90がアンカーポイント69を係合解除することを阻止するのを助けるため、ねじりばね90と数字スリーブ60との間の干渉、または一方向クリップ機能を作成することが可能である。
【0099】
ユーザは、用量セレクタ80を時計回りに回転し、これにより数字スリーブ60内に同一の回転を生成することによって液体薬剤の可変用量を選択する。数字スリーブ60の回転は、ねじりばね90のチャージを引き起こし、そこに収納されるエネルギーを増大させる。数字スリーブ60が回転すると、ゲージ要素110は、そのねじ係合に起因して軸方向に並進運動し、それによりダイヤル設定された用量の値を示す。ゲージ要素110は、設定された用量数値だけをユーザに見せることを確実にするために、ダイヤル設定された用量に隣接して数字スリーブ60上に印刷される数値を被覆するフランジ115、116を窓領域114の両側に有する。
【0100】
本発明の特定の機能は、このタイプのデバイスにおいて典型的な離散的な用量数字表示に加えて、視覚フィードバック機能の含有である。ゲージ要素110の遠位端(フランジ115)は、ハウジング10内の小窓11aを通じて摺動スケールを作成する。代替として、摺動スケールは、異なるらせん状トラック上の数字スリーブ60と係合される別個の構成要素を使用して形成することができる。
【0101】
用量がユーザによって設定されると、ゲージ要素110は、用量設定の大きさに比例して動かされる距離だけ、軸方向に並進運動する。この機能は、用量設定のおよそのサイズに関してユーザに明白なフィードバックを提供する。自動注射器機構の投薬速度は、手動注射デバイスよりも高い場合があるため、投薬中の数値的な用量表示を読むことが不可能な場合がある。ゲージ機能は、用量数値自体を読む必要なしに投薬の進行に関して投薬中にユーザにフィードバックを提供する。例えば、ゲージ表示は、真下の対比色の構成要素を暴露するゲージ要素110上の不透明要素によって形成することができる。代替的に、暴露可能な要素には、より精密な解答を提供するために大体の用量数値または他の指標を印刷することができる。加えて、ゲージ表示は、用量設定および投薬中、注射器作用をシミュレートする。
【0102】
ハウジング10内の開口部11a、11bは、図17aおよび図17bに示されるように、ユーザがゲージ機能および数値表示を見ることを可能にする。埃侵入を低減するため、およびユーザが可動部を触ることを阻止するため、これらの開口部11a、11bは、半透明窓によって被覆される。これらの窓は、別個の構成要素であってもよいが、この実施形態では、それらは、「ツインショット」成形技術を使用してハウジング10内に組み込まれる。半透明材料の第1のショットが、内部機能および窓11a、11bを形成し、次いで、不透明材料の「第2のショット」が、ハウジング10の外カバーを形成する。
【0103】
本機構は、ダイヤル設定を支援する、ハウジング10に対して増大した径を有する用量セレクタ80を利用するが、これは、本機構の必要条件ではない。この機能は、電源が用量設定中に充電され、用量セレクタ80を回転させるのに必要とされるトルクが非自動注射デバイスよりも高い場合がある自動注射器機構に特に有益である(しかし必須ではない)。
【0104】
駆動スリーブ40は、そのスプライン連結歯41のハウジング10の歯14との係合に起因して、用量が設定され数字スリーブ60が回転されるときには回転することが阻止される。したがって、相対回転が、ラチェットインターフェース43、121を介してクラッチプレート120と駆動スリーブ40との間に発生しなければならない。
【0105】
用量セレクタ80を回転するのに必要とされるユーザトルクは、ねじりばね90を巻くのに必要とされるトルクとラチェットインターフェース43、121を緩めるのに必要とされるトルクとの合計である。クラッチばね130は、ラチェットインターフェース43、121に軸方向の力を提供するように、および駆動スリーブ40上にクラッチプレート120を付勢するように設計される。この軸方向の負荷は、クラッチプレート120および駆動スリーブ40のラチェット歯係合を維持するように作用する。ラチェット43、121を用量設定方向に緩めるのに必要とされるトルクは、クラッチばね130によって印加される軸方向の負荷、ラチェット歯43、121の時計回りのランプ角、合わせ面間の摩擦係数、およびラチェットインターフェース43、121の平均半径の関数である。
【0106】
ユーザが用量セレクタ80を、本機構を1増分ずつ増分するために十分に回転させると、数字スリーブ60は、駆動スリーブ40に対して1ラチェット歯ずつ回転する。この時点で、ラチェット歯43、121は、次の戻り止め位置内へ再係合する。可聴クリック音が、ラチェット再係合により生成され、触覚フィードバックが、必要とされるトルク入力における変化によって得られる。
【0107】
数字スリーブ60および駆動スリーブ40の相対回転は、スプライン42、61が、用量設定の間、係合解除されると可能になる。この相対回転はまた、最終用量ナット50がそのねじ経路に沿って駆動スリーブ40上のその最終用量当接部の方へ移動することを引き起こす。
【0108】
用量セレクタ80にユーザトルクが印加されていなければ、数字スリーブ60はこのとき、クラッチプレート120と駆動スリーブ40との間のラチェットインターフェース43、121のみにより、ねじりばね90によって印加されるトルクの下で回転して戻ることを阻止される。ラチェットを半時計周り方向に緩めるのに必要なトルクは、クラッチばね130によって印加される軸方向の負荷、ラチェットの反時計回りのランプ角、合わせ面間の摩擦係数、およびラチェット機能の平均半径の関数である。ラチェットを緩めるのに必要なトルクは、ねじりばね90によって数字スリーブ60(および故にクラッチプレート120)に印加されるトルクよりも大きくなければならない。したがって、ラチェットランプ角は、ダイヤルアップトルクができる限り低いことを確実にしながらこうなることを確実にするために、反時計回り方向に増大される。
【0109】
ユーザはこのとき、用量セレクタ80を時計回り方向に回転させ続けることによって、選択用量を増大させることを選択することができる。数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間のラチェットインターフェース43、121を緩めるプロセスは、用量増分ごとに繰り返される。追加のエネルギーは、用量増分ごとにねじりばね90内に収納され、可聴および触覚フィードバックが、ラチェット歯の再係合によってダイヤル設定された増分ごとに提供される。用量セレクタ80を回転させるのに必要とされるトルクは、ねじりばね90を巻くのに必要とされるトルクが増大するにつれて増大する。したがって、ラチェットを半時計回り方向に緩めるのに必要とされるトルクは、最大用量に達したときにねじりばね90によって数字スリーブ60に印加されるトルクよりも大きくなければならない。
【0110】
ユーザが、選択用量を、最大用量限界に達するまで増大させ続ける場合、数字スリーブ60は、ゲージ要素110の最大用量当接部112上でその最大用量当接部65と係合する。これは、数字スリーブ60、クラッチプレート120、および用量セレクタ80のさらなる回転を阻止する。
【0111】
