(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】地盤改良用添加剤及び地盤改良体組成物
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20230915BHJP
C04B 24/06 20060101ALI20230915BHJP
C04B 24/10 20060101ALI20230915BHJP
C04B 24/12 20060101ALI20230915BHJP
C04B 24/16 20060101ALI20230915BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20230915BHJP
C09K 17/14 20060101ALI20230915BHJP
C04B 103/24 20060101ALN20230915BHJP
【FI】
E02D3/12 102
C04B24/06 A
C04B24/10
C04B24/12 A
C04B24/16
C04B28/02
C09K17/14 P
C04B103:24
(21)【出願番号】P 2019188620
(22)【出願日】2019-10-15
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100198856
【氏名又は名称】朝倉 聡
(72)【発明者】
【氏名】松村 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】柳原 勝也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘義
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】玉木 伸二
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和寿
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-019722(JP,A)
【文献】再公表特許第2007/069488(JP,A1)
【文献】特開2000-007404(JP,A)
【文献】特開2015-054807(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147267(WO,A1)
【文献】特表2019-500297(JP,A)
【文献】特開昭61-040854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0343194(US,A1)
【文献】特開平04-119954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
C04B 2/00-40/06
C09K 17/00-17/52
C04B 103/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のA成分、B成分及びC成分を含有し、且つ、25℃におけるpHが
7.7~
10.0であ
り、
A成分を23~40質量%、B成分を0.03~0.4質量%の割合で含有する地盤改良用添加剤。
A成分:硬化遅延成分
B成分:防腐成分
C成分:水
(ここで、A成分がオキシカルボン酸及び/又はその塩を含有し、B成分が5-クロル-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(C-MIT)、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(H-MIT)、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT)、2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(OIT)、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム(ナトリウムピリチオン)、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール(ブロノポール)及びグルタルアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する)
【請求項2】
前記オキシカルボン酸及び/又はその塩
がグルコン酸及び/又はその塩を含有する請求項1に記載の地盤改良用添加剤。
【請求項3】
A成分が糖類を含有する請求項1
または2に記載の地盤改良用添加剤。
【請求項4】
前記糖類
がスクロースを含有する請求項
3に記載の地盤改良用添加剤。
【請求項5】
C成分が、25℃における酸化還元電位(ORP)0mV以上の水である請求項
1~4のいずれか1項に記載の地盤改良用添加剤。
【請求項6】
C成分が、25℃における酸化還元電位(ORP)250~800mVの水である請求項
5に記載の地盤改良用添加剤。
【請求項7】
C成分が、25℃における
pH6~9の水である請求項1~
6のいずれか1項に記載の地盤改良用添加剤。
【請求項8】
地盤改良用添加剤の25℃におけるpHが7~10である請求項
1~7のいずれか1項に記載の地盤改良用添加剤。
【請求項9】
水、水硬性固化材、請求項1~8のいずれか1項に記載の地盤改良用添加剤及び土を含有し、且つ、水固化材比が50~500質量%であり、前記水硬性固化材の質量に対し、A成分、B成分及びC成分の合計の含有量が0.1~10.0質量%である地盤改良体組成物。
【請求項10】
前記水硬性固化材の使用量が対象土1m
3
に対し、50~500kgである請求項
