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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネスの経路規制部材
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20230915BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
H02G3/04 037
B60R16/02 623T
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020089776
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021184670
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 明仁
(72)【発明者】
【氏名】奥 恵里奈
(72)【発明者】
【氏名】安藤 大吾
(72)【発明者】
【氏名】池本 浩平
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-215148(JP,A)
【文献】特開2007-237896(JP,A)
【文献】特開2015-182580(JP,A)
【文献】特開2001-258138(JP,A)
【文献】特開2001-258137(JP,A)
【文献】特開2012-147551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02G 3/30
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のピラーと前記ピラーを車室内側から覆うガーニッシュとの間に配索されるワイヤーハーネスの経路を規制する経路規制部材であって、
底壁と、
前記底壁の両側縁から前記ガーニッシュに向かって突出するとともに、前記底壁と共に前記ワイヤーハーネスの経路を規制する一対の側壁と、
前記底壁から前記ピラーに向かって突出するとともに前記ピラーに取り付けられる取付部と、
前記底壁における前記取付部とは異なる部位から前記ピラーに向かって突出するとともに前記ピラーとの隙間を詰める隙詰め部と、を有する、
ワイヤーハーネスの経路規制部材。
【請求項2】
前記隙詰め部は、前記底壁の両側縁から前記ピラーに向かってそれぞれ突出する一対の側壁部を有する、
請求項1に記載のワイヤーハーネスの経路規制部材。
【請求項3】
前記隙詰め部は、前記側壁部同士を連結する連結部を有する、
請求項2に記載のワイヤーハーネスの経路規制部材。
【請求項4】
前記側壁及び前記側壁部の少なくとも一方には、補強壁が連結されている、
請求項2及び請求項3のいずれか一項に記載のワイヤーハーネスの経路規制部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスの経路規制部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車体のセンターピラーを車室内側から覆うガーニッシュが設けられている(例えば特許文献1参照)。
センターピラーと、ガーニッシュとの間には、例えばカーテンエアバッグに給電するためのワイヤーハーネスが配索されている。また、センターピラーと、ガーニッシュとの間には、ワイヤーハーネスの経路を規制する経路規制部材が設けられている。
【0003】
特許文献2には、車両に配索されるワイヤーハーネスの経路を規制する経路規制部材としてのプロテクタが開示されている。このプロテクタは、ワイヤーハーネスが載置される底壁と、底壁の両側縁部から上方に立ち上がる一対の側壁とを有するプロテクタ本体と、プロテクタ本体における底壁に対向する開口を塞ぐ蓋体とを備えている。
【0004】
また、自動車などの車両においては、側突時に、シートバックに内蔵されたサイドエアバッグが膨張展開する。このとき、センターピラーを覆うガーニッシュには、膨張展開するエアバッグからの荷重が作用する。従来、エアバッグに対して反力を作用させるために、ガーニッシュの内面にセンターピラーに向かって突出するボスが設けられているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-40939号公報