機構によってすでに送達された増分の数に応じて、用量の選択の間、最終用量ナット50は、その最終用量当接部51を駆動スリーブ40の止め具面46と接触させることができる。当接部は、数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間のさらなる相対回転を阻止し、したがって選択することができる用量を制限する。最終用量ナット50の位置は、ユーザが用量を設定する度に発生した数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間の相対回転の総数によって決定される。
【0112】
用量がすでに選択された状態に機構がある場合、ユーザは、この用量から任意の数の増分を選択解除することができる。用量を選択解除することは、ユーザが用量セレクタ80を反時計回りに回転させることによって達成される。ユーザによって用量セレクタ80に印加されるトルクは、ねじりばね90によって印加されるトルクと組み合わせたとき、クラッチプレート120と駆動スリーブ40との間のラチェットインターフェース43、121を反時計回り方向に緩めるのに十分である。ラチェットが緩められたとき、反時計回り回転が、数字スリーブ60に(クラッチプレート120を介して)発生し、これが、数字スリーブ60をゼロ用量位置の方へ戻し、ねじりばね90を巻き戻す。数字スリーブ60と駆動スリーブ40との間の相対回転は、最終用量ナット50が、そのらせん状経路に沿って、最終用量当接部から離れる方へ戻ることを引き起こす。
【0113】
用量がすでに選択された状態に機構がある場合、ユーザは、機構を起動して、用量の送達を開始することができる。用量の送達は、ユーザがボタン70を軸方向に遠位方向に押し下げることによって開始される。
【0114】
ボタン70が押し下げられたとき、ボタン70と数字スリーブ60との間のスプラインは、係合解除され、ボタン70および用量セレクタ80を送達機構から、すなわち、数字スリーブ60、ゲージ要素110、およびねじりばね90から、回転不能に連結解除する。ボタン70上のスプライン74は、ハウジング10上のスプライン15と係合し、投薬中ボタン70(および故に用量セレクタ80)の回転を阻止する。ボタン70は投薬中静止しているため、それを、図9に示されるように、投薬クリッカ機構において使用することができる。ハウジング10内の止め具機能は、ボタン70の軸方向の移動を制限し、ユーザによって印加されるいかなる軸方向の誤った負荷にも反応して、内部構成要素を破損するリスクを低減する。
【0115】
クラッチプレート120および駆動スリーブ40は、ボタン70と共に軸方向に移動する。これは、図7a(スプライン42、61は係合解除されている)および図7b(スプライン42、61は係合されている)に示されるように、駆動スリーブ40と数字スリーブ60との間のスプライン連結歯インターフェース42、61に係合して、投薬中、駆動スリーブ40と数字スリーブ60との間の相対回転を阻止する。駆動スリーブ40とハウジング10との間のスプライン連結歯インターフェース41、14は係合解除するため、駆動スリーブ40はこのとき、回転することができ、数字スリーブ60を介してねじりばね90、およびクラッチプレート120によって駆動される。
【0116】
駆動スリーブ40の回転は、ピストンロッド30がスプライン連結係合に起因して回転することを引き起こし、ピストンロッド30は次いで、ハウジング10へのそのねじ係合に起因して前進する。数字スリーブ60回転はまた、ゲージ要素110が、軸方向に縦走してそのゼロ位置に戻ることを引き起こし、それによりゼロ用量当接部64、113が機構を停止させる。
【0117】
支承部140は、ピストンロッド30に軸方向に留められるが、自由に回転する。支承部140は栓101と直接接触しているため、それは、ピストンロッド30が用量投薬中に回転および前進する際、回転しない。上に説明されるように、支承部140とピストンロッド30との間の接触径は、このインターフェースにおける摩擦損失を最小限にするために小さい。ピストンロッド30および支承部140の設計は、以前の概念に存在する繊細なクリップ機能または大きな接触径を除去する。この実施形態はまた、ピストンロッド30が、近位端から、およびハウジング10へのねじ山係合を通じて、軸方向に組み立てられることを可能にし、これにより組み立てを単純化する。
【0118】
用量投薬中の触覚フィードバックは、クラッチプレート120内に統合される準拠した片持クリッカアーム123を介して提供される。このアーム123は、ボタン70の内表面上のラチェット機能75と径方向にインターフェースをとり、よって、ラチェット歯間隔は、単一の増分投薬に必要とされる数字スリーブ60回転に対応する。投薬中、数字スリーブ60が回転し、ボタン70がハウジング10に回転不能に連結されると、ラチェット機能75は、クリッカアーム123と係合して、各用量増分が送達される度に可聴クリックオンを生成する。
【0119】
用量の送達は、ユーザがボタン70を押し下げ続ける間、上に説明される機械的相互作用により継続する。ユーザがボタン70を解放した場合、クラッチばね130は、駆動スリーブ40をその「非稼動」位置へ戻し(クラッチプレート120およびボタン70と一緒に)、駆動スリーブ40とハウジング10との間のスプライン14、41に係合して、さらなる回転を阻止し、用量送達を停止する。
【0120】
用量の送達中、駆動スリーブ40および数字スリーブ60は一緒に回転するため、最終用量ナット50における相対運動は発生しない。したがって、最終用量ナット50は、ダイヤル設定中にのみ、駆動スリーブ40に対して軸方向に移動する。
【0121】
数字スリーブ60をゼロ用量当接部へ戻すことにより、用量の送達が停止されると、ユーザはボタン70を解放することができ、ボタン70が、駆動スリーブ40とハウジング10との間のスプライン歯14、41に再係合する。機構はこのとき、「非稼動」状態へと戻される。
【0122】
ボタン70が解放されたときにスプライン歯14、41の再係合が駆動スリーブ40をごくわずかに「巻き戻し」、それによりゲージ要素110上のゼロ用量止め具当接部への数字スリーブ60の係合を取り除くように、駆動スリーブ40またはハウジング10のいずれかの上でスプライン歯14、41の角度を調整することが可能である。これは、機構内のクリアランスの影響(例えば、許容差に起因する)を補償し、このクリアランスは、さもなければ、デバイスが後続の用量のためにダイヤル設定されたとき、数字スリーブ60ゼロ用量止め具が機構を抑止しないこと、および代わりに駆動スリーブ40とハウジング10との間のスプラインへ戻る抑止力に起因して、ピストンロッド30のわずかな前進および薬剤投薬を引き起こす可能性がある。
【0123】
用量投薬の終わりに、追加の可聴フィードバックが、投薬中に提供される「クリック音」とは異なる「クリック音」の形態で提供されて、駆動スリーブ40上のランプ47ならびにゲージ要素110上のカム117および凹部118との数字スリーブ60上のクリッカアーム67の相互作用を介してデバイスがそのゼロ位置に戻ったことをユーザに通知する。この実施形態は、フィードバックが用量送達の終わりにおいてのみ作成され、デバイスがゼロ位置に戻って、またはそこから離れる方へダイヤル設定される場合には作成されないことを可能にする。
【0124】