9に記載の地盤改良体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良用添加剤及び地盤改良体組成物に関する。更に詳細には、本発明は、長期間保管しても性能が劣化しにくい地盤改良用添加剤及びこの地盤改良用添加剤を含有する地盤改良体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤のような不安定な地盤を、例えば、建物や橋脚、護岸等の基礎建設や止水壁等の仮設構造物建設に活用するために、硬化、安定化させる必要がある。この方法として、セメント等の水硬性固化材を地盤に混合して固化させる地盤改良工法が採用されている。このような地盤改良工法として、例えば、深層混合処理工法がある。この工法は、攪拌翼の先端から水硬性固化材と水を混合した水硬性固化材スラリーを吐出しながら、原位置土壌と混練・攪拌することで、土と水硬性固化材スラリーが混合されたソイルセメントスラリーを地上に排出しながら、地中をソイルセメントスラリーで置換して硬化させ、地盤を安定化させる工法である。
【0003】
水硬性固化材は、通常、混練後、直ちに水硬反応を開始し、時間と共に硬化が進行し、最終的に硬化体となる。深層混合処理工法においては、例えば施工深度が30mを超えるような大深度での施工の場合、施工中にソイルセメントスラリーが硬化し、掘削機への負荷が増大することを防ぐため、ソイルセメントスラリーが硬化するまでの時間を遅延させることが求められている。
【0004】
水硬性固化材が硬化するまでの時間を遅延させるために、特定の遅延剤と遅延強化助剤を含有する添加剤(硬化遅延剤)が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水硬性固化材の硬化を遅延させるための添加剤(硬化遅延剤)は水溶液として添加することが広く採用されている。しかしながら、水中には様々な細菌が存在し、これらの細菌によって添加剤中の硬化遅延成分が分解され、硬化遅延性能が劣化するという問題がある。特許文献1に開示された技術では、添加剤(硬化遅延剤)を長期間保管した場合、硬化遅延性能の劣化を十分に防止することができなかった。
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、長期間保管しても硬化遅延性能が劣化しにくい地盤改良用添加剤及びそれを含有する地盤改良体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく研究した結果、硬化遅延成分、防腐成分及び水を含有し、25℃におけるpHが6~11である地盤改良用添加剤が好適であることを見出した。本発明によれば、以下の地盤改良用添加剤及び地盤改良体組成物が提供される。
【0009】
[1] 下記のA成分、B成分及びC成分を含有し、且つ、25℃におけるpHが7.7~10.0であり、A成分を23~40質量%、B成分を0.03~0.4質量%の割合で含有する地盤改良用添加剤。
A成分:硬化遅延成分
B成分:防腐成分
C成分:水
【0010】
ここで、A成分がオキシカルボン酸及び/又はその塩を含有し、B成分が5-クロル-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(C-MIT)、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(H-MIT)、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT)、2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(OIT)、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム(ナトリウムピリチオン)、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール(ブロノポール)及びグルタルアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する。
【0011】
[2] 前記オキシカルボン酸及び/又はその塩がグルコン酸及び/又はその塩を含有する前記[1]に記載の地盤改良用添加剤。
【0012】
[3] A成分が糖類を含有する前記[1]または[2]に記載の地盤改良用添加剤。
【0013】
[4] 前記糖類がスクロースを含有する前記[3]に記載の地盤改良用添加剤。
【0014】
B成分が、5-クロル-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(C-MIT)、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(H-MIT)、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT)、2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(OIT)、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム(ナトリウムピリチオン)、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール(ブロノポール)及びグルタルアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する。
【0015】
[5] C成分が、25℃における酸化還元電位(ORP)0mV以上の水である前記[1]~[4]のいずれかに記載の地盤改良用添加剤。
【0016】
[6] C成分が、25℃における酸化還元電位(ORP)250~800mVの水である前記[5]に記載の地盤改良用添加剤。
【0017】
[7] C成分が、25℃におけるpH6~9の水である前記[1]~[6]のいずれかに記載の地盤改良用添加剤。
【0018】
A成分を20~45質量%、B成分を0.005~0.5質量%の割合で含有する。
【0019】
[8] 地盤改良用添加剤の25℃におけるpHが7~10である前記[1]~[7]のいずれかに記載の地盤改良用添加剤。
【0020】
