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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230915BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
G02B5/30
G09F9/30 349E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019238470
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107845
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】出▲崎▼ 光
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-30955(JP,A)
【文献】特開2005-31251(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194801(WO,A1)
【文献】特開2003-14936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G09F 9/30
H10K 50/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部を含み、画像を画像表示面上に表示する画像表示部と、
前記画像表示面上に設けられるλ/4位相差層と、
前記λ/4位相差層上に設けられる直線偏光層と、
を備え、
前記発光部からの光は、発光ピークを含み且つ半値全幅が60nm以下である山型領域有し、
前記λ/4位相差層は、条件1を満たすように、構成されている、
画像表示装置。
条件1:前記λ/4位相差層の厚さ方向における両面に基づく干渉スペクトルにおいて、前記半値全幅を規定する波長範囲内の極大値の数が1つであり且つ極小値の数が2以下である。
【請求項2】
前記λ/4位相差層は、条件2を更に満たすように、構成されている、
請求項1に記載の画像表示装置。
条件2:前記発光ピークに対応するピーク波長と、前記干渉スペクトルにおける前記極大値に対応する波長との差が、前記半値全幅の1/5以下である。
【請求項3】
前記半値全幅は20nmであり、
前記発光ピークに対応するピーク波長は、458±2nmである、
請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記半値全幅は40nmであり、
前記発光ピークに対応するピーク波長は、523±2nmである、
請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記半値全幅は40nmであり、
前記発光ピークに対応するピーク波長は、530±2nmである、
請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記半値全幅は50nmであり、
前記発光ピークに対応するピーク波長は、626±2nmである、
請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記λ/4位相差層は、光にλ/4の位相差を与える位相差発現層である、
請求項1~6の何れか一項に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記λ/4位相差層は、
光にλ/4の位相差を与える位相差発現層と、
無配向層と、
を有する、
請求項1~7の何れか一項に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記位相差発現層と前記無配向層とは、互いに密着して積層されており、
前記位相差発現層と前記無配向層の間の屈折率差はゼロである、
請求項8に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記λ/4位相差層は、前記厚さ方向において第1面と、前記第1面と反対側の第2面とを有し、
前記第1面および前記第2面を含み前記発光部から出力される光が通過する複数の界面それぞれでの屈折率差のうち、前記第1面および前記第2面それぞれが界面である場合の屈折率差が他の屈折率差より大きい、
請求項1~9の何れか一項に記載の画像表示装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置として、背面側から前面側に向けて、発光部を含む画像表示部、λ/4位相差層および直線偏光層をこの順に備える装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。上記画像表示部の例は、フラットパネル表示装置(たとえば、薄型の液晶表示装置、薄型の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置等)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-79053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像表示装置がたとえばカラー画像を表示する場合、三原色光(赤色、青色、緑色)を出力する発光部を使用する。各色を出力するための材料などの影響で、たとえば、赤色、青色および緑色それぞれを出力する発光部(或いは発光素子)を同じ条件で駆動しても特定の色の光の強度が弱くなり、表示すべき本来の色が表示されにくい場合がある。仮に、そのような不具合を解消するため、上記特定の色を出力する発光部(発光素子)を高輝度で使用すると、その発光部の寿命が短くなり、その結果、画像表示装置の製品寿命が短くなる。
【0005】
したがって、本発明は、画像表示装置の製品寿命を確保しながら、所望の色状態で画像を表示可能な画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像表示装置は、発光部を含み、画像を画像表示面上に表示する画像表示部と、上記画像表示面上に設けられるλ/4位相差層と、上記λ/4位相差層上に設けられる直線偏光層と、を備え、上記発光部からの光は、発光ピークを含み且つ半値全幅が60nm以下である山型領域有し、上記λ/4位相差層は、条件1を満たすように、構成されている。