【文献】特開2012-147551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車室内の空間を確保する目的などからガーニッシュの厚さ方向の体格を小さくすることが望まれている。しかしながら、ピラーガーニッシュの厚さ方向の体格が小さくされると、以下の不都合が生じるおそれがある。すなわち、センターピラーとガーニッシュとの間の隙間が小さくされることに伴って、ワイヤーハーネスの配索位置を変更する必要が生じる。その結果、上記ボスを設定することが難しくなり、エアバッグに対して反力を好適に作用させることが難しくなる。
【0007】
本発明の目的は、車室側からの荷重に対して反力を好適に作用させることのできるワイヤーハーネスの経路規制部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためのワイヤーハーネスの経路規制部材は、車体のピラーと前記ピラーを車室内側から覆うガーニッシュとの間に配索されるワイヤーハーネスの経路を規制する経路規制部材であって、底壁と、前記底壁の両側縁から前記ガーニッシュに向かって突出するとともに、前記底壁と共に前記ワイヤーハーネスの経路を規制する一対の側壁と、前記底壁から前記ピラーに向かって突出するとともに前記ピラーに取り付けられる取付部と、前記底壁における前記取付部とは異なる部位から前記ピラーに向かって突出するとともに前記ピラーとの隙間を詰める隙詰め部と、を有する。
【0009】
同構成によれば、ガーニッシュに対して車室側から荷重が作用すると、ガーニッシュがピラーに向かって変位することで経路規制部材の側壁に接触する。これにより、経路規制部材がピラーに向けて押し込まれるようになる。そして、経路規制部材の底壁から突出した隙詰め部がピラーに接触する。このとき、上記構成によれば、隙詰め部が設けられている分だけ、取付部以外の部分においてガーニッシュとピラーとによって経路規制部材が挟持された状態が早期に実現されるため、ガーニッシュが変形しにくくなる。したがって、車室側からの荷重に対して反力を好適に作用させることができる。
【0010】
上記ワイヤーハーネスの経路規制部材において、前記隙詰め部は、前記底壁の両側縁から前記ピラーに向かってそれぞれ突出する一対の側壁部を有することが好ましい。
同構成によれば、経路規制部材がピラーに向けて押し込まれた際に、隙詰め部の一対の側壁部がピラーに接触するようになる。このため、経路規制部材がガーニッシュ及びピラーによって安定して挟持される。これにより、ガーニッシュが一層変形しにくくなる。したがって、車室側からの荷重に対して反力を一層好適に作用させることができる。
【0011】
上記ワイヤーハーネスの経路規制部材において、前記隙詰め部は、前記側壁部同士を連結する連結部を有することが好ましい。
同構成によれば、側壁部がピラーと接触した際、側壁部に作用する荷重が連結部によって分散されることで側壁部の変形が抑制されるようになる。これにより、ガーニッシュがより一層変形しにくくなる。したがって、車室側からの荷重に対して反力をより一層好適に作用させることができる。
【0012】
上記ワイヤーハーネスの経路規制部材において、前記側壁及び前記側壁部の少なくとも一方には、補強壁が連結されていることが好ましい。
同構成によれば、側壁及び側壁部の少なくとも一方に作用する荷重が補強壁によって分散されることで上記一方の変形が抑制されるようになる。これにより、ガーニッシュが一層変形しにくくなる。したがって、車室側からの荷重に対して反力をより一層好適に作用させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車室側からの荷重に対して反力を好適に作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ワイヤーハーネスの経路規制部材の一実施形態について、センターピラーに取り付けられた状態の経路規制部材を示す正面図。
図2図1の経路規制部材を示す正面図。
図3図1の経路規制部材を示す背面図。
図4図2の4-4線に沿った断面図。
図5図2の5-5線に沿った断面図。
図6図2の6-6線に沿った断面図。
図7図2の7-7線に沿った断面図。
図8】同実施形態のピラー、経路規制部材、及びガーニッシュを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図8を参照して、一実施形態について説明する。なお、本実施形態では、車両のセンターピラー10に配索されるワイヤーハーネスの経路規制部材として本発明を具体化している。なお、以降において、車両の前後方向Lにおける前方及び後方を単に前方及び後方として説明する。車幅方向Wにおいて中心に近づく方向を内方とし、同中心から離れる方向を外方として説明する。