[9] 水、水硬性固化材、前記[1]~[8]のいずれかに記載の地盤改良用添加剤及び土を含有し、且つ、水固化材比が50~500質量%であり、前記水硬性固化材の質量に対し、A成分、B成分及びC成分の合計の含有量が0.1~10.0質量%である地盤改良体組成物。
【0021】
[10] 前記水硬性固化材の使用量が対象土1m3に対し、50~500kgである前記[9]に記載の地盤改良体組成物。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、長期間保管しても硬化遅延性能が劣化しにくい地盤改良用添加剤及びそれを含有する地盤改良体組成物を得ることができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0024】
本実施形態の地盤改良用添加剤は、A成分として硬化遅延成分、B成分として防腐成分及びC成分として水を含有する。
【0025】
本実施形態の地盤改良用添加剤に供する硬化遅延成分は、得られるソイルセメントスラリーに対して硬化遅延効果を発揮し、本発明の効果を損なわないものであれば特に制限されない。このような硬化遅延成分として、オキシカルボン酸及び/又はその塩、リグニンスルホン酸塩、糖類、糖アルコール類等が挙げられる。
【0026】
オキシカルボン酸としては、例えば、グルコン酸、グルコヘプトン酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、グリセリン酸、酒石酸、クエン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、シトラマル酸が挙げられ、オキシカルボン酸の塩としては、例えば、前記されたオキシカルボン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0027】
オキシカルボン酸又はその塩のなかで、グルコン酸又はその塩が好ましく、グルコン酸塩のなかでもグルコン酸ナトリウムがより好ましい。
【0028】
リグニンスルホン酸塩は、木材の成分であるリグニンをスルホン化したものであり、例えば、亜硫酸パルプ製造時の蒸解溶出液を脱糖処理することによって得られる。このようなリグニンスルホン酸塩として、例えば、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カルシウム、リグニンスルホン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0029】
糖類としては、例えば、グルコース、アラビノース、フルクトース、エリトロース、ガラクトース、マンノース、キシロース、リボース等の単糖類、マルトース、ラクトース等の還元性二糖類、スクロース、トレハロース等の非還元型二糖類、マルトトリオース等の還元型三糖類、ラフィノース等の非還元型三糖類、スタキオース、デキストリン等のオリゴ糖が挙げられる。糖アルコール類としては、ソルビトール、アラビトール、マンニトール等が挙げられる。糖類のなかで、二糖類が好ましく、スクロースがより好ましい。
【0030】
本実施形態の地盤改良用添加剤に供する防腐成分は、地盤改良用添加剤に対して防腐効果を発揮し、本発明の効果を損なわないものであれば、特に制限されない。このような防腐成分としては、例えば、5-クロル-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(C-MIT)、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(H-MIT)、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT)、2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(OIT)等のイソチアゾリン系化合物、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール(ブロノポール)、1,4-ビス(ブロモアセトキシ)-2-ブテン(BBAB)等の臭素系化合物、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス-(2-ヒドロキシエチル)-S-トリアジン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリエチル-S-トリアジン等のトリアジン系化合物、p-クロロ-m-クレゾール(PCMC)、p-クロロ-m-キシレノール(PCMX)等のフェノール系化合物、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム(ナトリウムピリチオン)、2-ピリジンチオール-1-オキシドジンク(ジンクピリチオン)等のピリジン系化合物、グルタルアルデヒド等のアルデヒド系化合物等が挙げられる。これらの中でも、5-クロル-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(C-MIT)、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(H-MIT)、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT)、2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(OIT)、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム(ナトリウムピリチオン)、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール(ブロノポール)及びグルタルアルデヒドからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するものが好ましく、5-クロル-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(C-MIT)、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(H-MIT)、2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(OIT)及び2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール(ブロノポール)からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有するものがより好ましい。