条件1:上記λ/4位相差層の厚さ方向における両面に基づく干渉スペクトルにおいて、上記半値全幅を規定する波長範囲内の極大値の数が1つであり且つ極小値の数が2以下である。
【0007】
上記構成では、発光部から出力されており、上記山型領域を含む発光スペクトルを有する光の強度が弱くても、λ/4位相差層の上記両面の干渉に基づいて、上記山型領域に対応する色を増強できる。したがって、たとえば、三原色のうち一つの色の強度が弱くても、その色をλ/4位相差層の干渉効果で増強できるので、所望の色状態で画像を表示可能である。更に、λ/4位相差層の干渉効果で色を増強するため、発光部の劣化を抑制できる。その結果、画像表示装置の製品寿命も確保できる。
【0008】
上記λ/4位相差層は、条件2を更に満たすように、構成されていてもよい。
条件2:上記発光ピークに対応するピーク波長と、上記干渉スペクトルにおける上記極大値に対応する波長との差が、上記半値全幅の1/5以下である。
【0009】
上記半値全幅は20nmであり、上記発光ピークに対応するピーク波長は、458±2nmであってもよい。
【0010】
上記半値全幅は40nmであり、上記発光ピークに対応するピーク波長は、523±2nmであってもよい。
【0011】
上記半値全幅は40nmであり、上記発光ピークに対応するピーク波長は、530±2nmであってもよい。
【0012】
上記半値全幅は50nmであり、上記発光ピークに対応するピーク波長は、626±2nmであってもよい。
【0013】
上記λ/4位相差層は、光にλ/4の位相差を与える位相差発現層であってもよい。
【0014】
上記λ/4位相差層は、光にλ/4の位相差を与える位相差発現層と、無配向層と、を有してもよい。この場合、無配向層によって、λ/4位相差層の厚さを調整可能である。
【0015】
上記位相差発現層と上記無配向層とは、互いに密着して積層されており、上記位相差発現層と上記無配向層の間の屈折率差はゼロであってもよい。この場合、上記位相差発現層と上記無配向層の界面で実質的に反射が生じない。
【0016】
上記λ/4位相差層は、上記厚さ方向において第1面と、上記第1面と反対側の第2面とを有し、上記第1面および上記第2面を含み上記発光部から出力される光が通過する複数の界面それぞれでの屈折率差のうち、上記第1面および上記第2面それぞれが界面である場合の屈折率差が他の屈折率差より大きくてもよい。
【0017】
この場合、画像表示装置から出力される光のスペクトルにおいて、上記第1面および上記第2面での反射に基づく干渉が支配的になり、山型領域に対応する色を、λ/4位相差層の干渉を用いて増強し易い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、斜め方向からみた場合における外光反射光の色相の変化が抑制された画像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、一実施形態に係る画像表示装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、発光部から出力される光の発光スペクトルが有する山型領域の概念図である。
図3図3は、シミュレーションの概略構成を示す模式図である。
図4図4は、シミュレーションで使用した発光スペクトルを説明する模式図である。
図5図5は、シミュレーションで使用したパラメータを示す図表である。
図6図6は、シミュレーションで使用したパラメータを示す図表である。
図7図7は、シミュレーションで使用したパラメータを示す図表である。
図8図8は、シミュレーションの結果を示す図表である。
図9図9は、シミュレーションの結果を示す図表である。
図10図10は、シミュレーションの結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0021】
図1は、一実施形態に係る画像表示装置1の概略構成を示す模式図である。画像表示装置1は、画像表示部10と、光学積層体20とを有する。光学積層体20は、画像表示部10上に積層されている。光学積層体20側から画像がみられるので、画像表示装置1において、光学積層体20側を前面側と称し画像表示部10側を背面側と称する場合もある。
【0022】
[画像表示部]
画像表示部10は、画像を出力するデバイスである。画像表示部10は、画像を表示(または出力)する画像表示面10aを有する。画像表示部10の例は、フラットパネル表示装置である。画像表示部10として例示する表示装置は、画像表示面10a上に、光学補償するための部材を含まない状態の装置である。
【0023】
一実施形態に係る画像表示部10は、図1に示したように、光源部11と、画像表示層12とを有する。光源部11と、光源部11と別体の画像表示層12とを有する画像表示部10の例は、液晶表示装置である。液晶表示装置の例は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置等のいずれをも含む。
【0024】
[光源部]
光源部11は、画像表示層12に照明光(たとばバックライト)を供給する。光源部11は、発光部111を有する。発光部111は、図2に示したように、発光ピークを含み且つ半値全幅が60nm以下である山型領域Mを有する光を出力する。図2は、発光部111から出力される光の発光スペクトルが有する山型領域Mの概念図である。
【0025】
以下、説明の便宜のため、山型領域Mが有する発光ピークに対応する波長をピーク波長λと称する。山型領域Mの半値全幅を規定する波長範囲のうち下限波長(上記波長範囲のうち短波長側の波長)を波長λと称し、上限波長(上記波長範囲のうち長波長側の波長)を波長λと称す。
【0026】
発光部111の例は、LEDである。発光部111がLEDのような点光源である場合、光源部11は、図1に模式的に示したように、複数の発光部111を有する。発光部111は、たとえば、三原色(赤色、緑色、青色)を含む光を出力してもよい。このような発光部111の例は、たとえば、白色LEDである。発光部111が、三原色を含む光を出力する場合、発光部111から出力される光の発光スペクトルは、三原色に対応する色それぞれに対して山型領域を有する。この場合、赤色、緑色および青色の山型領域のうちの少なくとも一つが上記山型領域Mの条件を満たす。或いは、光源部11は、青色を出力する発光部111と、緑色を出力する発光部111と、赤色を出力する発光部111をそれぞれ有してもよい。この場合、青色用、緑色用および赤色用の発光部111のうち少なくとも一つの発光部111から出力される光の発光スペクトルが上記山型領域Mを有する。