図11aは、ゼロユニットにダイヤル設定され、ボタン70が押し下げられていない、デバイスが「非稼動」状態にあるときのクリック機能の位置を示す。ボタン70が「非稼動」状態にあるときゲージ要素110上のカム機能117が、数字スリーブ60上のクリッカアーム67に接触しないため、保管またはダイヤル設定中、クリッカアーム67は変位されないということが分かる。
【0125】
ダイヤル設定中、ゲージ要素110は、近位方向に並進運動するため、カム117は、もはやクリッカアーム67と軸方向に位置合わせされない。駆動スリーブ40が遠位方向に並進運動する用量送達の開始時、駆動スリーブ40上のランプ47は、クリッカアーム67を径方向外向きに押す。用量送達中、ゲージ要素110は、遠位方向に並進運動して戻り、用量送達の終わり向かうと、クリッカアーム67は、ゲージ要素110上のカム117に接触する。少ない用量の場合、カム117およびクリッカアーム67は、用量の開始時に接触状態にある。図11b~図12cは、構成要素相互作用を示す。用量送達後、ボタン70は解放され、用量機構の端は、その「非稼動」位置に戻る。
【0126】
図11bでは、用量がダイヤル設定され、およそ1回の全ダイヤル旋回が数字スリーブ60に適用される。ゲージ要素110は、ゼロユニット位置から離れる方へ軸方向に並進運動され、その結果として、カム117は、もはやクリッカアーム67と軸方向に位置合わせされない。図11cは、ボタン70が押し下げられて用量投薬を開始し、駆動スリーブ70を軸方向に並進運動させる投薬の開始を示す。駆動スリーブ40上のランプ47は、クリッカアーム67を径方向に外へ押して、ゲージ要素110上のカム117と径方向に位置合わせさせる。
【0127】
図12aは、およそ4ユニットが残っている状態の用量投薬の終わりにおける機構を示す。ゲージ要素110は、そのゼロユニット位置の方へ軸方向に戻り、その結果として、カム117は、クリッカアーム67と軸方向に位置合わせする。数字スリーブ60の回転が、クリッカアーム67をカム117と接触させ、その結果として、クリッカアーム67は、径方向内向きに押される。およそ2ユニット残った状態で、数字スリーブ60はさらに回転し、クリッカアーム67は、カム117の輪郭をたどる(図12b)。この径方向の変位は、弾性エネルギーを収納するクリッカアーム67を「チャージ」する。図12cでは、数字スリーブ60がそのゼロユニット回転位置に達すると、投薬は完了する。クリッカアーム67は、カム117の鋭いエッジから外れて凹部118へと入る。弾性エネルギーが解放されて、クリッカアーム67を径方向外向きにはじいてカム117に接触させ、別個の「クリック」を発生させる。
【0128】
本発明の主要な実施形態において、親ねじ30は、駆動スリーブ40の回転ごとの固定の変位によって前進する。他の実施形態において、変位率は様々である。例えば、親ねじ30は、カートリッジ100から第1の量の薬剤を投薬するために1回転あたり大きい変位、およびカートリッジ100の残りを投薬するために1回転あたりより小さい変位だけ前進することができる。これは、機構の所与の変位について、カートリッジ100から投薬される第1の用量がしばしば他の用量よりも小さい体積を有するということを補うことができることから、有利である。
【0129】
図22は、ハウジング10のねじ山16および親ねじ30のねじ山31が円周で突出している状態の3つの実施形態を示す。矢印Rは、3つすべての図について、ハウジング10に対する親ねじ30の回転の方向を示す。
【0130】
図(a)は、主要な実施形態であり、ピッチはハウジング10および親ねじ30で等しいため、親ねじ30が、駆動スリーブ40の回転の度に固定の量だけ前進する。図(b)では、親ねじ30上のねじ山31の第1の旋回は、大きいピッチを有し、他の旋回は、小さいピッチを有する。第1の回転の間、親ねじ30変位は、親ねじ30上のねじ山31の第1の旋回の大きいピッチに依存するため、それは、回転あたり大きい量だけ変位する。後続の回転では、親ねじ30変位は、親ねじのねじ山31のより小さいピッチに依存するため、それは、より小さい量だけ変位する。図(c)では、ハウジング10のねじ山16は、親ねじ30よりも大きいピッチを有する。第1の回転の間、親ねじ30変位は、ハウジングのねじ山16のピッチに依存するため、それは、回転あたりより大きい量だけ変位する。後続の回転では、親ねじ30変位は、親ねじのねじ山31のピッチに依存するため、それは、より小さい量だけ変位する。
【0131】
1つの実施形態において、薬物送達デバイスは、最小用量サイズを設定するための用量設定機構を含む。そのような用量設定機構は、ユーザが必要とされるよりも少ない薬剤を投薬することができないことを確実にしなければならない。
【0132】
上にすでに説明したように、薬物送達デバイスは、用量設定中、用量設定方向である一方向に回転する数字スリーブ60を含む。数字スリーブ60は、設定用量の投薬または修正中、逆方向に回転する。ゲージ要素110は、数字スリーブ60上のねじ山63に係合し、設定中は用量設定方向に、および投薬または修正中は逆方向に、軸方向運動を結果としてもたらす。
【0133】
図23では、ドライバ40と用量インジケータ60との間のスプライン係合が、さらに詳細に例示される。ドライバ40は、凸部の形態にある径方向外向きに延在する線42を含み、中空形状の用量インジケータ60または数字スリーブの内表面から突出する対応した形状のスプライン61と係合する。
【0134】
図24図28において、添付の特許請求の範囲の意味では、ドライバ40が相手方部材240を形成し、用量インジケータ60が回転可能部材260を形成する、注射デバイス1の一例が例示される。上で説明されたように、注射デバイス1は、回転可能部材260および相手方部材240のうちの一方が近位の用量設定位置sにある用量設定モードと、それぞれの構成要素、例えば、回転可能部材260または相手方部材240が、排出位置eへ長手方向lに変位される用量排出モードとの間で切り替え可能である。図24図28の例において、回転可能部材260は、用量インジケータ60を形成する。回転可能部材260は、上で説明されるような用量インジケータ60に等価である。それは、以下により詳細に説明されるように、第2の機械的コード262を除いて用量インジケータ60と実質的に同一である。相手方部材240は、上で説明されるようなドライバ40に等価である。相手方部材240は、第2の機械的コードを除いてドライバ40と実質的に同一形状である。相手方部材240は、図1図23に関連して上で説明されるようなドライバ40の幾何形状とは異なる第1の機械的コード242を含む。回転可能部材260は、上で説明されるようなハウジング10とねじ係合される数字スリーブ60を含む、またはそれを形成する。回転可能部材260は、ハウジング10に軸方向に固定される。
【0135】
図24図28の例では、ドライバ40は、図25および図27に例示されるような用量設定位置sと図26に例示されるような用量排出位置eとの間で長手方向に変位可能である。径方向外向きに突出する部分は、図4aおよび図4bに例示されるようなハウジング10の側壁の内側で周囲または環状の溝と係合することができる。
【0136】
