(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】エチレン製造用触媒及びエチレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 29/04 20060101AFI20230915BHJP
C07C 5/333 20060101ALI20230915BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20230915BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230915BHJP
【FI】
B01J29/04 Z
C07C5/333
C07C11/04
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019164544
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】三宅 孝典
(72)【発明者】
【氏名】佐野 誠
(72)【発明者】
【氏名】林 智洋
(72)【発明者】
【氏名】花谷 誠
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-078439(JP,A)
【文献】国際公開第2019/168554(WO,A1)
【文献】特開昭63-008342(JP,A)
【文献】特開2003-012570(JP,A)
【文献】特表2002-519281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 5/333
C07C 11/04
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金が担持されているジンコシリケートゼオライトを含
み、前記ジンコシリケートゼオライトが、BEA型ゼオライトである、ことを特徴とするエチレン製造用触媒。
【請求項2】
前記
BEA型ゼオライトが、
CIT-6型ゼオライトである、ことを特徴とする請求項1に記載のエチレン製造用触媒。
【請求項3】
前記ジンコシリケートゼオライトにおける白金担持量が0.01~10重量%である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエチレン製造用触媒。
【請求項4】
前記ジンコシリケートゼオライトが、対カチオンとしてプロトン及び/またはアルカリ金属カチオンを有するジンコシリケートゼオライトである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のエチレン製造用触媒。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一つに記載のエチレン製造用触媒の存在下、500℃~700℃の範囲内でエタンの脱水素化反応を行うことを含む、ことを特徴とするエチレンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタンを原料とする、脱水素化反応によりエチレンを製造するのに適したエチレン製造用触媒に関するものであり、特に特定の金属を担持するジンコシリケートゼオライトを含む新規なエチレン製造用触媒及びそれを用いたエチレンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレンは、有用な化学品原料であり、その多くはナフサをはじめとする原料油を熱分解反応装置にて分解し、得られた熱分解生成物からエチレンを分離することにより得られる。該製造法では、エチレンは多数の熱分解生成物の一つにすぎず、反応の選択率が低いという課題、及び800℃程度の高い反応温度を要するという課題がある。
【0003】
また、別法としてSnとWとを含む酸化物を触媒とするエチレン製造用触媒(例えば特許文献1参照。)、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等と接触したゼオライト担体に亜鉛及び第VIIIA族金属を担持した触媒の存在下、不飽和炭化水素を製造する方法(例えば特許文献2参照。)、触媒担体としてZSM-5ゼオライトを用いた触媒の存在下、低級アルケンを製造する方法等が提案されている。
【0004】
さらに、シェールガスや石油随伴ガスより得られるエタンを原料とした熱分解プロセスによりエチレンが製造されている。しかし、該プロセスにおいても800℃以上程度の高い反応温度を要するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平09-0368490号公報
【文献】特開2013-163647号公報
【文献】特開2008-266286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の触媒は、Sn-W系酸化物という特殊酸化物を触媒とするものである上に、そのエチレン転化率には課題を有するものであった。また、特許文献2に記載の方法においては一応の不飽和炭化水素の生成は見られるものであったが、その効率としてはまだ課題を有するものである上に、その生成が困難とされるエチレンの製造についてはなんら検討のされていないものである。さらに、特許文献3に記載の製造方法においては、エチレンの生成は確認されるものではあるが、その使用に課題を有するクロム系の触媒が記載されており、その使用温度も比較的高いものであり、課題を有するものであった。
【0007】