【0027】
上記山型領域Mの例としては、ピーク波長λと半値全幅の組み合わせによって表1に示した第1~第4の山型領域であってもよい。表1には、第1~第4の山型領域に対応する色も示している。
【表1】
【0028】
[画像表示層]
画像表示層12は、複数の画素を有し、光源部11からの照明光の透過状態を制御することによって、画像を形成する層である。画像表示層12は、たとえば、液晶層である。図1に示した形態において、画像表示層12における光源部11と反対側の面が画像表示面10aである。
【0029】
一実施形態に係る画像表示部10は、画像表示層12が有する画素自体が発光部111として機能する自発光型の画像表示層12を有してもよい。この場合、図1に示したように、画像表示層12と分離した光源部11は不要である。自発光型の画像表示層12の例は、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)画像表示素子である。画像表示層12が自発光型の層であっても、画素(発光部111)が出力する光の発光スペクトルが有する山型領域Mの例は、図1に示したように光源部11と画像表示層12とが分離されている場合と同様である。
【0030】
[光学積層体]
光学積層体20は、λ/4位相差層21と直線偏光層22とを有する。光学積層体20は、画像表示面10aに表示される画像を光学補償する部材である。光学積層体20はたとえば円偏光板または楕円偏光板として機能する。
【0031】
[λ/4位相差層]
λ/4位相差層21は、λ/4位相差層21を通過(または透過)する光にλ/4(1/4波長)の位相差を与える光学機能層である。λ/4位相差層21の厚さの例は、0.5μm~5.0μmである。λ/4位相差層21の屈折率の例は、1.50~1.70である。λ/4位相差層21は、画像表示部10に、粘着剤層2aを介して貼合されている。
【0032】
粘着剤層2aは、(メタ)アクリル系、ゴム系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系のような樹脂を主成分とする粘着剤組成物で構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型であってもよい。粘着剤層2aの厚みは、通常3μm~30μmであり、好ましくは3μm~25μmである。粘着剤層2aの屈折率の例は、1.40~1.55である。
【0033】
[直線偏光層]
直線偏光層22は、直線偏光特性を有する光学機能層である。直線偏光層22は、たとえば直線偏光板である。直線偏光層22は、直線偏光特性を有する偏光性フィルム(偏光子層)と、偏光性フィルムを保護する保護フィルムとを有する。直線偏光層22の厚さの例は、12μm~140μmである。
【0034】
偏光性フィルムの例は、一軸延伸された樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向されたフィルムである。偏光性フィルムは、直線偏光特性を有する樹脂フィルムであれば特に限定されず、たとえば公知の直線偏光板に使用されるものであればよい。
【0035】
偏光性フィルムとしての樹脂フィルムの例は、ポリビニルアルコール(以下「PVA」と称す場合もある)系樹脂フィルム、ポリ酢酸ビニル樹脂フィルム、エチレン/酢酸ビニル樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム及びポリエステル樹脂フィルムを含む。通常、二色性色素の吸着性及び配向性の観点からPVA系樹脂フィルム、特にPVAフィルムが用いられる。
【0036】
偏光性フィルムの厚さの例は、2.0μm~40μmである。偏光性フィルムの屈折率の例は、1.50~1.60である。
【0037】
保護フィルムは、偏光性フィルム上に積層される。保護フィルムは、例えば、樹脂フィルム(例えば、トリアセチルセルロース(以下、「TAC」とも称す)系フィルム)、ガラスカバー又はガラスフィルムである。保護フィルムの厚さの例は、10μm~100μmである。保護フィルムの屈折率の例は、1.40~1.70である。
【0038】
直線偏光層22は、たとえば、偏光性フィルムに対して2枚の保護フィルムを有してもよい。この場合、偏光性フィルムの両面に保護フィルムが積層される。2枚の保護フィルムそれぞれの材料、厚さおよび屈折率の例は、前述したとおりである。2枚の保護フィルムの材料、厚さおよび屈折率は、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
直線偏光層22は、長尺の部材を準備し、ロール・トゥ・ロールでそれぞれの部材を貼り合わせた後、所定形状に裁断して製造されてもよいし、それぞれの部材を所定の形状に裁断した後、貼り合わせることによって製造されてもよい。
【0040】
直線偏光層22は、粘着剤層2bを介して、λ/4位相差層21に貼合されている。 粘着剤層2bの例は、粘着剤層2aと同様である。
【0041】
直線偏光層22が偏光性フィルムに対して1枚の保護フィルムを有する形態では、通常、偏光性フィルムがλ/4位相差層21寄りに配置されるように、直線偏光層22がλ/4位相差層21に貼合される。
【0042】
上記画像表示装置1はたとえば次のようにして製造される。
【0043】
λ/4位相差層21および直線偏光層22をそれぞれ製造する。その後、それらを貼合することによって光学積層体20を形成する。次に、光学積層体20を、粘着剤層2aを介して画像表示部10に貼合することによって画像表示装置1が製造される。光学積層体20を画像表示部10に貼合する際にはλ/4位相差層21を画像表示部10寄りに配置する。
【0044】
一実施形態に係る画像表示装置1では、たとえば、第1面21aおよび第2面21bを含み発光部111から出力される光が通過する複数の界面それぞれでの屈折率差のうち、第1面21aおよび第2面21bそれぞれが界面である場合の屈折率差が他の屈折率差より大きい。界面での屈折率差とは、界面の両側の屈折率差を意味する。このような屈折率差は、たとえば、各層を構成する材料を調整することによって実現され得る。