図24図28に例示されるように、回転可能部材260は、第2の機械的コード262を含む。相手方部材240は、第1の機械的コード242を含む。図24に例示されるように、第1の機械的コード242および第2の機械的コード262の各々が、第1のコード機能245、265を含む。第1の機械的コード242の第1のコード機能245は、凸部246および凹部248のうちの少なくとも一方を含む。図24に例示されるような例では、第1の機械的コード242の第1のコード機能245は、径方向の凸部246および径方向の凹部248の両方を含む。
【0137】
第2の機械的コード262の第1のコード機能265もまた、凸部266および凹部268のうちの少なくとも一方を含む。図24に例示されるような例では、第2の機械的コード262の第1のコード機能265は、径方向の凸部266および径方向の凹部268の両方を含む。凹部248、268および凸部246、266は、相補的形状である。相手方部材240および回転可能部材260のうちの一方の凸部または凸部は、相手方部材240および回転可能部材260のうちの他方の凹部または凹部248、268と一致する。回転可能部材260および相手方部材240は、ネスト化した、または径方向に重なった構成で配置可能である。図24図28に例示されるように、回転可能部材260は、少なくとも、相手方部材240の少なくとも一部分を摺動可能に受けるように構成される中空部分を含む。図25図28に例示されるように、相手方部材240は、回転可能部材260の中空スリーブ形状の部分の内側に全体的に位置することができる。
【0138】
現在例示されていない他の例では、相手方部材240は、回転可能部材260の少なくとも一部分を摺動可能に受けるように構成される中空部分を含むことができる。
【0139】
例示される例では、回転可能部材260は、少なくとも、回転可能部材260の側壁の中空部分の内側に第1のコード機能265を含む。それに対応して、相手方部材240は、側壁の外表面に第1のコード機能245を含む。
【0140】
図24にさらに例示されるように、第1の機械的コード242は、第1のコード機能245および第2のコード機能245’を含む。また、第2の機械的コード262は、第1のコード機能265および第2のコード機能265’を含む。相手方部材240の第1および第2のコード機能245、245’は、相手方部材240の外周または外表面上に互いに所定の角距離で配置される。それに対応して、第2の機械的コード262の第1および第2のコード機能265、265’は、回転可能部材260の内周に沿って互いに所定の距離に位置し、配置される。図24に例示されるように、第1の機械的コード242の第1および第2のコード機能245、245’の間の角度または円周距離は、第2の機械的コード262の第1のコード機能265および第2のコード機能265’の間の角度または円周距離に等しい。
【0141】
さらなる例において、第1の機械的コード242の第1および第2のコード機能245、245’を、相手方部材240の外周に沿って等距離または等角度に配置することができる。同様に、第2の機械的コード262の第1のコード機能265および第2のコード機能265’を、回転可能部材260の内周に等距離または等角度に配置することができる。
【0142】
図25および図27にさらに例示されるように、第1の機械的コード242の凸部246は、径方向外向きに突出し、かつ長手方向に延在するリブを相手方部材240の外周に含む。リブまたは凸部246は、径方向内向きに延在し、かつ相手方部材240の外周に長手方向に細長い溝を形成する、隣接して位置する凹部248によって形成される。
【0143】
第1の機械的コード242の形状に対応して、回転可能部材260の内表面上の第2の機械的コード262は、径方向の凸部246を受けるように構成される径方向の凹部268を含む。径方向の凹部268は、回転可能部材260の内表面上に細長い溝を含むことができる。凹部268は、相手方部材240の凹部248と係合するように構成される少なくとも1つの凸部266によって周方向に制限される。
【0144】
相互に対応する凸部246、266および凹部248、268の周方向伸長部は、凸部246、266が対応する凹部248、268によって形成される中空の空間をほぼ全体的に充填するように、実質的に等しい。
【0145】
図24に例示されるような例において、第1の機械的コード248の第1のコード機能245および第2のコード機能245’は、管状の相手方部材240の中心に対して対称である。第2の機械的コード262の第1のコード機能265および第2のコード機能265’もまた、スリーブまたは中空形状の回転可能部材260の中心に対して対称である。故に、第1および第2の機械的コード242、262は、主軸または長手方向軸lに対する180°の回転に対して不変である。
【0146】
上で説明されたように、回転可能部材260は、用量の設定中、用量増分方向に回転可能である。用量設定の間、および、実際には相手方部材240によって表されるドライバ40と関連して上に説明されるような、相手方部材240の近位端における相手方部材240とのクラッチプレート120のラチェット係合に起因して、回転可能部材260は、多数の離散的な回転状態のうちの1つへと回転可能である。離散的な回転状態は、クラッチプレート120と相手方部材240との間のラチェット係合のステップサイズによって管理および決定される。1つの例において、および回転可能部材260の1回転の間、それは、ハウジング10に対する24個の離散的な回転状態のうちの1つにある。
【0147】
注射デバイス1が用量設定モードsにあるとき、回転可能部材260は、用量の設定について上に説明されるように回転可能である。用量の設定中、第1および第2の機械的コード242、262は、軸方向にオフセットされる。それらは、軸方向に分離され、係合を外される。デバイスを用量排出モードeに切り替え、相手方部材240を近位の用量設定位置sから遠位の用量排出位置eへと変位させることは、第1の機械的コード242が第2の機械的コード262と長手方向に位置合わせされる場合にのみ可能である。そのような位置合わせは、図25に例示される。ここでは、回転可能部材260の第2の機械的コード262の第1および第2のコード機能265、265’は、相手方部材240の第1の機械的コード242の第1および第2のコード機能245、245’と比較して、同じ角度位置に位置する。
【0148】
回転可能部材260のこの特定の所定の回転状態において、相手方部材240は、相手方部材240の第1および第2の機械的コード245、245’が回転可能部材260の第1および第2のコード機能265、265’と係合し、重なるように、軸方向に、例えば、遠位方向2に変位することができる。第1および第2のコード機能245、245’および265、265’の対称の幾何形状および等距離配置に起因して、注射デバイス1を用量設定モードから用量排出モードに切り替えることができる、回転可能部材260の回転あたりの2つの許容可能または所定の回転状態が現在提供される。
【0149】
現在例示される例では、用量排出手順をトリガすることができる1回転あたり相手方部材240の2つの異なる回転状態が存在する。回転可能部材260のすべての他の回転状態において、第1および第2の機械的コード244、262の不一致、ならびに/または第1の機械的コード242に対して位置合わせしていない第2の機械的コード262の回転状態は、用量排出位置eへの相手方部材240の遠位に向かう変位を阻止する。これは、図27および図28の比較によって例示される。
【0150】