そこで、本発明は、エタンを原料とし、より温和な反応条件下でエチレンを製造できる新規なエチレン製造用触媒を提供することを目的とするものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の金属を担持したジンコシリケートゼオライトを含む触媒が、より温和な反応温度条件下でエタンを原料として、エチレンを効率的に製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、白金を担持しているジンコシリケートゼオライトを含む、ことを特徴とするエチレン製造用触媒に関する。また、本発明は、該エチレン製造用触媒の存在下、500℃~700℃の範囲内でエタンの脱水素化反応を行うことを特徴とするエチレンの製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、エタンを原料とし、より温和な反応条件下でエチレンを効率良く製造することのできる新規なエチレン製造用触媒を提供するものであり、工業的にも非常に有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一つの実施形態について詳細に説明する。
本実施形態のエチレン製造用触媒は、白金が担持されているジンコシリケートゼオライトを含む。本実施形態に係わるジンコシリケートゼオライトの構造としては、例えばAEI、BEA、CHA、CON、EPI、ERI、EUO、FAU、FER、LAU、LEV、LTA、MEL、MFI、MOR、MSE、MTW、MWW、PON、UTL、ZON等のゼオライトと称される範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、中でも、特にエタンからエチレンを製造する際により温和な温度条件で高効率を発現する触媒となることから、例えばCIT-6型ゼオライト等のBEA型(より好ましくはCIT-6型ゼオライト)、ZSM-5型ゼオライト等のMFI型(より好ましくはZSM-5型ゼオライト)であることが好ましい。その際のBEA型およびMFI型とは、国際ゼオライト学会で定義される構造コードBEA、MFIに属するものである。なお、本実施形態に係わるジンコシリケートゼオライトの構造は、粉末X線回折により特定することができる。
【0012】
また、本実施形態のエチレン製造用触媒を構成するジンコシリケートゼオライトは、ジンコシリケート化合物よりなるものであり、ゼオライトの骨格中のアルミニウムの一部又は全部が亜鉛で置き換えられているゼオライトを意味する。そのSiO2/ZnO(モル比)としては制限されるものではないが、その中でも耐熱性、反応選択性、生産性に優れるエチレン製造用触媒となることから、SiO2/ZnO(モル比)が3以上100以下であることが好ましい。該ジンコシリケートゼオライトのカチオンサイトの対カチオンとしては、如何なるものであってもよく、中でも耐熱性、反応選択性、生産性に優れるエチレン製造用触媒となることから、プロトン及び/またはアルカリ金属カチオンから選ばれる任意のものであることが好ましく、全カチオンサイトが同一の対カチオンであってもよく、さらには一部サイトのみ異なった対カチオンであってもよい。また、該ジンコシリケートゼオライトとしては、反応選択性、生産性に優れるものとなることから、細孔内に有機構造指向剤を含まないものであることが好ましい。
【0013】
なお、本実施形態に係わるジンコシリケートゼオライトは、特に限定されないが例えば公知の方法により得ることができ、該方法としては水熱反応などを例示することができる。
具体的には、例えば、コロイダルシリカなどの珪素源、酸化亜鉛などの亜鉛源、テトラプロピルアンモニウム水酸化物やテトラエチルアンモニウム水酸化物などのテトラアルキルアンモニウムイオン源、水、必要に応じて水酸化ナトリウムや水酸化リチウムなどのアルカリ金属イオン源などを混合し、得られた混合物を約100℃~約250℃の温度に3~200時間保って反応させる。
【0014】
そして、本実施形態のエチレン製造用触媒は、該ジンコシリケートゼオライトに白金を担持してなる白金担持ジンコシリケートゼオライトを含むものであり、白金担持とは、ジンコシリケートゼオライトが有するカチオンサイトに例えばイオン交換、または含浸担持等により最終的に金属状の白金を担持したものを意味する。白金担持量に制限はなく、中でも特により高効率を示すエチレン製造用触媒となることから、0.01~5重量%の範囲内であることが好ましい。
【0015】
本実施形態のエチレン製造用触媒の形態としては、該白金担持ジンコシリケートゼオライトを含むものであればよく、例えば調製された該白金担持ジンコシリケートゼオライト粉末をそのまま触媒として用いること、圧縮成型等を行い特定の形状付与したものとして用いること、バインダー等と混合し成形を行い特定の形状を附与したものとして用いること、等のいずれの形態として用いることも可能である。
【0016】
本実施形態のエチレン製造用触媒は、その存在下でエタンと接触することにより脱水素化反応を行いエチレンを効率的に製造することが可能となり、特にその脱水素化反応の進行が困難とされるエタンの脱水素化反応をより温和な温度条件で効率良く進行しエチレンの製造を行うことができる。その際の温度条件としては、エチレンへの転化効率が高く、触媒の失活等の抑制が可能となることから500℃~700℃であることが好ましい。また、圧力条件としては、任意の圧力条件を選択することができる。
【0017】
そして、エチレンを製造する際のエタンの供給としては任意であり、原料ガス(エタン)の流量に対する触媒重量の比として特に制限されるものではなく、例えば0.01~1000(分・g-触媒/L-原料ガス)程度の空間速度で供給することを挙げることができる。また、エタンを原料ガスとして供給する際には、エタンの単一ガス、混合ガスまたはエタンを窒素等の不活性ガスにより希釈したもの等、を用いることもできる。