【0045】
次に、λ/4位相差層21を更に説明する。λ/4位相差層21は、図1に示したように、位相差発現層211と、無配向層212とを有する。
【0046】
位相差発現層211は、位相差発現層211のみでλ/4位相差層21として機能する層である。位相差発現層211は、たとえば1/4波長板に使用される公知の材料および形成方法によって形成され得る。
【0047】
位相差発現層211は、樹脂フィルムを延伸した延伸樹脂フィルムであってもよい。位相差発現層211は、たとえば重合性液晶化合物が一方向に配向した状態で硬化した硬化物によって形成される層であってもよい。重合性化合物としては、たとえば逆分散性を示す化合物が好適に用いられる。
【0048】
上記重合性液晶化合物の種類については、特に限定されないものの、その形状から、棒状タイプ(棒状液晶化合物)と円盤状タイプ(円盤状液晶化合物、ディスコティック液晶化合物)とに分類できる。さらに、それぞれ低分子タイプと高分子タイプとがある。なお、高分子とは、一般に重合度が100以上のものを言う(「高分子物理・相転移ダイナミクス、土井 正男著、2頁、岩波書店、1992」参照)。
【0049】
位相差発現層211には、何れの重合性液晶化合物を用いることもできる。さらに、2種以上の棒状液晶化合物や、2種以上の円盤状液晶化合物、又は棒状液晶化合物と円盤状液晶化合物との混合物を用いてもよい。
【0050】
棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報の請求項1、又は、特開2005-289980号公報の段落[0026]~[0098]に記載のものを好適に用いることができる。円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落[0020]~[0067]、又は、特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0108]に記載のものを好適に用いることができる。
【0051】
重合性液晶化合物は、2種類以上を併用してもよい。その場合、少なくとも1種類が分子内に2以上の重合性基を有している。すなわち、前記重合性液晶化合物が硬化した層は、重合性基を有する液晶化合物が重合によって固定されて形成された層であることが好ましい。この場合、層となった後はもはや液晶性を示す必要はない。
【0052】
重合性液晶化合物は、重合反応をし得る重合性基を有する。重合性基としては、例えば、重合性エチレン性不飽和基や環重合性基等の付加重合反応が可能な官能基が好ましい。より具体的には、重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等を挙げることができる。その中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基とは、メタアクリロイル基及びアクリロイル基の両者を包含する概念である。
【0053】
位相差発現層211は、たとえば、Aプレートを有する。Aプレートは、たとえば、上記重合性液晶化合物によって形成され得る。この場合、Aプレートは水平配向液晶硬化膜である。位相差発現層211は、Aプレート用の水平配向膜を更に有してもよい。水平配向膜およびAプレートの積層体としての位相差発現層211は、たとえば、樹脂フィルムといった支持基材上に、水平配向膜およびAプレートを、この順に形成した後、支持基材を剥離することによって製造され得る。
【0054】
位相差発現層211が、積層体である場合、位相差発現層211を構成する各層は、層間の界面で反射が生じないように、実質的に同じ屈折率を有するように形成される。これは、たとえば、各層が同じ屈折率を有するように各層の材料を選択してもよいし、各層の材料に適宜添加剤を添加して屈折率を調整することによって実現され得る。
【0055】
無配向層212は、位相差発現層211に密着して積層されている。無配向層212は、λ/4位相差層21において、画像表示部10寄りに配置されている。無配向層212は、λ/4位相差層21の厚さを調整するための層である。無配向層212の面内位相差は、0.1nm未満(すなわち実質的に0)であり、光への位相差の付与に寄与しない層である。無配向層212は、無配向層212と位相差発現層211との間の界面で反射が生じないように、位相差発現層211の屈折率と実質的に同じ屈折率を有する。たとえば、無配向層212と位相差発現層211の界面の両側の屈折率差は、0.02未満(実質的にゼロ)である。無配向層212は、たとえば、紫外線(UV)接着剤が硬化した硬化物によって形成される層である。上記UV接着剤は、添加剤として、チオフェン、チオウレタン、カルバゾール、フルオレンなどを含有してもよい。このような添加材は、屈折率の調整に使用できる。
【0056】
λ/4位相差層21は、位相差発現層211のみから形成される層(すなわち、無配向層212を有しない構成)であってもよい。
【0057】
λ/4位相差層21は、以下の条件1を満たすように構成されている。
[条件1]
λ/4位相差層21の厚さ方向における両面(第1面21aおよび第2面21b)に基づく干渉スペクトルにおいて、山型領域Mの半値全幅を規定する波長範囲(λ以上λ以下の範囲)内の極大値の数が1つであり且つ極小値の数が2以下である。
【0058】
上記干渉スペクトルは、λ/4位相差層21を含む画像表示装置1の構成において、山型領域Mの半値全幅を規定する波長範囲を含む光(たとえば、山型領域Mが青色に対応する場合、波長400nm~500nmの光)がλ/4位相差層21に入射した際に、λ/4位相差層21の第1面21a(背面側界面)と第2面21b(前面側界面)の反射によって生じる干渉スペクトルである。
【0059】
画像表示部10が三原色(赤色、緑色、青色)を出力する発光部111を有する場合、或いは、三原色それぞれに対応する発光部111を有する場合、各色(赤色、緑色、青色)に対する山型領域Mが想定される。この場合、条件1の山型領域Mは、赤色、緑色および青色のいずれかに対応する山型領域Mである。たとえば、青色に対応する山型領域であり、この場合、山型領域Mは、表1に示した第1の山型領域であってもよい。
【0060】