図27において、第1の機械的コード242は、第2の機械的コード262に対して位置合わせしていない。その結果として、およびユーザが相手方部材240を排出位置eへと変位させようとする場合、第1および第2の機械的コード242、262の位置合わせ不一致は、回転可能部材260の当接面264が相手方部材240の当接面244と当接する構成をもたらす。当接部264は、近位方向を向く当接面を含む。当接部244または当接面は、遠位方向を向く。当接部264は、相手方部材240の方を向く回転可能部材260の長手方向端に位置することができる。相手方部材240の当接部244は、回転可能部材260の方を向く凸部246のうちの1つの長手方向端に位置する。
【0151】
詳細には、当接部264または当接面は、凸部266の近位端に位置することができ、当接部244または当接面は、典型的には、凸部246の遠位端に位置する。第1の機械的コード242と第2の機械的コード262との間の回転的な位置合わせ不一致の場合、相手方部材240は、第1および第2の機械的コード242、262が、トルク耐性的なやり方で相互に係合するように、長手方向に変位することができない。相手方部材240の、および故にボタンまたはトリガ70の任意のさらなる遠位に向かう変位は、効果的にブロックされ、用量投薬または用量排出手順をトリガすることができない。
【0152】
回転可能部材360および相手方部材340の組み合わせの別の例は、図29図32に例示される。この注射デバイスの排出機構4および用量設定機構5は、図1図23に関連して上に説明されるような排出機構4および用量設定機構5にいくらか同一である。ここでは、回転可能部材360は、上に説明されるようなボタン70と実質的に等価であるか、または同一である。相手方部材340は、上に説明されるようなハウジング10と実質的に等価であるか、または同一である。図29図32の例を実施するため、以下に説明されるように、ボタン70を回転可能部材360へと転換するため、およびハウジング10を相手方部材340へと転換するためにボタン70および/またはハウジング10に対して必要とされる修正はごくわずかである。ハウジング10および/またはボタン70に対するごくわずかな修正が必要とされる。
【0153】
図29に例示されるように、回転可能部材360は、注射デバイス1のボタン70を形成する。回転可能部材360またはボタン360は、平面状の近位端面370、および端面370の外周から遠位方向2に延在する環状スカート371を含む。スカート371上に、および故に回転可能部材360の遠位端において、相手方部材340の、またはそれぞれのハウジング310の近位端に、第1の機械的コード342と相補的形状である第2の機械的コード362が提供される。投薬動作を開始するため、または制御するため、回転可能部材360またはボタン70は、図29に例示されるような用量設定位置sから図30に例示されるような排出位置eへ変位されなければならない。
【0154】
ハウジング310の近位端面は、第1の機械的コード342を備える。第1の機械的コード342は、第1のコード機能345および第2のコード機能345’を含む。第1および第2の機械的コード機能345、345’の各々が、凸部346および凹部348を含む。回転可能部材360の第2の機械的コード362もまた、第1の機械的コード機能365および第2の機械的コード機能365’を含む。第1および第2のコード機能365、365’の各々が、少なくとも1つの凸部366および凹部368を含む。凸部366は、凹部348と係合するように形作られる。凹部368は、凸部346と係合するように形作られる。図24図28に例示されるような例とは対照的に、図29図32の例では、凸部および凹部346、366、348、368は、長手方向または軸方向に延在する。
【0155】
一般的に、第1の機械的コード342は、図6に例示されるようなハウジング10近位端に提供されるスプライン15に置き換わり、それを修正する。第1の機械的コード342および/または第2の機械的コード362は各々、歯付きの構造またはクラウンホイール構造を含むことができる。
【0156】
これらの凸部366が、スカート伸長部373から径方向外向きに少なくともわずかに突出することは、図29図32においてさらに明白である。この長手方向に伸長した径方向の凸部は、用量セレクタ80またはダイヤルグリップの内表面上の対応した形状の長手方向溝と係合することができる。このやり方では、ボタン70およびダイヤルグリップまたは用量セレクタ80は、恒久的に回転不能にロックされる。スカート伸長部377の径方向外向きに延在する凸部は、図6にも示される。
【0157】
さらには、凸部346、366および凹部348、368は、長手方向に先細にされる。凸部366は、遠位方向2に向かって先細にされる。凸部346は、近位方向3に向かって先細にされる。言い換えると、第2の機械的コード362は、歯付きまたはギア付きの構造を含み、第1の機械的コード342は、それに対応した形状の歯付きまたはギア付きの構造を含む。第1および第2のコード機能345、345’、365、365’から周方向にオフセットして、例えば、近位に高くなったリブ372上に提供される当接面344が提供される。このやり方では、および第2の機械的コード362が第1の機械的コード342に対して位置合わせしていない回転可能部材360の環状位置においては、ハウジング310に対する、または相手方部材340に対する回転可能部材360の遠位に向かう変位は、凸部366のうちの1つの相手方部材340の当接面344との軸方向の当接によってブロックされる。
【0158】
この状況は、図32に概略的に例示される。ここでは、回転可能部材360の凸部366の遠位端は、等しく機能し、当接構造または当接面364を提供する。不適切に位置合わせされる場合、または第1および第2の機械的コード342、362の位置合わせ不一致の場合、用量排出位置eの方への回転可能部材360の押し下げは、効果的にブロックされる。
【0159】
第2の機械的コード362が第1の機械的コード342と長手方向に位置合わせされる回転可能部材360の回転状態においてのみ、相手方部材360の遠位に向かう前進運動が許され、サポートされる。このとき、および正しく位置合わせされる場合、第2の機械的コード362の凸部および凹部366、368は、第2の機械的コード342の対応した形状の凸部および凹部346、348と係合する。凸部366は、凹部348内へ軸方向に摺動することができる。凸部346は、凹部368内へ摺動することができる。その結果、回転可能部材360は、図1図23に関連して上に説明されるように注射デバイス1を用量設定モードから用量投薬モードに切り替えるために、遠位方向に、および用量排出位置eへ、前進および変位することができる。
【0160】
図24図28に例示されるような例および図29図32に例示されるような例の両方で、回転可能部材260、360および相手方部材240、340は、第1および第2の機械的コード242、342、262、362が正しく位置合わせされ、かつ相手方部材240および回転可能部材360のうちの一方が用量排出位置eに到達すると、トルク耐性的な様式で、回転不能にロックされ係合される。このやり方では、第1および第2の機械的コード242、342、262、362は、2つの機能を提供する。位置合わせ不一致にあるとき、第1および第2の機械的コード242、342、262、362は、注射手順を阻止し、妨げる。正しく位置合わせされる場合、第1および第2の機械的コード242、342、262、362は、デバイスの用量排出モードへの切り替えを有効にし、サポートするだけでなく、回転可能部材260、360を相手方部材240、340に、回転不能にロックする、または回転不能に連結する。