【0031】
硬化遅延性能の劣化を防止する観点から、本実施形態の地盤改良用添加剤に供する水の25℃における酸化還元電位(ORP)が0mV以上であるのが好ましく、250~800mVであるのがより好ましく、400~800mVであるのが更に好ましい。また、同様の観点から、25℃における水のpHが6~9であるのが好ましく、7~9であるのがより好ましい。
【0032】
本実施形態の地盤改良用添加剤は、硬化遅延成分であるA成分を20~45質量%の割合で含有するのが好ましく、25~40質量%の割合で含有するのがより好ましい。また、本実施形態の地盤改良用添加剤は、防腐成分であるB成分を0.005~0.5質量%の割合で含有するのが好ましく、0.01~0.5質量%の割合で含有するのがより好ましく、0.1~0.5質量%であるのが更に好ましい。
【0033】
本実施形態の地盤改良用添加剤は、25℃におけるpHが6~11であり、7~10であるのがより好ましい。
【0034】
本実施形態の地盤改良用添加剤は、各成分を所定の割合になるように攪拌羽根を備えたミキサー等で混合することにより製造することができる。また、その性状は水溶液である。
【0035】
本実施形態の地盤改良体組成物は、水、水硬性固化材、前記した本実施形態の地盤改良用添加剤及び土を含有するものである。
【0036】
本実施形態の地盤改良体組成物に供する水硬性固化材としては、水硬性を有する各種セメント、セメント系固化材等を含有するものが挙げられる。このようなセメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント等の各種混合セメントが挙げられ、セメント系固化材としては、例えば、ハードキープP-530(トクヤマ社製)等が挙げられる。
【0037】
本実施形態の地盤改良体組成物に供する土は、土質性状や成分に関係なく、改良の対象となる地盤の土(以下、対象土と称する)を使用することができる。
【0038】
本実施形態の地盤改良体組成物においては、使用する水の量は、土の含水比等で異なり、特に制限されるものではないが、水固化材比が50~500質量%となるのが好ましく、60~400質量%となるのがより好ましく、70~300質量%となるのが更に好ましく、80~200質量%となるのが最も好ましい。なお、水固化材比とは、地盤改良体組成物中のセメントなどの水硬性固化材質量に対して使用する水の質量の比であり、使用する水の質量が水硬性固化材の質量の半分となる場合は水固化材比が50質量%となる。
【0039】
本実施形態の地盤改良体組成物においては、水硬性固化材の質量に対し、A成分、B成分及びC成分の合計の含有量が0.1~10.0質量%であるのが好ましく、0.5~8.0質量%であるのがより好ましい。
【0040】
本実施形態の地盤改良体組成物においては、水硬性固化材の使用量が対象土1m3に対し、50~500kgであるのが好ましく、60~350kgであるのがより好ましい。
【0041】
本実施形態の地盤改良体組成物は、水硬性固化材と水とを混合して、水硬性固化材スラリーを調製した後、この水硬性固化材スラリーと土とを混合して製造することができる。本実施形態の地盤改良体組成物の製造方法は、特に制限されないが、例えば、水硬性固化材に水を混合した水硬性固化材スラリーを、掘削機の攪拌翼先端から吐出しながら原位置土壌と混練・攪拌することで、地中をソイルセメントスラリーで置換して硬化させ、地盤を安定化させる地盤改良工法に使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また、部は質量部を意味する。
【0043】
C成分及び地盤改良用添加剤のpHは、ガラス電極を有する市販のpHメーターを使用して測定した。C成分の酸化還元電位は、白金電極を有する市販の電気伝導率計を使用して測定した。測定温度はいずれも25℃で実施した。
【0044】
総菌数はサンアイバイオチェッカーTTC(総菌数測定用、三愛石油社製)を使用して測定した。また、真菌数はサンアイバイオチェッカーM(真菌数測定用、三愛石油社製)を使用して測定した。なお、水溶液中のカビや酵母を真菌とした。培養条件としてはいずれも、C成分及び地盤改良用添加剤に各サンアイバイオチェッカーの培地部分を接触させた後、30℃の恒温槽に48時間静置し、菌数を測定した。
【0045】
実施例、参考例及び比較例において次の成分を使用した。
[A成分](硬化遅延成分)
・GS-Na:グルコン酸ナトリウム試薬(キシダ化学社製)
・Suc:スクロース試薬(富士フイルム和光純薬社製)
【0046】
[B成分](防腐成分)
・B-1:5-クロル-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(C-MIT)と、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(H-MIT)と、2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(OIT)と、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール(ブロノポール)を含有する混合物(製品名:トップサイド370、パーマケム・アジア社製)
・B-2:2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム(ナトリウムピリチオン)と1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT)を含有する混合物(製品名:ユニケムフレックスBN-200、ユニオンケミカル社製)