λ/4位相差層21が無配向層212を有する場合、第1面21aは、無配向層212における位相差発現層211と反対側の面(換言すれば、画像表示部10側の面)であり、第2面21bは、位相差発現層211における無配向層212と反対側の面(換言すれば、直線偏光層22側の面)である。λ/4位相差層21が無配向層212を有しない場合、第1面21aは、位相差発現層211における画像表示部10側の面であり、第2面21bは、位相差発現層211における直線偏光層22側の面である。
【0061】
λ/4位相差層21は、以下の条件2を更に満たすように構成されていてもよい。
[条件2]
干渉スペクトルにおける極大値に対応する波長とピーク波長λとの差が、山型領域Mの半値全幅の1/5以下である。
【0062】
条件1は、λ/4位相差層21の厚さおよび屈折率を調整することで実現され得る。たとえば、λ/4位相差層21の屈折率を高くすることによって、λ/4位相差層21の厚さを薄くできるので、上記条件1を満たし易い。条件2についても同様である。
【0063】
条件1に記載の干渉スペクトルにおける極大値は、λ/4位相差層21の界面間(第1面21aおよび第2面21b間)の干渉により生ずる。界面間の距離(λ/4位相差層21の厚み)が僅かに変化すると、極大値の波長が大きく変化する。例えば厚み1.890μmで455nmに極大値を有していても、厚みが僅か(±0.050μm)に変化して1.940μmや1.890μmになってしまうと、干渉スペクトルにおける極大値のピーク波長は455nm付近から外れて442nmや468nmとなるばかりか、455nmは逆に極小ピークとなってしまう。
【0064】
そのため、たとえば、λ/4位相差層21は精密塗工(たとえば、ウェット膜厚精度数10nmオーダーの塗工法)を用いて製造されることが好ましい。精密塗工の方法の一例を説明する。
【0065】
(精密塗工の方法)
ウェット膜厚精度数10nmオーダーの精密塗工は、たとえば、スロットダイコート法、スピンコート法、グラビアコート法等によって実現され得る。いずれの方法においても低固形分濃度かつ低粘度の塗工液を用いること、塗工液の温度および濃度の安定化、塗工液塗布工程から乾燥工程までの時間をなるべく短縮すること、安定した気流での乾燥工程、最適な照射量での活性エネルギー線照射工程等が好ましい。
【0066】
さらに、得られた塗工乾燥物の膜厚や位相差値の測定結果に対して、各塗工方式における制御項目を緻密にフィードバックすることで、精密塗工を一層確実に実現可能である。スロットダイコート法ではダイリップからの吐出量およびリップ形状およびダイリップと塗工対象基材との距離が重要な制御項目である。スピンコート法では塗工環境の気流安定化、スピナーの回転速度と滴下量が重要な制御項目である。
【0067】
グラビアコート法ではグラビアロールの速度、グラビアロールとバックアップロールの速度比が重要な制御項目である。
【0068】
λ/4位相差層21が、位相差発現層211である場合(すなわち、無配向層212を有しない場合)、上記精密塗工を用いて位相差発現層211を製造すればよい。
【0069】
λ/4位相差層21が、無配向層212を有する場合、無配向層212で厚さを調整し得る。この場合、位相差発現層211を、たとえば、公知の1/4波長板の形成方法と同様の方法で形成する一方、無配向層212を上記精密塗工で形成すればよい。
【0070】
たとえば、厚さを精密に制御するように、屈折率1.61程度の無配向層212を、形成する場合の例を説明する。この場合、ビスフェノールフルオレン系アクリレートモノマー(大阪ガスケミカル製OGSOLEA-0200)と光ラジカル重合開始剤(BASF製イルガキュア907)を質量比97:3でトルエン溶液に溶解して固形分濃度5%溶液を作製し、塗布液を得て、上記塗布液を位相差発現層211上に、スピンコーターで塗布乾燥し、UV照射するプロセスによって、厚さが精密に制御された無配向層212を得ることができる。
【0071】
前述したように、条件1の干渉スペクトルの極大値の波長は、界面間の距離に依存する。したがって、λ/4位相差層21の厚さを調整可能は、上記無配向層212は、干渉制御層として機能する。
【0072】
上記画像表示装置1では、λ/4位相差層21が上述した条件1を満たす。これにより、画像表示部10が有する発光部111から出力される光において、山型領域Mに対応する光が、画像表示装置1から強く発色される。
【0073】
これにより、たとえば、三原色の何れかの色の強度が他の色に対して低い場合であっても、その色の他の色に対する強度低下状態を、λ/4位相差層21の両面の干渉作用によって補償することができる。その結果、自然は発色(所望の色状態)を実現できる。更に、上記強度低下状態を解消するために、たとえば、強度低下が生じている色を出力する発光部111の輝度を向上させる必要がないため、発光部111の劣化を抑制できる。その結果、画像表示装置1も製品寿命も確保できる。
【0074】
たとえば、青色の発光材料は、化合物の安定性に課題があり、高輝度で使用することで発光素子(発光部)の寿命を損なうことが知られている。これは特に有機発光素子の場合顕著であり、青色発光化合物としてよく使用されるスチリルアミノ基を含む化合物によく当てはまる。
【0075】
このような場合であっても、上記λ/4位相差層21が満たす条件1における山型領域Mを青色に対応する領域とすることによって、青色を、λ/4位相差層21における干渉作用によって、例えば緑色および赤色よりも強く発色できる。その結果、青色光の発光強度を弱めて発光部111の寿命を伸ばしつつ、自然な発色を維持できる。
【0076】
λ/4位相差層21が条件2を更に満たす場合、干渉による弱め合いを低減できるので、所望の色状態を一層実現し易い。干渉による弱め合いを低減するため、干渉スペクトルにおける極大値に対応する波長と、ピーク波長λとは一致していることがより好ましい。
【0077】
一実施形態において、発光部111から出力される光が通過する複数の界面それぞれでの屈折率差のうち、第1面21aおよび第2面21bそれぞれが界面である場合の屈折率差が他の屈折率差より大きい。この場合、直線偏光層22から出力される光のスペクトルに含まれる干渉成分は、λ/4位相差層21の両面(背面側界面および前面側界面)に基づく干渉の影響が大きい。そのため、λ/4位相差層21に基づく干渉作用による上記光の増強効果が一層有効である。
【0078】