【0161】
用量排出モードにおいて、および図24図28の例では、相手方部材240は、空乏化するねじりばね90の作用下で用量増分方向に回転可能部材260によって回転され、したがって駆動トルクを親ねじ30またはピストンロッドに伝達する。図29図32の例では、回転可能部材360と相手方部材340との間のトルク耐性係合は、用量排出手順の間、ハウジング310に対する、回転可能部材360の、および故にトリガ70の回転運動を阻止する。
【0162】
図24図32に例示されるような両方の例では、第1および第2の機械的コード242、342、262、362の幾何形状を適用することによっていくつかの許容配向を個々に設定することができる。基本的に、上に例示された用量設定のブロッキングは、一般的には、第1の機械的コード242、342および第2の機械的コード262、362が少なくとも1つのコード機能を含むときに達成することができる。しかしながら、第1および第2の機械的コード242、342、262、362の円周に沿って2つまたはそれ以上のコード機能を有することが有益である場合がある。回転可能部材360および相手方部材240のうちの一方の長手方向運動のブロッキングの場合、多数、例えば、2つまたはそれ以上の相互に係合する当接面244、344、264、364の存在は、相手方部材240、340と回転可能部材260、360との間のそれぞれの長手方向に作用する機械的負荷を分散させるのに有益である。
【0163】
用量排出が許される回転可能部材の許容または所定の配向は、回転可能部材の円周において等間隔でなければならない。これは、所定の用量のサイズがそれぞれの投薬または排出手順後に変わらないことを確実にする。
【0164】
図24図32に例示されるような機構の堅牢性のために、第1および第2の機械的コード242、342、262、362のうちの1つの凸部の数は、第1および第2の機械的コード242、342、262、362のうちの他の1つの凹部の数と同一であることが有益である。相手方部材240、340および回転可能部材260、360のインターフェースをまたいで伝達されることになるトルクは、次いで、利用可能な凸部および凹部の数の間で分割される。
【0165】
第1および第2の機械的コード242、342、262、362の円周に沿って多数の相互に係合するコード機能を有することは、これらの構成要素が排出位置eの方へ長手方向変位に供される際に、傾くことを阻止する、または相手方部材240および回転可能部材360のうちの少なくとも一方の中心から外れた動きを阻止するのにさらに有益な場合がある。注射デバイスの長手方向に変位可能な構成要素が、傾くこと、または中心から外れて動くことを十分に阻止されることを前提に、いくつかの凸部246、266、346、366を除去することができ、同じ選択可能な用量法を結果としてもたらす。回転可能部材260上、または用量インジケータもしくは数字スリーブ60の、低減された数の凸部は、図1図23の実装形態と比較して相手方部材240またはドライバ40だけが修正されなければならないという利点を有することができる。
【0166】
回転可能部材260との、および故に数字スリーブまたは用量インジケータ60との、相手方部材240の、および故にドライバ40の組み立てが抑制されないように、相手方部材240に材料を追加すること、および回転可能部材260から材料を除去することがさらに有益である場合がある。さもなければ、用量インジケータ60に対する、およびドライバ40に対する修正は、注射デバイス1の残りの構成要素の一般的な取り扱いおよび組み立てプロセスに影響を及ぼさない。故に、異なる許容用量サイズを特徴とする様々な注射デバイスを生産するために全く同一の全自動または半自動の組み立てラインを使用することができる。
【0167】
同じ議論および利益が図24図32の例にも当てはまる。またここでも、回転可能部材360の許容配向の数は、相互に対応する第1および第2の機械的コード342、362の幾何形状によって設定および適用することができる。またここでも、許容配向は、許容された用量が各投薬手順後に変わらないことを確実にするために、ハウジング310の円周において等間隔でなければならない。機構の堅牢性のために、回転可能部材360の各凸部366について、ハウジング310の一致する切欠きまたは凹部348が提供されること、またはその逆であることが有利である。このやり方では、ハウジング310から回転可能部材360に伝達されるクラッチトルクまたは保持力を、歯および凸部の数の間で分割することができる。さらには、投薬をブロックまたは阻止するための停止力または軸方向当接力もまた、回転可能部材360の各非許容角度配向について歯の数および当接面344、364の数の間で分割することができる。
【0168】
回転可能部材360が傾くことを十分に阻止されることを前提に、凸部366のいくつかを除去することができ、こうして同じ選択可能な用量法を結果としてもたらす。低減された数の歯または凸部366は、図5のボタン70の例示と比較して、ハウジング310のみの修正が必要とされるという利点を有することができる。このやり方では、予期しない排出手順の阻止を実施するために必要とされる修正は、注射デバイスの残りの構成要素の組み立て中に使用される他の機能に影響を及ぼさない。故に、全く同一の組み立てラインにより、異なる許容用量サイズを特徴とする幅広い注射デバイスを生産することができる。このために、異なる機械的コード342を特徴とする様々なハウジング310のうちのハウジング310の1つのみが選択されなければならない。
【0169】
図33図36に例示されるような注射デバイス400は、図1図32に例示されるような注射デバイス1とはわずかに異なる。注射デバイス400もまた、ペン注射器タイプのものである。それは、ここでは例示されていない、ニードルハブとの解放可能な連結のために構成される遠位端402を含む。それは、トリガまたはボタン472を有する近位端403を含む。注射デバイス400の基本的な機能性は、注射デバイス1の機能性に匹敵する。注射デバイス400は、トリガ472を遠位方向に押し下げることによって、用量設定モードと用量排出モードとの間で切り替えることができる。注射デバイス400は、液体薬剤6で充填されたカートリッジ100を収容するように構成されるカートリッジホルダ20を含む。
【0170】
近位方向において、カートリッジ100は、栓101によって封止される。カートリッジホルダ20は、注射デバイス400の本体またはハウジング410の遠位端に連結可能である、または連結される。注射デバイス400は、薬剤6の用量を設定および投薬するための用量排出機構4および用量設定機構5を含む。注射デバイス400は、ハウジング410の径方向内向きに突出するフランジ412とねじ係合される細長いピストンロッド430を含む。ピストンロッド430はさらに、駆動軸または駆動スリーブを含み、かつピストンロッド430を取り囲むドライバ450とスプライン連結係合状態にある。ドライバ430は、ラチェットスリーブ480にカチッと留められる。それは、ラチェットスリーブ480に軸方向に固定され、ラチェットスリーブ480に回転不能にロックされる。ドライバ450とラチェットスリーブ480との間には少量の回転遊びが存在してもよい。ピストンロッド430の遠位端には、遠位に向かう圧力を栓101にかけるために圧力ピースとして作用する回転可能な支承部432が提供される。