【0016】
図1に示すように、車体の両側部における前後方向Lの中央部には、ルーフパネルとフロアパネルとを連結するセンターピラー10が設けられている。
図8に示すように、センターピラー10の上部には、センターピラー10を車室内側から覆うガーニッシュ50が取り付けられている。
【0017】
図1に示すように、センターピラー10とガーニッシュ50との間には、シートベルトのウェビング12がセンターピラー10の延在方向に沿って収容されている。
また、センターピラー10とガーニッシュ50との間であってウェビング12の前側には、例えばカーテンエアバッグに給電するためのワイヤーハーネス11が経路規制部材20を介して配索されている。ワイヤーハーネス11は、センターピラー10の延在方向に沿って延在している。
【0018】
次に、経路規制部材20について説明する。
なお、図3における指示線4’-4’,5’-5’,6’-6’,7’-7’の位置は、図2における断面指示線4-4,5-5,6-6,7-7の位置にそれぞれ対応している。
【0019】
図1及び図2に示すように、経路規制部材20は、ワイヤーハーネス11の経路を規制するものであり、長尺状である。
本実施形態の経路規制部材20は、上側から順に、上側端部21、上側端部21から斜め後下方に向かって傾斜して延在する上側傾斜部22、上側傾斜部22から下方に向かって直線状に延在する中間部23、及び中間部23から斜め前下方に向かって傾斜して延在する下側傾斜部24を有している。また、経路規制部材20は、下側傾斜部24から下方に向かって延在する延在部25、及び下側端部26を有している。下側端部26には、後方に向かって突出するステー27が設けられている。
【0020】
図2及び図8に示すように、経路規制部材20は、センターピラー10及びガーニッシュ50の双方に対向する底壁31と、底壁31の両側縁からガーニッシュ50に向かって突出する一対の側壁(前側壁32,後側壁33)とを有している。底壁31と一対の側壁32,33とによってワイヤーハーネス11の移動が規制される。側壁32,33同士の対向面には、側壁32,33の突出方向に沿って延在する複数のリブ37が突設されている。複数のリブ37は、経路規制部材20の延在方向に互いに間隔をおいて設けられている。
【0021】
後側壁33には、補強壁34が設けられている。
補強壁34は、後側壁33における複数のリブ37の突端に連結されており、後側壁33の延在方向に沿って延在している。
【0022】
本実施形態では、後側壁33のうち上側傾斜部22、中間部23、下側傾斜部24を構成する部分に補強壁34が設けられている。
図8に示すように、本実施形態では、ガーニッシュ50のうち経路規制部材20の内方に位置する部分が後側ほど内側に位置するように傾斜している。また、前側壁32、補強壁34、及び後側壁33の各々の突出高さが、順に大きくなっている。これにより、前側壁32、補強壁34、後側壁33の各々の突端とガーニッシュ50との車幅方向Wにおける間隔が同等となっている。
【0023】
図2及び図4に示すように、経路規制部材20は、底壁31からセンターピラー10に向かって突出する取付部35が設けられている。また、ステー27にも取付部35と同様な取付部36が設けられている。取付部35,36がセンターピラー10に設けられた2つの嵌合孔にそれぞれ嵌入されることによって経路規制部材20がセンターピラー10に取り付けられている(図1参照)。
【0024】
図3に示すように、経路規制部材20には、底壁31における取付部35とは異なる部位からセンターピラー10に向かって突出するとともにセンターピラー10との隙間を詰める隙詰め部40が設けられている。なお、本実施形態では、隙詰め部40は、中間部23を中心に設けられている。
【0025】
隙詰め部40は、底壁31の両側縁からセンターピラー10に向かってそれぞれ突出する一対の側壁部41と、側壁部41同士を連結する連結部42とを有している。
連結部42は、中間部23の延在方向において間隔をおいて設けられた複数の第1連結部42aと、互いに隣り合う第1連結部42a同士の間において十字状に突出する第2連結部42bとを有している。
【0026】
図5図7に示すように、各側壁部41の突端及び連結部42の突端は、同一平面上に位置している。
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0027】