次に条件1を満たすことで、山型領域Mに対応する色を強められる点をシミュレーションによって検証した。検証シミュレーションを説明する。
【0079】
シミュレーションでは、図3に示した画像表示装置30をシミュレーションモデルとして使用した。画像表示装置30は、画像表示部31と、粘着剤層32aと、λ/4位相差層33と、粘着剤層32bと、直線偏光層34とを有する。粘着剤層32aと、λ/4位相差層33と、粘着剤層32bと、直線偏光層34は、この順に画像表示部31上に積層されている。λ/4位相差層33は、粘着剤層32a側に無配向層331を有し、無配向層331上に位相差発現層332を有する。画像表示装置30は空気中に配置されているとした。
【0080】
画像表示部31、粘着剤層32a、λ/4位相差層33、粘着剤層32b、直線偏光層34、無配向層331および位相差発現層332はそれぞれ、画像表示部10、粘着剤層2a、λ/4位相差層21、粘着剤層2b、直線偏光層22、無配向層212および位相差発現層211のモデルとした。
【0081】
シミュレーションの説明において、画像表示部31、無配向層212、位相差発現層211、直線偏光層34それぞれの屈折率をn、n、n、nと称す。画像表示部31の屈折率nは、粘着剤層32aに隣接する部分(すなわち、画像表示部31と粘着剤層32aの界面において画像表示部31側に接している部分)の屈折率である。無配向層212および位相差発現層211の屈折率は同じと仮定した。したがって、λ/4位相差層33の屈折率もnであった。粘着剤層32aおよび粘着剤層32bの屈折率も同じあり、粘着剤層32aおよび粘着剤層32bの屈折率をnPSAと称す。
【0082】
実施したシミュレーションではn、nPSA、n、nを表2の数値を使用した。表2に示した屈折率は、波長550nmに対する屈折率である。表2に示した各屈折率の数値は、画像表示装置1が有する各層で使用が想定される材料に対応した屈折率である。画像表示部31の屈折率nはガラスの屈折率とした。これは、画像表示部31のうち粘着剤層32aに接する部分は、たとえば、封止材(或いは保護部材)としてのガラスが多いからである。表2には、直線偏光層34の外側の空気の屈折率も示している。
【表2】
【0083】
シミュレーションでは、発光部111から出力された上述した山型領域Mを光が、画像表示部31から出力される場合を想定した。以下、シミュレーションで使用した条件および計算理論を説明する。
【0084】
<発光スペクトルの半値全幅>
画像表示部31から出力する光の発光スペクトルを、図4に示したように、波長λの単峰性連続関数f(λ)とし、一つの極大値f(λ)を持つスペクトルとした。f(λ)/2を満たすふたつの波長λをそれぞれ、図1の場合と同様に、波長λおよび波長λ(ただし、λ>λ)とした。この場合、単峰性連続関数f(λ)で表される山型領域Mの半値全幅はλ-λで算出される。
【0085】
<干渉スペクトルの極値>
干渉スペクトルは、干渉によって得られる極値を、短波長から長波長に向けて、極大値、極小値および極大値の順番もしくは極小値、極大値および極小値の順番にとる連続な三角関数とした。
【0086】
図3に示したように、λ/4位相差層33の前面側界面(第2面21bに相当)と背面側界面(第1面21aに相当)をこの順に反射し進行する光路を光路Aと称し、いずれの界面でも反射されず透過し進行する光路を光路Bと称す。光路Aおよび光路Bの差で生じる干渉において、強めあい条件と弱めあい条件は次のように表される。
強めあい条件:
【数1】

弱めあい条件:
【数2】
【0087】
上記強めあい条件および弱めあい条件において、ΔLは、光路Aおよび光路Bの光路差であり、以下の式で表される。
【数3】

ここで、dは、λ/4位相差層33の厚さであり、無配向層212および位相差発現層211の厚さの和である。
【0088】
上記強めあい条件および弱めあい条件より、極大値に対応する波長λinおよび極小値に対応する波長λoutは次の式で表される。
【数4】
【0089】
本シミュレーションでは、λ/4位相差層33に波長分散を考慮していない。しかしながら、たとえば、波長分散がある場合においては、極大値および極小値をとる波長λはそれぞれの波長に応じた屈折率n(λ)を用いて計算される。
【0090】
<干渉スペクトルの強度>
図3に示した各層間界面の反射率r~rは、各層の屈折率を用いて下記のとおり表される。反射率r1は、画像表示部31と粘着剤層32aの界面の反射率である。反射率rは、λ/4位相差層33と粘着剤層32aの界面およびλ/4位相差層33と粘着剤層32bの界面の反射率である。反射率rは粘着剤層32bと直線偏光層34の界面の反射率である。反射率rは、直線偏光層34と空気の界面の反射率である。
【数5】
【0091】
画像表示部10の内部から出力された光の光電場の強度をEとすると、図3に示した光路Aおよび光路Bの光電場のエネルギーE、Eは下式で表される。
【数6】
【0092】
強めあい条件における光電場強度Einと弱めあい条件における光電場強度Eoutの強度は下式で表される。
【数7】
【0093】
無干渉条件における光電場強度Eは、次の式で表される。
【数8】
【0094】
<評価方法>
画像表示装置30から発光する青色、緑色、赤色の明るさはこれらの発光スペクトルS(λ)の積分値に比例する。λ/4位相差層33の両面(背面側界面と前面側界面)の干渉による強度振幅スペクトル(干渉スペクトルに相当)E(λ)に発光スペクトルS(λ)を乗じて、発光干渉スペクトルE(λ)×S(λ)が得られる。発光干渉スペクトルの積分値Pを用いて、強めあい干渉条件、弱めあい干渉条件の発光の明るさを評価した。
【0095】
積分する波長λの範囲は、f(λ)/2を満たすふたつの波長λ(すなわち、波長λ及び波長λ)とした。したがって、積分値Pは次式で表される。
【数9】
【0096】
画像表示装置30のパラメータを変更した複数のシミュレーションを実施した。全てのシミュレーションにおける強めあい干渉条件、弱めあい干渉条件および無干渉条件の発光の積分値Pを計算した。無干渉条件の発光の明るさを基準とした比率を算出し、干渉による発光明るさの増減率とした。
【0097】
図5図6および図7は、シミュレーションにおいて変更した画像表示装置30のパラメータを示す図表である。図8図9および図10は、上述の計算理論に基づいて計算した結果を示す図表である。図8図10に示したシミュレーション結果において、条件1を満たす結果が得られたシミュレーションを、図5図10において実施例1~17と称し、条件1を満たさない場合を、比較例1~35と称している。