【0171】
排出機構は、巻上げ式排出機構である。それは、ねじりばね490を含む。ねじりばね490の一端は、固定され、ラチェットスリーブ480に連結される。ねじりばね490の反対端は、止め具部材541に連結される。止め具部材541は、ハウジング410の内側にしっかりと装着される。注射デバイス400は、ハウジングに対して回転可能であり、かつハウジング410に軸方向に固定される用量セレクタ482をさらに含む。ボタンまたはトリガ472は、圧縮ばね474によって付勢される。それは、ばね474の作用に対して遠位方向に押し下げ可能である。ボタンまたはトリガ472は、用量セレクタ482に対して軸方向に変位可能である。それは、ドライバ450を遠位方向に付勢するように構成される。トリガ470の柄部476とドライバ450の径方向内向きに延在する凸部との間にはフック連結が存在する。ボタン472が遠位方向に押し下げられるとき、それは、ドライバ450の近位端と軸方向に当接し、こうしてドライバ450を遠位方向に付勢する。ばね474の作用下で、ボタン472は、近位方向に変位可能であり、ドライバ450へのスナップ連結は、例えば図33および図34に例示されるように、ドライバ450を初期の用量設定位置へ引きずり戻す。
【0172】
ハウジング410は、用量インジケータ470の外周の一部分を可視化するために窓411を含む。用量インジケータ470の外側には、用量インジケータ470がハウジング410に対する回転に供されると窓411内に現れる符号を示す連続した数値または他の用量サイズが提供される。用量インジケータ470は、らせん状のねじ山を含み、これが、ハウジング410の側壁の内表面上の対応するらせん状のねじ付き構造とねじ係合される。用量インジケータ470は、ラチェットスリーブ480とスプライン連結係合状態にある。
【0173】
スプラインナット434およびロッキングナット436がさらに提供される。スプラインナット434は、親ねじ430とスプライン連結係合状態にある。故に、スプラインナット434の回転は、親ねじ430の回転をもたらす。スプラインナット434は、親ねじ430上の細長い溝(例示されない)内を摺動することができる。スプラインナット434は、ハウジング410の内側で軸方向に拘束される。ロッキングナット436は、用量設定位置と用量排出位置との間でハウジング410に対して軸方向に変位可能である。用量設定位置において、故に近位位置において、ロッキングナット436は、相互に対応するスプライン連結部を介して本体に回転不能にロックされる。遠位の用量排出位置において、ロッキングナット436は、スプラインナット434に回転不能にロックされ、角運動量をスプラインナット434に伝達するように構成される。
【0174】
ロッキングナット436の内側円周上には、ラチェットスリーブ480の遠位スリーブ部分482に提供されるラチェット機能と係合するように構成される歯付きの構造が存在する。用量の設定のために、およびラチェットスリーブ480が用量増分方向に回転されると、ラチェットスリーブ480のラチェット機能は、可聴音を生成し、ハウジング410に対するラチェットスリーブ480のいくつかの離散的な回転位置を画定する。ラチェットスリーブ480の各々の離散的な角度位置は、薬剤6の用量の特定のサイズに対応し、それを画定する。ラチェットスリーブ480、ドライバ450、およびロッキングナット436は、近位の用量設定位置と遠位の用量排出位置との間で変位可能である。用量設定位置において、用量セレクタ482は、ドライバ450に回転不能にロックされる。このために、用量セレクタ482の径方向内向きに延在するフランジ部は、ドライバ450の一部分の外表面上のスプラインとスプライン連結係合状態にある。故に、用量セレクタ482の回転は、ドライバ450を、および故にラチェットスリーブ480を回転させる。ラチェットスリーブ480のラチェット機能は、ロッキングナット436の内側のラチェット歯の上でクリックする。ロッキングナット436は、本体内の歯を係合する外部リブによる回転が阻止される。ラチェットスリーブのラチェット機能またはラチェットアームは、ねじりばね490内の収納エネルギーが選択された用量を巻き戻すことを阻止するのに十分なほど強力である。
【0175】
用量の投薬のために、ユーザは、ボタンまたはトリガ472を押し、こうして圧縮ばね474を圧縮する。ドライバ450上の歯および用量セレクタ482の歯またはスプライン機能は係合解除し、用量セレクタ482は、故に、ドライバ450から回転不能に連結解除される。ボタンまたはトリガ470の遠位に向かう変位は、トリガ470またはボタンがドライバ450の近位端に軸方向に当接するため、ドライバ450のそれぞれの遠位に向かう変位をもたらす。ドライバ450が遠位方向に前進すると、ロッキングナット436もまた、ラチェットスリーブ480と一緒に遠位方向に前進する。ロッキングナットは、故に、歯から係合解除され、本体およびロッキングナット436は、空乏化するねじりばね490の作用下で自由に回転する。用量排出位置にあるとき、ロッキングナット436は、スプラインナット434に回転不能に連結される、または回転不能にロックされる。故に、ねじりばね490の作用下で駆動されるラチェットスリーブ480によって誘発されるロッキングナット436の回転は、スプラインナット434の回転に変更なしに伝達され、こうして親ねじ430を回転させ、親ねじ430は、フランジ412とのねじ係合に起因して遠位方向に前進する。
【0176】
注射デバイス400はまた、最終用量リミッタならびに最終用量リミッタを備えることができ、この機能はさらに例示されない。
【0177】
特許請求の範囲の用語に従って、ラチェットスリーブ480は、回転可能部材460としての役割を果たし、ハウジング410は、相手方部材440を提供する。図34に例示されるように、回転可能部材460は、相手方部材440の第1の機械的コード442に対して相補的形状の第2の機械的コード462を含む。第1の機械的コード442は、第1の機械的コード機能445を含み、第2の機械的コード462もまた、第1の機能465を含む。第1のコード機能465は、径方向の凸部466を含み、第1のコード機能445は、径方向の凹部448を含む。コード機能445は、多数の凸部446をさらに含み、これらは、凸部466の周方向幅よりも小さい凹部によって分離される。
【0178】
故に、回転可能部材460の径方向の凸部466は、相手方部材440の凹部448と長手方向に位置合わせされなければならない。相互に対応する第1および第2の機械的コード442、462が長手方向に位置合わせされる場合にのみ、回転可能部材460は、相手方部材440に対して用量排出位置eへ遠位方向2に変位することができる。第1の機械的コード442は、近位方向に向く当接面444を含み、第2の機械的コード462は、径方向外向きに延在する凸部466上に遠位方向2に向く当接面466を含む。回転可能部材460および相手方部材440の回転位置合わせ不一致の場合、回転可能部材460の、および故にラチェットスリーブ480の遠位に向かう変位は、ブロックされ、妨げられる。結果として、注射デバイス400を、用量設定モードから用量排出モードに切り替えることはできない。