・B-3:1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT)を含有する混合物(製品名:ファインサイドC-3800、東京ファインケミカル社製)
・B-4:グルタルアルデヒドと2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(OIT)を含有する混合物(製品名:ACTICIDE GT2、ソー・ジャパン社製)
【0047】
[C成分](水)
・C-1:上水道水(pH:7.8、酸化還元電位:+650mV、総菌数:103個/ml以下、真菌数:103個/ml以下)
・C-2:上水道水(pH:7.6、酸化還元電位:+410mV、総菌数:103個/ml以下、真菌数:103個/ml以下)
・C-3:上水道水(pH:7.5、酸化還元電位:+270mV、総菌数:103個/ml以下、真菌数:103個/ml以下)
・C-4:井戸水(pH:6.5、酸化還元電位:+100mV、総菌数:103個/ml以下、真菌数:103個/ml以下)
・C-5:井戸水(pH:6.3、酸化還元電位:-100mV、総菌数:103個/ml、真菌数:103個/ml)
【0048】
1.試験区分1(地盤改良用添加剤の調製)
表1に記載のA成分、B成分及びC成分を表1に示す割合となるように予め滅菌処理した配合容器に投入し、予め滅菌処理した攪拌機を用いて十分攪拌混合し、地盤改良用添加剤(X-1)~(X-11)を調製した。(X-1)~(X-11)は所定のpHとなるように、30%水酸化ナトリウム水溶液を添加した。
【0049】
地盤改良用添加剤(X-1)~(X-11)と同様にして、地盤改良用添加剤(RX-1)~(RX-2)を調製した。(RX-1)は所定のpHとなるように、30%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、(RX-2)は所定のpHとなるように、硫酸を添加した。
以上で調製した各地盤改良用添加剤の内容を表1にまとめて示した。
【0050】
【0051】
2.試験区分2(地盤改良用添加剤の防腐性評価)
地盤改良用添加剤を容量500mlの予め滅菌処理したポリ容器に入れ、蓋の代わりにラップをかけ、外気に触れるよう複数穴をあけた状態で、設定温度30℃の恒温槽中に一か月間静置保管した。一か月間保管後の地盤改良用添加剤の総菌数、真菌数を測定した。
【0052】
以上で評価した内容を表2にまとめて示した。
【0053】
【0054】
・一か月後の防腐性:前記総菌数、真菌数より、以下の基準で行なった。
防腐性の評価(総菌数で評価):
S:非常に良好(103個未満)
A:良好(103~104個)
B:悪い(105個以上)
【0055】
3.試験区分3(地盤改良体組成物の調製及び評価)
試験区分1で調製した地盤改良用添加剤を使用して次のように地盤改良体組成物を調製し、評価した。
【0056】
[実施例1~11、参考例1,2及び比較例1~3](地盤改良体組成物の調製)
高炉セメントB種(密度=3.04g/cm3、トクヤマ社製)429.2g、練混ぜ水(蒲郡市上水道水)429.2g(表5に記載の使用量(水硬性固化材の質量に対し、A成分、B成分及びC成分の合計を0.1~10.0質量%の割合で含有する量)となる量の地盤改良用添加剤を含む)をホバートミキサーに入れて均一に混合し、セメントミルク(水硬性固化材スラリー)を調製した。各地盤改良用添加剤は表2に示す防腐性評価に使用した1カ月保管後のものを使用した。なお、比較例5においては、地盤改良用添加剤を使用しなかった。このセメントミルクに表3に記載の物性値を有する試料土2470.3gを加えて混合し、地盤改良体組成物を調製した。調製した地盤改良体組成物の配合を表4に示す。
【0057】
【0058】
表3において、
*1:粒子径5μm未満の細粒分粒子
*2:粒子径5μm~75mm未満のシルト分粒子
*3:粒子径75μm~2mmの砂分粒子
【0059】
【0060】
配合材料の練混ぜ及び以下の試験は材料温度20±3℃に設定し、室温を20±3℃に設定し、相対湿度を60%以上に設定した環境下で実施した。調製した各例の地盤改良体組成物について、フロー試験、ベーンせん断強さ、圧縮強度を下記のように求めた。結果を表5にまとめて示す。
【0061】
フロー試験:JIS R 5201に準拠し、練混ぜ直後にフロー試験を行い、15回落下後のフローを測定した。
【0062】
ベーンせん断試験:JGS 1411に準拠し、ベーンせん断強さを測定した。測定にはハンドベーン DO-1018(誠研舎社製)を使用した。4枚の羽根(ベーンブレード)を試料中の所定の深さに押し込んだ後で回転させ、その時の羽根の受ける最大抵抗力(測定最大トルク)から、せん断強さを求めた。最大抵抗力(測定最大トルク)はトルクメーターで測定した。
【0063】
試料のベーンせん断強さは以下の数1を用いて計算した。
【0064】
【0065】
数1において、
τ:ベーンせん断強さ(kN/m2)
M:測定最大トルク(kN・m)
Mf:試験機の摩擦トルク(kN・m)
D:ベーンブレードの幅(m)
H:ベーンブレードの高さ(m)
【0066】
圧縮強度:JIS A 1216に準拠し、直径50mm×高さ100mmの供試体を作製し、室温20±3℃、相対湿度を60%以上の環境下で材齢28日まで気中養生後、一軸圧縮強度を測定した。
【0067】
【0068】
(結果)
表2に示すように、各実施例の地盤改良用添加剤は、長期間保管しても腐敗しないことが分かる。各比較例は、長期間保管すると腐敗が進行することが分かる。表5に示すように、長期間保管した各実施例の地盤改良用添加剤を使用した地盤改良体組成物は、硬化遅延性能が劣化しないことが分かる。各比較例は、長期間保管すると硬化遅延性能が劣化することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の地盤改良用添加剤により、長期間保管しても水硬性固化材の硬化時間を遅延させることができ、硬化時間の遅延が要求される地盤改良工事に利用することができる。