【0098】
ここで、図5図10に示した各項目を説明する。
<合計層厚>
位相差発現層332と無配向層331の合計の厚さ(λ/4位相差層32の厚さに相当)を示している。
<無配向層厚>
無配向層331の厚さを示している。
<発現層厚>
位相差発現層332の厚さを示している。
<リタデーション>
λ/4位相差層32のリタデーション(位相差発現層332のリタデーションに相当)を示している。
<干渉条件>
ピーク波長λでの干渉条件が強めあう条件または弱めあう条件を示している。「強」は強めある条件である場合を意味し、「弱」は弱めあう条件である場合を意味する。
<半値全幅>
山型領域を規定する半値全幅を規定する波長範囲の下限の波長λと上限の波長λを示している。半値全幅は、λとλの差である。
<第1干渉スペクトル極値>
強めあい条件となっている場合の、干渉スペクトルが極値をとる波長を示している。
1,1a,2bなどの添字は、画像表示部31の発光スペクトルが有する山型領域Mの中心(ピーク波長λ)に近い波長から1から順に若い数字を振る。aは短波長側、bは長波長側である。たとえば「極大2b」であれば、中心から数えて二つ目かつ長波長側の極大値をとる波長となる。
<極大値の数>
山型領域Mの半値全幅を規定する波長範囲内にある干渉スペクトルの極大値の数を示している。
<第2干渉スペクトル極値>
弱めあい条件となっている場合の、干渉スペクトルが極値をとる波長を示している。1,1a,2bなどの添字の意味は、第1干渉スペクトル極値の場合と同様とした。
<極小値の数>
山型領域Mの半値全幅を規定する波長範囲内にある干渉スペクトルの極小値の数を示している。
<明るさ増減率>
干渉による発光明るさの増減率を計算した結果を示している。
【0099】
無配向層厚が0である場合、λ/4位相差層32が無配向層322を有しない(すなわち、λ/4位相差層32が位相差発現層321である)場合に相当する。
【0100】
明るさの増減率が100%を超える条件では、本来の表示色を損ねることなく画像表示装置の発光明るさが増加し、視認性が向上する。図8図10に示された結果より、実施例1~17では、明るさ増減率が100%を超えている一方、比較例1~35では、明るさ増減率が100%を超えていないことが理解され得る。したがって、図1に示したλ/4位相差層21が、上述した条件1を満たすことによって、本来の表示色を損ねることなく画像表示装置1の発光明るさが増加し、視認性が向上することが理解され得る。
【0101】
ここでは、シミュレーションを用いてλ/4位相差層21が上述した条件1を満たす場合の作用効果を具体的に説明した。上記シミュレーションは、λ/4位相差層21を設計する際に用いてもよい。すなわち、明るさ増減率が100%を超えるように、上記シミュレーションに基づいてλ/4位相差層21のたとえば厚さを算出してもよい。
【0102】
次に検証実験の結果を説明する。実験では、次のようにして図1に示した光学積層体20を製造した。
【0103】
[直線偏光層の形成]
直線偏光特性を有する偏光性フィルム(偏光子層)と、ケン化処理されたトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(コニカミノルタ株式会社製 KC4UYTAC 厚さ40μm)とを水系接着剤を介してニップロールで貼り合わせた。得られた貼合物の張力を430N/mに保ちながら、60℃で2分間乾燥して、片面に保護フィルムとしてTACフィルムを有する直線偏光層(直線偏光層22に相当)を得た。水系接着剤は水100部に、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、「クラレポバール KL318」)3部と、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(田岡化学工業株式会社製、「スミレーズレジン650」、固形分濃度30%の水溶液〕1.5部とを添加して調製した。
【0104】
得られた直線偏光層について光学特性の測定を行った。測定は上記で得られた直線偏光層が有する偏光性フィルムの表面を入射面として分光光度計(「V7100」、日本分光株式会社製)にて実施した。偏光性フィルムの吸収軸はポリビニルアルコールの延伸方向と一致しており、得られた直線偏光層の視感度補正単体透過率は42.3%、視感度補正偏光度は99.995%、単体色相aは-0.5、単体色相bは3.0であった。
【0105】
〔水平配向膜形成用組成物の調製〕
下記構造の光配向性材料5部(重量平均分子量:30000)とシクロペンタノン(溶媒)95部とを混合した。得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、水平配向膜形成用組成物を得た。
【化1】
【0106】
〔水平配向液晶硬化膜形成用組成物の調製〕
水平配向液晶硬化膜(Aプレート)を形成するために、下記の重合性液晶化合物αと重合性液晶化合物βを用いた。重合性液晶化合物αは、特開2010-31223号公報に記載された方法で製造した。また、重合性液晶化合物βは、特開2009-173893号公報に記載された方法に準じて製造した。以下にそれぞれの分子構造を示す。
【0107】
[重合性液晶化合物α]
【化2】
【0108】
[重合性液晶化合物β]
【化3】
【0109】
重合性液晶化合物α、及び重合性液晶化合物βを87:13の質量比で混合した。得られた混合物100部に対して、レベリング剤(F-556;DIC株式会社製)を1.0部、重合開始剤である2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369、BASFジャパン株式会社製)を6部添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加し、80℃で1時間攪拌することにより、λ/4位相差層形成用組成物を得た。
【0110】
〔λ/4位相差層の形成〕