【0179】
例示されていないが、多数の第1および第2のコード機能を、回転可能部材460の外側円周、ならびに相手方部材440の内側円周に提供してもよい。第1および第2の機械的コード442、462の形状および幾何学的構成に応じて、様々な離散的なおよび所定の許容用量サイズを画定することができる。このために、相手方部材の第1の機械的コード242の修正のみが必要とされる。
【0180】
回転可能部材および相手方部材のさらなる例は、図35および図36に例示される。ここでは、相手方部材540は、止め具部材541を形成するか、または、ハウジング410の内側にしっかりと配置される止め具部材541と符合する。回転可能部材560は、ドライバ450によって形成されるか、またはこれで構成される。相手方部材540は、回転可能部材560の第2の機械的コード562に対して相補的形状の第1の機械的コード542を含む。第1の機械的コード542は、少なくとも第1のコード機能545を含む。第1のコード機能545は、凸部546および凹部548のうちの少なくとも一方を含む。凸部546は、相手方部材540のスリーブ形状部上に、径方向内向きに延在するフランジを含むことができる。凹部568は、凹部、もしくは径方向内向きに延在するフランジもしくは凸部566の中断を含むことができる、またはそれとして形成される。
【0181】
第2の機械的コード562は、少なくとも第1のコード機能565を含む。第1のコード機能565は、少なくとも1つの凸部566を含む。凸部は、径方向外向きに延在する凸部566である。凸部566は、回転可能部材560のスリーブの外表面上、故にドライバ450上に、既定の角度位置に位置する。例示されるような用量設定位置において、凸部566および凸部546は、軸方向距離によって分離されるか、または、それらはほぼ当接することができる。
【0182】
用量設定位置において、回転可能部材560の凸部566は、凸部546の近位に位置する。位置合わせ不一致の場合、凸部546、566は、長手方向に位置合わせされる。トリガ472、および故に回転可能部材560が、排出位置の方へ遠位に向かう変位に供されると、凸部566の遠位に向く当接部564は、凸部546の近位に向く当接部544と当接する。このやり方では、回転可能部材560のさらなる遠位に向かう変位は、効果的にブロックされる。それは、用量排出位置eに達することはできず、注射デバイス400を用量排出モードに切り替えることができない。
【0183】
この構成は、図36に例示される。結果として、ならびにトリガ472および回転可能部材560の軸方向の当接に起因して、トリガ472もまた、遠位方向2に押し下げることができない。ここでは、ユーザは、幾分直接的な機械および触覚フィードバックを体験する。トリガ472とドライバ450または回転可能部材560との間に最小限の軸方向の遊びしか存在しないため、実際にダイヤル設定される用量サイズが、用量の所定のおよび必要とされるサイズと一致しない場合、軸方向の遊びが実質的にない幾分堅牢かつ即時のブロッキングをユーザに提供することができる。
【0184】
図35に例示される異なる構成において、用量セレクタ482は、所定のサイズの用量を設定するようにダイヤル設定されている。ここでは、第2の機械的コード562は、第1の機械的コード542と長手方向に位置合わせされる。凸部566は、対応した形状の凹部548と位置合わせされ、凸部566を、この中へ入れる、またはここを通過させることができる。したがって、回転可能部材560は、用量排出位置eへと変位することができ、注射デバイス400を用量投薬モードに切り替えることができる。
【符号の説明】
【0185】
1 注射デバイス
2 遠位方向
3 近位方向
4 排出機構
5 用量設定機構
6 薬剤
10 ハウジング
11a、b 開口部
12 フランジ様の内壁
13 ストリップ
14 歯
15 スプライン
16 内ねじ山
20 カートリッジホルダ
30 親ねじ(ピストンロッド)
31 外ねじ山
32 クリップアーム
33 凹状の接触面
40 ドライバ(軸方向に可動の駆動スリーブ)
41 歯
42 スプライン
43 ラチェット歯
44 ねじ部
45 スプライン
46 最終用量止め具
47 ランプ
50 ナット
51 最終用量止め具
52 スプライン
60 用量インジケータ(数字スリーブ)
60a 数字スリーブ下部
60b 数字スリーブ上部
61 スプライン
62 フランジ
63 外ねじ山
64、65 端止め具
66 スプライン
67 クリッカアーム
68 溝
69 アンカーポイント
70 ボタン
71 柄部
72 フランジ
73、74 スプライン
75 ラチェット歯
80 用量セレクタ
90 ねじりばね
91、92 フック
93、94 コイル
100 カートリッジ
101 栓
110 ゲージ要素
111 らせん状機能
112、113 止め具
114 アパーチャ
115、116 フランジ
117 カム
118 凹部
120 クラッチプレート
121 ラチェット歯
122 凸部
123 クリッカアーム
130 クラッチばね
140 支承部
141 円板
142 柄部
143 凸状の接触面
144 凹んだ部分
240 相手方部材
242 機械的コード
244 当接部
245 コード機能
246 凸部
248 凹部
260 回転可能部材
262 機械的コード
264 当接部
265 コード機能
266 凸部
268 凹部
310 ハウジング
340 相手方部材
342 機械的コード
344 当接部
345 コード機能
346 凸部
348 凹部
360 回転可能部材
362 機械的コード
364 当接部
365 コード機能
366 凸部
368 凹部
370 端面
371 スカート
372 リブ
373 スカート伸長部
400 注射デバイス
402 遠位端
403 近位端
410 ハウジング
411 窓
412 フランジ
430 ピストンロッド
432 支承部
434 スプラインナット
436 ロッキングナット
440 相手方部材
442 機械的コード
444 当接部
445 コード機能
446 凸部
448 凹部
450 ドライバ
460 回転可能部材
462 機械的コード
464 当接部
465 コード機能
466 凸部
470 用量インジケータ
472 トリガ
474 圧縮ばね
476 柄部
480 ラチェットスリーブ
482 用量セレクタ
484 スリーブ部分
490 ねじりばね
540 相手方部材
541 止め具部材
542 機械的コード
544 当接部
545 コード機能
546 凸部
548 凹部
560 回転可能部材
562 機械的コード
564 当接部
565 コード機能
566 凸部
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11a
図11b
図11c
図12a
図12b
図12c
図13
図14
図15
図16
図17a
図17b
図18
図19
図20
図21
図22a-22c】
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36