【0018】
また、エチレンを製造する際の反応形式としては制限はなく、例えば固定床、輸送床、流動床、移動床、多管式反応器、連続流式、間欠流式、スイング式反応器、等のいずれの形式をも用いることができる。
【実施例】
【0019】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。
なお、実施例により用いたジンコシリケートゼオライト(CIT-6型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライト)は以下の方法により評価・測定を行った。
【0020】
~SiO2/ZnOモル比の測定~
ジンコシリケートゼオライトをフッ酸と硝酸の混合水溶液で溶解し、これをICP装置((商品名)OPTIMA3300DV,PerkinElmer社製)による誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)より観測・測定を行った。
【0021】
~粉末X線回折の測定~
X線回折測定装置(スペクトリス社製、(商品名)X’pert PRO MPD)を用い、管電圧45kV、管電流40mAとしてCuKα1を用いて、大気中において測定した。5~60度の範囲を0.04度/ステップ、4度/分で分析した。また、ダイレクトビームの吸収率で補正したバックグラウンドを除去している。
【0022】
~エチレン製造装置及びその製造方法~
以下の方法によりエチレンの製造を行い、その評価を行った。
石英製反応管(内径7mm、長さ400mm)を用いた固定床気相流通式反応装置を用いた。石英製反応管の中段に、エチレン製造用触媒を充填し、窒素流通下での加熱前処理を行ったのち、エタン(原料ガス)をフィードした。そして、加熱はセラミック製管状炉を用い、触媒層の温度を制御した。反応出口ガスおよび反応液を採取し、ガスクロマトグラフを用い、ガス成分および液成分を個別に分析した。水素は、TCD検出器を備えたガスクロマトグラフ(SHIMADZU社製、(商品名)GC-8A)を用いて分析した。充填剤は、GL Science社製Unibeads 1S 60/80(商品名)または信和化工社製Sunpack A(商品名)を用いた。その他のガス、液成分は、FID検出器を備えたガスクロマトグラフ(SHIMADZU社製、(商品名)GC-2025)を用いて分析した。分離カラムは、キャピラリーカラムアジレント・テクノロジー社製PoraPLOT Q(商品名)を用いた。
【0023】
反応条件は下記のように設定した。
(エチレン製造条件)
流通ガス:エタンガス6mL/分+窒素14mL/分の混合ガス。
触媒重量:50mg。
触媒形状:ゼオライト粉末のうち、100メッシュの篩を通過したものを用いた。
圧力:0MPaG。
(エチレン製造用触媒前処理条件)
触媒温度:550℃。
流通ガス:水素5mL/分+窒素14ml/分。
圧力:0MPaG。
【0024】
<実施例1>
100mLのエルレンマイヤーフラスコに20%テトラプロピルアンモニウム水酸化物水溶液13.22gとテトラエトキシシランTEOS10.42gを入れ、80℃で24時間撹拌した。攪拌修了後、硫酸亜鉛六水和物0.74gを加えた。その後、50mLテフロン(登録商標)製オートクレーブを用いて175℃で24時間水熱合成を行った。
【0025】
テフロン製オートクレーブからゲルを取り出し、遠心分離を行った後、上澄み液を除去し、純水を35ml加えて超音波撹拌を行った。この洗浄作業を3回繰り返した後、70℃で12時間乾燥後、550℃で8時間、空気雰囲気下で焼成を行い、対カチオンとしてプロトンを有するZSM-5型ジンコシリケートゼオライト(MFI)を得た。
【0026】
フラスコに、上記により得られたZSM-5型ジンコシリケートゼオライト500mgとテトラアンミン白金クロライド一水和物(以下、白金原料と記す場合もある。)4.5mg、および純水100mlを加えて、常温で24時間撹拌した。撹拌後、遠心分離を行った後、上澄み液を除去し、純水を35ml加えて超音波撹拌を行った。この洗浄作業を3回繰り返した後、70℃で12時間乾燥し、白金担持ZSM-5型ジンコシリケートゼオライト(以下、Pt/ZSM-5と記す場合もある。)を調製した。得られたPt/ZSM-5の白金担持量は0.023重量%であった。また、ZSM-5型ジンコシリケートゼオライトのSiO2/ZnOモル比は14であった。
【0027】
該Pt/ZSM-5をエチレン製造用触媒とした。そして、該エチレン製造用触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を行った。
【0028】
<実施例2>
実施例1により得られたZSM-5型ジンコシリケートゼオライトを用いた。
白金原料を9.0mgとした以外は実施例1と同様の方法で白金担持処理を行い、白金担持量0.054重量%のPt/ZSM-5を調製し、エチレン製造用触媒とした。
【0029】
そして、該エチレン製造用触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を行った。
【0030】
<実施例3>
硝酸亜鉛六水和物を1.00gとした以外は実施例1と同様の方法で水熱反応を行うことにより得られた、SiO2/ZnOモル比が6の対カチオンとしてプロトンを有するZSM-5型ジンコシリケートゼオライトを用いた。