日本ゼオン株式会社製の環状オレフィン系樹脂(COP)フィルム(ZF-14-50)上にコロナ処理を実施した。コロナ処理は、ウシオ電機株式会社製のTEC-4AXを使用して行った。コロナ処理は、出力0.78kW、処理速度10m/分の条件で1回行った。ガラス基板上に固定されたCOPフィルムに水平配向膜形成用組成物をスピンコーターで塗布し、80℃で1分間乾燥した。フィルムに塗布膜に対して、偏光UV照射装置(「SPOT CURE SP-9」、ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長313nmにおける積算光量が100mJ/cmとなるように、軸角度45°にて偏光UV露光を実施した。得られた水平配向膜の膜厚を光学膜厚計(「F20」フィルメトリクス製)で測定したところ100nmであった。上記塗工では、水平配向膜形成用組成物の滴下量とスピンコーター(「MS-B300」、ミカサ株式会社製)のスピナー回転数およびスピナー回転パターンを精密に調整し、面内均一かつ正確な塗工膜厚を得た。
【0111】
続いて、水平配向膜に、λ/4位相差層形成用組成物を、スピンコーター(「MS-B300」、ミカサ株式会社製)を用いて塗布し、120℃で1分間乾燥した。塗布膜に対して、高圧水銀ランプ(「ユニキュアVB-15201BY-A」、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm)することにより、λ/4位相差層(λ/4位相差層21に相当)を形成した。
【0112】
λ/4位相差層上に、粘着剤層を積層した。当該粘着剤層を介して、COPフィルム、配向膜、λ/4位相差層によって形成されたフィルムをガラスに貼合した。COPフィルムを剥離して、リタデーションを測定するためのサンプルを得た。
【0113】
波長550nmにおけるリタデーションを位相差測定装置(「KOBRA-WPR」,王子計測機器株式会社製)で測定した結果、140.3nmであった。さらに、λ/4位相差層の層厚を上記リタデーションと屈折率から算出したところ1900nmであった。上記塗工では、λ/4位相差層形成用組成物の滴下量とスピンコーターのスピナー回転数およびスピナー回転パターン、塗工から乾燥までの時間、乾燥炉内温度を精密に調整して所望かつ面内均一な層厚とリタデーションを得た。
【0114】
上記COPフィルム、配向膜およびλ/4位相差層によって形成されたフィルムのλ/4位相差層側に粘着剤層を積層し、保護フィルムとしてTACフィルムを有する直線偏光層の偏光性フィルム側を、上記粘着剤層を介して接着しCOPフィルム、配向膜、λ/4位相差層、粘着剤層、偏光性フィルム(偏光子層)、TACフィルム(保護フィルム)によって形成されるフィルムを得た。さらに、そのフィルムのCOPフィルムを剥離し、剥離面である配向膜面に粘着剤層を積層し、粘着剤層が積層された光学積層体(以下、説明の便宜のため、「第1光学積層体」と称す)を得た。第1光学積層体のうち粘着材層以外の部分は、図1に示した画像表示装置1の光学積層体20に相当する。
【0115】
波長400nmから波長500nmの領域における第1光学積層体の透過スペクトルを測定し、干渉スペクトルを得た。波長434nm、458nm、484nmに極大値を持ち、波長446nm、470nmに極小値を持ち、実施例1の計算結果と一致していることが確認された。
【0116】
λ/4位相差層の厚さを1955nmとしたこと以外は同様に作製し、粘着剤層が積層された光学積層体(以下、説明の便宜のため、「第2光学積層体」と称す)を得た。さらに、波長400nmから波長500nmの領域における第2光学積層体の透過スペクトルを測定し、干渉スペクトルを得た。波長446nm、470nmに極大値を持ち、波長434nm、458nm、484nmに極小値を持ち、比較例1の計算結果と一致していることが確認された。
【0117】
市販の有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置(以下、「OLED画像表示装置」と称す)が内蔵されたスマートホンにおいて、視認側最表面のガラスおよび円偏光板を取り除き、上記スマートホンが有するOLED画像表示装置(画像表示部10に相当)上に上記第1光学積層体を、粘着剤層を介して積層した。その状態で、OLED画像装置の表示画像を青一色の表示とし、第1光学積層体から出力する光の輝度をディスプレイ評価システムDMS803(Instrument SystemsGmbH製)で確認した。上記スマートホンが有するOLED画像表示装置(画像表示部10に相当)上に粘着剤層を介して第1光学積層体の代わりに第2光学積層体を積層した点以外は、第1光学積層体の場合と同様にして第2光学積層体から出力される光の輝度を確認した。その結果、第1光学積層体を積層したOLED画像表示装置付きスマートホンでは第2光学積層体を積層したOLED画像表示付きスマートホンにくらべて発光ピークの輝度が5%増加しており、目視においても青の発光を強く視認することができた。
【0118】
本発明は、上記実施形態及び実験例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される範囲、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0119】
画像表示部は、独立発光する画素を有する無機エレクトロルミネッセンスデバイス、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED)、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置)、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLVともいう)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMDともいう)を有する表示装置及び圧電セラミックディスプレイ等でもよい。
【0120】
粘着剤層の代わりに接着剤層を使用してもよい。
【0121】
山型領域Mを、三原色の何れかに対応する領域としたが、他の色(或いは、波長範囲)に対応した領域であってもよい。
【符号の説明】
【0122】
1…画像表示装置、10…画像表示部、10a…画像表示面、λ…ピーク波長、21…λ/4位相差層、22…直線偏光層、21a…第1面、21b…第2面、111…発光部、211…位相差発現層、212…無配向層、M…山型領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10