車両においては、側突時に、シートバックに内蔵されたサイドエアバッグ(いずれも図示略)が膨張展開する。このとき、ガーニッシュ50に、膨張展開するエアバッグからの荷重が作用すると、ガーニッシュ50がセンターピラー10に向かって変位することで経路規制部材20の側壁32,33に接触する。これにより、経路規制部材20がセンターピラー10に向けて押し込まれるようになる。そして、経路規制部材20の底壁31から突出した隙詰め部40がセンターピラー10に接触する。このとき、上記構成によれば、隙詰め部40が設けられている分だけ、ガーニッシュ50とセンターピラー10とによって経路規制部材20が挟持された状態が早期に実現されるため、ガーニッシュ50が変形しにくくなる。
【0028】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)底壁31における取付部35とは異なる部位からセンターピラー10に向かって突出するとともにセンターピラー10との隙間を詰める隙詰め部40を有する。
【0029】
こうした構成によれば、上述した作用を奏することから、エアバッグに対して反力を好適に作用させることができる。
また、上記構成によれば、反力を作用させるためのボスをガーニッシュ50の内面に設ける必要がなくなる。したがって、ガーニッシュ50の厚さ方向の体格を小さくすることができる。
【0030】
(2)隙詰め部40は、底壁31の両側縁からセンターピラー10に向かってそれぞれ突出する一対の側壁部41を有する。
こうした構成によれば、経路規制部材20がセンターピラー10に向けて押し込まれた際に、隙詰め部40の一対の側壁部41がセンターピラー10に接触するようになる。このため、経路規制部材20がガーニッシュ50及びセンターピラー10によって安定して挟持される。これにより、ガーニッシュ50が変形しにくくなる。したがって、車室側からの荷重に対して反力を一層好適に作用させることができる。
【0031】
(3)隙詰め部40は、側壁部41同士を連結する連結部42を有する。
こうした構成によれば、側壁部41がセンターピラー10と接触した際、側壁部41に作用する荷重が連結部42によって分散されることで側壁部41の変形が抑制されるようになる。これにより、ガーニッシュ50が一層変形しにくくなる。したがって、車室側からの荷重に対して反力をより一層好適に作用させることができる。
【0032】
(4)後側壁33には、補強壁34が連結されている。
こうした構成によれば、後側壁33に作用する荷重が補強壁34によって分散されることで後側壁33の変形が抑制されるようになる。これにより、ガーニッシュ50が一層変形しにくくなる。したがって、車室側からの荷重に対して反力をより一層好適に作用させることができる。
【0033】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0034】
・経路規制部材20の底壁31の形状は、ワイヤーハーネス11の配索方向に沿って適宜変更することができる。
・上記実施形態では、後側壁33に補強壁34を設けたが、後側壁33に加えて、または代えて前側壁32に補強壁を設けるようにしてもよい。また、側壁32,33に加えて、または代えて、側壁部41に補強壁を設けるようにしてもよい。
【0035】
・補強壁は省略することもできる。
・連結部は、本実施形態で例示したものに限定されず、形状を適宜変更することができる。例えば、第2連結部42bを底壁31から筒状に突出する形状にしてもよい。
【0036】
・第1連結部42a及び第2連結部42bは、いずれか一方を省略することもできるし、双方を省略することもできる。
・隙詰め部40は、底壁31の両側縁から突出する一対の側壁部41を有するものに限定されない。例えば、隙詰め部は、底壁31の幅方向の中央部から突出するものであってもよい。
【0037】
・経路規制部材20は、本実施形態で例示したセンターピラー10に配索されるワイヤーハーネス11に適用されるものに限定されず、例えば、フロントピラーやセンターピラーより車両の後方に設けられるピラーに配索されるワイヤーハーネスに適用することもできる。
【符号の説明】
【0038】
L…前後方向
W…車幅方向
10…センターピラー
11…ワイヤーハーネス
12…ウェビング
20…経路規制部材
21…上側端部
22…上側傾斜部
23…中間部
24…下側傾斜部
25…延在部
26…下側端部
27…ステー
31…底壁
32…前側壁
33…後側壁
34…補強壁
35…取付部
36…取付部
37…リブ
40…隙詰め部
41…側壁部
42…連結部
42a…第1連結部
42b…第2連結部
50…ガーニッシュ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8