該ジンコシリケートゼオライトに対し、白金原料を9.0mgとした以外は実施例1と同様の方法で白金担持処理を行い、白金担持量0.054重量%のPt/ZSM-5を調製し、エチレン製造用触媒とした。
【0031】
そして、該エチレン製造用触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を行った。
【0032】
<実施例4>
実施例3により得られたZSM-5型ジンコシリケートゼオライトを用いた。
白金原料を18.0mgとした以外は実施例3と同様の方法で白金担持処理を行い、白金担持量0.11重量%のPt-ZSM-5を調製し、エチレン製造用触媒とした。
【0033】
そして、該エチレン製造用触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を行った。
【0034】
<実施例5>
テトラエチルアンモニウム水酸化物11.1gとコロイダルシリカ((商品名)Ludox AS-40、シグマ-アルドリッチ社製)6.1gと水酸化リチウム-水和物0.072gを純水に溶解し、撹拌後、酢酸亜鉛二水和物0.27gを加えて、テフロン製オートクレーブを用いて140℃で180時間水熱合成を行った。
【0035】
その後、テフロン製オートクレーブからゲルを取り出し、遠心分離を行った後、上澄み液を除去し、純水を加えて超音波撹拌を行った。この洗浄作業を3回繰り返した後、70℃で12時間乾燥後、580℃で6時間、空気雰囲気下で焼成を行い、リチウム型CIT-6型ジンコシリケートゼオライト(以下、Li-CIT-6と記す場合もある。)を得た。
【0036】
フラスコに、Li-CIT-6を800gとテトラアンミン白金クロライド一水和物14.7mg、および純水100mlを加えて、1時間撹拌した。この懸濁液をロータリーエバポレーターで減圧乾燥を行った後、70℃で12時間乾燥した。乾燥後、300℃で3時間、空気雰囲気下で焼成を行い、白金担持Li-CIT-6(以下、Pt/Li-CIT-6と記す場合もある。)を調製した。
【0037】
得られたPt/Li-CIT-6の白金担持量は0.064重量%であった。また、CIT-6型ジンコシリケートゼオライトのSiO2/ZnOモル比は11であった。該Pt/Li-CIT-6をエチレン製造用触媒とした。
【0038】
そして、該エチレン製造用触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を行った。
【0039】
<実施例6>
実施例5で得られたLi-CIT-6の対カチオンをナトリウムイオンにイオン交換した以外は、実施例5と同様の方法で、白金担持ナトリウム型CIT-6(以下、Pt/Na-CIT-6と記す場合もある。)を調製した。
【0040】
得られたPt/Na-CIT-6の白金担持量は0.067重量%であった。また、CIT-6型ジンコシリケートのSiO2/ZnOモル比は11であった。該Pt/Na-CIT-6をエチレン製造用触媒とした。
【0041】
そして、該エチレン製造用触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を行った。
【0042】
<比較例1>
実施例1に記載のZSM-5型ジンコシリケートゼオライトに白金担持を行わず、触媒とした。
そして、該触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を行った。
<比較例2>
フラスコに、プロトン型アルミノシリケートZSM-5ゼオライト(東ソー株式会社製、(商品名)HSZ-820NAA、SiO2/Al2O3モル比=23.8)800gとテトラアンミン白金クロライド一水和物14.7mg、および純水100mlを加えて、1時間撹拌した。この懸濁液をロータリーエバポレーターで減圧乾燥を行った後、70℃で12時間乾燥した。乾燥後、300℃で3時間、空気雰囲気下で焼成を行い、白金担持アルミノシリケートZSM-5ゼオライト(以下、Pt/ZSM-5アルミノシリケートと記す場合もある。)を調製した。
【0043】
得られたPt/ZSM-5アルミノシリケートの白金担持量は0.105重量%であった。該Pt/ZSM-5アルミノシリケートを触媒とした。
【0044】
そして、該触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を試みた。
【0045】
<比較例3>
実施例5に記載のLi-CIT-6に白金担持を行わず、触媒とした。
【0046】
そして、該触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を行った。
【0047】
<比較例4>
実施例6に記載のNa-CIT-6に白金担持を行わず、触媒とした。
【0048】
そして、該触媒の存在下、エタンを原料とし、上記した条件にて、反応温度550℃にてエチレンの製造を行った。
【0049】
実施例および比較例の触媒を用いての上記エチレンの製造における、反応時間、エタン転化率、およびエチレン収率を表1に示す。
比較例1の触媒を用いた場合は、エチレンの生成は確認されず、効率的なエチレン製造とは言い難かった。また、比較例2~4の触媒を用いた場合は、エチレン収率が低く、経時的な収率の低下が見られ、効率的な触媒又は製造方法とは言い難かった。
一方、実施例の触媒を用いた場合は、比較例と比べ、より高収率でより長時間にわたりエチレン製造が可能であり、効率的なエチレン製造となった。
【0050】
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のエチレン製造用触媒は、より温和な条件下で、効率良くエチレンを製造すること可能となり、工業的にも非常に有用なものである。